説明

シマグワからの抽出物およびクワノンH化合物の抗菌用途

【課題】シマグワの根皮から調製された抽出物を抗菌剤として提供。
【解決手段】シマグワの乾燥根皮を細かく砕き、エタノール水溶液で還流下抽出し得られた下記化学式(I):


をクワノンHとして、抗菌剤としての新規な用途を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シマグワ(Morus australis Poir.)の根皮から調製された抽出物、および当該抽出物から分離されたクワノンH化合物の、細菌感染の治療時における新規な用途に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ヤマグワ(Morus bombycis Koidz)、マグワ(Morus alba L.)、およびロソウ(Morus Lhou Koidz)などのクワの木の樹皮の抽出物から分離された5種の化合物、マルベロフランC、D、およびG、クワノールA並びにサンゲノンGについて、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)やメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA:Methicillin resistant Staphylococcus aureus)などに対する抗菌の用途が開示されている。
【0003】
特許文献2には、ヤマグワ(Morus bombycis Koidz)、マグワ(Morus alba L.)、およびロソウ(Morus Lhou Koidz)などのクワの木の根皮から調製された抽出物を分離して得られた、クワノンGおよびHの2種の化合物について、高血圧患者の血圧を低下させるための用途を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−007555号公報
【特許文献2】特開昭56−0123979号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、下記化学式(I):
【0006】
【化1】

【0007】
で表されるクワノンHまたは製剤上許容されうるその塩の抗菌用途、を提供することである。
【0008】
前述した本発明の抗菌用途には、効果のある成分として、クワノンH、または製剤上許容されうるその塩を含む、細菌感染の治療のための医薬組成物;細菌感染の患者の治療のための製剤の製造におけるクワノンH、または製剤上許容されうるその塩の使用;および、クワノンH、または製剤上許容されうるその塩の治療上有効量を、細菌感染を有した対象者に投与することを含む、前記対象者を治療する方法も含まれる。
【0009】
本発明の他の目的は、シマグワの根皮から調製された抽出物の抗菌用途を提供することである。
【0010】
本発明によれば、抽出物の抗菌用途は、効果のある成分として、本発明の抽出物を含んだ、細菌感染の治療のための医薬組成物;対象者の細菌感染の治療のための製剤の製造における本発明の抽出物の使用;および、本発明の抽出物の治療上有効量を、細菌感染を有した対象者に投与することを含む、前記対象者を治療する方法も含まれる。
【0011】
本発明における「細菌感染を治療する」とは、広義には、細菌感染によって引き起こされるあらゆる障害を治療することを意味し、または狭義には、細菌の増殖を抑制することを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「桑白皮(San−Bai−Pi)」は、伝統的な漢方薬、マグワの乾燥根皮のことであり、咳嗽および利尿を緩和する抗炎症の用途がある。マグワの植物は、台湾では希少である;しかしながら、シマグワは容易に見つけることができる。これをきっかけとし、本発明の発明者たちは、シマグワからの抽出物を調製し、産業的に潜在的有用性のある抽出物から化合物を単離するに至った。
【0013】
本発明は、化学式(I):
【0014】
【化2】

【0015】
で表されるクワノンHまたは製剤上許容されうるその塩の治療上有効量を、細菌感染を有した対象者に投与することを含む、前記対象者を治療する方法を提供する。
【0016】
本発明は、シマグワの根皮から調製された抽出物の治療上有効量を、細菌感染を有した対象者に投与することを含む、前記対象者の治療方法を提供する。この際、抽出物は、以下の工程を含むプロセスによって調製されている。
a)シマグワの根皮を極性溶剤で抽出する;
b)工程a)で得られた抽出溶液を濃縮する;
c)工程b)で得られた濃縮物を逆相クロマトグラフィカラムに導入し、順に、第一および第二の溶離液を用いてカラムを溶出する。この際、前記第一溶離液を約50wt%エタノール水溶液(たとえば、40〜70wt%、好ましくは45〜60wt%エタノール水溶液)の極性、および前記第二溶離液を約95wt%エタノール水溶液(たとえば、80〜98wt%、好ましくは85〜97wt%エタノール水溶液)の極性とする;並びに
d)第二溶離液を用いてカラムから溶出する第二溶出液を回収し、第二溶出液から第二溶離液を減圧除去する。
【0017】
好ましくは、細菌はグラム陽性菌である。
【0018】
好ましくは、細菌は黄色ブドウ球菌(スミス株)(Staphylococcus aureus(Smith))または肺炎連鎖球菌(Streptococcus Pneumoniae)である。さらに好ましくは、細菌がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA:Staphylococcus aureus、Methicillin Resistant)である。さらに好ましくは、細菌が肺炎連鎖球菌である。最も好ましくは、細菌がエリスロマイシンおよびアンピシリン耐性肺炎連鎖球菌(Streptococcus Pneumoniae、Erythromycin and Ampicillin Resistant)である。
【0019】
好ましくは、本発明の抽出物は、化学式(I)の化合物に加えて、下記化学式(II):
【0020】
【化3】

【0021】
で表されるサンゲノンGを含む。
【0022】
好ましくは、抽出物は、抽出物の重量に対して、化合物(I)1〜5%、化合物(II)1〜5%を含む。より好ましくは、抽出物は、抽出物の重量に対して、化合物(I)3.7%、化合物(II)2.3%を含む。
【0023】
好ましくは、第一溶離液は、50wt%エタノール水溶液であり、第二溶離液は、95wt%エタノール水溶液である。
【0024】
好ましくは、工程a)における極性溶剤は、水または95wt%エタノール水溶液であり、より好ましくは、95wt%エタノール水溶液である。
【実施例】
【0025】
本発明において、以下の具体例は単に例示のためのものであって、本発明の範囲を制限するものではないと解釈されるべきである。
【0026】
この明細書中で言及した百分率および他の総量は、他に指示のない限り重量によるものとする。百分率は、総計100%まで、あらゆる範囲を選択することができる。
【0027】
実施例1)抽出物EX−1の調製
薄切りしたシマグワ(Moraceae)の乾燥根皮を細かく砕き、ふるいで選別した。得られた粉体100gを、丸底フラスコ中で95wt%エタノール水溶液1000mL(10:1(v/w))と混合し、得られた混合物を1時間還流沸騰させ、メッシュナンバー350のふるいおよびろ紙(#2)でろ過を行い、ろ液および残渣を得た。残渣を、前述した条件と同様にして、還流下で抽出し、ろ過を行った。得られた二つのろ液を混合し、その一部を減圧乾燥し、混合ろ液からの乾燥粉末重量を計算したところ、10.21gであり、粗抽出物の収率は10.21wt%であった。混合ろ液を元の重量の1/10に濃縮し、得られた濃縮物と同重量の水を添加した。混合ろ液の濃縮物の30倍の重量のポリスチレン吸収樹脂(Diaion HP20、三菱化学)を充填した逆相クロマトグラフィカラムに、得られた混合物を導入し、2ベッドボリューム(ベッドボリューム=600mL)の50wt%エタノール水溶液(1200mL)、続いて、2ベッドボリュームの95wt%エタノール水溶液(1200mL)を用いて溶出させた。95wt%エタノール水溶液の溶出液を回収し、真空で濃縮し乾燥させた。乾燥した抽出物EX−1(コードネーム)は2.73g得られ、混合ろ液の濃縮物の乾燥重量に対して、収率26.7%であり、乾燥根皮の重量に対して、収率2.73%であった。
【0028】
実施例2)抽出物EX−1の分離
2gのEX−1をメタノール10mLに溶解させた均一溶液に、純水10mLを添加し、この混合物を激しく振とうし、沈殿を促進させ、続いて15分間10000rpmで遠心分離を行った。遠心分離によって得られた固形分を溶解、沈殿および遠心分離を行い、このサイクルを総計6回実施した。
【0029】
6回の遠心分離により得られた6つの液体を混合し、真空で濃縮し乾燥した(重量1.3g)。乾燥粉末の30倍の重量のシリカゲル60を充填したシリカゲルカラム(3.2cm×48.5cm)に、得られた乾燥粉末を導入し、15ベッドボリューム(ベッドボリューム=250)の混合移動相トルエン:酢酸エチル=7:3(3750mL)で溶出させた。溶出液を、事前に決めた番号のボトルに順に回収した。各容器の液体を、真空乾燥し、得られた乾燥粉末を少量のメタノールを加えて再溶解し、乾燥粉末の100倍の重量のSephadex LH−20樹脂を充填したデキストランゲルカラム(1.5cm×40cm)に導入した。カラムを、1ベッドボリュームのメタノール(30mL)で溶出し、化合物P2−1、P2−2、P3−1、およびP3−2のフラクションを得た。それぞれのフラクションを真空で濃縮し乾燥した後、分取用HPLCで精製し、化合物P2−1、P2−2、P3−1、およびP3−を得た。EX−1の重量に対して、P3−1の収率は2.3%(46mg)であり、P3−2の収率は3.65%(73mg)であった。
【0030】
遠心分離後の6つの残渣をメタノールに溶解し、この溶液を真空で濃縮し乾燥した。この乾燥粉末の30倍の重量のシリカゲル60の充填されたシリカゲルカラム(3.2cm×48.5cm)に、乾燥粉末を導入し、2ベッドボリューム(ベッドボリューム=250)の混合移動相トルエン:酢酸エチル=9:1(500mL)で溶出させた。溶出液は、事前に決めた番号のボトルに順に回収した。各容器の液体を真空で濃縮し乾燥させ、得られた乾燥粉末を少量のメタノールに再溶解させて、乾燥粉末の100倍の重量のSephadex LH−20樹脂を充填したデキストランゲルカラム(1.5cm×40cm)に導入した。カラムは、1ベッドボリュームのメタノール(30mL)で溶出させて、化合物P3−3およびP3−4を得た。
【0031】
【化4】

【0032】
P2−1:ESI−MS:m/z 603.3([M+Na])、m/z 579.2([M−H])。NMR解析も実施した。ESI−MSおよびNMRデータにより、P2−1の化学式はC3428であることが示された。NMRデータを下記の論文と比較し、P2−1はこの論文で報告されたマルベロフランCであることを確認した。マルベロフランCは、また、特開昭57−144223号公報にも開示されている。
【0033】
論文:Fukai,T.;Hano,Y.;Hirakura,K.;Nomura,T.;Uzawa,J.;Fukushima,K.,Structure of mulberrofuran J,a 2−arylbenzofuran derivative from the cultivated mulberry tree(Morus lhou Koidz.),Heterocycles 1984,22,1007−1011.を参照。
【0034】
P2−2:ESI−MS:m/z 715.3([M+Na])、m/z 691.3([M−H])。NMR解析も実施した。ESI−MSおよびNMRデータにより、P2−1の化学式はC403611であることが示された。NMRデータを下記の論文と比較し、P2−2はこの論文で報告されたアルバニンF(クワノンG)であることを確認した。アルバニンF(クワノンG)は、また、大韓民国特許出願公開第2002−0087225号にも開示されている。
【0035】
論文:Nomura,T.;Fukai,T.;Narita,T.,hypotensive constituent,Kuwanon H,a new flavone derivative from the root bark of the cultivated mulberry tree(Morus alba L.),Heterocycles 1980,14,1943−1951.を参照。
【0036】
P3−1:ESI−MS:m/z 695.4([M+H])、m/z 693.7([M−H])。NMR解析も実施した。ESI−MSおよびNMRデータにより、P3−1の化学式はC403811であることが示された。NMRデータを下記の論文と比較し、P3−1はサンゲノンGであることを確認した。サンゲノンGは、また、特開平10−007555号公報にも開示されている。
【0037】
論文:Fukai,T.;Hano,Y.;Fujimoto,T.;Nomura,T.,Structure of sanggenon G,a new Diels−Alder adduct from the Chinese crude drug ’’Sang−Bai−Pi’’(Morus root barks),Heterocycles 1983,20,611−615.を参照。
【0038】
P3−2:ESI−MS:m/z 761([M+H]),783([M+Na])、759([M−H])。P3−2の分子量は760として計算した。NMR解析も実施した。ESI−MSおよびNMRデータにより、P3−2の化学式はC454411であることが示された。NMRデータを下記の論文と比較し、P3−2はクワノンH(アルバニンA、またはモラセニンAとも称される。)であることを確認した。また、特開昭56−123979号公報には、クワノンHが高血圧患者の血圧を下げるのに有効であることが開示されている。
【0039】
論文:Nomura,T.;Fukai,T.;Narita,T.;Terada,S.;Uzawa,J.;Iitaka,Y.;Takasugi,M.;Ishikawa,S.I.;Nagao,S.;Masamune,T.,Confirmation of the structures of kuwanons G and H(albanins F and G) by partial synthesis,Tetrahedron Letters 1981,22,2195−2198;Oshima,Y.;Konno,C.;Hikino,H.,Structure of moracenin A,a hypotensive principle of Morus root barks,Heterocycles 1980,14,1287−1290;を参照。
【0040】
論文:Oshima,Y.;Konno,C.;Hikino,H.;Matsushita,K.,Structure of moracenin B,a hypotensive principle of Morus root barks,Tetrahedron Letters 1980,21,3381−3384.を参照。
【0041】
P3−3:ESI−MS:m/z 421([M+H])。NMR解析も実施した。ESI−MSおよびNMRデータにより、P3−3の化学式はC2524であることが示された。NMRデータを下記の論文と比較し、P3−3はモルシンであることを確認した。また、モルシンは、米国特許出願公開第2008/0286213号にも開示されている。
【0042】
論文:Nomura,T.;Fukai,T.;Yamada,S.;Katayanagi,M.,Phenolic constituents of the cultivated mulberry tree(Morus alba L.),Chem.Pharm.Bull.1976,24,2898−2900.を参照。
【0043】
P3−4:ESI−MS:m/z 447.0([M+H])。NMR解析も実施した。ESI−MSおよびNMRデータにより、P3−3の化学式はC2934であることが示された。NMRデータを下記の論文と比較し、P3−4はマルベロフランDであることを確認した。また、マルベロフランDは、特開平10−007555号公報にも開示されている。
【0044】
論文:Nomura,T.;Fukai,T.;Shimada,T.;Chen,I.−S.,Mulberrofuran D,a new 2−arylbenzofuran from the root barks of the mulberry tree(Morus australis Poir.),Heterocycles,1982,19,1855−1860.を参照。
【0045】
抗菌テスト
In Vitroの菌:黄色ブドウ球菌(スミス株)およびメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(ATCC33591)
黄色ブドウ球菌(スミス株)およびメチシリン耐性ブドウ球菌(ATCC33591)のサンプルの最小発育阻止濃度(MIC)を、液体培地希釈法[Edwards J.R.et al.In vitro antibacterial activity of SM−7338,a carbapenem antibiotic with stability to dehydropeptidase I.Antimicrobial Agents Chemotherapy.33:pp.215−222,1989]により求めた。試験物質は(一般的には100%DMSOに)溶解させ、逐次、所定の濃度に溶媒中で希釈した。48ウェルプレートに、それぞれの試験濃度について0.01mL(最終DMSO濃度1%)を分取した後、1〜5×10CFU/mLの黄色ブドウ球菌(スミス株)またはメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(ATCC33591)を含んだ0.99mLの培地(Mueller−Hinton Broth(DIFCO、USA))を添加した。以上のように、最終的なDMSO最大濃度は1%、初期の試験物質濃度は100μg/mLまたは30μMであった。プレートを37℃で20時間インキュベートした後、増殖すなわち濁度が抑制されたものを陽性(+)とし、増殖または濁度への影響がないものを陰性(−)として肉眼で評価を行った。媒体対照(Vehicle−control)および活性参照剤(active reference agents)をブランクおよびポジティブコントロールとして用いた。各濃度について二回ずつ評価を行った。結果は表1に示す。
【0046】
In Vitroの菌:肺炎連鎖球菌(ATCC6301)および肺炎連鎖球菌(エリスロマイシンおよびアンピシリン耐性、臨床分離株)
肺炎連鎖球菌(ATCC6301)および肺炎連鎖球菌(エリスロマイシンおよびアンピシリン耐性、臨床分離株)のサンプルの最小発育阻止濃度(MIC)を、液体培地希釈法[Edwards J.R.et al.In vitro antibacterial activity of SM−7338,a carbapenem antibiotic with stability to dehydropeptidase I.Antimicrobial Agents Chemotherapy.33:pp.215−222,1989]により求めた。試験物質は(一般的に100%DMSOに)溶解させ、逐次、所定の濃度に溶媒中で希釈した。試験物質は(一般的には100%DMSOに)溶解させ、逐次、所定の濃度に溶媒に希釈した。48ウェルプレートに、それぞれの試験濃度について0.01mL(最終DMSO濃度1%)を分取した後、1〜5×10CFU/mLの肺炎連鎖球菌(ATCC6301)および肺炎連鎖球菌(エリスロマイシンおよびアンピシリン耐性臨床分離株)を含んだ7%ウシ胎児血清含有培地(Tryptic Soy Broth(DIFCO、USA))0.99mLを添加した。以上のように、最終的なDMSO最大濃度は1%、初期の試験物質濃度は100μg/mLまたは30μMであった。プレートを37℃で20時間インキュベートした後、増殖すなわち濁度が抑制されたものを陽性(+)とし、増殖または濁度への影響がないものを陰性(−)として肉眼で評価を行った。媒体対照(Vehicle−control)および活性参照剤(active reference agents)をブランクおよびポジティブコントロールとして用いた。各濃度について二回ずつ評価を行った。結果は表1に示す。
【0047】
【表1】

【0048】
表1を参照すると、化合物P3−2は、0.3μg/mLの濃度でSA(スミス株)およびMRSAの増殖抑制に有効であることがわかる。対照的に、ゲンタマイシンのMRSAへのMICはSA(スミス株)の10倍である。
【0049】
化合物P3−1は、SA(スミス株)およびMRSAに対するMICがそれぞれ1μg/mLおよび3μg/mLであり、増殖抑制に有効なことが示された。化合物P3−1は、SPおよびSP(エリスロマイシンおよびアンピシリン耐性)に対するMICが、それぞれ、30μg/mLおよび10μg/mLであり、相対的に増殖抑制の作用が低い。
【0050】
P3−2およびP3−1をそれぞれ3.65wt%および2.3wt%を含有していることを考慮すると、驚いたことに、本発明の抽出物EX−1は、SAおよびMRSAに対するMICが0.3μg/mLおよび1μg/mLであり、増殖抑制に非常に有効であることが示された。抽出物EX−1に含まれている成分は、SAおよびMRSAの増殖抑制において相乗的に作用していることは明らかであり、そのために抽出物EX−1のSAおよびMRSAに対するMIC値は非常に低くなっている。
【0051】
本発明について、本明細書にいくつかの実施例を用いて詳細に記載したが、本発明の範囲は、後述する特許請求の範囲に制限されることがない。前述した開示に照らして、種々の変更及び修飾が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(I):
【化1】

で表される化合物または製剤上許容されうるその塩を含む、細菌感染の治療のための医薬組成物。
【請求項2】
以下の工程:
a)シマグワの根皮を極性溶剤で抽出する;
b)工程a)で得られた抽出溶液を濃縮する;
c)工程b)で得られた濃縮物を逆相クロマトグラフィカラムに導入し、第一溶離液および第二溶離液を順にカラムに充填し、この際、前記第一溶離液を約50wt%エタノール水溶液の極性、および前記第二溶離液を約95wt%エタノール水溶液の極性とする;並びに
d)第二溶離液を用いてカラムから溶出する第二溶出液を回収し、第二溶出液から第二溶離液を減圧除去する、
を含むプロセスによって、シマグワの根皮から調製された抽出物を含む、細菌感染の治療のための医薬組成物。
【請求項3】
前記抽出物が、請求項1に記載の化学式(I)で表される化合物、および下記化学式(II):
【化2】

で表される化合物を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記抽出物が、抽出物の重量に対して、前記化合物(I)を1〜5wt%、化合物(II)を1〜5wt%含有する、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記抽出物が、抽出物の重量に対して、前記化合物(I)を3.7wt%、前記化合物(II)を2.3wt%含有する、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記第一溶離液が50wt%エタノール水溶液であり、前記第二溶離液が95wt%エタノール水溶液である、請求項2〜5のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項7】
工程a)における前記極性溶剤が、水または95wt%エタノール水溶液である、請求項2〜6のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記極性溶剤が95wt%エタノール水溶液である、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記細菌がグラム陽性菌である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記細菌が黄色ブドウ球菌(スミス株)または肺炎連鎖球菌である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
細菌が黄色ブドウ球菌(スミス株)である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
細菌がメチシリン耐性黄色ブドウ球菌である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
細菌が肺炎連鎖球菌である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項14】
細菌がエリスロマイシンおよびアンピシリン耐性肺炎連鎖球菌である、請求項13に記載の医薬組成物。

【公開番号】特開2010−155819(P2010−155819A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−118352(P2009−118352)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(500390032)財団法人醫藥工業技術發展中心 (3)
【Fターム(参考)】