説明

シナカルセットの調製のために有用な中間体化合物を調製するためのプロセス

本発明は、一般に、シナカルセット、その塩および/またはそれらの溶媒和物の合成にとって重要な中間体である化合物(例えば、3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロパナール(下の化合物III))を調製するための改善されたプロセス、ならびにシナカルセットおよび/またはその塩もしくは溶媒和物を調製するためのそのようなプロセスにより調製されるそのような化合物の使用に関する。本発明の方法は、スワン酸化ステップを用いる必要性を取り除き、したがって、低温酸化反応を用いる必要性ならびにそのような手順に伴う不快臭を回避する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本願は、2006年6月8日に出願された米国仮特許出願第60/811,786号に対する優先権を主張する。米国仮特許出願第60/811,786号は、その全体が本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、一般に、シナカルセット、その塩および/またはそれらの溶媒和物の調製にとって重要な中間体である化合物(例えば、3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロパナール(下の化合物III))を調製するための改善された方法、ならびにシナカルセットおよび/またはその塩もしくは溶媒和物を調製するためのそのような方法により調製されるそのような化合物の使用に関する。
【0003】
【化1】

【背景技術】
【0004】
(関連分野の説明)
シナカルセットは、透析を受けている慢性腎臓疾患患者における続発性副甲状腺機能亢進症の治療および副甲状腺癌患者における高カルシウム血症の治療に有用であることが知られている市販の薬学的に活性な物質である。シナカルセットは、C2222N・HClの実験式、393.9の分子量を有し、構造式(I)を有するN−[1−(R)−(−)−1−ナフチル)エチル]−3−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]−1−アミノプロパン塩酸塩についての国際的な一般に認められている名称である。
【0005】
【化2】

特許文献1は、一般的に、シナカルセットおよびその薬学的に許容できる酸付加塩について記載しているが、それらを調製するためのいかなる実施例も提供していない。
【0006】
特許文献2は、シナカルセットおよびその薬学的に許容できる酸塩化物付加塩について記載しているが、シナカルセットおよび/またはシナカルセット塩酸塩を調製するためのいかなる実施例も提供していない。
【0007】
非特許文献1に記載されている一般手順に従ってシナカルセット塩酸塩を調製するための合成スキームを開示している。この開示された合成経路を下のスキーム1に図示する。
【0008】
【化3】

これに関して、化合物III(すなわち、3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロパナール)を調製するためのいくつかの方法が文献に記載されている。
【0009】
特許文献3は、化合物IV(すなわち、3−トリフルオロメチルブロモベンゼン)を、トリエチルアミン中でビス(トリフェニルホスフィン)パラジウムクロリドおよびヨウ化第一銅を用いて化合物V(すなわち、プロパルギルアルコール)と反応させ、続く接触水素化で対応するアルコール(化合物VII)を得るという化合物IIIを調製するための方法を開示している。次いで、化合物VIIを、スワン酸化により化合物IIIに変換する。この合成手順を下のスキーム2に図示する。
【0010】
【化4】

非特許文献2において、化合物IIIは、下のスキーム3に図示されているように、二重結合の還元およびカルボン酸基の対応するアルコールへの還元と、続くスワン酸化反応により化合物IX(すなわち、3−トリフルオロメチル桂皮酸)から調製される。
【0011】
【化5】

化合物IIIを調製するための代替方法は、非特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第6,011,068号明細書
【特許文献2】米国特許第6,211,244号明細書
【特許文献3】欧州特許第194764号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Drugs 2002年、27巻(9号)、831〜836頁は、米国特許第6,211,244号
【非特許文献2】Tetrahedron Letters 2004年、45巻(45号)、8355〜58頁
【非特許文献3】Journal of Medicinal Chemistry 1968年、11巻、1258〜62頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
本発明は、一般に、シナカルセット、その塩および/またはそれらの溶媒和物の調製にとって重要な中間体である化合物(例えば、3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロパナール(化合物III))を調製するための改善された方法、ならびにシナカルセットおよび/またはその塩もしくは溶媒和物を調製するためのそのような方法により調製されるそのような化合物の使用に関する。
【0015】
【化6】

本発明は、化合物IIIを調製するための改善された方法を提供する。すなわち、化合物IIIおよび類似化合物を調製するための本発明の方法は、スワン酸化ステップ(上述の方法において必要とされる)を用いる必要性を取り除き、したがって、低温酸化反応を用いる必要性ならびにそのような手順に伴う不快臭を回避する。特に、本発明の方法は、不活性溶媒中で触媒としてニトロキシル化合物を用いる、酸化剤による化合物VIIの酸化を包含する。
【0016】
本発明は、化合物VIから化合物VIIを調製するための方法をさらに包含する。本発明は、より少量の触媒を用い、触媒を少なくとも部分的に再利用することができる、化合物VI(すなわち、3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロピノール)を調製するための方法をさらに提供する。
【0017】
本発明の方法は、クリーンで、速く、高い量産効果を有し、クロマトグラフ精製を必要としない。本発明の方法のこれらの特徴は、本発明の方法を工業的スケールアップに極めて適したものにする。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
次に、本発明の好ましい実施形態について詳細に言及する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で実施することができ、本明細書に記載される実施形態に限定されると見なされるべきではない。さらに、および当業者に理解されるように、本発明は、方法(method)、システムまたはプロセスとして実施することができる。
【0019】
本発明は、一般に、シナカルセット、その塩および/またはそれらの溶媒和物の合成にとって重要な中間体である化合物(例えば、3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロパナール(化合物III))を調製するための改善されたプロセス、ならびにシナカルセットおよび/またはその塩もしくは溶媒和物を調製するためのそのような方法により調製されるそのような化合物の使用に関する。
【0020】
特に、本発明の方法は、化合物IIIを得るための、不活性溶媒中で触媒としてニトロキシル化合物を用いる酸化剤による化合物VIIの酸化を包含する。本発明において使用するのに適しているニトロキシル化合物は、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシフリーラジカル)を包含する。本発明において使用するのに適している酸化剤は、次亜塩素酸ナトリウムを包含する。本発明において使用するのに適している不活性溶媒は、反応に参加しない任意の溶媒を包含する。好ましい不活性溶媒は、例えば、環式または非環式アルカン(例えば、ヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン)、芳香族溶媒(例えば、トルエン)、ハロゲン化溶媒(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム)、エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル)、またはエーテル(例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランまたはtert−ブチルメチルエーテル)および/またはそれらの混合物を包含する。
【0021】
酸化反応は、化合物VII1モル当たり次亜塩素酸ナトリウム約0.9〜約2.0モル、好ましくは約1.05モルを用いて行われることが好ましい。さらに、次亜塩素酸ナトリウムを反応混合物に少しずつ加えることが有利であることが判明した。好ましくは、化合物VII1モル当たり次亜塩素酸ナトリウム約1モルを第一部分として反応混合物に加え、撹拌時間後、化合物VII1モル当たり次亜塩素酸ナトリウム約0.05モルの第二部分を加えた。
【0022】
反応は、場合により、触媒として使用されるニトロキシル化合物の再生剤としての臭化カリウムを用いて行うことができる。
【0023】
酸化反応は、約5℃〜約25℃の温度範囲を用い、約10〜約60分の時間にわたって行われることが好ましい。15℃未満、および約20〜約60分の時間にわたることがより好ましい。
【0024】
場合により、化合物IIIを重亜硫酸ナトリウムで処理し、精製された化合物IIIへさらに変換することができる重亜硫酸塩アダクトを得ることができる。代替方法として、化合物IIIを真空下の蒸留により精製することができる。
【0025】
化合物VIIは、欧州特許EP0194764に記載されている方法に従って得ることができる(上のスキーム2を参照)。代替方法として、化合物IVと化合物V(すなわち、プロパルギルアルコール)との反応を、10%Pd/C触媒、トリフェニルホスフィン、ヨウ化銅(I)およびジイソプロピルアミンを用いて行い、化合物VIを得ることができる。化合物VIは、Pd/C触媒の存在下で接触水素化を介して化合物VIIへ変換することができる。
【0026】
本発明の別の態様は、シナカルセットおよび/もしくはその薬学的に許容できる塩ならびに/またはそれらの溶媒和物を製造するための上述の方法に従って得られる化合物IIIの使用を包含する。
【0027】
このように本発明の様々な実施形態について一般的に説明してきたが、この後は、本発明の態様をさらに十分に例示するためのいくつかの実施例について議論する。
【0028】
具体的実施例
以下の実施例は、例示目的のために過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、そのように解釈されるべきでもない。
【0029】
一般実験条件:ガスクロマトグラフィー法
ガスクロマトグラフ分離は、RTX−50、30m×0.32mm×0.25μmカラム、10psiのヘッド圧力およびキャリアガスとしてのヘリウムを用いて行った。
【0030】
温度プログラム:60℃(2分)〜10℃/分〜100℃(0分)〜20℃/分〜250℃(10分)、インジェクター温度:200℃ 検出器(FID)温度:250℃。
【実施例】
【0031】
(実施例1)
3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロパナールの調製
ステップ1:化合物VI(すなわち、3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロピノール)の調製
【0032】
【化7】

アルゴン雰囲気下、3−トリフルオロメチルブロモベンゼン266.4g(1184mmol)、プロパルギルアルコール85.0g(1516mmol)、ジイソプロピルアミン118.4g(1.4mol)、ヨウ化銅(I)22.53g(0.118mol)、10%Pd/C(Selcat Q6)4.73g(4.44mmol)およびトリフェニルホスフィン31.5g(0.118mol)を蒸留水1000mLに分散させた。次いで、反応混合物を一夜にわたって撹拌して還流し、変換をGCによりチェックした。次に、反応混合物を室温(20〜25℃)まで冷却し、tert−ブチルメチルエーテル400mLを加えた。次いで、得られた混合物をセライトパッドに通して濾過し、濾液を分離した。次いで、水層をtert−ブチルメチルエーテル200mLで2回洗浄し、集めた有機層を乾燥して蒸発させると、黒ずんだ油として粗製の化合物VI260gが得られた。次いで、得られた粗製の化合物VIを真空蒸留により精製した。GCによる純度は、約83%であった。
【0033】
【化8】

ステップ2:化合物VII(すなわち、3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロパン−1−オール)の調製
【0034】
【化9】

メタノール60mL中の化合物VI57.5g(288mmol)の溶液に、10%Pd/C(Selcat Q6)1.4gを加えた。反応混合物を、すべての出発材料が反応するまで(約5時間)、42〜45℃の温度および5バールの圧力にて水素化した。触媒を濾過により除去し、少量のメタノールで洗浄した。次いで、得られた溶液を真空中で蒸発させた。得られた粗生成物(49.4g、84.1%)を真空蒸留により精製すると、ほぼ無色の油として純粋な化合物VII生成物41.9g(収率:71.2%)が得られた(沸点:58〜60℃/1.1〜1.5ミリバール)。
【0035】
【化10】

ステップ3:化合物III(すなわち、3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロパナール)の調製
【0036】
【化11】

塩化メチレン70mL中の化合物VII10g(48mmol)、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシフリーラジカル)76.6mgおよび臭化カリウム234mgの溶液に、撹拌しながら10〜15℃にて20分かけて次亜塩素酸ナトリウム溶液220mL(pH=9.5)を加えた。さらに5分にわたって撹拌した後、有機層を分離した。水層を塩化メチレン40mLで2回抽出し、集めた有機層を乾燥して蒸発させると、黄色がかった液体として粗製の化合物III10gが得られた。収率:100%;純度(GCにより決定):90.3%;化合物VII8.25%を含有する。
【0037】
【化12】

(実施例2)
3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロパナールの調製
ステップ1:化合物VI(すなわち、3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロピノール)の調製
【0038】
【化13】

アルゴン雰囲気下、3−トリフルオロメチルブロモベンゼン23.0g(102.2mmol)、プロパルギルアルコール7.34g(130.85mmol)、ジイソプロピルアミン15.32g(182.83mmol)、ヨウ化銅(I)2.92g(15.3mmol)、10%Pd/C(Selcat Q6)0.61g(0.570mmol)およびトリフェニルホスフィン4.02g(15.32mmol)を蒸留水80mLに分散させた。次いで、反応混合物を一夜にわたって撹拌して還流し、変換をGCによりチェックした。次に、反応混合物を室温(20〜25℃)まで冷却し、tert−ブチルメチルエーテル40mLを加えた。次いで、得られた混合物をセライトパッドに通して濾過し、濾液を分離した。次いで、水層をtert−ブチルメチルエーテル50mLで2回洗浄し、集めた有機層を乾燥して蒸発させると、黒ずんだ油として粗製の化合物VI45.3gが得られた。次いで、得られた粗製の化合物VIを真空蒸留により精製した。このようにして、生成物14.7gが得られた。沸点120〜125℃/3.2〜3.8ミリバール。
【0039】
ステップ2:化合物VII(すなわち、3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロパン−1−オール)の調製
【0040】
【化14】

2−プロパノール50mL中の精製した3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロピノール14.5g(72.5mmol)の溶液に、10%Pd/C(Selcat Q6)0.38gを加えた。反応混合物を、すべての出発材料が反応するまで(約5時間)、42〜45℃の温度および5バールの圧力にて水素化した。触媒を濾過により除去し、少量の2−プロパノールで洗浄した。次いで、得られた溶液を真空中で蒸発させた。得られた粗生成物(14.5g、100.0%)を真空蒸留により精製すると、ほぼ無色の油として純粋な化合物VII生成物10.5g(収率:72.1%)が得られた(沸点:58〜60℃/1.1〜1.5ミリバール)。
【0041】
ステップ3:化合物III(すなわち、3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロパナール)の調製
【0042】
【化15】

トルエン70mL中の化合物VII10g(48mmol)、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシフリーラジカル)76.6mgと水8mL中の臭化カリウム234mgの溶液との混合物に、撹拌しながら10〜15℃にて10分かけて次亜塩素酸ナトリウム溶液93mL(pH=9.5)を加えた。さらに5分にわたって撹拌した後、有機層を分離した。水層をトルエン30mLで2回洗浄し、集めた有機層を、すべてのアルデヒド重亜硫酸塩アダクトが白色の固体として分離するまで、100〜110℃にて水100mL中の重亜硫酸ナトリウム71gの溶液と一緒に撹拌した。沈殿したアダクトを濾過し、トルエン20mLで2回懸濁し、真空中で乾燥すると、アルデヒドアダクト14.8gが得られ、さらに精製することなく使用した。
【0043】
次に、重亜硫酸塩アダクト8.86g(30.4mmol)を水20mLに懸濁し、10%水酸化ナトリウム溶液40mLを、すべての固体が溶けるまで撹拌しながら加えた。得られた不透明な溶液をジクロロメタン20mLで6回抽出した。集めた有機層を乾燥して蒸発させた。このようにして、遊離のアルデヒド4.46g(71.9%)が得られた。純度:99.5%。
【0044】
代替方法として、上記の反応混合物を重亜硫酸ナトリウムと反応させない場合は、アルデヒド溶液を蒸発させ、得られた粗製のアルデヒド8,5g(87.6%)を高真空中で蒸留した。このようにして、アルデヒド5.14g(53.0%)が、わずかに黄色がかった油として得られた。純度:98.0%、沸点53〜54℃/2.3〜2.5ミリバール。
【0045】
(実施例3)
化合物III(すなわち、3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロパナール)の大規模調製
【0046】
【化16】

窒素でパージされ、ピッチ付きブレードインペラーを備えた630Lのグラスライニング反応容器に、臭化カリウム0.74Kg(6.2mol)、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシフリーラジカル)0.24Kg(1.5mol)、トルエン137Kg、化合物VII31.6Kg(155mol)、トルエン68Kg、および水29Kgを(順に)加えた。混合物を撹拌して0〜5℃まで冷却すると、褐色がかった溶液が得られた。この混合物に、10%w/w次亜塩素酸ナトリウム水溶液(飽和炭酸水素ナトリウムを用いてpH9.5に前もって調整した)115Kg(155mol)を、15℃未満の反応温度を維持する速度にて窒素下で加えた。添加が完了したらすぐに、反応混合物を30分にわたって10〜15℃にて撹拌した。この時間後、pH9,5の10%w/w次亜塩素酸ナトリウム水溶液5.7Kg(7.7mol)をさらに加え、混合物を10〜15℃にてさらに30分にわたって撹拌した。混合物を放置し、上部の有機相と下部の水相を分離させた。水相を、トルエン55Kgと一緒に10〜15℃にて30分にわたって撹拌することにより抽出した。この抽出をトルエン55Kgと一緒にさらに繰り返し、このようにして得られた有機相を、前に得られた有機相と混ぜ合わせた。次いで、酸性化したヨウ化カリウム溶液(157Kg:2.4%w/w)を、10〜15℃にて、撹拌して混ぜ合わせた有機相に加えた。有機相は、添加中に濃いオレンジ色に変わった。混合物を、10〜15℃にて合計30分にわたって撹拌し、続いて、赤みがかった有機相を分離した。次に、チオ硫酸ナトリウム溶液(167Kg:10%w/w水性)を、10〜15℃にて、撹拌した有機相に加えた。有機相は、添加中に濃いオレンジ色から無色に変わった。混合物を、10〜15℃にて合計30分にわたって撹拌し、続いて、淡黄色の有機相を分離した。次に、炭酸水素ナトリウム溶液(157.9Kg:5%w/w)を、10〜15℃にて、撹拌した有機相に加えた。得られた混合物を、10〜15℃にて合計30分にわたって撹拌し、続いて、淡黄色の有機相を分離した。次に、脱イオン水(158Kg)を、10〜15℃にて、撹拌した有機相に加えた。得られた混合物を、10〜15℃にて合計30分にわたって撹拌し、続いて、淡黄色の有機相を分離した。次いで、有機相を、約40℃の温度にて真空下でトルエンを留去することにより濃縮した。これにより、澄明な黄色の油として粗製の3−[3−(トリフルオロメチル)フェニル]プロパナール(化合物III)が得られた。続いて、粗生成物を真空下で蒸留し、約5ミリバールにて85〜105℃の温度範囲で淡黄色の油として純粋な化合物IIIを集めた。収量:26.0Kg(83.1%)。
【0047】
(実施例4)
化合物III(すなわち、3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロパナール)の調製
【0048】
【化17】

この実施例は、実施例3の条件に従うが、代わりに、化合物(VII)1mol当たり次亜塩素酸ナトリウム合計1.05molを一度に加えて行い、化合物IIIは、73.0%の収率で得られた。
【0049】
(実施例5)
化合物III(すなわち、3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロパナール)の調製
【0050】
【化18】

この実施例は、実施例3の条件に従うが、代わりに、化合物(VII)1mol当たり次亜塩素酸ナトリウム合計1.10molを一度に加えて行い、化合物IIIは、69.0%の収率で得られた。
【0051】
(実施例6)
化合物III(すなわち、3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロパナール)の調製
【0052】
【化19】

この実施例は、実施例3の条件に従うが、代わりに、化合物(VII)1mol当たり次亜塩素酸ナトリウム合計1.30molを一度に加えて行い、化合物IIIは、60.0%の収率で得られた。
【0053】
本発明の精神または範囲を逸脱することなく本発明および本明細書において提供される具体的実施例において様々な変更形態および変形形態を行うことができることは当業者には明らかであろう。したがって、本発明は、任意の特許請求の範囲およびそれらの等価体の範囲に入る本発明の変更形態および変形形態を包含することが意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3−(3−トリフルオロメチルフェニル)プロパナール(化合物III)
【化20】

を調製するためのプロセスであって、化合物VII
【化21】

を、不活性溶媒の存在下で触媒としてのニトロキシル化合物を用い、酸化剤で酸化することを含むプロセス。
【請求項2】
前記酸化剤が、次亜塩素酸ナトリウムである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記次亜塩素酸ナトリウムが、化合物VII 1モル当たり次亜塩素酸ナトリウム約1.05モルを含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記次亜塩素酸ナトリウムが、少なくとも2つの部分で添加される、請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記次亜塩素酸ナトリウムが、2つの部分で添加される、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
次亜塩素酸ナトリウムの第一部分が、化合物VII 1モル当たり次亜塩素酸ナトリウム約1.0モルを含み、次亜塩素酸ナトリウムの第二部分が、化合物VII1モル当たり次亜塩素酸ナトリウム約0.05モルを含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
前記ニトロキシル化合物が、TEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシフリーラジカル)である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ニトロキシル化合物の再生剤としての臭化カリウムの使用をさらに含む、請求項1または7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記酸化が、約5℃〜約25℃の温度で起きる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
前記酸化が、約10℃〜約15℃の温度で起きる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
前記酸化が、約15℃未満の温度で起きる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記不活性溶媒が、反応に参加しない任意の溶媒である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項13】
前記不活性溶媒が、環式アルカン、非環式アルカン、芳香族溶媒、塩素化溶媒、エステル、エーテルおよびそれらの混合物のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項14】
前記不活性溶媒が、ヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサン、トルエン、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、tert−ブチルメチルエーテルおよびそれらの混合物のうちの少なくとも1つである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項15】
前記酸化が、約10分〜約60分にわたって起きる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
シナカルセット、その薬学的に許容できる塩および/またはそれらの溶媒和物を調製するためのプロセスであって、請求項1から15のいずれかに記載のプロセスに従って製造される化合物IIIを、シナカルセット、その薬学的に許容できる塩および/またはそれらの溶媒和物に変換することを含むプロセス。
【請求項17】
請求項16に記載のプロセスにより調製されるシナカルセット、その塩および/またはそれらの溶媒和物。
【請求項18】
請求項17に記載のシナカルセット、その塩および/またはそれらの溶媒和物を含有する製剤。
【請求項19】
化合物VIIを調製するためのプロセスであって、
i.化合物IV
【化22】

を、化合物V
【化23】

と、10%Pd/C触媒、トリフェニルホスフィン、ヨウ化銅(I)およびジイソプロピルアミンを用いて反応させ、化合物VI
【化24】

を得ること、および
ii.化合物VIを、接触水素化を介して化合物VIIに変換することを含むプロセス。
【請求項20】
前記化合物VIIが、
i.化合物IV
【化25】

を、化合物V
【化26】

と、10%Pd/C触媒、トリフェニルホスフィン、ヨウ化銅(I)およびジイソプロピルアミンを用いて反応させ、化合物VI
【化27】

を得ること、および
ii.化合物VIを、接触水素化を介して化合物VIIに変換することを含むプロセスにより調製される、請求項1に記載のプロセス。

【公表番号】特表2009−539823(P2009−539823A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513799(P2009−513799)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【国際出願番号】PCT/IB2007/003346
【国際公開番号】WO2008/035212
【国際公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【出願人】(508145230)
【Fターム(参考)】