説明

シクロデキストリン又はその誘導体の水性液体組成物及び該組成物を使用する方法

シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体、少なくとも一種の乳化剤及び樹脂仕上げ剤又は架橋剤を含む水性液体組成物は、保存安定性に優れかつ適した基材、例えば繊維材料を処理するための仕上げプロセスにおいて有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロデキストリンもしくはその誘導体、樹脂仕上げ剤又は架橋剤及び少なくとも一種の乳化剤を含む、仕上げ用途における優れた安定性の水性液体組成物、及び該組成物を使用する適した基材、特に繊維材料を処理する方法に関する。
【0002】
工業的な仕上げプロセスは、水性媒体中で実施されるのが普通である。仕上げプロセス用に使用される場合には、粉末又は顆粒の形態で市販されている仕上げ剤は、水を使用した水性媒体中に溶解しなければならない。
【0003】
近年においては、そのような仕上げプロセスは、多くの態様で機械化されかつ自動化されてきており、従って、仕上げ剤は、分散系用に適した形態に造ることが熱望されてきている。
【0004】
シクロデキストリンは、種々の数のD−グルコピラノシル単位、例えば6、7又は8単位(α−、β−又はγ−シクロデキストリン)がアルファ−(1,4)グリコシド結合によって接続されて構成され、それにより中央キャビティを画定する環状形状のケージ様分子である。α−シクロデキストリンの化学式を下記に示す。
【0005】
【化10】

【0006】
天然のシクロデキストリンは、幾種かの生物によって産生される酵素であるシクロデキストリングリコシルトランスフェラーゼ(CGTase)の作用によってデンプンから製造され、Bacillus maceransが最も初めの起源である。これらの環状オリゴマー糖の最も適した三次元形状は、溶媒環境に、それぞれ第二及び第一ヒドロキシル基を表わすトロイドの上部(一層大きい)及び下部(一層小さい)開口を有するトロイドの形態を取る。トロイドの内部は、大部分がグリコシドの酸素原子によってもたらされる電子に富む環境の結果、疎水性である。それは、原子間(ファンデアワールス)、熱力学的(水素結合)、及び溶媒(疎水性)力の相互作用であり、それが、シクロデキストリンキャビティの無極性環境にある間、化学物質と安定な複合体を形成することができることのの原因となる。複合体は、シクロデキストリン、ゲスト分子及び水の濃度に依存する平衡状態で存在する。付随する複合体を形成する速度は、シクロデキストリンキャビティへのゲスト分子の接近容易性及び正味の熱力学的駆動力の大きさによって大部分が決まる。
【0007】
非複合化シクロデキストリン誘導体は、汗による悪臭を低減し又は防ぐために、繊維材料を処理するための仕上げ剤として使用されてきた(DE−A−40 35 378)。その上に、非複合化シクロデキストリン誘導体は、香気及び香料の複合化(DE−A−40 35 378)又は抗菌物質(WO−A−02/22941)の可能性を与え、これらは、ゆっくりと放出されかつ長続きする香気又は持続性抗菌作用を仕上げされた繊維材料に付与する。抗菌薬が持続して存在することは、物質を一層衛生的にし、汚染を交配させる傾向を一層低減しかつ一層新鮮なものにする。
【0008】
シクロデキストリン又はそのシクロデキストリン誘導体の水性液体組成物は、有利であると考えられる、と言うのは、それは、自動秤量及び分配系に適しており、取り扱う間に粉末散乱を引き起こさず、その結果、作業環境の汚染を生じないからであり、かつその上に、シクロデキストリン又はその誘導体の水性液体組成物は、エネルギー及び労働を節約する働きをすることができる、と言うのは、置換されたシクロデキストリン誘導体は、水と接触する際に、膨潤する傾向にあり、従ってほとんど溶解することができない塊を形成する強い傾向を有するからである。
【0009】
よって、本発明の主題は、下記を含む安定な水性液体組成物を提供するにある:
a)シクロデキストリン又はその誘導体、
b)樹脂仕上げ剤又は架橋剤、及び
c)式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)少なくとも一種の乳化剤:
【化11】


(式中、R及びRは、炭素原子12〜24を有するアルキル又はアルケニルであり、Mは、水素、アルカリ金属又はアンモニウムでありそしてsは、2〜14の整数である)、
【化12】


(式中、Rは、炭素原子12〜24を有するアルキル又はアルケニルであり、Mは、水素、アルカリ金属又はアンモニウムであり、そしてm及びnは、m及びnの合計が2〜14になるような整数である)、
【化13】


(式中、Rは、炭素原子12〜24を有するアルキル又はアルケニルであり、Qは、C−Cアルキルであり、Aは、アニオン、特にCH−SO−アニオンアニオンであり、そしてp及びqは、p及びqの合計が15〜55になるような整数である)、
【化14】


(式中、Rは、炭素原子12〜24を有するアルキル又はアルケニルであり、r及びtは、r及びtの合計が14〜19になるような整数であり、そしてMは、アルカリ金属又はアンモニウムである)、
【化15】


(式中、Rは、炭素原子12〜22を有するアルキル又はアルケニルであり、x及びyは、x及びyの合計が80〜140になるような整数である)、或は
下記式のエチレンオキシド6〜15モルを含有するイソトリデシルアルコール:
【化16】


(式中、nは、6〜15の整数である)。
【0010】
乳化剤は、その他の仕上げ剤、例えば軟化剤、撥油剤、撥水剤、汚染剥離剤、難燃剤又はその他の有効な仕上げ剤を一緒に一仕上げ工程で織物に適用する時に、配合物の可撓性を助成する。樹脂仕上げ剤又は架橋剤は、シクロデキストリン又はその誘導体を、材料、特に紡織繊維材料に結合させるのを助成する。熱後処理は、材料、特に織物コンパウンド上にポリマーフィルムを築くかであり、又は材料内、特に紡織繊維材料内で周囲温度もしくは高い温度において架橋を引き起こす。樹脂仕上げ剤又は架橋剤は、ポリマーフィルムに網目をつける或は該材料の求核性もしくは求電子性部位又は化学基との化学反応を受けることが可能なコンパウンドである。本組成物が安定な仕上げ液になることは、驚くべきことでありかつ予測することはできなかった。
【0011】
式(3)中のラジカルQ及びアニオンAは、四級化剤に由来する。Qは、置換された又は非置換のアルキルラジカルである。適したそのような四級化剤の例は、クロロアセトアミド、エチルブロミド、エチレンクロロヒドリン、エチレンブロモヒドリン、エピクロロヒドリン、エピブロモヒドリン、及び特に、ジメチルスルフェートである。
【0012】
特に好適な乳化剤又はそれらの混合物は、式(3)、(4)及び(6)のものである。
【0013】
乳化剤は、シクロデキストリン又はその誘導体と乳化剤とのモル比が、1:0.005〜1:10であり、シクロデキストリン又はその誘導体と乳化剤とのモル比1:0.05〜1:2が好適であり、シクロデキストリン又はその誘導体と乳化剤との特に好適なモル比が、1:0.2〜1:1である量で用いることができる。
【0014】
式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)の化合物は、知られており、既知のプロセスに従って調製することができる。式(1)及び(2)の化合物は、エチレンオキシド2〜14モルを、炭素原子12〜24個を有するアルキル又はアルケニルラジカルを有する脂肪族アミンに付加し、付加物を酸エステルに転化し、そして後者を、所望ならばそのアルカリ金属又はアンモニウム塩に転化することによって、調製することができる。式(3)の化合物は、例えばエチレンオキシド15〜55モルを、炭素原子12〜24個を有するアルキル又はアルケニルラジカルを有する脂肪族アミンに付加し、付加物を上述した四級化剤と反応させるて式(3)の化合物を得ることによって、調製することができる。式(4)の化合物は、式(1)の化合物に類似して一層少ない量を使用して付加物を酸エステルに転化し、そして後者を、所望ならばそのアルカリ金属又はアンモニウム塩に転化して調製する。式(5)の化合物は、エチレンオキシド80〜140モルを下記式の化合物に付加することによって調製する:
【0015】
【化17】


(式中、Rは、式(5)で定義した通りである)。
【0016】
式(1)、(2)、(3)及び(4)の化合物の調製において出発原料として必要なアミンは、炭素原子12〜24個、好ましくは16〜22個を有する飽和又は不飽和の、枝分かれした、又は枝無しの炭化水素ラジカルを有することができる。アミンは、単一の化合物に又は混合物の形態にすることができる。使用するアミン混合物は、天然の脂肪もしくは油、例えばタロー脂肪又は大豆又はやし油を転化して対応するアミンにする際に形成されるものが好ましい。アミンの具体例は、ドデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、アラキジルアミン、ベヘニルアミン、及びオクタデセニルアミンである。エチレンオキシドの付加ばかりでなく、また、エステル化をそれら自体知られている方法に従って実施することもできる。エステル化は、硫酸又はその官能性誘導体、例えばクロロ硫酸又は特にスルファミン酸によって行うことができる。エステル化は、単に反応体を加熱、有利には温度50°〜100℃で加熱しながら混合することによって実施するのが普通である。塩基、例えばアンモニア又は水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムを従来の様式で加えることによって、遊離の酸をアルカリ金属又はアンモニウム塩に転化することができる。
【0017】
シクロデキストリン誘導体は、複合化しなくても、或は例えば、抗菌薬、殺生剤、殺菌剤、殺虫剤、殺カビ剤、製薬活性化合物、UV−安定剤、香料、芳香、フェロモン、ビタミン又はスキン−、ヘア及びテクスタイル利点剤、例えばUV−吸収剤、脂肪酸、アンチ・イリタント、炎症剤又は化粧剤、例えばスキン安定剤、鎮静剤、加温剤、冷却剤、しわ減少剤剤もしくはしわ予防剤と複合化してもよい。
【0018】
複合化した反応性シクロデキストリン誘導体の調製は、WO−A02/22941に記載されているような既知のプロセスに従って実施することができる。
【0019】
シクロデキストリン誘導体として、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン、その他の非反応性の置換されたβ−シクロデキストリン、又は繊維反応性基を有するシクロデキストリンを使用することが適している。
【0020】
シクロデキストリン誘導体の反応性基は、適した基材、例えば紡織繊維材料の官能基、例えばセルロースのヒドロキシル基、ウール及び絹の場合のアミノ、カルボキシル、ヒドロキシル又はチオール基と、或は共有化学結合の形成を有する合成ポリアミドのアミノ及び可能ならカルボキシル基と反応することができる基である。反応性基は、シクロデキストリン誘導体の炭素原子に直接又はブリッジ部材を経て結合されるのが普通である。適した反応性基の例は、脂肪族、芳香族上に、又は好ましくは複素環式ラジカル上に少なくとも1個の分離可能な置換基を含有するもの、或は上述したラジカルが繊維材料と反応するのに適したラジカルを含有するものを含む。適したブリッジ部材であって、それらに従って繊維反応性基がシクロデキストリン誘導体の炭素原子に結合されることができるものの例は、−NH―、―O−CO−及び―O−、特に―O−CO−及び―O−、好ましくは―O−である。
【0021】
反応性シクロデキストリン誘導体は、知られており、そのような反応性シクロデキストリン誘導体の調製は、既知のプロセスに従って実施することができる。
【0022】
セルロース又はポリビニルアルコールのヒドロキシル基と反応することができるアルデヒド基を含有する反応性シクロデキストリン誘導体は、EP−A−0 483 380に記載されている。
【0023】
A.Deratani,B.Popping,Makromol.Chem.Rapid Commun.13(1992)237は、β−シクロデキストリンを水性媒体中でエピクロロヒドリンと反応させることによる、シクロデキストリンクロロヒドリン(3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル−シクロデキストリン誘導体)の製法について記載している。
【0024】
ドイツ国特許出願第101 55 782.5は、その上に、反応性色素の分野で良く知られている反応性2,3−ジブロモプロピオニル−又はビニルスルホニル基を含有するβ−シクロデキストリンの製法について開示している。
【0025】
本質的に、Venkataraman“The Chemistry of Synthetic Dyes”Vol.6,pages 1−209,Academic Press,New York,London 1972又はEP−A−625 549及びUS−A−5 684 138に記載されているような、反応性色素の分野で知られているすべての繊維反応性基が、適している。
【0026】
反応性基の更なる例は、分離可能な原子又は基によって置換された炭素環式又は複素環式4−、5−又は6−員環を含有する反応性ラジカルを含む。複素環式ラジカルの例は、複素環に結合された少なくとも1個の分離可能な置換基を含有する複素環式ラジカル;及びトリアジン、ピリジン又はピリミジンに関しては、5−又は6−員複素環に結合された少なくとも1個の反応性置換基を含有するものを含む。上述した複素環式反応性ラジカルは、更に、直接結合又はブリッジ部材を経て更なる反応性ラジカルを含有してよい。そのような反応性シクロデキストリン誘導体は、US−A−5 728 823に記載されている。
【0027】
本発明は、また、反応性シクロデキストリン誘導体の水解物を含有する組成物も含む。反応性シクロデキストリン誘導体の水解物は、反応性基と水とを知られた様式で反応させる際に形成される。反応性シクロデキストリン誘導体を含有する組成物が好適である。
【0028】
シクロデキストリン誘導体の反応性基は、ビニルスルホニル、α,β−ジハロプロピオニル、α−ハロアクリロイル(ここで、ハロは、例えばブロモ又はクロロ、特にブロモである)或はハロゲン、特にフッ素又は塩素、及び非置換のもしくは置換されたピリジニウムからなる群より選ぶ置換基を少なくとも1個有する窒素含有複素環であるのが好ましい。ビニルスルホニルは、また、式−SO−CH−CH−Z(式中、Zは、アルカリ条件下で除去できる基である)に相当するその前駆物質も含むことになる。Zは、例えば、−Cl、−Br、−F、−OSOH、−SSOH、−OCO−CH、−OPO、−OCO−C、−OSO−C−Cアルキル又は−OSO−N(C−Cアルキル)である。Zは、式−Cl、−OSOH、−SSOH、−OCO−CH、−OCO−C又は−OPO、特に−Cl又は−OSOH、一層特に−OSOHであるのが好ましい。
【0029】
シクロデキストリン誘導体の反応性基は、ハロゲン、特にフッ素又は塩素及び非置換のもしくは置換されたピリジニウムからなる群より選ぶ置換基を少なくとも1個有する窒素含有複素環であるのが、一層好ましい。
【0030】
窒素含有複素環式反応性基の具体例は、下記である:
a)下記式のトリアジン基:
【化18】


(式中、Rは、フッ素、塩素、非置換の又はカルボキシ置換されたピリジニウム又はヒドロキシ、好ましくは、フッ素、塩素或は非置換の又はカルボキシ置換されたピリジニウムであり、そして
は、Rについて上に定義した通りであるか、或は式−OR又は−N(R10)R11の基であり、ここで、Rは、水素、アルカリ、非置換の又はヒドロキシもしくはC−Cアルコキシで置換されたC−Cアルキルであり、そして
10及びR11は、互いに独立して、水素;非置換の又はC−Cアルコキシ、ヒドロキシ、スルホ、スルファトもしくはカルボキシで置換されたC−Cアルキルであるか;或はC−Cアルキル、C−Cアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、カルボキシ又はスルホで置換されたフェニルであり);
b)下記式のピリミジニル基:
【化19】


(式中、ラジカルR12及びR13の内の1個がフッ素又は塩素であり、ラジカルR12及びR13の内の他の1個がフッ素、塩素、或は上に定義した通りの式−OR又は−N(R10)R11であり、そして
14は、C−Cアルキルスルホニル、C−Cアルコキシスルホニル、C−Cアルコキシカルボニル、C−Cアルカノイル、塩素、ニトロ、シアノ、カルボキシ又はヒドロキシであり;
c)或は下記式のジクロロキノキサリン基:
【化20】

【0031】
式(6)の基、特にRが塩素であるものが極めて好適である。Rは、式−OR(式中、Rは、水素、アルカリ又はC−Cアルキルである)のラジカルであるのが好ましい。好適なRラジカルは、式−OR(式中、Rは、水素、アルカリ又はC−Cアルキル、特に水素又はアルカリである)のものである。アルカリが極めて好適である。アルカリは、ナトリウムであるのが好ましい。
【0032】
シクロデキストリン誘導体は、反応性基を、例えば1〜4個、好ましくは2〜3個含有する。
【0033】
シクロデキストリン誘導体は、複合化しなくても或は例えば、抗菌薬、殺生剤、殺菌剤、殺虫剤、殺カビ剤、製薬活性化合物、UV−安定剤、香料、芳香、フェロモン、ビタミン又はスキン−、ヘア及びテクスタイル利点剤、例えばUV−吸収剤、脂肪酸、アンチ・イリタント、炎症剤又は化粧剤、例えばスキン安定剤、鎮静剤、加温剤、冷却剤、しわ減少剤剤もしくはしわ予防剤と複合化してもよい。
【0034】
複合化した反応性シクロデキストリン誘導体の調製は、WO−A02/22941に記載されているような既知のプロセスに従って実施することができる。
【0035】
組成物は、また、pH調整剤、例えば鉱酸、有機酸又は塩基を含んでもよい。
【0036】
本発明に従う水性液体組成物は、更なる添加剤として、織物仕上げ剤、保湿剤、脱泡剤及び凍結防止剤を含んでよい。
【0037】
発明に従う組成物中の織物仕上げ剤として、新しいもしくは向上した織物性能又は消費者の容認性もしくは所望を加えることを目的に、繊維薬品又は組成物、例えば柔軟剤、起毛剤、サンホライジング剤、撥油剤、撥水剤、アンチフィブリル化剤、難燃剤を考慮に入れる。
【0038】
発明に従う組成物中の保湿剤として、例えば、尿素又は乳酸ナトリウム(50〜60%水溶液の形態であるのが有利である)及びグリセロール及び/又はプロピレングリコールの混合物を好ましくは0.1〜30重量%、特に2〜30重量%の量で考慮に入れる。
【0039】
水性液体組成物は、例えば、下記の様式で調製することができる。β−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン又は繊維反応性シクロデキストリンの内の一種(例えばCavasol W7 MCT(登録商標))に、水及び乳化剤又は二種以上の乳化剤の混合物を、特にシクロデキストリン:乳化剤のモル量1:0.005〜1:10で混合する。
【0040】
その後に、水及び樹脂仕上げ剤又は架橋剤を加え、そして所望ならば、その他の織物仕上げ剤を溶液に加えて織物仕上げプロセスにおいて所望の濃度のシクロデキストリンを有する水性液体組成物を得る。
【0041】
組成物中の樹脂仕上げ剤又は架橋剤の量は、1〜300グラム/リットルの間で変えてよい。シクロデキストリン又はシクロデキストリン誘導体の量は、0.5〜100グラム/リットルの間で変えてよい。
【0042】
発明に従う組成物は、仕上げプロセスにおいて、広範囲の種類の基材、例えば紙、紡織繊維材料、ケラチン状繊維、例えば人の髪、革、或は繊維反応性シクロデキストリンとの反応を受けやすいポリマー、例えばポリビニルアルコール又はアクリル酸、メタクリル酸もしくはヒドロキシエチルメタクリレートのポリマー又はコポリマーで造られるプラスチックのフィルムもしくはホイルについて利点剤として適しており、それによりそのような基材の表面を改変する。
【0043】
優れた効果耐久性を生じ得る織物仕上げプロセスにおける樹脂仕上げ剤又は架橋剤として、異なる剤、例えばジメチロール−尿素、ジメトキシ−メチル−尿素、トリメトキシ−メチル−メラミン、テトラメトキシ−メチル−メラミン、ヘキサメトキシ−メチル−メラミン、ジメチロール−ジヒドロキシ−エチレン−尿素、ジメチロール−プロピレン−尿素、ジメチロール−4−メトキシ−5,5’−ジメチル−プロピレン−尿素、ジメチロール−5−ヒドロキシプロピレン−尿素、ブタン−テトラ−カルボン酸、クエン酸、マレイン酸、結合剤、特にアクリレート、シリコーン、ウレタン及びブタジエンを使用することができる。そのような織物仕上げプロセスは、例えばDE−A−40 35 378に記載されている。
【0044】
好適な樹脂仕上げ剤又は架橋剤の群は、ジメチロール−尿素、ジメトキシ−メチル−尿素、トリメトキシ−メチル−メラミン、ヘキサメトキシ−メチル−メラミン、ジメチロール−ジヒドロキシ−エチレン−尿素、ジメチロール−プロピレン−尿素、ジメチロール−4−メトキシ−5,5’−ジメチル−プロピレン−尿素、ジメチロール−5−ヒドロキシプロピレン−尿素、ブタン−テトラ−カルボン酸からなる群より選ぶ。
【0045】
非常に好適な樹脂仕上げ剤又は架橋剤は、ジメチロール−ジヒドロキシエチレン−尿素である。
【0046】
材料、特に紡織繊維材料上の樹脂仕上げ剤又は架橋剤の濃度は、材料の重量の0.1〜30重量%である。
【0047】
シクロデキストリン又はその誘導体と材料、特に紡織繊維材料との二次元又は次元三架橋及び接続を達成するために、材料を後処理工程において100〜230℃までで20秒〜10分間加熱するのが好適である。別法として、該材料の処理は、また、湿性又は湿潤材料状態で周囲〜高い温度においても可能であり;これらは、酸性条件下で実施するのが普通である。
【0048】
基材として、ヒドロキシル基又は窒素を含有する紡織繊維材料が好適である。紡織繊維材料は、繊維、糸又は反物、例えば不織布、編物、織物、パイル織物又はテリー織物の形態にすることができる。例は,絹、ウール、ポリアミド繊維及びポリウレタン、及び特にすべてのタイプのセルロース系繊維材料である。そのようなセルロース系繊維材料は、例えば天然セルロース系繊維、例えば綿、リネン及び麻、並びにセルロース及び再生セルロースである。発明に従う組成物は、また、混紡、例えば綿とポリエステル繊維又はポリアミド繊維との混合物に含有される、ヒドロキシル基を含有する繊維を仕上げるためにも適している。発明に従う組成物は、セルロース系材料を仕上げるために特に適している。その上に、それらは、天然又は合成ポリアミド繊維材料を仕上げるために使用することができる。
【0049】
発明に従う組成物を仕上げプロセスに適用し、仕上げプロセスは、本発明の更なる主題である。シクロデキストリンを、適するならばアルカリ処理した後に、熱、スチームの作用下で又は室温もしくはわずかに高い温度で数時間の間保存することによって定着させ、それによって耐久性のシクロデキストリン仕上げを形成する。
【0050】
仕上げられた基材は、基材の合計重量に基づいて、シクロデキストリン誘導体を、例えば0.05〜25重量%、好ましくは0.1〜10重量%、最も好ましくは0.5〜3重量%含有する。
【0051】
仕上げられた基材は、シクロデキストリンキャビティ内で、例えば、UV−安定剤、抗菌薬、殺生剤、殺菌剤、殺虫剤、殺カビ剤、製薬活性化合物、香料、芳香、フェロモン、ビタミン又はスキン−、ヘア及びテクスタイル利点剤、例えばUV−吸収剤、脂肪酸、アンチ・イリタント、炎症剤又は化粧剤を複合化して、例えば水不溶性又は低不溶性物質を可溶化し、活性化合物の生物学的利用能を増大させ;光、温度、酸化、加水分解に対して又は揮発性から物質を安定にし、いやな味又は不愉快な臭いを隠し、活性化合物を長期間にわたって制御された様式でゆっくり放出する(送達系)のに使用することができる。他方、仕上げられた基材は、例えばガス状又は液状環境から化学物質を吸収するのに有用であり、化学物質は、シクロデキストリンキャビティ内に捕獲され、それにより捕収系として働く。そのような捕収系は、医療診断の分野において用途を見出すか又は環境から汚染物質を求めるのに利用し得る。発汗の分解生成物は、キャビティ内に捕捉され、こうして悪臭を減少させるか又は防ぐ。発明の組成物で仕上げた繊維材料、例えば衣料は、良いにおいを有して新鮮なままである。
【0052】
発明の組成物は、プロセス信頼性及び仕上げ品質を改良する繊維処理のために最終の仕上げ配合物の良好な安定性によって区別される。
【0053】
下記の例は、発明を例示する働きをする。他の方法で注記しない場合には、温度は、摂氏温度で述べ、部は、重量による部であり、パーセンテージデータは、重量によるパーセンテージに基づく。重量による部は、容量による部に対して、キログラム対リットルと同じ関係を有する。
【実施例】
【0054】
例1:Cavasol(登録商標)W7 HP TL(Wacker Chemie AG、ドイツ国から入手し得るヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)を中和する。下記の成分を混合することによって、水性組成物を調製する:中和したCavasol(登録商標)W7 HP TL45部/リットル並びに水25重量%、下記式:
【化21】


(式中、Rは、CH(CH17−21−であり、そしてp及びqの合計は、34である)の化合物25重量%及び下記式:
【化22】


(式中、Rは、CH(CH15−18−及びCH(CH−CH=CH−(CH−であり、そしてr及びtの合計は、14である)の化合物50重量%を含有する水溶液5部/リットルを、CIBA Knittex(登録商標)FEL40部/リットル、塩化マグネシウム12部/リットル及びCiba Ultraphil(登録商標)HMS(Ciba Specialty Chemicalsから入手し得る織物仕上げ剤)30部/リットルと一緒に混合して凝集の無い安定な組成物を得る。
【0055】
例2:Cavasol(登録商標)W7 HP TL(Wacker Chemie AG、ドイツ国から入手し得るヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)を中和する。下記の成分を混合することによって、水性組成物を調製する:中和したCavasol(登録商標)W7 HP TL47.5部/リットル並びに水50重量%及び下記式:
【化23】


(式中、nは、7又はである)のイソトリデシルアルコール50重量%を、CIBA Knittex(登録商標)FEL40部/リットル、塩化マグネシウム12部/リットル及びCiba Ultraphil(登録商標)HMS(Ciba Specialty Chemicalsから入手し得る織物仕上げ剤)30部/リットルと一緒に混合して凝集の無い安定な組成物を得る。
【0056】
応用例1:例1の組成物1000部を使用する。pH値を調整して4.5〜5にする。単一の綿ジャージーに、組成物を、それの重量の80%増大するように含浸させ、続いて室温(25℃)で乾燥させそして170℃で40秒間固着させる。
【0057】
仕上げた布に、60℃における選択テスト(0回、5回、10回、及び20回)を下記の条件下で施す:
洗剤: IEC 456−A(標準の洗剤)30g
洗濯機: Wascator FOM 71MP LAB.
【0058】
布上にシクロデキストリンが存在することは、アルカリ性フェノールフタレイン溶液の装飾によって立証された。仕上げられた布が悪臭を低減させる能力を、仕上げられた布(洗濯しない、5×洗濯した、10×洗濯した及び20×洗濯した)の試験片1gを、水50mg及びp-クレゾール0.1%を含有するエタノール溶液(80容量%)20mgを収容する密閉ボトル(容量100ml)中に一晩保つことによってテストした。試験片を5分間空気通風した。いずれの場合においても、同じようにして処理した未仕上げの試験片に比べて4人の異なるテスト人が、悪臭(p-クレゾール)の明確な減少を検出した。
【0059】
応用例2:例2の組成物1000部を使用する。異なる綿(編まれた綿、ビスコース及び綿/ポリエステル(50/50)混紡)に、溶液を、それの重量の70%増大するように含浸させ、続いて室温(25℃)で乾燥させそして160℃で1分間固着させる。
【0060】
仕上げられた布に、60℃における洗濯テスト(0回、5回、10回、及び20回)を下記の条件下で施す:
洗剤: IEC 456−A(標準の洗剤)30g
洗濯機: Wascator FOM 71MP LAB.
【0061】
布上にシクロデキストリンが存在することは、アルカリ性フェノールフタレイン溶液の装飾によって立証された。仕上げられた布が悪臭を低減させる能力を、仕上げられた布(洗濯しない、5×洗濯した、10×洗濯した及び20×洗濯した)の試験片1gを、水50mg及びp-クレゾール0.1%を含有するエタノール溶液(80容量%)20mgを収容する密閉ボトル(容量100ml)中に一晩保つことによってテストした。試験片を5分間空気通風した。いずれの場合においても、同じようにして処理した未仕上げの試験片に比べて4人の異なるテスト人が、悪臭(p-クレゾール)の明確な減少を検出した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記を含む水性液体組成物:
a)シクロデキストリン又はその誘導体、
b)樹脂仕上げ剤又は架橋剤、及び
c)式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)の少なくとも一種の乳化剤:
【化1】


(式中、R及びRは、炭素原子12〜24を有するアルキル又はアルケニルであり、Mは、水素、アルカリ金属又はアンモニウムであり、そしてsは、2〜14の整数である)、
【化2】


(式中、Rは、炭素原子12〜24を有するアルキル又はアルケニルであり、Mは、水素、アルカリ金属又はアンモニウムであり、そしてm及びnは、m及びnの合計が2〜14になるような整数である)、
【化3】


(式中、Rは、炭素原子12〜24を有するアルキル又はアルケニルであり、Qは、C−Cアルキルであり、Aは、アニオン、特にCH−SO−アニオンアニオンであり、そしてp及びqは、p及びqの合計が15〜55になるような整数である)、
【化4】


(式中、Rは、炭素原子12〜24を有するアルキル又はアルケニルであり、r及びtは、r及びtの合計が14〜19になるような整数であり、そしてMは、アルカリ金属又はアンモニウムである)、
【化5】


(式中、Rは、炭素原子12〜22を有するアルキル又はアルケニルであり、x及びyは、x及びyの合計が80〜140になるような整数である)、或は
下記式のエチレンオキシド6〜15モルを含有するイソトリデシルアルコール:
【化6】


(式中、nは、6〜15の整数である)。
【請求項2】
成分a)が、β−シクロデキストリン又はヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリンである、請求項1記載の水性組成物。
【請求項3】
成分a)が、反応性シクロデキストリン又はその水解物である、請求項1又は2記載の組成物。
【請求項4】
成分a)が、組成物の合計の重量に基づいて0.05〜70重量%の量で存在する、請求項1〜3のいずれか一に記載の組成物。
【請求項5】
シクロデキストリン又はその誘導体と乳化剤とのモル比が、1:0.005〜1:10であり、シクロデキストリン又はその誘導体と乳化剤とのモル比1:0.05〜1:2が好適であり、シクロデキストリン又はその誘導体と乳化剤との特に好適なモル比が、1:0.2〜1:1である、請求項1〜4のいずれか一に記載の組成物。
【請求項6】
シクロデキストリン誘導体の反応性基が、ハロゲン及び非置換の又は置換されたピリジニウムからなる群より選ぶ置換基を少なくとも1個有する窒素含有複素環である、請求項3記載の組成物。
【請求項7】
シクロデキストリン誘導体の反応性基が、
a)下記式のトリアジン基:
【化7】


(式中、Rは、フッ素、塩素、非置換の又はカルボキシ置換されたピリジニウム又はヒドロキシであり、
は、Rについて上に定義した通りであるか、或は式−OR又は−N(R10)R11の基であり、ここで、Rは、水素、アルカリ、非置換の又はヒドロキシもしくはC−Cアルコキシで置換されたC−Cアルキルであり、そして
10及びR11は、互いに独立して、水素;非置換の又はC−Cアルコキシ、ヒドロキシ、スルホ、スルファトもしくはカルボキシで置換されたC−Cアルキルであるか;或はC−Cアルキル、C−Cアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、カルボキシ又はスルホで置換されたフェニルであり);或は
b)下記式のピリミジニル基:
【化8】


(式中、ラジカルR12及びR13の内の1個がフッ素又は塩素であり、ラジカルR12及びR13の内の他の1個がフッ素、塩素、又は上に定義した通りの式−ORもしくは−N(R10)R11であり、そして
14は、C−Cアルキルスルホニル、C−Cアルコキシスルホニル、C−Cアルコキシカルボニル、C−Cアルカノイル、塩素、ニトロ、シアノ、カルボキシ又はヒドロキシであり;或は
c)下記式のジクロロキノキサリン基:
【化9】


である、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
シクロデキストリン誘導体の反応性基が、(6)式
(式中、Rは、塩素であり、そして
は、式−ORのラジカルであり、ここで、Rは、水素、アルカリ又はC−Cアルキル、好ましくはアルカリである)
のトリアジン基である、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
反応性シクロデキストリン誘導体が、反応性基1〜4個を含有する、請求項6〜8のいずれか一に記載の組成物。
【請求項10】
樹脂仕上げ剤又は架橋剤が、ポリマーフィルムを紡織繊維材料上に造ることが可能であり或は紡織繊維材料内の求核性もしくは求電子性部位又は化学基と反応する能力を有する、請求項1〜9のいずれか一に記載の組成物。
【請求項11】
樹脂仕上げ剤又は架橋剤を、ジメチロール−尿素、ジメトキシ−メチル−尿素、トリメトキシ−メチル−メラミン、テトラメトキシ−メチル−メラミン、ヘキサメトキシ−メチル−メラミン、ジメチロール−ジヒドロキシ−エチレン−尿素、ジメチロール−プロピレン−尿素、ジメチロール−4−メトキシ−5,5’−ジメチル−プロピレン−尿素、ジメチロール−5−ヒドロキシプロピレン−尿素、ブタン−テトラ−カルボン酸、クエン酸、マレイン酸、結合剤、特にアクリレート、シリコーン、ウレタン及びブタジエンからなる群より選ぶ、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
更に、ほう砂、ボレート、ホスフェート、ポリホスフェート、オキサレート、アセテート又はシトレート、特にホスフェート、アセテート又はシトレートからなる群より選ぶ緩衝剤を含む、請求項1〜11のいずれか一に記載の組成物。
【請求項13】
請求項1記載の組成物で基材を処理することを含む仕上げ方法。
【請求項14】
紡織繊維材料を基材として使用する、請求項13記載の仕上げ方法。

【公表番号】特表2007−527437(P2007−527437A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−516166(P2006−516166)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2004/051162
【国際公開番号】WO2005/001192
【国際公開日】平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願人】(396023948)チバ スペシャルティ ケミカルズ ホールディング インコーポレーテッド (530)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Holding Inc.
【出願人】(599171501)チバ シュペツィアリテーテンヒェミー プフェルゼー ゲーエムベーハー (1)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Spezialitatenchemie Pfersee GmbH
【Fターム(参考)】