説明

シャッター装置、シャッター装置の制御方法および周波数調整方法

【課題】シャッターを開状態から閉状態とするのにかかる時間をほぼ一定に保つことができるシャッターおよび当該シャッターを用いた周波数調整方法を提供すること。
【解決手段】開閉自在なシャッター装置1は、ベース2とシャッター部3とを連結する形状記憶合金41と、形状記憶合金41に電圧を印加する電圧印加手段42と、形状記憶合金41を冷却する冷却手段43と、形状記憶合金41の温度を検知する温度検知手段44と、電圧印加手段42および冷却手段43の駆動を制御する制御手段45と、ベース2に対してシャッター部3を付勢する付勢手段46とを有している。また、制御手段45は、開状態における形状記憶合金41の温度が所定温度となるように、温度検知手段44の検知結果に基づいて電圧印加手段42および前記冷却手段43の少なくとも一方の駆動を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッター装置、シャッター装置の制御方法および周波数調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、振動子の共振周波数を調整(変更)する方法として、振動子の質量を変化(増加または減少)させる方法が知られている。このような方法は、例えば、振動子と、イオンビームを振動子に照射することにより振動子の一部を除去して振動子の質量を減少させるイオンガンと、振動子とイオンガンとの間に設けられたシャッターとを有する装置を用いて行われる(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の装置では、複数のシャッター板が重ねられた状態にて鉄芯に軸支されており、各シャッター板は、鉄芯を中心として回動可動となっている。また、各シャッター板は、対応するソレノイドの駆動により回動するように構成されている。特許文献1に記載の装置では、このようなシャッター板の回動を利用して、シャッターを開状態または閉状態とすることができる。
【0004】
このような装置では、イオンガンからイオンビームが発射されている状態にて、シャッターを開状態とする。これにより、イオンビームがシャッターを通過して振動子に照射され、振動子の一部が除去されることにより、振動子の共振周波数が変化(減少)する。そして、振動子の周波数が所定の周波数となった時点でシャッターを閉状態とすることにより、振動子へのイオンビームの照射を阻止する。このような方法により、振動子の共振周波数を調整する。
【0005】
しかしながら、このようなシャッターでは、シャッター板の回動によって、シャッター板同士が互いに擦れ合い、当該擦れに起因する摩耗により、シャッター板の摺動性が悪化する。摺動性の悪化は、シャッター板の回動速度を低下させるため、シャッターを開状態から閉状態とするのにかかる時間が長くなる。このように、シャッターを閉じる時間が長くなると、その分、振動子へのイオンビームの照射時間が長くなり、振動子の共振周波数が所定の周波数よりも高くなってしまう。すなわち、特許文献1のシャッターでは、その開閉を精度よく制御することができず、振動子の共振周波数を所定の周波数に高精度に合わせ込むことが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−118156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、開状態から閉状態とするのにかかる時間をほぼ一定に保つことができるシャッター装置、このシャッター装置の制御方法および当該シャッターを用いた周波数調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
本発明のシャッター装置は、貫通孔を有するベースと、前記ベースに対して変位可能なシャッター部と、前記シャッター部を駆動する駆動手段とを有し、前記駆動手段によって前記シャッター部を前記ベースに対して変位させることにより、前記貫通孔が開かれた開状態と前記シャッター部によって閉じられた閉状態とを切り替えることのできるシャッター装置であって、
前記駆動手段は、前記ベースと前記シャッター部とを連結し、電圧が印加されることにより収縮する形状記憶合金と、
前記形状記憶合金に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記形状記憶合金を冷却する冷却手段と、
前記形状記憶合金の温度を検知する温度検知手段と、
前記電圧印加手段および前記冷却手段の駆動を制御する制御手段と、を有することを特徴とする。
これにより、開状態から閉状態とするのにかかる時間をほぼ一定に保つことができるシャッターが得られる。
【0009】
本発明のシャッター装置の制御方法は、貫通孔を有するベースと、前記ベースに対して変位可能なシャッター部と、
前記シャッター部を駆動する駆動手段を有し、
前記駆動手段は、前記ベースと前記シャッター部とを連結し、電圧が印加されることにより収縮する形状記憶合金と、
前記形状記憶合金に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記形状記憶合金を冷却する冷却手段と、
前記形状記憶合金の温度を検知する温度検知手段と、
前記電圧印加手段および前記冷却手段の駆動を制御する制御手段と、
前記ベースに対して前記シャッター部を前記形状記憶合金の収縮方向と反対方向に付勢する付勢手段とを備え、
前記駆動手段によって前記シャッター部を前記ベースに対して変位させることにより、前記貫通孔が開かれた開状態と前記シャッター部によって閉じられた閉状態とを切り替えることのできるシャッター装置の制御方法であって、
前記電圧印加手段による前記形状記憶合金への電圧印加によって前記形状記憶合金を収縮させ、前記付勢手段の付勢力に逆らって前記シャッター部を変位させることにより前記開状態から前記閉状態へ変位させることを特徴とする。
これにより、より素早く、シャッターを開状態から閉状態とすることができる。
【0010】
本発明のシャッター装置の制御方法では、前記制御手段は、前記開状態において、前記形状記憶合金の温度が所定温度となるように、前記温度検知手段の検知結果が前記所定温度よりも低い場合は、前記電圧印加手段の駆動を行い、前記所定温度より高い場合は、前記電圧印加手段の駆動を停止することが好ましい。
これにより、形状記憶合金の温度制御が比較的簡単となる。
【0011】
本発明のシャッター装置の制御方法では、前記制御手段は、前記閉状態における前記形状記憶合金の温度が所定温度となるように、前記温度検知手段の検知結果に基づいて前記電圧印加手段および前記冷却手段の少なくとも一方の駆動を制御することが好ましい。
これにより、閉状態から開状態とするのにかかる時間をほぼ一定に保つことができるシャッターが得られる。
【0012】
本発明のシャッター装置の制御方法では、前記制御手段は、前記閉状態において、前記形状記憶合金の温度が所定温度となるように、前記温度検知手段の検知結果が前記所定温度よりも高い場合は、前記冷却手段の駆動を行い、前記所定温度より低い場合は、前記冷却手段の駆動を停止することが好ましい。
これにより、形状記憶合金の温度制御が比較的簡単となる。
【0013】
本発明の振動子の周波数調整方法は、振動子の共振周波数を調整する周波数調整方法であって、
貫通孔を有するベースと、
前記ベースに対して変位可能なシャッター部と、
前記シャッター部を駆動する駆動手段を有し、
前記駆動手段は、前記ベースと前記シャッター部とを連結し、電圧が印加されることにより収縮する形状記憶合金と、
前記形状記憶合金に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記形状記憶合金を冷却する冷却手段と、
前記形状記憶合金の温度を検知する温度検知手段と、
前記電圧印加手段および前記冷却手段の駆動を制御する制御手段と、
前記ベースに対して前記シャッター部を前記形状記憶合金の収縮方向と反対方向に付勢する付勢手段と、を備えたシャッター装置を用意し、
前記振動子と該振動子の質量を変化させる質量変化手段との間に、前記ベースと前記シャッター部を配置する工程と、
前記貫通孔を閉状態から開状態へ切り替える第1の切り替え工程と、
前記開状態において前記質量変化手段を駆動させつつ、前記振動子の質量を変化させて前記振動子の共振周波数を変化させる工程と、
前記開状態から前記閉状態へ切り替える第2の切り替え工程と、
前記閉状態において前記振動子の共振周波数の変化を阻止する工程を有し、
前記第1の切り替え工程および前記第2の切り替え工程のうち一方は、前記電圧印加手段による前記形状記憶合金への電圧印加によって前記形状記憶合金を収縮させ、前記付勢手段の付勢力に逆らって前記シャッター部を第1方向に変位させることにより行われ、他方は、前記冷却手段による前記形状記憶合金の冷却によって前記形状記憶合金を伸長させ、前記付勢手段の付勢力によって前記シャッター部を前記第1方向と反対の第2方向へ変位させることにより行なわれ、
前記制御手段は、前記開状態における前記形状記憶合金の温度が所定温度となるように、前記温度検知手段の検知結果に基づいて前記電圧印加手段および前記冷却手段の少なくとも一方の駆動を制御するよう構成されていることを特徴とする。
これにより、振動子の共振周波数の調整を高精度に行うことができる。
【0014】
本発明の振動子の周波数調整方法では、前記質量変化手段は、不活性ガスを電界で加速させることによりイオンビームを発射するイオンビーム発射部を有し、
前記冷却手段は、前記イオンビームと同種の不活性ガスからなる冷却ガスによって前記形状記憶合金を冷却することが好ましい。
これにより、安定した周波数調整を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるシャッターを適用した周波数調整装置の断面図である。
【図2】図1に示す共振周波数調整装置が有するシャッター装置の断面図である。
【図3】図1に示す共振周波数調整装置が有するシャッター装置の断面図である。
【図4】図2に示すシャッター装置の変形例である。
【図5】形状記憶合金の温度とせん断ひずみの関係を示すグラフである。
【図6】本発明の周波数調整方法を説明するためのフローチャートである。
【図7】本発明の周波数調整方法を説明するためのフローチャートである。
【図8】本発明の周波数調整方法を説明するためのフローチャートである。
【図9】本発明の第2実施形態にかかるシャッターの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のシャッター装置、シャッター装置の制御方法および周波数調整装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態にかかるシャッター装置を適用した周波数調整装置の断面図、図2および図3は、図1に示す共振周波数調整装置が有するシャッター装置の断面図、図4は、図2に示すシャッター装置の変形例、図5は、形状記憶合金の温度とせん断ひずみの関係を示すグラフ、図6〜図8は、本発明の周波数調整方法を説明するためのフローチャートである。なお、以下では、説明の都合上、図1〜4中の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」として説明する。また、図1に示すように、互いに直交する3軸をx軸、y軸およびz軸とする。
【0017】
以下では、本発明のシャッター装置を、振動子9の共振周波数を調整するための周波数調整装置100に適用した場合について説明する。ただし、本発明のシャッター装置の用途は、これに限定されない。
1.周波数調整装置
図1に示す周波数調整装置100は、内部を所望の環境とすることのできるチャンバー110と、複数のシャッター装置1が並設してなるシャッター装置群1’と、イオンガン(イオンビーム発射部)120と、遮蔽板130とを有している。
【0018】
イオンガン120は、例えば、Ar、Ne等の不活性ガスに電界を作用させて加速させることにより、イオンビームを発射するものであり、振動子9の質量を変化させる質量変化手段を構成するものである。
複数のシャッター装置1は、それぞれ、独立して駆動が制御されており、イオンビームIBの通過を許容する開状態と、イオンビームIBを遮断する閉状態とを選択できるようになっている。また、イオンガン120は、チャンバー110内にてシャッター装置群1’よりも下側に位置しており、上方へ向けてイオンビームIBを照射する。また、遮蔽板130は、チャンバー110内にてシャッター装置群1’よりも上側に位置しており、隣り合うシャッター装置1の間から上方へ漏れるイオンビームIBを遮断する。
【0019】
このような周波数調整装置100では、1つのシャッター装置1の上方に1つの振動子9を配置し、イオンガン120からイオンビームIBを発射するとともに、シャッター装置1を開状態とすることにより、振動子9にイオンビームIBを照射し、振動子9の一部(例えば、電極の一部)を除去する。これにより、振動子9の質量を減らし、その共振周波数を調整する。イオンビームIBの照射により、振動子9の共振周波数が所定値となったら、速やかにシャッター装置1を閉じ、それ以上、イオンビームIBが振動子9に照射されるのを阻止する。周波数調整装置100では、このようにして、振動子9の共振周波数を調整する。なお、周波数調整装置100を用いた振動子9の周波数調整方法については、後に、詳しく説明する。
【0020】
次に、シャッター装置群1’について詳しく説明する。
図1に示すように、シャッター装置群1’は、x軸方向に延在する複数のシャッター装置1を有し、これら複数のシャッター装置1をy軸方向に並設した構成である。このように、複数のシャッター装置1を並設することにより、一度に、複数(すなわち、シャッター装置1の枚数分)の振動子9の共振周波数を調整することができるため、装置の効率性が向上する。なお、シャッター装置1の枚数は、図1の構成では4枚であるが、特に限定されず、例えば、10以上、30以下程度とすることができる。
【0021】
以下、シャッター装置1について説明するが、複数のシャッター装置1は、それぞれ、同様の構成であるため、以下では、1つのシャッター装置1について説明し、それ以外のシャッター装置1については、その説明を省略する。
[シャッター装置1]
図2に示すように、シャッター装置1は、ベース2と、ベース2に対して変位可能なシャッター部(シャッター板)3と、シャッター部3を駆動する駆動手段4とを有している。このようなシャッター装置1は、駆動手段4によってシャッター部3をベース2に対して変位させることにより、振動子9がイオンガン120側へ露出した開状態と、振動子9がイオンガン120側から遮蔽された閉状態とを切り替えることができる。
【0022】
ベース2は、シャッター部3を支持する機能を有している。このようなベース2は、x軸方向に延在する長尺状をなしている。ベース2の幅(y軸方向の長さ)は、振動子9の大きさにもよるが、例えば1〜5mm程度である。
また、ベース2には、その中央部に上下を貫通する貫通孔21が形成されている。貫通孔21は、イオンビームIBをイオンガン120側から振動子9側へ通過させるための孔である。このような貫通孔21の形状、大きさとしては、振動子9の形状、大きさによっても異なるが、例えば、0.5mm×0.5mm〜2mm×2mmの矩形とすることができる。
【0023】
また、ベース2の右側端部には、上面に開放し、形状記憶合金41に向けて冷却ガスGを噴出するための噴出孔22が形成されている。このような噴出孔22は、形状記憶合金41の下側に設けられており、冷却ガスGを効率的に形状記憶合金41に吹き付けることができる。
このようなベース2は、例えば、耐スパッタ性に優れる炭素、チタン等を構成材料として構成されている。また、ベース2は、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マンガン、アルミニウム、マグネシウム等の各種金属、またはこれらのうちの少なくとも1種を含む合金または金属間化合物、さらには、これらの金属の酸化物、窒化物、炭化物等で構成された本体の表面に、耐スパッタ性に優れるDLC(ダイアモンドライクカーボン)膜を形成した構成とすることもできる。ベース2をこのような構成とすることにより、イオンビームIBによるベース2の損傷を効果的に抑制することができる。なお、ベース2がイオンビームIBと接触せず、ベース2に耐スパッタ性が要求されない場合には、ベース2は、例えば、前述した金属材料等により構成されていてもよい。
【0024】
シャッター部3は、ベース2の上面上に配置されており、x軸方向に延在する長尺状をなしている。また、シャッター部3は、ベース2の上面上をx軸方向に摺動(変位)可能となっている。このようなシャッター部3は、ベース2に形成された貫通孔21の上部開口を開いたり、閉じたりするための部材である。
具体的には、シャッター部3には、z軸方向に貫通する貫通孔で構成された窓部31が形成されており、図3(a)に示すように、この窓部31とベース2の貫通孔21とが重なり合った状態にて、貫通孔21が開きイオンビームIBの通過を許容する状態、すなわち振動子9がイオンガン120側に露出した開状態となる。一方、図3(b)に示すように、窓部31が貫通孔21からずれた状態にて、貫通孔21が閉じイオンビームIBを遮断する状態、すなわち振動子9がイオンガン120側から遮蔽された閉状態となる。
【0025】
このようなシャッター部3の幅(y軸方向の長さ)は、貫通孔21を開いたり塞いだりすることができれば、特に限定されないが、ベース2の幅以下であるのが好ましい。これにより、z軸方向から見た平面視にて、ベース2のy軸方向両側からシャッター部3がはみ出るのを防止することができる。そのため、シャッター装置1の全幅を短く抑えることができ、複数のシャッター装置1をy軸方向に比較的狭ピッチで並設することができる。
【0026】
このようなシャッター部3は、例えば、耐スパッタ性に優れる炭素、チタン等を構成材料として構成されている。これにより、イオンビームIBによるシャッター部3の損傷を効果的に抑制することができる。また、このような材料で構成することにより、さらに、シャッター部3の軽量化を図ることができ、シャッター部3の反応性や移動速度を向上させることができる。
【0027】
なお、シャッター部3は、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マンガン、アルミニウム、マグネシウム等の各種金属、またはこれらのうちの少なくとも1種を含む合金または金属間化合物、さらには、これらの金属の酸化物、窒化物、炭化物等で構成された本体の表面に、耐スパッタ性に優れるDLC(ダイアモンドライクカーボン)膜を形成した構成とすることもできる。
【0028】
駆動手段4は、シャッター部3を駆動する、すなわちベース2に対してシャッター部3を変位させる機能を有している。図2に示すように、このような駆動手段4は、形状記憶合金41と、電圧印加手段42と、冷却手段43と、温度検知手段44と、制御手段45と、付勢手段46とを有している。
形状記憶合金41は、x軸方向に延在する長尺状をなしており、その両端部にて、ベース2とシャッター部3とを連結している。なお、形状記憶合金41の形状としては、特に限定されず、例えば、紐状(細線状)、コイル状とすることができる。
【0029】
このような形状記憶合金41は、所定温度(変態点)以下で変形しても、変態点以上に加熱すると、元の形状(記憶形状)に回復する性質を持っている。本実施形態の形状記憶合金41は、通常は、柔らかくしなやかであるが、電圧印加手段42によって電圧を印加して発熱させると強靭となりつつ収縮する。また、電圧印加手段42による電圧の印加を停止し、形状記憶合金41の温度が低下すれば、再び柔らかくなりもとの長さに伸長する。
【0030】
前述したように、形状記憶合金41は、ベース2とシャッター部3とを連結しているため、形状記憶合金41が収縮すると、その収縮力によって、シャッター部3がベース2に対して、第1方向(図2中右側)に変位する。本実施形態では、シャッター部3が第1方向へ移動することにより、シャッター装置1が開状態から閉状態となる。なお、以下では、説明の便宜上、形状記憶合金41が電圧印加によって収縮した状態を「収縮状態」と言い、電圧印加がされていない伸長した状態を「伸長状態」と言う。
【0031】
このような形状記憶合金41の構成材料としては、上記のような性質を発揮することができれば、特に限定されないが、例えば、49〜52原子%NiのNi−Ti合金等のNi−Ti系合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(Xは、Be、Si、Sn、Al、Gaのうちの少なくとも1種)等のCu−Zn系合金、36〜38原子%AlのNi−Al合金等のNi−Al系合金等が挙げられる。
【0032】
付勢手段46は、シャッター部3を、第1方向と反対の第2方向(図1中左側)へ付勢する。すなわち、付勢手段46は、シャッター部3を形状記憶合金41の収縮方向と反対方向に付勢する。このような付勢手段46は、x軸方向に延在する長尺状をなし、その両端部にて、ベース2とシャッター部3とを連結している。付勢手段46は、上記機能を発揮することができれば、特に限定されず、例えば、ゴムやコイルバネ等の弾性体で構成することができる。
付勢手段46の付勢力は、形状記憶合金41の収縮力よりも小さく設定されている。これにより、付勢手段46の付勢力に反して、形状記憶合金41の収縮に伴うシャッター部3の変位が可能となる。
【0033】
なお、付勢手段46の付勢力は、形状記憶合金41の収縮力よりも小さく、かつ、形状記憶合金41が収縮状態から伸長状態となった時にシャッター部3を第2方向へ移動させることができれば、より小さいのが好ましい。これにより、形状記憶合金41の収縮力をより効率的にシャッター部3の第1方向への移動へ利用することができ、シャッター部3の第1方向への移動速度および反応性がより高くなる。
【0034】
前述したように、シャッター部3の第1方向への移動は、シャッター装置1を開状態から閉状態とするための移動である。このような移動をより高速かつ反応性よく行うことにより、振動子9が所定の共振周波数となった際に、イオンビームIBをより素早く遮断することができ、すなわち、シャッター装置1を閉状態とする命令を出した時刻と、シャッター装置1が実際に閉状態となった時刻との時間差をより短くすることができ、振動子9の周波数をより精度よく所定値に合わせ込むことができる。
【0035】
電圧印加手段42は、形状記憶合金41に電圧を印加する機能を有している。電圧印加手段42は、直流電圧を印加する電源421と、電源421と形状記憶合金41とを連結する配線422とを有している。電源421は、制御手段45と電気的に接続されており、制御手段45によりその作動が制御される。
このような電圧印加手段42によって形状記憶合金41に電圧を印加すると、前述したように、形状記憶合金41が収縮し、これに伴ってシャッター部3が第1方向へ移動する。このことから、電圧印加手段42は、シャッター部3を第1方向へ移動させるための移動手段(第1移動手段)を構成しているとも言える。
【0036】
冷却手段43は、形状記憶合金41を冷却する機能を有している。このような冷却手段43を有することにより、電圧印加手段42からの電圧印加によって発熱した形状記憶合金41をより短時間で冷却することができる。そのため、形状記憶合金41をより短時間で収縮状態から伸長状態とすることができる。形状記憶合金41を冷却し、形状記憶合金41を収縮状態から伸長状態とすると、付勢手段46の付勢力によって、シャッター部3が形状記憶合金41の伸長分だけ第2方向へ移動する。このことから、冷却手段43および付勢手段46は、シャッター部3を第2方向へ移動させるための移動手段(第2移動手段)を構成しているとも言える。
【0037】
このような冷却手段43は、冷却ガスGを充填するガスボンベ(ガス供給源)431と、ベース2の噴出孔22とガスボンベ431とを接続する冷却ガス供給流路432と、ガスボンベ431から供給される冷却ガスGの流量を調整するマスフローコントローラー(流量調整手段)433と、マスフローコントローラー433より下流側で、冷却ガス供給流路432内の流路を開閉するバルブ(電磁バルブ)434とを有している。なお、マスフローコントローラー433およびバルブ434は、それぞれ、制御手段45によりその作動が制御される。
【0038】
このような冷却手段43は、バルブ434を開状態とした状態にて、ガスボンベ431から冷却ガスGを送り出し、マスフローコントローラー433により冷却ガスGの流量を調節する。そして、流量が調整された冷却ガスGを、冷却ガス供給流路432を介して噴出孔22から形状記憶合金41に吹き付ける。また、冷却手段43は、バルブ434を閉状態とすることにより、形状記憶合金41への冷却ガスGの吹き付けを停止する。
【0039】
前述したように、ベース2の噴出孔22は、形状記憶合金41の下側(直下)に形成されているため、噴出孔22から噴出した冷却ガスGは、速やかに、形状記憶合金41の冷却の用に供される。そのため、形状記憶合金41の冷却をより短時間かつ効率的に行うことができ、シャッター部3の第2方向への移動速度および反応性をより高めることができる。
【0040】
また、冷却ガスGとしては、形状記憶合金41を冷却することができれば、特に限定されないが、例えば、He、Ne、Ar、Xeまたはこれらの混合ガス等の不活性ガス(希ガス)を主成分とするガスを用いることができる。これらの中でも、冷却ガスGとしては、イオンビームIBと同種のガスであるのが好ましい。これにより、チャンバー110内の環境を一定に維持することができ、振動子9の周波数調整を安定的に行うことができる。
温度検知手段44は、形状記憶合金41の温度を検知する。本実施形態の温度検知手段44は、形状記憶合金41から放射される赤外線の強度を測定することにより温度を検知する放射温度計であり、放射温度計は、例えば、形状記憶合金41の直上に配置することができる。
【0041】
なお、温度検知手段44の構成としては、形状記憶合金41の温度を検知することができれば、本実施形態の構成に限定されない。例えば、図4に示すように形状記憶合金41の抵抗値を検出することのできる抵抗計442を接続し、抵抗計442により検出した抵抗値に基づいて形状記憶合金41の温度を検出するように構成されていてもよい。形状記憶合金41は、温度変化に伴って抵抗値も変化するため、例えば、図示しない記憶部等に抵抗値と温度の関係を示すテーブル等を格納しておけば、抵抗計442で検出した抵抗値を当該テーブルに照らし合わせることにより、形状記憶合金41の温度を検知することができる。また、このような構成とすることにより、温度検知手段44をチャンバー110の外側に配置することができる。そのため、チャンバー110の小型化を図ることができるとともに、チャンバー110内への配線の引き回し等が不要となるため、周波数調整装置100の構成の容易化を図ることができる。
制御手段45は、温度検知手段44の検知結果に基づいて、電圧印加手段42および冷却手段43の駆動を制御する。なお、制御手段45の具体的な制御については、後に詳述する。
以上、シャッター装置1の構成について、詳細に説明した。
【0042】
次に、シャッター装置1の駆動方法(本発明の制御方法)について説明する。
シャッター装置1では、形状記憶合金41が伸長状態であり、付勢手段46によってシャッター部3が第2方向へ移動した状態にて窓部31が貫通孔21と重なる開状態となり、形状記憶合金41が収縮状態であり、シャッター部3が第1方向へ移動した状態にて窓部31が貫通孔21からずれた閉状態となる。
【0043】
まず、開状態から閉状態とする動作について説明する。シャッター装置1が開状態のときに電圧印加手段42によって形状記憶合金41に電圧を印加すると、形状記憶合金41が収縮するとともにシャッター部3が第1方向に移動する。これにより、開状態から閉状態となる。
次に、閉状態から開状態とする動作について説明する。シャッター装置1が閉状態のときに冷却手段43によって形状記憶合金41を冷却すると、形状記憶合金41が収縮状態から伸長状態へ変形するとともに、付勢手段46の付勢力によってシャッター部3が第2方向に移動する。これにより、閉状態から開状態となる。
【0044】
ここで、本実施形態のように、開状態から閉状態とするのに形状記憶合金41の収縮力を利用することにより、反応性よくかつ素早く開状態から閉状態とすることができる。これにより、振動子9が所定の共振周波数となった際に、イオンビームIBをより素早く遮断することができ、すなわち、シャッター装置1を閉状態とする命令を出した時刻と、シャッター装置1が実際に閉状態となった時刻との時間差をより短くすることができ、振動子9の周波数をより精度よく所定値に合わせ込むことができる。
【0045】
具体的に説明すると、第1に、形状記憶合金41の収縮と伸長では、収縮の方が伸長よりも、反応性が高くかつ変形速度が速い。また、第2に、電圧印加手段42によって形状記憶合金41を収縮させるのと、冷却手段43によって形状記憶合金41を伸長させるのとでは、電圧印加手段42による方が素早く、すなわち制御手段45から命令が出されてからより短時間で形状記憶合金41を変形させることができる。さらに、第3に、形状記憶合金41の収縮によるシャッター部3の移動速度と、付勢手段46の付勢によるシャッター部3の移動速度とでは、形状記憶合金41の収縮によるシャッター部3の移動速度の方が早い。以上のような3つの理由から、開状態から閉状態とするのに形状記憶合金41の収縮力を利用することにより、反応性よくかつ素早く開状態から閉状態とすることができる。
【0046】
なお、シャッター装置1の駆動は、これに限定されず、本実施形態とは逆になっていてもよい。すなわち、開状態から閉状態とするのに付勢手段46の付勢力を利用し、閉状態から開状態とするのに形状記憶合金41の収縮力を利用してもよい。
このようなシャッター装置1において、制御手段45は、開状態における形状記憶合金41の温度を所定温度または前記所定温度を含む所定温度範囲内(例えば、所定温度±1℃程度)に維持するように、温度検知手段44の検知結果に基づいて冷却手段43の駆動を制御する。
【0047】
なお、制御手段45は、冷却手段43に加えて、電圧印加手段42の駆動を制御することにより、すなわち加熱と冷却を共に用いて、開状態における形状記憶合金41の温度を制御してもよい。これにより、より精度よく、形状記憶合金41の温度を制御することができる。また、環境温度によっては、制御手段45は、電圧印加手段42のみを制御するよう構成されていてもよい。
【0048】
このように、開状態での形状記憶合金41の温度を制御することにより、開状態での形状記憶合金41の長さ(x軸方向の長さ)を所定長さに維持することができる。これにより、ベース2に対するシャッター部3、より具体的には貫通孔21に対する窓部31の位置を所定位置に維持することができる。そのため、第1に、開状態を確実に維持することができ、第2に、シャッター部3を第1方向に移動させる際、移動開始時刻から貫通孔21が閉じきるまでの時間をほぼ一定とすることができる。また、第3に、形状記憶合金41を所定温度(所定温度範囲内)に維持しておくことにより、形状記憶合金41を、収縮させるための待機状態とすることができ、より迅速に開状態から閉状態とすることができる。
【0049】
以上説明したような開状態における形状記憶合金41の温度制御と同様に、制御手段45は、閉状態における形状記憶合金41の温度を所定温度または前記所定温度を含む所定温度範囲内(例えば、所定温度±1℃程度)に維持するように、温度検知手段44の検知結果に基づいて電圧印加手段42の駆動を制御する。
なお、電圧印加手段42に加えて、冷却手段43の駆動を制御することにより、すなわち加熱と冷却を共に用いて、閉状態における形状記憶合金41の温度が所定温度または所定温度範囲内を維持するように構成されていてもよい。これにより、より精度よく、形状記憶合金41の温度を制御することができる。
【0050】
このように、閉状態における形状記憶合金41の温度を所定温度または所定温度範囲内に維持することにより、閉状態における、貫通孔21に対する窓部31の位置を所定位置に維持することができる。そのため、第1に、閉状態を確実に維持することができる。また、第2に、シャッター部3を第2方向に移動させる際、移動開始時刻から貫通孔21が開ききるまでの時間をほぼ一定とすることができる。また、第3に、形状記憶合金41を所定温度または所定温度範囲内に維持しておくことにより、形状記憶合金41を、伸長させるための待機状態とすることができ、より迅速に閉状態から開状態とすることができる。
【0051】
開状態において維持しようとする形状記憶合金41の設定温度To’と、閉状態において維持しようとする形状記憶合金41の設定温度Tc’とは、例えば、次のようにして設定される。図5は、形状記憶合金41の温度とせん断歪みの関係の一例を示すグラフである。同図に示すように、形状記憶合金41は、温度がToまでは伸長状態からほとんど変形しない。そして、温度がToを超えたあたりから急激に変形し、温度Tcにて収縮状態となり、それ以上の温度ではほとんど変形しない。
【0052】
そのため、設定温度To’は、実質的に伸長状態を保つことのできる最も高い温度である温度Toと等しいのが理想的である。しかしながら、形状記憶合金41の作動誤差や個体差などを加味すると、設定温度To’は、温度Toよりも1〜2℃程度低い温度であるのが好ましい。同様に、設定温度Tc’は、実質的に収縮状態を保つことのできる最も低い温度である温度Tcであるのが理想的である。しかしながら、形状記憶合金41の作動誤差や個体差などを加味すると、温度Tcよりも1〜2℃程度高い温度であるのが好ましい。
設定温度To’、Tc’をこのような温度に設定することにより、シャッター装置1の誤作動(例えば、不本意に開状態や閉状態が解除されること)を効果的に防止することができるとともに、より素早く、すなわち制御信号発信時刻からタイミングラグ無く開状態から閉状態または閉状態から開状態とすることができる。
【0053】
2.周波数調整方法
次に、周波数調整装置100を用いた振動子9の周波数調整方法(本発明の周波数調整方法)について、図6〜8に示すフローチャートに基づいて説明する。
周波数調整装置100による振動子9の周波数調整は、1つのシャッター装置1の直上に1つの振動子9が位置するように、複数の振動子9をチャンバー110内に配置し、チャンバー110内を減圧状態(好ましくは、真空状態)とした状態にて行われる。また、周波数調整装置100による振動子9の周波数調整は、断続的(常時)または間欠的(所定時間間隔ごと)に温度検知手段44によって形状記憶合金41の温度を検知しながら行われる。また、周波数調整装置100による振動子9の周波数調整は、振動子9の共振周波数を断続的に検知しながら行われ、この検知結果は、リアルタイムに制御手段45に送られる。
【0054】
なお、複数の振動子9は、それぞれ、板状またはシート状のキャリアに支持されている。そして、この状態にて、以下のようにして、振動子9の周波数を調整する。各振動子9の周波数調整の方法は、互いに同様であるため、以下では、1つの振動子9の周波数を調整する方法について説明し、他の振動子9の周波数を調整する方法については、その説明を省略する。
【0055】
まず、図6に示すように、シャッター装置1を閉状態とする(S1)。このステップS1を詳細に説明すると、図7に示すように、まず、冷却手段43の駆動をOFFとするとともに、電圧印加手段42の駆動をONにする(S11)。次に、制御手段45によって、温度検知手段44により検知される形状記憶合金41の温度が設定温度Tc’以上か否かを判断し(S12)、設定温度Tc’より低い場合には電圧印加手段42をそのまま駆動させ、設定温度Tc’以上である場合には電圧印加手段42の駆動をOFFとする(S13)。電圧印加手段42の駆動をOFFとした場合には、制御手段45によって、温度検知手段44により検知された形状記憶合金41の温度が設定温度Tc’より低いか否かを判断し(S14)、設定温度Tc’以上である場合には電圧印加手段42をそのままOFFとし、設定温度Tc’よりも低い場合には電圧印加手段42の駆動をONとする(S15)。このように、ステップS1では、形状記憶合金41の温度が設定温度Tc’付近に維持されるように、制御手段45によって電圧印加手段42の駆動を制御(フィードバック制御)する。このような方法によれば、簡単な電圧印加手段42の制御で、形状記憶合金41の温度を制御することができる。
なお、上記では、電圧印加手段42のON/OFFによって形状記憶合金41の温度制御を行っているが、これに限定されず、例えば、電圧印加手段42から形状記憶合金41へ印加する電圧の強さを変更することにより、形状記憶合金41の温度制御を行ってもよい。
【0056】
次に、イオンガン120をONとし、イオンビームIBを上方に向けて発射する(S2)。そして、イオンビームIBが安定するまで、シャッター装置1を閉状態としたまま放置する。
次に、シャッター装置1を開状態(露出状態)とする(第1の切り替え工程。S3)。このステップS3を詳細に説明すると、図8に示すように、まず、電圧印加手段42の駆動をOFFとするとともに、冷却手段43の駆動をONにする(S31)。次に、制御手段45によって、温度検知手段44により検知される形状記憶合金41の温度が設定温度To’以下であるか否かを判断し(S32)、設定温度To’より高い場合には冷却手段43をそのまま駆動させ、設定温度To’以下である場合には冷却手段43の駆動をOFFとする(S33)。冷却手段43の駆動をOFFとした場合には、制御手段45によって、温度検知手段44により検知される形状記憶合金41の温度が設定温度To’よりも高いか否かを判断し(S34)、設定温度To’以下の場合には冷却手段43をそのままOFFとし、設定温度To’より高い場合には冷却手段43の駆動をONとする(S35)。このように、ステップS3では、形状記憶合金41の温度が設定温度Tc’付近に維持されるように、制御手段45によって、冷却手段43の駆動を制御(フィードバック制御)する。このような方法によれば、簡単な冷却手段43の制御で、形状記憶合金41の温度を制御することができる。
【0057】
なお、上記では、冷却手段43のON/OFF(バルブ434の開閉)によって形状記憶合金41の温度制御を行っているが、これに限定されず、例えば、マスフローコントローラー433によって噴出孔22から噴出される冷却ガスGの単位時間当たりの噴出量を変更することにより、形状記憶合金41の温度制御を行ってもよい。
このようにして、シャッター装置1を開状態とすると、シャッター装置1の貫通孔21を通過してイオンビームIBが振動子9に照射され、振動子9の一部、より具体的には電極の一部が除去され、これに伴う振動子9の質量の減少によって、振動子9の共振周波数が徐々に上昇する。
【0058】
次に、制御手段45によって、振動子9の共振周波数が所定の周波数となったか否かを判断する(S4)。なお、振動子9は、所定の周波数よりも高い周波数を持つようにあらかじめ設計されている。振動子9の共振周波数が所定の周波数よりも高い場合には、そのままシャッター装置1を開状態とし、所定の周波数と等しい場合には、シャッター装置1を閉状態とする(第2の切り替え工程。S5)。なお、シャッター装置1を閉状態とする方法は、前述したステップS1と同様である。
以上のステップS1〜S5によって、振動子9の共振周波数の調整が終了する。
振動子9の共振周波数の調整が終わった後は、例えば、チャンバー110内を大気圧に戻し、周波数調整済みの振動子9を取り除き、新たな振動子9をチャンバー110内に配置すればよい。なお、新たな振動子9の周波数調整を行う場合は、チャンバー110を真空引きした後は、前述したステップS3から始めればよい。
【0059】
<第2実施形態>
次に、本発明のシャッターの第2実施形態について説明する。
図9は、本発明の第2実施形態にかかるシャッターの断面図である。
以下、第2実施形態のシャッターについて、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0060】
本発明の第2実施形態にかかるシャッターは、冷却手段の構成が異なる以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
図9に示すように、本実施形態の冷却手段43Aは、形状記憶合金41を内側に含むように設けられた容器436Aと、容器436Aに接続された循環路437Aと、循環路437Aの途中に設けられた熱交換部(冷却部)438Aおよびポンプ439Aとを有している。また、容器436Aおよび冷却路437A内には、絶縁性の冷却媒体が充填れており、ポンプ439Aの駆動によって冷却媒体が循環している。また、形状記憶合金41の冷却の用に供され温度の上がった冷却媒体は、熱交換部438Aによって冷却され、再び形状記憶合金41の冷却に用いられる。
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0061】
以上、本発明のシャッターおよび周波数調整方法について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
また、前述した実施形態では、イオンビームによって振動子の質量を減少させることにより振動子の共振周波数を変更する方法について説明したが、これに限定されず、例えば蒸着によって金属粒子を振動子に付着させ、振動子の質量を増加させることにより、振動子の共振周波数を変更してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…シャッター装置 1’…シャッター装置群 2…ベース 21…貫通孔 22…噴出孔 3…シャッター部 31…窓部 4…駆動手段 41…形状記憶合金 42…電圧印加手段 421…電源 422…配線 43…冷却手段 431…ガスボンベ 432…冷却ガス供給流路 433…マスフローコントローラー 434…バルブ 43A…冷却手段 436A…容器 437A…循環路 438A…熱交換部 439A…ポンプ 44…温度検知手段 441…放射温度計 442…抵抗計 45…制御手段 46…付勢手段 9…振動子 100…周波数調整装置 110…チャンバー 120…イオンガン 130…遮蔽板 G…冷却ガス IB…イオンビーム S1〜S5…ステップ
To’…設定温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有するベースと、前記ベースに対して変位可能なシャッター部と、前記シャッター部を駆動する駆動手段とを有し、前記駆動手段によって前記シャッター部を前記ベースに対して変位させることにより、前記貫通孔が開かれた開状態と前記シャッター部によって閉じられた閉状態とを切り替えることのできるシャッター装置であって、
前記駆動手段は、前記ベースと前記シャッター部とを連結し、電圧が印加されることにより収縮する形状記憶合金と、
前記形状記憶合金に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記形状記憶合金を冷却する冷却手段と、
前記形状記憶合金の温度を検知する温度検知手段と、
前記電圧印加手段および前記冷却手段の駆動を制御する制御手段と、を有することを特徴とするシャッター装置。
【請求項2】
貫通孔を有するベースと、前記ベースに対して変位可能なシャッター部と、
前記シャッター部を駆動する駆動手段を有し、
前記駆動手段は、前記ベースと前記シャッター部とを連結し、電圧が印加されることにより収縮する形状記憶合金と、
前記形状記憶合金に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記形状記憶合金を冷却する冷却手段と、
前記形状記憶合金の温度を検知する温度検知手段と、
前記電圧印加手段および前記冷却手段の駆動を制御する制御手段と、
前記ベースに対して前記シャッター部を前記形状記憶合金の収縮方向と反対方向に付勢する付勢手段とを備え、
前記駆動手段によって前記シャッター部を前記ベースに対して変位させることにより、前記貫通孔が開かれた開状態と前記シャッター部によって閉じられた閉状態とを切り替えることのできるシャッター装置の制御方法であって、
前記電圧印加手段による前記形状記憶合金への電圧印加によって前記形状記憶合金を収縮させ、前記付勢手段の付勢力に逆らって前記シャッター部を変位させることにより前記開状態から前記閉状態へ変位させることを特徴とするシャッター装置の制御方法。
【請求項3】
前記制御手段は、前記開状態において、前記形状記憶合金の温度が所定温度となるように、前記温度検知手段の検知結果が前記所定温度よりも低い場合は、前記電圧印加手段の駆動を行い、前記所定温度より高い場合は、前記電圧印加手段の駆動を停止する請求項2に記載のシャッター装置の制御方法。
【請求項4】
前記制御手段は、前記閉状態における前記形状記憶合金の温度が所定温度となるように、前記温度検知手段の検知結果に基づいて前記電圧印加手段および前記冷却手段の少なくとも一方の駆動を制御する請求項2または3に記載のシャッター装置の制御方法。
【請求項5】
前記制御手段は、前記閉状態において、前記形状記憶合金の温度が所定温度となるように、前記温度検知手段の検知結果が前記所定温度よりも高い場合は、前記冷却手段の駆動を行い、前記所定温度より低い場合は、前記冷却手段の駆動を停止する請求項4に記載のシャッター装置の制御方法。
【請求項6】
振動子の共振周波数を調整する周波数調整方法であって、
貫通孔を有するベースと、
前記ベースに対して変位可能なシャッター部と、
前記シャッター部を駆動する駆動手段を有し、
前記駆動手段は、前記ベースと前記シャッター部とを連結し、電圧が印加されることにより収縮する形状記憶合金と、
前記形状記憶合金に電圧を印加する電圧印加手段と、
前記形状記憶合金を冷却する冷却手段と、
前記形状記憶合金の温度を検知する温度検知手段と、
前記電圧印加手段および前記冷却手段の駆動を制御する制御手段と、
前記ベースに対して前記シャッター部を前記形状記憶合金の収縮方向と反対方向に付勢する付勢手段と、を備えたシャッター装置を用意し、
前記振動子と該振動子の質量を変化させる質量変化手段との間に、前記ベースと前記シャッター部を配置する工程と、
前記貫通孔を閉状態から開状態へ切り替える第1の切り替え工程と、
前記開状態において前記質量変化手段を駆動させつつ、前記振動子の質量を変化させて前記振動子の共振周波数を変化させる工程と、
前記開状態から前記閉状態へ切り替える第2の切り替え工程と、
前記閉状態において前記振動子の共振周波数の変化を阻止する工程を有し、
前記第1の切り替え工程および前記第2の切り替え工程のうち一方は、前記電圧印加手段による前記形状記憶合金への電圧印加によって前記形状記憶合金を収縮させ、前記付勢手段の付勢力に逆らって前記シャッター部を第1方向に変位させることにより行われ、他方は、前記冷却手段による前記形状記憶合金の冷却によって前記形状記憶合金を伸長させ、前記付勢手段の付勢力によって前記シャッター部を前記第1方向と反対の第2方向へ変位させることにより行なわれ、
前記制御手段は、前記開状態における前記形状記憶合金の温度が所定温度となるように、前記温度検知手段の検知結果に基づいて前記電圧印加手段および前記冷却手段の少なくとも一方の駆動を制御するよう構成されていることを特徴とする振動子の周波数調整方法。
【請求項7】
前記質量変化手段は、不活性ガスを電界で加速させることによりイオンビームを発射するイオンビーム発射部を有し、
前記冷却手段は、前記イオンビームと同種の不活性ガスからなる冷却ガスによって前記形状記憶合金を冷却する請求項6に記載の振動子の周波数調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−58519(P2013−58519A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194599(P2011−194599)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】