説明

シャッター装置

【課題】 シャッターを撮像面の近傍に配置する場合であっても、露光時間の差に拘らず撮像面の部位ごとの露光量を均一化して、撮影画像の品質を高く維持することのできるシャッター装置を提供する。
【解決手段】 シャッター動作の際にシャッター2が退避位置から撮像素子1の撮像面4を覆う位置へ該撮像面4上を移動することで生じる撮像面4の部位ごとの露光時間の差による露光量の差を調整すべく、前記撮像面4を覆う位置に対して出退可能な露光量調整体3を備え、該露光量調整体3は、撮像面4を覆う際に該撮像面4の各部位と対応する部位のうち、前記露光時間が短い撮像面4の部位に対応する部位ほど光の透過率が高く設定され、且つ、前記シャッター2より先に前記撮像面4を覆う位置への移動を完了するよう構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッター装置に関し、特に、携帯電話等に搭載される小型のカメラ装置に適したシャッター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、携帯電話等に搭載される小型のカメラ装置に搭載されるシャッター装置は、一枚のシャッター羽根を備えた簡素かつ小型のものが用いられ、カメラ装置の光学系、とくに被写体からの光の光路が比較的集中する絞りの近傍に配置される。かかる配置によれば、光路が集中する箇所において遮光するため、シャッタースピードに関係なく撮像素子の撮像面上のいずれの部位においてもほぼ時間差なく遮光されることとなり、撮像面の部位ごとの露光量を均一に保つことができる(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかし、この方法では、シャッター装置がレンズの鏡筒など、光学系に配置されることとなるので、たとえば変倍時には光学系の移動とともにシャッター装置をも移動させる必要があり、これに対応するために鏡筒の構造が複雑化、大型化してしまうという問題がある。
【0004】
そのため、変倍時の光学系の移動に拘わらずシャッター装置をカメラ装置の一定位置に固定可能なように、シャッター装置を撮像素子の近傍に設置することが知られている。
【特許文献1】特開2004−205967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記方法によると、撮像素子の近傍では、被写体からの光の光路が撮像面の大きさに対応した範囲に拡散した状態となっている。一方、シャッター装置は、上述のように、機械的に駆動されるため、シャッター動作の際にシャッター羽根が撮像面上を移動する速度に制約があり、撮像面を覆い始めてから覆い終わるまでの時間差が原因となって、撮像面の部位によって露光量に差が生じることとなる。このため、露光時間が長い部位と短い部位との画像の明るさが異なるなどし、撮影画像の品質が低下せざるを得ない状況となっている。
【0006】
そこで、本発明は、シャッターを撮像面の近傍に配置する場合であっても、露光時間の差に拘らず撮像面の部位ごとの露光量の差を低く抑えて、撮影画像の品質を高く維持することのできるシャッター装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るシャッター装置は、退避位置から撮像素子の撮像面を覆う位置に対して出退可能なシャッターと、退避位置から前記撮像面を覆う位置に対して出退可能な露光量調整体を備え、該露光量調整体は、撮像面を覆う際に該撮像面の各部位と対応する部位のうち、前記シャッターによる露光時間が短い撮像面の部位に対応する部位ほど光の透過率が高く設定され、且つ、前記シャッターより先に前記撮像面を覆う位置への移動を完了するよう構成されることを特徴とする。
【0008】
上記構成からなるシャッター装置によれば、露光時間の短い撮像面の部位には露光量調整体のうち光の透過率が高い部位が対応し、露光時間の長い撮像面の部位には露光量調整体のうち光の透過率が低い部位が対応するため、露光時間の長い撮像面の部位の露光量が低く抑えられ、撮像面の各部位の露光開始から露光終了までの露光量の総量の差が低く抑えられる。また、露光量調整体が出退可能であるため、撮像面を覆わない状態とすることが可能となる。
【0009】
ところで、シャッターが撮像面上を移動することで、撮像面の部位ごとの露光量は、シャッターの移動方向に沿って変化することとなる。従って、前記露光量調整体は、前記シャッターが移動する方向に沿って出退可能とされ、光の透過率が前記シャッターの移動方向に沿う一端側から他端側にかけて変化する構成を採用することができる。このようにすれば、前記撮像面の部位ごとの露光量の変化に対応して露光量調整体の光の透過率が変化するため、撮像面の部位ごとの露光量の差をより一層容易に低く抑えることができる。
【0010】
あるいは、本発明に係るシャッター装置は、シャッター速度が一定のシャッター装置であって、シャッター動作の際にシャッターが退避位置から撮像素子の撮像面を覆う位置へ該撮像面上を移動することで生じる撮像面の部位ごとの露光時間の差による露光量の差を調整する露光量調整体を前記撮像面を覆う位置に備え、該露光量調整体は、撮像面の各部位と対応する部位のうち、前記露光時間が短い撮像面の部位に対応する部位ほど光の透過率が高く設定されることを特徴とする。
【0011】
上記構成からなるシャッター装置によれば、露光時間の短い撮像面の部位には露光量調整体のうち光の透過率が高い部位が対応し、露光時間の長い撮像面の部位には露光量調整体のうち光の透過率が低い部位が対応するため、露光時間の長い撮像面の部位の露光量が低く抑えられ、撮像面の各部位の露光開始から露光終了までの露光量の総量が均一化される。また、撮像面を覆う位置に露光量調整体を備えることで、駆動する部材をシャッターのみとすることができ、装置の構造を簡略化して小型化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明に係るシャッター装置によれば、シャッターを撮像面の近傍に配置する場合であっても、露光時間の差異に拘らず撮像面の部位ごとの露光量を低く抑えて、撮影画像の品質を高く維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明に係るシャッター装置の実施形態について、図面に基づいて説明する。
【0014】
本実施形態にかかるシャッター装置は、図1に示すように、CCD等の撮像素子1より被写体側に配置されるものであり、シャッター2と、露光量調整体3とを備える。
【0015】
前記シャッター2は、シャッター装置に一つのみ備えられるいわゆる一枚羽根と呼ばれるタイプのものであり、撮像素子1の一端側から出退する。具体的には、該シャッター2は、通常、撮像素子1の一端側に配置された退避位置にあり、該退避位置においては、外部からの光を遮ることなく撮像素子1の撮像面4が露光可能とすべく、撮像面4全体を覆わない状態である。一方、作動時は、前記退避位置から撮像面4全体を覆う位置、即ち、光軸を通る位置(以下、「光軸位置」という。)まで他端側へ向けて移動し、該光軸位置においては、撮像面4と被写体(紙面手前側にある)との間に介在する状態となる。また、シャッター2は、回転可能に支持されており、その出退に際しては、電磁アクチュエータなどによって機械的に駆動される。
【0016】
前記露光量調整体3は、撮像面4全面を覆う配置における少なくとも撮像面4に対応する部分が光透過性を有する部材であり、透過する光量を調整することにより、撮像面4の露光量を調整する。そして、シャッター動作の際に該シャッター2が退避位置から光軸位置へ該撮像面4上を移動することで生じる露光時間の差による撮像面4の部位ごとの露光量の差を調整すべく、撮像面4を覆う際に該撮像面4の各部位と対応する部位のうち、前記露光時間が短い撮像面4の部位に対応する部位ほど光の透過率が高く設定される。具体的には、前記シャッター2が一端側から他端側に移動するため、露光時間は撮像面4の一端側ほど短く、従って、露光量調整体3は、一端側が他端側よりも光の透過率を高く構成される。また、露光量調整体3は、光の透過率が他端側から一端側にかけて徐々に(好ましくは、無断階に)高くなるように、いわゆるグラデーション状に構成される。
【0017】
また、前記露光量調整体3は、撮像素子1の他端側から出退する部材である。具体的には、該露光量調整体3は、通常、撮像素子1の他端側に配置された退避位置にあり、該退避位置においては、撮像面4全体を覆わない状態である。一方、作動時は、前記退避位置から撮像面4全体を覆う位置、即ち、光軸位置まで他端側へ向けて移動し、該光軸位置においては、撮像面4と被写体との間に介在する状態となる。また、該露光量調整体3は、前記シャッター2と同様に、回転可能に支持され、その出退に際しては、電磁アクチュエータなどによって機械的に駆動される。なお、この露光量調整体3は、前記シャッター2に先立って、退避位置から光軸位置への移動を開始する。
【0018】
なお、前記シャッター2及び露光量調整体3は、ともに光軸位置に出退するものであるが、光軸方向における順序は特に限定されず、いずれが撮像面4側に配置されるものであってもよい。
【0019】
次に、かかるシャッター装置の動作について、図1及び図2に基いて説明する。なお、説明の便宜上、撮像面4の各部位として、図1に示す上の三点(点A,点B,点C)を例に説明する。
【0020】
ここで、本実施形態に係るシャッター装置の動作を説明する前提として、シャッター2のみが作動し、露光量調整体3が作動しない場合の上記各点における露光量と時間との関係について説明すると、図2(a)、(b)、(c)のようである。
【0021】
即ち、一端側の点Aは、三点の中ではシャッター2の退避位置に最も近いため、図2(a)に示すように、シャッターの移動開始から間もなくシャッター2が通過して光が遮られ(この時刻を、説明の便宜上、「T3」とする。)、露光量がほぼ0に近い程度まで減少し、露光が完了する。
【0022】
一方、中間のB点では、図2(b)に示すように、所定時間経過後にシャッター2が通過して光が遮られ(この時刻を「T4」とする。)、露光が完了する。
【0023】
また、他端側のC点では、図2(c)に示すように、三点の中では最後にシャッター2が通過して光が遮られるため、シャッター2の移動が完了する際に露光が完了する(この時刻を「T5」とする。)。なお、三点における各露光時間は、点Aが最も短く、点Cが最も長く、点Bはその中間である。
【0024】
シャッター2及び露光量調整体3の両方が作動する場合の動作説明に戻ると、まず、シャッター動作を行う前、即ち、露光状態では、図1(a)に示すように、シャッター2及び露光量調整体3のいずれもが、撮像面4を覆わない態様で、それぞれの退避位置にある。
【0025】
そして、撮影者等がシャッターボタンを押すなどにより、カメラ装置のシャッター動作を行うと、まず、露光量調整体3が他端側の退避位置から撮像面4を覆う光軸位置まで一端側へ向けて移動を開始する(この時刻を「T1」とする。)。このとき、露光量調整体3が撮像素子1の他端側から移動を開始することから、露光量(ここでは、単位時間当たりの露光量)の減少は、三点の中でも露光量調整体3の退避位置に最も近い点Cから起こる。即ち、点Cでは、図2(f)に示すように、時刻T1から露光量の減少が起こる。
【0026】
一方、中間の点Bでは、露光量調整体3の移動開始から所定時間経過後(この時刻を「T2」とする。)に露光量調整体3が通過し、図2(e)に示すように、時刻T2から露光量の減少が起こる。
【0027】
また、一端側の点Aは、三点の中では最後に露光量調整体3が通過するため、図2(d)に示すように、露光量調整体3の移動が完了する時刻T3の間際に露光量の減少が起こる。そして、露光量調整体3は、時刻T3に撮像面4全体を覆う図1(b)の状態となり、移動を完了する。
【0028】
露光量調整体3に引き続き、シャッター2が撮像面4の一端側から光軸位置まで他端側へ向けて移動を開始する。具体的には、露光量調整体3が移動を完了する時刻T3に、前記シャッター2の移動が開始される。
【0029】
まず、点Aでは、上述のように、シャッター2の移動開始後間もない時刻T3において、露光が完了する。この結果、点Aでは、図2(g)に示すように、時刻T3の間際に少し露光量が減少する態様となる。即ち、点Aでは図2(a)と図2(d)とが重複する時刻T3までの間露光が行われ、その重複部分が点Aにおける露光量の総量となる。
【0030】
次に、中間の点Bでは、上述のように、露光が時刻T4に完了する。一方、前記露光量調整体3が、時刻T3から光軸位置で停止している。この結果、B点では、図2(h)に示すように、時刻T2から時刻T3にかけて徐々に露光量が低下し、時刻T3から時刻T4の間は、露光量が一定となる。即ち、B点では図2(b)と図2(e)とが重複する時刻T4までの間露光が行われ、その重複部分がB点における露光量の総量となる。
【0031】
また、点Cでは、上述のように、時刻T5にシャッター2の移動が完了して図1(c)に示す状態となり、露光が完了する。一方、前記露光量調整体3が、時刻T3の間際から光軸位置で停止している。この結果、C点では、図2(i)に示すように、時刻T1から時刻T3にかけて徐々に露光量が低下し、時刻T3から時刻T5の間は、露光量が一定となる。即ち、C点では図2(c)と図2(f)とが重複する時刻T5までの間露光が行われ、その重複部分がC点における露光量の総量となる。
【0032】
以上のように、本実施形態に係るシャッター装置によれば、シャッター2を撮像面4の近傍に配置する場合であっても、露光時間の差異に拘らず露光量を低く抑えて、撮影画像の品質を高く維持することができる。即ち、図2(g),(h),(i)に示すとおり、それぞれの点における露光量の総量の差が低く抑えられる。また、露光量調整体3が撮像面4を覆う位置に対して出退可能であるため、シャッター速度が可変である場合であっても、それに対応して露光量を調整することが可能である。
【0033】
さらに、露光量調整体3の移動方向が、シャッター2の移動方向に沿っているため、露光量が変化する方向と、透過率が変化する方向とが一致する。このため、露光量調整体3の光の透過率の設定(即ち、光の透過率の変化のさせ方の設定)が容易となる。さらに、露光量調整体3は、光の透過率が移動方向に沿う一端側から他端側にかけて徐々に変化するように設定されるため、撮像面4における各部位ごとの露光量も移動方向に沿って徐々に変化することとなり、露光量をより一層容易に低く抑えることができる。
【0034】
なお、本発明に係るシャッター装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0035】
例えば、上記実施形態においては、シャッターの移動方向が露光量調整体の移動方向に沿うものであったが、撮像面の部位ごとの露光量の差を低く抑えることができるものであればこれに限定されるものではなく、シャッターの移動方向に対して任意の方向から露光量調整体が出退するものであってよい。
【0036】
また、上記実施形態においては、露光量調整体は、シャッターとは反対側から出退するものであったが、これに限定されることなく、シャッターと同じ側から出退するものであってもよい。このように構成すれば、シャッターと露光量調整体とを例えば同一の軸によって回転可能に支持することが可能となり、シャッター装置若しくはカメラ装置を小型化する観点からはさらに望ましい。
【0037】
さらに、上記実施形態においては、露光量調整体が移動を完了すると同時にシャッターが移動を開始するものであったが、露光量調整体がシャッターより先に撮像面を覆う位置への移動を完了するものであればこれに限定されるものではなく、シャッターの移動開始時点を自由に設定することが可能である。
【0038】
そして、上記実施形態においては、露光量調整体は、一端側から他端側にかけて無段階で光の透過率が変化するものであったが、これに限定されず、所定の幅を有する部位ごとに段階的に変化するものであっても良い。この場合には、該所定の幅を有する部位に対応する撮像面の部位ごとに、露光量が調整される。
【0039】
また、露光量調整体における光の透過率の設定(即ち、一端側から他端側にかけての変化のさせ方)は、シャッターの移動速度、露光量調整体の移動速度等に応じて任意に設定可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施形態に係るシャッター装置の概略正面図であって、(a)は、シャッター及び露光量調整体がそれぞれの退避位置にあり、撮像面が覆われない状態を示す図、(b)は、露光量調整体が光軸位置にあって撮像面を覆う状態を示す図、(c)は、シャッター及び露光量調整体がそれぞれ光軸位置にあって撮像面を覆う状態を示す図
【図2】本発明の実施形態に係るシャッター装置を用いた際の撮像面の各点ごとの露光量を説明する概略図であって、(a),(b),(c)は、シャッターの作動によって撮像面の各点が露光され得る光量の変化を説明する図、(d),(e),(f)は、露光量調整体の作動によって撮像面の各点が露光され得る光量の変化を説明する図、(g),(h),(i)は、シャッター及び露光量調整体の作動による各点ごとの露光量の総量を説明する図
【符号の説明】
【0041】
1 撮像素子
2 シャッター
3 露光量調整体
4 撮像面


【特許請求の範囲】
【請求項1】
退避位置から撮像素子の撮像面を覆う位置に対して出退可能なシャッターと、退避位置から前記撮像面を覆う位置に対して出退可能な露光量調整体を備え、
該露光量調整体は、撮像面を覆う際に該撮像面の各部位と対応する部位のうち、前記シャッターによる露光時間が短い撮像面の部位に対応する部位ほど光の透過率が高く設定され、且つ、前記シャッターより先に前記撮像面を覆う位置への移動を完了するよう構成されることを特徴とするシャッター装置。
【請求項2】
前記露光量調整体は、前記シャッターが移動する方向に沿って出退可能とされ、光の透過率が前記シャッターの移動方向に沿う一端側から他端側にかけて変化するように構成されることを特徴とする請求項1に記載のシャッター装置。
【請求項3】
シャッター速度が一定のシャッター装置であって、
シャッター動作の際にシャッターが退避位置から撮像素子の撮像面を覆う位置へ該撮像面上を移動することで生じる撮像面の部位ごとの露光時間の差による露光量の差を調整する露光量調整体を前記撮像面を覆う位置に備え、
該露光量調整体は、撮像面の各部位と対応する部位のうち、前記露光時間が短い撮像面の部位に対応する部位ほど光の透過率が高く設定されることを特徴とするシャッター装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−101629(P2007−101629A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288118(P2005−288118)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】