説明

ショ糖脂肪酸エステル処理粉体及び化粧料

【課題】感触、肌への付着性・親和性を高めることができ、O/W及びW/O等の様々なエマルジョン系に応用可能な粉体を提供し、しっとり感や化粧効果持続性の高められた化粧料及び、O/W及びW/O等の様々なエマルジョン系化粧料を提供する。
【解決手段】粉体と溶剤中に添加して加熱溶解させたショ糖脂肪酸エステルを均一に混合した後、加熱乾燥し、粉砕することにより、粉体表面にショ糖脂肪酸エステルを被覆処理してなるショ糖脂肪酸エステル処理粉体を得る。そして、この処理粉体を化粧料に配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体表面を天然植物由来のショ糖脂肪酸エステルで被覆したショ糖脂肪酸エステル処理粉体とその処理粉体を配合した化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料に耐水性を付与して化粧崩れを防止するために、化粧料に配合される粉体成分に、疎水化処理された粉体を用いることが行われている。しかし、この疎水化処理粉体を含有する化粧料は、耐水性には優れているものの、汗や皮脂等分泌物によって化粧料の肌への密着性を阻害し、結果として化粧崩れを引き起こしてしまうという問題点があった。
【0003】
これを解決するために、天然植物由来のショ糖脂肪酸エステル化合物を化粧料に配合する技術が、特許文献1において提案されている。この文献に記載された化粧料によれば、親油性(好ましくはHLBが2以下)のショ糖脂肪酸エステルを配合することにより、汗や皮脂等分泌物によって化粧料の肌への密着性が阻害されにくく、耐水性及び持続性に優れた化粧料を得ることができる。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1にて提案された技術は、粉体そのものにショ糖脂肪酸エステルに起因する性質を付与する技術ではないため、化粧料の高機能化を図る手段として、また種々の形態の化粧料への応用について課題が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−81331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述のような問題点に鑑みてなされたもので、感触、肌への付着性・親和性を高めることができ、また、被覆処理に用いるショ糖脂肪酸エステルのHLBを調整することにより、O/W及びW/O等の様々なエマルジョン系に応用可能なショ糖脂肪酸エステル処理粉体を提供し、併せて、しっとり感と化粧効果持続性の高められた化粧料及び、O/W及びW/O等の様々なエマルジョン系化粧料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意検討した結果、粉体と溶剤中に添加して加熱溶解させたショ糖脂肪酸エステルを均一に混合した後、加熱乾燥し、粉砕することにより、感触が良く、肌への付着性・親和性が高められ、また被覆処理に用いるショ糖脂肪酸エステルのHLBの調整により、O/W(水中油型)及びW/O(油中水型)等の様々なエマルジョン系に応用可能な処理粉体が得られることを見出した。そして、この処理粉体を化粧料に配合したところ、感触、肌への付着性・親和性、化粧膜の均一性、化粧持ち改善効果に優れた化粧料や、O/W及びW/O等の様々なエマルジョン系化粧料が得られることが分かった。
【0008】
要するに、第1発明によるショ糖脂肪酸エステル処理粉体は、粉体表面にショ糖脂肪酸エステルを被覆処理してなることを特徴とするものである。
また、第2発明による化粧料は、第1発明のショ糖脂肪酸エステル処理粉体を配合してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
第1発明によれば、粉体の表面がショ糖脂肪酸エステルで被覆処理されているので、感触、肌への付着性・親和性を高めることができる。被覆処理に用いるショ糖脂肪酸エステルはショ糖の8個の水酸基のうち1分子以上の脂肪酸(典型的にはC〜C22の脂肪酸)が付加したエステルであり、HLB値が1〜16の範囲の物が市販されている。このショ糖脂肪酸エステルのHLBを調整することにより、メイクアップ化粧料、O/W及びW/O等の様々なエマルジョン系化粧料に応用可能な性質を付与することができる。
また、第2発明によれば、このショ糖脂肪酸エステル処理粉体を化粧料に配合することで、感触、肌への付着性・親和性、化粧膜の均一性、化粧持ち改善効果に優れた化粧料及び、O/W及びW/O等の様々なエマルジョン系化粧料を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明によるショ糖脂肪酸エステル処理粉体及び化粧料の具体的な実施の形態について説明する。
【0011】
本発明のショ糖脂肪酸エステル処理粉体とは、ショ糖脂肪酸エステルを粉体表面に直接被覆してなる粉体である。ここで、本発明に用いられる表面処理される粉体には、従来公知のものを使用することができ、その形状(球状、棒状、針状、板状、不定形状、鱗片状、紡錘状等)や粒子径(煙霧状、微粒子、顔料級等)、粒子構造(多孔質、無孔質等)は問わない。例えば無機粉体、有機粉体、界面活性剤金属塩粉体、有色顔料、パール顔料、金属粉末顔料等を使用することができる。
【0012】
具体的には、無機粉体としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン、シリカ等が挙げられる。
【0013】
また、有機粉体としては、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、シリコーンレジンパウダー、シリコーンエラストマー粉体、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロース、シルクパウダー、ナイロンパウダー、12ナイロン、6ナイロン、アクリルパウダー、アクリルエラストマー、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネイト樹脂、微結晶繊維粉体、デンプン末、ラウロイルリジン等が挙げられる。
【0014】
また、界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、セチルリン酸亜鉛、セチルリン酸カルシウム、セチルリン酸亜鉛ナトリウム等が挙げられる。
【0015】
また、有色顔料としては、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色顔料、γ−酸化鉄等の無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土等の無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラック等の無機黒色顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等の無機紫色顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルト等の無機緑色顔料、紺青、群青等の無機青色系顔料、微粒子酸化チタン、微粒子酸化セリウム、微粒子酸化亜鉛等の微粒子粉体、タール系色素をレーキ化したもの、天然色素をレーキ化したもの、及びこれらの粉体を複合化した合成樹脂粉体等が挙げられる。
【0016】
また、パール顔料としては、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母等が挙げられる。
【0017】
また、金属粉末顔料としては、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー、ステンレスパウダー等から選ばれる粉体が挙げられる。
【0018】
また、タール色素としては、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色206号、橙色207号等;天然色素としては、カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン、クロシン等から選ばれる顔料が挙げられる。
【0019】
これらの粉体は単独で処理しても、混合物を形成し、それらをまとめて処理しても構わない。また、混合物の色を肌色等に調整したものを処理することも可能である。さらに、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛等の紫外線散乱成分を使用することで、紫外線防御機能を有する処理粉体とすることも可能である。
【0020】
本発明に用いられるショ糖脂肪酸エステルとしては、ショ糖の8個の水酸基のうち1分子以上の脂肪酸(典型的にはC〜C22の脂肪酸)が付加したエステルが用いられ得る。また、上記の範囲に含まれる限り、1種単独又は2種類以上を組み合わせて使用することも可能である。被覆処理に用いるショ糖脂肪酸エステルのHLBの調整により、高親油性にして撥水性を付与したり、O/W及びW/O等の様々なエマルジョン系に適合する性質を付与することができる。具体的には、処理粉体表面を高親油性にして撥水性を持たせい場合にはHLBが2以下のショ糖脂肪酸エステルを用いるのが好ましい。また、処理粉体表面をO/Wエマルジョン系に適合する性質を持たせたい場合にはHLBが1〜10のショ糖脂肪酸エステルを用いるのが好ましく、W/Oエマルジョン系に適合する性質を持たせたい場合にはHLBが10以上のショ糖脂肪酸エステルを用いるのが好ましい。
【0021】
ショ糖脂肪酸エステルを粉体表面に被覆処理する方法としては、次のような方法がある。
まず、粉体表面に被覆されるべき所定量のショ糖脂肪酸エステルを濃度が約1〜20質量%となるように適当な溶剤中に添加し、60〜70℃で加熱溶解する。この処理剤溶液を、あらかじめ粉体を撹拌しているミキサー(ヘンシェルミキサー等)中に徐々に添加した後、処理剤溶液が均一になじむまで充分に撹拌する。次に、撹拌しながらミキサー槽内を必要に応じて加熱減圧して溶剤を除去して熱処理を行った後、粉砕(ハンマーミル等)して目的とするショ糖脂肪酸エステル被覆粉体を得る。ここで用いられる溶剤としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のショ糖脂肪酸エステルを溶解しうる極性有機溶媒が好ましい。
【0022】
ここで、ショ糖脂肪酸エステルの粉体への表面処理量は、その表面処理される粉体の粒子径にもよるが、5質量%以下が好ましく、より好ましくは、0.1〜4質量%である。ショ糖脂肪酸エステルの被覆量が0.1質量%未満では、ショ糖脂肪酸エステルに起因する、感触、肌への付着性・親和性の改善効果が充分に得られない場合があり、また、5質量%を超えるとヨレやベタツキ感等の好ましくない使用感を付与することとなるため好ましくない。
【0023】
本発明において、ショ糖脂肪酸エステルにて被覆される粉体には、さらに各種の表面処理、例えば従来公知の表面処理が行われても構わない。この表面処理の例としては、フッ素化合物処理(パーフルオロアルキルリン酸エステル処理、パーフルオロアルキルシラン処理、パーフルオロポリエーテル処理、フルオロシリコーン処理、フッ素化シリコーン樹脂処理等)、シリコーン処理(メチルハイドロジェンポリシロキサン処理、ジメチルポリシロキサン処理、気相法テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン処理等)、シリコーン樹脂処理(トリメチルシロキシケイ酸処理等)、ペンダント処理(気相法シリコーン処理後にアルキル鎖などを付加する方法)、シランカップリング剤処理、チタンカップリング剤処理、アルミニウムカップリング剤処理、シラン処理(アルキル化シランやアルキル化シラザン処理等)、油剤処理、N−アシル化リジン処理、ポリアクリル酸処理、金属石鹸処理(ステアリン酸塩やミリスチン酸塩処理等)、アクリル樹脂処理、天然植物由来界面活性剤処理、ホホバ油処理、水添ホホバ油処理、ホホバエステル処理、無機化合物処理、プラズマ処理、メカノケミカル処理等が挙げられる。また、これらの処理を複数組み合わせて用いることも可能である。
【0024】
また、本発明の化粧料では、通常、化粧料に用いられる油剤、界面活性剤、顔料、防腐剤、香料、保湿剤、塩類、溶媒、樹脂、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤、生理活性成分等の各種成分を、本発明の目的を損なわない範囲で使用することができる。
【0025】
前記油剤の例としては、アボカド油、アマニ油、アーモンド油、イボタロウ、エノ油、オリーブ油、カカオ脂、カポックロウ、カヤ油、カルナウバロウ、肝油、キャンデリラロウ、牛脂、牛脚脂、牛骨脂、硬化牛脂、キョウニン油、鯨ロウ、硬化油、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サトウキビロウ、サザンカ油、サフラワー油、シアバター、シナギリ油、シナモン油、ジョジョバロウ、セラックロウ、タートル油、大豆油、茶実油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、豚脂、ナタネ油、日本キリ油、ヌカロウ、胚芽油、馬脂、パーシック油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、硬化ヒマシ油、ヒマシ油脂肪酸メチルエステル、ヒマワリ油、ブドウ油、ベイベリーロウ、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミツロウ、ミンク油、綿実油、綿ロウ、モクロウ、モクロウ核油、モンタンロウ、ヤシ油、硬化ヤシ油、トリヤシ油脂肪酸グリセライド、羊脂、落花生油、ラノリン、液状ラノリン、還元ラノリン、ラノリンアルコール、硬質ラノリン、酢酸ラノリン、ラノリン脂肪酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、ラノリン脂肪酸ポリエチレングリコール、POE水素添加ラノリンアルコールエーテル、卵黄油等;炭化水素油として、オゾケライト、スクワラン、スクワレン、セレシン、パラフィン、パラフィンワックス、流動パラフィン、プリスタン、ポリイソブチレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等;高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等;高級アルコールとしては、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、オクチルドデカノール、セトステアリルアルコール、2−デシルテトラデシノール、コレステロール、フィトステロール、POEコレステロールエーテル、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、モノオレイルグリセリルエーテル(セラキルアルコール)等;エステル油としては、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2−ヘキシルデシル、アジピン酸ジ−2−ヘプチルウンデシル、モノイソステアリン酸N−アルキルグリコール、イソステアリン酸イソセチル、イソノナン酸イソノニル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、2−エチルヘキサン酸セチル、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オクチルドデシルガムエステル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、クエン酸トリエチル、コハク酸2−エチルヘキシル、酢酸アミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、セバシン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、乳酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸2−エチルヘキシル、パルミチン酸2−ヘキシルデシル、パルミチン酸2−ヘプチルウンデシル、12−ヒドロキシステアリル酸コレステリル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸2−ヘキシルデシル、ミリスチン酸ミリスチル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸ヘキシル、N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシルエステル、リンゴ酸ジイソステアリル等;グリセライド油としては、アセトグリセリル、トリイソオクタン酸グリセリル、トリイソステアリン酸グリセリル、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリン、トリイソパルミチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリル、トリミリスチン酸グリセリル、ミリスチン酸イソステアリン酸ジグリセリル;シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、ビフェニルシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、メチルトリメチコン、アルキル変性シリコーン、フルオロシリコーン等が挙げられる。
【0026】
本発明の化粧料に配合する粉体としては、上記と同様の粉体を使用することができる。また、この粉体には、前述の各種表面処理がなされていることが好ましい。
本発明の化粧料としては、スキンケア製品、頭髪製品、制汗剤製品、メイクアップ製品、紫外線防御製品、香料溶剤等が好ましい用途として挙げられる。例えば、ファンデーション、白粉、アイシャドウ、アイライナー、アイブロー、チーク、ネイルカラー、リップクリーム、口紅、マスカラ等のメイクアップ化粧料、乳液、クリーム、ローション、サンスクリーン剤、サンタン剤、パック剤、クレンジング料、洗顔料などの基礎化粧料、ヘアカラー、セット剤、ボディーパウダー、デオドラント、脱毛剤、石鹸、入浴剤、ハンドソープ、香水等が挙げられる。また、製品の形態についても特に限定は無く、液状、乳液状、クリーム状、固形状、ペースト状、ゲル状、粉末状、多層状、ムース状、スプレー状等であって良い。
【実施例】
【0027】
次に、本発明によるショ糖脂肪酸エステル処理粉体及び化粧料の実施例について説明する。
【0028】
(製造実施例1)
酸化チタン1kgに対して、HLBが1のポリステアリン酸スクロース2質量%をイソプロピルアルコール250g中に加え、70℃で加熱溶解させて処理剤溶液を作製した。次に、この処理剤溶液を、酸化チタン1kgが撹拌されているヘンシェルミキサー中に徐々に添加し、10分間以上撹拌した後、ヘンシェルミキサー槽内を加熱減圧して溶剤を除去した。溶媒を除去した処理粉体を80℃で加熱処理して溶剤を完全除去した後、アトマイザーで粉砕してポリステアリン酸スクロースで表面処理された粉体を得た。また、酸化チタンと同様にして、表面処理されたセリサイト、タルク、マイカ、赤酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛を得た。
【0029】
(製造実施例2)
酸化チタン1kgに対して、HLBが7のジステアリン酸スクロース2質量%をイソプロピルアルコール250g中に加え、70℃で加熱溶解させて処理剤溶液を作製した。次に、この処理剤溶液を、酸化チタン1kgが撹拌されているヘンシェルミキサー中に徐々に添加し、10分間以上撹拌した後、ヘンシェルミキサー槽内を加熱減圧して溶剤を除去した。溶媒を除去した処理粉体を80℃で加熱処理して溶剤を完全除去した後、アトマイザーで粉砕してジステアリン酸スクロースで表面処理された粉体を得た。また、酸化チタンと同様にして、表面処理されたセリサイト、タルク、マイカ、赤酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛を得た。
【0030】
(製造実施例3)
酸化チタン1kgに対して、HLBが16のモノステアリン酸スクロース2質量%をイソプロピルアルコール250g中に加え、70℃で加熱溶解させて処理剤溶液を作製した。次に、この処理剤溶液を、酸化チタン1kgが撹拌されているヘンシェルミキサー中に徐々に添加し、10分間以上撹拌した後、ヘンシェルミキサー槽内を加熱減圧して溶剤を除去した。溶媒を除去した処理粉体を80℃で加熱処理して溶剤を完全除去した後、アトマイザーで粉砕してモノステアリン酸スクロースで表面処理された粉体を得た。また、酸化チタンと同様にして、表面処理されたセリサイト、タルク、マイカ、赤酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛を得た。
【0031】
(製造比較例1)
製造実施例1,2,3で使用した、未処理の酸化チタン、セリサイト、タルク、マイカ、赤酸化鉄、黄酸化鉄、黒酸化鉄、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛を製造比較例1とした。
【0032】
(撥水性の評価)
上記製造実施例1により得られたポリステアリン酸スクロース処理粉体、製造実施例2により得られたジステアリン酸スクロース処理粉体および製造実施例3により得られたモノステアリン酸スクロース処理粉体、更には製造比較例1の未処理粉体について、水液滴の接触角を測定して撥水性の評価を行った。その評価結果が表1に示されている。
【0033】
【表1】

【0034】
表1の結果からわかるように、製造実施例1のHLBが1のポリステアリン酸スクロースで処理した粉体には、優れた撥水性が付与されていることが明らかである。製造実施例2のHLBが7のジステアリン酸スクロースで処理した粉体には親油性ではあるが撥水性は弱く、製造実施例3のHLBが16のモノステアリン酸スクロースで処理した粉体には撥水性がほとんど無かった。また、製造比較例1のものも、撥水性が無かった。
【0035】
(実施例1)
次に、製造実施例1により得られたポリステアリン酸スクロース処理粉体を用いて、以下の配合にてパウダーファンデーションを調製した。なお、製造方法は下記の通りである。
[成分A]
該処理セリサイト 30.0
該処理タルク 22.0
該処理マイカ 18.0
該処理酸化チタン 8.8
該処理黄酸化鉄 3.7
該処理赤酸化鉄 1.2
該処理黒酸化鉄 0.7
ナイロンパウダー 3.6
[成分B]
ジメチルポリシロキサン 3.0
流動パラフィン 3.0
イソステアリン酸硬化ヒマシ油 4.0
オクチルドデカノール 2.0
合計 100.0
製造方法:
成分Aをミキサーにて混合した。次いで、均一に混合・溶解した成分Bを成分Aに加えてさらに混合した。得られた粉末をアトマイザーにて粉砕し、メッシュを通した後、金型を用いて金皿に打型して製品を得た。
【0036】
(比較例1)
製造比較例1の未処理粉体を用いて、実施例1の配合にてパウダーファンデーションを調製した。
【0037】
(官能評価)
上記実施例1及び比較例1で得られたパウダーファンデーションを評価者に使用して貰い、1時間経過した後の、感触の滑らかさ、肌へのなじみ、化粧膜の均一感、化粧持ち改善効果を評価してもらった。その評価結果が表2に示されている。ここで、各項目についての評価基準は次のとおりである。
◎:良好、○:やや良好、△:やや不良、×:不良
【0038】
【表2】

【0039】
表2の結果から明らかなように、本発明によるポリステアリン酸スクロース処理粉体を用いたパウダーファンデーション(実施例1)は、比較例1に比べて、化粧持ちが良く、肌に均一になじむ使用感の優れた物になることがわかった。これに対して、比較例1のものは、いずれの項目においても評価が劣っていた。
【0040】
(実施例2)
次に、製造実施例2により得られたジステアリン酸スクロース処理粉体を用いて、以下の配合にてW/Oリキッドファンデーションを調製した。なお、製造方法は下記の通りである。
[成分A]
ジメチコンコポリオール/デカメチルシクロペンタ 15.0
シロキサン溶液(注1)
合成ワックス 1.0
ベヘン酸アラキル 0.5
トリヒドロキシステアリン 0.4
ラウレス−7 0.5
フェニルトリメチコン 5.0
イソノナン酸イソトリデシル 5.5
プロピルパラベン 0.1
シリコーンゲル(注2) 3.2
[成分B]
該処理酸化チタン 10.0
該処理タルク 4.0
該処理黄酸化鉄 0.8
該処理赤酸化鉄 0.3
該処理黒酸化鉄 0.1
[成分C]
精製水 残部
プロピレングリコール 8.0
塩化ナトリウム 2.0
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.3
フェノキシエタノール 0.2
エデト酸二ナトリウム 0.1
合計 100.0
(注1)BY22−008M(東レ・ダウコーニング社製)
(注2)KSG−16(信越化学工業社製)
製造方法:
成分Bをミキサーにて混合した。一方、成分Aを80℃に加温し、均一になるように混合した。ここに成分Bを撹拌下に徐々に添加し、50℃まで徐冷した。次いで、成分Cを80℃に加温し、均一に溶解させた後、50℃にまで徐冷した。成分Aに成分Cを撹拌下に加え、さらに良く撹拌し、室温まで冷却して得られた溶液を容器に充填し製品を得た。
【0041】
(比較例2)
製造比較例1の未処理粉体を用いて、実施例2の配合にてW/Oリキッドファンデーションを調製した。
【0042】
(実施例3)
次に、製造実施例3により得られたモノステアリン酸スクロース処理粉体を用いて、以下の配合にてO/Wリキッドファンデーションを調製した。なお、製造方法は下記の通りである。
[成分A]
ジメチコンコポリオール/デカメチルシクロペンタ 15.0
シロキサン溶液(注1)
合成ワックス 1.0
ベヘン酸アラキル 0.5
トリヒドロキシステアリン 0.4
ラウレス−7 0.5
フェニルトリメチコン 5.0
イソノナン酸イソトリデシル 5.5
プロピルパラベン 0.1
シリコーンゲル(注2) 3.2
[成分B]
該処理酸化チタン 10.0
該処理タルク 4.0
該処理黄酸化鉄 0.8
該処理赤酸化鉄 0.3
該処理黒酸化鉄 0.1
[成分C]
精製水 残部
プロピレングリコール 8.0
塩化ナトリウム 2.0
デヒドロ酢酸ナトリウム 0.3
フェノキシエタノール 0.2
エデト酸二ナトリウム 0.1
合計 100.0
(注1)BY22−008M(東レ・ダウコーニング社製)
(注2)KSG−16(信越化学工業社製)
製造方法:
成分Bをミキサーにて混合した。一方、成分Cを80℃に加温し、均一になるように混合した。ここに成分Bを撹拌下に徐々に添加し、50℃まで徐冷した。次いで、成分Aを80℃に加温し、均一に溶解させた後、50℃にまで徐冷した。成分Cに成分Aを撹拌下に加え、さらに良く撹拌し、室温まで冷却して得られた溶液を容器に充填し製品を得た。
【0043】
(比較例3)
製造比較例1の未処理粉体を用いて、実施例3の配合にてO/Wリキッドファンデーションを調製した。
【0044】
上記実施例2,3及び比較例2,3で得られたリキッドファンデーションの分散性及び乳化状態の安定性を評価し、また、評価者に使用して貰って1時間経過した後の、使用感を評価してもらった。その評価結果が表3に示されている。ここで、各項目についての評価基準は次のとおりである。
◎:良好、○:やや良好、△:やや不良、×:不良
【0045】
【表3】

【0046】
表3の結果から明らかなように、本発明によるジステアリン酸スクロース処理粉体を用いたW/Oリキッドファンデーション(実施例2)は、オイルとの分散性が良く、乳化状態が安定であり、更には肌への付着性や伸びなどの使用感にも優れた物になることが分かった。また、モノステアリン酸スクロース処理粉体を用いたO/Wリキッドファンデーション(実施例3)は、水溶液への分散性が良く、乳化状態が安定であり、更には肌への付着性や伸びなどの使用感にも優れた物になることが分かった。これに対して、比較例2,3のものは、いずれの項目においても評価が悪かった。
【0047】
(実施例4)
次に、製造実施例2により得られたジステアリン酸スクロース処理粉体を用いて、以下の配合にてW/Oサンスクリーンを調製した。なお、製造方法は下記の通りである。
[成分A]
イソノナン酸トリデシル 3.0
フェニルトリメチコン 1.0
ジメチコンコポリオール/デカメチルシクロペンタ 1.0
シロキサン溶液
シクロペンタシロキサン 30.0
PEG−10ジメチコン 5.0
[成分B]
該処理微粒子酸化チタン 7.0
該処理微粒子酸化亜鉛 15.0
[成分C]
精製水 残部
1,3−ブチレングリコール 6.0
塩化ナトリウム 1.0
フェノキシエタノール 0.2
エデト酸二ナトリウム 1.0
合計 100.0
製造方法:
成分Bをミキサーにて混合した。一方、成分Aを80℃に加温し、均一になるように混合した。ここに成分Bを撹拌下に徐々に添加し、40℃まで徐冷した。次いで、成分Cを80℃に加温し、均一に溶解させた後、40℃にまで徐冷した。成分Aに成分Cを撹拌下に加え、さらに良く撹拌し、室温まで冷却して得られた溶液を容器に充填し製品を得た。
【0048】
(比較例4)
製造比較例1の未処理粉体を用いて、実施例4の配合にてW/Oサンスクリーンを調製した。
【0049】
(実施例5)
次に、製造実施例3により得られたモノステアリン酸スクロース処理粉体を用いて、以下の配合にてO/Wサンスクリーンを調製した。なお、製造方法は下記の通りである。
[成分A]
イソノナン酸トリデシル 3.0
フェニルトリメチコン 1.0
ジメチコンコポリオール/デカメチルシクロペンタ 1.0
シロキサン溶液
シクロペンタシロキサン 30.0
PEG−10ジメチコン 5.0
[成分B]
該処理微粒子酸化チタン 7.0
該処理微粒子酸化亜鉛 15.0
[成分C]
精製水 残部
1,3−ブチレングリコール 6.0
塩化ナトリウム 1.0
フェノキシエタノール 0.2
エデト酸二ナトリウム 1.0
合計 100.0
製造方法:
成分Bをミキサーにて混合した。一方、成分Cを80℃に加温し、均一になるように混合した。ここに成分Bを撹拌下に徐々に添加し、40℃まで徐冷した。次いで、成分Aを80℃に加温し、均一に溶解させた後、40℃にまで徐冷した。成分Cに成分Aを撹拌下に加え、さらに良く撹拌し、室温まで冷却して得られた溶液を容器に充填し製品を得た。
【0050】
(比較例5)
製造比較例1の未処理粉体を用いて、実施例5の配合にてO/Wサンスクリーンを調製した。
【0051】
上記実施例4,5及び比較例4,5で得られたサンスクリーンの分散性及び乳化状態の安定性を評価し、また、評価者に使用して貰って1時間経過した後の、使用感を評価してもらった。その評価結果が表4に示されている。ここで、各項目についての評価基準は次のとおりである。
◎:良好、○:やや良好、△:やや不良、×:不良
【0052】
【表4】

【0053】
表4の結果から明らかなように、本発明によるジステアリン酸スクロース処理粉体を用いたW/Oサンスクリーン(実施例4)は、オイルとの分散性が良く、乳化状態が安定であり、更には肌への付着性や伸びなどの使用感にも優れた物になることが分かった。また、モノステアリン酸スクロース処理粉体を用いたO/Wスクリーン(実施例5)は、水溶液への分散性が良く、乳化状態が安定であり、更には肌への付着性や伸びなどの使用感にも優れた物になることが分かった。これに対して、比較例4,5のものは、いずれの項目においても評価が悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のショ糖脂肪酸エステル処理粉体は、メイクアップ化粧料またはサンスクリーン化粧料などに配合することにより、化粧持ちが良く、肌への付着性や伸びなど感触に優れた化粧料を得ることができる。また、被覆処理に使用するショ糖脂肪酸エステルのHLBを調整することで、O/W及びW/O等の様々なエマルジョン系に応用可能な処理粉体を得ることができ、これらをリキッドタイプ化粧料に配合することにより、様々なエマルジョン系において乳化安定性の良いリキッドタイプ化粧料を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体表面にショ糖脂肪酸エステルを被覆処理してなることを特徴とするショ糖脂肪酸エステル処理粉体。
【請求項2】
請求項1に記載のショ糖脂肪酸エステル処理粉体を配合してなることを特徴とする化粧料。

【公開番号】特開2011−231026(P2011−231026A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−100672(P2010−100672)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(391015373)大東化成工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】