説明

シランカップリング剤の製造方法

【課題】副生成物の生成を抑えつつ、高収率で、ゴム組成物のヒステリシスロスを低下させると共に、耐摩耗性を向上させることが可能なシランカップリング剤を得ることができる製造方法を提供する。
【解決手段】ハロアルキル基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物をアルカリ金属硫化物と反応させて、スルフィド基又はポリスルフィド基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物を得る工程を含むことを特徴とするシランカップリング剤の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シランカップリング剤の製造方法に関し、副生成物の生成を抑えつつ、高収率で、ゴム組成物のヒステリシスロスを低下させると共に、耐摩耗性を向上させるシランカップリング剤を得ることが可能な製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、車両の安全性の観点から、タイヤの湿潤路面における安全性を向上させることが求められている。また、環境問題への関心の高まりに伴う二酸化炭素の排出量の削減の観点から、車両を更に低燃費化することも求められている。
【0003】
これらの要求に対し、従来、タイヤの湿潤路面における性能の向上と転がり抵抗の低減とを両立する技術として、タイヤのトレッドに用いるゴム組成物の充填剤としてシリカ等の無機充填剤を用いる手法が有効であることが知られている。しかしながら、シリカ等の無機充填剤を配合したゴム組成物は、タイヤの転がり抵抗を低減し、湿潤路面における制動性を向上させ、操縦安定性を向上させるものの、未加硫粘度が高く、多段練り等を要するため、作業性に問題がある。そのため、シリカ等の無機充填剤を配合したゴム組成物においては、破壊強力及び耐摩耗性が大幅に低下し、加硫遅延や充填剤の分散不良等の問題を生じる。そこで、トレッド用ゴム組成物にシリカ等の無機充填剤を配合した場合、ゴム組成物の未加硫粘度を低下させ、モジュラスや耐摩耗性を確保し、また、ヒステリシスロスを更に低下させるためには、シランカップリング剤を添加することが必須となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第3,842,111号明細書
【特許文献2】米国特許第3,873,489号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、シランカップリング剤は高価であるため、シランカップリング剤の配合によって、配合コストが上昇してしまう。また、分散改良剤の添加によっても、ゴム組成物の未加硫粘度が低下し、作業性が向上するが、耐摩耗性が低下してしまう。
【0006】
そこで、本発明者らが検討したところ、分子内に、1個以上のケイ素−酸素結合(Si−O)と1〜10個の硫黄原子(S)とを有する有機ケイ素化合物であって、更に含窒素官能基が導入された有機ケイ素化合物は、シリカ等の無機充填剤との反応速度が高いため、該有機ケイ素化合物を無機充填剤と共にゴム成分に配合することで、カップリング反応の効率が向上して、ゴム組成物のヒステリシスロスを大幅に低下させつつ、耐摩耗性を大幅に向上させることが分かった。
【0007】
上記有機ケイ素化合物は、例えば、下記式(A):
【化1】

[式中、xは1〜10であり、R'1、R'2及びR'3が−M−Cl2l+1(ここで、Mは−O−又は−CH2−であり、lは0〜20である)で表され、但し、R'1、R'2及びR'3中のMの一つ以上が−O−である]で表されるシラン化合物に対し、アミノアルコール類を加え、必要に応じて、触媒としてp-トルエンスルホン酸、塩酸等の酸や、チタンテトラn-ブトキシド等のチタンアルコキシドを添加し、加熱して、アルコール交換反応によって合成できる。
【0008】
しかしながら、上記式(A)で表されるシラン化合物は、スルフィド基又はポリスルフィド基がアミノアルコール類と様々な副反応を引き起こし、様々な副生成物が生じる問題がある。そして、これらの副生成物(不純物)の分離は、通常困難であった。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記反応経路と異なる経路により、副生成物の生成を抑えつつ、高収率で、ゴム組成物のヒステリシスロスを低下させると共に、耐摩耗性を向上させるシランカップリング剤を得ることが可能な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、分子内に、1個以上のケイ素−酸素結合(Si−O)とハロアルキル基とを有する有機ケイ素化合物(a)と、アミノアルコール類(b)とのアルコール交換反応によって、アミノアルコキシル基を導入した化合物(c)を合成し、次いで、該化合物(c)をアルカリ金属硫化物(例えば、硫化ナトリウム(d))と反応させることにより、不純物の少ない有機ケイ素化合物(e)が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った(以下に示すスキームを参照されたい)。
【化2】

(なお、スキーム中、xは1〜10である。)
【0011】
即ち、本発明のシランカップリング剤の製造方法は、ハロアルキル基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物をアルカリ金属硫化物と反応させて、スルフィド基又はポリスルフィド基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物を得る工程を含むことを特徴とする。
【0012】
なお、本発明において、ハロアルキル基とは、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン元素が一つ又は二つ以上置換したアルキル基であり、アミノアルコキシル基とは、アミノ基、イミノ基、置換アミノ基、置換イミノ基等の含窒素官能基を含むアルコキシル基である。
【0013】
本発明のシランカップリング剤の製造方法は、前記スルフィド基又はポリスルフィド基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物が、下記一般式(I):
【化3】

[式(I)中のR1、R2及びR3は、少なくとも一つが下記一般式(II)又は式(III):
【化4】

(式中、Mは−O−又は−CH2−で、X及びYはそれぞれ独立して−O−、−NR8−又は−CH2−で、R6は−OR8、−NR89又は−R8で、R7は−NR89、−NR8−NR89又は−N=NR8で、但し、R8は−Cn2n+1であり、R9は−Cq2q+1であり、l、m、n及びqはそれぞれ独立して0〜20である)で表され、その他が−M−Cr2r+1(ここで、Mは上記と同義であり、rは0〜20である)又は−(M−Cl2l)ys2s+1(ここで、M及びlは上記と同義であり、y及びsはそれぞれ独立して1〜20である)で表され、但し、R1、R2及びR3の一つ以上はMが−O−であり、
4は下記一般式(IV)、式(V)又は式(i):
【化5】

(式中、M、X、Y、R6、l及びmは上記と同義であり、R10は−NR8−、−NR8−NR8−又は−N=N−で、但し、R8は上記と同義である)で表され、
xは1〜10である]で表されることが好ましい。
【0014】
本発明のシランカップリング剤の製造方法は、前記スルフィド基又はポリスルフィド基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物が、下記一般式(VI):
【化6】

[式(VI)中のWは−NR8−、−O−又は−CR815−(ここで、R15は−R9又は−Cm2m−R7であり、但し、R7は−NR89、−NR8−NR89又は−N=NR8であり、R8は−Cn2n+1で、R9は−Cq2q+1で、m、n及びqはそれぞれ独立して0〜20である)で表され、
12及びR13はそれぞれ独立して−M−Cl2l−(ここで、Mは−O−又は−CH2−で、lは0〜20である)で表され、
14は−M−Cr2r+1又は−M−Cr2r−R7(ここで、M及びR7は上記と同義であり、rは0〜20である)或いは−(M−Cl2l)ys2s+1(ここで、M及びlは上記と同義であり、y及びsはそれぞれ独立して1〜20である)で表され、但し、R12、R13及びR14の一つ以上はMが−O−であり、
4は下記一般式(VII)、式(VIII)又は式(ii):
【化7】

(式中、M、l及びmは上記と同義であり、X及びYはそれぞれ独立して−O−、−NR8−又は−CH2−で、R6は−OR8、−NR89又は−R8で、R10は−NR8−、−NR8−NR8−又は−N=N−であり、但し、R8及びR9は上記と同義である)で表され、
xは1〜10である]で表されることが好ましい。
【0015】
本発明のシランカップリング剤の製造方法は、前記スルフィド基又はポリスルフィド基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物が、下記式(IX):
【化8】

[式(IX)中のWは−NR8−、−O−又は−CR815−(ここで、R15は−R9又は−Cm2m−R7であり、但し、R7は−NR89、−NR8−NR89又は−N=NR8であり、R8は−Cn2n+1で、R9は−Cq2q+1で、m、n及びqはそれぞれ独立して0〜20である)で表され、
12及びR13はそれぞれ独立して−M−Cl2l−(ここで、Mは−O−又は−CH2−で、lは0〜20である)で表され、但し、R12及びR13の一つ以上はMが−O−であり、
4は下記一般式(X)、式(XI)又は式(iii):
【化9】

(式中、M、l及びmは上記と同義であり、X及びYはそれぞれ独立して−O−、−NR8−又は−CH2−で、R6は−OR8、−NR89又は−R8で、R10は−NR8−、−NR8−NR8−又は−N=N−であり、但し、R8及びR9は上記と同義である)で表され、但し、四つのR4は同一でも異なっていてもよく、
xは1〜10である]で表される構造を有することが好ましい。
【0016】
また、本発明のシランカップリング剤の製造方法は、前記スルフィド基又はポリスルフィド基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物が、上記式(VI)で表される化合物と上記式(IX)で表される構造を有する化合物との混合物であることも好ましい。
【0017】
本発明のシランカップリング剤の製造方法において、前記スルフィド基又はポリスルフィド基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物としては、ビス[(モノジメチルアミノエトキシ)ジエトキシシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジジメチルアミノエトキシ)モノエトキシシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[トリジメチルアミノエトキシシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(モノジエチルアミノエトキシ)ジエトキシシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジジエチルアミノエトキシ)モノエトキシシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[トリジエチルアミノエトキシシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジメチルアミノエトキシ)エトキシメチルシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジメチルアミノエトキシ)ジメチルシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジジメチルアミノエトキシ)モノメチルシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジエチルアミノエトキシ)エトキシメチルシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジエチルアミノエトキシ)ジメチルシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジジエチルアミノエトキシ)モノメチルシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-プロピルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-プロピルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[(モノジメチルアミノエトキシ)ジエトキシシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジジメチルアミノエトキシ)モノエトキシシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジジメチルアミノエトキシ)モノエトキシシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[トリジメチルアミノエトキシシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(モノジエチルアミノエトキシ)ジエトキシシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジジエチルアミノエトキシ)モノエトキシシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[トリジエチルアミノエトキシシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジメチルアミノエトキシ)エトキシメチルシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジメチルアミノエトキシ)ジメチルシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジジメチルアミノエトキシ)モノメチルシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジエチルアミノエトキシ)エトキシメチルシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジエチルアミノエトキシ)ジメチルシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジジエチルアミノエトキシ)モノメチルシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-プロピルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-プロピルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィド、及びビス[3-(1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィドが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ハロアルキル基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物をアルカリ金属硫化物と反応させることにより、副生成物の生成を抑えつつ、高収率で、ゴム組成物のヒステリシスロスを低下させると共に、耐摩耗性を向上させることが可能なシランカップリング剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明のシランカップリング剤の製造方法は、ハロアルキル基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物をアルカリ金属硫化物と反応させて、スルフィド基又はポリスルフィド基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物を得る工程を含むことを特徴とする。本発明のシランカップリング剤の製造方法は、スルフィド基又はポリスルフィド基を有するシラン化合物に対してアミノアルコキシル基を導入するのではなく、アミノアルコキシル基を有するシラン化合物に対してスルフィド基又はポリスルフィド基を導入する反応経路を採用するため、副生成物の生成を大幅に抑えることができる。また、本発明の製造方法によって得られるシランカップリング剤は、シリカ等の無機充填剤と共にゴム成分に配合することで、ゴム組成物のヒステリシスロスを大幅に低下させつつ、耐摩耗性を大幅に向上させることができる。なお、本発明において、ハロアルキル基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物は、1個以上のケイ素−酸素結合(Si−O)を有することが好ましい。
【0020】
本発明のシランカップリング剤の製造方法に用いるシラン化合物(以下、原料シラン化合物ともいう)は、ハロアルキル基とアミノアルコキシル基とを有するシラン化合物であり、より具体的には、下記式(XII):
【化10】

[式(XII)中のR1、R2及びR3は、少なくとも一つが上記一般式(II)又は式(III)で表され、その他が−M−Cr2r+1(ここで、Mは−O−又は−CH2−で、rは0〜20である)又は−(M−Cl2l)ys2s+1(ここで、Mは上記と同義であり、lは0〜20であり、y及びsはそれぞれ独立して1〜20である)で表され、但し、R1、R2及びR3の一つ以上はMが−O−であり、R4は上記一般式(IV)、式(V)又は式(i)で表され、Tは、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基又はヨード基である]で表される化合物、下記式(XIII):
【化11】

[式(XIII)中のWは−NR8−、−O−又は−CR815−(ここで、R15は−R9又は−Cm2m−R7であり、但し、R7は−NR89、−NR8−NR89又は−N=NR8であり、R8は−Cn2n+1で、R9は−Cq2q+1で、m、n及びqはそれぞれ独立して0〜20である)で表され、R12及びR13はそれぞれ独立して−M−Cl2l−(ここで、Mは−O−又は−CH2−で、lは0〜20である)で表され、R14は−M−Cr2r+1又は−M−Cr2r−R7(ここで、M及びR7は上記と同義であり、rは0〜20である)或いは−(M−Cl2l)ys2s+1(ここで、M及びlは上記と同義であり、y及びsはそれぞれ独立して1〜20である)で表され、但し、R12、R13及びR14の一つ以上はMが−O−であり、R4は上記一般式(VII)、式(VIII)又は式(ii)で表され、Tは、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基又はヨード基である]で表される化合物、及び下記式(XIV):
【化12】

[式中(XIV)のWは−NR8−、−O−又は−CR815−(ここで、R15は−R9又は−Cm2m−R7であり、但し、R7は−NR89、−NR8−NR89又は−N=NR8であり、R8は−Cn2n+1で、R9は−Cq2q+1で、m、n及びqはそれぞれ独立して0〜20である)で表され、R12及びR13はそれぞれ独立して−M−Cl2l−(ここで、Mは−O−又は−CH2−で、lは0〜20である)で表され、R14は−M−Cr2r+1又は−M−Cr2r−R7(ここで、M及びR7は上記と同義であり、rは0〜20である)或いは−(M−Cl2l)ys2s+1(ここで、M及びlは上記と同義であり、y及びsはそれぞれ独立して1〜20である)で表され、但し、R12、R13及びR14の一つ以上はMが−O−であり、R4は上記一般式(VII)、式(VIII)又は式(ii)で表され、zは1〜10であり、Tは、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基又はヨード基である]で表される化合物が好ましい。これら原料シラン化合物は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
<<式(XII)の化合物>>
上記式(XII)において、Tはフルオロ基、クロロ基、ブロモ基又はヨード基であり、クロロ基、ブロモ基又はヨード基であることが好ましい。また、R1、R2及びR3は、少なくとも一つが上記一般式(II)又は式(III)で表され、その他が−M−Cr2r+1(ここで、Mは−O−又は−CH2−であり、rは0〜20であり、0〜10の範囲が好ましい)又は−(M−Cl2l)ys2s+1(ここで、Mは上記と同義であり、lは0〜20であり、0〜10の範囲が好ましく、y及びsはそれぞれ独立して1〜20である)で表される。但し、R1、R2及びR3の一つ以上はMが−O−である。なお、−Cr2r+1は、rが0〜20であるため、水素又は炭素数1〜20のアルキル基である。また、−Cs2s+1は、sが1〜20であるため、炭素数1〜20のアルキル基である。ここで、炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられ、該アルキル基は、直鎖状でも、分岐状でもよい。また、−Cl2l−は、lが0〜20であるため、単結合又は炭素数1〜20のアルキレン基である。ここで、炭素数1〜20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等が挙げられ、該アルキレン基は、直鎖状でも分岐状でもよい。
【0022】
上記式(II)及び(III)において、Mは−O−又は−CH2−であり、lは0〜20であり、0〜10の範囲が好ましい。また、上記式(II)において、mは0〜20であり、0〜10の範囲が好ましい。なお、−Cm2m+1は、mが0〜20であるため、水素又は炭素数1〜20のアルキル基である。ここで、炭素数1〜20のアルキル基については、上述の通りである。また、−Cl2l−については、上述の通りである。
【0023】
上記式(II)において、X及びYは、それぞれ独立して−O−、−NR8−又は−CH2−である。ここで、R8は−Cn2n+1であり、nは0〜20であり、0〜10の範囲が好ましい。なお、−Cn2n+1は、nが0〜20であるため、水素又は炭素数1〜20のアルキル基である。また、R6は、−OR8、−NR89又は−R8である。ここで、R8は−Cn2n+1であり、R9は−Cq2q+1であり、n及びqはそれぞれ独立して0〜20であり、0〜10の範囲が好ましい。なお、−Cn2n+1については、上述の通りであり、−Cq2q+1は、qが0〜20であるため、水素又は炭素数1〜20のアルキル基である。また、炭素数1〜20のアルキル基については、上述の通りである。
【0024】
上記式(III)において、R7は、−NR89、−NR8−NR89又は−N=NR8である。ここで、R8は−Cn2n+1であり、R9は−Cq2q+1であり、n及びqはそれぞれ独立して0〜20であり、0〜10の範囲が好ましい。なお、−Cn2n+1及び−Cq2q+1については、上述の通りである。
【0025】
また、上記式(XII)において、R4は、上記一般式(IV)、式(V)又は式(i)で表され、特には−Cl2l−で表されることが好ましく、ここで、lは0〜20であり、0〜10の範囲が好ましい。なお、−Cl2l−は、lが0〜20であるため、単結合又は炭素数1〜20のアルキレン基である。ここで、炭素数1〜20のアルキレン基については、上述の通りである。
【0026】
上記式(IV)、式(V)及び式(i)において、Mは−O−又は−CH2−であり、l及びmはそれぞれ独立して0〜20であり、0〜10の範囲が好ましい。なお、−Cl2l−及び−Cm2m−は、l及びmが0〜20であるため、単結合又は炭素数1〜20のアルキレン基である。ここで、炭素数1〜20のアルキレン基については、上述の通りである。また、上記式(IV)において、X及びYはそれぞれ独立して−O−、−NR8−又は−CH2−であり、R6は−OR8、−NR89又は−R8である。なお、R8及びR9については、上述の通りである。更に、上記式(V)において、R10は、−NR8−、−NR8−NR8−又は−N=N−であり、ここで、R8は−Cn2n+1であり、−Cn2n+1については、上述の通りである。
【0027】
<<式(XIII)の化合物>>
上記式(XIII)において、Tはフルオロ基、クロロ基、ブロモ基又はヨード基であり、クロロ基、ブロモ基又はヨード基であることが好ましい。また、Wは、−NR8−、−O−又は−CR815−で表され、ここで、R15は−R9又は−Cm2m−R7であり、但し、R7は−NR89、−NR8−NR89又は−N=NR8であり、R8は−Cn2n+1で、R9は−Cq2q+1で、m、n及びqはそれぞれ独立して0〜20であり、0〜10の範囲が好ましい。なお、−Cm2m−は、mが0〜20であるため、単結合又は炭素数1〜20のアルキレン基である。ここで、炭素数1〜20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等が挙げられ、該アルキレン基は、直鎖状でも分岐状でもよい。また、−Cn2n+1及び−Cq2q+1は、n及びqが0〜20であるため、水素又は炭素数1〜20のアルキル基である。ここで、炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられ、該アルキル基は、直鎖状でも、分岐状でもよい。
【0028】
上記式(XIII)において、R12及びR13はそれぞれ独立して−M−Cl2l−で表され、R14は−M−Cr2r+1又は−M−Cr2r−R7或いは−(M−Cl2l)ys2s+1で表され、ここで、Mは−O−又は−CH2−であり、R7は−NR89、−NR8−NR89又は−N=NR8であり、R8は−Cn2n+1で、R9は−Cq2q+1で、l、n、q及びrはそれぞれ独立して0〜20であり、0〜10の範囲が好ましく、y及びsはそれぞれ独立して1〜20である。但し、R12、R13及びR14の一つ以上は、Mが−O−である。なお、−Cl2l−は、lが0〜20であるため、単結合又は炭素数1〜20のアルキレン基であり、ここで、炭素数1〜20のアルキレン基については、上述の通りである。また、−Cr2r+1は、rが0〜20であるため、水素又は炭素数1〜20のアルキル基である。更に、−Cs2s+1は、sが1〜20であるため、炭素数1〜20のアルキル基である。ここで、炭素数1〜20のアルキル基については、上述の通りである。なお、−Cn2n+1及び−Cq2q+1については、上述の通りである。
【0029】
また、上記式(XIII)において、R4は上記一般式(VII)、式(VIII)又は式(ii)で表され、特には−Cl2l−で表されることが好ましく、ここで、lは0〜20であり、0〜10の範囲が好ましい。なお、−Cl2l−については、上述の通りである。
【0030】
上記式(VII)、式(VIII)及び式(ii)において、Mは−O−又は−CH2−であり、l及びmはそれぞれ独立して0〜20であり、0〜10の範囲が好ましい。また、上記式(VII)において、X及びYはそれぞれ独立して−O−、−NR8−又は−CH2−であり、R6は−OR8、−NR89又は−R8であり、ここで、R8は−Cn2n+1で、R9は−Cq2q+1である。更に、上記式(VIII)において、R10は、−NR8−、−NR8−NR8−又は−N=N−であり、ここで、R8は−Cn2n+1である。なお、−Cn2n+1及び−Cq2q+1については、上述の通りである。
【0031】
<<式(XIV)の化合物>>
上記式(XIV)において、zは1〜10であり、1〜5の範囲が好ましく、1〜2の範囲が更に好ましい。なお、zが10を超えると、合成が困難になる。また、Tはフルオロ基、クロロ基、ブロモ基又はヨード基であり、クロロ基、ブロモ基又はヨード基であることが好ましい。更に、Wは、−NR8−、−O−又は−CR815−で表され、ここで、R15は−R9又は−Cm2m−R7であり、但し、R7は−NR89、−NR8−NR89又は−N=NR8であり、R8は−Cn2n+1で、R9は−Cq2q+1で、m、n及びqはそれぞれ独立して0〜20であり、0〜10の範囲が好ましい。なお、−Cm2m−は、mが0〜20であるため、単結合又は炭素数1〜20のアルキレン基である。ここで、炭素数1〜20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等が挙げられ、該アルキレン基は、直鎖状でも分岐状でもよい。また、−Cn2n+1及び−Cq2q+1は、n及びqが0〜20であるため、水素又は炭素数1〜20のアルキル基である。ここで、炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられ、該アルキル基は、直鎖状でも、分岐状でもよい。
【0032】
上記式(XIV)において、R12及びR13はそれぞれ独立して−M−Cl2l−で表され、R14は−M−Cr2r+1又は−M−Cr2r−R7或いは−(M−Cl2l)ys2s+1で表され、ここで、Mは−O−又は−CH2−であり、R7は−NR89、−NR8−NR89又は−N=NR8であり、R8は−Cn2n+1で、R9は−Cq2q+1で、l、n、q及びrはそれぞれ独立して0〜20であり、0〜10の範囲が好ましく、y及びsはそれぞれ独立して1〜20である。但し、R12、R13及びR14の一つ以上は、Mが−O−である。なお、−Cl2l−は、lが0〜20であるため、単結合又は炭素数1〜20のアルキレン基であり、ここで、炭素数1〜20のアルキレン基については、上述の通りである。また、−Cr2r+1は、rが0〜20であるため、水素又は炭素数1〜20のアルキル基である。更に、−Cs2s+1は、sが1〜20であるため、炭素数1〜20のアルキル基である。ここで、炭素数1〜20のアルキル基については、上述の通りである。なお、−Cn2n+1及び−Cq2q+1については、上述の通りである。
【0033】
また、上記式(XIV)において、R4は上記一般式(VII)、式(VIII)又は式(ii)で表され、特には−Cl2l−で表されることが好ましく、ここで、lは0〜20であり、0〜10の範囲が好ましい。なお、−Cl2l−については、上述の通りである。
【0034】
上記式(VII)、式(VIII)及び式(ii)において、Mは−O−又は−CH2−であり、l及びmはそれぞれ独立して0〜20であり、0〜10の範囲が好ましい。また、上記式(VII)において、X及びYはそれぞれ独立して−O−、−NR8−又は−CH2−であり、R6は−OR8、−NR89又は−R8であり、ここで、R8は−Cn2n+1で、R9は−Cq2q+1である。更に、上記式(VIII)において、R10は、−NR8−、−NR8−NR8−又は−N=N−であり、ここで、R8は−Cn2n+1である。なお、−Cn2n+1及び−Cq2q+1については、上述の通りである。
【0035】
なお、上記原料シラン化合物は、例えば、上記一般式(XII)で表され、R1、R2及びR3が−M−Cl2l+1又は−(M−Cl2l)ys2s+1で表され、R1、R2及びR3中のMの一つ以上が−O−である化合物に対し、2-(ジメチルアミノ)エタノール、2-(ジエチルアミノ)エタノール、2-(ジメチルアミノ)プロパノール、2-(ジエチルアミノ)プロパノール、N-メチルジエタノールアミン等のアミン化合物を加え、更に触媒としてp-トルエンスルホン酸、塩酸等の酸や、チタンテトラn-ブトキシド等のチタンアルコキシドを添加し、加熱して、R1、R2及びR3の一つ以上を式(II)又は式(III)で表わされる窒素含有基で置換、或いはR1及びR2を−R12−W−R13−で表わされる窒素含有基で置換することで合成できる。ここで、アミン化合物としてN-メチルジエタノールアミン等の二つのヒドロキシ基を有するアミン化合物を使用した場合、上記一般式(XIII)で表されるシラン化合物が得られるが、該シラン化合物は分子間で縮合反応を起こすことがあり、該シラン化合物の縮合物の中には、例えば、上記一般式(XIV)で表されるシラン化合物が含まれる。なお、上記原料シラン化合物が、ハロアルキル基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物(単量体又は1量体)とその縮合物との混合物である場合、シラン化合物、アミン化合物及び触媒の種類、反応温度、反応時間等を適宜選択することで、生成される原料シラン化合物の割合を調整することができる。
【0036】
ここで、上記原料シラン化合物が、ハロアルキル基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物(単量体又は1量体)とその縮合物との混合物である場合、該原料シラン化合物中、単量体の含有率が30〜99質量%で、二量体の含有率が1〜60質量%で、三量体の含有率が50質量%以下で、四量体以上の多量体が40質量%以下であることが好ましい。具体的には、上記原料シラン化合物が、一般式(XIII)で表される化合物と一般式(XIV)で表される化合物との混合物である場合、原料シラン化合物中、一般式(XIII)で表される化合物の含有率が70〜99質量%であり、一般式(XIV)で表される化合物の含有率が1〜30質量%であることが好ましい。また、一般式(XIV)で表される化合物は、式中のzが1である化合物を50〜80質量%、zが2である化合物を1〜50質量%、zが3以上である化合物を10質量%以下含有することが好ましい。
【0037】
上記原料シラン化合物の具体例としては、例えば、3-クロロプロピル(モノジメチルアミノエトキシ)ジエトキシシラン、3-クロロプロピル(ジジメチルアミノエトキシ)モノエトキシシラン、3-クロロプロピルトリジメチルアミノエトキシシラン、3-クロロプロピル(モノジエチルアミノエトキシ)ジエトキシシラン、3-クロロプロピル(ジジエチルアミノエトキシ)モノエトキシシラン、3-クロロプロピルトリジエチルアミノエトキシシラン、3-クロロプロピル(ジメチルアミノエトキシ)エトキシメチルシラン、3-クロロプロピル(ジメチルアミノエトキシ)ジメチルシラン、3-クロロプロピル(ジジメチルアミノエトキシ)モノメチルシラン、3-クロロプロピル(ジエチルアミノエトキシ)エトキシメチルシラン、3-クロロプロピル(ジエチルアミノエトキシ)ジメチルシラン、3-クロロプロピル(ジジエチルアミノエトキシ)モノメチルシラン、3-クロロプロピル(エトキシ)1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-クロロプロピル(エトキシ)1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-クロロプロピル(エトキシ)1,3-ジオキサ-6-プロピルアザ-2-シラシクロオクタン、3-クロロプロピル(エトキシ)1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-クロロプロピル(メチル)1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-クロロプロピル(メチル)1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-クロロプロピル(メチル)1,3-ジオキサ-6-プロピルアザ-2-シラシクロオクタン、3-クロロプロピル(メチル)1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-ブロモプロピル(モノジメチルアミノエトキシ)ジエトキシシラン、3-ブロモプロピル(ジジメチルアミノエトキシ)モノエトキシシラン、3-ブロモプロピルトリジメチルアミノエトキシシラン、3-ブロモプロピル(モノジエチルアミノエトキシ)ジエトキシシラン、3-ブロモプロピル(ジジエチルアミノエトキシ)モノエトキシシラン、3-ブロモプロピルトリジエチルアミノエトキシシラン、3-ブロモプロピル(ジメチルアミノエトキシ)エトキシメチルシラン、3-ブロモプロピル(ジメチルアミノエトキシ)ジメチルシラン、3-ブロモプロピル(ジジメチルアミノエトキシ)モノメチルシラン、3-ブロモプロピル(ジエチルアミノエトキシ)エトキシメチルシラン、3-ブロモプロピル(ジエチルアミノエトキシ)ジメチルシラン、3-ブロモプロピル(ジジエチルアミノエトキシ)モノメチルシラン、3-ブロモプロピル(エトキシ)1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-ブロモプロピル(エトキシ)1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-ブロモプロピル(エトキシ)1,3-ジオキサ-6-プロピルアザ-2-シラシクロオクタン、3-ブロモプロピル(エトキシ)1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-ブロモプロピル(メチル)1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-ブロモプロピル(メチル)1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-ブロモプロピル(メチル)1,3-ジオキサ-6-プロピルアザ-2-シラシクロオクタン、3-ブロモプロピル(メチル)1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-ヨードプロピル(モノジメチルアミノエトキシ)ジエトキシシラン、3-ヨードプロピル(ジジメチルアミノエトキシ)モノエトキシシラン、3-ヨードプロピルトリジメチルアミノエトキシシラン、3-ヨードプロピル(モノジエチルアミノエトキシ)ジエトキシシラン、3-ヨードプロピル(ジジエチルアミノエトキシ)モノエトキシシラン、3-ヨードプロピルトリジエチルアミノエトキシシラン、3-ヨードプロピル(ジメチルアミノエトキシ)エトキシメチルシラン、3-ヨードプロピル(ジメチルアミノエトキシ)ジメチルシラン、3-ヨードプロピル(ジジメチルアミノエトキシ)モノメチルシラン、3-ヨードプロピル(ジエチルアミノエトキシ)エトキシメチルシラン、3-ヨードプロピル(ジエチルアミノエトキシ)ジメチルシラン、3-ヨードプロピル(ジジエチルアミノエトキシ)モノメチルシラン、3-ヨードプロピル(エトキシ)1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-ヨードプロピル(エトキシ)1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-ヨードプロピル(エトキシ)1,3-ジオキサ-6-プロピルアザ-2-シラシクロオクタン、3-ヨードプロピル(エトキシ)1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-ヨードプロピル(メチル)1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-ヨードプロピル(メチル)1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-シラシクロオクタン、3-ヨードプロピル(メチル)1,3-ジオキサ-6-プロピルアザ-2-シラシクロオクタン、3-ヨードプロピル(メチル)1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-シラシクロオクタン等が挙げられる。
【0038】
また、本発明のシランカップリング剤の製造方法は、上記原料シラン化合物(ハロアルキル基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物)に、アルカリ金属硫化物を反応させることで、スルフィド基又はポリスルフィド基とアミノアルコキシル基とを有するシラン化合物を得ることができる。なお、本発明において、スルフィド基又はポリスルフィド基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物は、1個以上のケイ素−酸素結合(Si−O)を有することが好ましい。
【0039】
本発明のシランカップリング剤の製造方法に用いるアルカリ金属硫化物は、硫化物イオンのアルカリ金属塩を意味し、具体的には、下記一般式(XV)で示される。
【化13】

式(XV)において、xは1〜10であり、1〜4の範囲が好ましい。また、Qは、アルカリ金属であり、ナトリウム(Na)、カリウム(K)又はリチウム(Li)が好ましい。
【0040】
また、上記アルカリ金属硫化物の具体例としては、硫化ナトリウム(Na2S)、二硫化ナトリウム(Na22)、四硫化ナトリウム(Na24)、硫化リチウム(Li2S)、二硫化リチウム(Li22)、四硫化リチウム(Li24)、硫化カリウム(K2S)、二硫化カリウム(K22)、四硫化カリウム(K24)等が挙げられる。なお、上記アルカリ金属硫化物は、例えば、キシレン等の有機溶媒中に、硫黄粉末と、水酸化ナトリウム(NaOH)等のアルカリ金属の水酸化物とを加え、加熱し、生成される水を除去することで合成できる。
【0041】
上記原料シラン化合物とアルカリ金属硫化物との反応は、例えば、上記のようにして調製したアルカリ金属硫化物と、原料シラン化合物とを既知の反応条件下で混合することにより行われることができる。
【0042】
上記原料シラン化合物とアルカリ金属硫化物との反応において、上記アルカリ金属硫化物の使用量は、副生成物の生成を抑え、収率を向上させる観点から、原料シラン化合物のハロアルキル基1モル当たり0.75〜1.5モル当量の範囲が好ましく、1.0モル当量であることが特に好ましい。ハロアルキル基1モル当たりのアルカリ金属硫化物の使用量が0.75モル当量未満では、シランカップリング剤の収率が低下し、一方、1.5モル当量を超えると、不純物が生成されるおそれがある。
【0043】
上記原料シラン化合物とアルカリ金属硫化物との反応に用いる溶媒としては、例えば、ヘキサン、オクタン、デカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、クロロホルム、酢酸エチル、1,2-ジクロロエタン、ジブチルエーテル、メシチレン、ジオキサン等を使用することができる。
【0044】
なお、本発明のシランカップリング剤の製造方法においては、上記原料シラン化合物とアルカリ金属硫化物との反応温度が、30〜90℃の範囲が好ましく、その反応時間は、0.5〜6時間の範囲が好ましい。
【0045】
本発明のシランカップリング剤の製造方法により得られるシラン化合物(以下、生成シラン化合物)は、スルフィド基若しくはポリスルフィド基とアミノアルコキシル基とを有するシラン化合物若しくはその縮合物又はそれらの混合物であり、より具体的には、上記式(I)で表される化合物、上記式(VI)で表される化合物、上記式(IX)で表される構造を有する化合物、及び上記式(VI)で表される化合物と上記式(IX)で表される構造を有する化合物との混合物が好ましい。なお、上記式(I)で表される化合物は、上記式(XII)の化合物を上記式(XV)の化合物と反応させることで得られ、また、上記式(VI)で表される化合物は、上記式(XIII)の化合物を上記式(XV)の化合物と反応させることで得られ、更に、上記式(IX)で表される構造を有する化合物は、上記式(XIII)の化合物の縮合物(例えば、上記式(XIV)の化合物)を上記式(XV)の化合物と反応させることで得られる。
【0046】
ここで、上記生成シラン化合物が、スルフィド基又はポリスルフィド基とアミノアルコキシル基とを有するシラン化合物(単量体又は1量体)とその縮合物との混合物である場合、該生成シラン化合物中、単量体の含有率が30〜99質量%で、二量体の含有率が1〜60質量%で、三量体の含有率が50質量%以下で、四量体以上の多量体が40質量%以下であることが好ましい。具体的には、上記生成シラン化合物が、一般式(VI)で表される化合物と一般式(IX)で表される構造を有する化合物との混合物である場合、生成シラン化合物中、一般式(VI)で表される化合物の含有率が70〜99質量%であり、一般式(IX)で表される構造を有する化合物の含有率が1〜30質量%であることが好ましい。
【0047】
<<式(I)の化合物>>
上記式(I)において、xは1〜10であり、1〜4の範囲が好ましい。また、R1、R2、R3及びR4については、上記式(XII)において定義したとおりである。
【0048】
<<式(VI)の化合物>>
上記式(VI)において、xは1〜10であり、1〜4の範囲が好ましい。また、W、R12、R13、R14及びR4については、上記式(XIII)において定義したとおりである。
【0049】
<<式(IX)の構造を有する化合物>>
上記式(IX)において、xは1〜10であり、1〜4の範囲が好ましい。また、Wは、−NR8−、−O−又は−CR815−で表され、ここで、R15は−R9又は−Cm2m−R7であり、但し、R7は−NR89、−NR8−NR89又は−N=NR8であり、R8は−Cn2n+1で、R9は−Cq2q+1で、m、n及びqはそれぞれ独立して0〜20であり、0〜10の範囲が好ましい。なお、−Cm2m−は、mが0〜20であるため、単結合又は炭素数1〜20のアルキレン基である。ここで、炭素数1〜20のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基等が挙げられ、該アルキレン基は、直鎖状でも分岐状でもよい。また、−Cn2n+1及び−Cq2q+1は、n及びqが0〜20であるため、水素又は炭素数1〜20のアルキル基である。ここで、炭素数1〜20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、ステアリル基等が挙げられ、該アルキル基は、直鎖状でも、分岐状でもよい。
【0050】
上記式(IX)において、R12及びR13はそれぞれ独立して−M−Cl2l−で表され、ここで、Mは−O−又は−CH2−であり、lは0〜20であり、0〜10の範囲が好ましい。但し、R12及びR13の一つ以上は、Mが−O−である。なお、−Cl2l−は、lが0〜20であるため、単結合又は炭素数1〜20のアルキレン基であり、ここで、炭素数1〜20のアルキレン基については、上述の通りである。
【0051】
また、上記式(IX)において、R4は上記一般式(X)、式(XI)又は式(iii)で表され、特には−Cl2l−で表されることが好ましく、ここで、lは0〜20であり、0〜10の範囲が好ましい。なお、−Cl2l−については、上述の通りである。また、上記式(IX)には、四つのR4が存在しているが、該R4は同一でも異なっていてもよい。
【0052】
上記式(X)、式(XI)及び式(iii)において、Mは−O−又は−CH2−であり、l及びmはそれぞれ独立して0〜20であり、0〜10の範囲が好ましい。また、上記式(X)において、X及びYはそれぞれ独立して−O−、−NR8−又は−CH2−であり、R6は−OR8、−NR89又は−R8であり、ここで、R8は−Cn2n+1で、R9は−Cq2q+1である。更に、上記式(XI)において、R10は、−NR8−、−NR8−NR8−又は−N=N−であり、ここで、R8は−Cn2n+1である。なお、−Cn2n+1及び−Cq2q+1については、上述の通りである。
【0053】
更に、ケイ素(Si)は四価であるため、上記式(IX)におけるケイ素(Si)は、更に二つ又は三つの結合を形成しており、具体的には、上記R12、R13、R4の他、上記式(VI)に定義されるようなR14等の一価基、又は上記式(VI)に定義されるような−R12−W−R13−等の二価基と結合している。
【0054】
なお、上記式(IX)で表される構造は、原料シラン化合物が縮合物である場合において生成シラン化合物に形成される特徴的な構造を一般化したものであり、例えば、上記一般式(XII)で表され、R1、R2及びR3が−M−Cl2l+1又は−(M−Cl2l)ys2s+1で表され、R1、R2及びR3中のMの一つ以上が−O−である化合物が、N-メチルジエタノールアミン等の二つのヒドロキシ基を有するアミン化合物を介し、分子間で縮合反応を起こした部分に由来している。
【0055】
上記生成シラン化合物の具体例としては、例えば、ビス[(モノジメチルアミノエトキシ)ジエトキシシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジジメチルアミノエトキシ)モノエトキシシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[トリジメチルアミノエトキシシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(モノジエチルアミノエトキシ)ジエトキシシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジジエチルアミノエトキシ)モノエトキシシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[トリジエチルアミノエトキシシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジメチルアミノエトキシ)エトキシメチルシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジメチルアミノエトキシ)ジメチルシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジジメチルアミノエトキシ)モノメチルシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジエチルアミノエトキシ)エトキシメチルシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジエチルアミノエトキシ)ジメチルシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジジエチルアミノエトキシ)モノメチルシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-プロピルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-プロピルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[(モノジメチルアミノエトキシ)ジエトキシシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジジメチルアミノエトキシ)モノエトキシシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジジメチルアミノエトキシ)モノエトキシシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[トリジメチルアミノエトキシシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(モノジエチルアミノエトキシ)ジエトキシシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジジエチルアミノエトキシ)モノエトキシシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[トリジエチルアミノエトキシシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジメチルアミノエトキシ)エトキシメチルシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジメチルアミノエトキシ)ジメチルシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジジメチルアミノエトキシ)モノメチルシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジエチルアミノエトキシ)エトキシメチルシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジエチルアミノエトキシ)ジメチルシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジジエチルアミノエトキシ)モノメチルシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-プロピルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-プロピルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィド、及びビス[3-(1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィド等が挙げられる。
【実施例】
【0056】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0057】
(比較例1)
<ビス[(モノジメチルアミノエトキシ)ジエトキシシリルプロピル]ジスルフィドの合成>
室温で200mLのナスフラスコに、ビス[トリエトキシシリルプロピル]ジスルフィド11.9g、チタンテトラn-ブトキシド0.1g、トルエン100mL、ジメチルアミノエタノール4.5gを投入した。乾燥窒素を流しつつマグネティックスターラーで攪拌しながら、オイルバスにて125℃に加熱して10時間還流した後、混合物を室温まで冷却した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析では、得られた化合物の純度は67%であった。
【0058】
(実施例1)
<ビス[(モノジメチルアミノエトキシ)ジエトキシシリルプロピル]ジスルフィドの合成>
室温で200mLのナスフラスコに、3-クロロプロピルトリエトキシシラン12.0g、チタンテトラn-ブトキシド0.1g、トルエン100mL、ジメチルアミノエタノール4.5gを投入した。乾燥窒素を流しつつマグネティックスターラーで攪拌しながら、オイルバスにて125℃に加熱して10時間還流した後、得られたトルエン溶液を室温まで冷却した。
他方、キシレン50mlを充填した200mlの二口フラスコ中に、粒状の水酸化ナトリウム(NaOH)2.0g及び硫黄粉末1.6gを投入した。その混合物をマグネティックスターラーで攪拌しながら、窒素雰囲気下でオイルバスにて130℃に加熱し、生じた水をディーンスタークにより除去した。得られた反応混合物を室温にて放冷した後、上澄みのキシレンをデカンテーションにより除去した。残った黄色固体を、乾燥窒素下にてエタノール160ml中に吸収させ、これを原料シラン化合物が溶けた上記トルエン溶液と混合した。続いて、60℃にて3時間加熱した後、吸引ろ過により固形分を除去した。濾液を、ロータリーエバポレーター中、110℃及び後調節された真空下にて蒸発させ、褐色の液体14gを得た。HPLCにより、得られた液体の純度を測定したところ、純度は90%であり、比較例1に比べて大幅に向上することが分かった。また、得られた液体を1H−NMRで分析したところ、0.7(t;4H), 1.1(t;12H), 1.8-1.9(m;4H), 2.2(s;12H), 2.5(t;4H), 2.8-3.0(m;4H), 3.9(m;12H)であり、ビス[(モノジメチルアミノエトキシ)ジエトキシシリルプロピル]ジスルフィドであることが分かった。
【0059】
(実施例2)
<ビス[(ジジメチルアミノエトキシ)モノエトキシシリルプロピル]ジスルフィドの合成>
室温で200mLのナスフラスコに、3-クロロプロピルトリエトキシシラン12.0g、チタンテトラn-ブトキシド0.1g、トルエン100mL、ジメチルアミノエタノール9.1gを投入した。乾燥窒素を流しつつマグネティックスターラーで攪拌しながら、オイルバスにて125℃に加熱して10時間還流した後、得られたトルエン溶液を室温まで冷却した。
他方、キシレン50mlを充填した200mlの二口フラスコ中に、粒状の水酸化ナトリウム(NaOH)2.0g及び硫黄粉末1.6gを投入した。その混合物をマグネティックスターラーで攪拌しながら、窒素雰囲気下でオイルバスにて130℃に加熱し、生じた水をディーンスタークにより除去した。得られた反応混合物を室温にて放冷した後、上澄みのキシレンをデカンテーションにより除去した。残った黄色固体を、乾燥窒素下にてエタノール160ml中に吸収させ、これを原料シラン化合物が溶けた上記トルエン溶液と混合した。続いて、60℃にて3時間加熱した後、吸引ろ過により固形分を除去した。濾液を、ロータリーエバポレーター中、110℃及び後調節された真空下にて蒸発させ、褐色の液体16.7gを得た。HPLCにより、得られた液体の純度を測定したところ、純度は90%であった。また、得られた液体を1H−NMRで分析したところ、0.7(t;4H), 1.1(t;6H), 1.8-1.9(m;4H), 2.2(s;24H), 2.5(t;8H), 2.8-3.0(m;4H), 3.9(m;12H)であり、ビス[(ジジメチルアミノエトキシ)モノエトキシシリルプロピル]ジスルフィドであることが分かった。
【0060】
(実施例3)
<ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィドの合成>
室温で200mLのナスフラスコに、3-クロロプロピルメチルジエトキシシラン10.5g、チタンテトラn-ブトキシド0.1g、トルエン100mL、メチルジエタノールアミン6.0gを投入した。乾燥窒素を流しつつマグネティックスターラーで攪拌しながら、オイルバスにて125℃に加熱して10時間還流した後、得られたトルエン溶液を室温まで冷却した。
他方、キシレン50mlを充填した200mlの二口フラスコ中に、粒状の水酸化ナトリウム(NaOH)2.0g及び硫黄粉末1.6gを投入した。その混合物をマグネティックスターラーで攪拌しながら、窒素雰囲気下でオイルバスにて130℃に加熱し、生じた水をディーンスタークにより除去した。得られた反応混合物を室温にて放冷した後、上澄みのキシレンをデカンテーションにより除去した。残った黄色固体を、乾燥窒素下にてエタノール160ml中に吸収させ、これを原料シラン化合物が溶けた上記トルエン溶液と混合した。続いて、60℃にて3時間加熱した後、吸引ろ過により固形分を除去した。濾液を、ロータリーエバポレーター中、110℃及び後調節された真空下にて蒸発させ、褐色の液体11.7gを得た。HPLCにより、得られた液体の純度を測定したところ、純度は80%であった。また、得られた液体を1H−NMRで分析したところ、0.1(S;6H), 0.7(t;4H), 1.8-1.9(m;4H), 2.3/2.4(s x 2;6H), 2.6(m;8H), 2.7-3.0(m;4H), 3.7(m;8H)であり、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィドであることが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハロアルキル基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物をアルカリ金属硫化物と反応させて、スルフィド基又はポリスルフィド基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物を得る工程を含むことを特徴とするシランカップリング剤の製造方法。
【請求項2】
前記スルフィド基又はポリスルフィド基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物が、下記一般式(I):
【化1】

[式(I)中のR1、R2及びR3は、少なくとも一つが下記一般式(II)又は式(III):
【化2】

(式中、Mは−O−又は−CH2−で、X及びYはそれぞれ独立して−O−、−NR8−又は−CH2−で、R6は−OR8、−NR89又は−R8で、R7は−NR89、−NR8−NR89又は−N=NR8で、但し、R8は−Cn2n+1であり、R9は−Cq2q+1であり、l、m、n及びqはそれぞれ独立して0〜20である)で表され、その他が−M−Cr2r+1(ここで、Mは上記と同義であり、rは0〜20である)又は−(M−Cl2l)ys2s+1(ここで、M及びlは上記と同義であり、y及びsはそれぞれ独立して1〜20である)で表され、但し、R1、R2及びR3の一つ以上はMが−O−であり、
4は下記一般式(IV)、式(V)又は式(i):
【化3】

(式中、M、X、Y、R6、l及びmは上記と同義であり、R10は−NR8−、−NR8−NR8−又は−N=N−で、但し、R8は上記と同義である)で表され、
xは1〜10である]で表されることを特徴とする請求項1に記載のシランカップリング剤の製造方法。
【請求項3】
前記スルフィド基又はポリスルフィド基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物が、下記一般式(VI):
【化4】

[式(VI)中のWは−NR8−、−O−又は−CR815−(ここで、R15は−R9又は−Cm2m−R7であり、但し、R7は−NR89、−NR8−NR89又は−N=NR8であり、R8は−Cn2n+1で、R9は−Cq2q+1で、m、n及びqはそれぞれ独立して0〜20である)で表され、
12及びR13はそれぞれ独立して−M−Cl2l−(ここで、Mは−O−又は−CH2−で、lは0〜20である)で表され、
14は−M−Cr2r+1又は−M−Cr2r−R7(ここで、M及びR7は上記と同義であり、rは0〜20である)或いは−(M−Cl2l)ys2s+1(ここで、M及びlは上記と同義であり、y及びsはそれぞれ独立して1〜20である)で表され、但し、R12、R13及びR14の一つ以上はMが−O−であり、
4は下記一般式(VII)、式(VIII)又は式(ii):
【化5】

(式中、M、l及びmは上記と同義であり、X及びYはそれぞれ独立して−O−、−NR8−又は−CH2−で、R6は−OR8、−NR89又は−R8で、R10は−NR8−、−NR8−NR8−又は−N=N−であり、但し、R8及びR9は上記と同義である)で表され、
xは1〜10である]で表されることを特徴とする請求項1に記載のシランカップリング剤の製造方法。
【請求項4】
前記スルフィド基又はポリスルフィド基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物が、下記式(IX):
【化6】

[式(IX)中のWは−NR8−、−O−又は−CR815−(ここで、R15は−R9又は−Cm2m−R7であり、但し、R7は−NR89、−NR8−NR89又は−N=NR8であり、R8は−Cn2n+1で、R9は−Cq2q+1で、m、n及びqはそれぞれ独立して0〜20である)で表され、
12及びR13はそれぞれ独立して−M−Cl2l−(ここで、Mは−O−又は−CH2−で、lは0〜20である)で表され、但し、R12及びR13の一つ以上はMが−O−であり、
4は下記一般式(X)、式(XI)又は式(iii):
【化7】

(式中、M、l及びmは上記と同義であり、X及びYはそれぞれ独立して−O−、−NR8−又は−CH2−で、R6は−OR8、−NR89又は−R8で、R10は−NR8−、−NR8−NR8−又は−N=N−であり、但し、R8及びR9は上記と同義である)で表され、但し、四つのR4は同一でも異なっていてもよく、
xは1〜10である]で表される構造を有することを特徴とする請求項1に記載のシランカップリング剤の製造方法。
【請求項5】
前記スルフィド基又はポリスルフィド基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物が、上記式(VI)で表される化合物と上記式(IX)で表される構造を有する化合物との混合物であることを特徴とする請求項1に記載のシランカップリング剤の製造方法。
【請求項6】
前記スルフィド基又はポリスルフィド基及びアミノアルコキシル基を有するシラン化合物が、ビス[(モノジメチルアミノエトキシ)ジエトキシシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジジメチルアミノエトキシ)モノエトキシシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[トリジメチルアミノエトキシシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(モノジエチルアミノエトキシ)ジエトキシシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジジエチルアミノエトキシ)モノエトキシシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[トリジエチルアミノエトキシシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジメチルアミノエトキシ)エトキシメチルシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジメチルアミノエトキシ)ジメチルシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジジメチルアミノエトキシ)モノメチルシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジエチルアミノエトキシ)エトキシメチルシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジエチルアミノエトキシ)ジメチルシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[(ジジエチルアミノエトキシ)モノメチルシリルプロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-プロピルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-プロピルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]ジスルフィド、ビス[(モノジメチルアミノエトキシ)ジエトキシシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジジメチルアミノエトキシ)モノエトキシシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジジメチルアミノエトキシ)モノエトキシシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[トリジメチルアミノエトキシシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(モノジエチルアミノエトキシ)ジエトキシシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジジエチルアミノエトキシ)モノエトキシシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[トリジエチルアミノエトキシシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジメチルアミノエトキシ)エトキシメチルシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジメチルアミノエトキシ)ジメチルシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジジメチルアミノエトキシ)モノメチルシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジエチルアミノエトキシ)エトキシメチルシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジエチルアミノエトキシ)ジメチルシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[(ジジエチルアミノエトキシ)モノメチルシリルプロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-プロピルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-エトキシシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-メチルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-エチルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィド、ビス[3-(1,3-ジオキサ-6-プロピルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィド、及びビス[3-(1,3-ジオキサ-6-ブチルアザ-2-メチルシラシクロオクチル)-プロピル]テトラスルフィドよりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のシランカップリング剤の製造方法。

【公開番号】特開2011−46641(P2011−46641A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−196028(P2009−196028)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】