説明

シャフト式廃棄物溶融炉およびその運転方法

【課題】 シャフト式廃棄物溶融炉について、補助燃料の使用量を低減して廃棄物処理に要するコストを削減すること等を目的とする。
【解決手段】 シャフト式廃棄物溶融炉1は、炉体下部に燃料および支燃性ガスの供給管3を接続されていて、供給装置2から投入される廃棄物を熱分解および溶融処理する。炉体上部から排出される熱分解ガス用の煙道4に分岐管路10を設け、分岐したその管路10を、ガスの成分調整手段を介することなく、ガスの圧送手段11を介して炉体下部に接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
請求項に係る発明は、外部燃料等を使用しながら都市ごみ等の廃棄物を熱分解・溶融処理するシャフト式廃棄物溶融炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記の非特許文献1等に記載されている一般的なシャフト式廃棄物溶融炉について、概要を図6に示す。供給装置2によって溶融炉1’の炉内に投入される廃棄物は、自重によって徐々に炉内を降下し、高濃度酸素(または他の支燃性ガス)および補助燃料を供給するよう炉底に設置された羽口バーナ3aからの高温ガスによって乾燥・熱分解される。それにより、廃棄物中の可燃分が有する揮発分が熱分解ガスとして上昇し、煙道4から排出され再燃焼室5へ送られて有害成分を除去される。一方、炉内に残ったごみの可燃分中の固定炭素および灰分は炉体下部へ下降し、固定炭素は、羽口バーナ3aから供給される高濃度酸素と燃焼反応し、その反応熱および補助燃料の熱量により、廃棄物中の灰分は溶融してスラグとなり、自然流下によって炉体最下部1x’より連続的に出滓される。こうした溶融炉は、廃棄物の乾燥から熱分解・溶融までを一体の炉で行うことができ、高濃度酸素を用いて廃棄物を円滑にガス化・溶融することができる。なお、シャフト式廃棄物溶融炉には、補助燃料の供給を炉体上部からコークス等を投入することによって行う形式のもの(コークスベッド式シャフト炉等)もある。
【0003】
地震や停電などで溶融炉の運転を緊急停止する場合には、廃棄物の投入や上記した高濃度酸素と燃料の供給を止めるとともに、図示の管路22’(破線で示すもの)から炉体下部に不活性ガスを強制送気することとしている。ガスを送るのは、溶融炉内に高温状態で残留している蓄積物が隙間のない状態で溶着固化(岩石化)してしまうと通風経路が閉塞するからである。送気をすれば、炉内の蓄積物間に隙間を保つことができ、炉体下部から上方へ向けての通風経路が確保されるため、後の再起動が円滑に行える。炉内蓄積物が燃焼し発熱することを避けるため、そうしたガスとして窒素等の不活性ガスを使用している。
【非特許文献1】「高濃度酸素吹き込み式シャフト炉での掘起しごみの混合溶融試験について」日本機械学会第15回環境工学シンポジウム2005講演論文集
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなシャフト式廃棄物溶融炉においては、従来、炉内に供給する補助燃料として、別途調達した外部燃料(都市ガスや灯油、コークスなど、気体、液体または固体の燃料)が使用されている。したがって、上記形式の溶融炉によって廃棄物処理を行う場合には、当該補助燃料に相当のコストが発生することになる。
また、溶融炉の運転を停止したとき炉体下部に供給する不活性ガス(窒素等)についても、別途調達する必要があってコストを引き上げる要因になっている。
【0005】
この出願の請求項に係る発明は、シャフト式廃棄物溶融炉について、上記のような補助燃料の使用量を低減して廃棄物処理に要するコストを削減すること、また、不活性ガスの必要量を低減して同様にコスト削減をはかることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項に係るシャフト式廃棄物溶融炉は、廃棄物を熱分解および溶融処理するシャフト式廃棄物溶融炉において、炉体上部から排出される熱分解ガス用の煙道に分岐管路を設け、分岐したその管路を、ガスの成分調整手段を介することなく、ガスの圧送手段を介して炉体下部に接続したことを特徴とする。
なお、ガスの成分調整手段とは、ガスの精製や一部の成分の分離をなす手段をいう。ガスの圧送手段とは、ファン、または圧縮流体を作動源とするエゼクターなど、ガスの圧力を高める手段をいう。また、上記分岐した管路の炉体下部への接続は、直接に炉体下部に接続されている場合のほか、他の管等を介して間接的に接続されている場合を含む。
【0007】
このようなシャフト式廃棄物溶融炉によれば、運転中、炉体上部から上記の煙道を経て排出される熱分解ガスの一部を、上記の分岐した管路と圧送手段とを経由して炉体下部に供給することができる。上記の熱分解ガスは、廃棄物中の可燃分が有する揮発分として水素や一酸化炭素、メタン等の可燃成分を多く含んでいる。そのため、炉体下部に接続された供給管等により炉内に支燃性ガス(燃焼を支えるガス。酸素、空気または酸素富化空気)を供給するとともに分岐管路を通して熱分解ガスをも炉体下部に供給すると、その熱分解ガスが燃焼して、廃棄物の乾燥・熱分解を進める作用をなす。すなわち、燃料(補助燃料)として供給していた外部燃料の必要量がそれだけ低減し、廃棄物処理に要するコストが少なくなることになる。
また、上記の熱分解ガスは残留酸素をほとんど含まないため、支燃性ガスが供給されない場合には燃焼することがなく、不活性な状態で使用することができる。したがって、上記のように構成したシャフト式廃棄物溶融炉では、炉体上部から排出される熱分解ガスの一部を、運転中に上記のとおり炉内で使用するとともに、地震・停電等の際に運転を緊急停止(または通常の運転停止)したときにも使用することができる。つまり運転停止の際(当該溶融炉の運転を停止した瞬間と、それより炉内の蓄積物が冷却され固化するまでの間を含む時間をいう)は、支燃性ガスを遮断したうえ上記の分岐管路より熱分解ガスを炉体下部に供給すれば、その熱分解ガスが前述の不活性ガスと同じ作用をなし、再起動のための通風経路の確保に役立つこととなる。それにより、別途調達すべき不活性ガスの必要量も同時に減少し、廃棄物処理に要するコストが削減される。
熱分解ガス用の煙道から分岐した管路にはガスの成分調整手段を設けないので、この溶融炉は設備費の特別な上昇を必要とすることなく構成され、ガスの成分調整にエネルギーを消費することもない。熱分解ガスは成分調整をしなくとも、炉体下部に供給することにより燃料または不活性ガスとして使用することができるのである。
【0008】
発明のシャフト式廃棄物溶融炉においては、上記の圧送手段として、圧縮流体を作動源とするエゼクターを設けるとよい。なお、エゼクターとは、周知のように、作動源として内部のノズルより噴出させる圧縮流体が周囲の流体(熱分解ガス)を巻き込んでディフューザより吐出する形式の噴射手段である。
上記した熱分解ガスは、未燃成分をガス中に含むため、温度降下したときそれがタールとなって流路に付着しやすい。したがって圧送手段としては、ファンのように流路内に回転羽根等が配置されていてそれらに多量のタールが付着しがちなものではなく、上記のとおりエゼクターが好ましい。エゼクターなら、流路内にあってガスの流れの障害物となる部材が少ないためタールの付着量が少ないうえ、流路内に動作部分がないためタールの付着による不都合が発生しにくい。
【0009】
そして上記エゼクターには、上記圧縮流体として支燃性ガスを供給する管路を接続すると、なお好ましい。
圧縮流体としては任意のガスを利用できるが、支燃性ガスを利用するなら、エゼクターを通して炉内に供給する熱分解ガスが燃焼しやすい。つまり、上記した供給管から供給する支燃性ガスの量を熱分解ガスの量に応じて変化させなくとも、圧縮流体としてエゼクターに供給する支燃性ガスの量を調節することにより、燃焼に必要な適量の支燃性ガスが炉内に供給されることになる。
【0010】
熱分解ガスの上記排出用煙道のうち上記分岐までの部分または上記分岐した管路に集塵手段を設け、それによる捕集物を上記溶融炉(廃棄物の熱分解・溶融処理という上記処理を行うシャフト式廃棄物溶融炉をいう。排出した熱分解ガスを集塵手段に通された溶融炉そのものには限らず、付近にある別のものを含む)に投入するための管路を(当該集塵手段と上記溶融炉との間に)付設するのもよい。集塵手段としてはサイクロンやバグフィルター、電気式集塵機等を使用できる。
そうすれば、炉体下部に供給する熱分解ガス中に含まれる未燃固形分および灰分が集塵手段によって捕集され、それらが圧送手段等に付着することが少なくなる。同時に、未燃固形分が捕集物として溶融炉内に投入されることにより、当該未燃固形分の発熱量に基づいて補助燃料の使用量がさらに低減されることになる。また、灰分が炉内に投入されることからは、当該溶融炉のスラグ化率が向上する(つまり飛散する灰分を少なくできる)という利点がもたらされる。
【0011】
上記圧送手段として、圧縮流体を作動源とするエゼクターを設け、当該エゼクターに、圧縮流体として支燃性ガスを供給する管路と非支燃性ガス(可燃ガスを燃やさない不活性なガス。つまり酸素の含有割合が12%程度以下と少ないもの)を供給する管路とをそれぞれ接続することとし、また、運転中には圧縮流体として支燃性ガスを供給し運転停止の際には圧縮流体として非支燃性ガスを供給する流体切替手段を設けるなら、とくに有利である。
そうした場合には、エゼクターを用いて上記のとおり炉体下部に円滑に熱分解ガスを供給できるうえ、運転中と運転停止の際との双方において熱分解ガスを適切に供給することができる。つまり、溶融炉の運転中には、燃焼させるために支燃性ガスとともに熱分解ガスを炉内に供給し、運転停止の際には、不活性ガスな状態で使用するために非支燃性ガスとともに熱分解ガスを炉内に供給できるのである。
【0012】
請求項に記載したシャフト式廃棄物溶融炉の運転方法は、廃棄物を熱分解および溶融処理するシャフト式廃棄物溶融炉の運転方法であって、炉体上部から排出される熱分解ガスの一部を、成分調整(前記と同様、ガスの精製や一部成分の分離をいう)を行うことなく炉体下部に供給することを特徴とする。
【0013】
この運転方法によれば、上記熱分解ガスがもつ特性を有効に活用して運転に要するコストを削減できる。すなわち、たとえば
・ 上記熱分解ガスの一部を、運転中(当該溶融炉の運転中)に、燃料(の一部または全部)として炉体下部に供給し、それにより廃棄物の乾燥・熱分解を進めて、別途調達していた外部燃料(補助燃料)の必要量を少なくする、
または、それに加えてさらに、
・ 上記熱分解ガスの一部を、運転停止(当該溶融炉の運転停止)の際、上記支燃性ガスを遮断した状態で炉体下部に供給し、もって再起動を円滑化するための通風経路の確保を行って、別途調達すべき不活性ガスの必要量を減らす
といった方法をとることが可能である。なお、熱分解ガスは成分調整を行わずに炉体下部へ供給するので、特別な設備を必要とせず、成分調整のためにエネルギーを消費することもない。
【0014】
上記のように熱分解ガスの一部を運転中に炉体下部に供給する場合には、
・ 上記熱分解ガスの一部を、圧送手段により圧力を高めて炉体下部に供給するのが、円滑な供給を実現するうえで好ましい。
また、
・ 上記の圧送手段として、圧縮流体を作動源とするエゼクターを用いることとし、そのエゼクターに供給する圧縮流体として運転中は支燃性ガスを用いるのが、タールに起因するトラブルを防止するとともに熱分解ガスを炉体下部で円滑に燃焼させるうえで好ましい。
・ 炉体上部から圧送手段までの上記熱分解ガスの流路に集塵手段を設けておき、同装置を経た熱分解ガスを圧送手段に送るとともに、同装置による捕集物を上記溶融炉(上述の処理をするシャフト式廃棄物溶融炉をいう。排出した熱分解ガスを集塵手段に通された溶融炉そのものには限らず、付近にある別のものを含む)に投入するのもよい。圧送手段への付着物を減少させるとともに、補助燃料の使用量をさらに低減し、スラグ化率を向上させる利点があるからである。
【0015】
そのほか、
・ 運転中に溶融炉の炉体、発生ガスまたは溶融物のうちいずれか一以上の温度を測定し、測定した温度に応じて、炉体下部に供給する熱分解ガス、燃料または支燃性ガスのうちいずれか一以上の量(単位時間あたりの供給量)を変更するのも有意義である。運転中の炉体等の温度は、炉内の燃焼状態を示す指標となるので、そのような温度をもとに熱分解ガス、燃料または支燃性ガスの供給量を調節すれば、安定した好ましい燃焼状態を実現して燃料消費量を効率的に低減させることができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項に係るシャフト式廃棄物溶融炉またはその運転方法によれば、炉体上部から排出される熱分解ガスがもつ特性を有効に活用して、運転に要するコストを削減することができる。すなわち、当該熱分解ガスの一部を、廃棄物の乾燥・熱分解をなす燃料(補助燃料)として使用することにより、外部燃料の必要量を減らすことができる。また同時に、運転の停止時に同じ熱分解ガスの一部を不活性な状態で扱うことにより、再起動のための通風経路の確保に使用する不活性ガスの必要量をも低減できる。さらに、熱分解ガスの圧送手段とそれに使用する圧縮流体を適切に選択し、または熱分解ガスの経路に集塵手段を配置すること等により、一層円滑な運転を行ってコストの削減を進めることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、発明の実施に関する形態を、シャフト式廃棄物溶融炉とその関連の管路系統とを示す図1〜図5に基づいて説明する。
【0018】
まず、発明の基本的な実施形態である図1に基づいて、シャフト式廃棄物溶融炉1の基本的な運転状況を説明すると、つぎのとおりである。
溶融炉1の炉内に供給装置2によって廃棄物を投入すると、その廃棄物は、自重により徐々に炉内を降下する。炉底部には羽口バーナ3aが設けられていて、供給管3から供給される高濃度酸素および補助燃料により高温ガスを噴出しているため、廃棄物はその熱により乾燥され熱分解される。それにより、廃棄物中の可燃分が有する揮発分が熱分解ガスとして上昇し、炉体上部より煙道4を経て排出され再燃焼室5へ送られる。一方、炉内にはごみの可燃分中の固定炭素および灰分が残り、ともに炉体下部へ下降する。固定炭素は、羽口バーナ3aから供給される高濃度酸素と燃焼反応をし、廃棄物中の灰分は、固定炭素の反応熱および補助燃料の熱量により溶融してスラグとなり、自然流下によって炉体最下部1xから連続的に出滓される。
【0019】
図1の例は、上述のような廃棄物溶融炉1に関して、運転中に当該溶融炉1から発生する熱分解ガスの一部を、同じ溶融炉1の炉体下部に燃料として供給するよう構成したものである。すなわち、炉体上部から延びた熱分解ガス用の煙道4の途中に分岐箇所4aを設け、それより炉体下部にかけて図示のとおり分岐管路10を接続している。分岐管路10には、熱分解ガスを圧力を高めて炉体下部へ供給できるよう、ファンなど(またはエゼクターであってもよい)の圧送手段11を設け、また炉体下部との接続部に吹き込みノズル10aを設けている。
【0020】
分岐管路10より供給する熱分解ガスを溶融炉1内で円滑に燃焼させるよう、炉体下部には支燃性ガスの供給管路20をも接続している。同管路20には、熱分解ガスの燃焼を支える支燃性ガスとして酸素または酸素富化空気を送り込み、先端のノズル20aより炉体下部に吹き入れる(分岐管路10の内部に吹き入れるようにしてもよい)。
【0021】
こうして煙道4内の熱分解ガスの一部を炉体下部に燃料として供給すると、上述のように供給管3から炉体下部に供給している燃料(補助燃料)を減らすことができ、燃料コストの削減をはかることができる。
【0022】
図2は、図1で説明した形態の一部を改変したものである。すなわち、煙道4から分岐管路10を経て炉体下部に供給する熱分解ガスを集塵手段(サイクロン13)に通すこととし、また、熱分解ガスの圧送のためにエゼクター方式の圧送手段12を採用したうえ、その作動源とする圧縮流体として支燃性ガスを用いることとしている。
【0023】
サイクロン13は、図示のように分岐箇所4aまでの煙道4に設けて熱分解ガス中の未燃固形分および灰分を捕集するものとした。かかる捕集を行えば、下流側にある圧送手段12において内部にタール等が付着する程度が少なくなる。ガスの通路内に動作部分を含まないエゼクター方式の圧送手段12を採用しているので、その点でも、タール等の付着によるトラブルは発生しがたい。
【0024】
サイクロン13の底部には管路14を接続し、その先を溶融炉1の中腹へと接続している。これにより、サイクロン13が捕集する未燃固形分および灰分を溶融炉1内に投入できる。そうすると、前記した補助燃料の必要量がさらに低減するほか、灰分のスラグ化率が向上する。なお、捕集物の管路14には、捕集物を一時的に貯留することのできるホッパ等を設けるのもよい。
【0025】
また、圧送手段12としてエゼクター方式のものを用いるとともにそれへの圧縮流体として支燃性ガスを送るなら、図1の例における供給管路20を省略しても、燃焼に必要な適量の支燃性ガスを炉内に適切に供給できることになる。
【0026】
図3の例は、地震や停電等を理由に溶融炉1が運転を緊急停止する際、運転中より引き続いて当該溶融炉1から出る熱分解ガスの一部を、同じ溶融炉1の炉体下部に不活性ガスとして供給するようにしたものである。機器構成としては図1の例と同様で、炉体上部から延びた熱分解ガス用の煙道4の途中に分岐箇所4aを設け、それより炉体下部にかけて分岐管路10を接続する。分岐管路10には、熱分解ガスの圧力を高くして炉体下部へ供給できるようファンなど(またはエゼクターであってもよい)の圧送手段11を設け、また炉体下部との接続部に吹き込みノズル10aを設ける。圧送手段11よりも下流の部分(図示破線の部分)は、溶融炉1の運転停止時にのみ熱分解ガスを流すこととする。なお、停電時に圧送手段11のファン等を起動するためには、非常用の電源を使用する。
【0027】
溶融炉1では、運転の停止時に、溶融炉1内の蓄積物間に隙間(通風経路)を確保して再起動を容易にするよう、管路22から非支燃性ガス(たとえば窒素や水蒸気等を主とする不活性ガス)を外部から供給し、炉体下部より炉内上方へと強制送気するのが一般的である。上記のとおり運転停止時に分岐管路10から炉体下部に供給する熱分解ガスは、そうした非支燃性ガスと同様の作用をなすように使用して、外部供給する非支燃性ガスの消費量を削減するのである。なお、熱分解ガスを不活性な状態で使用する必要があるため、運転停止時には供給管3をバルブ等(図示省略)により遮断して、支燃性ガスが炉内に送られないようにすべきである。ただし、運転中には炉内に支燃性ガスを供給し、運転停止時には支燃性ガスを止めて非支燃性ガス(不活性ガス)を供給するようにすれば、運転時・運転停止時のいずれの場合にも分岐管路10から熱分解ガスを炉内に送るものとして、分岐管路10を含む図示の系統を生かすことができる。
【0028】
図4は、図3の系統の一部を改変した例を示す。すなわち、煙道4から炉体下部に供給する熱分解ガスを集塵手段(サイクロン13)に通すこととしている。サイクロン13は分岐箇所4aまでの煙道4に設け、熱分解ガス中の未燃固形分および灰分を捕集させる。そしてサイクロン13の底部は、管路14によって溶融炉1の中腹と接続し、これにより捕集物を溶融炉1に投入する。こうすると、圧送手段11において内部にタール等が付着する程度が少なくなる等のメリットがある。
【0029】
図5は、図3の系統にさらに別の改変を施したものである。
改変の一つは、熱分解ガスの圧送のためにエゼクター方式の圧送手段12を分岐管路10に接続し、その圧送手段12内に噴射する圧縮流体の供給のために、支燃性ガスの管路23と非支燃性ガスの管路24との双方を、流体切替手段(バルブ等)25を介して圧送手段12に接続したことである。このようにすれば、タールに起因するトラブルの発生しにくい圧送手段12によって円滑に熱分解ガスを供給できるほか、運転中と運転停止の際との双方において熱分解ガスを適切に炉体下部へ供給することができる。つまり、溶融炉1の運転中には、燃焼のために熱分解ガスを支燃性ガスとともに炉内に供給し、運転停止の際には、不活性な状態で用いるために熱分解ガスを非支燃性ガスとともに炉内に供給できることになる。
【0030】
図5の例における改変の二つ目は、分岐管路10のうち上記圧送手段12の下流側に、当該分岐管路10内に水を噴霧する手段26を接続したことである。この手段26によって熱分解ガスの管路内に水を噴射すると、炉内を速やかに冷却できるほか、炉体下部に供給するガスの量を増大させられるので通風経路の確保を行いやすくなり、管路22に送る不活性ガスの必要量を大幅に低減できる。
なお、図5の例にも、図4等の例と同様に集塵手段を使用することができ、それによって上述のメリットを享受できる。
【0031】
以上には、廃棄物溶融炉1を1台のみ使用する例を紹介したが、同様の溶融炉1を並列に複数台使用することも可能である。その場合、ある溶融炉1から発生する熱分解ガスを他の溶融炉1の炉体下部に供給するようにしても、上記と同様の効果を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】発明の実施の形態を示す図であり、シャフト式廃棄物溶融炉1とその関連の管路系統とを示す模式図である。
【図2】発明の実施について他の形態を示す図であり、シャフト式廃棄物溶融炉1とその関連の管路系統とを示す模式図である。
【図3】発明の実施についてさらに他の形態を示す図であり、シャフト式廃棄物溶融炉1とその関連の管路系統とを示す模式図である。
【図4】発明の実施についてさらに他の形態を示す図であり、シャフト式廃棄物溶融炉1とその関連の管路系統とを示す模式図である。
【図5】発明の実施についてさらに他の形態を示す図であり、シャフト式廃棄物溶融炉1とその関連の管路系統とを示す模式図である。
【図6】従来の一般的なシャフト式廃棄物溶融炉1’とその関連の管路系統とを示す模式図である。
【符号の説明】
【0033】
1 シャフト式廃棄物溶融炉
4 (熱分解ガス用の)煙道
10 分岐管路
11・12 圧送手段
13 サイクロン(集塵手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物を熱分解および溶融処理するシャフト式廃棄物溶融炉であって、
炉体上部から排出される熱分解ガス用の煙道が分岐し、当該煙道より分岐した管路が、ガスの成分調整手段を経ることなく、ガスの圧送手段を介して炉体下部に接続されていることを特徴とするシャフト式廃棄物溶融炉。
【請求項2】
上記の圧送手段として、圧縮流体を作動源とするエゼクターが設けられていることを特徴とする請求項1に記載したシャフト式廃棄物溶融炉。
【請求項3】
上記エゼクターに、上記圧縮流体として支燃性ガスを供給する管路が接続されていることを特徴とする請求項2に記載したシャフト式廃棄物溶融炉。
【請求項4】
熱分解ガスの上記排出用煙道のうち上記分岐までの部分または上記分岐した管路に集塵手段が設けられていて、それによる捕集物を上記溶融炉に投入するための管路が付設されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載したシャフト式廃棄物溶融炉。
【請求項5】
上記の圧送手段として、圧縮流体を作動源とするエゼクターが設けられていて、当該エゼクターに、圧縮流体として支燃性ガスを供給する管路と非支燃性ガスを供給する管路とがそれぞれ接続されていること、
および、運転中には圧縮流体として支燃性ガスを供給し、運転停止の際には圧縮流体として非支燃性ガスを供給するようにする流体切替手段が設けられていること
を特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載したシャフト式廃棄物溶融炉。
【請求項6】
廃棄物を熱分解および溶融処理するシャフト式廃棄物溶融炉の運転方法であって、
炉体上部から排出される熱分解ガスの一部を、成分調整を行うことなく、炉体下部に供給することを特徴とするシャフト式廃棄物溶融炉の運転方法。
【請求項7】
上記熱分解ガスの一部を、運転中に、燃料として炉体下部に供給することを特徴とする請求項6に記載したシャフト式廃棄物溶融炉の運転方法。
【請求項8】
上記熱分解ガスの一部を、圧送手段により圧力を高めて炉体下部に供給することを特徴とする請求項6または7に記載したシャフト式廃棄物溶融炉の運転方法。
【請求項9】
上記の圧送手段として、圧縮流体を作動源とするエゼクターを用いることとし、そのエゼクターに供給する圧縮流体として、運転中は支燃性ガスを用いることを特徴とする請求項8に記載したシャフト式廃棄物溶融炉の運転方法。
【請求項10】
炉体上部から圧送手段までの上記熱分解ガスの流路に集塵手段を設けておき、同装置を経た熱分解ガスを圧送手段に送るとともに、同装置による捕集物を上記溶融炉に投入することを特徴とする請求項8または9に記載したシャフト式廃棄物溶融炉の運転方法。
【請求項11】
運転中に溶融炉の炉体、発生ガスまたは溶融物のうちいずれか一以上の温度を測定し、測定した温度に応じて、炉体下部に供給する熱分解ガス、燃料または支燃性ガスのうちいずれか一以上の量を変更することを特徴とする請求項6〜10に記載したシャフト式廃棄物溶融炉の運転方法。
【請求項12】
上記熱分解ガスの一部を、運転中には、支燃性ガスとともに炉体下部に供給する一方、運転停止の際には、上記支燃性ガスを遮断した状態で炉体下部に供給することを特徴とする請求項6〜11のいずれかに記載したシャフト式廃棄物溶融炉の運転方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−198635(P2007−198635A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−15695(P2006−15695)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】