説明

シラン官能性樹脂の架橋のための現場での水分発生及び多官能性アルコールの使用

ポリマー組成物は、(i)シラン官能性(silane-fknctionalized)ポリマー、例えば、ビニルトリエトキシシランでグラフトしたポリエチレン、(H)多官能性アルコール、例えば、α,α,α’α’−テトラメチル−1,3−ベンゼンジエタノール、及び、所望により(iii)酸、例えば、アルキル化アリールジスルホン酸を含む。強酸の不在下で多官能性アルコールを使用することによりシラン官能性ポリマーの光架橋がもたらされ、これにより、順に、改良された伸長特性、例えば伸長粘度及び溶融強度などを有するポリマー溶融体が得られる。多官能性アルコールをブロックされた強酸と組み合わせて使用することにより、溶融加工中の速度の遅い架橋及びポリマー組成物が造形又は成形された後に高度の最終架橋がもたらされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂の架橋に関する。一態様では、本発明はシラン官能性樹脂の架橋に関し、一方もう一つの態様では、本発明は多官能性アルコールを使用するこのような樹脂の架橋に関する。さらにもう一つの態様では、本発明はアルコールを酸触媒と組み合わせて使用するこのような樹脂の架橋に関する。さらにもう一つの態様では、本発明は、このような架橋樹脂から製造されるケーブル絶縁及び外装並びにその他の製品の製造に関する。
【関連出願への相互参照】
【0002】
本出願は、2007年11月1日出願の米国特許仮出願第60/984,422号の利益を主張し、その出願は全文が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
物品、例えばケーブル、パイプ、履物、発泡体などのものの二次加工において、これらの物品を製造するポリマー組成物は溶融ブレンドせざるを得ない場合が多い。この組成物は多くの場合シラン官能性樹脂と触媒を含み、これらの樹脂は周囲温度か又は高い温度で水分に曝露されるとそのシラン官能性によって架橋を起こす。このプロセスでの重要要件の一つは、溶融加工、例えば、押出、成形などの間の樹脂のスコーチ、すなわち早期架橋を最小限に抑えることである。スコーチの最小化は、一般に、溶融加工の間に樹脂の融点よりも高い(例えば、ポリエチレンの場合には200℃より高い)温度で「乾燥」組成物を使用すること、及びスコーチ防止剤、例えば、モノマーシランなどの添加によって達成される。
【0004】
これらの物品の二次加工におけるもう一つの重要な考慮事項は、溶融加工が完了した後に短い期間内(例えば、数時間、数日)で、架橋を達成することである。これは、高温下で、例えば、70℃を上回って、硬化させることにより、且つ/又は強力な触媒、例えばスルホン酸などの使用によって達成される。二次加工品の厚さが増加するにつれて、水分がポリマー組成物の中及び全体に拡散する時間は高温下でさえ増加する。これは、二次加工プロセスのコストを増加させる。そういうわけで、ポリマー二次加工産業は、強酸を用いて、好ましくは許容される低レベルのスコーチを伴って達成できる以上に、シラン官能性樹脂の湿分硬化を加速させることに変わらぬ関心を寄せている。
【発明の概要】
【0005】
(発明が解決しようとする課題)
(課題を解決するための手段)
【0006】
一実施形態では、本発明は、(i)シラン官能性ポリマー、及び(ii)多官能性アルコールか又は(iii)酸と組み合わせたアルコールのいずれか、或いはその両方を含むポリマー組成物である。もう一つの実施形態では、本発明は、ポリマー組成物を造形及び架橋する方法であり、該組成物は、(i)シラン官能性ポリマー、及び(ii)多官能性アルコールか又は(iii)酸と組み合わせたアルコールのいずれかを含み、該方法は、(A)ポリマー組成物を溶融加工条件に供するステップ;(B)スコーチを最小限に抑えながらポリマー組成物を造形するステップ;及び(C)造形されたポリマー組成物を架橋条件に供するステップを含む。さらにもう一つの実施形態では、本発明は造形された架橋ポリマー組成物から作製された二次加工品である。
【0007】
多官能性アルコールを酸の不在下で使用するとシラン官能性ポリマーの光架橋がもたらされ、これにより、順に、改良された伸長特性、例えば伸長粘度及び溶融強度を有するポリマー溶融体が得られる。多官能性アルコールを触媒(例えば酸など)と組み合わせて使用することにより、溶融加工中の速度の遅い架橋、及びポリマー組成物が造形又は成形された後に高度の最終架橋がもたらされる。溶融加工条件では、現場で水分を発生させるためにかなりの量の酸を利用でき、それは、順に、周囲温度及び高い温度条件下で最終架橋を促進する。本発明のポリマー組成物及び方法は、ケーブル絶縁及び外装、発泡体、履物、パイプ及びポリマー分散体の製造に特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】182℃のスルホン酸によるエチレン−シラン反応器共重合体の湿分架橋の結果を報告するグラフである。
【0009】
【図2】現場での水分発生及びスルホン酸によるエチレン−シラン反応器共重合体の架橋への温度の影響を報告するグラフである。
【0010】
【図3】現場での水分発生及び異なる温度でのエチレン−シラン反応器共重合体の架橋へのアルコール反応性の影響を報告するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示中の数値範囲は近似値であり、従って特に記載しない限りその範囲外の値も含む可能性がある。数値範囲は、任意の下方値と任意の上方値との間に少なくとも2単位の隔たりが存在するという条件で、下方値から上方値の間の全ての値を1単位の増分で含む。例として、組成特性、物理特性又はその他の特性、例えば分子量、粘度、メルトインデックスなどが、100〜1,000である場合、それは全ての個々の値、例えば100、101、102など、及び下位範囲、例えば100〜144、155〜170、197〜200などが明示的に列挙されていることを意味する。1未満の値を含む範囲、又は1より大きい分数(例えば、1.1、1.5など)を含む範囲に関して、1単位は、必要に応じて0.0001、0.001、0.01又は0.1と見なされる。10未満の1桁の数を含む範囲(例えば、1〜5)に関して、1単位は一般に0.1と見なされる。これらは具体的に意図されるものの単なる例であり、列挙される最小値と最大値の間の数値のあらゆる可能性のある組合せは、本出願において明示的に述べられるものと見なされる。本開示内で、数ある中でも、ポリマーに対する多官能性アルコール及び強酸の量、並びに様々な温度及びその他の処理範囲に関する数値範囲が提供される。
【0012】
「ケーブル」、「電源ケーブル」、「伝送線」及び同様の用語は、保護絶縁、外被又は外装の中の少なくとも1種類のワイヤ又は光ファイバーを意味する。一般に、ケーブルは、一般に共通する保護絶縁、外被又は外装内で結びつけられている2又はそれ以上のワイヤ又は光ファイバーである。外被の内部の個々のワイヤ又はファイバーは、裸であっても、被覆されても、絶縁されてもよい。複合ケーブルは、電線と光ファイバーの両方を含むことができる。ケーブルなどは、低圧、中圧及び高圧用途用に設計することができる。典型的なケーブル設計は、米国特許第5,246,783号、同第6,496,629号及び同第6,714,707号に説明されている。
【0013】
「ポリマー」とは、同じ種類であろうと異なる種類であろうと、モノマーを重合することにより調製されるポリマー化合物を意味する。一般名のポリマーは、従って、ただ一種類のモノマーから調製されるポリマーをさすために通常用いられる用語ホモポリマー、及び、下に定義される用語インターポリマーを包含する。
【0014】
「インターポリマー」とは、少なくとも2種類の異なる種類のモノマーの重合により調製されるポリマーを意味する。この一般名には、共重合体が含まれ、2つの異なる種類のモノマーから調製されるポリマー、及び2より多くの異なる種類のモノマーから調製されるポリマー、例えば、ターポリマー、テトラポリマーなどをさすために通常用いられる。
【0015】
「ポリオレフィン」、「PO」及び同様の用語は、単純なオレフィンに由来するポリマーを意味する。多くのポリオレフィンは熱可塑性であり、本発明の目的のため、ゴム相が含まれ得る。代表的なポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン及びそれらの様々なインターポリマーが挙げられる。
【0016】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」及び同様の用語は、2又はそれ以上のポリマーの組成物を意味する。そのようなブレンドは混和性であってもなくてもよい。そのようなブレンドは相分離していてもしていなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、及び当分野で公知の任意のその他の方法から決定される1又はそれ以上のドメイン配置を含んでいてもいなくてもよい。
【0017】
「組成物」及び同様の用語は、2又はそれ以上の成分の混合物又はブレンドを意味する。ケーブル外装又はその他の製品を二次加工する材料の混合物又はブレンドという状況において、組成物には、混合物の全ての成分、例えば、シラングラフト化ポリオレフィン、滑沢剤、充填剤及び任意のその他の添加剤、例えば硬化触媒、抗酸化剤、難燃剤などが含まれる。
【0018】
ポリオレフィン:
【0019】
本発明の実施において用いられるポリオレフィン、すなわちシラン官能性を含むか、又はその後シランでグラフトされるポリオレフィンは、従来のポリオレフィン重合技術、例えば、高圧、チーグラー・ナッタ、メタロセン又は拘束幾何触媒作用を用いて作製することができる。1つの好ましい実施形態では、ポリオレフィンは高圧法を用いて製造される。もう一つの好ましい実施形態では、ポリオレフィンは、溶液、スラリー、若しくは気相重合法において、モノ−若しくはビス−シクロペンタジエニル、インデニル、又はフルオレニル遷移金属(好ましくは第4族)触媒又は拘束幾何触媒(CGC)をアクチベーターと組み合わせて用いて製造される。触媒は、好ましくはモノ−シクロペンタジエニル、モノ−インデニル又はモノ−フルオレニルCGCである。溶液法が好ましい。米国特許第5,064,802号、国際公開第93/19104号及び国際公開第95/00526号には拘束幾何金属錯体及びその調製方法が開示されている。様々様々に置換されたインデニル含有金属錯体は国際公開第95/14024号及び国際公開第98/49212号に教示される。
【0020】
一般に、重合は、チーグラー・ナッタ又はカミンスキー・シン型の重合反応に関する当技術分野で周知の条件、つまり、0〜250℃、好ましくは30〜200℃の温度、及び1〜10,000気圧(1013メガパスカル(MPa))の圧力で達成することができる。懸濁、溶液、スラリー、気相、固体状態粉末重合又はその他の処理条件を所望により用いてもよい。触媒は担持されても担持されなくてもよく、担体の組成物は大きく異なる。シリカ、アルミナ又はポリマー(特にポリ(テトラフルオロエチレン)又はポリオレフィン)が代表的な担体であり、担体は触媒が気相重合法において使用される場合に用いられることが望ましい。担体は好ましくは触媒(金属に基づく)の担体に対する重量比が1:100,000〜1:10、より好ましくは1:50,000〜1:20、最も好ましくは1:10,000〜1:30以内となるために十分な量で用いられる。大部分の重合反応において、触媒の、用いられる重合可能化合物に対するモル比は、10−12:1〜10−1:1、より好ましくは10−9:1〜10−5:1である。
【0021】
不活性液体は重合に適した溶媒として役立つ。例としては、直鎖及び分枝鎖炭化水素、例えばイソブタン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、及びそれらの混合物;環式及び脂環式炭化水素、例えばシクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、メチルシクロヘプタン、及びそれらの混合物;パーフルオロ化炭化水素、例えばパーフルオロ化C4−10アルカン;並びに芳香族及びアルキル置換芳香族化合物、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、及びエチルベンゼンが挙げられる。
【0022】
本発明の実施において有用なポリオレフィン共重合体としては、α−オレフィン含量が、インターポリマーの重量に基づいて、約15重量%、好ましくは少なくとも約20重量%、さらにより好ましくは少なくとも約25重量%である、エチレン/α−オレフィンインターポリマーが挙げられる。これらのインターポリマーのα−オレフィン含量は一般に、インターポリマーの重量に基づいて、約50重量%未満、好ましくは約45重量%未満、より好ましくは約40重量%未満、さらにより好ましくは約35重量%未満である。α−オレフィン含量は、ランドールに記載される手順(Rev. Macromol. Chem. Phys., C29 (2&3))を用いる13C核磁気共鳴(NMR)分光法により測定される。一般に、インターポリマーのα−オレフィン含量が大きいほど、密度は低く、インターポリマーはより非晶質であり、これは保護絶縁層に望ましい物理的及び化学的特性となる。
【0023】
α−オレフィンは、好ましくはC3−20線状、分枝状又は環状α−オレフィンである。C3−20α−オレフィンの例としては、プロペン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、及び1−オクタデセンが挙げられる。α−オレフィンは環状構造、例えばシクロヘキサン又はシクロペンタンを含むこともでき、その結果、α−オレフィン例えば3−シクロヘキシル−1−プロペン(アリルシクロヘキサン)及びビニルシクロヘキサンなどがもたらされる。従来の用語の意味ではα−オレフィンではないが、本発明の目的において、特定の環状オレフィン、例えばノルボルネン及び関連オレフィン、特に5−エチリデン−2−ノルボルネンは、α−オレフィンであり、上記のα−オレフィンの一部又は全ての代わりに使用することができる。同様に、スチレン及びその関連オレフィン(例えば、α−メチルスチレンなど)も本発明の目的においてα−オレフィンである。説明となるポリオレフィン共重合体としては、エチレン/プロピレン、エチレン/ブテン、エチレン/1−ヘキセン、エチレン/1−オクテン、エチレン/スチレンなどのものが挙げられる。説明となるターポリマーとしては、エチレン/プロピレン/1−オクテン、エチレン/プロピレン/ブテン、エチレン/ブテン/1−オクテン、エチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)及びエチレン/ブテン/スチレンが挙げられる。共重合体はランダムであってもブロックであってもよい。
【0024】
本発明の実施において用いられるポリオレフィンは、単独で、或いは1又はそれ以上のその他のポリオレフィンと組み合わせて、例えば、モノマー組成及び含量、調製の触媒法などが相互に異なっている2又はそれ以上のポリオレフィンポリマーのブレンドとして使用することができる。ポリオレフィンが2又はそれ以上のポリオレフィンのブレンドである場合、そのポリオレフィンは反応器内又は反応器後プロセスによりブレンドすることができる。反応器内ブレンディングプロセスのほうが反応器後ブレンディングプロセスよりも好ましく、直列に接続された複数の反応器を用いるプロセスが、好ましい反応器内ブレンディングプロセスである。これらの反応器には同じ触媒が充填されるが異なる条件、例えば、異なる反応体濃度、温度、圧力などで運転されてもよいし、又は同じ条件で運転されるが異なる触媒を充填されてもよい。
【0025】
高圧法で製造されるポリオレフィンの例としては(限定されるものではないが)、低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレンシラン反応器共重合体(例えばThe Dow Chemical Company製のSiLINK(登録商標))、エチレンビニルアセテート共重合体(EVA)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、及びエチレンシランアクリレートターポリマーが挙げられる。
【0026】
本発明の実施において有用なオレフィンインターポリマーの例としては、極低密度ポリエチレン(VLDPE)(例えば、The Dow Chemical Company製のFLEXOMER(登録商標)エチレン/1−ヘキセンポリエチレン)、均一に分枝した線状エチレン/α−オレフィン共重合体(例えば、Mitsui Petrochemicals Company Limited製のTAFMER(登録商標)及びExxon Chemical Company製のEXACT(登録商標))、及び均一に分枝した実質的に線状のエチレン/α−オレフィンポリマー(例えば、The Dow Chemical Companyより入手可能なAFFINITY(登録商標)及びENGAGE(登録商標)ポリエチレン)が挙げられる。より好ましいポリオレフィン共重合体は、均一に分枝した線状のエチレン共重合体及び実質的に線状のエチレン共重合体である。実質的に線状のエチレン共重合体が特に好ましく、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号及び同第5,986,028号により詳細に記載されている。
【0027】
本発明の実施において有用な例となるポリプロピレンとしては、The Dow Chemical Companyより入手可能なVERSIFY(登録商標)ポリマー及びExxonMobil Chemical Companyより入手可能なVISTAMAXX(登録商標)ポリマーが挙げられる。様々なポリプロピレンポリマーの完全な考察は、Modern Plastics Encyclopedia/89, mid October 1988 Issue, Volume 65, Number 11, pp. 86-92に記載されている。
【0028】
シラン架橋剤:
【0029】
オレフィン(例えばエチレンなど)と効果的に共重合するか、又はポリオレフィンポリマーにグラフトされて架橋するあらゆるシランを本発明の実施において使用することができ、次式で表されるものが例である。
【化1】

【0030】
式中、Rは水素原子又はメチル基であり:x及びyは0又は1であり(ただし、xが1の場合、yは1である);nは1〜12までの整数、好ましくは1〜4であり、且つ各々のR”は独立に加水分解性有機基、例えば1〜12個の炭素原子を有するアルコキシ基(例えばメトキシ、エトキシ、ブトキシ)、アリールオキシ基(例えばフェノキシ)、アラルオキシ基(例えばベンジルオキシ)、1〜12個の炭素原子を有する脂肪族アシルオキシ基(例えばホルミルオキシ、アセチルオキシ、プロパノイルオキシ)、アミノ若しくは置換アミノ基(アルキルアミノ、アリールアミノ)、又は1〜6個までの炭素原子を有する低級アルキル基である、(ただし、3つのR基のうち1つまでアルキルである)。このようなシランは、反応器内、例えば高圧法などで適したオレフィンと共重合してもよい。このようなシランはまた、造形若しくは成形工程の前又は最中に、適した量の有機過酸化物を使用することにより、適したポリオレフィンにグラフトされてもよい。追加の成分、例えば熱及び光安定剤、色素などを配合物中に含めてもよい。いずれの場合でも、架橋反応は、グラフトされたか又は共重合したシラン基間の湿分誘導性反応により造形若しくは成形ステップの後に起こり、水は大気から或いは水浴又は「サウナ」からバルクポリマーの中に浸透する。その間に架橋が作製されるプロセスの相は一般に「硬化相」と呼ばれ、このプロセス自体は一般に「硬化」と呼ばれる。
【0031】
適したシランとしては、エチレン性不飽和ヒドロカルビル基、例えばビニル、アリル、イソプロペニル、ブテニル、シクロヘキセニル又はγ−(メタ)アクリルオキシアリル基、及び加水分解性基、例えば、ヒドロカルビルオキシ、ヒドロカルボニルオキシ、又はヒドロカルビルアミノ基を含む不飽和シランが挙げられる。加水分解性基の例としては、メトキシ、エトキシ、ホルミルオキシ、アセトキシ、プロプリオニルオキシ、及びアルキル若しくはアリールアミノ基が挙げられる。好ましいシランは、ポリマーにグラフトすることのできる、又は反応器内で他のモノマー(例えばエチレン及びアクリレート)と共重合することのできる不飽和アルコキシシランである。これらのシラン及びその調製法は、Meverdenらに対する米国特許第5,266,627号により詳細に記載されている。ビニルトリメトキシシラン(VTMS)、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン及びこれらのシランの混合物は、本発明における使用に好ましいシラン架橋剤である。充填剤が存在する場合、架橋剤にビニルトリアルコキシシランが含まれることが好ましい。
【0032】
本発明の実施において用いられるシラン架橋剤の量は、ポリマーの性質、シラン、加工若しくは反応器条件、グラフト若しくは共重合効率、最終用途、及び同様の要因によって幅広く変動し得るが、一般に少なくとも0.5、好ましくは少なくとも0.7重量パーセントが使用される。利便性と経済性への配慮が本発明の実施において用いられるシラン架橋剤の最大量への2つの主要な制限であり、一般にシラン架橋剤の最大量は5重量%を超えず、好ましくは3重量%を超えない。
【0033】
シラン架橋剤は、任意の従来法により、一般にフリーラジカル開始剤、例えば過酸化物及びアゾ化合物の存在下で、又は電離性放射線などにより、ポリマーにグラフトされる。例えば過酸化物開始剤のいずれかなどの、例えば、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、t−ブチルペルベンゾエート、ベンゾイルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ブチルペルオクトエート、メチルエチルケトンペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、ラウリルペルオキシド、及びt−ブチルペルアセテートなどの有機開始剤が好ましい。適したアゾ化合物は、2,2−アゾビスイソブチロニトリルである。開始剤の量は変動し得るが、一般に樹脂100部あたり少なくとも0.04、好ましくは少なくとも0.06部(phr)の量で存在する。一般に、開始剤は0.15phrを超えない、好ましくは開始剤は約0.10phrを超えない。シラン架橋剤の開始剤に対する比も幅広く変動し得るが、典型的な架橋剤:開始剤比は、10:1〜30:1の間、好ましくは18:1〜24:1の間である。樹脂100部当たりの部又はphrに用いられる「樹脂」は、オレフィンポリマーを意味する。
【0034】
任意の従来法を用いてシラン架橋剤をポリオレフィンポリマーにグラフトすることができるが、好ましい一方法は反応器押出機、例えばBussニーダーの最初のステップで、2種類を開始剤とともにブレンドすることである。グラフト条件は変動し得るが、開始剤の滞留時間及び半減期にもよるが、溶融温度は一般に160〜260℃の間、好ましくは190〜230℃の間である。
【0035】
ビニルトリアルコキシシラン架橋剤とエチレン及びその他のモノマーの共重合は、エチレンホモポリマー並びに酢酸ビニル及びアクリレートを含む共重合体の製造に使用される高圧反応器中で行われてもよい。
【0036】
アルコール:
【0037】
本発明で用いられるアルコールは2つの役割を果たすために使用される。多官能性アルコールは本発明において架橋促進剤として用いられ、シラン架橋プロセスに関与する。アルコールは触媒量の酸と一緒に脱離反応を受け、水を放出する。この現場で放出された水分はシランを加水分解することにより架橋を助ける。
【0038】
触媒量の酸とともに脱離反応に関与して水を放出することのできるあらゆるアルコールを本発明で使用することができる。これには、脱離反応に関与することが可能な1又はそれ以上のβ−水素原子を有する全ての第一級、第二級及び第三級アルコールが含まれる。
【0039】
本発明に適したアルコールとしては、一般式(RCH3−xCHOH(Rが脂肪族又は芳香族であり、xが0〜2の値を有する)を含むアルコールが挙げられる。本出願のためのアルコールの例としては、2−メチル−1−フェニル−2−プロパノール、1−オクタノール、2−オクタノール、3−フェニル−1−プロパノール、1−フェニル−1−プロパノール並びに同様の脂肪族及び芳香族アルコールが挙げられる。
【0040】
適した脂肪族ポリオールは、例えば線状若しくは分枝状脂肪族グリコールであるジオール、特に2〜12個、好ましくは2〜6個の炭素原子を分子中に含むもの、例えば:エチレングリコール、1,2−及び1,3−プロピレングリコール、1,2−、1,3−、23−若しくは1,4−ブタンジオール、ペンチルグリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,12−ドデカンジオールである。適した脂環式ジオールは、例えば、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサンである。その他の適した脂肪族ジオールは、例えば、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、芳香族−脂肪族ジオール、例えばp−キシリレングリコール又は2,5−ジクロロ−p−キシリレングリコール、2,2−(β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンである。アルキレンジオールは、好ましくは線状であり、好ましくは2〜4個の炭素原子を含む。適した脂肪族ジオールの別の群は、独国公開特許明細書第1812003号、同第2342432号、同第2342372号及び同第2453326号に記載される複素環式ジオールである。例えば、N,N’−ビス(β−ヒドロキシエチル)−5,5−ジメチルヒダントイン、N,N’−ビス(β−ヒドロキシプロピル)−5,5−ジメチルヒダントイン、メチレンビス−[N−(β−ヒドロキシエチル)−5−メチル−5−エチルヒダントイン]、メチレンビス−[N−(β−ヒドロキシエチル)−5,5−ジメチルヒダントイン]、N,N’−ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンズイミダゾロン、N,N’−ビス(β−ヒドロキシエチル)−(テトラクロロ)ベンズイミダゾロン又はN,N’−ビス(β−ヒドロキシエチル)−(テトラブロモ)ベンズイミダゾロンである。
【0041】
適したトリオールは、例えば
【化2】

である。
【0042】
酸:シラン官能性ポリオレフィンを架橋するために有用な好ましいシラノール縮合触媒は、
【化3】

に例示されるアルキル化アリールモノ若しくはジスルホン酸
【0043】
(式中、R及びRの各々は、同一であっても異なってもよく、且つ、6〜16個の炭素を含む線状若しくは分枝状アルキル基であり、yは、0〜3であり、zは、0〜3であり(ただし、y+zは、1〜4である)、nは、0〜3であり、Xは、−C(R)(R)−(式中R及びRの各々は水素であるか、又は独立に1〜4炭素の線状若しくは分枝状アルキル基であり、nは1である);−C(=O)−(式中、nは1である);−O−(式中、nは1である):−S−(式中、nは1〜3である);及び−S(O)−(式中、nは1である)からなる群から選択される二価部分である);或いは
【0044】
その無水物、エステル、エポキシブロック化スルホン酸エステル、アセチル酸、及びアルキル化アリールモノ若しくはジスルホン酸に加水分解性であるアミン塩からなる、アルキル化アリールモノ若しくはジスルホン酸の誘導体である。ブロックされている又はブロックされていない強酸は、弱酸よりも好ましい。
【0045】
好ましくは、アリール基は例えばジノニルナフタレンジスルホン酸中のナフタレンである。アリールジスルホン酸が構造IIである場合、好ましくはnは0であるか、又はXは酸素でありnは1であるか、又はXはSでありnは1〜3であるか、又はXはS(O)でありnは1である。上記ナフタレン誘導体は、そのスルホン酸基の一方又は両方がエポキシドと反応してモノ−若しくはジ−β−ヒドロキシスルホン酸エステルをもたらすエポキシブロック化スルホン酸であってもよい。エポキシブロック化スルホン酸を調製するために適したエポキシ化合物としては、ビスフェノールA又はビスフェノールFのジグリシジルエーテル;グリコール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール又はブタンジオールのジグリシジルエーテル;C−C18α−オレフィンエポキシド及び1,2−エポキシシクロヘキサンのモノグリシジルエーテルが挙げられる。もう一つの好ましい酸は、ドデシルベンゼンスルホン酸である。
【0046】
ポリマー組成物:
【0047】
ケーブル外装又はその他の製品を二次加工するポリマー組成物は、酸触媒を含んでいてもいなくてもよい。そのような触媒が存在する場合、組成物は少なくとも0.01重量%、好ましくは少なくとも0.02重量%、より好ましくは少なくとも0.03重量%の触媒を含む。組成物中の酸触媒の最大量への唯一の制限は、経済及び実用性(例えば、収穫逓減)により課せられるものであるが、概して一般的な最大量は組成物の5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは2重量%未満を占める。
【0048】
ケーブル外装又はその他の製品を二次加工するポリマー組成物は、少なくとも0.01重量%、好ましくは少なくとも0.03重量%、より好ましくは少なくとも0.05重量%の多官能性アルコールを含む。組成物中の多官能性アルコールの最大量への唯一の制限は、経済及び実用性(例えば、収穫逓減)により課せられるものであるが、概して一般的な最大量は組成物の5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは2重量%未満を占める。
【0049】
硬化は架橋共触媒を用いて促進してもよく、この機能を促進する酸でないいずれの共触媒も本発明で使用することができる。これらの共触媒としては、一般に、有機塩基(但し一般に酸触媒を伴わない)、カルボン酸、及び有機チタネートを含む有機金属化合物並びに鉛、コバルト、鉄、ニッケル、亜鉛及び錫の錯体又はカルボン酸塩が挙げられる。ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫マレエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、第一錫アセテート、第一錫オクトエート、ナフテン酸鉛、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸コバルト;などのものが挙げられる。錫カルボキシレート、特にジブチル錫ジラウレート及びジオクチル錫マレエートが特に効果的である。触媒(又は触媒の混合物)は組成物中に触媒量、一般に0.01〜2phrの間の量で存在する。
【0050】
ケーブル外装又はその他の製品を製造するポリマー組成物は、充填剤入りであっても無充填であってもよい。充填剤入りの場合、存在する充填剤の量は、シラン−架橋ポリオレフィンポリマーの電気的及び/又は機械的特性の許容されないほど大きな低下を引き起こす量を超えないことが好ましい。一般に、存在する充填剤の量は、ポリマーの重量に基づいて2〜80重量パーセント、好ましくは5〜70重量パーセント(重量%)である。代表的な充填剤としては、カオリン粘土、マグネシウムヒドロキシド、シリカ、炭酸カルシウムが挙げられる。充填剤が存在する本発明の好ましい実施形態では、充填剤は、そうでなければ充填剤がシラン硬化反応を妨げざるを得ないあらゆる傾向を阻止又は遅らせる材料で被覆される。ステアリン酸がそのような充填剤被覆剤の例である。充填剤及び触媒の選択は、何らかの望ましくない相互作用及び反応を回避するように行うべきである。
【0051】
その他の添加剤を本発明のポリマー組成物の調製において使用し、且つ本発明のポリマー組成物中に存在させてもよく、これらとしては、限定されるものではないが、酸化防止剤、加工助剤、色素及び滑沢剤が挙げられる。
【0052】
シラン官能性ポリオレフィンポリマー、多官能性アルコール及び酸触媒(もしあれば)の配合は、当業者に公知の標準的な手段により達成することができる。配合装置の例は内部バッチミキサー、例えばBanbury(商標)又はBoiling(商標)内部ミキサーである。或いは、連続一軸若しくは二軸スクリューミキサー、例えばFarrel(商標)連続ミキサー、Werner&Pfleiderer(商標)二軸スクリューミキサー、或いはBuss(商標)混練連続押出機を用いてもよい。利用するミキサーの種類、及びミキサーの運転条件は、組成物の特性、例えば粘度、体積抵抗率、及び押出表面平滑性に影響を及ぼす。
【0053】
製品:
【0054】
本発明のポリマー組成物は、公知の量で、公知の方法により(例えば、米国特許第5,246,783号及び同第4,144,202号に記載の装置及び方法を用いて)外装又は絶縁としてケーブルに適用することができる。一般に、ポリマー組成物はケーブル被覆ダイを装備した反応器押出機で調製され、組成物の成分が配合された後、組成物はケーブルがダイを通じて引き出される時にケーブルの上に押出される。ポリオレフィンポリマーがメルトインデックス(約1〜7g/10分のI)を有するエチレンポリマーである本発明の好ましい実施形態では、ケーブルの上に被覆される絶縁外装は周囲温度で10日以内に硬化する。
【0055】
本発明のポリマー組成物から、特に高圧及び/又は高湿度条件下で調製することのできるその他の製品としては、繊維、リボン、シート、テープ、チューブ、パイプ、ウェザーストリップ、シール、ガスケット、発泡体、履物及びベローズが挙げられる。これらの物品は公知の装置及び技法を用いて製造することができる。
【0056】
以下の実施例は本発明をさらに説明する。特に指定のない限り、全ての部及び百分率は重量による。
【実施例】
【0057】
比較例1〜3及び実施例1〜3:
【0058】
全ての実施例で使用する樹脂は、SI−LINK A6451 エチレン−シラン反応器共重合体(VTMS1.5重量パーセント)である。NACURE XC−B201 スルホン酸及びNACURE 1419 ブロックスルホン酸(両方ともにKing Industriesより入手可能)、及びα,α,α',α'−テトラメチル−1,3−ベンゼンジメタノール(BDM)も使用される。ポリマー組成物は次のように配合される。
【0059】
1.1分間に30回転で(rpm)混合するBrabenderミキシングボウルを用いて40グラムの組成物を製造する。
【0060】
2.樹脂を添加し、125℃で3分間溶融させる。
【0061】
3.スルホン酸及び/又はBDMを添加し、さらに3分間125℃で混合する。
【0062】
架橋速度は、120℃〜182℃の温度にて、移動ダイ・レオメーター(MDR)を用いて調査する(図1及び2)。すべての場合において、周囲水分の拡散は環境から生じた。
【0063】
図1を参照すると、A6451ポリマーは182℃で30分以内に単独で架橋しない。例え部分的な加水分解が起こったとしても、縮合は明白ではない。BDMの添加は、最初は効果がないが、約8分の誘導期間後、トルクが増加し始める。このことは、改良された溶融強度のために光架橋をもたらすのに十分な、僅かな加水分解及び縮合が進行中であることを示唆する。
【0064】
NACURE XC−B201及びNACURE 1419スルホン酸を使用すると、より高い値の最小トルクがもたらされ、これにより僅かな架橋がBrabenderで溶融混合する間に起こっていることが示される(図1)。環境からの(MDR装置中の)水分拡散は、押出プロセスの代表的温度で、A6451とNACURE XC−B201(ブロックされていないスルホン酸)の場合と比較して、A6451とNACURE 1419(ブロックスルホン酸)の架橋を遅らせる。相対的に高い濃度のNACURE 1419を使用するのは、この製品の酸濃度が低いことによる。BDMをスルホン酸触媒とともに添加すると、急速且つ望ましくないトルクの増加が起こり、ブロックされていないB201触媒は組成物を溶融加工に従わなくさせ、ブロックスルホン酸触媒との架橋を実質的に低下させ、従って組成物を溶融加工に従わせる。さらに、架橋の最終レベルは、BDMと組み合わせたブロックスルホン酸よりも高いことが望ましい。同様の傾向は、120℃及び140℃で、ブロックスルホン酸に加えて温度感受性の低いBDMを含有する組成物でも得られる。
【0065】
比較例4〜5及び実施例4〜6:
【0066】
用いた樹脂はSI−LINK A6451 エチレン−シラン反応器共重合体であった。Nacure XC−B201 スルホン酸(King Industriesの製品)、α,α,α',α'−テトラメチル−1,3−ベンゼンジメタノール(BDM)、2−メチル−1−フェニル−2−プロパノール及び3−フェニル−1−プロパノールを以下の通り添加した:
【0067】
−Brabenderミキシングボウルを30rpmで用いて250グラムの配合物を製造した。
【0068】
−樹脂を添加し、125℃で5分間溶融させた。
【0069】
−スルホン酸及びアルコールを添加し、125℃でさらに5分間混合した。
【0070】
MDRを用いて架橋反応速度を調査した。
【0071】
一貫した水分放出速度を達成する一方法は、BDMの代わりに反応性の低いアルコールを使用するか、又はモルベースでアルコール基の少ない単官能性アルコールを使用することである。図3は、水を放出する、酸触媒との脱離反応に対して異なる反応性をもつアルコールを使用するこの概念を説明する。触媒又はアルコールの不在下で、平らなトルクプロフィールを示すDFDA 6451(比較例4)のMDRデータに示されるように、ポリマーは架橋を全く招かない。この所見は全ての温度で一貫している。酸触媒(比較例5)を添加すると、ゆっくりであるが明確にトルク値が増加する。試験した温度範囲に関して、トルク値はあらゆる条件下で60分間に0.2ポンドを超えて上昇しない。これはシランの加水分解及び架橋に利用できる水の量が制限されていることに起因する。
【0072】
B−201とともに使用した、特に180℃及び200℃での、BDM(実施例4)のMDRデータは、急速なトルクの増加を示し、非常に早い架橋速度が示唆される。2−メチル−1−フェニル−2−プロパノール(実施例5)を使用するとトルクの着実な増加がもたらされる。このことにより、より遅いが一貫した水分放出速度が示され、材料は、溶融加工に対してより好ましくなる。最大トルク値がBDMに匹敵することも注目に値する。活性の低い第一級アルコールの使用は水分放出速度をさらに低下させる。3−フェニル−1−プロパノール(実施例6)を第三級アルコールの代わりに使用することにより、トルク変化の減少率により示されるように、水分放出の低下がもたらされる。
【0073】
図3:現場での水分発生及び異なる温度でのA6451 エチレン−シラン反応器共重合体の架橋へのアルコール反応性の効果
【0074】
図3はまた、これらのプロセスの硬化速度も質的に表す。いずれの場合にも、温度を変えることによる注目に値する傾向は見出されなかった。このことはこれらのプロセスに対する低い活性化エネルギーを指摘する。第一級アルコールによる低レベルの硬化は、その固有の反応性に一致する。第一級アルコールはまた、硬化レベルに影響を及ぼす、アルコールか又はシラノールのいずれかの別の分子とのエーテル形成にも関与しうる。
【0075】
同じポリマー組成物を130℃にて0.050インチのプラークに成形した。犬の骨の切断形態のこれらのサンプル(dog bones cut form these samples)は90℃で硬化し、高温クリープ実験(hot creep experiments)を行って硬化をモニターした。全てのサンプルを硬化する前に試験してベースライン性能を確立した。
【0076】
次の表は、20Nの力を用いて150℃で行った、高温クリープ実験のためのこれらのサンプルの伸び率(%)を表す。BDMは非常に活性のあるアルコールであり、混合している間に共重合体を硬化し始める。従って、架橋材料についての伸び%は、0時間の硬化時間であってさえも低い。アルコール反応性の硬化速度への影響は注目に値する。2−メチル−1−フェニル−2−プロパノールを使用すると、まず架橋されず、硬化速度がBDMに匹敵する材料がもたらされる。3−フェニル−1−プロパノールなどの第一級アルコールを使用することにより、さらにアルコール反応性を低下させると、さらに硬化速度が低下する。この材料は、16時間の硬化時間の後でさえも匹敵する硬化度には到達しない。
【0077】
表1:様々な硬化時間で130℃で作製した0.050インチのプラークに対する高温クリープ結果(伸び%)
【表1】

【0078】
前記明細書により本発明をかなり詳細に説明したが、この詳細は説明目的のためであって添付される特許請求の範囲への制限と解釈されるべきではない。全ての米国特許、許可された米国特許出願及び米国特許出願公開は、参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)シラン官能性ポリマーと、
(ii)多官能性アルコールと、所望により、
(iii)酸と
を含む、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記シラン官能性ポリマーが、エチレンとビニルトリアルコキシシランモノマーとの共重合体である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記多官能性アルコールが、α,α,α’α’−テトラメチル−1,3−ベンゼンジエタノールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記多官能性アルコールが、一般式(RCH3−xCHOH[Rが脂肪族又は芳香族であり、xが0〜2の値である]を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記多官能性アルコールが、2−メチル−1−フェニル−2−プロパノール、1−オクタノール、2−オクタノール、3−フェニル−1−プロパノール、又は1−フェニル−1−プロパノールの少なくとも1種である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記多官能性アルコールが、エチレングリコール、1,2−及び1,3−プロピレングリコール、1,2−、1,3−、2,3−若しくは1,4−ブタンジオール、ペンチルグリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,4−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、p−キシリレングリコール若しくは2,5ジクロロ−p−キシリレングリコール、2,2−(β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、N,N’−ビス(β−ヒドロキシエチル)−5,5−ジメチルヒダントイン、N,N’−ビス(β−ヒドロキシプロピル)−5,5−ジメチルヒダントイン、メチレンビス−[N−(β−ヒドロキシエチル)−5−メチル−5−エチルヒダントイン]、メチレンビス−[N−(β−ヒドロキシエチル)−5,5−ジメチルヒダントイン]、N’N’−ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンズイミダゾロン、N,N’−ビス(β−ヒドロキシエチル)−(テトラクロロ)ベンズイミダゾロン又はN,N’−ビス(β−ヒドロキシエチル)−(テトラブロモ)ベンズイミダゾロンの少なくとも1種を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記酸がブロックされた強酸である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記ブロックされた強酸がアルキル化アリールジスルホン酸である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記アルキル化アリールジスルホン酸が、次の構造;
【化4】

(式中、R及びRの各々は、同一であっても異なってもよく、且つ、6〜16個の炭素を含む線状若しくは分枝状アルキル基であり、yは、0〜3であり、zは、0〜3であり(ただし、y+zは、1〜4である)、nは、0〜3であり、Xは、−C(R)(R)−(式中R及びRの各々は水素であるか、又は独立に1〜4炭素の線状若しくは分枝状アルキル基であり、nは1である);−C(=O)−(式中、nは1である);−O−(式中、nは1である):−S−(式中、nは1〜3である);及び−S(O)−(式中、nは1である)からなる群から選択される二価部分である)の1つを有する、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記多官能性アルコールが、前記組成物の総重量に基づいて約0.01〜約5重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記酸が、前記組成物の総重量に基づいて約0.01〜約5重量%の範囲の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
ポリマー組成物を造形及び架橋する方法であって、前記組成物が、(i)シラン官能性ポリマーと、(ii)多官能性アルコールか又は(iii)酸と組み合わせた多官能性アルコールのいずれかを含み、前記方法が、
(A)前記ポリマー組成物を溶融加工条件に供するステップと、
(B)スコーチを最小限に抑えながら前記ポリマー組成物を造形するステップと、
(C)前記造形されたポリマー組成物を架橋条件に供するステップと
を含む、方法。
【請求項13】
前記造形ステップが、外装又は外被をケーブルの周囲に形成することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
請求項12の方法により作製される、造形された架橋ポリマー組成物から製造された二次加工品。
【請求項15】
ケーブル外装又はケーブル外被を含む、請求項14に記載の物品。
【請求項16】
前記物品が、繊維、リボン、シート、テープ、チューブ、パイプ、ウェザーストリップ、シール、ガスケット、発泡体、履物又はベローズである、請求項14に記載の物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−503257(P2011−503257A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532116(P2010−532116)
【出願日】平成20年10月13日(2008.10.13)
【国際出願番号】PCT/US2008/079724
【国際公開番号】WO2009/058545
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】