説明

シャンプー組成物

【課題】アニオン性界面活性剤とジカルボン酸ジエステルとを含有するヘアシャンプー組成物において、高い頭皮洗浄力、十分な保存安定性、及び良好な使用感を確保する。
【解決手段】(A)成分:アニオン性界面活性剤及び(B)成分:所定の一般式で表されるジカルボン酸ジエステルを含有するヘアシャンプー組成物において、更に(C)成分: バラ抽出物を配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシャンプー組成物に関する。更に詳しくは、本発明は、アニオン性界面活性剤と、特定のジカルボン酸ジエステルと、バラ抽出物とを含有するシャンプー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ヘアシャンプー組成物等のシャンプー組成物においては、泡立ちや洗浄力が良好であり、コスト面で有利であること等の理由から、しばしばアニオン性界面活性剤が用いられている。
【0003】
一方、ジカルボン酸ジエステルは、頭皮の毛穴の角栓物を除去し、頭皮を清潔に保つ効果を有することが知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−120532号公報 上記の特許文献1では、頭皮用角栓除去剤としてジカルボン酸ジエステルを含有する頭皮・頭髪用化粧料の発明を提案し、その実施例においては、界面活性剤としてアニオン性界面活性剤を含有し、かつ、ジカルボン酸ジエステルを含有するシャンプーを開示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ジカルボン酸ジエステルは親油性が比較的高い成分であり、反面、アニオン性界面活性剤を含有するシャンプー組成物は水性である。そのため、シャンプー組成物におけるジカルボン酸ジエステルの相溶性が悪いという問題があった。より具体的には、アニオン性界面活性剤を用いたシャンプー組成物に対して、例えば常温ではジカルボン酸ジエステルを支障なく配合できたとしても、シャンプー組成物が低温に変化した際にはジカルボン酸ジエステルが組成物中で分離してしまい、その結果、シャンプー組成物が白濁して商品としての外観を損ねたり、組成物としての均一性を失ったりするという保存安定性上の問題があった。更に、ジカルボン酸ジエステルがアニオン性界面活性剤の良好な起泡性を阻害するため、シャンプーの使用性を損なうという問題のあることも判明した。
【0006】
上記のジカルボン酸ジエステルの相溶性に起因する問題に対しては、シャンプー組成物にエタノール等の溶剤を配合して、ジカルボン酸ジエステルを安定的に可溶化させることは可能である。しかしこの場合、周知のようにこれらの溶剤がアニオン性界面活性剤の起泡性を一層低下させる。又、これらの溶剤によって皮脂が過剰に除去され、頭皮のカサツキを生じるという不具合を伴う。
【0007】
そこで本発明は、アニオン性界面活性剤を用い、ジカルボン酸ジエステルを含有するシャンプー組成物において、高い頭皮洗浄力、十分な保存安定性、及び良好な使用感を確保することを、解決すべき技術的課題とする。
【0008】
本願発明者は、上記課題の解決手段を究明する過程で、意外なことに、香り成分又は抗酸化能性分として公知であるバラ抽出物の配合が有効な課題解決手段となることを発見し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(第1発明)
上記課題を解決するための本願第1発明の構成は、下記の(A)成分〜(C)成分を含有する、シャンプー組成物である。
(A)成分:アニオン性界面活性剤の1種以上。
(B)成分:下記(1)〜(3)に従い解釈される一般式「ROCO−X−COOR」で表されるジカルボン酸ジエステルから選ばれる1種以上。
【0010】
(1)RとRはそれぞれ、a)直鎖状であり又は分岐鎖を有する炭素数2〜18の飽和又は不飽和の炭化水素基、b)(ポリ)オキシエチレン基およびc)(ポリ)オキシプロピレン基の内のいずれか1種類の基を表し、又はこれらの内の2種類以上の基が1価の結合により連結された基を表す。RとRは、同一であっても、相違していても良い。
【0011】
(2)上記a)〜c)の内の2種類以上の基が連結されたR、Rにおいては、同一種類の基が、他の種類の基を介在させて、2個以上含まれる場合がある。これらの2個以上の基は、化学構造において同一であっても相違していても良い。
【0012】
(3)Xは、単結合、炭素数1の炭化水素基「−CH−」、あるいは直鎖状であり又は分岐鎖を有する炭素数2〜22の飽和又は不飽和の炭化水素基であって、それらの炭化水素基の化学構造中の任意の水素原子が水酸基に置換されていても良い。
(C)成分:バラ抽出物。
【0013】
第1発明のシャンプー組成物においては、(A)成分としてアニオン性界面活性剤を含有するので、泡立ちや洗浄力が良好であり、高い頭皮洗浄力が確保される。又、コスト面でも有利である。次に、(B)成分として上記のジカルボン酸ジエステルを含有するので、頭皮の毛穴の角栓物を除去し頭皮を清潔に保つ効果を期待することができ、より高い頭皮洗浄力ないし良好な使用感が確保される。
【0014】
更に第1発明のシャンプー組成物においては、(C)成分としてバラ抽出物を含有するので、前記したジカルボン酸ジエステルの相溶性の問題が解消され、低温下にても十分な保存安定性が維持され、良好な使用感が確保される。又、バラ抽出物は、エタノール等の溶剤とは異なり、アニオン性界面活性剤の起泡性を低下させたり、皮脂の除去に基づく頭皮のカサツキを生じるという不具合を伴なわない。
【0015】
バラ抽出物の配合がこのような効果を発揮する理由は十分に解明していないが、推定として、バラ抽出物に含有されるテルペンアルコール等の香気成分がジカルボン酸ジエステルを低温下でも可溶化させる働きをしている、と考えられる。もちろん、バラ抽出物の配合に基づき好ましい香りや抗酸化能も付与される。
【0016】
バラ抽出物(バラエキス)とは、センチフォリアバラエキス及びダマスクバラエキスから選ばれるものであり、その使用形態は限定されないが、例えば、バラ花弁を水蒸気蒸留して得られた水相であるセンチフォリアバラ花水およびダマスクバラ花水から選ばれるバラ花水(ローズ水)の形態で配合しても良い。
【0017】
特に好ましいローズ水として、「日本化粧品原料集2007」(日本化粧品工業連合会編集)に記載された「ローズ水」を例示できる。これは、センチフォリアバラの花を蒸留して得られる芳香成分を含む水である。又、旧化粧品配合成分規格に規定された通りの「西洋バラの花弁を蒸留又は溶液による抽出によって得られる天然成分」も例示できる。ローズ水の市販品としては、一丸ファルコス社製の「ローズウオーター」及び「ローズウオーターPF」、香栄興業社製の「バラ抽出液」等を例示できる。
【0018】
なお、「ノバラ抽出物」、「ローズヒップ抽出物」等の商品名で市販されているものは、カニナバラ(ローズヒップ)の果実のエキスであって、本発明のバラ抽出物には該当しない。
【0019】
(第2発明)
上記課題を解決するための本願第2発明の構成は、前記第1発明に係る(B)成分と(C)成分を質量比でB/C=5〜8000となる範囲内で含有する、シャンプー組成物である。
【0020】
上記した第1発明のシャンプー組成物において、(B)成分と(C)成分の含有量は必ずしも限定されないが、第2発明に規定するように、(B)成分と(C)成分を質量比でB/C=5〜8000となる範囲内で含有することが、シャンプー組成物の洗浄力と低温安定性を一層良好なものとする。なお、B/Cの質量比表記における「C」とはバラ抽出物の正味(net)の質量を意味する。従って、(C)成分としてバラ抽出物を含む蒸留水、溶液、混合物等をシャンプー組成物に配合する場合にも、B/Cの値は、それらに含まれるバラ抽出物のみの質量から算出される。
【0021】
(第3発明)
上記課題を解決するための本願第3発明の構成は、前記第1発明又は第2発明に係る(B)成分がセバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸PPG−2−ミレス−10、アジピン酸ジPPG−3ミリスチル、コハク酸ジエトキシエチル及びアジピン酸ジイソプロピルから選ばれる1種以上である、シャンプー組成物である。なお、前記(B)成分のうちアジピン酸PPG−2−ミレス−10およびアジピン酸ジPPG−3ミリスチルは、INCI名称である。
【0022】
上記した第1発明又は第2発明のシャンプー組成物において、(B)成分は前記した一般式に該当するものである限りにおいて限定されないが、第3発明に列挙する化合物群から選ばれる1種以上であることが、特に好ましい。これらは、前記した(B)成分の一般式において、アルコール残基部であるR及びRにおけるカルボン酸残基と直接結合をする炭化水素基の炭素数の合計Cxが、ジカルボン酸の炭素数の合計Cyと同数又はそれ以下である。
【発明の効果】
【0023】
本発明のシャンプー組成物は、アニオン性界面活性剤を用いジカルボン酸ジエステルを含有するシャンプー組成物であって、高い頭皮洗浄力、十分な保存安定性、及び良好な使用感を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に、本発明を実施するための形態を、その最良の形態を含めて説明する。
【0025】
〔シャンプー組成物〕
本発明に係るシャンプー組成物は少なくとも下記の(A)成分〜(C)成分を含有する。これらの成分については、後述の「シャンプー組成物の必須成分」の項で詳しく述べる。
(A)成分:アニオン性界面活性剤の1種以上。
(B)成分:一般式「ROCO−X−COOR」で表されるジカルボン酸ジエステルから選ばれる1種以上。
(C)成分:
バラ抽出物。
【0026】
本発明に係るシャンプー組成物は、上記の成分の他にも、本発明の効果を阻害しない範囲で必要に応じて、一般的に用いられる補助的な成分を配合することができる。これらの成分については、後述の「シャンプー組成物のその他の成分」の項で詳しく述べる。
【0027】
シャンプー組成物の用途は特段に限定されないが、好ましくは身体用の洗浄剤、特に好ましくは毛髪用の洗浄剤(ヘアシャンプー)として使用される。パーマネントウエーブ処理の後処理用剤、毛髪脱色処理、酸化染毛処理又は酸性染毛処理の後処理用剤としても使用することができる。
【0028】
シャンプー組成物の剤型は、公知の各種の剤型の内から、その用途や使用目的等に応じて任意に選択することができる。好ましくは、液体状、乳液状、クリーム状、ゲル状、ペースト状、霧状(噴霧式)、エアゾールフォーム等を例示することができる。とりわけ液体状およびゲル状が好適である。
【0029】
シャンプー組成物のpHも特段に限定されないが、一般的にはpH3.0〜8.0程度が好ましく、特にpH3.5〜7.0程度が好ましい。pH3.0未満であると毛髪タンパク質の過収斂による毛髪感触の悪化が懸念され、pH8.0を超えると毛髪タンパク質の分解による毛髪損傷が懸念される。なお、上記したシャンプー組成物を染毛後処理用として使用する場合には、pH4.0〜7.0程度が好ましい。
〔シャンプー組成物の必須成分〕
((A)成分)
(A)成分であるアニオン性界面活性剤の種類は限定されず、例えば硫酸エステル塩型、リン酸エステル塩型、スルホン酸塩型、カルボン酸塩型のアニオン性界面活性剤の1種又は2種以上を含有することができる。シャンプー組成物における(A)成分の含有量は限定されず、必要に応じて任意に決定することができる。
【0030】
硫酸エステル塩型のアニオン性界面活性剤としては、1)ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、セチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、2)ポリオキシエチレン(以下POEと略す)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、POEラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、POEラウリルエーテル硫酸アンモニウム、POEアルキルエーテル硫酸ナトリウム、POEアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、POEアルキルエーテル硫酸ジエタノールアミン、POEアルキルエーテル硫酸アンモニウム等のアルキル及びPOEアルキルフェニルエーテル硫酸塩などのアルキルアリルエーテル硫酸エステル塩、3)硬化ヤシ油脂肪酸グリセリル硫酸ナトリウム等の高級脂肪酸エステル塩の硫酸エステル塩、4)高級脂肪酸アルキロールアミドの硫酸エステル塩、5)硫酸化ヒマシ油を例示することができる。
【0031】
リン酸エステル塩型のアニオン性界面活性剤としては、ラウリルリン酸、POEラウリルエーテルリン酸、POEオレイルエーテルリン酸、POEセチルエーテルリン酸、POEステアリルエーテルリン酸、POEアルキルエーテルリン酸、POEアルキルフェニルエーテルリン酸、及びその塩(ナトリウム塩、トリエタノールアミン塩)を例示することができる。
【0032】
スルホン酸塩型のアニオン性界面活性剤としては、1)テトラデセンスルホン酸塩等のα−オレフィンスルホン酸塩、2)高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、3)ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム等の高級脂肪酸アミドのスルホン酸塩、4)ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミン等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、5)スルホコハク酸ナトリウム、スルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、POEスルホコハク酸二ナトリウム、POEスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム、スルホコハク酸POEラウロイルエタノールアミドエステル二ナトリウム、ウンデシレノイルアミドエチルスルホコハク酸二ナトリウム等のスルホコハク酸塩を例示することができる。
【0033】
カルボン酸塩型のアニオン性界面活性剤としては、ラウロイルサルコシンナトリウム等のN−アシルサルコシン塩、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム、N−ラウロイル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ステアロイル−L−グルタミン酸二ナトリウム、N−ミリストイル−L−グルタミン酸ナトリウム、ラウロイルアスパラギン酸ナトリウムなどのN−アシルアミノ酸塩、N−ラウロイル−N−メチル−β−アラニンナトリウム、N−ラウロイル−N−メチル−β−アラニンナトリウム等のN−アシル−N−アルキルアミノ酸塩、POEラウリルエーテル酢酸ナトリウムなどのエーテルカルボン酸塩、ヤシ油脂肪酸加水分解コラーゲンカリウムなどのN−アシルペプチド塩等を例示することができる。
【0034】
((B)成分)
(B)成分であるジカルボン酸ジエステルは、一般式「ROCO−X−COOR」で表されるジカルボン酸ジエステルから選ばれる1種以上である。この一般式は次の(1)〜(3)に従い解釈される。
【0035】
(1)RとRはそれぞれ、ジカルボン酸ジエステルにおけるアルコール残基を示しており、a)直鎖状であり又は分岐鎖を有する炭素数2〜18の飽和又は不飽和の炭化水素基、b)(ポリ)オキシエチレン基およびc)(ポリ)オキシプロピレン基の内のいずれか1種類の基を表すか、又はこれらの内の2種類以上の基が1価の結合により連結された基を表す。RとRは、同一であっても、相違していても良い。一般式における「X」に対するRとRとの結合はエステル結合であり、又、上記の「1価の結合」とはエーテル結合である。
【0036】
(2)上記a)〜c)の内の2種類以上の基が連結されたR、Rにおいては、同一種類の基が、他の種類の基を介在させて、2個以上含まれる場合がある。これらの2個以上の基は、化学構造において同一であっても相違していても良い。即ち、この場合のR、Rは、例えば、一般式における「X」に対してエステル結合した第1の「b」の基と、この「b」の基の他端に対してエーテル結合した「c」の基と、その他端に対して更にエーテル結合した第2の「b」の基からなる等の構成が可能であり、かつ第1の「b」の基と第2の「b」の基は同一又は異なる基であり得る。
【0037】
(3)Xは、単結合、炭素数1の炭化水素基「−CH−」、あるいは直鎖状であり又は分岐鎖を有する炭素数2〜22の飽和又は不飽和の炭化水素基であって、それらの炭化水素基の化学構造中の任意の水素原子が水酸基に置換されていても良い。「Xが単結合」とは、一般式「ROCO−X−COOR」における「−X−」が単一の単結合を表し、上記一般式がシュウ酸ジエステルを意味する場合をいう。
【0038】
(B)成分として特に好ましいものは、アルコール残基部であるR及びRにおけるカルボン酸残基と直接結合する炭化水素基の炭素数の合計Cxが、ジカルボン酸の炭素数の合計Cyと同数又はそれ以下であるような(B)成分の1種以上である。
【0039】
(B)成分としてとりわけ好ましいものは、セバシン酸ジイソプロピル、アジピン酸PPG−2−ミレス−10、アジピン酸ジPPG−3ミリスチル、コハク酸ジエトキシエチル、アジピン酸ジイソプロピル及びセバシン酸ジエチルから選ばれる1種以上である。セバシン酸ジイソプロピルにおいては、Cx=6、Cy=10である。アジピン酸PPG−2−ミレス−10においては、Cx=6、Cy=6である。アジピン酸ジPPG−3ミリスチルにおいては、Cx=6、Cy=6である。コハク酸ジエトキシエチルにおいては、Cx=4、Cy=4である。アジピン酸ジイソプロピルにおいては、Cx=6、Cy=6である。セバシン酸ジエチルにおいては、Cx=4、Cy=10である。
ヘアシャンプー組成物における(B)成分の含有量は限定されないが、本発明の効果を十分に発揮するためには0.005質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましく、0.01質量%〜10質量%の範囲内であることが特に好ましい。
【0040】
((C)成分)
(C)成分であるバラ抽出物としては、好ましい事例及び使用形態に関して前記したように、センチフォリアバラ(Rosa centifolia)又はダマスクバラ(Rosa damascena)の抽出物(エキス)の他、これらの抽出物を含む蒸留液や抽出液、又はこれらを濃縮あるいは希釈したものを特に限定なく使用できる。
【0041】
シャンプー組成物における(C)成分の含有量は限定されないが、本発明の効果を十分に発揮するためには、1.0×10−6質量%(1ppm)〜2質量%の範囲内であることが好ましく、1.0×10−6質量%〜1質量%の範囲内であることが特に好ましい。
【0042】
前記した(B)成分と(C)成分との含有量比は、限定はされないが、質量比でB/C=5〜8000となる範囲内が、より好ましい。
【0043】
〔シャンプー組成物のその他の成分〕
本発明のシャンプー組成物には、上記の(A)成分〜(C)成分の他に、シャンプー組成物としての特質及び本発明の効果を阻害しない限りにおいて、油性成分、炭化水素、(A)成分以外の界面活性剤、カチオン性化合物、高分子物質、タンパク加水分解物、pH緩衝成分、糖類、アミノ酸、ビタミン類、セラミド、エデト酸塩等のキレート剤、香料、メチルパラベンなどの殺菌・防腐剤、紫外線吸収剤、噴射剤、増粘剤、パール化剤、無機塩類、溶剤、動植物抽出成分等を、必要に応じてあるいは任意に配合することができる。これらの内の幾つかの成分についての具体例を以下に列挙する。
【0044】
油性成分としては、シリコーン誘導体、多価アルコール、油脂、ロウ類、高級アルコール、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、前記(B)成分以外のエステル類等が挙げられる。これらは、その1種類を単独に配合し、又は2種類以上を併せ配合することができる。
【0045】
シリコーン誘導体としては、ジメチルポリシロキサンやその末端ヒドロキシ変性体(例えばジメチコノール)、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)・ブチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ポリエーテル変性シリコーン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、アミノ変性シリコーン、ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、等が挙げられ、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)・ブチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ジメチコノール又はポリエーテル変性シリコーンが特に好ましい。
【0046】
多価アルコールとしては、グリコール類、グリセリン類、脂環式ポリオール等が挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール等が例示され、グリセリン類としては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が例示され、脂環式ポリオールとしては、シクロペンタンのポリオールや、イノシトール等のシクロヘキサンのポリオールが例示される。
【0047】
油脂としては各種の植物油、動物油等が挙げられる。
【0048】
ロウ類としてはミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油、ラノリン等が挙げられる。
【0049】
高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール(セタノール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール、ラノリンアルコール等が挙げられる。
【0050】
高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、ヒドロキシステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ウンデシレン酸、リノール酸、リシノール酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。
【0051】
アルキルグリセリルエーテルとしては、バチルアルコール(モノステアリルグリセリルエーテル)、キミルアルコール(モノセチルグリセリルエーテル)、セラキルアルコール(モノオレイルグリセリルエーテル)、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。
【0052】
エステル類としては、任意のモノカルボン酸エステル、ジカルボン酸モノエステル及び前記(B)成分以外のジカルボン酸ジエステルが挙げられる。例えば、シュウ酸、コハク酸、セバシン酸、アジピン酸等のジカルボン酸の各種モノエステルが挙げられる。また、乳酸、酢酸、ステアリン酸、ミリスチン酸、リシノール酸、オクタン酸、イソオクタン酸等のモノカルボン酸の各種エステルも挙げられる。
【0053】
(炭化水素)
炭化水素としては、α−オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、流動イソパラフィン、流動パラフィン、スクワラン、ポリブテン、パラフィン、ポリエチレン末、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。
【0054】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、前記したアニオン性界面活性剤以外の、カチオン性、非イオン性、又は両性の界面活性剤を配合することができる。
【0055】
カチオン性界面活性剤としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、メチル硫酸ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化トリ(POE)ステアリルアンモニウム、クオタニウム−91(INCI名称)、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミドプロピルエチルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、セチルトリメチルアンモニウムサッカリン、N,N−ジ(アシロキシ)−N−(ヒドロキシエチル)−N−メチルアンモニウムメトサルフェート等が挙げられる。
【0056】
非イオン性界面活性剤としては、POEアルキルエーテル類、POEアルキルフェニルエーテル類、POE・ポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、POEソルビタン脂肪酸エステル類、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド等の脂肪族アルカノールアミド、POEアルキルグルコシド、ポリオキシアルキレンアルキルジエーテル類等が挙げられる。
【0057】
両性界面活性剤としては、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0058】
(高分子物質)
高分子物質としては、下記のカチオン性化合物としてのカチオン性ポリマーを除く各種の高分子物質、例えば、カルボキシビニルポリマー等のアニオン性ポリマー、ジアリル4級アンモニウム塩/アクリル酸共重合体等の両性ポリマー、ヒドロキシエチルセルロース、やヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース塩等のセルロース誘導体、あるいは各種の水溶性ポリマーが例示される。これらは、その1種類を単独に配合し、又は2種類以上を併せ配合することができる。
【0059】
その他の高分子物質の具体例としては、アラビアガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、デンプン、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸等の植物性ポリマー、キサンタンガム、デキストラン、プルラン等の微生物系ポリマー、コラーゲン、カゼイン、ゼラチン等の動物性ポリマーが例示され、その他にも、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、高重合ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリルアミド等が挙げられる。
【0060】
(カチオン性化合物)
カチオン性化合物は、その水溶液がカチオン性を示す化合物を言う。カチオン性化合物の種類は限定されないが、特に好ましくは上記したカチオン性界面活性剤を除く、カチオン性オリゴマー及びカチオン化糖誘導体が挙げられ、他にもカチオン性ポリマー等が例示される。これらは、その1種類を単独に配合し、又は2種類以上を併せ配合することができる。
【0061】
カチオン性オリゴマーとしては、カチオン化加水分解タンパク類等が挙げられる。カチオン化糖誘導体としては、カチオン化オリゴ糖、カチオン化ハチミツ、カチオン化キトサン等が挙げられる。
【0062】
カチオン性ポリマーとしては、ポリクオタニウム−4やポリクオタニウム−10(いずれもINCI名称)等のカチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、カチオン化デンプン、第四級化ポリビニルピロリドン誘導体、ジアリル第四級アンモニウム塩重合物誘導体等が挙げられる。
【0063】
(タンパク加水分解物)
タンパク加水分解物としては、上記したカチオン化加水分解タンパク及びN−アシルペプチド塩を除く、コラーゲン、ケラチン、エラスチン、フィブロイン、エッグ、シルク、コンキオリン、カゼイン、ゼラチン等の蛋白質、コメ、コムギ、オオムギ、カラスムギ、ダイズ、エンドウ、アーモンド、ブラジルナッツ、ジャガイモ及びトウモロコシなどの植物から得られるタンパク質を酸、アルカリ、酵素等により加水分解したタンパク加水分解物が挙げられる。
【0064】
(pH緩衝成分)
pH緩衝成分としては、酸成分が有機酸からなり、アルカリ成分が有機アルカリからなるものが好ましい。有機酸としてはカルボン酸が特に好ましく、とりわけ、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸及びコハク酸から選ばれるものが好ましい。有機アルカリとしては、アンモニア、モルフォリンなどの揮発性アルカリ成分、モノエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン類、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールなどのアミノアルコール類、L−アルギニン、L−リジン、L−ヒスチジン等の塩基性アミノ酸等が挙げられる。
【0065】
(糖類)
糖類としては、単糖および二糖以上のオリゴ糖、糖アルコールがあげられ、具体例としてはグルコース、キシロース、マルトース、セロビオース、ラクトース、イソマルトース、スクロース、キトビオース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノース、トレハロース、スタキオース、セロテトラオース、セロペンタオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、ソルビトール、キシリトール、マルチトール等を例示できる。
【0066】
(溶剤)
溶剤としては、エタノール、イソプロパノールなどの低級アルコール、ベンジルアルコール、ベンジルオキシエタノールなどの芳香族アルコール、N−メチルピロリドン等を例示できる。
【実施例】
【0067】
以下に本発明の実施例を比較例と共に説明する。本発明の技術的範囲はこれらによって限定されない。
〔第1実施例群〕
末尾の表1に示す実施例1〜実施例9及び表2に示す比較例1〜比較例7に係る組成のゲル状のシャンプー組成物を常法に従って調製した。
【0068】
表1、表2及び後述する表3、表4中の各成分の含有量を示す数値は、質量%単位で表記した。表1〜表4に示した成分中、成分名の前に「(A)」を付したものは(A)成分であることを、成分名の前に「(B)」を付したものは(B)成分であることを、成分名の前に「(C)」を付したものは(C)成分であることをそれぞれ示す。又、各表の評価項目欄の上の欄に表記した「(B)/(C)」の欄は、(B)成分と(C)成分との含有量の質量比「B/C」を示す。
【0069】
表1及び表2の各実施例及び比較例に係るシャンプー組成物について、下記の要領で「洗浄力」、「低温安定性」、「泡立ち」を評価した。
【0070】
(洗浄力の評価)
各実施例及び比較例に係るシャンプー組成物について、それぞれ10名のパネラーが通常どおり頭髪に使用し、洗浄力が良いか否かを判断した。洗浄力が良いと回答したパネラーが7名以上であったシャンプー組成物を「◎」、6〜4名であったシャンプー組成物を「○」、3〜1名であったシャンプー組成物を「△」、0名であったシャンプー組成物を「×」として評価した。
【0071】
(低温安定性の評価)
各実施例及び比較例に係るシャンプー組成物は調製時において透明なゲル状であるが、これらを透明ガラス瓶に入れ、5℃で24時間放置した後の外観変化を評価した。透明なままで問題がない場合を「◎」、わずかに白濁しているが、室温に昇温するにつれ透明になった場合を「○」、白濁しており、室温に昇温しても透明にならなかった場合を「×」として評価した。
【0072】
(泡立ちの評価)
各実施例及び比較例に係るシャンプー組成物について、それぞれ10名のパネラーが通常どおり頭髪に使用し、泡立ちが良いか否かを判断した。泡立ちが良いと回答したパネラーが7名以上であったシャンプー組成物を「◎」、6〜4名であったシャンプー組成物を「○」、3〜1名であったシャンプー組成物を「△」、0名であったシャンプー組成物を「×」として評価した。
【0073】
(評価結果)
1)(A)成分〜(C)成分を全て含み、B/Cの値も5〜8000の範囲内である実施例1〜実施例6のシャンプー組成物では、洗浄力、低温安定性、泡立ちの全ての評価が「◎」であった。
【0074】
2)(A)成分〜(C)成分を全て含むが(C)成分が相対的に過少でB/Cの値が5〜8000の範囲を上回る実施例7では、低温安定性の評価が「○」で、ある程度見劣りした。一方、(A)成分〜(C)成分を全て含むが(B)成分が相対的に過少でB/Cの値が5〜8000の範囲を下回る実施例8では、洗浄力の評価が「○」で、ある程度見劣りした。
【0075】
3)実施例9は(A)成分〜(C)成分を全て含み、かつB/Cの値も5〜8000の範囲内であるが、(B)成分であるコハク酸ジオクチルが、ジカルボン酸ジエステルの一般式に関して前記したCxとCyの関係が、Cx=16、Cy=4であって「Cx>Cy」である。この実施例9では、低温安定性の評価と洗浄力の評価が共に「○」で、ある程度見劣りした。
【0076】
4)実施例1における(A)成分であるアニオン性界面活性剤を同量の両性界面活性剤に置き換えた比較例1では、低温安定性は「○」で余り問題ないものの、洗浄力と泡立ちは共に「×」で悪かった。
【0077】
5)実施例1における(B)成分を無くした比較例2、実施例1における(B)成分をミリスチン酸イソプロピルに置き換えた比較例3では、共に洗浄力が「×」で悪かった。
【0078】
6)実施例1における(C)成分を無くした比較例4、実施例1における(C)成分をカニナバラ果実エキスに置き換えた比較例5では、共に低温安定性が悪く、洗浄力と泡立ちも劣っていた。
【0079】
7)実施例1における(C)成分を、一般的に低温安定性向上剤として利用されているエタノールの一定の配合量に置き換えた比較例6、比較例7では、低温安定性は良好であるが、洗浄力が劣り、特に泡立ちが悪い。
〔第2実施例群〕
末尾の表3に示す実施例10〜実施例18、及び表4に示す実施例19〜実施例24に係る組成のゲル状のシャンプー組成物を常法に従って調製した。
【0080】
表3に示す実施例10〜実施例18のうち、実施例10は前記実施例1と同一の組成であり、実施例11〜実施例18は実施例10における(A)成分を他種の同量の(A)成分に置き換えたものである。
【0081】
表4に示す実施例19〜実施例24のうち、実施例19は前記実施例1と同一の組成であり、実施例20〜実施例24は実施例19における(B)成分を他種の同量の(B)成分に置き換えたものである。
【0082】
(評価の結果)
表3及び表4に示す実施例10〜実施例24に係るシャンプー組成物は、いずれも実施例1と同様に前記第1発明〜第3発明の要件を全て満たすが、洗浄力、低温安定性、泡立ちの全ての評価が「◎」であった。
【0083】
【表1】

【0084】
【表2】

【0085】
【表3】

【0086】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によって、アニオン性界面活性剤とジカルボン酸ジエステルとを含有するヘアシャンプー組成物において、高い頭皮洗浄力、十分な保存安定性、及び良好な使用感を確保することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)成分〜(C)成分を含有することを特徴とするシャンプー組成物。
(A)成分:アニオン性界面活性剤の1種以上。
(B)成分:下記(1)〜(3)に従い解釈される一般式「ROCO−X−COOR」で表されるジカルボン酸ジエステルから選ばれる1種以上。
(1)RとRはそれぞれ、a)直鎖状であり又は分岐鎖を有する炭素数2〜18の飽和又は不飽和の炭化水素基、b)(ポリ)オキシエチレン基およびc)(ポリ)オキシプロピレン基の内のいずれか1種類の基を表し、又はこれらの内の2種類以上の基が1価の結合により連結された基を表す。RとRは、同一であっても、相違していても良い。
(2)上記a)〜c)の内の2種類以上の基が連結されたR、Rにおいては、同一種類の基が、他の種類の基を介在させて、2個以上含まれる場合がある。これらの2個以上の基は、化学構造において同一であっても相違していても良い。
(3)Xは、単結合、炭素数1の炭化水素基「−CH−」、あるいは直鎖状であり又は分岐鎖を有する炭素数2〜22の飽和又は不飽和の炭化水素基であって、それらの炭化水素基の化学構造中の任意の水素原子が水酸基に置換されていても良い。
(C)成分:
バラ抽出物。
【請求項2】
前記(B)成分と(C)成分を質量比でB/C=5〜8000となる範囲内で含有することを特徴とする請求項1に記載のシャンプー組成物。
【請求項3】
前記(B)成分が、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジエチル、アジピン酸PPG−2−ミレス−10、アジピン酸ジPPG−3ミリスチル、コハク酸ジエトキシエチル及びアジピン酸ジイソプロピルから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシャンプー組成物。

【公開番号】特開2009−96778(P2009−96778A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−272249(P2007−272249)
【出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】