説明

ショルダ形成領域と内側チューブとからなるシース内に可撓性シャフトを有する回転運動伝達装置

回転運動伝達装置(1)を開示する。装置(1)は、可撓性シャフトとシース(3)とを備え、シース(3)はコア(4)を備え、コアは少なくとも1つのショルダ形成領域(6)を備える。前記領域(6)は、2つの外側部分(7,8)と1つの中央部分(9)とを含む少なくとも3つの部分を備え、前記各部分は、コア(4)の軸線に対してほぼ平行な軸線と、コア(4)の直径とほぼ等しい直径とを備える。両外側部分(7,8)はほぼ同軸であって、かつ中央部分(9)とコア(4)との軸線に対してずれた軸線を備える。前記装置はさらに、コア(4)内部に配置された内側チューブ(2)を備え、チューブ(2)はショルダ形成領域(6)においてコア(4)と同様な方法により変形される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転運動を伝達するための装置、およびそのような装置を備える自動車のシート用の調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
回転伝達装置としては、可撓性シャフトと、シャフトが内部に収容されたシースとからなるものが公知である。
このような伝達装置において、シース内のシャフトの回転速度は毎分2,000回転を超え、通常は毎分3,000回転台である。
【0003】
このような速度における回転を可能とするため、シースとシャフトとの間には数十mmの間隙が必要とされる。しかし、このような間隙は、回転の際にシャフトに沿って広がる微小な振動を発生させ、不快な騒音と不快な気分とを生じさせる。
【0004】
このような振動事案を解決するため、仏国特許発明第1,563,195号明細書は、回転伝達装置を提供している。前記文献のシースはショルダ形成領域の形状をなすとともに、シースのコアの塑性変形により形成される少なくとも1つの変形部分を備え、同領域は2つの外側部分と、1つの中央部分とを含む少なくとも3つの部分を備える。これらの部分は、コアの軸線とほぼ平行な軸線を有し、コアの直径とほぼ等しい直径を有しており、両外側部分はほぼ同軸であって、かつ中央部分の軸線とコアの軸線とに対してずれた軸線を備える。このようなショルダ形成領域は、シャフトとシースとの間に接触点を形成することにより振動を制限することができることは事実である。
【0005】
摩擦を低減するために、前記文献は、シースコアの内面に繊維を植毛することを提案している。しかし、植毛は回転伝達装置を激しく使用することにより磨耗する。シャフトは金属ワイヤを撚ることにより製造されており、平滑ではない外面を有することは事実である。植毛繊維はシャフトの外面の凹凸に捕捉されると思われ、それによりシャフトの回転により剥奪される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、回転運動を伝達するための装置を提供することにより上記の不利益を改善することである。同装置のシースは、シースの内径を減少させることなく、振動を制限するように構成された永久変形部分と、上記変形部分と同一の変形部分を有する内側チューブとを備える。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的のため、かつ第1の態様において、本発明は回転運動を伝達するための装置に関する。同装置は可撓性シャフトと、内部にシャフトが収容されるシースとを備え、シースは中空円筒をなすコアを備える。コアの内径は、コアの内部のシャフトが回転可能であるように構成されている。コアは、塑性変形により得られる少なくとも1つのショルダ形成領域を備え、前記領域は、2つの外側部分と1つの中央部分とを含む少なくとも3つの部分を備え、前記各部分は、コアの軸線に対してほぼ平行な軸線と、コアの直径とほぼ等しい直径とを備え、両外側部分はほぼ同軸であって、かつ中央部分とコアとの軸線に対してずれた軸線を備える。前記装置はさらにコア内部に配置された内側チューブを備える。内側チューブはコアの内径とほぼ等しい外径を備える。コアの内径は、前記チューブ内
においてシャフトが回転可能であるように構成される。前記チューブはショルダ形成領域においてコアと同様な方法により変形される。
【0008】
前記チューブの内面は平滑であり、これにより、シャフトとシースとの間の摩擦を制限することができる。チューブは金属間の接触を回避するようにプラスチック材料からなり、それにより騒音および材料の磨耗を低減する。
【0009】
一実施形態において、ショルダ形成領域の中央部分およびシース上のコアはほぼ同軸である。
別の実施形態において、シースは互いに5乃至15cmの間隔を有する複数のショルダ形成領域を備える。
【0010】
別の実施形態において、前記領域はシースに沿って連続して配置される。
一実施形態において、変形されていない内側チューブが変形されていないコア内に導入され、その後ショルダ形成領域を形成する変形が、コアと内側チューブとにおいて同時に行われる。
【0011】
第2の態様において、本発明は自動車のシートを調節するためのシステムに関する。前記システムは、車両構造体に搭載された少なくとも1つの調節スライド部材と、スライド部材にシースを固定するための調整手段とを備える。前記システムはさらに、少なくとも1つの回転出力部を有する駆動モータを備える。前記システムはさらに、すでに上記した種類の回転運動伝達装置を備え、同装置は前記駆動モータと前記固定手段との間に配置され、出力部の回転に応じて前記固定手段を調節スライド部材に沿って移動させる。
【0012】
本発明は、上記の用途に限定されるものではない。事実、前記装置は任意の用途において使用可能であり、本願のシステムは、騒音に関しては快適にし、かつ振動を減衰させつつ、トルクすなわち回転を遠隔部位に伝達する。このような装置は、例えば、机の高さを調節するために用いたり、自動車のルーフの開閉制御に用いたりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、付属の図面を参照しつつ下記の説明を読むことにより、一層理解されよう。
回転運動伝達装置1は、可撓性シャフト(図示せず)およびシース3を備える。シャフトはシース3内に収容されている。
【0014】
シャフト回転速度は、通常は毎分3,000回転程度である。このような速度における回転を可能とするため、シャフトとシース3との間に数十mmの間隙を設ける。
シース3は、コア4と、コア4を環囲する外側管状封体5とを備える。コア4は、例えば、金属材料からなるコイルばねからなることができる。このようなばねは、例えば、らせん状をなして巻回された金属帯状片から構成される。ばねの巻回された部分が接合されていないことにより、シースには一定の可撓性が付与される。外側封体5は押出成形されたプラスチック材料により形成し得る。
【0015】
図1を参照すると、シース3はショルダ形成領域6の形状を呈する永久変形部分を有しており、ショルダは前記装置の長手方向に延びている。
ショルダ形成領域は、2つの外側部分7,8と1つの中央部分9とを含む3つの部分を備える。これらの部分のそれぞれの軸線は、コア4の軸線とほぼ平行である。さらに外側部分7,8は同軸であり、これらの軸線はコア4の軸線に対してずれている。本明細書に
おいて、軸線とは図1に図示するように、シースの安定した直線状の位置をなす状態において定義される。
【0016】
さらに、部分7〜9はコア4の内径とほぼ等しい内径を有するとともに、整数回の連続した巻回からなる。
図1に示す本発明の実施形態において、伝達装置1のショルダ形成領域6は、2つの外側部分7,8と、1つのみの巻回により形成される1つの中央部分9とを備える。各部の軸線はコア4の軸線に対してずれており、そのため、外側部分7,8に共通する軸線と中央部分9の軸線とは、コア4の軸線に関してほぼ対称である。
【0017】
本発明の別の実施形態において、伝達装置1のショルダ形成領域6は、1つのみの巻回からなる2つの外側部分7,8と、2つの巻回からなる1つの中央部分9とを備える。さらに中央部分9はシースのコア4と同軸である。
【0018】
本発明において、シースに沿って複数のショルダ形成領域を配置することができる。一実施形態において、2つの前記領域を隔てる距離は、通常5mmと15cmとの間である。別の実施形態において、前記領域はシースに沿って連続的に配置される。
【0019】
ショルダ形成領域6は、巻回内径を減少させることなく、シース3の金属製巻回の軸線をずらせている。これにより、シース3内にやや蛇行した通路を形成する。
シース3の変形はシースの塑性変形により形成され、例えば、プレス機を用いて、そのジョーにより巻回を径方向にずらせるようにする。このような変形は恒久的であり、さらに前記装置を搭載する際には、これらの変形部分のための保持部品は必要ではない。
【0020】
図1を参照すると、シース3はシース3の内面、すなわちシャフトに対向する面に内側チューブ2を有する。内側チューブ2はコア4の内部に配置され、その外径はコア4の内径とほぼ等しい。これは、内側チューブ2はコア4の内面に対向して配置されていることを意味する。内側チューブの内径は、チューブ2内においてシャフトが回転可能であるように構成されている。
【0021】
チューブ2は、ショルダ形成領域6においてコアと同一な方法により変形される。すなわちこれは、チューブ2はまた、図1に図示するように、ショルダ形成領域6と同一の場所にショルダ形成領域を有することを意味する。したがって、チューブ2とシャフトとの間に接触点が形成され、その複数の接触点はシース3の軸線に対して反対の位置にあって、シース3の軸線に対して交互に配置される。このような接触点は、いかなる方法においてもシャフトの速度を低減させることなく、シャフトが動作中に振動する可能性を回避させる。したがって、この構成に関する限り、モータのトルクは変形されていないシースが用いられるときのトルクと類似であることができ、さらにシースは急速に磨耗するような傾向を有していない。さらに、チューブ2と可撓性シャフトとの間の空き空間には、シャフトを潤滑させるためのグリース21を蓄えることができる。
【0022】
例えば、チューブ2は、金属同士の接触を避けるように、プラスチック材料からなる。変形されていないチューブ2を、変形されていないシース3内に導入し、その後シース3に対して変形操作を行うことにより、チューブ2に類似の変形をさせる。したがってシース3の製造は極めて簡単である。
【0023】
事実、上記のようにシースが、シースの内面にプラスチック製のチューブを有する構成すると、極めて優れた音量減衰効果を呈する。チューブ2は、シャフトとシースとの間を機械的に分離する。
【0024】
このような回転動作伝達装置は、図2に示すような、自動車20におけるシートを調節するためのシステムに使用され得る。
この目的のため、2つのスライド部材11,12を、任意の適切な方法により自動車の
構造体(図示せず)に固定する。このようなスライド部材は、以下に説明する機能を有する調節ノッチを有する。
【0025】
スライド部材11,12は、車両のシート(図示せず)のフレームを支持し、シートをスライド部材に対して移動および固定することは、減速機13,14により確実に行われる。減速機13,14は、スライド部材11,12の上記ノッチと協働する2つのスプロケットホイールを備える。
【0026】
電動機15は車両の構造体に固定されるか、これに替えて、シートのフレームに固定される。このような電動機15は2つの回転出力部16,17を有する。このような出力部16,17は、本発明による回転動作伝達装置1により、それぞれ減速機13,14に連結される。
【0027】
伝達装置1のショルダ形成領域6は、調節システム20に搭載する際には、シースがほぼ直線状をなす部位に設ける。このような部位において摩滅が生じ、重度に拡大することが観察されたことは事実である。
【0028】
電動機15が起動すると、伝達装置1のシャフトをシース内において回転駆動させる。シャフトは順次減速機13,14を駆動し、スライド部材11,12に沿ってシースを移動させることとなる。
【0029】
上記のように、装置1はまた他の分野においても適用され、トルクすなわち回転を、騒音に関しては快適にするとともに振動を減衰させつつ、遠隔部位に伝達することを要する限り、使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるショルダ形成領域を示す、回転伝達装置の長手方向に沿った部分断面図。
【図2】本発明における自動車のシートを調節するためのシステムの斜視図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転運動伝達装置(1)であって、可撓性シャフトと前記シャフトが内部に収容されたシース(3)とを備え、シース(3)は円筒状をなすコア(4)を備え、コア(4)は塑性変形により形成される少なくとも1つのショルダ形成領域(6)を備え、前記領域(6)は2つの外側部分(7,8)と1つの中央部分(9)とを含む少なくとも3つの部分を備え、これらの部分はコア(4)の軸線とほぼ平行な軸線を備えるとともに、コア(4)の直径とほぼ等しい直径を有し、前記外側部分(7,8)同士はほぼ同軸であるとともに、前記中央部分(9)とコア(4)との軸線に対してずれた軸線を有し、
コア(4)の内部に配置された内側チューブをさらに備え、前記内側チューブの外径はコア(4)の内径とほぼ等しく、前記内側チューブの内径は、同チューブの内部において、前記シャフトが回転可能であるように構成され、前記チューブはショルダ形成領域(6)においてコア(4)と同様な方法で変形される、伝達装置。
【請求項2】
ショルダ形成領域(6)の前記中央部分(9)とシース(3)のコア(4)とはほぼ同軸である、請求項1に記載の伝達装置。
【請求項3】
シース(3)のコア(4)は金属材料からなるコイルばねにより構成される、請求項1または2に記載の伝達装置。
【請求項4】
ショルダ形成領域(6)の前記各部分(7,8,9)は、コイルばねの整数回の巻回からなる、請求項3に記載の伝達装置。
【請求項5】
ショルダ形成領域(6)の前記各部分(7,8,9)は連続した巻回からなる、請求項3または4に記載の伝達装置。
【請求項6】
ショルダ形成領域(6)の前記外側部分(7,8)はそれぞれ1つの巻回からなり、前記中央部分(9)は2つの巻回からなる、請求項3乃至5のうちのいずれか一項に記載の伝達装置。
【請求項7】
シース(3)は複数のショルダ形成領域(6)を備え、同領域は互いに5乃至10cmの距離だけ離間している、請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の伝達装置。
【請求項8】
シース(3)は複数のショルダ形成領域(6)を備え、同領域はシースに沿って連続的に配置される、請求項1乃至6のうちのいずれか一項に記載の伝達装置。
【請求項9】
前記装置(1)のシース(3)は、プラスチック材料からなるとともに、コア(4)を環囲する、外側管状封体(5)をさらに備える、請求項1乃至8のうちのいずれか一項に記載の伝達装置。
【請求項10】
前記内側チューブ(2)はプラスチック材料からなり、前記内側チューブ(2)はコア(4)と同時に変形されてショルダ形成領域(6)を形成する、請求項1乃至9のうちのいずれか一項に記載の伝達装置。
【請求項11】
自動車のシート用の調節システム(20)であって、車両構造体に搭載された少なくとも1つの調節スライド部材(11,12)と、前記スライド部材(11,12)上にシートを固定するための調節手段(13,14)とを備え、少なくとも1つの回転出力部(16,17)を有する駆動電動機(15)をさらに備え、
前記駆動電動機(15)の前記出力部(16,17)と前記固定手段(13,14)との間に配置された、請求項1乃至10のうちのいずれか一項に記載の伝達装置をさらに備
え、それにより、前記固定手段(13,14)を前記出力部(16,17)の回転に応じて前記調節スライド部材(11,12)に沿って移動可能とする、調節システム。
【請求項12】
ショルダ形成領域(6)はシース(3)のほぼ直線状をなすシース(3)部位に設けられる、請求項11に記載の調節システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2009−503371(P2009−503371A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522025(P2008−522025)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/FR2006/001791
【国際公開番号】WO2007/010147
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(504436963)インダーフレックス−テクノフレックス (4)
【氏名又は名称原語表記】INDERFLEX−TECHNOFLEX
【Fターム(参考)】