説明

シクリトールリンカーポリマー抱合体

生物学的に活性な分子のインビボでの特性を改善するために、生物学的に活性な分子を、ポリマー、高分子量の非免疫原性及び親油性化合物と抱合させることが記載されてきた。本発明は、ポリマーと、生物学的に活性な分子と、及び前記ポリマーを前記生物学的に活性な分子へ連結するシクリトールとを含む抱合体に関する。本発明は、ポリマーと、活性な官能基と、及び前記ポリマーを前記活性な官能基へ連結するシクリトールとを含む活性化されたポリマー組成物にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2005年7月28日に出願された米国仮出願第60/703,133号、代理人整理番号EYE−034P(その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)に対する優先権を主張する。
【0002】
技術分野
本発明は、ポリマーと、生物学的に活性な分子と、及び前記ポリマーを前記生物学的に活性な分子へ連結する炭素環式基とを含む抱合体に関する。
【背景技術】
【0003】
生物学的に活性な分子のインビボでの特性を改善するために、生物学的に活性な分子を、ポリマー、高分子量の非免疫原性及び親油性化合物と抱合させることが記載されてきた。ポリマー、高分子量の非免疫原性及び親油性化合物で修飾された生物学的に活性な分子は、修飾されていない様式のものと比較して、低下した免疫原性/抗原性及び改善された安定性等の薬物動態学的特性を示す。例えば、米国特許第6,011,020号は、アプタマーのインビボでの循環半減期を延長させるために、高分子量の非免疫原性化合物をアプタマーに抱合させることを開示している。
【0004】
活性化されたポリマーは、結合部位として機能する求核性官能基を有する生物学的に活性な分子と反応させる。ポリエチレングリコール(PEG)等のポリアルキレングリコールは、最も広範に使用されるポリマーに属する。米国特許第4,179,337号は、PEGをペプチド又はポリペプチドに結合する初期モデルについて記載する。米国特許第5,122,614号は、N−スクシンイミドカルボナート官能基で活性化されたPEG分子が、水性塩基性条件下で、ポリペプチドのアミン基へのウレタン結合によって結合され得ることを開示する。米国特許第5,932,462号は、活性化された多アーム化PEG分子及び多アーム化PEG抱合体について記載する。多アーム化PEG抱合体は、PEG鎖と生物学的に活性な分子の間のリンカーとして、リジン等の多機能性中央部分に結合された2つの直鎖PEG単位を含有する。
【0005】
生物学的に活性な分子へ結合させるのに有用な新たな活性化されたポリマー誘導体及び、生物学的に活性な分子とポリマーを含む新たな抱合体に対する必要性が継続的に存在する。
【発明の開示】
【0006】
本発明は、ポリマーと、生物学的に活性な分子と、及び前記ポリマーを前記生物学的に活性な分子へ連結するシクリトールとを含む抱合体に関する。
【0007】
本発明は、ポリマーと、活性な官能基と、及び前記ポリマーを前記活性な官能基へ連結するシクリトールとを含む活性化されたポリマー組成物にも関する。
【0008】
本発明は、ポリマーと、生物学的に活性な分子と、及び前記ポリマーを前記生物学的に活性な分子へ連結するシクリトールとを含む抱合体を形成する方法にも関する。
【0009】
ある態様において、本発明は、式:
【0010】
【化8】

(Aは、生物学的に活性な部分又は活性な官能基であり;
1a、R1b、R1c、R1d及びR1eが、−OH、−NH及び−X−L−Aからなる群から各々独立に選択され;
は、水素、ポリマー、生物学的に活性な部分及び活性な官能基からなる群から選択され;
及びLは、結合及びスペーサー部分からなる群から各々独立に選択され;
及びXは、−O−、−S−及び−NR−からなる群から各々独立に選択され;並びに
は、水素及び低級アルキル基からなる群から選択される。)
を有する化合物に関する。
【0011】
本発明は、幾つかの利点を有する。シクリトールは、単一のリンカー単位を通じて生物学的に活性な分子の広範なスペクトルへ最大5個のポリマーを結合できる万能多官能性部分である。シクリトールは、加水分解に対して安定した結合を有する抱合体を与える頑強な部分でもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、ポリマーと、生物学的に活性な分子と、及び前記ポリマーを前記生物学的に活性な分子へ連結するシクリトールとを含む抱合体に関する。
【0013】
本発明は、ポリマーと、活性な官能基と、及び前記ポリマーを前記活性な官能基へ連結するシクリトールとを含む活性化されたポリマー組成物にも関する。
【0014】
ある態様において、前記組成物は、式:
【0015】
【化9】

(Aは、生物学的に活性な部分又は活性な官能基であり;
1a、R1b、R1c、R1d及びR1eは、−OH、−NH及び−X−L−Aからなる群から各々独立に選択され;
は、水素、ポリマー、生物学的に活性な部分及び活性な官能基からなる群から選択され;
及びLは、結合及びスペーサー部分からなる群から各々独立に選択され;
及びXは、−O−、−S−及び−NR−からなる群から各々独立に選択され;並びに
は、水素及び低級アルキル基からなる群から選択される。)
を有する。
【0016】
一実施形態において、Aは、生物学的に活性な部分である。別の実施形態において、Aは、核酸である。別の実施形態において、Aは、アプタマーである。別の実施形態において、Aは、抗VEGFアプタマーである。
【0017】
一実施形態において、Aは、活性な官能基である。別の実施形態において、Aは、求電子官能基である。別の実施形態において、Aは、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸塩化物、ハロゲン、N−スクシンイミドカルボナート、スクシンイミジルエステル、1−ベンゾトリアゾリルカルボナートエステル、N−ヒドロキシマレイミジルエステル、ビニルスルホン、アザラクトン、環状アミドチオンカルボニル、イミダゾールカルボニル、イソシアナート又はイソチオシアナートを含む活性な官能基である。
【0018】
一実施形態において、R1a、R1b、R1c、R1d及びR1eの少なくとも1つは、独立に、−X−L−Aである。別の実施形態において、R1a、R1b、R1c、R1d及びR1eの少なくとも2つは、独立に、−X−L−Aである。別の実施形態において、R1a、R1b、R1c、R1d及びR1eの少なくとも3つは、独立に、−X−L−Aである。別の実施形態において、R1a、R1b、R1c、R1d及びR1eの少なくとも4つは、独立に、−X−L−Aである。別の実施形態において、R1a、R1b、R1c、R1d及びR1eの各々は、独立に、−X−L−Aである。
【0019】
一実施形態において、Aはポリマーである。別の実施形態において、少なくとも1つのAはポリマーである。別の実施形態において、Aは生物学的に活性な部分である。別の実施形態において、Aは活性な官能基である。
【0020】
一実施形態において、L及びLは各々独立に、式:
−(CH−(X−(C(X))−(X−(CH
(nは、0ないし10であり;
mは、0又は1であり;
pは、0又は1であり;
qは、0又は1であり;及び
rは、0ないし10である。)
によって表されるスペーサー部分である。
【0021】
別の実施形態において、L及びLは、各々独立に、
−(CH−(C(X))−、
−(C(X))−(CH−、
−(C(X))−、及び
−(CH
(n、p及びrは、上述のとおりである。)
からなる群から選択される式によって表されるスペーサー部分である。
【0022】
一実施形態において、X、X、X、X及びXは、各々独立に、−O−及び−NH−からなる群から選択される。別の実施形態において、X、X、X、X及びXは、各々、−O−である。
【0023】
別の態様において、抱合体は、
【0024】
【化10】

(Dは、生物学的に活性な部分であり;
POLYは、ポリマーであり;
各X、X及びXは、−O−、−S−及び−NR−からなる群から各々独立に選択され;
は、水素及び低級アルキル基からなる群から選択され;
mは、0又は1であり、及び
nは、0から10までの整数である。)
からなる群から選択される式を有する。
【0025】
一実施形態において、Dは核酸である。別の実施形態において、Dはアプタマーである。別の実施形態において、Dは抗VEGFアプタマーである。
【0026】
ある具体的な実施形態において、前記抱合体は、
【0027】
【化11】

(Zは、約450である。)
からなる群から選択される式を有する。
【0028】
別の態様において、前記活性化されたポリマー組成物は、
【0029】
【化12】

(Gは、脱離基であり;
POLYは、ポリマーであり;
各X、X及びXは、−O−、−S−及び−NR−からなる群から各々独立に選択され;
は、水素及び低級アルキル基からなる群から選択され;
mは、0又は1であり;並びに
nは、0から10までの整数である。)
からなる群から選択される式を有する。
【0030】
一実施形態において、Gは、ハロゲン化物、塩化物、N−スクシンイミド、1−ベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシマレイミド、アザラクトン、環状アミドチオン及びイミダゾールからなる群から選択される脱離基である。
【0031】
一実施形態において、POLYは、高分子量ポリマーである。別の実施形態において、POLYは、ポリエーテルポリオール、ポリエチレングリコール、多糖類、ポリエステル、高分子量ポリオキシアルキレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリアクリラート、ポリオール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ無水物、カルボキシメチルセルロース、他のセルロース誘導体、キトサン、ポリアルデヒド及びポリエーテルからなる群から選択されるポリマーである。別の実施形態において、POLYは、ポリアルキレングリコールである。別の実施形態において、POLYは、ポリエチレングリコール(PEG)である。
【0032】
別の実施形態において、POLYは、5kDaから100kDaまでの分子量を有するPEGである。別の実施形態において、POLYは、約20kDaの分子量を有するPEGである。
【0033】
一実施形態において、各X、X及びXは、各々独立に、−O−及び−NH−からなる群から選択される。
【0034】
一実施形態において、nは、0ないし6の整数である。別の実施形態において、nは、5である。
【0035】
具体的な実施形態において、2つ以上のポリマーが存在し、各ポリマーは、同一又は別異であり得ることが理解される。
【0036】
具体的な実施形態において、2つ以上の生物学的に活性な分子が存在し、生物学的に活性な各分子は、同一又は別異であり得ることが理解される。
【0037】
本明細書において「シクリトール」とは、1つ又はそれ以上の環原子上にヒドロキシル基を含むシクロアルカンである。T.Hudlickyらは、公知のシクリトール及びそれらの誘導体についてまとめている(Cyclitols and Their Derivatives: A Handbook of Physical,Spectral and Synthetic Data,T.Hudlicky and M.Cebulak,Wiley,John & Sons,Incorporated, 1993(その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。))。
【0038】
一実施形態において、シクリトールは、6員のシクロアルカンである。一実施形態において、シクリトールは、5員のシクロアルカンである。一実施形態において、シクリトールは、トリ−、テトラ−、ペンタ−及びヘキサ−ヒドロキシシクロヘキサンである。シクリトール誘導体は、場合によって、アルキル、アミノ、チオ、カルボニル又はハロゲン置換基を含む置換基を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0039】
一実施形態において、シクリトールは、イノシトールである。イノシトールは、ミオイノシトール、D−キロイノシトール、L−キロイノシトール、ムコイノシトール、シロ(Scyllo)イノシトール、アロイノシトール、エピイノシトール、シスイノシトール及びネオイノシトールを含むが、これらに限定されるわけではない。(Inositol Phosphates and Derivatives Synthesis,Biochemistry,and Therapeutic Potential,Edited by A.B.Reitz,American Chemical Society,Oxford University Press, 1991参照(その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)。)
本明細書でいう「活性化されたポリマー」とは、活性な官能基を含むポリマーである。活性化されたポリマーは、抱合体を形成するために、生物学的に活性な分子と結合するために使用することが可能である。
【0040】
本明細書でいう「活性な官能基」とは、他の分子上の求電子基又は求核基と迅速に反応できる官能基である。例えば、本分野で理解されるように、「活性なエステル」という語は、アミン等の求核基と迅速に反応するN−ヒドロキシスクシンイミジルカルボキシラートエステル等のエステルを含む。活性なエステルの他の例は、N−ヒドロキシマレイミドカルボキシラートエステル及び1−ベンゾトリアゾリルカルボナートエステルを含むが、これらに限定されるわけではない。
【0041】
活性な官能基は、脱離基を含み得る。適切な脱離基の例は、ハロゲン化物、N−ヒドロキシ−スクシンイミド、N−スクシンイミド、1−ベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシマレイミド、環状アミドチオン及びイミダゾールを含むが、これらに限定されるわけではない。
【0042】
求核試薬と反応する活性な官能基の例は、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸塩化物、N−スクシンイミドカルボナート、スクシンイミジルエステル、1−ベンゾトリアゾリルカルボナートエステル、N−ヒドロキシマレイミジルエステル、ビニルスルホン、アザラクトン、環状アミドチオンカルボニルイミダゾール、イソシアナート及びイソチオシアナートを含むが、これらに限定されるわけではない。
【0043】
求電子試薬と反応する活性な官能基の例は、第一級アミン、アルコール、ヒドラジン及びヒドラジド官能基、アシルヒドラジド、カルバザート(carbazate)、セミカルバザート(semicarbazate)及びチオカルバザート(thiocarbazate)を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0044】
例えば、酸化ポリアルキレンを求核試薬に結合させるために、酸化ポリアルキレンのヒドロキシル末端基のうちの1つを、活性な官能基へと転化する。この工程は、「活性化」と称され、その生成物は、「活性化されたポリアルキレンオキシド」と称される。
【0045】
本明細書に使用される「スペーサー」又は「スペーサー部分」という用語は、シクリトールを、生物学的に活性な部分又は活性な官能基と共有結合させる部分を指す。
【0046】
一実施形態において、前記スペーサーは、式:
−(CH−(X−(C(X))−(X−(CH
(nは、0ないし10であり;
mは、0又は1であり;
pは、0又は1であり;
qは、0又は1であり;及び
rは、0ないし10である。)
によって表される。
【0047】
別の実施形態において、前記スペーサーは、
−(CH−(C(X))−、
−(C(X))−(CH−、
−(C(X))−、及び
−(CH
(n、p及びrは、上述のとおりである。)
からなる群から選択される式によって表される。
【0048】
「低級アルキル基」は、C−C直鎖又は分岐鎖炭化水素、又はC−C環状炭化水素である。低級アルキル基の例は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第三級ブチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル及びシクロヘキシル基を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0049】
「加水分解に対して安定である」又は「加水分解できない」結合又は連結という語は、本明細書において、水中で実質的に安定であるか、又は水と実質的に反応しない結合又は連結を表すために使用される。例えば、加水分解に対して安定である連結は、延長した期間、水性条件下で反応しない。加水分解に対して安定である連結は、水性条件下で無限に存在し得る。
【0050】
「生理学的に安定である」結合又は連結という語は、本明細書において、インビボでの開裂又は加水分解に対して実質的に安定であるが、他のインビトロ因子の存在下においても安定であり得る結合又は連結を指すよう使用される。生理学的に安定した結合又は連結は加水分解に対して安定であり、患者の細胞、臓器、皮膚、膜又は身体内のその他の部分における生理学的プロセスに対して安定である。生理学的に安定である連結は、生理学的条件下で無限に存在し得る。
【0051】
「エステラーゼ耐性のある」又は「エステラーゼに対して安定である」結合又は連結は、エステラーゼの存在下で安定である。
【0052】
全ての結合又は連結が水性条件下又は生理学的条件下で適度の安定性を有することが好ましいが、特定の態様において、選択的に加水分解可能な結合又は連結の使用が想定される。選択的に加水分解可能な結合又は連結は、循環中において、適度な安定性をなお有する。「選択的に加水分解可能な」結合又は連結は、特定の条件下でのみ、又は特定の条件下で優先的に、放出可能な、開裂可能な又は加水分解可能な全ての連結を含む。
【0053】
選択的に加水分解可能な結合の例は、ジスルフィド結合及びトリスルフィド結合並びに酸不安定性結合を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0054】
「生物学的に活性な分子」、「生物学的に活性な部分」又は「生物学的に活性な因子」は、ウィルス、細菌、真菌、植物、動物及びヒトを含む(但し、これらに限定されるわけではない。)生物体の何らかの物理的又は生化学的特性に影響を及ぼし得る全ての物質であり得る。生物学的に活性な分子は、ヒト又は他の動物における疾病の診断、治癒緩和、治療若しくは予防を目的とするか、又はヒト若しくは動物の肉体的又は精神的健康を増進するようことを目的とする全ての物質を含み得る。生物学的に活性な分子の例は、核酸、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、アプタマー、ペプチド、タンパク質、酵素、小分子薬物、色素、脂質、細胞、ウィルス、リポソーム、微粒子及びミセルを含むが、これらに限定されるわけではない。本発明で使用するのに適した生物学的に活性な物質のクラスは、抗生物質、殺真菌薬、抗ウィルス薬、抗炎症薬、抗腫瘍薬、心臓血管薬、抗不安薬、ホルモン、増殖因子、ステロイド剤等を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0055】
「治療すること」の意味するところは、疾病、病理学的状態又は疾患の治癒、寛解、静止若しくは予防が得られることを目的とした、患者の医学的管理である。この用語は、積極的な治療、すなわち特に疾病、病理学的状態又は疾患から回復することを目指す治療を含み、原因の治療、すなわち疾病、病理学的状態又は疾患の原因を除去することを目指した治療を含む。更に、本用語は、緩和治療、すなわち疾病、病理学的状態又は疾患の治癒ではなく、むしろ症状の緩和を意図した治療、予防治療、すなわち疾病、病理学的状態又は疾患を予防することを目指した治療、及び補強治療、すなわち疾病、病理学的状態又は疾患からの回復を目指した別の特定の療法を補充するために使用される治療を含む。「治療すること」という語は、対症治療、すなわち疾病の全身症状、病理学的状態又は疾患に対する治療も含む。
【0056】
一実施形態において、本発明の方法は、眼の血管新生疾患を抑制又は治療するための手段を提供する。幾つかの実施形態において、本発明の方法による治療又は抑制の影響を受けやすい眼の血管新生疾患は、虚血性網膜症、虹彩血管新生、眼内血管新生、加齢黄斑変性、角膜血管新生、網膜血管新生、脈絡膜血管新生、早産児網膜症、網膜血管閉塞、糖尿病網膜虚血、糖尿病黄斑浮腫又は増殖糖尿病網膜症を含む。さらに別の実施形態において、本発明の方法は、これを必要としている患者又はこのような疾患を発症していると診断されたか若しくは発症のリスクを有する患者において、乾癬又は関節リウマチを抑制又は治療するための手段を提供する。
【0057】
本明細書で使用される「血管新生」及び「血管形成」という用語は、同一の意味で使用される。血管新生及び血管形成とは、細胞、組織又は臓器中への新たな血管の発生を表す。血管形成の調節は、典型的には、ある種の疾病の状態において変化し、多くの場合、前記疾病と関連した病理学的損傷は、変化した、制御されていない、又は調節されていない血管形成と関連する。持続的で制御されていない血管形成は、上皮細胞による異常な増殖によって特徴付けられるものを含む複数の疾病状態において生じ、血管の漏れ及び透過性など、これらの状態で見られる病理学的損傷の基礎となる。
【0058】
「眼の血管新生疾患」の意味するところは、患者の眼における変化した又は制御されていない血管形成によって特徴付けられる疾患である。典型的な眼の血管新生疾患は、視神経乳頭血管新生、虹彩血管新生、網膜血管新生、脈絡膜血管新生、角膜血管新生、硝子体血管新生、緑内障、パンヌス、翼状片、黄斑浮腫、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、血管性網膜症、網膜変性症、ぶどう膜炎、網膜の炎症性疾患及び増殖硝子体網膜症を含む。
【0059】
アプタマー及びVEGF抗体を含むVEGFの活性又は生成を阻害する多様な抗VEGF薬が利用可能であり、本発明の方法において使用できる。特定の抗VEGF薬は、米国特許第6,168,778号、第6,147,204号、第6,051,698号、第6,011,020号、第5,958,651号、第5,817,785号、第5,811,533号、第5,696,249号、第5,683,867号、第5,670,637号及び第5,475,096号(参照により、その全体が本明細書に組み入れられる)に記載のもの等の、VEGFの核酸リガンドである。ある具体的な抗VEGF薬は、ペガプタニブナトリウムである。
【0060】
生物学的に活性な物質のクラスは、抗生物質、抗ウィルス薬及び抗真菌薬を含む(但し、これらに限定されるわけではない。)抗感染薬、鎮痛薬、抗アレルギー薬、肥満細胞安定化剤、ステロイド性及び非ステロイド性抗炎症薬、鬱血除去薬、アドレナリン作用薬、βアドレナリン遮断薬、αアドレナリン遮断薬、副交感神経刺激薬、コリンエステラーゼ阻害剤、炭酸脱水酵素阻害剤、並びにプロスタグランジンを含むがこれに限定されるわけではない抗緑内障薬、抗酸化剤、栄養補助食品、血管新生阻害剤、代謝拮抗薬、線維素溶解薬、創傷調節薬、神経保護薬、血管新生抑制ステロイド、散瞳薬、毛様体筋麻痺散瞳薬、縮瞳薬、血管収縮薬、血管拡張薬、抗凝固薬、抗癌薬、免疫調節薬、VEGFアンタゴニスト、免疫抑制剤、並びにこれらの組み合わせ及びこれらのプロドラッグを含む。他の生物学的に活性な物質は、色素、脂質、細胞、ウィルス、リポソーム、微粒子及びミセルを含むが、これらに限定されるわけではない。
【0061】
生物学的に活性な物質の例は、核酸、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、アンチセンスオリゴヌクレオチド、RNA、DNA、siRNA、RNAi、アプタマー、抗体、ペプチド、タンパク質、酵素、融合タンパク質、ポルフィリン、及び小分子薬を含むが、これらに限定されるわけではない。抗体の例は、Genentech,San Francisco,CA社製のVEGF抗体であるベバシズマブ(Avastin(登録商標))及びラニズマブ(Lucentis(商標))を含むが、これに限定されるわけではない。アプタマーの例は、ペガプタニブ(Macugen(登録商標);(OSI)Eyetech,Inc.,NewYork,NY)を含むが、これらに限定されるわけではない。ステロイドの例は、酢酸アネコルタブ(Retaane(登録商標);Alcon,Inc.,Fort Worth,TX)を含むが、これに限定されるわけではない。融合タンパク質の例は、VEGF Trap(商標)(Regeneron Pharmaceuticals,Inc.Tarrytown,NY)を含むが、これに限定されるわけではない。RNAiの例は、Direct RNAi(商標)(Alnylam Pharmaceuticals,Cambridge,MA)を含むが、これに限定されるわけではない。
【0062】
本発明の組成物は、血管新生疾患の治療に効果的な濃度をもたらす何れかの適切な手段によって投与され得る。例えば、各組成物は、適切な担体物質と混合され得、一般に、前記組成物の総重量の1ないし95重量%の量で存在する。前記組成物は、眼科的、経口的、非経口的(例、静脈内、筋肉内、皮下的)、直腸内、経皮的、経鼻的、又は吸入投与に適した剤形で提供され得る。従って、前記組成物は、例えば、錠剤、カプセル、ピル、粉末、顆粒、懸濁液、乳剤、溶液、ヒドロゲルを含むゲル、ペースト、軟膏剤、クリーム、硬膏剤、送達デバイス、坐薬、浣腸、注射液、インプラント、スプレー又はエアロゾルの形態であり得る。単一のアンタゴニスト又は2つ若しくはそれ以上のアンタゴニストを含有する医薬組成物は、従来の薬学的慣例に従って製剤され得る(例えば、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,(20th ed.)ed.A.R.Gennaro,2000,Lippincott Williams & Wilkins,Philadelphia,PA.及びEncyclopedia of Pharmaceutical Technology,eds.,J.Swarbrick and J.C.Boylan,1988−2002,Marcel Dekker,New York参照)。
【0063】
本明細書に開示されている生物学的に活性な物質の、医薬として許容されるプロドラッグも本発明に含まれ、本明細書に開示される組成物及び方法において使用できることは理解される。
【0064】
本明細書に開示されている生物学的に活性な物質の、医薬として許容される塩も本発明に含まれ、本明細書に開示される組成物及び方法において使用できることは理解される。
【0065】
本発明のある態様において、抗VEGF薬は、徐放性製剤中に付与される。徐放性微粒子の例は、米国特許仮出願第60/796,071号(その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載される。
【0066】
一実施形態において、徐放性製剤は、ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリド共重合体、又はポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体からなる群から選択される生体適合性、生分解性ポリマーを含む。
【0067】
本発明の製剤は、眼の全ての疾病の治療において使用され得る。本発明の製剤は、抗VEGF薬を特定の眼の組織、例えば網膜又は脈絡膜へ誘導するためにも使用され得る。抗VEGF薬又は生物学的に活性な物質の組み合わせは、治療される疾病、疾患又は状態に基づいて選択される。特定の状態のための抗VEGF薬に加え、他の化合物、例えば、微生物の増殖を予防するための抗生物質が、二次的な効果のために含まれ得る。製剤の量及び投薬頻度は、治療される疾病、疾患又は状態及び使用される生物学的に活性な物質に依存する。当業者は、この決定をなし得る。
【0068】
「オリゴマー」という語は、ポリマーと考えるには小さすぎる分子量を有するポリマーを指す。オリゴマーは、典型的には、数百の分子量を有するが、ポリマーは、典型的には、数千又はそれ以上の分子量を有する。
【0069】
「オリゴヌクレオチド」という語は、自然に存在する塩基、糖及び糖間(主鎖)結合からなるヌクレオチド又はヌクレオシド単量体のオリゴマー又はポリマーを指す。この語には、同様に機能する天然には存在しない単量体又はその一部を含む修飾された又は置換されたオリゴマーも含まれる。置換されたオリゴマーの組み込みは、細胞内取り込みの増強又はヌクレアーゼ抵抗性の亢進などの要因に基づいており、本分野で周知のように選択される。
【0070】
本明細書で使用されるように、「アプタマー」という語は、非共有結合の物理的相互作用を介して、ポリヌクレオチドではない分子に対する選択的な結合親和性を有する全てのポリヌクレオチド又はその塩を意味する。アプタマーは、抗体のエピトープへの、抗体の結合と類似した様式で、リガンドに結合するポリヌクレオチドであり得る。標的分子は、すべての興味深い分子であり得る。ポリヌクレオチドではない分子の例は、タンパク質である。アプタマーは、タンパク質のリガンド結合ドメインへ結合し、これにより天然のリガンドとタンパク質との相互作用を防止するために使用できる。
【0071】
「抗VEGFアプタマー」又は「VEGFアプタマー」は、VEGFへ結合し、VEGFの活性を阻害するポリヌクレオチドアプタマーを包含するものとする。このような抗VDGFアプタマーは、RNAアプタマー、DNAアプタマー又は混合した(つまり、RNA及びDNA)組成物を有するアプタマーであり得る。このようなアプタマーは、公知の方法を使用して同定できる。例えば、試験管内進化法又はSELEX法は、米国特許第5,475,096号及び第5,270,163号(その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載されるように使用できる。抗VEGFアプタマーは、米国特許第6,168,778号、第6,051,698号、第5,859,228号及び第6,426,335号その全ての内容が全体として参照により本明細書に各々組み入れられるに記載されている配列を含む。前記配列は、5’−5’反転されたキャップ及び/又は3’−3’反転されたキャップを含むように修飾できる。(Adamis,A.P.et al.,公開された出願WO2005/014814(その全体の内容が全体として参照により本明細書に組み入れられる。)を参照されたい。)。
【0072】
本発明の適切な抗VEGFアプタマーは、ヌクレオチド配列GAAGAAUUGG(配列番号1)、又はヌクレオチド配列
【0073】
【化13】

を含む。
【0074】
抗VEGFアプタマーの例は、以下のものを含むが、これらに限定されるわけではない。
【0075】
(i)配列CGGAAUCAGUGAAUGCUUAUACAUCCG(米国特許第6,051,698号(その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)に記載される配列番号4)を有する抗VEGFアプタマー。各C、G、A及びUはそれぞれ、天然のヌクレオチドであるシチジン、グアニジン、アデニン及びウリジン、又はこれらに対応する修飾されたヌクレオチドを表し、好ましくは、
(ii)配列
【0076】
【化14】

を有する抗VEGFアプタマー。
【0077】
PEG化されたアプタマーの例は、構造
【0078】
【化15】

を有するペガプタニブ(EYE001;MacI)である。
【0079】
5’−5’キャップ形成された抗VEGFアプタマーの例は、構造
【0080】
【化16】

を有するEYE002(MacII)であり、式中、「G」は、2’−メトキシグアニル酸を表し、「A」は、2’−メトキシアデニル酸を表し、「C」は、2’−フルオロシチジル酸を表し、「U」は、2’−フルオロウリジル酸を表し、「Ar」は、リボアデニル酸を表し、「T」は、デオキシリボチミジル酸を表す(Adamis,A.P.et al.,公開された出願WO2005/014814(その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)参照)。
【0081】
本発明のポリマーは、(ポリエチレングリコール等の)ポリエーテルポリオール、(カルボキシメチルセルロース、他のセルロース誘導体、グリコサミノグリカン、ヒアルロナン及びアルギナート等の)多糖類、ポリエステル、(PLURONIC(登録商標)等の)高分子量ポリオキシアルキレンエーテル、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリアクリラート、ポリオール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ無水物、キトサン、ポリアルデヒド又はポリエーテルを含むが、これらに限定されるわけではない。
【0082】
一実施形態において、本発明のポリマーは、水溶性である。別の実施形態において、前記ポリマーは、非ペプチド性ポリマーである。別の実施形態において、前記ポリマーは、非核酸性ポリマーである。別の実施形態において、前記ポリマーは、高分子量の立体的な基である。
【0083】
一実施形態において、前記ポリマーは、ポリエーテルポリオールである。一実施形態において、前記ポリマーは、ポリアルキレングリコールである。一実施形態において、前記ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)である。前記PEGは、遊離ヒドロキシル基を有し得るか、又はアルキル化され得る。一実施形態において、リンカーへ結合されていない前記PEGの末端は、シクリトール、活性な官能基又は生物学的に活性な化合物は、メトキシ基を有する。末端のメトキシ基を含むPEGは、「mPEG」とも呼ばれ得る。別の実施形態において、ポリアルキレングリコールは、ポリ(プロピレングリコール)(「PPG」)及びその共重合体(例、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体)、それらのターポリマー、それらの混合物等である。
【0084】
「ポリエチレングリコール」、「ポリ(エチレングリコール)」又は「PEG」という語は、一般式H(OCHCHOHの全てのポリマーを指す。一実施形態において、nは、4以上である。一実施形態において、nは、約4から約4000までである。別の実施形態において、nは、約20から約2000までである。一実施形態において、nは、約450である。一実施形態において、PEGは、約800ダルトン(Da)から約100,000Daの分子量を有する。更なる実施形態において、前記ポリエチレングリコールは、20kDa PEG、40kDa PEG、又は80kDa PEGである。
【0085】
ポリエチレングリコールの平均的な相対分子量は、時には接尾の数によって示される。例えば、4000ダルトン(Da)の分子量を有するPEGは、「ポリエチレングリコール4000」と呼ばれ得る。PEGと抱合した生成物は、PEG化された生成物と呼ばれ得る。
【0086】
PEGという語の使用は、包括的であり、排他的であることを意図するものではない。他の関連したポリマーも本発明の実施における使用に適していることを理解されるべきである。PEGという語は、その形態の全てにおけるポリエチレングリコールを含み、二機能性PEG、多分岐PEG、フォーク型PEG、分岐鎖PEG及びペンダント型PEG(すなわち、ポリマー骨格へ懸垂された1つ又はそれ以上の官能基を有するPEG又は関連ポリマー)を含む。
【0087】
PEGは、幾つもの利点を有する。PEGは、典型的には、透明で、無色で、無臭で、水溶性で、熱安定性で、多くの化学物質に対して不活性であり、加水分解せず、又は劣化せず、一般に非毒性である。PEGは、生体適合性であると考えられる。例えば、PEGは、害を生じることなく、生組織又は生臓器と共存できる。より具体的には、PEGは、実質的に非免疫原性である。例えば、PEGは、身体中で免疫反応を生じる傾向がない。身体中で生物学的に活性な物質等の、幾つかの望ましい機能を有する分子へ結合すると、PEGは、前記物質を遮蔽する傾向があり、生物体が前記物質の存在を耐容できるように、全ての免疫反応を低下又は除去することが可能である。PEG抱合体は、実質的な免疫反応を生じない傾向にあるか、又は凝固若しくは他の望ましくない効果を生じない傾向にある。更に、PEG等の可溶性の高分子量の立体的な基の付加は、アプタマーのアンタゴニスト特性を改善し得る(米国特許出願第11/105,279号(その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)参照)。
【0088】
一実施形態において、前記ポリマーは、多糖類である。多糖類の例は、デキストラン、セルロース、キトサン、ポリグルコサミン及びこれらの誘導体を含むが、これらに限定されるわけではない。多糖の還元末端は、抱合におけるシッフ塩基化学反応による分子のアミン基への結合に利用可能である。多糖類は、還元的アミノ化によって、アミン置換型シクリトール又は生物学的に活性な化合物のアミン末端等のアミンへ結合し得る。
【0089】
別の実施形態において、前記ポリマーは、デキストランである。前記デキストランは、直鎖又は分岐鎖デキストランであり得る。別の実施形態において、前記デキストランは、カルボキシメチルデキストラン(CMDex)である。
【0090】
別の実施形態において、前記ポリマーは、セルロース誘導体である。別の実施形態において、前記ポリマーは、カルボキシメチルセルロース(CMC)である。
【0091】
別の実施形態において、前記ポリマーは、ポリアルデヒドである。更なる実施態様において、前記ポリアルデヒド基は、合成により得られ得るか又はオリゴ糖の酸化によって得られ得る。
【0092】
別の実施形態において、前記ポリマーは、アルギナートである。具体的な実施形態において、前記アルギナート基は、ナトリウム又はカルシウム等の陽イオン性対イオンを有する塩として提供される陰イオン性アルギナート基である。
【0093】
別の実施形態において、前記ポリマーは、ポリエステルである。具体的な実施形態において、前記ポリエステル基は、共ブロック重合体のポリエステル基であり得る。
【0094】
別の実施形態において、前記ポリマーは、ポリ乳酸(PLA)又はポリ乳酸コグリコリド(PLGA)である。適切なPLGA基及びPLGA基を抱合するための方法は、J.H.Jeong et al.,Bioconjugate Chemistry 2001, 12, 917−923;J.E.Oh et al.,Journal of Controlled Release 1999, 57, 269−280及びJ.E.Oh et al.,米国特許第6,589,548号に見られ、各々の全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0095】
別の実施形態において、前記ポリマーは、生物学的に活性な分子である。別の実施形態において、前記ポリマーは、核酸、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、アプタマー、ペプチド又はタンパク質である。
【0096】
別の実施形態において、前記ポリマーは、グリコサミノグリカン、ヒアルロナン、ヒアルロン酸(HA)、アルギナート、高分子量ポリオキシアルキレンエーテル、PLURONIC(登録商標)(酸化エチレンと酸化プロピレンとをベースにしたブロック共重合体)、ポリアミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリアクリラート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ無水物、ポリエーテル、ポリカプロラクトン又はポリペプチドである。
【0097】
別の実施形態において、前記ポリマーは、デンドロン(dendron)である。前記デンドロンは、単量体及び表面修飾の何れかの組み合わせから構成され得る。有用な単量体の例は、ポリアミドアミン(PAMAM)を含むが、これに限定されるわけではない。有用な表面修飾の例は、陽イオン性アンモニウム、N−アシル及びN−カルボキシメチル基を含むが、これらに限定されるわけではない。前記デンドロンは、多価陰イオン性、多価陽イオン性、疎水性又は親水性であり得る。ある具体的な実施形態において、前記デンドロンは、約1個ないし約256個の表面修飾基を有する。別の具体的な実施形態において、前記デンドロンは、約4、8、16、32、64又は128個の表面修飾基を有する。
【0098】
「デンドロン」という語は、デンドリマー構造の半分を表す分子を指す。デンドロンは、典型的には、デンドリマーコアの半分の上に、又はデンドリマーの構築後のデンドリマーコアの開裂によって構築される。デンドロンは、単量体及び表面修飾の何れかの組み合わせから構成され得る。有用な単量体の例は、ポリアミドアミン(PAMAM)を含むが、これに限定されるわけではない。有用な表面修飾の例は、陽イオン性アンモニウム修飾、N−アシル修飾及びN−カルボキシメチル修飾を含むが、これらに限定されるわけではない。これに替わる表面修飾によって、広範囲の様々な特性が可能になる。例えば、デンドロンは、多価陰イオン性、多価陽イオン性、疎水性又は親水性であり得る。デンドロンは、それにより単量体の正確な数及び表面修飾基がデンドロンの発生によって決定され得るように、合理的にオーダーメイドされ得る。(G1、G2、G3、G4、G5及びG6は、それぞれ4、8、16、32、64及び128個の基を有する)。デンドロン及びデンドリマー抱合技術の例は、本明細書に組み入れられる米国特許第5,714,166号並びに米国特許出願公報第2005/0009988号及び第2002/0123609号(その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)に見られる。1:1の化学量論でのデンドロン−生物学的に活性な分子の抱合体の構築は、シスタミンコアを含有するデンドリマー中のジスルフィドの還元によって達成され得る。この還元は、単一のチオール反応基を含有するように、修飾されている全ての生物学的に活性な分子へ結合され得る単一のオルソゴナルスルフィドリル(sulphydryl)官能性の形成をもたらす。これは、アミンを含有する生物学的に活性な分子を、一方の末端にあるアミン反応基及びもう一方の末端にあるチオール反応基を含有する二機能性リンカーと反応させることによって達成され得る。ジスルフィドを含有する樹状ポリマー及び樹状ポリマー抱合体の例は、本明細書に組み入れられる米国特許第6,020,457号(その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)に見られる。溶液中でミセルを形成するポリオールを有する星状のポリマー化合物の例は、米国特許出願公報第2004/198641号(その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)に見られる。本発明の一実施形態において、シクリトール部分自体は、デンドロンのためのコアとして機能する。
【0099】
別の実施態様において、前記可溶性の高分子量の立体的な基は、ウシ血清アルブミン(BSA)である。BSA上に遊離チオールが存在するので、一方の末端にチオール反応基を、もう一方の末端にアミン反応基を含有する二機能性リンカーを使用することによって、アミンを含有するアプタマーをBSAへ抱合することが可能になる。
【0100】
前記ポリマー主鎖は、直鎖又は分岐鎖であり得る。分岐鎖ポリマー主鎖は一般に、本分野で公知である。典型的には、分岐鎖ポリマーは、中央分岐コア部分及び前記中央分岐コアへ連結された複数の直鎖ポリマー鎖を有する。PEGは、グリセロール、グリセロールオリゴマー、ペンタエリスリトール及びソルビトール等の多様なポリオールへ酸化エチレンを添加することによって調製できる分岐鎖形態で普遍的に使用される。前記中央分岐部分は、リジン等、幾つかのアミノ酸から誘導することも可能である。分岐鎖ポリ(エチレングリコール)は、W(−PEG−OH)としての一般的な形態で表され得、式中Wは、グリセロール、グリセロールオリゴマー又はペンタエリスリトール等の中央部分から誘導され、xは、分岐数を表す。
【0101】
当業者は、ポリマーに関する前述のリストが、決して排他的なものではなく、例示に過ぎず、前述の質を有するポリマー材料が全て想定されることを認識する。
【0102】
本発明のポリマーは、約800Daから約3,000,000Daまでの分子量を有し得る。一実施形態において、前記ポリマーは、約20キロダルトン(kDa)から約1000kDaの分子量を有する。別の実施形態において、前記ポリマーは、約5kDaから約100kDaまでの分子量を有する。ある具体的な実施形態において、前記ポリマーは約20kDaの分子量を有する。別の具体的な実施形態において、前記ポリマーは約40kDaの分子量を有する。別の具体的な実施形態において、前記ポリマーは約80kDaの分子量を有する。
【0103】
本発明のポリマーは、核酸へ抱合され得る。前記核酸の5’末端を通じて、前記核酸の3’末端を通じて、又は5’末端と3’末端との間の核酸配列に沿った全ての位置を通じて、前記ポリマーが核酸へ抱合され得る。前記ポリマーへ接合するのに適した内部核酸配列の位置(すなわち、5’末端でも3’末端でもない位置)の例は、前記核酸配列の塩基上の環外アミノ基、ピリミジンヌクレオチドの5位、プリンヌクレオチドの8位、リン酸塩のヒドロキシル基、又はリボース基のヒドロキシル基を含む。
【0104】
末端活性化基又はシクリトールは、スペーサー部分も含み得る。前記スペーサー部分は、酸化ポリアルキレン近く又は前記末端活性化基近くに配置できる。前記スペーサー部分は、最大18個の炭素原子を含有し、18個の炭素原子又は更なるポリマー鎖でさえ包含するヘテロアルキル基、アルコキシ基又はアルキル基であり得る。前記スペーサー部分は、標準的な合成技術を使用して付加できる。
【0105】
本発明の具体的な化合物は、立体異性体(例えば、ジアステレオマー及び鏡像異性体)として得られ得、本発明が、(純粋な異性体及びそのラセミ混合物を含む)開示された化合物の全ての分子種形態及びその混合物を含むことが理解される。
【0106】
本発明の具体的な化合物が、医薬として許容される様々な塩として得られ得ることは理解される。「医薬として許容される塩」という語は、本発明の化合物の非毒性酸付加塩及びアルカリ土類金属塩を指す。前記塩は、このような化合物の最終的な単離及び精製の間に原位置で、又は遊離塩基又は酸の官能基を、例えば適切な有機酸又は塩基と反応させることによって個別に調製できる。代表的な酸付加塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、二硫酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、メシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、グルコヘプトン酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリル硫酸塩等を含むが、これらに限定されるわけではない。代表的なアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は、ナトリウム塩、カルシウム塩、カリウム塩及びマグネシウム塩を含むが、これらに限定されるわけではない。
【0107】
本発明は、ポリマーと、生物学的に活性な分子と、及び前記ポリマーを前記生物学的に活性な分子へ連結するシクリトールとを含む抱合体を形成する方法にも関する。
【0108】
イノシトールは、PEG鎖を有する位置が選択的に官能化され得るように調製され得る。
【0109】
コンデュリトールは、イノシトール断片への前駆体として使用され得る。コンデュリトールの合成は、Balci,Pure App.Chem.1997, 69, 97−104、Sutbeyaz et al.,J.Chem.Soc.Chem.Commun.1988, 1330−1331(その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。)及び本明細書中の参考文献に記載される。
【0110】
イノシトールによって連結されたPEG−VEGFアプタマー抱合体1の調製の例が、図1及び実施例3に示されている。20kDaのmPEGの活性化されたエステル誘導体に対する2の結合を、有機溶媒(DMF/DCM 2:1)中で実施し、望ましい40kDa抱合体を得た。これに代わる水性緩衝液を含有する条件が、場合によって使用される。2工程、1容器の1の合成は、化合物3を過剰量のテトラフルオロホウ酸N,N,N’,N’−テトラメチル−O−(N−スクシンイミジル)ウロニウム(TSU)によって原位置で活性化した後、アプタマーを付加することにより達成された。
【0111】
イノシトールリンカー2及びイノシトールにより活性化されたポリマー3の調製が、図2及び実施例1ないし2に示されている。ミオイノシトール−1,3,5−オルトフォルマートのアルキル化は、化合物5を与える。5に対称性の要素が存在することによって、NMRによる位置化学反応の確認が簡略化され、最終的には、光学的に活性なAPIに抱合した際に、ジアステレオマー産物の形成が排除される。シリル保護基の5からの除去によって、中間体6が得られた。これに代わる求電子試薬を使用し得る。次に、7の連続的な脱保護に際して、望ましいリンカー2が、調製される。これは、0.1MメタノールHCl中でまず15分間還流した後、0.4Mメタノールヒドラジン中で60分間還流することによって達成された。
【0112】
イノシトールにより連結されたPEG−VEGFアプタマー抱合体10の調製例が、図3並びに実施例4及び5に示されている。
【0113】
VEGF−R1(Flt−1)へのVEGFの結合を阻害する本発明のVEGFアプタマー抱合体の能力を測定するための受容体結合アッセイが、実施例6に記載されている。アッセイの結果は、実施例7に示されている。VEGF−R1(Flt−1)へのVEGFの結合を阻害する、イノシトールにより連結されたVEGFアプタマー抱合体1の能力を、ペガプタニブ(MacI)及び5’−5’キャップ形成された抗VEGFアプタマーであるEYE002(MacII)の能力と比較した。前記イノシトールにより連結されたPEG−VEGFアプタマー抱合体は、ペガプタニブの活性と区別できない活性を示した。
【0114】
実施例
以下の例は、本発明の具体的な有用な実施形態及び態様を説明する役割を果たし、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。同様の結果を得るために、別の材料及び方法を利用できる。
【実施例1】
【0115】
ミオイノシトールリンカー(2)の合成
Carbohydrate Research 2000, 325, 313−320に記載されている手法を使用して、市販のミオイノシトール−1,3,5−オルトフォルマートから化合物2を調製した。
【0116】
0℃の無水N−メチルピロリドン75mL中の4(2.5g、8.2mmol)の撹拌している溶液へ、水素化ナトリウム(1.6g、ミネラルオイル中の60%分散液41mmol)を添加した。氷槽を直ちに除去し、溶液を30分撹拌し、この時点でN−(3−ブロモプロピル)−フタルイミド(11.0g、41mmol)及びヨウ化テトラブチルアンモニウム(3.0g、8.2mmol)を添加した。アルゴン雰囲気下、室温で、反応物を18時間撹拌した後、氷冷水10mLを滴下して添加することによって急冷した。得られた溶液をクロロホルム(3×15mL)で抽出し、有機層をプールし、真空下で濃縮した。Biotage Flash+クロマトグラフィーシステムにおいて7:3のヘキサン/酢酸エチルを使用することによって、フラッシュシリカゲルから粗材料を溶出した。化合物5、4.0gを単離した(収率72%)。
【0117】
テトラヒドロフラン(THF)中のフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)(500μL、1M)の溶液を、1,4−ジオキサン2mL中の5(200mg、295μmol)の溶液へ添加した。この溶液を室温で16時間撹拌した後、真空濃縮した。2:3のヘキサン/酢酸エチルを使用してフラッシュシリカゲルから溶出することによって、上記から得られた油を精製すると、化合物6、油52mg(収率31%)が得られた。
【0118】
水素化ナトリウム(65mg、ミネラルオイル中の60%分散液1.61mmol)を、0℃の無水DMF4mL中の6(91.0mg、161μmol)の撹拌溶液へ添加した。氷槽を即時除去し、溶液を30分間撹拌し、この時点で、8−ブロモオクタン酸(144mg、645μmol)を添加した。アルゴン雰囲気下、室温で、反応物を24時間撹拌した後、0℃で水5mLを滴下して添加することによって急冷した。得られた溶液のpHを1M HClで4に調整し、前記溶液をクロロホルム(4×4mL)で抽出した。有機層をプールし、真空濃縮した。1:1のヘキサン/酢酸エチル(500mL)を使用した後、1:2のヘキサン/酢酸エチル(500mL)を使用した後、100%酢酸エチル(750mL)を使用して、フラッシュシリカゲルから粗材料を溶出した。純粋な材料の単離した収量は、35mg(収率31%)であった。
メタノール性の0.1M HCl5mL中に、粗生成物7を溶解し、15分間還流した。得られた溶液を真空濃縮し、メタノール5mLで3回同時蒸発させた。得られた残渣をメタノール40mL中に再度溶解した後、ヒドラジン503μLを添加した。この溶液を1時間還流した。次に、留出物を回収することによって、前記溶液をもとの容積の半分に濃縮した。得られた溶液を冷却した後、真空濃縮した。C−18HPLCカラムを使用するクロマトグラフィーに、上述の得られた材料を供した(Waters Deltapak、15μm、300、18.5分)。
【実施例2】
【0119】
活性型PEG化合物(3)の合成
無水ジメチルホルムアミド(DMF)2mL中の化合物2(750μg、1.7μmol)の溶液へ、無水ジクロロメタン(DCM)1mL中のmPEG−SPA(75mg、3.7μmol、Nektar Therapeutics LN PT−01E−16)を添加した後、ピリジン100μLを添加した。アルゴン雰囲気下、室温で28時間、この溶液を撹拌した後、ジエチルエーテル(EtO)8mLを添加して、全てのPEG種を沈殿させた。遠心分離(1000×gで5分間)によってPEG沈殿物を堆積させ、容器を傾けて溶液を採取した。得られたペレットをDCM4mL中に再度溶解し、EtO36mLで再度沈殿させ、遠心分離し(1000×gで5分間)、PEG種をペレットにした。前記PEG種を真空下で更に乾燥させた後、SEC(Shodex KW−804、溶離液として均一濃度の100%PBS)で精製した。40kDa画分を白色粉末に凍結乾燥し、MALDI−MSによって分析した。
【実施例3】
【0120】
イノシトールにより連結されたPEG−VEGFアプタマー抱合体(1)の合成
トルエンで同時蒸発させることによって化合物3(2.1mg、52.9mmol)を乾燥させた後、DMSO420μL中に溶解した。この溶液へ、アルゴン雰囲気下で撹拌しながら、TSU溶液(DMSO中の1mg/mL、1.1モル当量)16μLを添加した後、トリエチルアミン(TEA)溶液(DMSO中の8.9μL/mL、2.0当量)1μLを添加し、反応物を室温で1時間撹拌した。アプタマー(1mg)を、前記溶液へ凍結乾燥粉末として添加し、反応物を更に1時間撹拌した。この反応混合物へ、DMSO100μL中に溶解したTSU1mgを10μLの一定分量として、材料を全て添加するまで10分ごとに添加した。TEA5μLをTSU添加の完了時に添加した。
【0121】
「RPHPLC 1mLmin PDA」法(溶媒A:10mM酢酸アンモニウム、溶媒B:アセトニトリル)を使用する分析用HPLC(C−18、Hamilton PRP−1)を使用して、化合物1を精製した。2回の100μL注入を同一カラムで実施した。各試行において25.6分で溶出された材料をプールし、濃縮した後、白色粉末へ凍結乾燥した。この粉末をPBS50μL中に再度溶解し、Beerの法則の計算(260nm)によってアプタマーの濃度を測定し、HPLCにおけるペガプタニブ注入の標準曲線に対して確認した。
【実施例4】
【0122】
活性化されたミオイノシトールオルトフォルマートリンカー(8)の合成
0℃のN−メチルピロリジノン20mL中のミオイノシトール−1,3,5−オルトギ酸塩(1.00g、5.26mmol)の撹拌溶液へ、水素化ナトリウム(1.05g、26.3mmol)を添加した。溶液を0℃で30分間撹拌した後、ヨウ化テトラブチルアンモニウム(10.0mg)及び臭化アリル(3.56mL、42.1mmol)を前記溶液へ添加した。前記溶液を0℃の氷槽中に保ち、その後、氷が融解するにつれて、ゆっくり加温した。大気温で14時間、前記溶液を撹拌し続けた後、脱イオン水(20mL)の滴下による添加によって急冷した。反応混合物をクロロホルム(3×20mL)で抽出し、有機層を組み合わせ、生成物を約0.1mmHg及び30℃で濃縮した。ヘキサン及び酢酸エチル(85:15)の2成分混合物を使用して、シリカゲル上でのクロマトグラフィー(Biotage 40Sフラッシュカラム)に供し、溶出した。ヘキサン及び酢酸エチル(85:15)を使用して溶出する、Rf0.3でのシリカTLC上で、望ましい生成物を観察した。得られたジアリル化合物1.12gを回収した(3.62mmol、収率69%)。1H−NMR及び13C−NMR。ESI−MS(陰イオンモード)C16H22O6に関する算出値310.14、実測値311.3(H+付加物)及び333.2(Na+付加物)。
【0123】
1,4−ジオキサン15mL中のジアリル化合物(130mg、419μmol)の撹拌溶液へ、カテコールボラン(2mL)を添加した。溶液を1時間還流しながら撹拌した後、0℃でアルカリ性過酸化水素溶液(1M NaOHの5mL及び30%H2O2の5mL)を滴下により添加することによって急冷した。反応物を室温に加温し、14時間撹拌した後、クロロホルム(3×25mL)で抽出し、有機層を組み合わせ、生成物を真空濃縮した。ヘキサン及び酢酸エチル(1:2)の2成分混合物を使用するシリカゲル上でのクロマトグラフィー(Biotage25+フラッシュカラム)に未精製油を供し、溶出した。ヘキサン及び酢酸エチル(1:2)を使用して溶出する、Rf0.22でのシリカTLC上で、望ましい生成物を観察した。得られたホウ酸塩化合物38.8mgを回収した。ESI−MS(陰イオンモード)C1625に関する算出値371.20、実測値371.23(H+付加物)。
【0124】
脱イオン水2mL及び1M NaOH2mL中のホウ酸塩化合物(2mg)の撹拌溶液へ、酸化銀(10mg)を添加した。次に、アセトニトリル(4mL)を添加し、溶液を室温で2時間撹拌した。次に、溶液をろ紙でろ過して、ガラスフラスコの壁上に鏡として沈殿しなかった全ての銀付加物を除去した。ろ液を濃縮し、MSにより分析した。ESI−MS(陰イオンモード)C162212に関する算出値406.11、実測値430.01(Na+付加物)。
【実施例5】
【0125】
イノシトールにより連結されたPEG−VEGFアプタマー抱合体(10)の合成
MES緩衝液(2.5mL、0.14M、pH5.5)中の8(25μmol)の撹拌溶液へ、アセトニトリル(2.5mL)中の20kDa mPEG−NH2(1.0g、50μmol)及び固形EDC(95.8mg、500μmol)を添加した。溶液を室温で14時間撹拌した後、ジエチルエーテル(90mL)を添加した。得られた沈殿物を単離し、ブフナー漏斗上で乾燥させた。MALDI−MSは、この材料が、20kDaと40kDaの種の混合物であることを示した(THAP−NH4Citrateマトリクス)。PEG種のこの混合物を無水DMSO(10mL)中に溶解し、DCC(100mg)を添加した。アルゴン雰囲気下、室温で溶液を14時間撹拌した。ジエチルエーテル(90mL)を添加することによって、PEG種を再度沈殿させ、ブフナー漏斗で単離した。PEG付加物をアセトニトリル(8mL)中に溶解した後、ホウ酸塩緩衝液(6mL、100mM、pH8.5)中のアミノ末端を含有する抗VEGFアプタマー(250mg)の溶液へ添加した後、14時間振盪した。得られた溶液を濃縮した後、脱イオン水中に9mLに希釈した。この材料を逆相HPLCによって分析すると、生成物とペガプタニブ標準物質の同時溶出が示された。C−18HPLCからの複数の溶出を用いた化合物9の精製によって、ペガプタニブと同時溶出する50kDaの生成物8.5mgが得られた。
【0126】
化合物9を、メタノール性0.1M HCl中に溶解し、還流する。得られた溶液を真空濃縮し、メタノール5mLで同時蒸発させる。得られた材料10をC−18HPLCカラム(Waters Deltapak、15μm、300)上でのクロマトグラフィーに供する。
【実施例6】
【0127】
受容体結合アッセイ
受容体プレートコーティング
結合実験の各セットに関して、96ウェルのIsoplate Plateの1行(12ウェル)を使用する。前記12ウェルの各々を、まず、4℃のPBS100マイクロリットル(μl)中の抗ヒトIgG1Fc断片特異的抗体の2ピコモル(300ナノグラム(ng))でコーティングする。翌日、各ウェルに結合する更なるタンパク質を、室温でSuper Blockブロッキング緩衝液の300μlで、各回5分で3回洗浄することによってブロックする。次に、各ウェルを室温で2回、結合緩衝液(1mM塩化カルシウム、1mM塩化マグネシウム、0.01%HSA、pH7.4を有するPBS)300μLで洗浄する。KDR/Fcについては、結合緩衝液100μL中のキメラ受容体0.25pmol(85ng)を最初の11ウェルへ添加するのに対し、12番目のウェルには、バックグラウンド対照ウェルとしてヒトICAM−1/Fcキメラタンパク質0.5ピコモル(118ng)を与える。Flt−1/Fcについては、各結合緩衝液100μL中のキメラ受容体0.125pmol(30.8ng)を最初の11ウェルへ添加するのに対し、バックグラウンド対照(12番)には、ヒトICAM−1/Fcキメラタンパク質0.5ピコモル(118ng)を与える。ニューロピリン−1/Fcについては、結合緩衝液100μL中のキメラ受容体の0.2pmol(48ng)を、12ウェル全てへ添加する。各ウェル中に固定された抗ヒトIgGFc断片特異的抗体に、室温で、2ないし3時間結合させることによって、前記キメラ受容体及びヒトICAM−1/Fcタンパク質をウェル上に捕捉する。遊離キメラ受容体及びヒトICAM−1/Fcタンパク質を除去するため、結合緩衝液300μLを使用して各ウェルを室温で洗浄する。
【0128】
125I−VEGF165−ペガプタニブ結合混合物の調製
1μM(又は2μM)から0.512ピコモラー(pM)(又は1.024pM)までの範囲のペガプタニブ(チューブ1番ないし10番)の10個の5倍希釈物の1セットを各々、それぞれ計100μLの最終容積の、焦げつかない加工の1.5mL微量遠心チューブ中の結合緩衝液(1mM塩化カルシウム、1mM塩化マグネシウム、0.01%HSA、pH7.4を有するPBS)中の125I−VEGF165の約0.01μCiと混合する。チューブ11番及び12番については、125I−VEGF165の0.01μCiのみを、ペガプタニブを全く加えずに添加し、それぞれ陽性対照及びバックグラウンド対照とする。12本の全てのチューブは、(KDR及びFlt−1については)37℃で、又は(ニューロピリン−1については)室温で、15ないし20分間温置し、ペガプタニブをVEGFへ結合させて平衡に到達させる。次に、各チューブから得た100μLの結合混合物を、受容体がコーティングされたIsoplate上の対応するウェルへ適用する。前記プレートを(KDR及びFlt−1については)37℃で、又は(ニューロピリン−1については)室温で、2ないし3時間温置し、結合を平衡化する。前記プレートを室温で、(KDR及びニューロピリン−1に関しては)0.05%トゥイーン20入りの、又は(Fltに関しては)0.05%トゥイーン20なしの、結合緩衝液300μL/ウェルで4回洗浄する。プレートを約10分間空気乾燥し、シンチレーション液約200μLを各ウェルへ添加する。各ウェルの放射能をシンチレーション計数により測定する。実験の陰性対照については、ペガプタニブに関する上述の全工程後に、結合アッセイにおいてペガプタニブを置換するために、同一のモル濃度でポリエチレングリコール分子量40,000(40kDa PEG)を使用する。
【0129】
VEGF受容体結合の50%阻害(IC50)のための効果的な濃度の測定
前記ウェル(1番ないし11番)上に保持されたカウント数からバックグラウンド(ウェル12番)を差し引いたものを、最大結合(陽性対照、ウェル11番)からバックグラウンド(ウェル12番)を差し引いたものによって除するものとして、前記ウェルにおける125I−VEGF165:受容体結合比を計算する。異なるペガプタニブ濃度で得られた結合比を、GraphPad PRISMプログラム(1部位競合)による非線形回帰を使用することによって分析し、得られた曲線を使用して、VEGF165への受容体結合の阻害におけるペガプタニブの最大半量阻害(IC50)を決定する。PEGを使用する実験の陰性対照からのデータを、同一方法によって分析する。
【実施例7】
【0130】
VEGF−R1(Flt−1)の比較阻害
VEGF−R1(Flt−1)へのVEGF結合を阻害するシクリトール連結されたVEGFアプタマー抱合体の能力を、リジン連結されたVEGFアプタマー抱合体及び非立体的に増強されたVEGFアプタマー抱合体の能力と比較した。
【0131】
実施例6に記載されているアッセイを使用して、化合物(1)のFlt−1受容体結合活性を測定した。各試料に対して、%阻害、IC50、IC50範囲及びRを測定した。イノシトール連結されたVEGFアプタマー抱合体(1)のアッセイを二つ組みで実施し、「イノシトール抱合体(1)−1」及び「イノシトール抱合体(1)−2」と標識した。結果が、表1及び図3に示されている。「イノシトール抱合体(1)−1」及び「イノシトール抱合体(1)−2」は、それぞれ、0.5890nM及び0.8259nMのIC50を有する。MacIは、0.4569nMのIC50を有する。MacIIは、0.375nMのIC50を有する。結果は、イノシトール連結されたVEGFアプタマー抱合体(1)がリジン連結されたVEGFアプタマー抱合体であるペガプタニブ(EYE−001、MacI)と同程度に効果的であるのに対して、イノシトール連結及びリジン連結されたVEGFアプタマー抱合体の両者が、EYE−002(MacII)等の増強されていないVEGFアプタマーと比べて、VEGF結合を阻害する上で非常により効果的であることを示す。
【0132】
【表1】

【0133】
参照による組み込み
本明細書に参照される特許及び科学文献は、当業者に利用可能な知識を確立する。本明細書で引用される全ての特許、特許出願及び公開された参考文献は、その全体が、参照により、本明細書に組み込まれる。
【0134】
均等物
当業者は、定型的な実験操作を使用して、本明細書に具体的に記載されている具体的な実施形態に対する多数の均等物を認識又は解明できる。このような均等物は、上述の特許請求の範囲に包含されるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】図1は、2つのPEG部分とイノシトールリンカーとを含むアプタマー抱合体の合成に対する模式的な表示である。
【図2】図2は、三機能性イノシトール結合剤の合成に関する模式的な表示である。
【図3】図3は、2つのPEG部分とイノシトールリンカーとを含むアプタマー抱合体の合成に関する模式的な表示である。
【図4】図4は、イノシトールリンカー(化合物1)と、ペガプタニブ(MacI)と、5’−5’キャップ形成された抗VEGFアプタマー(MacII)とを有するペグ化したVEGFアンタゴニストアプタマーを使用するVEGFR−1(Flt−1)阻害アッセイに関する結果のグラフ表示である。
【図5】図5は、イノシトールリンカーを有するPEG化されたVEGFアンタゴニストアプタマー(化合物1)の化学構造に関する模式的な表示である。
【図6】図6は、イノシトールリンカーを有するPEG化されたVEGFアンタゴニストアプタマー(化合物10)の化学構造に関する模式的な表示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーと、生物学的に活性な分子と、及び前記ポリマーを前記生物学的に活性な分子へ連結するシクリトール基とを含む、抱合体。
【請求項2】
シクリトール基が、6員のシクロアルカン又は5員のシクロアルカンである、請求項1に記載の抱合体。
【請求項3】
シクリトール基が、トリ、テトラ、ペンタ及びヘキサヒドロキシシクロヘキサンからなる群から選択される、請求項1に記載の抱合体。
【請求項4】
シクリトール基が、アルキル、アミノ、チオ、カルボニル及びハロゲン置換基からなる群から選択される置換基を含む、請求項1に記載の抱合体。
【請求項5】
シクリトール基が、イノシトールである、請求項1に記載の抱合体。
【請求項6】
イノシトールが、ミオイノシトール、D−キロイノシトール、L−キロイノシトール、ムコイノシトール、シロ(Scyllo)イノシトール、アロイノシトール、エピイノシトール、シスイノシトール及びネオイノシトールからなる群から選択される、請求項5に記載の抱合体。
【請求項7】
生物学的に活性な分子が、核酸、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、アプタマー、ペプチド、タンパク質、酵素、小分子薬物、色素、脂質、細胞、ウィルス、リポソーム、微粒子及びミセルからなる群から選択される、請求項1に記載の抱合体。
【請求項8】
生物学的に活性な分子が、オリゴヌクレオチドである、請求項1に記載の抱合体。
【請求項9】
生物学的に活性な分子が、アプタマーである、請求項1に記載の抱合体。
【請求項10】
生物学的に活性な分子が、抗VEGFアプタマーである、請求項1に記載の抱合体。
【請求項11】
生物学的に活性な分子が、配列
【化1】

を有する抗VEGFアプタマーである、請求項1に記載の抱合体。
【請求項12】
ポリマーが水溶性である、請求項1に記載の抱合体。
【請求項13】
ポリマーが非ペプチド性ポリマーである、請求項1に記載の抱合体。
【請求項14】
ポリマーが非核酸ポリマーである、請求項1に記載の抱合体。
【請求項15】
ポリマーが高分子量の立体的な基である、請求項1に記載の抱合体。
【請求項16】
ポリマーが、ポリエーテルポリオール、ポリエチレングリコール、多糖類、カルボキシメチルセルロース、セルロース誘導体、グリコサミノグリカン、ヒアルロナン、アルギナート、ポリエステル、高分子量ポリオキシアルキレンエーテル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリシロキサン、ポリアクリラート、ポリオール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ無水物、キトサン、ポリアルデヒド及びポリエーテルからなる群から選択される、請求項1に記載の抱合体。
【請求項17】
ポリマーが、約800Daから約100,000Daの分子量を有する、請求項1に記載の抱合体。
【請求項18】
ポリマーが、約20kDa、40kDa及び80kDaからなる群から選択される分子量を有する、請求項1に記載の抱合体。
【請求項19】
式:
【化2】

(式中、
が、生物学的に活性な部分又は活性な官能基であり;
1a、R1b、R1c、R1d及びR1eが、−OH、−NH及び−X−L−Aからなる群から各々独立に選択され;
が、水素、ポリマー、生物学的に活性な部分及び活性な官能基からなる群から選択され;
及びLが、結合及びスペーサー部分からなる群から各々独立に選択され;
及びXが、−O−、−S−及び−NR−からなる群から各々独立に選択され;並びに;
が、水素及び低級アルキル基からなる群から各々独立に選択される。)
を有する化合物及び医薬として許容されるそれらの塩。
【請求項20】
が生物学的に活性な部分である、請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
が活性な官能基である、請求項19に記載の化合物。
【請求項22】
活性な官能基が求電子官能基である、請求項19に記載の化合物。
【請求項23】
活性な官能基が、カルボン酸、カルボン酸ハロゲン化物、カルボン酸塩化物、ハロゲン、N−スクシンイミドカルボナート、スクシンイミジルエステル、1−ベンゾトリアゾリルカルボナートエステル、N−ヒドロキシマレイミジルエステル、ビニルスルホン、アザラクトン、環状アミドチオンカルボニル、イミダゾールカルボニル、イソシアナート及びイソチオシアナートからなる群から選択される求電子官能基である、請求項19に記載の化合物。
【請求項24】
1a、R1b、R1c、R1d及びR1eの少なくとも1つが、−X−L−Aである、請求項19に記載の化合物。
【請求項25】
1a、R1b、R1c、R1d及びR1eの少なくとも2つが、各々独立に−X−L−Aである、請求項19に記載の化合物。
【請求項26】
1a、R1b、R1c、R1d及びR1eの少なくとも3つが、各々独立に−X−L−Aである、請求項19に記載の化合物。
【請求項27】
1a、R1b、R1c、R1d及びR1eの少なくとも4つが、各々独立に−X−L−Aである、請求項19に記載の化合物。
【請求項28】
1a、R1b、R1c、R1d及びR1eの各々が独立に−X−L−Aである、請求項19に記載の化合物。
【請求項29】
及びLが、各々独立に、式:
−(CH−(X−(C(X))−(X−(CH
(nは、0から10であり、
mは、0又は1であり、
pは、0又は1であり、
qは、0又は1であり、及び
rは、0から10である。)
によって表されるスペーサー部分である、請求項19に記載の化合物。
【請求項30】
及びLが、各々独立に、
−(CH−(C(X))−;
−(C(X))−(CH−;
−(C(X))−;及び
−(CH−;
(nは、0ないし10であり;
pは、0又は1であり;及び
rは、0ないし10である。)
からなる群から選択される式によって表されるスペーサー部分である、請求項19に記載の化合物。
【請求項31】
、X、X、X及びXが、各々独立に、−O−及び−NH−からなる群から選択される、請求項19に記載の化合物。
【請求項32】
、X、X、X及びXが、各々−O−である、請求項19に記載の化合物。
【請求項33】
【化3】

(Dは、生物学的に活性な部分であり;
POLYは、ポリマーであり;
、X及びXは、各々独立に、−O−、−S−及び−NR−からなる群から選択され;
は、水素及び低級アルキル基からなる群から選択され;
mは、0又は1であり;及び
nは、0から10までの整数である。)
からなる群から選択される式を有する化合物及び医薬として許容されるその塩。
【請求項34】
Dが核酸である、請求項33に記載の化合物。
【請求項35】
Dがアプタマーである、請求項33に記載の化合物。
【請求項36】
Dが抗VEGFアプタマーである、請求項33に記載の化合物。
【請求項37】
Dが、配列
【化4】

を有する抗VEGFアプタマーである、請求項33に記載の化合物。
【請求項38】
【化5】


(Gは、脱離基であり;
POLYは、ポリマーであり;
、X及びXは、各々独立に、−O−、−S−及び−NR−からなる群から選択され;
は、水素及び低級アルキル基からなる群から選択され;
mは、0又は1であり;並びに
nは、0から10までの整数である。)
からなる群から選択される式を有する化合物及び医薬として許容されるその塩。
【請求項39】
Gが、ハロゲン化物、塩化物、N−スクシンイミド、1−ベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシマレイミド、アザラクトン、環状アミドチオン及びイミダゾールからなる群から選択される脱離基である、請求項38に記載の化合物。
【請求項40】
構造:
【化6】

(式中、Zは、約450である。)
を有する化合物及び医薬として許容されるその塩。
【請求項41】
構造:
【化7】

(Zは、約450である。)
を有する化合物及び医薬として許容されるその塩。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−510182(P2009−510182A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524213(P2008−524213)
【出願日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/029503
【国際公開番号】WO2007/016380
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(506064913)(オーエスアイ)アイテツク・インコーポレーテツド (10)
【Fターム(参考)】