説明

シラン架橋性被覆組成物

本発明はISO15184による少なくともHBの鉛筆硬さを有する被膜に硬化できる被覆組成物(B)に関する。前記組成物は、一般式(6):−X−CH−Si(OR)3−xR′ [式中、Rは水素、それぞれ1〜6個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、炭素鎖は中断されていないかまたは隣接しない酸素、硫黄またはNR″基により中断され、R′はそれぞれ1〜12個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアリールアルキル基であり、炭素鎖は中断されていないかまたは隣接しない酸素、硫黄またはNR″基により中断され、R″は水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アミノアルキルまたはアスパルテート酸エステル基であり、Xは酸素、硫黄または一般式(20):−O−CO−NR″−の基であり、かつxは0または1である]のアルコキシシラン官能基を有するプレポリマー(A)を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は良好な硬化特性を有するシラン架橋性被覆組成物に関する。
【0002】
現在広い範囲の用途のための耐引っ掻き性被覆に対する大きい需要が存在する。この場合に特に自動車用の耐引っ掻き性トップコート材料が挙げられる。この関係で更にOEM被覆材料と修復用被覆材料の間で区別することが必要である。これらの被覆材料はまずその処理温度が相違する。OEM被覆材料は一般に130〜140℃で焼き付けるが、修復用被覆材料は80℃以下の温度で処理しなければならず、50℃または周囲温度がより良好である。
【0003】
現在市販されているOEMおよび修復用被覆の大部分は、部分的に保護された、イソシアネートオリゴマーおよびヒドロキシ官能性ポリマーからなる系である。しかしこれらの系はなお多くの欠点を有する。
【0004】
例えば一方で達成可能な耐引っ掻き性がなお不十分であり、従って例えば洗浄水中の粒子により洗浄通路に塗膜の顕著な引っ掻きを生じる。これが長い時間の間に塗膜の光沢を損なう。ここでより高い塗膜硬度の達成を可能にする組成物が求められる。
【0005】
従来の自動車トップコート材料の他の欠点は固体の割合が一部の場合に60%以下である溶剤ベースの系であることにある。非架橋性プレポリマーの高い分子量および相当する高い粘度および/またはガラス転移温度のために溶剤なしに処理することは事実上不可能である。
【0006】
最後にイソシアネートベース系は、イソシアネート含有成分が毒性的に問題があり、更に強く反応する作用を有するという重大な欠点を有する。従ってその使用の経過中に蒸気またはエーロゾルの吸入を防ぎ、皮膚の接触を防ぐために、費用のかかる予防手段を講じることが必要である。これは特に修復塗装の場合にきわめて不便であり。費用がかかる。イソシアネートベース被覆材料をより毒性的に問題のない系に交換することがいかなる場合にも求められる。
【0007】
しかし耐引っ掻き性被覆の可能な適用は自動車用のクリアコート材料に制限されず、他の多くの領域:特にプラスチック、特に相当するポリメタクリレートまたはポリカーボネートのような透明なプラスチックの耐引っ掻き性仕上げに拡大し、すぐれた耐引っ掻き性を有する被覆に対する高い需要が存在する。
【0008】
現在市販されている一般的なイソシアネートベース被覆材料のこれらの欠点により前記欠点をもはや有しない新しい塗料系に対する強い要求が存在する。1つの極めて有望な接近方法の場合に、出発点の化合物は一般式(1):
−Si(OR)3−xR′ (1)
[式中、
Rはアルキル基またはアシル基であり、
R′はアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、
xは0または1である]の加水分解可能のシリル基を有する有機オリゴマーまたはポリマーである。
【0009】
これらのシリル基は例えば大気の湿分からの水の存在で加水分解してSi−OH官能基を形成し、引き続き縮合してSi−O−Si橋を形成することが可能であり、その結果として被膜が硬化する。シリル基はオリゴマーまたはポリマーの他の有機主鎖上の末端または側面の位置に結合し、結合は加水分解安定なSi−C結合による。
【0010】
一般式(1)の基により三次元ネットワークに架橋できるポリマーまたはオリゴマーは以下にプレポリマーと記載する。
【0011】
近年これらのプレポリマーにもとづく多くの被覆が開発されたが、前記被覆は高い硬度により、および特にすぐれた耐薬品性および気候安定性により際立っている。
【0012】
相当するプレポリマーの加水分解可能なシラン基は一般にトリメトキシシリル基またはアルキルジメトキシシリル基である(一般式1においてRがメチルであり、xが0または1である)。これらのシラン単位を有するプレポリマーの製造のために種々の方法を選択することが可能である。
【0013】
従って特に欧州特許第44049号、欧州特許第267698号、欧州特許第549643号、および米国特許第4043953号は側鎖に位置するシラン基を有するプレポリマーを含有する被覆組成物を記載する。これらのプレポリマーはエチレン不飽和アルコキシシランと他の不飽和化合物との共重合により製造される。有利に(メタ)アクリル基を含有するシランを他の(メタ)アクリレートと共重合してアルコキシシラン官能性ポリメタクリレートを生じる。この反応において、例えばスチレンのような他の不飽和化合物を同様に共重合することももちろん可能である。この方法の不利な特徴は得られるポリマーが高い分子量を含むことであり、相当するポリマーは溶液の形でしか処理できない。
【0014】
欧州特許第1123951号は前記アルコキシシラン官能性ポリメタクリレートおよび他の被覆成分のほかに少なくとも2個のOH官能基を有するポリオールまたはアルコールおよびイソシアネート官能性アルコキシシランから製造された、シラン末端化プレポリマーを含有する被覆を記載する。しかしこの明細書で製造された被覆材料は溶剤不含でない。
【0015】
欧州特許第571073号は第3イソシアネート基を有するイソシアネートとアミノ官能性シランを反応させることによりシラン末端化プレポリマーが得られる、シラン架橋性被覆を記載する。この場合の1つの欠点は第3イソシアネートの取得が困難なことである。
【0016】
耐引っ掻き性被覆の製造に適しており。アルコキシシリル基の縮合により架橋する、高い硬度を有する被覆を製造するこれらのすべての試みは付加的に例外なく他の重大な欠点を有する。従ってシラン官能性ポリマーまたはオリゴマーの製造は専ら一般式(2)のビニルシランまたはヘテロ原子とシリル基の間にプロピルスペーサーを有する一般式(3)に相当する基を有するシランから出発する:
ビニル−Si(OR)3−xR′ (2)
−X−(CH−Si(OR)3−xR′ (3)
式中、
Rはメチル基であり、
R′はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアルキルアリール基であり、
Xは酸素、硫黄または式NR″の基であり、
R″は水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アミノアルキルまたはアスパルテートエステル基であり、
xは0または1である。
【0017】
しかしこの場合に得られるシラン官能性プレポリマーの反応性は平凡なものにすぎない。これらの化合物を使用して80℃以下の穏やかな温度で十分な硬化率を達成するために、重金属触媒、一般に有機錫化合物の添加が不可欠である。130〜150℃のかなり高い焼き付け温度においても重金属触媒なしに処理することはしばしば不可能である。
【0018】
重金属触媒の回避または使用される触媒の量の少なくとも明らかな減少は一方で毒性的見地から期待される。他方で触媒は被覆組成物の貯蔵安定性および硬化された被覆材料の耐性を低下することがある。同じ理由から1,4−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセ−7−エン(DBU)のような有機強塩基により硬化するフィルムの触媒活性化は同様に不利である。
【0019】
更に一般式(2)または(3)の平凡な反応性のシランを使用してメトキシ架橋性プレポリマー、言い換えると硬化した場合にメタノールを排出するプレポリマーを製造することができる。硬化した場合に毒性的に問題の少ないエタノールを排出するエトキシ架橋系は不可能であり、それはRがエチルである一般式(2)または(3)の化合物は高い濃度の触媒が存在しても十分な反応性が不足する。
【0020】
WO92/20463号は内部に存在するシラン官能性プレポリマーを有するトップコート材料でなく、代わりにベースコート材料に硬化触媒を添加することを提案する。二層コート系においてまず触媒を含有するベースコートを塗装し、引き続きトップコート材料で覆う。両方の被覆フィルムを一緒に乾燥または硬化させ、触媒がベースコート材料からトップコートフィルムに拡散する。これは一成分トップコート溶液の平凡な貯蔵安定性の問題を解決できるが、この方法では重金属触媒なしで済ませるかまたは触媒の量の減少を達成することは不可能である。
【0021】
ドイツ特許第2155258号は一般式(4):
−Y−CO−NH−Q−NH−CO−NR″−CH−Si(OR)3−zR′(4)[式中、
Qはアルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基またはアルキルアリーレン基であり、
Rはアルキル基、有利にメチル基またはエチル基であり、
R′はアルキル基、シクロアルキル基、アリール基またはアルキルアリール基であり、
R″は水素、アルキル、シクロアルキル、アリールまたはアミノアルキル基であり、
Yは酸素または式NR″の基であり、
xは0または1である]の架橋可能な末端基を有するシラン末端化プレポリマーを記載する。
【0022】
これらのプレポリマーはアルコキシシリル基の部分でのきわめて高い反応性により際立っており、これらのプレポリマーは重金属触媒の不在で、空気中で硬化する。これらの末端基を含有するエトキシ架橋性プレポリマーは記載されている。しかしドイツ特許第2155258号に記載されるプレポリマーは弾性被膜の製造にのみ適しており、耐引っ掻き性被膜の製造に適していない。従ってこれらの材料の場合にそれぞれ架橋可能なシリル基が2個の尿素単位を介してまたは1個の尿素単位と1個のウレタン単位を介してプレポリマーに結合する。しかし尿素単位および少ない程度であるがウレタン単位は水素結合を形成する能力を有し、水素結合は相当するポリマーの粘度およびガラス転移温度を高める。従って一般式(4)の架橋可能な末端基を有するプレポリマーは低い架橋可能なアルコキシシリル基密度を有するかまたは高い尿素基およびウレタン基密度によりガラス質固体であり、大いに希釈した溶液中でのみ処理できる。従って一般式(4)の末端基を有するドイツ特許第2155258号に記載されたすべてのプレポリマーは3質量%未満のアルコキシシリル基のきわめて低い割合を有するかまたは30%トルエン溶液のように多く希釈してのみ製造され、使用される。低い溶剤被覆組成物から高度に架橋した、従って耐引っ掻き性被膜を製造するために、これらのプレポリマーは適さない。
【0023】
更に一般式(4)の架橋可能な末端基を有するドイツ特許第2155258号に記載される化合物は重大な安定性の問題を有する。これらのアルコキシシリル基の反応性が高いにもかかわらず、制御も調節もできない。従ってこれらの化合物は空気中で困難な問題を有してのみおよびアルコールおよび酸無水物を含有する溶液中でのみ貯蔵安定性であり、処理できる。
【0024】
従って本発明の課題は、アルコキシシラン官能性プレポリマーから製造することができ、技術水準に相当する制限を有しない、良好な耐引っ掻き性を有する硬い被膜を提供することである。
【0025】
本発明により、ISO15184による少なくともHBの鉛筆硬さを有する被膜に硬化できる被覆組成物(B)が提供され、前記組成物は、一般式(6):
−X−CH−Si(OR)3−xR′ (6)
[式中、
Rは水素、それぞれ1〜6個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、炭素鎖は中断されていないかまたは隣接しない酸素、硫黄またはNR″基により中断され、
R′はそれぞれ1〜12個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアリールアルキル基であり、炭素鎖は中断されていないかまたは隣接しない酸素、硫黄またはNR″基により中断され、
R″は水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アミノアルキルまたはアスパルテートエステル基であり、
Xは酸素、硫黄または一般式(20):
−O−CO−NR″− (20)
の基であり、かつ
xは0または1である]のアルコキシシラン官能基を有するプレポリマー(A)を含有する。
【0026】
硬化可能な被覆組成物(B)は低い溶剤または溶剤不含の形で使用できる。前記組成物は高い反応性のために製剤にすることができ、ISO15184による少なくともHBの鉛筆硬さを有する耐引っ掻き性被膜に硬化する。
【0027】
特にプレポリマー(A)の製造は一般式(5):
NHR″−CH−Si(OR)3−xR′ (5)
[式中、R、R′、R″およびxは一般式(6)に関して記載された定義を表す]のアミノシランから出発しない。経済的な関心を有する塗装の場合はこれらのアミノシランはイソシアネート基との反応により尿素単位を形成して常にプレポリマーに結合する。
【0028】
本発明は以下の驚くべき知見の1つにもとづく。メチルスペーサーを介してヘテロ原子に結合した一般式(1)のアルコキシシリル基を有するプレポリマー(A)が湿分に対するきわめて高い反応性を有することが示された。しかし驚くべきことにこれらの高い反応性は酸性または塩基性化合物、例えば一般式(5)のアミノシランが微量でのみ存在する場合にのみ生じる。プレポリマー(A)のきわめて高い反応性がプレポリマー含有被膜の硬化に関して全く有利であるにもかかわらず、これらの高い反応性混合物の取り扱いはきわめて問題がある。しかし酸または塩基の不在でプレポリマー(A)は事実上反応性を有せず、従って問題なく処理し、貯蔵することができる。このことは適当な、例えば弱塩基性または酸性触媒の添加によるプレポリマー(A)の反応性の有効な調節および制御を可能にする。
【0029】
本発明は他の同様な驚くべき知見にもとづく。メチルスペーサーを介してヘテロ原子に結合した一般式(1)のアルコキシシリル基のきわめて高い密度を有するプレポリマー(A)の混合物を使用して、ヘテロ原子が尿素基の一部である窒素原子でない場合は、低い粘度を有して、溶剤不含または低い溶剤の被覆組成物(B)を製造できる。低い粘度の結果としてこれらのプレポリマー(A)は低い溶剤または溶剤不含の被覆系において有効に使用することができる。一般式(1)のアルコキシシリル基の高い密度を有するプレポリマー(A)の混合物を使用する、この種の被覆組成物(B)は硬化の進行中に高いネットワーク密度を有するネットワークを形成し、これにより耐引っ掻き性被覆にきわめて適した、きわめて硬い材料が得られる。
【0030】
基Rは有利にメチル基またはエチル基である。基R′は有利にメチル基、エチル基またはフェニル基からなる。基Xは有利に酸素または一般式(20)の基である。R″は有利に1〜12個の炭素原子を有する。R″は有利に水素である。
【0031】
アルコキシシラン末端化ポリマー(A)の主鎖は分枝状または非分枝状であってもよい。平均鎖長は非架橋性混合物および硬化した被覆の両方の具体的な所望の特性により任意に適合することができる。前記ポリマーは種々の成分からなっていてもよい。該当するポリマーは、例えばポリエーテル、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリシロキサン、ポリシロキサン−尿素/ウレタンコポリマー、ポリアミド、ポリビニルエステル、ポリビニルヒドロキシド、またはポリオレフィン、例えばポリエチレン、ポリブタジエン、エチレン−オレフィンコポリマー、またはスチレン−ブタジエンコポリマーである。異なる主鎖を有するポリマーの任意の所望の混合物または組み合わせを使用することはもちろん可能である。同様にプレポリマー(A)として一般式(6)の1個以上のアルコキシシラン官能基を有する任意の所望のモノマーまたはオリゴマー分子を使用することが可能である。この場合に同様に任意の混合物も可能である。
【0032】
一般式(6)のアルコキシシラン基はプレポリマー(A)の分枝または非分枝状主鎖の鎖端部に、末端に位置してもよい。鎖端部の全部または一部は一般式(6)のアルコキシシラン基を有することができる。更に一般式(6)のアルコキシシラン基がプレポリマー(A)の分枝または非分枝状主鎖の面に、側面に位置することも可能である。
【0033】
本発明の1つの有利な態様において、一般式(7)および(8):
CH=CHW−CO−O−CH−Si(OR)3−xR′ (7)
プロピレンオキシド−O−CH−Si(OR)3−xR′ (8)
[式中、WはCH基または水素であり、R、R′およびxは一般式(6)に関して記載された定義を表す]のシランを使用してシラン官能性プレポリマー(A)が製造される。
【0034】
一般式(7)のシランから他の不飽和化合物、例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルまたはスチレンとの共重合により一般式(6)の側面アルコキシシラン基を有するプレポリマー(A)を製造することが可能である。
【0035】
一般式(8)のシランから他のエポキシド、例えばエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドとの共重合により一般式(6)の側面アルコキシシラン基を有するプレポリマー(A)を製造することが可能である。同じシランから、このシランを、末端OH基を有するポリオールまたは有利に少なくとも2個のOH基を有するモノマーアルコールと反応させることにより、一般式(6)の末端アルコキシシラン基を有するプレポリマーを製造することが可能である。
【0036】
本発明の1つの特に有利な態様において、一般式(9):
OCN−CH−Si(OR)3−xR′ (9)
[式中、R、R′およびxは一般式(6)に関して記載された定義を表す]のシラン(A1)を使用してシラン官能性プレポリマー(A)が製造される。
【0037】
イソシアネートシラン(A1)はOH官能性プレポリマー(A2)と反応する。OH官能性プレポリマー(A2)の鎖長および分枝の程度に関していかなる制限もない。
【0038】
OH官能性プレポリマー(A2)が側面OH官能基を有するポリマーまたはオリゴマー化合物である場合は、一般式(6)の側鎖に位置するアルコキシシラン基を有するプレポリマー(A)が得られる。反対にOH官能性プレポリマー(A2)が末端OH官能基を有するポリマーまたはオリゴマー化合物である場合は、一般式(6)のアルコキシシラン基で終了するプレポリマー(A)が得られる。プレポリマー(A)の合成に関してシラン(A1)のほかにOH官能性プレポリマー(A2)および/またはモノマーアルコールの任意の所望の混合物を使用することが可能である。
【0039】
使用されるシラン(A1)のモル量がプレポリマー(A2)のOH末端基のモル数より小さいかまたは同じ大きさである場合は、NCO不含プレポリマー(A)が得られる。
【0040】
OH官能性プレポリマー(A2)が有利に少なくとも2個のOH官能基を有する1種以上のポリオール(A21)およびジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネート(A22)から形成される場合は、まずOH官能性プレポリマー(A2)を製造し、引き続きこれをシラン(A1)と反応させ、完成したプレポリマー(A)を形成するために、これらの成分(A21、A22)を使用することは必ずしも必要でない。しかしこの場合に、ポリオール(A21)をまずイソシアネートシラン(A1)と反応させ、引き続き得られた化合物をジイソシアネートまたはポリイソシアネート(A22)と反応させ、完成したポリマー(A)を生じることにより、反応工程を逆転することが同様に可能である。
【0041】
一般的なジイソシアネート(A22)の例はヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジイソシアネートナフタレン(NDI)、ジイソシアネートジフェニルメタン(MDI)、粗製MDIまたは工業的MDIの形で、および純粋な4、4′および/または2,4′異性体またはその混合物の形で、および種々の立体異性体の形のトリレンジイソシアネート(TDI)である。ポリイソシアネート(A22)の例はポリマーMDI(p−MDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、ビウレットトリイソシアネートおよび前記ジイソシアネートのすべてのイソシアネートである。IPDIまたはHDIのような脂肪族ジイソシアネートおよびこれらのジイソシアネートから形成されるイソシアヌレートまたはビウレット化合物が特に有利である。
【0042】
プレポリマー(A)の製造に特に適したポリオール(A2またはA21)は文献に広く記載されるような、芳香族および脂肪族ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールおよびヒドロキシル含有ポリアクリレートを含む。しかし原則的に2個以上のOH官能基を有する任意のポリマー、オリゴマーまたはモノマーアルコールを使用することができる。
【0043】
OH官能性プレポリマー(A2)および/または(A21)の代わりにまたはこれと一緒に、1個または有利に少なくとも2個のOH官能基を有するすべてのモノマーアルコールをプレポリマー(A)の製造に使用することが可能である。この場合に記載できる例はエチレングリコール、グリセリン、種々のプロパンジオール異性体、ブタンジオール異性体、ペンタンジオール異性体またはヘキサンジオール異性体、種々のペントースおよびヘキソースおよびこれらの誘導体またはペンタエリスロテトラオールのような化合物を含む。ポリオール成分(A2)および/または(A21)として種々のポリマーアルコールおよび/またはモノマーアルコールの混合物を使用することももちろん可能である。
【0044】
更にOH官能性ポリオール(A2、A21)と同様にプレポリマー(A)の製造に、有利に少なくとも2個のNH官能基を有するポリマーまたはモノマーアミンを使用することが可能である。ヒドロキシアルキルまたはアミノアルキル末端化ポリジオルガノシロキサンの使用が他の1つの可能性である。
【0045】
イソシアネートシラン(A1)およびOH官能性プレポリマー(A2)からのプレポリマー(A)の製造に触媒を使用することが有利である。この場合に適当な触媒はイソシアネートへのアルコールの添加に触媒作用するポリウレタン化学で知られたすべての化合物である。しかしイソシアネートシラン(A1)およびOH官能性プレポリマー(A2)からプレポリマー(A)を製造する場合に、完全に触媒なしに処理することも可能である。しかしその場合に極端に長い反応時間を回避するために、高温でプレポリマーの製造を行うことが有利である。
【0046】
1つの特に有利な方法の場合に、イソシアネートシラン(A1)およびOH官能性プレポリマー(A2)から錫触媒の存在でポリマー(A)を製造する。錫触媒の例は有機錫化合物、例えばジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセチルアセトネート、ジブチル錫ジアセテート、またはジブチル錫オクタノエートである。有利にジブチル錫ジラウレートを使用する。生じるポリマー(A)の錫含量が500ppm未満、有利に100ppm未満、より有利に50ppm未満であるように、有利にきわめて少ない濃度の錫触媒を使用する。
【0047】
ポリマー(A)の合成への錫触媒の使用は錫触媒がポリマー(A)の硬化反応がきわめて少ない触媒であるという驚くべき知見にもとづく。この発見は、一般式(6)の基以外のシラン末端基を有する一般的なシラン末端化ポリマーの場合に、存在する錫化合物が特に有効な触媒であるという事実により特に注目される。対照的にポリマー(A)は表示された濃度の錫触媒の存在でも十分に遅く反応し、適当な塩基触媒の添加によってのみ活性化される。
【0048】
被覆組成物(B)の急速な硬化を達成するために、前記組成物がアルコキシシラン官能性プレポリマー(A)だけでなく、一般式(6)のアルコキシシラン基の縮合反応を促進する触媒(K)を含むことが可能である。この場合に前記錫触媒のほかに、チタン酸塩、例えばチタン(IV)イソプロポキシド、鉄(III)化合物、例えば鉄(III)アセチルアセトネート、またはアミン、特に有機アミン、例えばアミノプロピルトリエトキシシラン(アミノプロピルトリメトキシシラン)、N−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン(N−(2−アミノエチル)アミノプロピルメトキシシラン)、N−アルキルアミノプロピルトリエトキシシラン(N−アルキルアミノプロピルトリメトキシシラン)、N,N−ジアルキルアミノプロピルトリエトキシシラン(N,N−ジアルキルアミノプロピルトリメトキシシラン)、N,N−ジアルキルアミノメチルトリエトキシシラン(N,N−ジアルキルアミノメチルトリメトキシシラン)、トリエチルアミン、トリブチルアミン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]−オクタン、ビス(N,N−ジメチルアミノエチル)エーテル、N,N−ビス(N,N−ジメチル−2−アミノエチル)メチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジメチルピペラジン、トリス(3−N,N−ジメチルアミノプロピル)アミン、N,N−ジメチルフェニルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−エチルモルホリニン、N−メチル−モルホリニン、2,2−ジモルホリノジエチルエーテル等を使用することができる。しかしこの場合に多くの他の有機および無機重金属化合物、有機および無機ルイス酸または塩基を同様に使用することができる。
【0049】
プレポリマー(A)の合成の間にすでに添加された同じ触媒を硬化触媒(K)として用いることがもちろん可能である。
【0050】
特に有利な触媒(K)は第三級アミンであり、例はすでに記載された第三級アミノ化合物である。窒素原子での立体障害性のために、これらの第三級アミンは適度の触媒活性を有し、高い保存安定性および良好な処理特性と結合した良好な硬化特性を有する被膜が得られる。この場合に窒素原子での立体閉鎖の程度により触媒(K)の触媒活性を調節することが可能である。
【0051】
触媒(K)は被覆組成物(B)に対して有利に0.01〜10質量%、より有利に0.01〜1質量%の濃度で使用する。純粋な形でおよび種々の触媒の混合物として種々の触媒を使用することができる。
【0052】
他の可能性は被膜を製造するために、被覆組成物(B)が1種以上の反応性希釈剤(R)を含むことである。適当な反応性希釈剤(R)は、20℃で有利に5Pas以下、特に1Pas以下の粘度を有する原則的にすべての低分子化合物であり、前記化合物は反応性アルコキシシリル基を有し、前記基を介して化合物が、被膜が硬化する間に発生する三次元ネットワークに組み込まれる。この関係で反応性希釈剤(R)は適当な場合は粘度を低下するためだけでなく、硬化した被膜の特性を高めるためにも用いることができる。従って例えば被覆組成物(B)中のアルコキシシリル基密度を更に増加し、従って硬化した被膜中のネットワーク密度を更に増加することができる。これは場合により前記被膜の部分により高い硬度を生じることができる。付加的に反応性希釈剤(R)は付着促進剤として使用され、それぞれの基材への被膜の付着を高めることができる。
【0053】
有利な反応性希釈剤(R)は安価なアルキル(メトキシ)エトキシシラン、例えばメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランおよびビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランおよびテトラエチルシランである。これらの化合物の部分的加水分解物も反応性希釈剤(R)として使用できる。
【0054】
一般式(6)のアルコキシシラン官能基を有する反応性希釈剤(R)、例えば一般式(10)または(11):
R″O−CH−Si(OR)3−xR′ (10)
R″−O−CO−NH−CH−Si(OR)3−xR′ (11)
(式中、R、R′、R″およびxは一般式(6)に関して記載されたものを表す)の反応性希釈剤(R)が同様に有利である。
【0055】
反応性希釈剤(R)は被覆組成物(B)の形成の間にはじめてまたは早くてもプレポリマー(A)の合成の間に添加することができる。
【0056】
被覆組成物(B)は結合剤として専らプレポリマー(A)および場合により1種以上の反応性希釈剤(R)を含有することができる。その場合に異なる種類のプレポリマー(A)を互いに混合することが可能であり、例は一般式(7)の(メタ)アクリロイルシランを使用して製造したポリ(メタ)アクリレートをベースとする骨格を有するプレポリマー(A)と、一般式(9)のイソシアネートシランを使用して製造したプレポリマー(A)を混合することである。
【0057】
被覆組成物(B)は、プレポリマー(A)および適当な場合は1種以上の反応性希釈剤(B)のほかに、更に一般式(6)のアルコキシシラン官能基を有しない結合剤(D)を含むことが可能である。適当な結合剤(D)は塗料製造から知られているすべての結合剤を含み、例はポリウレタン、ポリアクリレートまたはメラミン樹脂をベースとする結合剤および一般式(6)を有しないアルコキシシランを有する結合剤である。
【0058】
被覆組成物(B)は溶剤を含むかまたは溶剤を含まなくてよい。第1の場合に適した溶剤は塗料製造から知られているすべての溶剤および溶剤混合物である。本発明の1つの有利な構成において被覆組成物(B)は溶剤不含である。
【0059】
被覆組成物(B)は更に被覆物の製造で一般的な添加剤および付加物を含有することができる。この中でも特に流動助剤、界面活性剤、付着促進剤、UV吸収剤のような光安定剤および/またはラジカルスカベンジャー、チキソトロープ剤および例えば充填剤またはナノ粒子のような固形物を記載することができる。被覆組成物(B)および硬化被膜の両方の好ましい特性を達成するために、これらの添加剤は一般に避けられない。被覆組成物(B)はもちろん顔料を含有することができる。
【0060】
硬化した被覆組成物(B)は高い程度の硬度を有し、例えば車両塗膜のような耐引っ掻き性被膜として、プラスチックでの耐引っ掻き性被膜としてまたは木材での耐引っ掻き性被膜として使用するために適している。被覆組成物(B)はその適度な架橋条件にもとづきOEM被覆材料としておよび修復用被覆材料として使用することができる。
【0061】
しかし一般式(6)のアルコキシシラン基のかなり低い密度を有するプレポリマー(A)の使用により高い程度の硬度を有すると同様に特に高い弾性および良好な耐磨耗性を有する被膜を製造することが可能である。
【0062】
被覆組成物(B)の1つの特別な利点は一方で調節可能な、他方で場合によりきわめて高いプレポリマー(A)の反応性にある。従って適当な硬化触媒(K)の添加により50〜80℃で、特に有利には室温と同じく低い温度(20℃)で完全に硬化する被覆組成物(B)を得ることが可能である。異なる種類の硬化触媒(K)および異なる濃度の硬化触媒の使用により要求により。数分から数時間の間でそれぞれの硬化時間を調節することが可能である。
【0063】
調節可能な、必要により高いプレポリマー(A)の反応性の他の重要な利点はこれらのプレポリマーを使用して同様にエトキシ架橋被覆組成物(B)、すなわちエトキシシリル基を有する組成物(一般式(6)においてRがエチルである)が可能であるという事実にある。これらの組成物は硬化した場合にエタノールのみを遊離し、メタノールを全く遊離しないかまたは少ない量のみを遊離する。この種のエトキシ架橋被覆組成物(B)が同様に有利である。
【0064】
被覆組成物(B)は一般的な方法により、例えば吹き付け、浸漬、流れ塗り、ナイフ塗布またはほかのスピンコーティング技術によりそれぞれの基材に塗装することができる。
【0065】
前記式中のすべての記号はそれぞれ互いに独立にその定義を示す。すべての式において珪素原子は四価である。
【0066】
ほかに記載されない限り以下の実施例のすべての量および%は質量に関し、すべての圧力は0.10MPa(絶対圧力)であり、すべての温度は20℃である。
【0067】
例1
イソシアネートメチルトリメトキシシランの製造
クロロメチルトリメトキシシランから出発してメチルカルバメートメチルトリメトキシシランを公知の方法(米国特許第3494951号)により製造した。
【0068】
この物質をアルゴンガス流中で石英ウールを充填した石英熱分解管に圧入した。熱分解管中の温度は420〜470℃であった。粗製生成物を加熱部分の端部で凝縮器を用いて凝縮し、収集した。無色の液体を減圧下で蒸留により精製した。所望の生成物が約88〜90℃(82ミリバール)で99%より高い純度で頭頂を通過し、未反応カルバメートを塔底で再び単離した。この物質を直接熱分解に再び返送した。
【0069】
この方法でメチルカルバメートメチルトリメトキシシラン56.9g(273ミリモル)から出発して、所望のイソシアネートメチルトリメトキシシラン33.9g(191ミリモル)が97%より高い純度で得られた。これは理論値の70%の収率に相当する。
【0070】
例2
ポリオールおよび一般式(9)のシランからのプレポリマー(A)の製造
攪拌機、冷却装置および加熱装置を有する250ml反応容器に、平均分子量260g/モルを有するポリプロピレングリセロール34.63g(133.2ミリモル)を装入し、膜ポンプ真空下で100℃で1時間加熱することにより脱水した。引き続き約60℃に冷却し、この温度で窒素下にジブチル錫ジラウレート0.025g、イソシアネートメチルトリメトキシシラン64.49g(400ミリモル)を添加した。この添加の間、温度が85℃より高く上昇しないようにすべきであった。添加終了後、更に60分間60℃の温度で撹拌を継続した。この工程の経過中にイソシアネートメチルトリメトキシシランのイソシアネート官能基のみをポリオールのOH基と反応させた。ポリオールのOH官能基とイソシアネートメチルトリメトキシシランのトリメトキシシリル基の反応は原則的に考えられるが測定精度(NMR、HPLC−MS)の範囲内で検出できなかった。
【0071】
生じるプレポリマー混合物中でIR分光分析によりイソシアネート基が更に検出されなかった。20℃で約2.9Pasの粘度を有するメトキシシラン末端化プレポリマーの澄んだ、透明な混合物が得られた。他の触媒を添加せずに、この混合物は空気中で数時間の被膜形成時間を有し、更に問題なく取り扱い、処理することができた。
【0072】
例3
ポリオールおよび一般式(9)のシランからのプレポリマー(A)の製造
例2に記載された方法を繰り返したが、イソシアネートメチルトリメトキシシラン47.27g(266.7ミリモル)のみを添加した。ポリプロピレングリセロールとイソシアネートメチルトリメトキシシランの化学量論の比で、平均してポリオールの3個のOH官能基の2個のみをイソシアネートメチルトリメトキシシランと反応させて尿素基を形成することができた。
【0073】
生じるプレポリマー混合物中でIR分光分析により他のイソシアネート基が検出できなかった。20℃で約20Pasの粘度を有するメトキシシラン末端化プレポリマーの澄んだ、透明な混合物が得られた。他の触媒を添加せずにこの混合物は空気中で数時間の被膜形成時間を有し、問題なく取り扱い、処理することができた。
【0074】
例4
OH末端化ポリウレタンおよび一般式(9)のシランからのプレポリマー(A)の製造
攪拌機、冷却装置および加熱装置を有する250ml反応容器に、平均分子量260g/モルを有するポリプロピレングリセロール30.00g(115.4ミリモル)を装入し、膜ポンプ真空下で100℃で1時間加熱することにより脱水した。引き続き約60℃に冷却し、この温度でジブチル錫ジラウレート0.03gおよびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)7.30g(43.4ミリモル)を窒素下で添加した。この添加の間温度を80℃より高く上昇しないようにすべきであった。添加終了後、60℃の温度で更に60分間撹拌を継続した。
【0075】
この混合物を窒素雰囲気下に60℃でイソシアネートメチルトリメトキシシラン45.97g(259.4ミリモル)に添加した。添加の間、温度が再び80℃未満に維持されるべきであった。引き続き混合物を60℃で60分撹拌した。この工程の経過中にイソシアネートメチルトリメトキシシランのイソシアネート官能基のみをポリオールのOH官能基と反応させた。ポリオールのOH官能基とイソシアネートメチルトリメトキシシランのトリメトキシシリル基との反応は原則的に考えられるが、測定精度(NMR、HPLC−MS)の範囲内で検出できなかった。
【0076】
生じるプレポリマー混合物中でIR分光分析により更にイソシアネート基が検出されなかった。20℃で約9Pasの粘度を有する、澄んだ、透明な混合物が得られた。この混合物は更に触媒を添加せずに空気中で数時間の被膜形成時間を有し、問題なく更に取り扱い、処理することができた。
【0077】
例5
OH末端化ポリウレタンおよび一般式(9)のシランからのプレポリマー(A)の製造
例4に記載された方法を繰り返したが、第1反応工程でHDIを使用しなかった。その代わりにイソホロンジイソシアネート(IPDI)9.65g(43.4ミリモル)を添加した。
【0078】
生じるプレポリマー混合物中にIR分光分析により他のイソシアネート基は検出されなかった。20℃で約43Pasの粘度を有する、澄んだ、透明な混合物が得られた。この混合物は更に触媒を添加せずに空気中で数時間の被膜形成時間を有し、問題なく更に取り扱い、処理することができた。
【0079】
例6
OH末端化ポリウレタンおよび一般式(9)のシランからのエトキシシラン官能基を有するプレポリマー(A)の製造
例4に記載された方法を繰り返したが、第2反応工程でイソシアネートメチルトリメトキシシランを使用せず、その代わりにイソシアネートメチルトリエトキシシラン56.89g(259.4ミリモル)を添加した。
【0080】
生じるプレポリマー混合物中でIR分光分析により更にイソシアネート基が検出されなかった、20℃で約30Pasの粘度を有する、澄んだ、透明な混合物が得られた。この混合物は更に触媒を添加せずに空気中で数時間の被膜形成時間を有し、問題なく更に取り扱い、処理することができた。
【0081】
比較例1
ポリオールおよびγ−イソシアネートプロピルシランからの本発明でないプレポリマー(A)の製造
例2に記載された方法を繰り返したが、この場合にイソシアネートメチルトリメトキシシランを使用せず、その代わりにγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン82.11g(400ミリモル)を添加した。
【0082】
生じるプレポリマー混合物中でIR分光分析により更にイソシアネート基が検出されなかった。20℃で約1.6Pasの粘度を有する、澄んだ、透明な混合物が得られた。この混合物はほとんど反応性を有せず、空気中で数時間問題なく取り扱うことができる。
【0083】
比較例2(本発明でない)
OH末端化ポリウレタンおよびγ−イソシアネートプロピルシランからのプレポリマー(A)の製造
例4に記載された方法を繰り返したが、第2反応工程でイソシアネートメチルトリメトキシシランを使用せず、その代わりにγ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン53.25g(259.4ミリモル)を添加した。
【0084】
生じるプレポリマー混合物中でIR分光分析により更にイソシアネート基が検出されなかった。20℃で約32.32Pasの粘度を有する、澄んだ、透明な混合物が得られた。この混合物はほとんど反応性を有せず、問題なく空気中で数時間処理することができる。
【0085】
比較例3(本発明でない)
NCO末端化ポリウレタンおよびアミノシランからのプレポリマー(A)の製造
攪拌機、冷却装置および加熱装置を有する250ml反応容器に、平均分子量425g/モルを有するポリプロピレングリコール30g(70.6ミリモル)を装入し、膜ポンプ真空下で100℃で1時間加熱することにより脱水した。引き続き約50℃に冷却し、この温度で窒素下にヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)23.75g(141.2ミリモル)を温度が80℃より高く上昇しないような速度で添加した。添加が終了後、80℃で15分撹拌を継続した。
【0086】
混合物を約50℃に冷却し、反応性希釈剤としてビニルトリメトキシシラン5mlを添加した。これに続いてN−シクロヘキシルアミノメチルトリメトキシシラン32.95g(141.2ミリモル)を滴下し、引き続き80℃で60分撹拌した。
【0087】
生じるプレポリマー混合物中でIR分光分析により更にイソシアネート基が検出されなかった。しかしビニルトリメトキシシランの添加にもかかわらず、粘度は20℃ですでに100Pasよりはるかに高かった。この高い反応性を有する混合物はもはや処理できなかった。この材料を使用して被膜は製造できなかった。
【0088】
例6
被膜の製造
前記例のプレポリマーを、表1に数字で示された量で、適当な場合は溶剤(2K希釈剤、Herberts社)またはメチルトリメトキシシラン(M−TMO)、ビニルトリメトキシシラン(V−TMO)またはテトラエトキシシラン(TES)を用いて希釈し、適当な場合は硬化触媒としてビス(2−ジメチルアミノエチル)エーテルと混合した。表1に示されるすべての量は使用される質量による量に関する。
【0089】
完成した被覆材料を引き続きアルミニウム試験パネル(Pausch Messtechnik)に、エリクセン(Erichsen)社、コートマスター(Coatmaster)509MC フィルム引き出し装置を使用して、湿った被膜厚さ120μmで被覆した。生じる被膜を表1に示されるように室温または80℃で乾燥した。
【0090】
例2〜5からのプレポリマー(A)を含有する被膜は例外なく20〜30分後に完全に硬化した。製造した被膜の相当するリストを表1に示す。反対に本発明でない比較例1および2のプレポリマーから、乾燥温度および使用される触媒の量に関係なく、得られた被膜は例外なく数日後になお柔らかく、粘着性であった。
【0091】
【表1】

【0092】
例7
被膜の鉛筆硬度の測定
前記被膜の鉛筆硬度をISO15184により測定した。硬度試験をエリクセン引掻き硬度試験器、モデル291を使用して実施した。この試験の進行中に、等級に分けられた硬度を有する鉛筆を、試験層の上に、立てかけ角度を固定して、決められた荷重を有して進行させた。被膜硬さを線引き効果と浸透効果の境界で2つのレベルの硬度により決定した。
【0093】
結果を以下の硬度の程度に分ける。
(柔らかい)6B−5B−4B−3B−2B−B−HB−F−H−2H−3H−4H−5H−6H−7H−8H−9H(硬い)
相当する測定を1日経過した被膜と2週間経過した被膜を使用して行った。得られた値を表2に記載する。2週間より長く経過した被膜においてはもはや変化を検出できなかった。
【0094】
例8
アルミニウムに対する被膜の付着の測定
アルミニウムおよびスチールに対する本発明の被膜の付着をDIN53151により行った。
【0095】
付着試験をエリクセン、クロスハッチカッター、モデル295を使用してブレード間隔1mmで行った。クロスハッチ試験器を使用して、基材を貫通する2個のカットを互いに適当な角度で製造し、クロスハッチを形成した。手動のブラシを使用することにより、ブラッシングを5回、後と前に対角線の方向に行い、またはゆるんだ部分を接着テープで取り出した。処理した部分を、拡大鏡を使用して検査した。
【0096】
付着の程度を種々の特性値による比較により分類した。
5B:カットエッジが完全に滑らかであり、被膜の部分がはがれなかった。
4B:クロスハッチラインの交点で被覆材料の小さい断片がはがれた。約5%
3B:カットエッジに沿っておよび/またはクロスハッチラインの交点で被覆材料がはがれた。約5〜15%
2B:カットエッジに沿って部分的に完全にまたは広いストリップで被覆材料がはがれた。約15〜35%
1B:カットエッジに沿って部分的に完全にまたは広いストリップで被覆材料がはがれた。約35〜65%。
【0097】
1日経過した被膜および2週間経過した被膜で相当する測定を実施した。得られた値を表2に記載する。2週間より長く経過した被膜においてもはや変化が検出されなかった。
【0098】
【表2】

【0099】
比較目的のために、多くの市販されているトップコート材料の鉛筆硬度を測定した。130〜150℃の焼き付け温度で製造した一般的なポリウレタンOEM被覆材料の場合にHBとHの間の鉛筆硬度が測定された。80℃の乾燥温度で製造した一般的な修復用被覆材料の場合にBとHBの間の鉛筆硬度が測定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ISO15184による少なくともHBの鉛筆硬さを有する被膜に硬化できる被覆組成物(B)であり、前記組成物は、一般式(6):
−X−CH−Si(OR)3−xR′ (6)
[式中、
Rは水素、それぞれ1〜6個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、炭素鎖は中断されていないかまたは隣接しない酸素、硫黄またはNR″基により中断され、
R′はそれぞれ1〜12個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアリールアルキル基であり、炭素鎖は中断されていないかまたは隣接しない酸素、硫黄またはNR″基により中断され、
R″は水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アミノアルキルまたはアスパルテートエステル基であり、
Xは酸素、硫黄または一般式(20):
−O−CO−NR″− (20)
の基であり、かつ
xは0または1である]のアルコキシシラン官能基を有するプレポリマー(A)を含有する被覆組成物(B)。
【請求項2】
基Rがメチルまたはエチル基である請求項1記載の被覆組成物(B)。
【請求項3】
シラン官能性プレポリマー(A)が、一般式(7)および(8):
CH=CHW−CO−O−CH−Si(OR)3−xR′ (7)
プロピレンオキシド−O−CH−Si(OR)3−xR′ (8)
[式中、WはCH基または水素であり、R、R′およびxは請求項1の一般式(6)に関して記載された定義を表す]のシランを使用して製造される請求項1または2記載の被覆組成物(B)。
【請求項4】
シラン官能性プレポリマー(A)が、一般式(9):
OCN−CH−Si(OR)3−xR′ (9)
[式中、R、R′およびxは請求項1の一般式(6)に関して記載された定義を表す]のシラン(A1)を使用して製造される請求項1または2記載の被覆組成物(B)。
【請求項5】
プレポリマー(A)の急速な硬化を達成するために触媒(K)を含有する請求項1から4までのいずれか1項記載の被覆組成物(B)。
【請求項6】
触媒(K)が錫触媒および第三級アミンから選択される請求項5記載の被覆組成物(B)。
【請求項7】
被覆組成物(B)が反応性希釈剤(R)として20℃で5Pas以下の粘度を有する低分子化合物を含有し、前記化合物は反応性アルコキシシリル基を有し、前記アルコキシシリル基を介して前記化合物を被膜が硬化する間に発生する三次元ネットワークに組み込むことができる請求項1から6までのいずれか1項記載の被覆組成物(B)。
【請求項8】
反応性希釈剤(R)がアルキルトリメトキシシラン、アルキルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、これらの化合物の部分的加水分解物、および一般式(10)または(11):
R″O−CH−Si(OR)3−xR′ (10)
R″−O−CO−NH−CH−Si(OR)3−xR′ (11)
(式中、R、R′、R″およびxは請求項1の一般式(6)に関して記載された定義を表す)の化合物から選択される請求項7記載の被覆組成物(B)。
【請求項9】
一般式(6)のアルコキシシラン官能基を有しない結合剤(D)を更に含有する請求項1から8までのいずれか1項記載の被覆組成物(B)。
【請求項10】
溶剤不含である請求項1から9までのいずれか1項記載の被覆組成物(B)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ISO15184による少なくともHBの鉛筆硬さを有する被膜に硬化できる被覆組成物(B)の耐引掻き性被膜としての使用であり、前記組成物は、一般式(6):
−X−CH−Si(OR)3−xR′ (6)
[式中、
Rは水素、それぞれ1〜6個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、炭素鎖は中断されていないかまたは隣接しない酸素、硫黄またはNR″基により中断され、
R′はそれぞれ1〜12個の炭素原子を有するアルキル、シクロアルキル、アリールまたはアリールアルキル基であり、炭素鎖は中断されていないかまたは隣接しない酸素、硫黄またはNR″基により中断され、
R″は水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、アミノアルキルまたはアスパルテート酸エステル基であり、
Xは酸素、硫黄または一般式(20):
−O−CO−NR″− (20)
の基であり、かつ
xは0または1である]のアルコキシシラン官能基を有するプレポリマー(A)を含有する被覆組成物(B)の使用。
【請求項2】
基Rがメチルまたはエチル基である請求項1記載の使用。
【請求項3】
シラン官能性プレポリマー(A)が、一般式(7)および(8):
CH=CHW−CO−O−CH−Si(OR)3−xR′ (7)
プロピレンオキシド−O−CH−Si(OR)3−xR′ (8)
[式中、WはCH基または水素であり、R、R′およびxは請求項1の一般式(6)に関して記載された定義を表す]のシランを使用して製造される請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
シラン官能性プレポリマー(A)が、一般式(9):
OCN−CH−Si(OR)3−xR′ (9)
[式中、R、R′およびxは請求項1の一般式(6)に関して記載された定義を表す]のシラン(A1)を使用して製造される請求項1または2記載の使用。
【請求項5】
被覆組成物(B)がプレポリマー(A)の急速な硬化を達成するために触媒(K)を含有する請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
触媒(K)が錫触媒および第三級アミンから選択される請求項5記載の使用。
【請求項7】
被覆組成物(B)が反応性希釈剤(R)として20℃で5Pas以下の粘度を有する低分子化合物を含有し、前記化合物は反応性アルコキシシリル基を有し、前記アルコキシシリル基を介して前記化合物を、被膜が硬化する間に発生する三次元ネットワークに組み込むことができる請求項1から6までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
反応性希釈剤(R)がアルキルトリメトキシシラン、アルキルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラエトキシシラン、これらの化合物の部分的加水分解物および一般式(10)または(11):
R″O−CH−Si(OR)3−xR′ (10)
R″−O−CO−NH−CH−Si(OR)3−xR′ (11)
(式中、R、R′、R″およびxは請求項1の一般式(6)に関して記載された定義を表す)の化合物から選択される請求項7記載の使用。
【請求項9】
被覆組成物(B)が一般式(6)のアルコキシシラン官能基を有しない結合剤(D)を更に含有する請求項1から8までのいずれか1項記載の使用。
【請求項10】
被覆組成物(B)が溶剤不含である請求項1から9までのいずれか1項記載の使用。

【公表番号】特表2006−508202(P2006−508202A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−533336(P2004−533336)
【出願日】平成15年8月7日(2003.8.7)
【国際出願番号】PCT/EP2003/008784
【国際公開番号】WO2004/022625
【国際公開日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(390009003)コンゾルテイウム フユール エレクトロケミツシエ インヅストリー ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (17)
【氏名又は名称原語表記】Consortium fuer elektochemische Industrie GmbH
【住所又は居所原語表記】Zielstattstrasse 20,D−81379 Munchen,F.R.Germany
【Fターム(参考)】