説明

シャフトワーク計測装置

【課題】 段付き軸形状に切削加工されたワークの軸方向の複数位置の外径寸法を効率良く計測することができるシャフトワーク計測装置を提供する。
【解決手段】 このシャフトワーク計測装置11は、段付き軸形状に切削加工されたワークW1 の外径寸法を計測するものであり、ワークW1 を一定の姿勢で支持するワーク支持台12と、非接触センサ装置13と、センサ移動機構14とを備える。非接触センサ装置13は、ワーク支持台12上に支持されたワークW1 の外径をセンサ部24により非接触で計測する装置である。センサ移動機構14は、非接触センサ装置13のセンサ部24をワーク支持台12上のワークW1 に対して軸方向に相対的に移動させる機構である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、旋盤等により段付き軸形状に切削加工されたワークの外径寸法を計測するシャフトワーク計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のシャフトワーク計測装置として、タッチセンサや、差動トランス式の接触式変位測定器を用いて、ワークの外径面に接触した状態で外径寸法を計測するようにしたものが知られている。
【特許文献1】特開2007−111782号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記したような接触式のシャフトワーク計測装置では、計測に時間がかかり非能率的であるという問題がある。特に、複数箇所の計測には時間がかかり過ぎる。
【0004】
この発明の目的は、段付き軸形状に切削加工されたワークの軸方向の複数位置の外径寸法を効率良く計測することができるシャフトワーク計測装置を提供することである。
この発明の他の目的は、簡単な構成のセンサ部で高速に、かつ精度良く検出可能とすることである。
この発明のさらに他の目的は、複数の段差を持つ段付き軸形状のワークの各箇所の測定を容易に行うことができるものとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明のシャフトワーク計測装置は、段付き軸形状に切削加工されたワークの外径寸法を計測するシャフトワーク計測装置であって、前記ワークを一定の姿勢で支持するワーク支持台と、このワーク支持台上に支持されたワークの外径をセンサ部により非接触で計測する非接触センサ装置と、この非接触センサ装置の前記センサ部を前記ワーク支持台上のワークに対して軸方向に相対的に移動させるセンサ移動機構とを備えたものである。
この構成によると、非接触センサ装置のセンサ部を、センサ移動機構でワーク支持台に支持されたワークに対して軸方向に相対的に移動させることで、ワークの外径をセンサ部により非接触で計測する。そのため、段付き軸形状に切削加工されたワークの軸方向の複数位置の外径寸法を効率良く計測することができる。
【0006】
この発明において、前記非接触センサ装置は、前記ワーク支持台に支持されたワークの片側に設置されて帯状光を帯幅方向がワーク中心と垂直となる方向へ照射する投光器と、前記ワークに関して前記投光器の反対側に設置されて前記投光器の照射した帯状光を受光しその帯状光のワークで遮断された範囲を検出可能な受光器とでなるセンサ部と、前記受光器の出力から前記ワークの外径値を求めて出力する出力処理部とを有するものとしても良い。
このように帯状光を用いると、例えばレーザ光線をスキャンさせるセンサに比べて、簡易な構成で高速の測定が行える。また透過型であるため、反射型に比べて簡単な構成でより精度の良い検出が可能となる。
【0007】
この発明において、前記非接触センサ装置は、前記ワーク支持台上のワークの軸方向における複数の計測位置で前記センサ部の前記受光器の出力を得る計測位置設定部を有し、前記出力処理部は、各計測位置で計測された受光器の出力から、前記各計測位置に対応するワークの複数箇所の外径値を求めて出力するものとしても良い。
このように、計測位置設定部を設け、各計測位置で計測された受光器の出力から外径値を出力する構成とした場合、測定箇所の位置および測定箇所の個数を、ある程度自由に設定することが容易であり、複数の段差を持つ段付き軸形状のワークの各箇所の測定が容易に行える。
【発明の効果】
【0008】
この発明のシャフトワーク計測装置は、段付き軸形状に切削加工されたワークの外径寸法を計測するシャフトワーク計測装置であって、前記ワークを一定の姿勢で支持するワーク支持台と、このワーク支持台上に支持されたワークの外径をセンサ部により非接触で計測する非接触センサ装置と、この非接触センサ装置の前記センサ部を前記ワーク支持台上のワークに対して軸方向に相対的に移動させるセンサ移動機構とを備えるため、段付き軸形状に切削加工されたワークの軸方向の複数位置の外径寸法を効率良く計測することができる。
前記非接触センサ装置が、前記ワーク支持台に支持されたワークの片側に設置されて帯状光を帯幅方向がワーク中心と垂直となる方向へ照射する投光器と、前記ワークに関して前記投光器の反対側に設置されて前記投光器の照射した帯状光を受光しその帯状光のワークで遮断された範囲を検出可能な受光器とでなるセンサ部と、前記受光器の出力から前記ワークの外径値を求めて出力する出力処理部とを有する場合、簡単な構成のセンサ部で、高速にかつ精度良く検出することができる。
前記非接触センサ装置が、前記ワーク支持台上のワークの軸方向における複数の計測位置で前記センサ部の前記受光器の出力を得る計測位置設定部を有し、前記出力処理部は、各計測位置で計測された受光器の出力から、前記各計測位置に対応するワークの複数箇所の外径値を求めて出力する構成である場合、複数の段差を持つ段付き軸形状のワークの各箇所の測定をより容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
この発明の第1の実施形態を図1ないし図7と共に説明する。図1は、この発明のシャフトワーク計測装置を備えたシャフト加工設備の概要を示す。このシャフト加工設備は、素材ワークW0 を段付き軸形状のシャフトワークW1 に切削加工する工作機械1と、この工作機械1に隣接して設置され、前記シャフトワークW1 の外径寸法を計測するシャフトワーク計測装置11とを備える。工作機械1は2タレットタイプの旋盤からなる。ベッド2上に、主軸3と、この主軸3とで素材ワークW0 を両端から挟み付けて素材ワークW0 を回転自在に支持するテールストック4と、2台のタレット刃物台5A,5Bと、これらを制御する制御盤6が設置されている。素材ワークW0 は主軸3により回転させられ、タレット刃物台5A,5Bに取付けられた切削工具(図示せず)によって素材ワークW0 の周面が切削加工される。
【0010】
図2および図3は、一部を破断して示すシャフトワーク計測装置11の正面図および側面図である。このシャフトワーク計測装置11は、ワーク支持台12と、非接触センサ装置13と、センサ移動機構14と、装置全体を制御する制御盤40とを備える。
【0011】
ワーク支持台12は、前記シャフトワークW1 を一定の姿勢で支持するものであり、図2のように、基台15上に所定間隔を隔てて設けられた固定台16と、テールストック17とでなる。固定台16は、その固定台基体18から水平に突出する芯押し軸19を有する。テールストック17は、固定台16の芯押し軸19と軸方向に対向する芯押し軸20と、この芯押し軸20を軸方向に進退駆動する電動シリンダ等の進退駆動源21とでなる。シャフトワークW1 は、その両端を前記固定台16およびテールストック17の芯押し軸19,20で押されて水平姿勢に支持される。前記各芯押し軸19,20は、図4に拡大して示すように、そのセンタとなる先端が円錐部19a,20aとされている。また、シャフトワークW1 の両端には、センサ穴、すなわち芯押し軸19,20の円錐部19a,20aの係合する円錐状凹部aが形成されている。
【0012】
前記基台15上におけるワーク支持台12の前記固定台16およびテールストック17よりもシャフトワークW1 寄りの位置には、ワーク支持台12で支持する前のシャフトワークW1 を仮置きする仮置き台22が設けられている。仮置き台22は、前記固定台16寄りの位置およびテールストック17寄りの位置に、前記芯押し軸19,20の軸方向に対して垂直となる姿勢で設けられる一対の板片23,23からなる。これら板片23の上端には、図5に正面図で示すように、シャフトワークW1 の両端軸部を支持するV字状の切欠部23aが設けられている。この切欠部23aは、図6(A)に示すように、シャフトワークW1 の両端軸部を支持した状態で、その軸芯が前記芯押し軸19,20の軸芯より若干下位置となる深さ寸法に形成される。このように切欠部23aを形成することで、図6(B)のように、仮置き台22に仮置きされているシャフトワークW1 の両端を、ワーク支持台12の両芯押し軸19,20で挟むとき、芯押し軸19,20の円錐部19a,20aによるシャフトワークW1 の円錐状凹部aのガイドで、シャフトワークW1 が切欠部23aから浮き上がり、シャフトワークW1 を精度良く水平姿勢に支持することができる。
【0013】
図2において、非接触センサ装置13は、ワーク支持台12上に支持されたシャフトワークW1 の外径を非接触で計測する装置であり、センサ部24と、出力処理部25と、計測位置設置部26とを有する。センサ部24は、図3のように、支持されたシャフトワークW1 を挟む片側に設置された投光器27と、前記シャフトワークW1 を挟む他の片側に設置された受光器28とでなる。投光器27および受光器28は、支持されたシャフトワークW1 の下側に位置してシャフトワークW1 の軸方向と直交する方向に延びるU字状のセンサ支持台29の上向きの両端に、互いに向かい合うように設けられる。このセンサ支持台29は、シャフトワークW1 の軸と平行に基台15上に敷設されたガイドレール30に直動軸受31を介して載置されている。これにより、センサ部24を構成する前記投光器27および受光器28は、シャフトワークW1 の軸と平行に移動自在とされる。
【0014】
図7に概略図で示すように、前記投光器27は、LEDなどからなる発光素子32と、この発光素子32から放射される光を帯状光に変換するコリメータレンズ33とを有し、前記帯状光を帯幅方向が前記シャフトワークW1 の中心に対して垂直となる方向へ照射する。前記受光器28は、前記投光器27の照射した帯状光を集光する受光レンズ34,35と、受光した帯状光を電気信号に変換する受光素子36とを有し、受光した帯状光のシャフトワークW1 で遮断された範囲を検出可能である。帯状光には、緑色の可視光線が、検出精度に優れる点で好ましい。
【0015】
図2おいて、制御盤40には、非接触センサ装置13の出力処理部25および計測位置設定部26が設けられる。出力処理部25は、前記センサ部24の受光器28の出力から、画像処理等により、シャフトワークW1 の外径値を求めて出力する手段である。計測位置設定部26は、ワーク支持台12上のシャフトワークW1 の軸方向における複数の計測位置で前記センサ部24の出力を得る手段である。この計測位置設定部26には、前記複数の計測位置のデータが外部から設定変更可能に入力される。また、制御盤40には、前記計測位置設定部26、または他の記憶部(図示せず)に、前記センサ部24の移動開始位置や移動終了位置の各データも、外部から設定変更可能に入力される。
【0016】
センサ移動機構14は、非接触センサ装置13のセンサ部24を、ワーク支持台12上のシャフトワークW1 に対して軸方向に相対的に移動させる手段である。ここでは、センサ移動機構14は、基台15の下位置に前記ガイドレール30と平行に配置したボールねじ37と、このボールねじ37を回転駆動するモータ38と、ボールねじ37に螺合して前記センサ支持台29に連結されたボールナット39とで構成されている。これにより、モータ38によるボールねじ37の回転駆動で、センサ支持台29がガイドレール30に沿って水平移動でき、センサ支持台29に支持されたセンサ部24がワーク支持台12上のシャフトワークW1 に対して軸方向に移動可能となる。センサ部24の移動範囲は、仮置き台22を構成する両板片23,23間の区間とされる。
【0017】
上記シャフトワーク計測装置11でのシャフトワークW1 の外径寸法の計測動作を以下に説明する。計測前に、非接触センサ装置13のセンサ部24は、例えば図2において、仮置き台22の右側の板片23に近い所定の移動開始位置で待機する。工作機械1で段付き軸形状に切削加工されたシャフトワークW1 は、図示しないローダで運ばれて、図2のように仮置き台22の上に仮置きされる。このとき、シャフトワークW1 の両端の軸部は、図5のように仮置き台22の両板片23の上端のV字状切欠部23aに係合した状態で支持される。この状態で、ワーク支持台12の固定台16およびテールストック17の芯押し軸19,20が、シャフトワークW1 の両端に対向する。
【0018】
次に、ワーク支持台12おけるテールストック17の進退駆動源21が、図6のように芯押し軸20を進出させる。これにより、固定台16およびテールストック17の両芯押し軸19,20に挟まれて、シャフトワークW1 がワーク支持台12上に水平姿勢で支持される。このとき、芯押し軸19,20の円錐部19a,20aによるシャフトワークW1 の円錐状凹部aのガイドで、シャフトワークW1 が仮置き台22の両板片23の切欠部23aから浮き上がり、シャフトワークW1 を精度良く水平姿勢に支持することができる。
【0019】
次に、制御盤40からの指令により、センサ移動機構14のモータ38が駆動され、センサ支持台29がガイドレール30に沿って図2における左側に水平移動する。つまり、非接触センサ装置13のセンサ部24が、ワーク支持台12上のシャフトワークW1 に対して軸方向に移動する。移動範囲は、制御盤40に設定された移動開始位置と移動終了位置の間である。移動するセンサ部24では、その投光器27から帯状光が照射され、投光器27の照射した帯状光を受光器28が受光し、受光器28は帯状光のシャフトワークW1 で遮断された範囲を検出し、その検出値を出力する。非接触センサ装置13の計測位置設定部26は、ワーク支持台12上のシャフトワークW1 の軸方向における予め設定された複数の計測位置で、センサ部24の前記受光器28の出力を得る。非接触センサ装置13の出力処理部25は、前記計測位置設定部26で選択された前記受光器28の出力から、前記各計測位置に対応するシャフトワークW1 の複数箇所の外径値を求めて出力する。これにより、段付き軸形状のシャフトワークW1 の複数箇所の外径値を、高速で精度良く計測することができる。例えば、レーザ光線をポリゴンミラーの回転でスキャンさせるセンサに比べて、簡易な構成で高速の測定が行える。また透過型であるため、反射型に比べて簡単な構成でより精度の良い検出が可能となる。
【0020】
図8は、この発明の他の実施形態を示す。この実施形態は、図1に示したシャフト加工設備において、シャフトワーク計測装置11のセンサ移動機構14Aとして、ワーク支持台12をこれに支持されたシャフトワークW1 に対して軸方向に移動させる機構のものを用い、非接触センサ装置13のセンサ部24は位置固定としている。この場合、固定されたセンサ部24に対してシャフトワークW1 が移動するので、センサ部24がワーク支持台12上のシャフトワークW1 に対して軸方向に相対的に移動することになる。その他の構成は先の実施形態の場合と同様である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の一実施形態に係るシャフトワーク計測装置を装備したシャフト加工設備の概要を示す正面図である。
【図2】一部を破断して示す前記シャフトワーク計測装置の正面図である。
【図3】一部を破断して示す前記シャフトワーク計測装置の右側面図である。
【図4】仮置き台にシャフトワークを仮置きした状態を示す拡大正面図である。
【図5】仮置き台にシャフトワークを仮置きした状態を示す正面図である。
【図6】仮置き台上のシャフトワークをワーク支持台で支持する動作の説明図である。
【図7】非接触センサ装置のセンサ部の概略構成図である。
【図8】この発明の他の実施形態に係るシャフトワーク計測装置を装備したシャフト加工設備の概要を示す正面図である。
【符号の説明】
【0022】
11…シャフトワーク計測装置
12…ワーク支持台
13…非接触センサ装置
14…センサ移動機構
24…センサ部
25…出力処理部
26…計測位置設定部
27…投光器
28…受光器
W1 …シャフトワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
段付き軸形状に切削加工されたワークの外径寸法を計測するシャフトワーク計測装置であって、前記ワークを一定の姿勢で支持するワーク支持台と、このワーク支持台上に支持されたワークの外径をセンサ部により非接触で計測する非接触センサ装置と、この非接触センサ装置の前記センサ部を前記ワーク支持台上のワークに対して軸方向に相対的に移動させるセンサ移動機構とを備えたシャフトワーク計測装置。
【請求項2】
前記非接触センサ装置は、前記ワーク支持台に支持されたワークの片側に設置されて帯状光を帯幅方向がワーク中心と垂直となる方向へ照射する投光器と、前記ワークに関して前記投光器の反対側に設置されて前記投光器の照射した帯状光を受光しその帯状光のワークで遮断された範囲を検出可能な受光器とでなるセンサ部と、前記受光器の出力から前記ワークの外径値を求めて出力する出力処理部とを有する請求項1記載のシャフトワーク計測装置。
【請求項3】
前記非接触センサ装置は、前記ワーク支持台上のワークの軸方向における複数の計測位置で前記センサ部の前記受光器の出力を得る計測位置設定部を有し、前記出力処理部は、各計測位置で計測された受光器の出力から、前記各計測位置に対応するワークの複数箇所の外径値を求めて出力する請求項1または請求項2記載のシャフトワーク計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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