説明

シクロジペプチド合成酵素(CDS)及び線状ジペプチドの合成におけるそれらの使用

線状ジペプチドの合成におけるCDSの使用、並びに対応するポリヌクレオチドを用いる線状ジペプチド、特にPhe-Leu、Leu-Phe、Phe-Phe、Phe-Tyr、Tyr-Phe、Leu-Leu、Leu-Tyr、Tyr-Leu、Phe-Met、Met-Phe、Leu-Met、Met-Leu、Tyr-Met、Met-Tyr、Met-Met、Tyr-Tyr、Ile-Met、Met-Ile、Leu-Ile、Ile-Leuのインビボ及びインビトロ合成のためのその応用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状ジペプチド(本明細書では、直鎖ジペプチドともいう)の合成におけるCDSの使用、及び対応するポリヌクレオチドを用いる線状ジペプチド、特にPhe-Leu、Leu-Phe、Phe-Phe、Phe-Tyr、Tyr-Phe、Leu-Leu、Leu-Tyr、Tyr-Leu、Phe-Met、Met-Phe、Leu-Met、Met-Leu、Tyr-Met、Met-Tyr、Met-Met、Tyr-Tyr、Ile-Met、Met-Ile、Leu-Ile、Ile-Leuのインビボ及びインビトロでの合成のためのその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
製薬、ヘルスケア製品、食品サプリメント、化粧品などの種々の分野におけるいくつかの線状ジペプチド及びそれらの誘導体の有用な特性が、既に示されている。
例えば、Val-Tyr及びIle-Tyrジペプチドは、アンジオテンシン変換酵素(ACE)活性を阻害することが示されており(Maruyamaら,J.Jpn.Soc.Food Sci.Technol.2003,50,310〜315)、また、これらは、インビボ抗高血圧効果も有する(Tokunagaら,J.Jpn.Soc.Food Sci.Technol.2003,50,457〜462;Matsuiら,Clin.Exp.Pharmacol.Physiol.,2003,4,262〜265)。多くのその他のジペプチド(例えばVal-Trp、Val-Phe、Ile-Trp、Ala-Tyr)も、ACE阻害製品として知られている(Das及びSoffer,J.Biol.Chem.,1975,250,6762〜6768;Cheungら,J.Biol.Chem.,1980,255,401〜407)。
【0003】
ウシの脳で最初に単離され、その後、ヒトを含む多くの他の種の脳で見出された(Takagiら,Nature,1979,282,410〜412;Shiomiら,Neuropharmacology,1981,20,633〜638)神経ジペプチドであるキョウトルフィン(Tyr-Arg)も、生物活性分子であることが示されている。これは、鎮痛効果を含む種々のオピオイド活性を有する(Bean及びVaught,Eur.J.Pharmacol.,1984,105,333〜337)。D-キョウトルフィン(すなわちTyr-D-Arg)又はN-メチル化キョウトルフィン(すなわちTyrΨ[CON(Me)]-Arg)アナログは、天然のキョウトルフィンよりも強いインビボ鎮痛効果を示し、これはおそらく、ペプチド分解に対するそれらのより良好な耐性に起因する(Takagiら,CMLS,1982,38,1344〜1345;Uedaら,Peptides,2000,21,717〜722)。
【0004】
有用なジペプチドの他の例は、いくつかのヒト組織で見出されるカルノシン(β-Ala-His)及びホモカルノシン(γ-アミノブチリル-His)である。糖尿病性続発性合併症(例えば白内障)、アテローム性動脈硬化症、癌又は炎症性疾患における種々の可能性のある予防的又は治療的用途が報告されているが、それらの生理的機能は分かっていない(Hipkiss,Int.J.Biochem.Cell Biol.,1998,30,863〜868を参照)。カルノシンは、老化を遅延させ、細胞の若返りを引き起こすと考えられているので、ヒトの健康における補助栄養剤として現在、用いられている。
【0005】
線状ジペプチドは、特に運動及びフィットネス製品として販売されているいくらかの補助栄養剤だけでなく、完全非経口栄養(TPN)及び経静脈栄養(IVN)製品においても見出される。これらは、グルタミン又はチロシンのように水中で不安定で不溶性のアミノ酸の送達形態として用いられる。
【0006】
Gly-Gln及びAla-GlnはTPNにおいて用いられて(Jiangら,J.Parenter.Enteral Nut.,1993,17,134〜141)、外傷、感染又は癌のような代謝ストレスの特徴であるグルタミン欠乏を補償する(Zhouら,J.Parenter.Enteral Nut.,2003,27,241〜245)。
同様に、Ala-Tyr、Gly-Tyr及びTyr-Argは、IVN中で、容易に投与され得る形態のチロシンアミノ酸を提供するために用いられる(Kee及びSmith,Nutrition,1996,12,577〜577;Himmelseherら,J.Parenter.Enteral Nut.,1996,20,281〜286)。
最後に、線状ジペプチドは、アスパルテーム分子(Asp-Phe-OMe)により例示されるように、矯味矯臭剤として食品分野でも用いられ、これは、全世界で販売されている糖代替物として用いられる。これは、食卓調味料としてしばしば提供され、ダイエット食品又は飲料中に一般的に用いられる。
【0007】
線状ジペプチドを製造する既知の方法は、化学合成、天然の産生体生物からの抽出及び酵素学的方法を含む。
化学的方法を用いてジペプチド誘導体を合成できるが、これらは線状ジペプチド合成において保護及び脱保護の工程を用いることがしばしば必要であるので、費用に関して不利であると考えられる。更に、これらは大量の有機溶媒などを用いるので、環境にやさしい方法ではない。
【0008】
天然の原核生物又は真核生物の産生体からの線状ジペプチドの抽出を用いることができるが、天然産生物中の所望のジペプチド誘導体の全含有量はしばしば低く、産生体生物を操作するのは困難であり得るので、生産性及び収率は、一般的に低い。別の大きい短所は、一般には、単一の天然(例えば遺伝的に変更されていない)産物又は生物中に、全ての可能性のある線状ジペプチドが存在しているわけではないことである。
【0009】
酵素学的方法、すなわちインビボ(例えば内因性若しくは異種のジペプチド合成酵素を発現する微生物の培養物中又は培養培地から単離された微生物細胞中)又はインビトロ(例えば精製ジペプチド合成酵素)のいずれかで酵素を用いる方法を用いることができる。
【0010】
以下の方法が既に知られている。
プロテアーゼの逆反応を用いる方法(Bergmann及びFraenkel-Conrat,J.Biol.Chem.,1937,119,707〜720);しかし、プロテアーゼの逆反応を利用する方法は、基質として用いるアミノ酸の官能基のための保護基の導入及び除去を必要とし、このことは、ペプチド形成反応の効率の上昇、及びペプチド分解反応の防止を困難にする。
【0011】
熱安定性アミノアシルt-RNA合成酵素を用いる方法(日本国特許出願第146539/83号、日本国特許出願第209991/83号、日本国特許出願第209992/83号及び日本国特許出願第106298/84号);熱安定性アミノアシルt-RNA合成酵素を用いる方法は、この酵素の発現及び所望の産物の他に望ましくない副産物が形成される副反応の防止を防ぐのが困難であるという問題を有する。
【0012】
プロリンイミノペプチダーゼの逆反応を用いる方法(WO03/010307);プロリンイミノペプチダーゼを用いる方法は、基質として用いられるアミノ酸の1つのアミド化を必要とし、このこともまた、この方法を行うことを困難にする。
【0013】
非リボソームペプチド合成酵素(本明細書において以下、NRPSという)を用いる方法(Doekel及びMarahiel,Chem.Biol.,2000,7,373〜384;Dieckmannら,FEBS Lett.,2001,498,42〜45;米国特許第5,795,738号及び米国特許第5,652,116号)。NRPSを用いる方法は、補酵素4'-ホスホパンテテインの供給が必須であるという点で非効率的である。
【0014】
NRPSの酵素分子量よりも低い酵素分子量を有し、補酵素4'-ホスホパンテテインを必要としないペプチド合成酵素群も存在する。例えば、ガンマ-グルタミルシステイン合成酵素、グルタチオン合成酵素、D-アラニル-D-アラニン(D-Ala-D-Ala)リガーゼ及びポリ-ガンマ-グルタメート合成酵素である。これら酵素のほとんどは、基質としてD-アミノ酸を利用するか、ガンマ-カルボキシル基でのペプチド結合形成を触媒する。この結果として、これらは、L-アミノ酸のアルファ-カルボキシル基でのペプチド結合形成によるジペプチドの合成のために用いることができない。
【0015】
L-アミノ酸のアルファ-カルボキシル基でのペプチド結合形成によりジペプチドを合成できる酵素の例は、バシリシン(bacilysin)合成酵素である(バシリシンは、バチルス属(Bacillus)に属する微生物に由来するジペプチド抗生物質である)。バシリシン合成酵素は、バシリシン[L-アラニル-L-アンチカプシン(L-Ala-L-アンチカプシン)]及びL-アラニル-L-アラニン(L-Ala-L-Ala)を合成する活性を有することが知られているが、他のジペプチドを合成するその能力については情報がない(Sakajohら,J.Ind.Microbiol.Biotechnol.,1987,2,201〜208;Yazganら,Enzyme Microbial Technol.,2001,29,400〜406)。
そのゲノム全体が配列決定された(Kunstら,Nature,1997,390,249〜256)バチルス・サチリス(Bacillus subtilis)168におけるバシリシン生合成遺伝子について、バシリシンの生産性は、ORFであるywfA-Fを含むバシリシンオペロンの増幅により増大することが知られている(WO00/03009)。
【0016】
ywfE ORFが、L-アミノ酸基質からのアルファ-ジペプチドの合成を担うL-アミノ酸リガーゼをコードすることが最近示された。酵素は、広範囲のアルファ-ジペプチドの形成を導く広い基質特異性を有することが示された(Tabataら,J.Bacteriol.,2005,187,5195〜5202;米国特許出願第20050287626号)。
【0017】
本発明者らは、NRPSと類似性がないAlbC(albC遺伝子産物)が、ストレプトミセス・ノウルセイ(Streptomyces noursei)ATCC 11455における、抗菌物質であるアルボノウルシン(シクロ(デルタPhe-デルタLeu))の生合成の間のシクロ(L-Phe-L-Leu)及びシクロ(L-Phe-L-Phe)の形成を担うことを以前に報告した。異種株であるエス・リビダンス(S.lividans)TK21又は大腸菌(Escherichia coli)におけるエス・ノウルセイからのAlbCの発現は、シクロ(L-Phe-L-Leu)及びシクロ(L-Phe-L-Phe)の生成を導き、これらは、培養培地に分泌された(Lautruら,Chem.Biol.,2002,9,1355〜1364;仏国特許第2841260号及びWO2004/000879)。
【0018】
より最近では、エス・ノウルセイのAlbC(配列番号1)及びエス・アルブルス(S.albulus)のそのホモログ(99%の配列同一性(239アミノ酸のうち238のアミノ酸が同一)及び239残基にわたる100%の配列類似性)は、1種以上のアミノ酸からの直鎖ジペプチドを形成できることが示された。協和発酵工業(Kyowa Hakko Kogyo Co.)により特許出願(米国特許出願第20050287626号)がされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
AlbCが生成できる線状ジペプチドの型は、フェニルアラニン、ロイシン及びアラニンの組合せであると報告されている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、本発明者らにより特徴決定され、特定の配列サインの存在により規定される新たな酵素ファミリーであるシクロジペプチド合成酵素(CDS)を用いて、多様な線状鎖ジペプチド群を創出する方法に関する。本発明者らは、驚くべきことに、エス・ノウルセイ及びエス・アルブルスのAlbCが、CDSファミリーのまさに1つのメンバーであること、及び本出願において本発明者らにより同定されたファミリーの他のメンバーは、遥かに低い、エス・ノウルセイのAlbCとは僅か23〜33%の配列同一性、及びエス・ノウルセイのAlbCと212〜226残基にわたって41〜53%の配列類似性を示すことを見出した。
【0021】
本発明者らは、驚くべきことに、CDSファミリーの多様なメンバーが、線状ジペプチドの合成を触媒するために必要な機能性を保持することを見出し、また驚くべきことに、該ファミリーのこれら異なるメンバーが、形成できる線状ジペプチドの種類について非常に有用な多様性を示し、AlbCにより形成されない線状ジペプチドの形成を触媒できること、及びAlbCが、以前に報告されていたよりも遥かに広い範囲の線状ジペプチドを生成することを見出した。
【0022】
本発明者らは、このような方法を行うための材料を提供し、特に、同定した種々のCDSメンバーをコードする必要な核酸及びペプチド配列、並びにこれら酵素を発現するように適切な微生物を遺伝的に改変するためのベクターを提供する。
【0023】
本発明者らは、更なるメンバーの単離及び特徴決定を可能にし、本発明により生成できる線状ジペプチドの種類を増加させる、種々の探索ストラテジーを用いてこのファミリーの更なるメンバーを同定するための手段も提供する。
【0024】
本発明は、エス・ノウルセイのAlbCタンパク質に相当する配列番号1と少なくとも20%の同一性で90%以下の同一性を有するタンパク質又はそのフラグメントからなる群より選択される、単離された天然若しくは合成のタンパク質又はそのようなタンパク質の活性フラグメントの使用に関する。このタンパク質又はその活性フラグメントは、一般式(i):
R1 − R2 (i)
(式中、R1及びR2は同じであっても異なってもよく、各々が任意のアミノ酸を表す)
の線状ジペプチドの形成を触媒する能力を有する。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本タンパク質の活性フラグメントは、線状ジペプチドについてのベースの生成レベルから統計学的に有意に上昇したレベルで線状ジペプチドの形成を触媒する能力を示すものである。特に、活性フラグメントは、機能性を有するために、少なくとも7アミノ酸残基の長さである必要があると考えられる。
【0026】
本明細書で規定される配列同一性及び配列類似性のパーセンテージは、BLASTプログラムを用いて得られた(blast2seq、デフォルトパラメータ)(Tatutsova及びMadden,FEMS Microbiol Lett.,1999,174,247〜250)。
このようなパーセンテージ配列同一性及び類似性は、本明細書の図1に示すように、配列番号1との全長比較から導かれる。好ましくは、これらパーセンテージは、図1に示すように、上記の配列の長さの一部を示すオーバーラップに対して計算することにより導かれる。
【0027】
好ましくは、本タンパク質又はその活性フラグメントは、配列番号1と少なくとも20%で50%以下の同一性を有する。
最も好ましくは、本タンパク質又はその活性フラグメントは、配列番号1と少なくとも20%で35%以下の同一性を有する。
【0028】
記載された最初のCDSであるAlbC(Lautruら,Chem.Biol.,2002,9,1355〜1364)の239アミノ酸の配列と、データベースとの比較により、中程度の同一性及び類似性を有する、機能が未知の7つの仮想タンパク質(hypothetical protein)が同定された(図1)。AlbCと212残基にわたって33%の同一性と53%の類似性を示す、289アミノ酸の仮想タンパク質は、結核菌群(Mycobacterium tuberculosis complex)に属するいくつかの生物のゲノムによりコードされていた。このタンパク質を、結核菌H37RvにおいてRv2275(配列番号2)(アクセッション番号NP 216791)、結核菌CDC 1551においてMT2335(アクセッション番号NP 336805)、結核菌H37RaにおいてMRA2294(アクセッション番号YP001283620)、結核菌F11においてTBFG12300(アクセッション番号YP001288233)、及びマイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)AF2122/97においてMb2298(アクセッション番号NP 855947)と命名した。よって、いくつかのマイコバクテリア株によりコードされるタンパク質は、以下、Rv2275(配列番号2)とよぶ。Rv2275は、AlbCよりも長く、AlbCとは整列しない49アミノ酸のN-末端部分を含む。他の仮想タンパク質が、エム・ボビスBCGパスツール1173P2株で見出された。BCG2292と命名されたこのタンパク質(アクセッション番号YP978381、配列番号34)は、Rv2275(配列番号2)タンパク質と、配列番号2において残基261のEがAに置き換えられている以外は同一である。
【0029】
データベース検索によって、バチルス種に由来する3つの更なる別の相同タンパク質も明らかになった:AlbCと221残基にわたって29%の同一性と47%の類似性を示す、YvmCと命名された(以下、YvmC-Blicとよぶ、配列番号4)、同一の2つの249アミノ酸仮想タンパク質が、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)ATCC 14580(アクセッション番号AAU25020)及びバチルス・リケニフォルミスDSM 13(アクセッション番号AAU42391)で見出された。AlbCと226残基にわたって29%の同一性と46%の類似性を有する1つの248アミノ酸YvmCタンパク質(以下、YvmC-Bsubとよぶ、配列番号3)は、バチルス・サチリス亜種サチリス(Bacillus subtilis subsp.subtilis)168株(アクセッション番号CAB15512)によりコードされた。214残基にわたって26%の同一性と45%の類似性を示す、RBTH_07362と命名された1つの238アミノ酸仮想タンパク質(以下、YvmC-Bthuとよぶ、配列番号5)は、バチルス・チューリンゲンシス血清型イスラエレンシス(Bacillus thuringiensis serovar israelensis)ATCC 35646(アクセッション番号EAO57133)に由来する。2つ一組での比較では、バチルス種のこれら3つの異なるタンパク質は、より高い配列同一性及び類似性を有する(236〜247残基にわたって、61〜70%の同一性及び76〜81%の類似性)。
【0030】
AlbCと相同なタンパク質の中に、AlbCと224残基にわたって28%の同一性と49%の類似性を示し、フォトラブダス・ルミネセンス亜種ラウモンディイ(Photorhabdus luminescens subsp.laumondii)TTO1(NP 927658)で見出された234アミノ酸の仮想タンパク質Plu0297(配列番号7)も明らかになった。
【0031】
別のAlbC相同タンパク質は、スタフィロコッカス・ヘモリティカス(Staphylococcus haemolyticus)JCSC1435株が有する約8 kbのpSHaeCプラスミドによりコードされた。pSHaeC06と命名されたタンパク質(配列番号6)は、234アミノ酸長であり、AlbCと220アミノ酸にわたって20%の同一性と44%の類似性を示す(アクセッション番号YP 254604)。
【0032】
別の仮想タンパク質が、コリネバクテリウム・ジェイケイウム(Corynebacterium jeikeium)K411のゲノム中でAlbCに相同であることが見出された。Jk0923と命名された216アミノ酸のタンパク質(アクセッション番号YP 250705、配列番号8)は、AlbCと212残基にわたって23%の同一性と41%の類似性を示す。
【0033】
全ての場合において、これら対応関係は、タンパク質又はその活性フラグメントを配列番号1と整列させ、配列番号1のどこに保存配列が出現するかの決定を可能にするように、BLASTのような2つ一組での比較プログラムでこれらタンパク質又はそのフラグメントを配列番号1と比較するときに生じる。
【0034】
7つの関連する仮想タンパク質とAlbCとのアミノ酸配列アラインメントにより、全てのタンパク質のうち13個の位置だけが保存されていることが示されたが、2つの特によく保存された領域が強調された。一方は残基31〜37(AlbCの番号付け)を含み、他方は残基178〜184(AlbCの番号付け)を含む(図1)。
これら2つの領域をそれぞれ用いて、2つの配列パターンH-X-[LVI]-[LVI]-G-[LVI]-S(配列番号9)及びY-[LVI]-X-X-E-X-P(配列番号10)を規定し、これらが、120〜160アミノ酸により隔てられてタンパク質中に同時に存在するかどうかを、Uniprot(Nucleic Acids Res.2007 Jan;35(データベース版):D193-7)において、PATTINPROT(Combetら,TIBS,2000,25,147〜150)を用いて走査した。
【0035】
この検索により、AlbC及び上記のそのホモログ(Rv2275及びBCG2292、YvmC-Bsub、Yvmc-Blic、YvmC-Bthu、Plu0297、pSHaeC06及びJk0923)だけが明らかになった。よって、この第1の配列サインを用いて検索して、AlbCに関連する新たなタンパク質ファミリーを規定できることが示された。本発明者らは、これら酵素全てをシクロジペプチド合成酵素(CDS)と命名した。このファミリーに属する8つのタンパク質が、多様な線状ジペプチドを合成できることは下記に示されている。
【0036】
上記の使用の好ましい実施形態において、本タンパク質又はその活性フラグメントは、配列番号9の一般配列の第1の保存アミノ酸配列を有する:
H-X-[LVI]-[LVI]-G-[LVI]-S (配列番号9)
(式中、H = ヒスチジン、X = 任意のアミノ酸、[LVI] = ロイシン、バリン又はイソロイシンのいずれか1つ、G = グリシン及び S = セリン)。
【0037】
上記の使用の別の好ましい実施形態において、本タンパク質又はその活性フラグメントは、配列番号10の一般配列の第2の保存アミノ酸配列を有する:
Y - [LVI] - X - X - E - X - P (配列番号10)
(式中、Y = チロシン、[LVI] = ロイシン、バリン又はイソロイシンのいずれか1つ、X = 任意のアミノ酸、E = グルタミン酸、P = プロリン)。
最も好ましくは、本タンパク質又はその活性フラグメントは、第1及び第2の保存アミノ酸配列を両方有する。
【0038】
上記の使用の別の好ましい実施形態において、第1の保存アミノ酸配列と第2のアミノ酸配列は、少なくとも120アミノ酸残基で160以下のアミノ酸残基により隔てられている。
最も好ましくは、第1の保存アミノ酸配列と第2のアミノ酸配列は、少なくとも140アミノ酸残基で150以下のアミノ酸残基により隔てられている。
【0039】
上記の使用の別の好ましい実施形態において、第1の保存アミノ酸配列は、本タンパク質又はその活性フラグメントにおいて、配列番号1の残基31〜37に相当する。
上記の使用の別の好ましい実施形態において、第2の保存アミノ酸配列は、本タンパク質又はその活性フラグメントにおいて、配列番号1の残基178〜184に相当する。
【0040】
本発明者らは、特定の配列サインの存在及びサイズの類似性に基づいて、AlbCに関連する新たなタンパク質ファミリーを同定し、今回、予期せぬことに、新しく同定されたCDSファミリーの全てのメンバーも線状ジペプチドを合成できることを見出した。
【0041】
上記の使用の別の好ましい実施形態において、本タンパク質又はその活性フラグメントは、バチルス、コリネバクテリウム、マイコバクテリウム、ストレプトミセス、フォトラブダス又はスタフィロコッカスの属に属する微生物から単離された。
【0042】
上記の使用のより好ましい実施形態によると、本タンパク質又はその活性フラグメントは、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・サチリス亜種サチリス、バチルス・チューリンゲンシス血清型イスラエレンシス、フォトラブダス・ルミネセンス亜種ラウモンディイ、スタフィロコッカス・ヘモリティカス、コリネバクテリウム・ジェイケイウム、結核菌、マイコバクテリウム・ボビス又はマイコバクテリウム・ボビスBCGから選択される微生物から単離された。
【0043】
上記の使用の別の好ましい実施形態において、本タンパク質又はその活性フラグメントは、AlbC(配列番号1)、Rv2275(配列番号2)、MT2335(配列番号2)、MRA2294(配列番号2)、TBFG12300(配列番号2)、Mb2298(配列番号2)、BCG2292(配列番号34)、YvmC-Bsub(配列番号3)、YvmC-Blic(配列番号4)、YvmC-Bthu(配列番号5)、pSHaeC06(配列番号6)、Plu0297(配列番号7)、JK0923(配列番号8)、AlbC-his(配列番号35)、Rv2275-his(配列番号36)、YvmC-Bsub-his(配列番号37)からなる群より選択される。
【0044】
好ましくは、ジペプチドは、特に、Phe-Leu、Leu-Phe、Phe-Phe、Phe-Tyr、Tyr-Phe、Leu-Leu、Leu-Tyr、Tyr-Leu、Phe-Met、Met-Phe、Leu-Met、Met-Leu、Tyr-Met、Met-Tyr、Met-Met、Tyr-Tyr、Ile-Met、Met-Ile、Leu-Ile、Ile-Leuであり得る。
【0045】
本発明は、本明細書に記載されるタンパク質又はその活性フラグメントをコードする単離された天然又は合成の核酸配列の使用も提供する。
【0046】
本発明は、更に、線状ジペプチドの合成のための、
a)上記で規定されるシクロジペプチド合成酵素をコードするポリヌクレオチド、
b)ポリヌクレオチドa)の相補ポリヌクレオチド、
c)ポリヌクレオチドa)又はb)に、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド
から選択されるポリヌクレオチドの使用に関する。
【0047】
有利には、上記のポリヌクレオチドは、配列番号11、配列番号12、配列番号13〜16、20又は21の配列のポリヌクレオチドからなる群より選択される。配列番号11、配列番号12、配列番号13〜16の配列のポリヌクレオチドは、それぞれ、配列番号1〜5及び配列番号7の配列のポリペプチドをコードし、配列番号20及び21のポリヌクレオチドは、それぞれ、配列番号6及び8のポリペプチドをコードする。更に、配列番号17の114位〜861位に相当するポリヌクレオチドは、配列番号35のポリペプチドAlbC-hisをコードし、配列番号18の114位〜1008位に相当するポリヌクレオチドは、配列番号36のポリペプチドRv2275-hisをコードし、配列番号19の114位〜885位に相当するポリヌクレオチドは、配列番号37のポリペプチドYvmC-Bsub-hisをコードする。
【0048】
本明細書中で使用する用語「ハイブリダイズする」は、ポリヌクレオチド及び/又はオリゴヌクレオチドが、記載される核酸配列又はその部分とハイブリダイズするプロセスをいう。よって、上記の核酸配列は、それぞれのサイズに応じて、RNA若しくはDNA調製物のそれぞれノーザンブロット若しくはサザンブロット分析においてプローブとして有用であるか、又はPCR分析においてオリゴヌクレオチドプライマーとして用いることができる。上記のハイブリダイズするオリゴヌクレオチドは、好ましくは少なくとも10、より好ましくは少なくとも15ヌクレオチドを含む。一方、プローブとして用いられる本発明のハイブリダイズするポリヌクレオチドは、好ましくは少なくとも100、より好ましくは少なくとも200、最も好ましくは少なくとも500ヌクレオチドを含む。
【0049】
核酸分子を用いてハイブリダイゼーション実験を実施する方法は当該技術において公知である。すなわち、当業者は、本発明に従ってどのハイブリダイゼーション条件を使用すべきかが分かる。このようなハイブリダイゼーション条件は、Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory Manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press,第2版、1989及び第3版、2001;Gerhardtら;Methods for General and Molecular Bacteriology;ASM Press,1994;Lefkovits;Immunology Methods Manual:The Comprehensive Sourcebook of Techniques;Academic Press,1997;Golemis;Protein-Protein Interactions:A Molecular Cloning Manual;Cold Spring Harbor Laboratory Press,2002のような標準的な教科書中、及び当業者に知られているか又は上記で引用したような他の標準的な実験手引書中に言及されている。本発明に従えば、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件が好ましい。
【0050】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」とは、例えば、42℃での、50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mMクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト溶液、10%デキストラン硫酸及び20μg/ml変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中での一晩のインキュベーション、続いて例えば0.2×SSC中で約65℃でのフィルタの洗浄をいう。
【0051】
低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件でハイブリダイズする核酸分子も企図される。ハイブリダイゼーション及びシグナル検出のストリンジェンシーの変更は、主に、ホルムアミド濃度、塩濃度又は温度の操作により達成される。例えば、低ストリンジェンシー条件は、37℃での、6×SSPE(20×SSPE = 3mol/l NaCl;0.2mol/l NaH2PO4;0.02mol/l EDTA、pH7.4)、0.5% SDS、30%ホルムアミド、100μg/mlサケ精子ブロッキングDNAを含む溶液中での一晩のインキュベーション、続く50℃での1×SSPE、0.1% SDSでの洗浄を含む。
【0052】
また、更に低いストリンジェンシーを達成するために、ストリンジェントなハイブリダイゼーションの後に行われる洗浄を、より高い塩濃度(例えば5×SSC)で行うことができる。上記の条件の変動は、ハイブリダイゼーション実験におけるバックグラウンドを抑制するために用いられる代替ブロッキング試薬の包含及び/又は置換により達成できることに注目されたい。典型的なブロッキング試薬は、デンハルト試薬、BLOTTO、ヘパリン、変性サケ精子DNA及び商業的に入手可能な独自の処方物を含む。
【0053】
本発明は、上記で規定される核酸コード配列を含む組換えベクターも提供する。このベクターは、核酸コード配列を宿主細胞に導入するように構成され、そのことにより、このコード配列は、該宿主細胞の内因性の転写及び翻訳機構によって転写及び翻訳される。
組換えベクターは、上記で規定される少なくとも2つのタンパク質又はその活性フラグメントをコードする配列を含み得る。複数のコード配列を提供することにより、本発明者らは、適切なコード配列を含ませることによって、いくつかのCDS酵素からいくつかの酵素特異的線状ジペプチドを生成する手段を提供する。
【0054】
よって、少なくとも2つのコード配列は、異なる遺伝子からである。
或いは、少なくとも2つのコード配列は、単一遺伝子からである。この場合、同じ遺伝子産物についての複数のコード配列を提供することにより、外因性遺伝子産物のレベルの増幅が可能になり、線状ジペプチド形成の速度が増大する。
【0055】
好ましくは、宿主細胞は原核生物である。原核細胞は、一般的に培養が単純であり、発酵の合間の貯蔵が容易であるので、単純な培地及び増殖条件から大規模で著しいレベルの線状ジペプチドを製造するための理想的な系とされる。
最も好ましくは、宿主細胞は、異なる複数の発現系及び培養技術が存在する最もよく特徴決定された原核生物である大腸菌である。
【0056】
本発明は更に、上記で規定される核酸コード配列を含む組換えベクターに関する。このベクターは、無細胞発現系の内因性機構により、無細胞発現系において核酸コード配列を発現するように構成される。
【0057】
本発明はまた、以下の工程:
a)1種以上のアミノ酸から線状ジペプチドを形成する活性を有するタンパク質又はその活性フラグメントを生成する能力を有する宿主細胞を培地で培養する工程と、
b)前記線状ジペプチドを形成させ、前記宿主細胞中に、場合によっては前記培地中にも蓄積させる工程と、
c)前記細胞抽出物及び培地から前記線状ジペプチドを回収する工程と
を含み、前記タンパク質又はその活性フラグメントが、配列番号1と少なくとも20%の同一性で90%以下の同一性を有するタンパク質及びそのフラグメントからなる群より選択される、線状ジペプチドの製造方法を提供する。
【0058】
好ましくは、前記タンパク質又はその活性フラグメントはまた、宿主細胞の内因性遺伝子によってコードされる。
或いは、前記タンパク質又はその活性フラグメントは、宿主細胞の内因性遺伝子によりコードされない。
【0059】
本発明はまた、以下の工程:
a)無細胞発現系を、1種以上のアミノ酸から線状ジペプチドを形成する活性を有するタンパク質又はその活性フラグメントを生成するように誘発する工程と、
b)少なくとも1つのアミノ酸基質を、前記タンパク質又はその活性フラグメントに導入する工程と、
c)前記線状ジペプチドを形成及び蓄積させる工程と、
d)前記線状ジペプチドを回収する工程と
を含み、前記タンパク質又はその活性フラグメントが、配列番号1と少なくとも20%の同一性で90%以下の同一性を有するタンパク質及びそのフラグメントからなる群より選択される、線状ジペプチドの製造方法に関する。
【0060】
本発明は更に、一般式(i):
R1 - R2 (i)
(式中、R1及びR2は同じであっても異なってもよく、各々が任意のアミノ酸を表し得る)
の線状ジペプチドの形成を触媒するポリペプチドを同定する方法であって、
a)以下のモチーフ:
H - X - [LVI] - [LVI] - G - [LVI] - S (配列番号9)
(式中、H = ヒスチジン、X = 任意のアミノ酸、[LVI] = ロイシン、バリン又はイソロイシンのいずれか1つ、G = グリシン及びS = セリンであって、
H、LVI、G又はSの少なくとも1つは別のアミノ酸であり得る、すなわちHはリジン又はアルギニンのいずれか1つで置き換えられることができ、LVIはグリシン、アラニン、ロイシン、バリン又はイソロイシンのいずれか1つで置き換えられることができ、Gはグリシン、アラニン、ロイシン、バリン又はイソロイシンのいずれか1つで置き換えられることができ、Sはシステイン、スレオニン又はメチオニンで置き換えられることができる)
Y - [LVI] - X - X - E - X - P (配列番号10)
(式中、Y = チロシン、[LVI] = ロイシン、バリン又はイソロイシンのいずれか1つ、X = 任意のアミノ酸、E = グルタミン酸及びP = プロリンであって、
Y、LVI、E、X又はPの少なくとも1つは別のアミノ酸であり得る、すなわちYはフェニルアラニン又はトリプトファンのいずれか1つで置き換えられることができ、LVIはグリシン、アラニン、ロイシン、バリン又はイソロイシンのいずれか1つで置き換えられることができ、Eはアスパラギン酸、アスパラギン、グルタミンのいずれか1つで置き換えられることができ、Pはグリシン、アラニン、ロイシン、バリン又はイソロイシンのいずれか1つで置き換えられることができる)
の少なくとも一方を有する候補ポリペプチド配列を同定する工程と、
b)前記候補ポリペプチドのコード配列を、前記候補ペプチドを適切なレベルで発現するように構成されたプロモーター配列に連結することにより、ポリペプチド発現構築物を創出する工程と、
c)前記ポリペプチド発現構築物を少なくとも1つの細胞に導入し、前記少なくとも1つの細胞又は無細胞発現系による前記ポリペプチド発現構築物の取り込みを誘発する工程と、
d)前記少なくとも1つの細胞の増殖培地中又は前記無細胞発現系中の線状ジペプチドのレベル及び種類をモニターする工程と、
e)前記ポリペプチド発現構築物の存在下での線状ジペプチドのレベルを、前記ポリペプチド発現構築物の非存在下での線状ジペプチドのレベルと比較して、前記ポリペプチド発現構築物による線状ジペプチドの相対的生成レベルを決定する工程と、
f)線状ジペプチドの相対的生成を、前記少なくとも1つの細胞又は前記無細胞発現系における前記候補ポリペプチドの発現と相関させる工程と
を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0061】
よって、本発明者らは、線状ジペプチドを合成できる更なる酵素の同定のための系統的アプローチを提供する。このアプローチは、本発明者らが初めて同定した2つの保存モチーフを用い、これらドメイン又はその誘導体の一方又は両方を有する適切な候補ポリペプチドの同定をコンピュータ上で(in silico)可能にする。
【0062】
これら候補ポリペプチドは、次いで、該候補ポリペプチドの発現をその活性が認識できるようになるレベルで可能にする特性を有する適切なプロモーターに連結される。認識できるようになるのに必要とされる正確なレベルは、用いられる正確な発現系に依存して変化する。そのため、具体的な詳細は提供しないが、一般的な実験慣行である。
【0063】
上記の方法の好ましい実施形態によると、前記第1の保存モチーフ(配列番号9)と前記第2の保存モチーフ(配列番号10)とは、少なくとも75で250以下のアミノ酸によって隔てられている。
【0064】
したがって、候補ポリペプチドの同定システムは、第1及び第2の保存モチーフ(それぞれ配列番号9及び10)がともに存在する場合にこれらが75〜250のアミノ酸によって隔てられている候補分子を包含し得る。
好ましくは、第1の保存モチーフ(配列番号9)及び/又は第2の保存モチーフ(配列番号10)は、1より多い残基の変更を含む。
【0065】
本発明はまた、一般式(i):
R1 - R2 (i)
(式中、R1及びR2は同じてあっても異なってもよく、各々が任意のアミノ酸を表し得る)
の線状ジペプチドの形成を触媒するポリペプチドを同定する方法であって、
a)配列番号1と少なくとも20%の同一性で90%以下の同一性を有するか、又は配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号35、配列番号36、配列番号37のいずれか1つと少なくとも20%の同一性を有する候補ポリペプチドを同定する工程と、
b)前記候補ポリペプチド配列を、該候補ペプチドを適切なレベルで発現するように構成されたプロモーター配列に連結することによりポリペプチド発現構築物を創出する工程と、
c)前記ポリペプチド発現構築物を少なくとも1つの細胞又は無細胞発現系に導入して、該少なくとも1つの細胞又は無細胞発現系による前記ポリペプチド発現構築物の発現を誘発する工程と、
d)前記少なくとも1つの細胞の細胞抽出物及び増殖培地中又は前記無細胞発現系中の線状ジペプチドのレベル及び種類をモニターする工程と、
e)前記ポリペプチド発現構築物の存在下での線状ジペプチドのレベルを、前記ポリペプチド発現構築物の非存在下での線状ジペプチドのレベルと比較して、前記ポリペプチド融合構築物による線状ジペプチドの相対生成レベルを決定する工程と、
f)線状ジペプチドの相対的生成を、前記少なくとも1つの細胞又は前記無細胞発現系における前記候補ポリペプチドの発現と相関させる工程と
を含むことを特徴とする方法を提供する。
【0066】
本発明のより良好な理解のため、及び本発明を実施する方法を示すために、例示のためだけに、添付の図面を参照して、本発明による具体的な実施形態、方法及びプロセスを示す。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】図1は、ストレプトミセス・ノウルセイからのAlbC(配列番号1)と、他のCDSタンパク質とのアミノ酸配列アラインメントを示す。関連するタンパク質は、結核菌からのRv2275(配列番号2)、バチルス・サチリスからのYvmC(本明細書ではYvmC-Bsubという、配列番号3)、バチルス・リケニフォルミスからのYvmC(本明細書ではYvmC-Blicという、配列番号4)、バチルス・チューリンゲンシスからのYvmC(本明細書ではYvmC-Bthuという、配列番号5)、スタフィロコッカス・ヘモリティカスからのpSHaeC06(配列番号6)、フォトラブダス・ルミネセンスからのPlu0297(配列番号7)及びコリネバクテリウム・ジェイケイウムからのJk0923(配列番号8)である。高度に保存された13個の位置(全ての配列において同一の残基)を、黒色の背景で示す。中程度の保存の位置を箱で囲む。
【図2】図2は、AlbC-hisを発現する大腸菌細胞の可溶性画分のLC-MS分析から検出された、AlbC-his(配列番号35)に特異的なジペプチドm/z値のEIC(上の黒色の線)を、対照サンプルのLCMS分析からの同じEIC(下の灰色の線)と比較して示す。それぞれの特異的EICピークを、図3〜17に示すMS及びMS/MSによる同定について表IIに特定したようにラベルを付した。
【図3】図3は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、20.6分に検出されたEICピーク1のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図4】図4は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、22.0分に検出されたEICピーク2のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図5】図5は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、22.5分に検出されたEICピーク3のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図6】図6は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、22.9分に検出されたEICピーク4のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図7】図7は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、23.8分に検出されたEICピーク5のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図8】図8は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、25.0分に検出されたEICピーク6のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図9】図9は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、25.9分に検出されたEICピーク7のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図10】図10は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、26.6分に検出されたEICピーク8のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図11】図11は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、27.0分に検出されたEICピーク9のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図12】図12は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、27.3分に検出されたEICピーク10のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図13】図13は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、29.0分に検出されたEICピーク11のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図14】図14は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、29.3分に検出されたEICピーク12のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図15】図15は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、30.8分に検出されたEICピーク13のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図16】図16は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、31.5分に検出されたEICピーク14のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図17】図17は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、33.4分に検出されたEICピーク15のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図18】図18は、化学合成したMet-MetのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは19.4分に検出される(図18a)。
【図19】図19は、化学合成したMet-TyrのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは21.6分に検出される(図19a)。
【図20】図20は、化学合成したIle-MetのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは21.8分に検出される(図20a)。
【図21】図21は、化学合成したTyr-MetのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは22.8分に検出される(図21a)。
【図22】図22は、化学合成したLeu-MetのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは22.9分に検出される(図22a)。
【図23】図23は、化学合成したIle-TyrのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは23.3分に検出される(図23a)。
【図24】図24は、化学合成したTyr-TyrのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは23.5分に検出される(図24a)。
【図25】図25は、化学合成したLeu-TyrのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは23.7分に検出される(図25a)。
【図26】図26は、化学合成したMet-IleのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは24.0分に検出される(図26a)。
【図27】図27は、化学合成したIle-IleのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは24.1分に検出される(図27a)。
【図28】図28は、化学合成したTyr-IleのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは24.4分に検出される(図28a)。
【図29】図29は、化学合成したMet-LeuのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは25.3分に検出される(図29a)。
【図30】図30は、化学合成したLeu-IleのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは25.4分に検出される(図30a)。
【図31】図31は、化学合成したTyr-LeuのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは25.8分に検出される(図31a)。
【図32】図32は、化学合成したIle-LeuのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは26.1分に検出される(図32a)。
【図33】図33は、化学合成したPhe-TyrのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは26.7分に検出される(図33a)。
【図34】図34は、化学合成したPhe-MetのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは27.1分に検出される(図34a)。
【図35】図35は、化学合成したLeu-LeuのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは27.4分に検出される(図35a)。
【図36】図36は、化学合成したPhe-IleのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは28.7分に検出される(図36a)。
【図37】図37は、化学合成したTyr-PheのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは29.0分に検出される(図37a)。
【図38】図38は、化学合成したMet-PheのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは29.5分に検出される(図38a)。
【図39】図39は、化学合成したIle-PheのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは30.2分に検出される(図39a)。
【図40】図40は、化学合成したPhe-LeuのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは30.8分に検出される(図40a)。
【図41】図41は、化学合成したLeu-PheのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは31.5分に検出される(図41a)。
【図42】図42は、化学合成したPhe-PheのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは33.4分に検出される(図42a)。
【図43】図43は、Rv2275-hisを発現する大腸菌細胞の可溶性画分のLCMS分析から検出された、Rv2275-his(配列番号36)に特異的なジペプチドm/z値のEIC(上の黒色の線)を、対照サンプルのLCMS分析からの同じEIC(下の灰色の線)と比較して示す。
【図44】図44は、Rv2275-his(配列番号36)を発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、23.3分に検出されたEICピーク1のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図45】図45は、YvmC-Bsub-his(配列番号37)を発現する大腸菌細胞の可溶性画分のLCMS分析から検出された、YvmC-Bsub-his(配列番号37)に特異的なジペプチドm/z値のEIC(上の黒色の線)を、対照サンプルのLCMS分析からの同じEIC(下の灰色の線)と比較して示す。
【図46】図46は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、20.6分に検出されたEICピーク1のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図47】図47は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、21.8分に検出されたEICピーク2のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図48】図48は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、22.8分に検出されたEICピーク3のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図49】図49は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、24.9分に検出されたEICピーク4のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図50】図50は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、25.4分に検出されたEICピーク5のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図51】図51は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、25.9分に検出されたEICピーク6のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図52】図52は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、26.8分に検出されたEICピーク7のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図53】図53は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、27.3分に検出されたEICピーク8のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図54】図54は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、29.2分に検出されたEICピーク9のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図55】図55は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、30.8分に検出されたEICピーク10のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図56】図56は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、31.4分に検出されたEICピーク11のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図57】図57は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、33.3分に検出されたEICピーク12のMS及びMS/MSスペクトルを示す。
【図58】図58は、線状ジペプチドの網羅的なスクリーニングプロトコルをまとめる。
【図59】図59は、全てのCDS配列のアラインメントの一部分を示す。第1プライマーの設計に用いた領域をアラインメントの下に線で示す。番号付けは、エス・ノウルセイのAlbCのものである。縮重アミノ酸配列を対応するヌクレオチド配列と共に示す。ヌクレオチドについて、B = C又はG又はT、N = A又はC又はG又はT、R = A又はG、S = C又はG、W = A又はT、Y = C又はT。
【図60】図60は、全てのCDS配列のアラインメントの一部分を示す。第2プライマーの設計に用いた領域をアラインメントの下に線で示す。番号付けは、エス・ノウルセイのAlbCのものである。縮重アミノ酸配列を対応するヌクレオチド配列及びプライマーとして用いた相補鎖(最下行)と共に示す。ヌクレオチドについて、D = A又はG又はT、K = G又はT、M = A又はC、N = A又はC又はG又はT、R = A又はG、S = C又はG、W = A又はT、Y = C又はT。
【実施例】
【0068】
ここで、本発明者らにより企図される具体的形態を例示として記載する。以下の記載において、多くの具体的な詳細が、充分な理解のために記載される。しかし、本発明がこれら具体的な詳細に限定されることなく実施できることは当業者に明白である。また、説明を不必要に不明瞭にしないために、周知の方法及び構造については記載しない。
【0069】
実施例1:実験方法
1)バイオインフォマティックツール
プログラムのデフォルトパラメータを用いてタンパク質ホモログを検索するBasic Local Alignment Search Tool(BLAST)(National Center for Biotechnology Informationウェブサイト;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)。Multalin(Corpet,Nucleic Acids Res.,1988,16,10881〜10890)(http://prodes.toulouse.inra.fr/multalin/multalin.html)又はClustal W(Thompson JD,Higgins DG,Gibson TJ.Nucleic Acids Res.1994,22:4673〜4680 European Bioinformatics Instituteウェブサイト;http://www.ebi.ac.uk/clustalw/index.html)をデフォルトパラメータで用いて、配列アラインメントを行った。
【0070】
2)CDSをC-末端(His)6-タグ融合体としてコードする大腸菌発現ベクターの構築
AlbC、Rv2275及びYvmC-Bsubをコードする配列を、大腸菌発現ベクターpQE60(Qiagen)にクローニングした。このために、開始コドンと重複するNcoI部位を加え、他端で最後のセンスコドンの直後にBglII部位を加えるように設計されたプライマーを用いるPCR(標準的な条件を用いる25サイクル)によりコード配列を増幅した。先ずPCR産物をpGEMT-Easyベクター(Promega)にクローニングし、次いでコード配列を含むNcoI-BglIIフラグメントを、NcoI及びBglIIにより消化したpQE60にクローニングした。得られたpQE-60由来プラスミドから、タンパク質は6×His C-末端伸長を有して発現される。
【0071】
AlbCについて、用いたプライマーは、5'-AGAGCCATGGGACTTGCAGGCTTAGTTCCCGC-3' 配列番号28(NcoI部位に下線を付す)及び5'-AGAGAGATCTGGCCGCGTCGGCCAGCTCC-3' 配列番号29(BglII部位に下線を付す)であり、鋳型はpSL122(仏国特許FR0207728、PCT/FR03/01851)であった。AlbC発現のためのpQE60誘導体をpQE60-AlbCと呼称した(配列番号17);発現されたタンパク質AlbC-hisは配列番号35のペプチド配列を有した。
【0072】
Rv2275について、用いたプライマーは、5'-CGGCCATGGCATACGTGGCTGCCGAACCAGGC-3' 配列番号30(NcoI部位に下線を付す)及び5'-GGCAGATCTTTCGGCGGGGCTCCCATCAGG-3' 配列番号31(BglII部位に下線を付す)であり、鋳型はpEXP-Rv2275(PCT/IB2006/001852)であった。Rv2275発現のためのpQE60誘導体をpQE60-Rv2275と呼称した(配列番号18);発現されたタンパク質Rv2275-hisは配列番号36のペプチド配列を有した。
【0073】
バチルス・サチリスのYvmC-Bsubについて、用いたプライマーは、5'-GGCCCATGGCCGGAATGGTAACGGAAAGAAGGTCTG-3' 配列番号32(NcoI部位に下線を付す)及び5'-GGCAGATCTTCCTTCAGATGTGATCCGTTTCTCAGAAAGC-3' 配列番号33(BglII部位に下線を付す)であり、鋳型はpEXP-YvmC-Bsub(PCT/IB2006/001849)であった。YvmC-Bsub発現のためのpQE60誘導体をpQE60-YvmC-Bsubと呼称した(配列番号19);発現されたタンパク質YvmC-Bsub-hisは配列番号37のペプチド配列を有した。
【0074】
上記のすべての場合において、天然型のAlbC(配列番号1)、Rv2275(配列番号2)及びYvmC-Bsub(配列番号3)酵素は、ここに記載される実験の過程で発現されたこれらタンパク質の6×HisタグバージョンAlbC-his(配列番号35)、Rv2275-his(配列番号36)及びYvmC-Bsub-his(配列番号37)と機能的に区別できない。これは、改変された2番目の残基も6×Hisタグも、これら酵素の保存されたいずれの部分の機能性に影響を及ぼさないという事実に起因する。また、これら改変は、これら2つの保存されたドメインの近傍にも、該ドメイン内にも存在しない。
【0075】
3)AlbC、Rv2275及びYvmCによる線状ジペプチドのインビボ形成についてのアッセイ
それぞれ配列番号35、配列番号36及び配列番号37としてのエス・ノウルセイからのAlbC(配列番号1)、結核菌からのRv2275(配列番号2)及びビー・サチリスからのYvmC-Bsub(配列番号3)の組換え発現を、それぞれプラスミドpQE60-AlbC(配列番号17)、pQE60-Rv2275(配列番号18)及びpQE60-YvmC-Bsub(配列番号19)を有する大腸菌M15pREP4細胞(Invitrogen)において達成した。100μlの化学的にコンピテントな細胞を、40ngのプラスミドを用いて、標準的な熱ショック手順を用いて形質転換した(Sambrookら,Molecular Cloning:A Laboratory manual,2001,New York)。SOC培地中で37℃にて1時間増殖させた後に、300μlの反応混合物を、100μg/mlのアンピシリンを含有する5mlのLB培地に直接加えた。振とうしながら37℃にて一晩のインキュベーション後に、このスターター培養物を、100μg/mlのアンピシリンを含有する200mlのLB培地に植菌した。細菌をOD600が約0.7になるまで37℃にて増殖させ、1mM IPTGを加えた。培養を20℃にて18時間継続した。細菌細胞を遠心分離により回収し(30分間、5,000g、4℃)、5mlの氷冷9‰NaCl溶液に懸濁した。細胞を再び遠心分離により回収し(30分間、5,000g、4℃)、溶解バッファーAに懸濁した(100mM Tris-HCl pH8.0、150mM NaCl、5%グリセロール)。加える溶解バッファーの容量は、約100のOD600を有する細菌懸濁物が得られるように調整した。懸濁した細胞を、イートンプレス(Rassant)を用いて溶解した。5%ジメチルスルホキシド(DMSO)を溶解物に加え、直後に遠心分離した(30分間、20,000g、4℃)。可溶性画分を取り置き、2% TFAを用いて酸性にし、遠心分離した(30分間、20,000g、4℃)。得られた可溶性画分を、LC-MS/MSによる更なる分析のために取り置いた(以下を参照)。
【0076】
対照実験として、全ての手順(細胞形質転換から線状ジペプチド含量の解析まで)を、CDSを発現しないアンピシリン耐性遺伝子を含有するベクターであるpQE60(Qiagen)で形質転換した細菌に用いた。
【0077】
4.質量分析とオンラインで連結したクロマトグラフィーによるサンプルの分析
カラムの平衡化及びサンプルの脱塩のための初期条件での5分間の工程の後、液体クロマトグラフィー(LC)分離を、C18分析用カラム(4.6×150mm、3μm、100Å、Atlantis,Waters)で、600μl/分の流速にて、0.1%ギ酸を含有する0〜45%のアセトニトリル/MilliQ水の50分間の線形勾配で行った。LCカラムからの溶出を2つのフローに分けた:一方は、550μl/分でダイオードアレイ検出器に導き、残りのフローは、MS及びMS/MS分析のためにエレクトロスプレー質量分析計に導いた。質量分析計は、直交型大気圧インターフェース-エレクトロスプレーイオン化(AP-ESI)源を備えたイオントラップ型質量分析計Esquire HCT(Bruker Daltonik GmbH,Germany)であった。
【0078】
このオンライン連結システムにおいて、LC溶出サンプルを、50μl/分の流速でESIプローブに連続的に注入した。窒素を乾燥及び霧化ガスとして供給し、ESIにより生じるイオンの効率的なトラップ及び冷却のため並びにフラグメンテーションプロセスのためのイオントラップ中にヘリウムガスを導入した。イオン化は、ポジティブモードで、最適な噴霧及び脱溶媒(desolvatation)のための35psiに設定した霧化ガス、8μl/分に設定した乾燥ガス及び340℃に設定した乾燥温度を用いて行った。イオン化及び質量分析の条件(キャピラリー高電圧、スキマー及びキャピラリー出口電圧並びにイオン移動パラメータ)を、100〜400のm/z範囲の化合物の最適検出に合わせた。質量フラグメンテーションによる構造特徴決定のために、親イオン分離に1マスユニットの分離幅を用いた。MS/MSフラグメンテーションプロセスを最適化するために、フラグメンテーション振幅を自動的に変動させるためのフラグメンテーションエネルギーランプを用いた。フルスキャンMS及びMS/MSスペクトルを、EsquireControlソフトウェアを用いて取得し、全てのデータをDataAnalysisソフトウェアを用いて処理した。
【0079】
5)線状ジペプチドの化学合成
Ile-Leu、Ile-Ile、Ile-Phe、Ile-Met、Phe-Ile、Leu-Met、Leu-Ile、Met-Ile及びTyr-Metを、通常のFmoc/tBuストラテジーによりApplied Biosystemsの装置で装置とともに供給されるユーザーマニュアル(Applied Biosystems 433A使用説明書第1巻、第3章)に従って合成した。均質になるまでの精製及び線状ペプチドの物理化学的特徴決定は、それぞれRP-HPLC及び質量分析により行った。全てのその他の線状ジペプチドは、Sigma及びBachemから購入した。
【0080】
6)線状ジペプチドの検出及び同定のために用いたストラテジー
線状ジペプチドの探索は、図58にまとめる網羅的なスクリーニングプロトコルに従って行った。全てのサンプルをLC-MS/MSにより分析した。LC-MS/MSデータファイルから、210の可能性のある線状ジペプチド(表Iを参照)に関連する108の異なるm/z値に相当するイオンクロマトグラムを抽出した。次いで、各CDS含有サンプル及び対照サンプルについて1組の抽出イオンクロマトグラム(EIC)を得た。各m/z値について、CDS含有サンプル及び対照サンプルから得られたEICの比較により、CDS活性に特異的なEICピークの検出が可能になった。構造的推論のために、これら特異的ピークをMS/MSフラグメンテーションにより更に特徴決定した。娘イオンスペクトルの分析により、第一に、線状ジペプチドに対応するピークの同定が可能になった。実際、線状ジペプチドは、17、18、28及び/又は46のニュートラルロスの組合せによって特徴付けられる特定のフラグメンテーションサインを有する(以前に提案された、ペプチドの官能基のフラグメンテーションと、アミド結合のフラグメンテーションに相当する(Roepstorffら,Biomed.Mass Spectrom.,1984,11,601;Johnsonら,Anal.Chem.,1987,59,2621〜2625))。第二に、この分析により、アミノ酸側鎖に特徴的なインモニウムイオンの検出又は線状ジペプチドを構成するアミノ酸残基の離脱(departure)に相当するニュートラルロスのいずれかによる線状ジペプチドに含まれる2つのアミノ酸の同定が可能になった。サンプル中の線状ジペプチドの最終的な同定は、参照のジペプチド(市販又は自家製の合成ジペプチド)とのLC中の保持時間及び特にMS/MSにおけるフラグメンテーションパターンの両方の類似性を確証することにより得られた。
【0081】
【表1】

【0082】
実施例2:CDSによる線状ジペプチドのインビボ合成
CDSによる線状ジペプチドの合成を、AlbC、Rv2275及びYvmC-Bsubをそれぞれ発現する細菌から得られた可溶性抽出物において線状ジペプチドについて探索することにより評価した。各々において、これら酵素はC-末端6-hisタグを有して発現され、2番目の残基は、前記(「実験方法」を参照)のように、pQE60ベクター中へのクローニングが可能なように配列中にNcoI制限酵素の標的配列を導入して改変されていた。発現された各酵素の実際のペプチド配列は、AlbC-hisが配列番号35、Rv2275-hisが配列番号36及びYvmC-Bsub-hisが配列番号37であった。これらの抽出を前記(「実験方法」を参照)のように行った。各々において、分子量及びN-末端配列が予測されたものに対応するタンパク質の生成が観察された。同時に、CDSを発現しない細菌(pQE60)から得られた可溶性抽出物も調製した。最後に、図58に示すように、これら全てのサンプルをLC-MS/MSにより分析し、線状ジペプチドについてスクリーニングした。方法の対照として、AlbC-his(配列番号35)を発現する大腸菌細胞の可溶性画分をまず分析した。
【0083】
1)AlbCの存在下で生成された更なる線状ジペプチド
AlbC-his(配列番号35)を発現する大腸菌細胞の可溶性画分をLC-MS/MSにより分析して、第1組のEICを導いた。同じ分析を、AlbC-his(配列番号35)を発現しない大腸菌細胞の可溶性画分を用いて行って、第2組のEICを導いた。これら2組のEICを各m/z値について比較することにより、AlbC活性に特異的なEICピークの検出が可能になった。各EICピークをMS/MSフラグメンテーションにより特徴決定し、娘イオンスペクトルの分析により、15のピーク(図2に示す)が線状ジペプチドと一致することが示された(表IIに示す概要を参照)。
【0084】
15のEICピークの各々の質量的特徴、特にインモニウムイオンの検出により、ピーク1、ピーク2、ピーク3、ピーク8、ピーク9、ピーク11、ピーク12及びピーク15(表II)に相当する8つの異なるジペプチドを構成するアミノ酸の一義的な同定が導かれた。ピーク4、ピーク5、ピーク6、ピーク7、ピーク10、ピーク13及びピーク14に相当する他のジペプチドを構成するアミノ酸の性質は、確証されていない。なぜなら、これらは全て86.5の同じインモニウムイオンm/zを有するロイシル又はイソロイシル残基(表IIを参照)を有するからである。全ての検出線状ジペプチドの性質及び配列の同定は、LC中での保持時間及びMS/MSにおけるフラグメンテーションパターン、すなわちフラグメントイオンの数、m/z値及び生成されたフラグメントイオンの強度(表II及びここで言及する図を参照)を、参照の化学合成ジペプチド(表III及びここに番号を付す図を参照)と比較することにより確実に達成された。LCカラムのエージングが原因で、3つの検出線状ジペプチドの保持時間は、対応する参照ジペプチド、すなわちMet-Met、Tyr-Met及びMet-Tyrと比較してシフトしていたが、溶出順序は、検出ジペプチドと参照ジペプチドとで同じであった。まとめると、これら全てのデータは、大腸菌細胞におけるAlbC発現が、以前に報告されたように(米国特許第20050287626号)、Leu-Phe及びPhe-Leuのインビボ形成を担い、またPhe-Phe、Phe-Tyr、Tyr-Phe、Leu-Leu、Leu-Tyr、Tyr-Leu、Phe-Met、Met-Phe、Leu-Met、Met-Leu、Met-Met、Tyr-Met及びMet-Tyrの形成も担うことを明確に証明した(表II及びIIIを参照)。
【0085】
【表2】

【0086】
図3は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、20.6分に検出されたEICピーク1のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは281.0±0.1にメインm/zピークを示す(図3a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図3b)。丸で囲んだ104.3±0.1のm/zピークは、iMetと呼ぶMetのインモニウムイオンと一致する。
【0087】
図4は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、22.0分に検出されたEICピーク2のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは313.1±0.1にm/zピークを示す(図4a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図4b)。丸で囲んだ136.0±0.1のm/zピークは、iTyrと呼ぶTyrのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ104.2±0.1のm/zピークは、iMetと呼ぶMetのインモニウムイオンと一致する。
【0088】
図5は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、22.5分に検出されたEICピーク3のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは313.1±0.1にm/zピークを示す(図5a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図5b)。丸で囲んだ136.1±0.1のm/zピークは、iTyrと呼ぶTyrのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ104.3±0.1のm/zピークは、iMetと呼ぶMetのインモニウムイオンと一致する。
【0089】
図6は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、22.9分に検出されたEICピーク4のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは263.0±0.1にメインm/zピークを示す(図6a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図6b)。丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、それぞれiLeu又はiIleと呼ぶLeu又はIleのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ104.3±0.1のm/zピークは、iMetと呼ぶMetのインモニウムイオンと一致する。
【0090】
図7は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、23.8分に検出されたEICピーク5のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは、対照サンプルでは検出されなかったマイナーm/zピークを295.1±0.1に示す(図7a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図7b)。丸で囲んだ136.0±0.1のm/zピークは、iTyrと呼ぶTyrのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ86.6±0.1のm/zピークは、それぞれiLeu又はiIleと呼ぶLeu又はIleのインモニウムイオンと一致する。
【0091】
図8は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、25.0分に検出されたEICピーク6のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは263.0±0.1にメインのm/zピークを示す(図8a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図8b)。丸で囲んだ104.2±0.1のm/zピークは、iMetと呼ぶMetのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、それぞれiLeu又はiIleと呼ぶLeu又はIleのインモニウムイオンと一致する。
【0092】
図9は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、25.9分に検出されたEICピーク7のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは295.1±0.1にm/zピークを示す(図9a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図9b)。丸で囲んだ136.1±0.1のm/zピークは、iTyrと呼ぶTyrのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、それぞれiLeu又はiIleと呼ぶLeu又はIleのインモニウムイオンと一致する。
【0093】
図10は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、26.6分に検出されたEICピーク8のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは、対照サンプルでは検出されなかったマイナーm/zピークを329.1±0.1に示す(図10a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図10b)。丸で囲んだ120.2±0.1のm/zピークは、iPheと呼ぶPheのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ136.2±0.1のm/zピークは、iTyrと呼ぶTyrのインモニウムイオンと一致する。
【0094】
図11は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、27.0分に検出されたEICピーク9のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは297.1±0.1にm/zピークを示す(図11a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図11b)。丸で囲んだ104.3±0.1のm/zピークは、iMetと呼ぶMetのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ120.1±0.1のm/zピークは、iPheと呼ぶPheのインモニウムイオンと一致する。
【0095】
図12は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、27.3分に検出されたEICピーク10のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは245.1±0.1にメインm/zピークを示す(図12a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図12b)。丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、それぞれiLeu又はiIleと呼ぶLeu又はIleのインモニウムイオンと一致する。
【0096】
図13は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、29.0分に検出されたEICピーク11のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは、対照サンプルでは検出されなかったm/zピークを329.1±0.1に示す(図13a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図13b)。丸で囲んだ136.1±0.1のm/zピークは、iTyrと呼ぶTyrのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ120.1±0.1のm/zピークは、iPheと呼ぶPheのインモニウムイオンと一致する。
【0097】
図14は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、29.3分に検出されたEICピーク12のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは、対照サンプルでは検出されなかったm/zピークを297.1±0.1に示す(図14a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図14b)。丸で囲んだ120.1±0.1のm/zピークは、iPheと呼ぶPheのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ104.2±0.1のm/zピークは、iMetと呼ぶMetのインモニウムイオンと一致する。
【0098】
図15は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、30.8分に検出されたEICピーク13のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは279.1±0.1にメインm/zピークを示す(図15a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図15b)。丸で囲んだ120.1±0.1のm/zピークは、iPheと呼ぶPheのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、それぞれiLeu又はiIleと呼ぶLeu又はIleのインモニウムイオンと一致する。
【0099】
図16は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、31.5分に検出されたEICピーク14のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは279.1±0.1にメインm/zピークを示す(図16a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図16b)。丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、それぞれiLeu又はiIleと呼ぶLeu又はIleのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ120.2±0.1のm/zピークは、iPheと呼ぶPheのインモニウムイオンと一致する。
【0100】
図17は、AlbCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、33.4分に検出されたEICピーク15のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは、対照サンプルでは検出されなかったマイナーm/zピークを313.1±0.1に示す(図17a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図17b)。丸で囲んだ120.2±0.1のm/zピークは、iPheと呼ぶPheのインモニウムイオンと一致する。
【0101】
【表3】

【0102】
図18は、化学合成したMet-MetのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは19.4分に検出される(図18a)。MSスペクトルは281.0±0.1にm/zピークを示す(図18b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図18c)。丸で囲んだ104.2±0.1のm/zピークは、iMetと呼ぶMetのインモニウムイオンと一致する。
【0103】
図19は、化学合成したMet-TyrのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは21.6分に検出される(図19a)。MSスペクトルは313.1±0.1にm/zピークを示す(図19b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図19c)。丸で囲んだ136.0±0.1のm/zピークは、iTyrと呼ぶTyrのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ104.2±0.1のm/zピークは、iMetと呼ぶMetのインモニウムイオンと一致する。
【0104】
図20は、化学合成したIle-MetのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは21.8分に検出される(図20a)。MSスペクトルは263.0±0.1にm/zピークを示す(図20b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図20c)。丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、iIleと呼ぶIleのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ104.3±0.1のm/zピークは、iMetと呼ぶMetのインモニウムイオンと一致する。
【0105】
図21は、化学合成したTyr-MetのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは22.8分に検出される(図21a)。MSスペクトルは313.1±0.1にm/zピークを示す(図21b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図21c)。丸で囲んだ136.0±0.1のm/zピークは、iTyrと呼ぶTyrのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ104.2±0.1のm/zピークは、iMetと呼ぶMetのインモニウムイオンと一致する。
【0106】
図22は、化学合成したLeu-MetのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは22.9分に検出される(図22a)。MSスペクトルは263.0±0.1にm/zピークを示す(図22b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図22c)。丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、iLeuと呼ぶLeuのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ104.3±0.1のm/zピークは、iMetと呼ぶMetのインモニウムイオンと一致する。
【0107】
図23は、化学合成したIle-TyrのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは23.3分に検出される(図23a)。MSスペクトルは295.1±0.1にm/zピークを示す(図23b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図23c)。丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、iIleと呼ぶIleのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ136.1±0.1のm/zピークは、iTyrと呼ぶTyrのインモニウムイオンと一致する。
【0108】
図24は、化学合成したTyr-TyrのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは23.5分に検出される(図24a)。MSスペクトルは345.1±0.1にm/zピークを示す(図24b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図24c)。丸で囲んだ136.1±0.1のm/zピークは、iTyrと呼ぶTyrのインモニウムイオンと一致する。
【0109】
図25は、化学合成したLeu-TyrのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは23.7分に検出される(図25a)。MSスペクトルは295.1±0.1にm/zピークを示す(図25b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図25c)。丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、iLeuと呼ぶLeuのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ136.1±0.1のm/zピークは、iTyrと呼ぶTyrのインモニウムイオンと一致する。
【0110】
図26は、化学合成したMet-IleのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは24.0分に検出される(図26a)。MSスペクトルは263.0±0.1にm/zピークを示す(図26b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図26c)。丸で囲んだ104.2±0.1のm/zピークは、iMetと呼ぶMetのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、iIleと呼ぶIleのインモニウムイオンと一致する。
【0111】
図27は、化学合成したIle-IleのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは24.1分に検出される(図27a)。MSスペクトルは245.1±0.1にm/zピークを示す(図27b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図27c)。丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、iIleと呼ぶIleのインモニウムイオンと一致する。
【0112】
図28は、化学合成したTyr-IleのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは24.4分に検出される(図28a)。MSスペクトルは295.1±0.1にm/zピークを示す(図28b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図28c)。丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、iIleと呼ぶIleのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ136.1±0.1のm/zピークは、iTyrと呼ぶTyrのインモニウムイオンと一致する。
【0113】
図29は、化学合成したMet-LeuのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは25.3分に検出される(図29a)。MSスペクトルは263.1±0.1にm/zピークを示す(図29b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図29c)。丸で囲んだ104.2±0.1のm/zピークは、iMetと呼ぶMetのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、iLeuと呼ぶLeuのインモニウムイオンと一致する。
【0114】
図30は、化学合成したLeu-IleのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは25.4分に検出される(図30a)。MSスペクトルは245.1±0.1にm/zピークを示す(図30b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図30c)。丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、それぞれiLeu及びiIleと呼ぶLeu及びIleのインモニウムイオンと一致する。
【0115】
図31は、化学合成したTyr-LeuのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは25.8分に検出される(図31a)。MSスペクトルは295.1±0.1にm/zピークを示す(図31b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図31c)。丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、iLeuと呼ぶLeuのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ136.1±0.1のm/zピークは、iTyrと呼ぶTyrのインモニウムイオンと一致する。
【0116】
図32は、化学合成したIle-LeuのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは26.1分に検出される(図32a)。MSスペクトルは245.1±0.1にm/zピークを示す(図32b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図32c)。丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、それぞれiIle及びiLeuと呼ぶIle及びLeuのインモニウムイオンと一致する。
【0117】
図33は、化学合成したPhe-TyrのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは26.7分に検出される(図33a)。MSスペクトルは329.1±0.1にm/zピークを示す(図33b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図33c)。丸で囲んだ120.1±0.1のm/zピークは、iPheと呼ぶPheのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ136.1±0.1のm/zピークは、iTyrと呼ぶTyrのインモニウムイオンと一致する。
【0118】
図34は、化学合成したPhe-MetのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは27.1分に検出される(図34a)。MSスペクトルは297.1±0.1にm/zピークを示す(図34b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図34c)。丸で囲んだ120.2±0.1のm/zピークは、iPheと呼ぶPheのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ104.3±0.1のm/zピークは、iMetと呼ぶMetのインモニウムイオンと一致する。
【0119】
図35は、化学合成したLeu-LeuのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは27.4分に検出される(図35a)。MSスペクトルは245.1±0.1にm/zピークを示す(図35b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図35c)。丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、iLeuと呼ぶLeuのインモニウムイオンと一致する。
【0120】
図36は、化学合成したPhe-IleのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは28.7分に検出される(図36a)。MSスペクトルは279.1±0.1にm/zピークを示す(図36b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図36c)。丸で囲んだ120.1±0.1のm/zピークは、iPheと呼ぶPheのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、iIleと呼ぶIleのインモニウムイオンと一致する。
【0121】
図37は、化学合成したTyr-PheのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは29.0分に検出される(図37a)。MSスペクトルは329.1±0.1にm/zピークを示す(図37b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図37c)。丸で囲んだ120.1±0.1のm/zピークは、iPheと呼ぶPheのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ136.1±0.1のm/zピークは、iTyrと呼ぶTyrのインモニウムイオンと一致する。
【0122】
図38は、化学合成したMet-PheのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは29.5分に検出される(図38a)。MSスペクトルは297.0±0.1にm/zピークを示す(図38b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図38c)。丸で囲んだ120.2±0.1のm/zピークは、iPheと呼ぶPheのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ104.3±0.1のm/zピークは、iMetと呼ぶMetのインモニウムイオンと一致する。
【0123】
図39は、化学合成したIle-PheのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは30.2分に検出される(図39a)。MSスペクトルは279.1±0.1にm/zピークを示す(図39b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図39c)。丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、iIleと呼ぶIleのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ120.2±0.1のm/zピークは、iPheと呼ぶPheのインモニウムイオンと一致する。
【0124】
図40は、化学合成したPhe-LeuのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは30.8分に検出される(図40a)。MSスペクトルは279.1±0.1にm/zピークを示す(図40b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図40c)。丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、iLeuと呼ぶLeuのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ120.1±0.1のm/zピークは、iPheと呼ぶPheのインモニウムイオンと一致する。
【0125】
図41は、化学合成したLeu-PheのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは31.5分に検出される(図41a)。MSスペクトルは279.1±0.1にm/zピークを示す(図41b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図41c)。丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、iLeuと呼ぶLeuのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ120.2±0.1のm/zピークは、iPheと呼ぶPheのインモニウムイオンと一致する。
【0126】
図42は、化学合成したPhe-PheのEIC並びにMS及びMS/MSスペクトルを示す。EICピークは33.4分に検出される(図42a)。MSスペクトルは313.1±0.1にm/zピークを示す(図42b)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図42c)。丸で囲んだ120.1±0.1のm/zピークは、iPheと呼ぶPheのインモニウムイオンと一致する。
【0127】
2)Rv2275の存在下で生成された線状ジペプチド
Rv2275-his(配列番号36)を発現する大腸菌細胞の可溶性画分を前記のようにLC-MSにより分析した。この分析により導いた1組のEICを、CDSをコードしないベクターで形質転換された細胞を用いる対照実験のEICと比較した。この比較により、線状ジペプチドと一致しRv2275活性に特異的な1つの顕著なEICピークが示された(図43及び表IV中で特定する図44)。
【0128】
【表4】

【0129】
図43は、Rv2275を発現する大腸菌細胞の可溶性画分のLCMS分析から検出された、Rv2275に特異的なジペプチドm/z値のEIC(上の黒色の線)を、対照サンプルのLCMS分析からの同じEIC(下の灰色の線)と比較して示す。唯一の顕著な特異的EICピークに、図44に示すMS及びMS/MSによる同定のために、表IV中で特定するようにラベルを付した。
【0130】
図44は、Rv2275を発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析に間に、23.3分に検出されたEICピーク1のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは、対照サンプルでは検出されなかったm/zピークを345.1±0.1に示す(図44a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図44b)。丸で囲んだ136.1±0.1のm/zピークは、iTyrと呼ぶTyrのインモニウムイオンと一致する。
このEICピークを、MS/MSフラグメンテーション及び娘イオンスペクトルの分析により更に特徴決定した。このことにより、1つの可能性のある一致する線状ジペプチド、すなわちTyr-Tyrの同定が可能になった(表IV)。この保持時間及びフラグメンテーションパターンを、参照の化学合成Tyr-Tyrと比較することにより(表III及び図24を参照)、本発明者らは、大腸菌細胞におけるRv2275の発現がTyr-Tyrのインビボ形成を担っていると結論付けることができた(表IVを参照)。
【0131】
3)YvmC-Bsubの存在下で生成された線状ジペプチド
YvmC-Bsub-his(配列番号37)を発現する大腸菌細胞の可溶性画分を前記のようにLC-MSにより分析した。この分析により導いた1組のEICを、CDSを発現しないベクターで形質転換された細胞を用いる対照実験のEICと比較した。この比較により、本発明者らは、線状ジペプチドと一致し、YvmC-Bsub活性に特異的な12のEICピークを検出することができた(図45及び表V中で特定する図)。
【0132】
【表5】

【0133】
図45は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分のLCMS分析から検出された、YvmCに特異的なジペプチドm/z値のEIC(上の黒色の線)を、対照サンプルのLCMS分析からの同じEIC(下の灰色の線)と比較して示す。拡大図は、サンプル中で検出されたマイナー生成物を識別するためのものである。特異的EICピークを、図46〜57に示すMS及びMS/MSによる同定のために、表V中で特定するようにラベルを付した。
【0134】
図46は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、20.6分に検出されたEICピーク1のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは、対照サンプルでは検出されなかったメインm/zピークを281.0±0.1に示す(図46a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図46b)。丸で囲んだ104.3±0.1のm/zピークは、iMetと呼ぶMetのインモニウムイオンと一致する。
【0135】
図47は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、21.8分に検出されたEICピーク2のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは、対照サンプルでは検出されなかったm/zピークを263.1±0.1に示す(図47a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図47b)。丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、それぞれiLeu又はiIleと呼ぶLeu又はIleのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ104.3±0.1のm/zピークは、iMetと呼ぶMetのインモニウムイオンと一致する。
【0136】
図48は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、22.8分に検出されたEICピーク3のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは263.0±0.1にメインm/zピークを示す(図48a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図48b)。丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、それぞれiLeu又はiIleと呼ぶLeu又はIleのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ104.2±0.1のm/zピークは、iMetと呼ぶMetのインモニウムイオンと一致する。
【0137】
図49は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、24.9分に検出されたEICピーク4のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは263.0±0.1にメインm/zピークを示す(図49a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図49b)。丸で囲んだ104.2±0.1のm/zピークは、iMetと呼ぶMetのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、それぞれiLeu又はiIleと呼ぶLeu又はIleのインモニウムイオンと一致する。
【0138】
図50は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、25.4分に検出されたEICピーク5のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは、対照サンプルでは検出されなかったm/zピークを245.1±0.1に示す(図50a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図50b)。丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、それぞれiLeu又はiIleと呼ぶLeu又はIleのインモニウムイオンと一致する。
【0139】
図51は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、25.9分に検出されたEICピーク6のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは245.1±0.1にメインm/zピークを示す(図51a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図51b)。丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、それぞれiLeu又はiIleと呼ぶLeu又はIleのインモニウムイオンと一致する。
【0140】
図52は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、26.8分に検出されたEICピーク7のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは297.0±0.1にメインm/zピークを示す(図52a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図52b)。丸で囲んだ120.2±0.1のm/zピークは、iPheと呼ぶPheのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ104.3±0.1のm/zピークは、iMetと呼ぶMetのインモニウムイオンと一致する。
【0141】
図53は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、27.3分に検出されたEICピーク8のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは245.1±0.1にメインm/zピークを示す(図53a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図53b)。丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、それぞれiLeu又はiIleと呼ぶLeu又はIleのインモニウムイオンと一致する。
【0142】
図54は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、29.2分に検出されたEICピーク9のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは297.0±0.1にm/zピークを示す(図54a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図54b)。丸で囲んだ120.1±0.1のm/zピークは、iPheと呼ぶPheのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ104.2±0.1のm/zピークは、iMetと呼ぶMetのインモニウムイオンと一致する。
【0143】
図55は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、30.8分に検出されたEICピーク10のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは279.1±0.1にm/zピークを示す(図55a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図55b)。丸で囲んだ120.1±0.1のm/zピークは、iPheと呼ぶPheのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、それぞれiLeu又はiIleと呼ぶLeu又はIleのインモニウムイオンと一致する。
【0144】
図56は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、31.4分に検出されたEICピーク11のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは279.1±0.1にm/zピークを示す(図56a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図56b)。丸で囲んだ86.5±0.1のm/zピークは、それぞれiLeu又はiIleと呼ぶLeu又はIleのインモニウムイオンと一致し、丸で囲んだ120.1±0.1のm/zピークは、iPheと呼ぶPheのインモニウムイオンと一致する。
【0145】
図57は、YvmCを発現する大腸菌細胞の可溶性画分の分析の間に、33.3分に検出されたEICピーク12のMS及びMS/MSスペクトルを示す。MSスペクトルは、対照サンプルでは検出されなかったマイナーm/zピークを313.1±0.1に示す(図57a)。このピークを親イオンとして単離し、MS/MSフラグメンテーションに供して娘イオンスペクトルを生じさせた(図57b)。丸で囲んだ120.1±0.1のm/zピークは、iPheと呼ぶPheのインモニウムイオンと一致する。
これら全てのEICピークは、ピーク1、ピーク7、ピーク9及びピーク12を除いて、同一質量のロイシル残基又はイソロイシル残基を含有する線状ジペプチドに相当する(表V及びここで言及する図を参照)。
【0146】
最後に、12の線状ジペプチドの保持時間及びフラグメンテーションパターンを、参照の化学合成ジペプチド(表III及びここで言及する図を参照)と比較することにより、本発明者らは、大腸菌細胞におけるYvmC-Bsubの発現が、以下のジペプチドのインビボ形成を担っていると結論付けることができた:Ile-Met、Leu-Met、Met-Leu、Leu-Ile、Ile-Leu、Leu-Leu、Phe-Leu、Leu-Phe、Phe-Phe、Met-Met、Phe-Met及びMet-Phe(表Vを参照)。各検出線状ジペプチドの2つの可能な配列が、Ile-Metを除いて常に観察された。なぜなら、その対応物であるMet-Ileは検出されなかったからである。Met-IleもYvmC-Bsubにより生成されたが、その量が少なすぎて検出できなかったと合理的に推論される。
【0147】
結論として、3つの試験されたCDS(すなわちAlbC、Rv2275及びYvmC-Bsub)は、大腸菌のような細菌細胞に導入して線状ジペプチドを生成するために用いることができる。しかし、上記の基準を満たす全てのCDSが、線状ジペプチドのインビボ合成を導くことができる。
【0148】
実施例3:PCRに基づくアプローチによる、新たなCDSコード配列の単離
以前に示されたように、ストレプトミセス・ノウルセイ及びストレプトミセス・アルブルスは、アルボノウルシンを合成する。ストレプトミセスIMI 351155種は、1-N-メチルアルボノウルシンを合成することが報告されている(Biosynthesis of 1-N-methylalbonoursin by an endophytic Streptomyces sp.Isolated from perennial ryegrass,Gurney及びMantle,J.Nat.Prod.1993,56:1194-1198)。本発明者らはまた、この株が、1-N-メチルアルボノウルシンに加えてアルボノウルシンも生成することを見出した。
【0149】
本発明者らは、この株において1つ以上のCDS相同遺伝子の存在を同定しようとした。
本発明者らは、先ず、ストリンジェント又は非ストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーション実験を行った。しかし、これら実験により、遺伝子albCに対応するプローブ又はストレプトミセス・ノウルセイの他のalb遺伝子(例えばalbA及びalbB)に対応するプローブとハイブリダイズするストレプトミセスIMI 351155種のゲノムDNA中のフラグメントを検出することはできなかった。
【0150】
ストレプトミセス・アルブルスの全ゲノムDNAを用いて行った同じタイプのハイブリダイゼーション実験により、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAフラグメントが明らかになったことに注目すべきである。ストレプトミセス・アルブルスのゲノムDNAからのこれらフラグメントの更なる単離及び特徴決定により、これらフラグメントが、アルボノウルシン及び線状ジペプチドの生合成を導く遺伝子を含有することが確証された。
【0151】
よって、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づくアプローチを開発して、ストレプトミセスIMI 351155種から、albCホモログ、すなわち線状ジペプチドの生合成を担う遺伝子を見出し、単離した。
【0152】
このPCRに基づく反応のためのプライマーを設計するために、本発明者らは、配列番号9及び配列番号10に相当する、既知の全てのCDS中で保存されているアミノ酸モチーフを含む2つの領域を用いた。しかし、プライマーの縮重を制限するために、本発明者らは、いくつかの位置での部分的な保存性を考慮した(これは、サインH-X-[LVI]-[LVI]-G-[LVI]-S(配列番号9)及びY-[LVI]-X-X-E-X-P(配列番号10)の定義では考慮しなかったが)。
プライマーは、配列H-[LVA]-[LVI]-[LVI]-G-[VI]-S(配列番号24)及びY-[VI]-[LICF]-[AD]-E-[ALI]-P-[LFA]-[FY](配列番号25、図59及び60を参照)から設計した。
【0153】
全てのCDS配列の第1のモチーフ中でのアラインメントの一部分を図59に示す。プライマー設計に用いた領域をアラインメントの下に線で示す。番号付けは、エス・ノウルセイからのAlbCのものである。縮重アミノ酸配列を対応するヌクレオチド配列と共に示す。第1のプライマーは次のとおり最終決定した:
5' CAC BYS NTS NTS GGS RTS WSS SC(配列番号22)
(式中、ヌクレオチドについて:B = C又はG又はT、N = A又はC又はG又はT、R = A又はG、S = C又はG、W = A又はT、Y = C又はT)。
【0154】
全てのCDS配列の第2のモチーフ中でのアラインメントの一部分を図60に示す。プライマー設計に用いた領域をアラインメントの下に線で示す。番号付けは、エス・ノウルセイからのAlbCのものである。縮重アミノ酸配列を対応するヌクレオチド配列及びプライマーとして用いた相補鎖(最下行)と共に示す。第2のプライマーは、次のとおり最終決定した:
5' ATG YAS DMS CKS CTC NRS GGS MRS AWG(配列番号23)
(式中、ヌクレオチドについて:D = A又はG又はT、K = G又はT、M = A又はC、N = A又はC又はG又はT、R = A又はG、S = C又はG、W = A又はT、Y = C又はT)。
【0155】
プライマーの縮重を減らすため、ストレプトミセスのコドン使用頻度を考慮した。ストレプトミセスのゲノムDNAはGCリッチであるので、全てのコドンの3番目の位置は、優先的にC又はGである。よって、プライマー中、コドンの3番目の位置に相当する全てのヌクレオチドをC又はGのいずれかに改変した。例えば、プライマー中の残基YはCとし、残基NはSとした。用いた2つの縮重プライマーは、プライマー1 5'-CACBYSNTSNTSGGSRTSWSSSC-3'(配列番号26)及びプライマー2 5'-GWASRMSGGSRNCTCSKCSMDSAYGTA-3'(配列番号27)であった。
【0156】
これらプライマーを用いるPCRを、HT培地での培養3日後のストレプトミセスIMI 351155種から抽出したトータルRNAの逆転写により得られたcDNAに対して行った。この培養時間は、ジペプチド生合成の開始(ジペプチド生合成遺伝子が転写される時間である)に相当する。トータルRNAは十分に確立されたプロトコルを用いて抽出し、cDNAはInvitrogenのキットSuperScript(登録商標)ファーストストランドシステム(RT-PCR用)(First-Strand Synthesis System for RT-PCR)を用いて得た。
【0157】
PCR反応の特異性を増大させるために、以下のようなランピングPCR条件を用いた:95℃にて2分間の最初の変性工程後、アニーリング温度を最初は37℃として、72℃まで15秒ごとに1℃ずつ増加させた。この後に、95℃にて30秒間の変性を行った。このサイクルを2回行った。その後、PCRプログラムは、95℃で30秒間、55℃で1分30秒間及び72℃で1分間の35サイクルからなった。Taqポリメラーゼを用いた。
【0158】
得られたPCR産物を、アガロースゲル電気泳動により分離した。約470bpの微かなバンドが見えた。450〜500bpの範囲のDNAをゲルから抽出し、一部を、プライマー1及び2を用いるPCR増幅の鋳型として用いた。PCRプログラムは、95℃にて2分間の最初の変性工程、続いて、95℃で30秒間、55℃で1分30秒間及び72℃で1分間の35サイクルからなった。Taqポリメラーゼを用いた。PCR産物をアガロースゲル電気泳動により分離した。約470bpのバンドが明確に見えた。このバンドをゲルから抽出し、ベクターpGEMT-Easy(Promega)に連結した。ライゲーションミックスを用いて、コンピテントな大腸菌細胞を形質転換した。プラスミドを9つのクローンから抽出し、挿入断片のヌクレオチド配列を決定した。全ての挿入断片は非常によく似ており、これらの間の差異は、2つの縮重プライマーに相当する領域に存在した。推定産物は、ストレプトミセス・ノウルセイのAlbCと似ていた(アミノ酸で42%の同一性)。
【0159】
ストレプトミセスIMI351155種の完全albCホモログ(以下、albC-IMIという)を得るために、ストレプトミセスIMI351155種のゲノムDNAの遺伝子ライブラリーを、コスミドpWED2中に構築した(Karrayら,2007,Organization of the biosynthetic gene cluster for the macrolide antibiotic spiramycin in Streptomyces ambofaciens,Microbiology,近刊)。albC-IMI遺伝子の部分に相当するクローニングされたPCRフラグメントを、コロニーハイブリダイゼーション実験のプローブとして用いた。このことにより、プローブと強くハイブリダイズする4つのクローンが単離された。これらが含有するコスミドを抽出し、挿入断片中にalbC-IMIプローブとハイブリダイズするフラグメントを有することを示した。
【0160】
これらフラグメントをサブクローニングし、ヌクレオチド配列を決定した。このことにより、ストレプトミセス・ノウルセイのAlbA、AlbB及びAlbCとそれぞれ51%、50%及び40%のアミノ酸同一性を示すタンパク質をコードする3つの遺伝子albA-IMI、albB-IMI及びalbC-IMIの特徴が決定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1と少なくとも20%の同一性で90%以下の同一性を有し、且つ一般式(i):
R1 - R2 (i)
(式中、R1及びR2は同じであっても異なってもよく、各々が任意のアミノ酸を表し得る)
の線状ジペプチドの形成を触媒する能力を有するタンパク質又はそのフラグメントからなる群より選択されることを特徴とする単離された天然若しくは合成のタンパク質又はその少なくとも7アミノ酸残基を含む活性フラグメントの使用。
【請求項2】
配列番号1と少なくとも20%で35%以下の同一性を有する請求項1に記載のタンパク質又はその活性フラグメントの使用。
【請求項3】
配列番号9の一般配列:
H - X - [LVI] - [LVI] - G - [LVI] - S (配列番号9)
(式中、H = ヒスチジン、X = 任意のアミノ酸。[LVI] =ロイシン、バリン又はイソロイシンのいずれか1つ、G = グリシン、及びS = セリン)
の第1の保存アミノ酸配列を含む請求項1又は2に記載のタンパク質又はその活性フラグメントの使用。
【請求項4】
配列番号10の一般配列:
Y - [LVI] - X - X - E - X - P (配列番号10)
(式中、Y = チロシン、[LVI] = ロイシン、バリン又はイソロイシンのいずれか1つ、X = 任意のアミノ酸、E = グルタミン酸、及びP = プロリン)
の第2の保存アミノ酸配列を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のタンパク質又はその活性フラグメントの使用。
【請求項5】
前記第1の保存アミノ酸配列と前記第2のアミノ酸配列とが、少なくとも120アミノ酸残基で160以下のアミノ酸残基により隔てられている請求項4に記載のタンパク質又はその活性フラグメントの使用。
【請求項6】
前記第1の保存アミノ酸配列と前記第2のアミノ酸配列とが、少なくとも140アミノ酸残基で150以下のアミノ酸残基により隔てられている請求項5に記載のタンパク質又はその活性フラグメントの使用。
【請求項7】
前記第1の保存アミノ酸配列が配列番号1の残基31〜37に相当する請求項3〜6のいずれか1項に記載のタンパク質又はその活性フラグメントの使用。
【請求項8】
前記第2の保存アミノ酸配列が配列番号1の残基178〜184に相当する請求項4〜8のいずれか1項に記載のタンパク質又はその活性フラグメントの使用。
【請求項9】
前記タンパク質又はその活性フラグメントが、バチルス属、コリネバクテリウム属、マイコバクテリウム属、ストレプトミセス属、フォトラブダス属又はスタフィロコッカス属に属する微生物から単離された請求項1〜8のいずれか1項に記載のタンパク質又はその活性フラグメントの使用。
【請求項10】
前記タンパク質又はその活性フラグメントが、バチルス・リケニフォルミス、バチルス・サチリス亜種サチリス、バチルス・チューリンゲンシス血清型イスラエレンシス、フォトラブダス・ルミネセンス亜種ラウモンディイ、スタフィロコッカス・ヘモリティカス、コリネバクテリウム・ジェイケイウム、結核菌、マイコバクテリウム・ボビス又はマイコバクテリウム・ボビスBCGから選択される微生物から単離された請求項1〜9のいずれか1項に記載のタンパク質又はその活性フラグメントの使用。
【請求項11】
前記タンパク質又はその活性フラグメントが、AlbC(配列番号1)、Rv2275(配列番号2)、MT2335(配列番号2)、MRA2294(配列番号2)、TBFG12300(配列番号2)、Mb2298(配列番号2)、BCG2292(配列番号34)、YvmC-Bsub(配列番号3)、YvmClic(配列番号4)、YvmC-Bthu(配列番号5)、pSHaeC06(配列番号6)、Plu0297(配列番号7)、JK0923(配列番号8)、AlbC-his(配列番号35)、Rv2275-his(配列番号36)、YvmC-Bsub-his(配列番号37)からなる群より選択される請求項1〜8のいずれか1項に記載のタンパク質又はその活性フラグメントの使用。
【請求項12】
前記線状ジペプチドが、Phe-Leu、Leu-Phe、Phe-Phe、Phe-Tyr、Tyr-Phe、Leu-Leu、Leu-Tyr、Tyr-Leu、Phe-Met、Met-Phe、Leu-Met、Met-Leu、Tyr-Met、Met-Tyr、Met-Met、Tyr-Tyr、Ile-Met、Met-Ile、Leu-Ile、Ile-Leuからなる群より選択される請求項1〜11のいずれか1項に記載のタンパク質又はその活性フラグメントの使用。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項で特定されるか、又は配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号20、配列番号21、配列番号17の114位〜861位、配列番号18の114位〜1008位及び配列番号19の114位〜885位からなる群より選択されるタンパク質又はその活性フラグメントをコードする単離された天然又は合成の核酸配列の使用。
【請求項14】
請求項13に記載の核酸コード配列を含み、該核酸コード配列を少なくとも1つの宿主細胞に導入するように構成され、そのことにより前記コード配列が前記宿主細胞の内因性発現機構によって発現される、組換えベクター。
【請求項15】
請求項13に記載の核酸コード配列を含み、配列番号17、配列番号18及び配列番号19を含む群から選択される組換えベクター。
【請求項16】
少なくとも2つのタンパク質又はその活性フラグメントのコード配列を含む請求項14に記載の組換えベクター。
【請求項17】
前記少なくとも2つのコード配列が異なる遺伝子に由来する請求項16に記載の組換えベクター。
【請求項18】
前記少なくとも2つのコード配列が単一遺伝子に由来する請求項17に記載の組換えベクター。
【請求項19】
前記宿主細胞が原核生物である請求項14〜18のいずれか1項に記載の組換えベクター。
【請求項20】
前記宿主細胞が大腸菌である請求項14〜19のいずれか1項に記載の組換えベクター。
【請求項21】
請求項13に記載の核酸コード配列を含み、該核酸コード配列を無細胞発現系において、該無細胞発現系の内因性転写機構により発現するように構成されている組換えベクター。
【請求項22】
a)1種以上のアミノ酸から線状ジペプチドを形成する活性を有するタンパク質又はその活性フラグメントを生成する能力を有する宿主細胞を培地で培養する工程と、
b)前記線状ジペプチドを形成させ、前記宿主細胞中及び任意に前記培地中に蓄積させる工程と、
c)前記宿主細胞の抽出物及び任意に前記培地から前記線状ジペプチドを回収する工程と
を含み、前記タンパク質又はその活性フラグメントが、配列番号1と少なくとも20%の同一性で90%以下の同一性を有するタンパク質及びそのフラグメントからなる群より選択されることを特徴とする、線状ジペプチドの製造方法。
【請求項23】
前記タンパク質又はその活性フラグメントが、前記宿主細胞の内因性遺伝子によりコードされる請求項22に記載の線状ジペプチドの製造方法。
【請求項24】
前記タンパク質又はその活性フラグメントが、前記宿主細胞の内因性遺伝子によりコードされない請求項23に記載の線状ジペプチドの製造方法。
【請求項25】
前記宿主細胞が、少なくとも2つのタンパク質又はその活性フラグメントのコード配列を含む請求項22〜24のいずれか1項に記載の線状ジペプチドの製造方法。
【請求項26】
前記少なくとも2つのコード配列が異なる遺伝子に由来する請求項25に記載の線状ジペプチドの製造方法。
【請求項27】
前記少なくとも2つのコード配列が単一遺伝子に由来する請求項25に記載の線状ジペプチドの製造方法。
【請求項28】
a)無細胞発現系を、1種以上のアミノ酸からジペプチドを形成する活性を有するタンパク質又はその活性フラグメントを生成するように誘発する工程と、
b)少なくとも1つのアミノ酸基質を、前記タンパク質又はその活性フラグメントに導入する工程と、
c)前記ジペプチドを形成及び蓄積させる工程と、
d)前記ジペプチドを回収する工程と
を含み、前記タンパク質又はその活性フラグメントが、配列番号1と少なくとも20%の同一性で90%以下の同一性を有するタンパク質及びそのフラグメントからなる群より選択されることを特徴とする、線状ジペプチドの製造方法。
【請求項29】
一般式(i):
R1 - R2 (i)
(式中、R1及びR2は同じであっても異なってもよく、各々が任意のアミノ酸を表し得る)
の線状ジペプチドの形成を触媒するポリペプチドを同定する方法であって、
a)以下のモチーフ:
H - X - [LVI] - [LVI] - G - [LVI] - S (配列番号9)
(式中、H = ヒスチジン、X = 任意のアミノ酸、[LVI] = ロイシン、バリン又はイソロイシンのいずれか1つ、G = グリシン及びS = セリンであって、
H、LVI、G又はSの少なくとも1つは別のアミノ酸であり得る、すなわちHはリジン又はアルギニンのいずれか1つで置き換えられることができ、LVIはグリシン、アラニン、ロイシン、バリン又はイソロイシンのいずれか1つで置き換えられることができ、Gはグリシン、アラニン、ロイシン、バリン又はイソロイシンのいずれか1つで置き換えられることができ、Sはシステイン、スレオニン又はメチオニンで置き換えられることができる)
Y - [LVI] - X - X - E - X - P (配列番号10)
(式中、Y = チロシン、[LVI] = ロイシン、バリン又はイソロイシンのいずれか1つ、X = 任意のアミノ酸、E = グルタミン酸及びP = プロリンであって、
Y、LVI、E、X又はPの少なくとも1つは別のアミノ酸であり得る、すなわちYはフェニルアラニン又はトリプトファンのいずれか1つで置き換えられることができ、LVIはグリシン、アラニン、ロイシン、バリン又はイソロイシンのいずれか1つで置き換えられることができ、Eはアスパラギン酸、アスパラギン、グルタミンのいずれか1つで置き換えられることができ、Pはグリシン、アラニン、ロイシン、バリン又はイソロイシンのいずれか1つで置き換えられることができる)
の少なくとも一方を有する候補ポリペプチド配列を同定する工程と、
b)前記候補ポリペプチドのコード配列を、前記候補ポリペプチドを適切なレベルで発現するように構成されたプロモーター配列に連結することにより、ポリペプチド発現構築物を創出する工程と、
c)前記ポリペプチド発現構築物を少なくとも1つの細胞に導入し、前記少なくとも1つの細胞又は無細胞発現系による前記ポリペプチド発現構築物の取り込みを誘発する工程と、
d)前記少なくとも1つの細胞の増殖培地中又は前記無細胞発現系中の線状ジペプチドのレベル及び種類をモニターする工程と、
e)前記ポリペプチド発現構築物の存在下での線状ジペプチドのレベルを、前記ポリペプチド発現構築物の非存在下での線状ジペプチドのレベルと比較して、前記ポリペプチド発現構築物による線状ジペプチドの相対的生成レベルを決定する工程と、
f)線状ジペプチドの相対的生成を、前記少なくとも1つの細胞又は前記無細胞発現系における前記候補ポリペプチドの発現と相関させる工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項30】
一般式(i):
R1 - R2 (i)
(式中、R1及びR2は同じであっても異なってもよく、各々が任意のアミノ酸を表し得る)
の線状ジペプチドの形成を触媒するポリペプチドを同定する方法であって、
a)以下のモチーフ:
H - X - [LVI] - [LVI] - G - [LVI] - S (配列番号9)
(式中、H = ヒスチジン、X = 任意のアミノ酸、[LVI] = ロイシン、バリン又はイソロイシンのいずれか1つ、G = グリシン及びS = セリンであって、
H、LVI、G又はSの少なくとも1つは別のアミノ酸であり得る、すなわちHはリジン又はアルギニンのいずれか1つで置き換えられることができ、LVIはグリシン、アラニン、ロイシン、バリン又はイソロイシンのいずれか1つで置き換えられることができ、Gはグリシン、アラニン、ロイシン、バリン又はイソロイシンのいずれか1つで置き換えられることができ、Sはシステイン、スレオニン又はメチオニンで置き換えられることができる)
Y - [LVI] - X - X - E - X - P (配列番号10)
(式中、Y = チロシン、[LVI] = ロイシン、バリン又はイソロイシンのいずれか1つ、X = 任意のアミノ酸、E = グルタミン酸及びP = プロリンであって、
Y、LVI、E、X又はPの少なくとも1つは別のアミノ酸であり得る、すなわちYはフェニルアラニン又はトリプトファンのいずれか1つで置き換えられることができ、LVIはグリシン、アラニン、ロイシン、バリン又はイソロイシンのいずれか1つで置き換えられることができ、Eはアスパラギン酸、アスパラギン、グルタミンのいずれか1つで置き換えられることができ、Pはグリシン、アラニン、ロイシン、バリン又はイソロイシンのいずれか1つで置き換えられることができる)
の両方を有する候補ポリペプチド配列を同定する工程と、
b)前記候補ポリペプチドのコード配列を、前記候補ポリペプチドを適切なレベルで発現するように構成されたプロモーター配列に連結することにより、ポリペプチド発現構築物を創出する工程と、
c)前記ポリペプチド発現構築物を少なくとも1つの細胞に導入し、前記少なくとも1つの細胞又は無細胞発現系による前記ポリペプチド発現構築物の取り込みを誘発する工程と、
d)前記少なくとも1つの細胞の増殖培地中又は前記無細胞発現系中の線状ジペプチドのレベル及び種類をモニターする工程と、
e)前記ポリペプチド発現構築物の存在下での線状ジペプチドのレベルを、前記ポリペプチド発現構築物の非存在下での線状ジペプチドのレベルと比較して、前記ポリペプチド発現構築物による線状ジペプチドの相対生成レベルを決定する工程と、
f)線状ジペプチドの相対的生成を、前記少なくとも1つの細胞又は前記無細胞発現系における前記候補ポリペプチドの発現と相関させる工程と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
前記第1の保存モチーフ(配列番号9)と前記第2の保存モチーフ(配列番号10)とが、少なくとも75で250以下のアミノ酸により隔てられている請求項30に記載のポリペプチドを同定する方法。
【請求項32】
前記第1の保存モチーフ(配列番号9)及び/又は前記第2の保存モチーフ(配列番号10)が、1より多い残基の変更を含む請求項30又は31に記載のポリペプチドを同定する方法。
【請求項33】
工程a)が、ポリメラーゼ連鎖反応において配列番号22及び配列番号23の縮重プライマーを用いる候補ペプチドコード核酸配列の増幅を含む請求項29、30、31又は32のいずれか1項に記載のポリペプチドを同定する方法。
【請求項34】
一般式(i):
R1 - R2 (i)
(式中、R1及びR2は同じであっても異なってもよく、各々が任意のアミノ酸を表し得る)
の線状ジペプチドの形成を触媒するポリペプチドを同定する方法であって、
a)配列番号1と少なくとも20%の同一性で90%以下の同一性を有するか、又は配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号35、配列番号36、配列番号37のいずれか1つと少なくとも20%の同一性を有する候補ポリペプチドを同定する工程と、
b)前記候補ポリペプチド配列を、該候補ポリペプチドを適切なレベルで発現するように構成されたプロモーター配列に連結することによりポリペプチド発現構築物を創出する工程と、
c)前記ポリペプチド発現構築物を少なくとも1つの細胞に導入し、前記少なくとも1つの細胞又は無細胞発現系による前記ポリペプチド発現構築物の取り込みを誘発する工程と、
d)前記少なくとも1つの細胞の増殖培地中又は前記無細胞発現系中の線状ジペプチドのレベル及び種類をモニターする工程と、
e)前記ポリペプチド発現構築物の存在下での線状ジペプチドのレベルを、前記ポリペプチド発現構築物の非存在下での線状ジペプチドのレベルと比較して、前記ポリペプチド発現構築物による線状ジペプチドの相対生成レベルを決定する工程と、
f)線状ジペプチドの相対的生成を、前記少なくとも1つの細胞又は前記無細胞発現系における前記候補ポリペプチドの発現と相関させる工程と
を含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【公表番号】特表2011−500098(P2011−500098A)
【公表日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−531595(P2010−531595)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【国際出願番号】PCT/IB2007/004231
【国際公開番号】WO2009/056901
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(308032666)協和発酵バイオ株式会社 (41)
【出願人】(510120333)
【氏名又は名称原語表記】COMMISSARIAT A L’ENERGIE ATOMIQUE ET AUX ENERGIES ALTERNATIVES
【住所又は居所原語表記】25, rue Leblanc, Batiment  Le Ponant D , 75015 PARIS, France
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【出願人】(508318904)ユニベルシテ パリ サッド 11 (5)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE PARIS SUD 11
【住所又は居所原語表記】15 Rue Georges Clemenceau,F−91405 Cedex Orsay,France
【Fターム(参考)】