説明

ショート位置検出装置

【課題】一対の平板電極のショート箇所を非接触で検出し得るショート位置検出装置を提供する。
【解決手段】対向して配設された一対の平板電極2a,2b間におけるショート箇所A1,A2の位置を検出するショート位置検出装置1であって、一対の平板電極2a,2bのうちの一方の平板電極2aに非接触で熱を供給する熱供給部3と、一対の平板電極2a,2bのうちの他方の平板電極2bの表面温度分布を非接触で測定すると共に、表面温度分布を画像として表示させるための画像信号S1を生成する非接触式温度検出部4と、入力した画像信号S1に基づいて、非接触式温度検出部4で測定されている他方の平板電極2bの表面温度分布を示す画像をリアルタイムに画面5a上に表示する表示部5を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対向して配置された一対の平板電極間のショート箇所の位置を検出するショート検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のショート検出装置として本願出願人は、下記特許文献1に開示されたショート検出装置を提案している。このショート検出装置は、一対の平板電極のうちの一方の平板電極と平行に配設されると共にマトリックス状にプローブが並設された支持板と、一対の平板電極間に直流定電流を供給する電流供給部と、電圧測定部とを備えている。このショート検出装置では、支持板を一方の平板電極に接近させてすべてのプローブを一方の平板電極に規定された測定位置に接触させると共に、電流供給部から一対の平板電極間に直流定電流を供給し、この状態における基準点(一方の平板電極への直流定電流の供給点)と各測定位置との間の電位差を電圧測定部で測定する。さらに、このショート検出装置では、測定した各電位差に基づいて各測定位置間の電圧勾配を求め、この電圧勾配に基づいて電圧極小点となる測定位置をショート位置として特定する。したがって、このショート検出装置によれば、1本のプローブを用いて一方の平板電極に規定された各測定位置における電位差を求める構成と比較して、検出時間を大幅に短縮可能となっている。
【0003】
ところで、このショート位置検出装置では、上記したようにマトリックス状に配設された多数(通常は数十本以上)のプローブを一方の平板電極に接触させる必要があるため、多数のプローブとの接触が好ましくない一対の平板電極に対して適用できないという解決すべき課題が存在している。この課題を軽減するものとして、例えば下記特許文献2に開示された欠陥検出方法を採用してショート位置検出装置を構成することも考えられる。この欠陥検出方法を適用したショート位置検出装置では、一対の平板電極間に電圧を印加して、ショート箇所(不良部)に短絡電流による発熱を生じさせ、この発熱により発生する赤外線量を赤外放射温度計で測定してショート箇所の検出を行うことになる。このショート位置検出装置によれば、電圧印加のためのプローブを各平板電極に1本ずつ接触させるだけでよいため、電圧検出用の多数のプローブを接触させる事態を回避することが可能となる。
【特許文献1】特開2003−215190号公報(第5−7頁、第1図)
【特許文献2】特開平7−47995号公報(第2−3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記の欠陥検出方法を適用したショート位置検出装置には、以下の問題点が存在している。すなわち、このショート位置検出装置においても、電圧印加用のプローブを1本ずつ各平板電極に接触させる必要があるため、プローブと接触させてはならない一対の平板電極に対しては適用できない。また、上記した2つのショート位置検出装置は、いずれも、検査対象となる一対の平板電極間にショート箇所が存在していて、平板電極相互間に電流が流れることが検査の前提となっているため、ショート状態にまでは至っていないが、局部的に間隔が狭まっているような不具合箇所を有する一対の平板電極におけるこの不具合箇所を検出できないという解決すべき課題も存在している。なお、本願では、このような不具合箇所も、現実にショートしている箇所と共に「ショート箇所」の概念に含まれるものとする。
【0005】
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、一対の平板電極のショート箇所を非接触で検出し得るショート位置検出装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載のショート位置検出装置は、対向して配設された一対の平板電極間におけるショート箇所の位置を検出するショート位置検出装置であって、前記一対の平板電極のうちの一方の平板電極に非接触で熱を供給する熱供給部と、前記一対の平板電極のうちの他方の平板電極の表面温度分布を非接触で測定すると共に、当該表面温度分布を画像として表示させるための画像信号を生成する非接触式温度検出部とを備えている。なお、本発明において、「ショート箇所」とは、実際にショートの発生している箇所およびショートのおそれのある箇所を含むものとする。
【0007】
また、請求項2記載のショート位置検出装置は、請求項1記載のショート位置検出装置において、前記画像信号を入力して前記表面温度分布を画面上に画像として表示する表示部を備えている。
【0008】
また、請求項3記載のショート位置検出装置は、前記処理部は、前記測定した表面温度分布に基づいて前記他方の平板電極内における前記ショート箇所の位置を示す位置情報を算出する。
【0009】
また、請求項4記載のショート位置検出装置は、対向して配設された一対の平板電極間におけるショート箇所の位置を検出するショート位置検出装置であって、前記一対の平板電極のうちの一方の平板電極に非接触で熱を供給する熱供給部と、前記一対の平板電極のうちの他方の平板電極の表面温度分布を非接触で複数回測定すると共に、当該測定した複数回分の表面温度分布に基づいて当該他方の平板電極の表面温度変化分布を算出し、当該表面温度変化率分布を画像として表示させるための画像信号を生成する非接触式温度検出部とを備えている。
【0010】
また、請求項5記載のショート位置検出装置は、請求項4記載のショート位置検出装置において、前記画像信号を入力して前記表面温度変化分布を画面上に画像として表示する表示部を備えている。
【0011】
また、請求項6記載のショート位置検出装置は、請求項1から5のいずれかに記載のショート位置検出装置において、前記非接触式温度検出部は、前記表面温度分布を非接触で測定する赤外線カメラを備えている。
【0012】
また、請求項7記載のショート位置検出装置は、請求項1から6のいずれかに記載のショート位置検出装置において、前記熱供給部は、赤外線照射装置で構成されている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載のショート位置検出装置では、対向して配設された一対の平板電極のうちの一方の平板電極に熱供給部から非接触で熱を供給し、非接触式温度検出部が、他方の平板電極の表面温度分布を非接触で測定すると共に、表面温度分布を画像として表示させるための画像信号を生成する。この場合、この画像信号を表示装置に入力して他方の平板電極の表面温度分布を示す画像をリアルタイムでその画面上に表示させたときには、ショート箇所の有無や、ショート箇所のショート状態(現実にショートしているか、または、ショートはしていないものの一対の平板電極の間隔が局部的に狭まっているか)に応じて、画面上に表示される他方の平板電極の表面温度の分布状態が変化する。したがって、このショート位置検出装置によれば、表示部の画面上に表示される他方の平板電極の表面温度の分布状態に基づいて、一対の平板電極間にショート箇所が存在しているか否か、また存在しているときには、その位置、およびショート状態を非接触で検出することができる。
【0014】
請求項2記載のショート位置検出装置によれば、画像信号を入力して表面温度分布を画面上に画像として表示する表示部を備えたことにより、表示装置を別途用意することなく、ショート位置検出装置単体で他方の平板電極の表面温度分布を示す画像を確認することができる。
【0015】
請求項3記載のショート位置検出装置によれば、測定した表面温度分布に基づいて他方の平板電極内におけるショート箇所の位置を示す位置情報を処理部が算出することにより、算出された位置情報に基づいてショート箇所の位置を正確に検出することができる。
【0016】
請求項4記載のショート位置検出装置では、対向して配設された一対の平板電極のうちの一方の平板電極に熱供給部から非接触で熱を供給し、非接触式温度検出部が、一対の平板電極のうちの他方の平板電極の表面温度分布を非接触で複数回測定すると共に、測定した複数回分の表面温度分布に基づいて他方の平板電極の表面温度変化分布を算出し、表面温度変化率分布を画像として表示させるための画像信号を生成する。
【0017】
したがって、このショート位置検出装置によれば、この画像信号に基づいて、内蔵のまたは外部の表示装置に表面温度変化分布画像を表示させることができるため、この表面温度変化分布画像に基づいて、表面温度変化が他の領域と異なる領域にはショート箇所が存在していると判別することができる。また、ショート箇所が存在していると判別される領域同士間においても、一方の領域での表面温度変化の度合いが他方の領域での表面温度変化の度合いよりも大きいときには、一方の領域に存在しているショート箇所はショート状態が広い範囲で発生しているというように、ショート箇所のショート状態の程度を判別することもできる。
【0018】
請求項5記載のショート位置検出装置によれば、画像信号を入力して表面温度変化分布を画面上に画像として表示する表示部を備えたことにより、表示装置を別途用意することなく、ショート位置検出装置単体で他方の平板電極の表面温度変化分布を示す画像を確認することができる。
【0019】
請求項6記載のショート位置検出装置によれば、非接触式温度検出部を赤外線カメラで構成したことにより、市販の赤外線カメラを使用してショート位置検出装置を簡易に構成することができる。
【0020】
請求項7記載のショート位置検出装置によれば、熱供給部を赤外線照射装置で構成したことにより、一方の平板電極に対して非接触で熱を確実に供給することができる。また、様々な大きさや形状で、かつ安価な赤外線ヒータなどで熱供給部を簡易に構成することができるため、一方の平板電極の形状や大きさに合った大きさ・形状の赤外線ヒータを使用することで、一方の平板電極への熱の均一な供給を行いつつ、装置コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るショート位置検出装置の最良の形態について説明する。
【0022】
最初に、ショート位置検出装置1の構成について、図面を参照して説明する。
【0023】
ショート位置検出装置1は、図1に示すように、対向して配設された一対の平板電極2a,2b間におけるショート箇所A(一例として、同図ではA1,A2)の位置を検出するためのものであり、熱供給部3、非接触式温度検出部4および表示部5を備えて構成されている。なお、本例では、対向して配設された一対の平板電極2a,2bとして、燃料電池に使用される膜/電極接合体(Membrane Electrode Assembly)2における電解質膜2c(厚みは均一)の両面に貼り合わされた一対の薄膜電極を例に挙げて説明する。
【0024】
熱供給部3は、一対の平板電極2a,2bのうちの一方の平板電極2aに非接触で熱を供給する。本例では一例として、熱供給部3は、赤外線照射装置で構成されて、一方の平板電極2aに赤外線を照射することで熱を供給する。この場合、熱供給部3は、一方の平板電極2a全域に亘って熱を均一に供給するのが好ましい。
【0025】
非接触式温度検出部4は、赤外線カメラ(赤外線サーモグラフィ)で構成されて、一対の平板電極2a,2bを挟んで熱供給部3と反対側に配設される。また、非接触式温度検出部4は、他方の平板電極2bの表面温度分布を非接触で測定して、この表面温度分布をモニタ装置などの表示装置において画像として表示させるための画像信号S1をリアルタイムに生成して出力する。一例として、画像信号S1は、表面温度の高いところを暖色系の色で表示し、表面温度の低いところを寒色系の色で表示させるカラー画像信号であるものとする。なお、これに限らず、表面温度の高いところを明るく表示し、表面温度の低いところを暗く表示させるモノクロ画像信号であってもよいのは勿論である。表示部5は、一例として画像表示装置で構成されて、入力した画像信号S1に基づいて、非接触式温度検出部4で測定されている他方の平板電極2bの表面温度分布を示す画像をリアルタイムに画面5a上に表示する。
【0026】
次いで、ショート位置検出装置1の動作について説明する。
【0027】
作動状態(測定状態)において、ショート位置検出装置1では、非接触式温度検出部4が、他方の平板電極2b全域の表面温度分布を非接触で測定しつつ画像信号S1をリアルタイムに生成して表示部5に出力する。また、表示部5は、入力した画像信号S1に基づいて、非接触式温度検出部4で測定されている他方の平板電極2bの表面温度分布を示す画像をリアルタイムに画面5a上に表示する。
【0028】
この測定状態において、熱供給部3を一定時間だけ作動させる。これにより、熱供給部3から一方の平板電極2a全域への熱の均一な供給が一定時間だけ実行される。この場合、一対の平板電極2a,2b間にショート箇所(ショート状態にまでは至っていないが、局部的に間隔が狭まっているような不具合箇所や、現実にショートしている箇所)が存在していないときには、一方の平板電極2aに供給された熱は、図2において矢印で示すように、一方の平板電極2aの全域から電解質膜2c内にほぼ均一な状態で放熱され、さらに電解質膜2cを経由して他方の平板電極2bに伝達する。この場合、電解質膜2cの厚みが均一であるため、他方の平板電極2bの表面温度は、理論的には、熱供給部3の作動中において全域に亘ってほぼ均一に上昇する。
【0029】
一方、図1,3に示すように、一対の平板電極2a,2b間にショート箇所A(一例として、同図では、現実にショートしている箇所A1と、局部的に間隔が狭まっているような不具合箇所A2(ショート状態への移行の可能性のある箇所)の2つ)が存在しているときには、一方の平板電極2aに供給された熱は、図3において矢印で示すように、一方の平板電極2aのほぼ全域から電解質膜2cおよび各ショート箇所Aに放熱され、電解質膜2cおよび各ショート箇所Aを経由して他方の平板電極2bに伝達する。この場合、ショート箇所A1に放熱された熱は、ショート箇所A1全体が金属で構成されているため、電解質膜2cに直接放熱された熱よりも短時間で他方の平板電極2bに伝達する。これにより、図4に示すように、表示部5の画面5a上に表示される他方の平板電極2bにおけるショート箇所A1に対応する部位の表面温度は、他の部位よりも早く温度が上昇すると共に、他方の平板電極2bにおけるショート箇所A1に対応する部位の周囲の表面温度も広い領域に亘って短時間に上昇する。なお、図4では、表面温度の分布状態を等高線を模した線で表しており、同図では、ショート箇所A1に近い部位ほど温度が高く、ショート箇所A1から離れるに従い温度が低くなる状態を示している。
【0030】
また、ショート箇所A2に放熱された熱は、ショート箇所A2はショート箇所A1と異なり全体が金属で構成されてはいないため、ショート箇所A1よりも伝達速度は遅いものの、電解質膜2cの間隔がショート箇所A1,A2以外の部位よりも狭いため(電解質膜2cの厚みが薄いため)、やはり電解質膜2cに直接放熱された熱よりも短時間で他方の平板電極2bに伝達する。これにより、図4に示すように、表示部5の画面5a上に表示される他方の平板電極2bにおけるショート箇所A2に対応する部位の表面温度は、他の部位(ショート箇所A1を除く)よりも早く温度が上昇する。また、ショート箇所A1の周囲ほどではないが、他方の平板電極2bにおけるショート箇所A2に対応する部位の周囲の表面温度もある程度広い範囲に亘って短時間に上昇する。
【0031】
このように、このショート位置検出装置1では、対向して配設された一対の平板電極2a,2bのうちの一方の平板電極2aに熱供給部3から非接触で熱を供給し、非接触式温度検出部4が他方の平板電極2bの表面温度分布を非接触で測定すると共に、表面温度分布を画像として表示させるための画像信号S1を生成して出力し、表示部5が画像信号S1に基づいて他方の平板電極2bの表面温度分布を示す画像をリアルタイムで画面5a上に表示する。この場合、上記したように、ショート箇所Aの有無や、ショート箇所Aのショート状態(現実にショートしているか、または、ショートはしていないものの一対の平板電極2a,2bの間隔が局部的に狭まっているか(つまり、電解質膜2cの膜厚が局部的に薄くなっているか))に応じて、画面5a上に表示される他方の平板電極2bの表面温度の分布状態が変化する。したがって、このショート位置検出装置1によれば、表示部5の画面5a上に表示される他方の平板電極2bの表面温度の分布状態に基づいて、一対の平板電極2a,2b間にショート箇所が存在しているか否か、また存在しているときには、その位置、およびショート状態を非接触で検出することができる。
【0032】
また、このショート位置検出装置1によれば、非接触式温度検出部4を赤外線カメラで構成したことにより、市販の赤外線カメラを使用してショート位置検出装置1を簡易に構成することができる。
【0033】
また、このショート位置検出装置1によれば、熱供給部3を赤外線照射装置で構成したことにより、一方の平板電極2aに対して非接触で熱を確実に供給することができる。また、様々な大きさや形状で、かつ安価な赤外線ヒータなどで簡易に熱供給部3を構成することができるため、一方の平板電極2aの形状や大きさに合った大きさ・形状の赤外線ヒータを使用することで、一方の平板電極2aへの熱の均一な供給を行いつつ、ショート位置検出装置1全体のコスト低減を図ることができる。
【0034】
なお、本発明は、上記した発明の実施の形態に限定されず、適宜変更が可能である。例えば、上述した実施の形態では、ショート位置検出装置1に表示部5を一体的に設けることで、表示装置を別途用意することなく、ショート位置検出装置1単体で他方の平板電極2bの表面温度分布を示す画像を表示できるようにした構成について説明したが、表示部5を備えずに、外部の表示装置(モニタ装置)を使用する構成とすることもできる。この構成においても、ショート位置検出装置1からは他方の平板電極2bの表面温度分布を示す画像をリアルタイムに表示させるための画像信号S1が出力されるため、この画像信号S1を外部の表示装置に入力してその画面上に他方の平板電極2bの表面温度分布を示す画像を表示させることにより、この表示される画像に基づいて、一対の平板電極2a,2b間にショート箇所が存在しているか否か、また存在しているときにはその位置、およびショート状態を非接触で検出することができる。
【0035】
また、図5に示すように構成された非接触式温度検出部4Aを備えてショート位置検出装置1Aを構成することもできる。この非接触式温度検出部4Aは、一例として、同図に示すように、レンズ11、赤外線センサ12、走査部13、A/D変換部14、処理部15および記憶部16を備えて構成されている。この場合、赤外線センサ12は、複数の検出素子(図示せず)が二次元的(マトリックス状)に配置されたエリアセンサとして構成されている。また、赤外線センサ12では、各検出素子が、レンズ11を介して照射される他方の平板電極2b全域を含む所定領域からの赤外線を検出すると共に、受光した赤外線の強度に応じた振幅の検出信号Saを出力する。走査部13は、赤外線センサ12の二次元的に配置された各検出素子を走査して、各検出素子から出力される検出信号Saを順番に1つずつA/D変換部14に出力する。A/D変換部14は、入力した検出信号Saをディジタルデータ(画素データ)Daに変換して出力する。
【0036】
処理部15は、CPU(いずれも図示せず)を備えて構成されている。記憶部16には、走査部13による赤外線センサ12に対する走査1回分の温度データを記憶する温度分布記憶領域が少なくとも1つ(本例では一例として1個)規定されている。処理部15は、入力したディジタルデータDaの温度データDtへの変換処理、温度データDtの温度分布記憶領域への記憶処理、および温度分布記憶領域に記憶されている温度データDtに基づく画像信号S1の生成および出力を行う画像処理を繰り返し実行する。
【0037】
この非接触式温度検出部4では、赤外線センサ12の二次元的に配置された各検出素子で検出された検出信号Saに基づいて算出された温度データDtが、1回の走査分ずつ記憶部16における温度分布記憶領域に記憶される。この場合、二次元的に配置された赤外線センサ12の各検出素子の位置は、他方の平板電極2bの表面の各部位の位置(例えば、図5に示すX−Y座標系での座標で表される位置)に対応したものとなる。したがって、処理部15が、上記の各処理に加えて、記憶部16の温度分布記憶領域に記憶されている温度データDtに対して、X−Y座標系でのX方向およびY方向に対応する方向に沿って走査して温度データDtの極大点を探索する位置算出処理を実行することにより、X−Y座標系でのショート箇所Aの位置情報D1(X,Y座標)を算出して、表示部5に表示させる構成とすることもできる。したがって、このショート位置検出装置1Aによれば、位置情報D1に基づいてショート箇所Aの位置を正確に検出することができる。なお、この位置算出処理において、極大点を探索する方法に代えて、予め決められた閾値と温度データDtとを比較する方法を採用することもできる。この方法を採用した構成では、処理部15が、熱供給部3による熱の供給の開始から所定時間が経過したときにおける温度データDtが閾値を越えたか否かを判別して、温度データDtが閾値を越えた箇所がショート箇所であると判別する構成とする。
【0038】
また、上記の構成を備えたショート位置検出装置1Aでは、以下に示すように、他方の平板電極2bの表面温度についての変化量の推移を示す画像を表示部5に表示させるようにすることもできる。この場合、1回の走査分の温度データDtを記憶させるための温度分布記憶領域を記憶部16にn個(2以上の整数。本例では2個)設けると共に、温度変化分布記憶領域をさらに(n−1)個(本例では1個)設ける。また、処理部15は、この各温度分布記憶領域に常に最新の1回の走査分の温度データDtを含む直近のn走査分の温度データDtを所定時間間隔で更新記憶させると共に、各温度分布記憶領域に記憶されている対応する温度データDt同士(同じ検出素子からの検出信号Saに基づく温度データDt同士)の差分データDdを算出して温度変化分布記憶領域に記憶させる。このようにして算出される各差分データDdは、他方の平板電極2bの対応する部位における表面温度の変化量を示すものとなる。また、処理部15は、この温度変化分布記憶領域に記憶されている差分データDdに基づいて、他方の平板電極2bにおける各部位での表面温度の変化量を示す画像(表面温度変化分布画像:図4に示す画像と同様の画像)を表示させるための画像信号S2を生成して画像信号S1に代えて出力する。この構成によれば、画像信号S2に基づいて、表示部5(または外部の表示装置)に表面温度変化分布画像を表示させることができるため、この表面温度変化分布画像に基づいて、表面温度変化が他の領域と異なる領域にはショート箇所が存在していると判別することができる。また、ショート箇所が存在していると判別される領域同士間においても、一方の領域での表面温度変化の度合いが他方の領域での表面温度変化の度合いよりも大きいときには、一方の領域に存在しているショート箇所はショート状態が広い範囲で発生しているというように、ショート箇所のショート状態の程度を判別することができる。
【0039】
また、差分データDdを算出して温度変化分布記憶領域に記憶させる構成においても、この差分データDdに対して、X−Y座標系でのX方向およびY方向に対応する方向に沿って走査して差分データDdの極大点を探索する位置算出処理を行うようにして、X−Y座標系でのショート箇所Aの位置情報(X,Y座標)を算出することもできる。
【0040】
また、上記した各ショート位置検出装置1,1Aでは、熱供給部3を赤外線照射装置で構成しているが、赤外線照射装置に限らず、温風(または熱風)を吐出するドライヤなどで構成してもよく、他方の平板電極2bに対して非接触で熱を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】ショート位置検出装置1の構成図である。
【図2】ショート箇所の存在しない膜/電極接合体2の断面図である。
【図3】図1における膜/電極接合体2のW−W線断面図である。
【図4】図1における表示部5の画面5aに表示される他方の平板電極2bの表面温度分布を示す画像図である。
【図5】ショート位置検出装置1Aの構成図である。
【符号の説明】
【0042】
1,1A ショート位置検出装置
2a,2b 平板電極
3 熱供給部
4,4A 非接触式温度検出部
5 表示部
A1,A2 ショート箇所
D1 位置情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向して配設された一対の平板電極間におけるショート箇所の位置を検出するショート位置検出装置であって、
前記一対の平板電極のうちの一方の平板電極に非接触で熱を供給する熱供給部と、
前記一対の平板電極のうちの他方の平板電極の表面温度分布を非接触で測定すると共に、当該表面温度分布を画像として表示させるための画像信号を生成する非接触式温度検出部とを備えているショート位置検出装置。
【請求項2】
前記画像信号を入力して前記表面温度分布を画面上に画像として表示する表示部を備えている請求項1記載のショート位置検出装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記測定した表面温度分布に基づいて前記他方の平板電極内における前記ショート箇所の位置を示す位置情報を算出する請求項1または2記載のショート位置検出装置。
【請求項4】
対向して配設された一対の平板電極間におけるショート箇所の位置を検出するショート位置検出装置であって、
前記一対の平板電極のうちの一方の平板電極に非接触で熱を供給する熱供給部と、
前記一対の平板電極のうちの他方の平板電極の表面温度分布を非接触で複数回測定すると共に、当該測定した複数回分の表面温度分布に基づいて当該他方の平板電極の表面温度変化分布を算出し、当該表面温度変化率分布を画像として表示させるための画像信号を生成する非接触式温度検出部とを備えているショート位置検出装置。
【請求項5】
前記画像信号を入力して前記表面温度変化分布を画面上に画像として表示する表示部を備えている請求項4記載のショート位置検出装置。
【請求項6】
前記非接触式温度検出部は、前記表面温度分布を非接触で測定する赤外線カメラを備えている請求項1から5のいずれかに記載のショート位置検出装置。
【請求項7】
前記熱供給部は、赤外線照射装置で構成されている請求項1から6のいずれかに記載のショート位置検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−264919(P2009−264919A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114724(P2008−114724)
【出願日】平成20年4月25日(2008.4.25)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】