シリコンウェーハの評価方法、製造方法、および、シリコンウェーハ
【課題】BMD存在状態を効率よく測定するとともにこのBMD存在状態のウェーハ面内方向均一化を図る。
【解決手段】ウェーハWを切断片W1に切断する工程と、
切断片W1をその断面W2が略面一になるように積み重ねて積片体Sとする工程と、
積片体Sの断面S0を画像処理手段Cで観測し、BMD存在状態を評価する工程と、
前記評価に基づいてフィードバックし、BMD存在状態がウェーハW面内方向に均一化するように製造条件を設定する工程と、
を有する。
【解決手段】ウェーハWを切断片W1に切断する工程と、
切断片W1をその断面W2が略面一になるように積み重ねて積片体Sとする工程と、
積片体Sの断面S0を画像処理手段Cで観測し、BMD存在状態を評価する工程と、
前記評価に基づいてフィードバックし、BMD存在状態がウェーハW面内方向に均一化するように製造条件を設定する工程と、
を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハの評価方法、その評価方法を使用する製造方法、および、その製造方法により製造されたシリコンウェーハに用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
CZ(チョクラルスキー)法または磁場を印加した引上法で引上成長されたシリコン単結晶を加工して作製されたシリコンウェーハは、酸素不純物を多く含んでおり、この酸素不純物は転位や欠陥等を生じさせる酸素析出物(BMD:Bulk Micro Defect)となる。この酸素析出物がデバイスが形成される表面にある場合、リーク電流増大や酸化膜耐圧低下等の原因になって半導体デバイスの特性に大きな影響を及ぼす。
【0003】
このため、特許文献1などには、シリコンウェーハ表面に対し、1050℃以上の高温で短時間の急速加熱・急冷の熱処理(RTA:Rapid Thermal Annealing)を所定の雰囲気ガス中で施し、内部に高濃度の原子空孔(Vacancy:以下、単に空孔と称す)を形成し、急冷により凍結するとともに、この後の熱処理で表面において空孔を外方拡散させることによりDZ層(無欠陥層)を形成する方法が用いられている。そして、上記DZ層形成後に、上記温度より低温で熱処理を施すことで、内側に酸素析出核を形成・安定化してゲッタリング効果を有するBMD層(欠陥層)を形成する工程が採用されている。
【特許文献1】特許第1643364号公報
【非特許文献1】H.MIYAIRI:Jpn.J.Appl.Phys.31(1992)Pt.2,No.9B
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のシリコンウェーハにおいては、上記BMD存在状態(分布)がウェーハ面内方向に均一でない場合があり、このようなBMD存在状態、例えば、DZ層の深さ等がウェーハ面内方向に均一にならないことによって、半導体デバイスの特性に大きな影響を及ぼすという問題があった。
【0005】
半導体デバイス特性、すなわち、シリコンウェーハ品質を特徴づけるBMD存在状態を分析・評価する方法としては、非特許文献1に記載されるように、ウェーハ断面を顕微鏡等により観察する方法が知られている。この技術では、シリコンウェーハの直径に沿った方向におけるBMD存在状態を観測することが可能である。
しかし、非特許文献1には、ウェーハ断面での深さ方向(厚さ方向)におけるBMD密度ピーク位置を計測するという記載はなく、さらに、BMD密度ピーク位置等BMD存在状態のウェーハ面内方向全域のデータを得ることという思想が記載あるいは示唆されてはいない。
【0006】
このため、非特許文献1の技術では、一断面の評価は容易におこない得るが、ウェーハ全体におけるBMD存在状態のマップ情報(ウェーハ深さ方向のデータをウェーハ面内方向全体のデータとしてもの)が得られないため、ウェーハ全体の評価ができないという問題があった。
さらに、非特許文献1に記載されたような方法を適応して、ウェーハ深さ方向のデータをウェーハ全体にわたるBMD存在状態として分析・評価しようとした場合、時間がかかかりすぎるため実際的でないという問題がある。
【0007】
また、ウェーハの量産段階に至ると、その品質改善・維持を果たす上で、ウェーハ状態を評価することが重要であるが、部分的なBMDのデータのみならず、ウェーハ面内方向全面データとしてのBMD存在状態データ、あるいはこれにかえてウェーハ全面を代表することが可能なデータを評価することが必要となってきた。
【0008】
このような、シリコンウェーハ面内方向全体(全面)における評価データは、後工程での半導体デバイス製造における歩留まりを最適化する上で非常に重要なものである。
また、BMD層やDZ層はデバイス工程で顕在化するため、デバイス工程前に、相当する熱処理をおこない評価をおこなったり、デバイスプロセス中にモニタウェーハを入れ析出状態を確認する方法があるが、いずれの場合も、ウェーハ全体にわたってのBMD存在状態の評価が重要となる。
【0009】
そして、上述した不均一なBMD存在状態は、CZ法によってインゴットを引き上げる際の条件、熱処理条件、熱処理治具、さらには、後工程の熱処理不具合等に起因すると考えられるが、根本的にこれらを改善するための技術は知られていなかった。
また、歩留まり改善のためにデバイス工程後にまとめるコンポジットマップ(後述)があるが、この不良位置とBMD存在状態との関連性を考慮して、上記の不良原因を改善し、その対策によって歩留まり改善を為すことはおこなわれていなかった。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、シリコンウェーハにおいて、BMD存在状態(分布)を効率よく測定して評価可能とすること、また、この評価に基づいてBMD存在状態の均一化を向上するという目的を達成しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のシリコンウェーハの評価方法は、ウェーハを平面視して短冊状の切断片に切断する工程と、
前記切断片の切断面が略面一の断面となるようにこれら切断片を積み重ねて積片体とする工程と、
前記断面を画像処理手段で観測し、BMD存在状態を評価する工程と、
を有することにより上記課題を解決した。
また、本発明の前記断面を表面処理することが好ましい。
また、本発明は、前記画像処理手段において、観測した各切断片における前記BMD存在状態を、前記ウェーハにおける平面位置に対応して3次元的に描画して評価することが可能である。
本発明は、前記画像処理手段において、複数のウェーハにおける前記BMD存在状態を基に、シリコン単結晶軸方向における各ウェーハのBMD存在状態を評価することができる。
本発明のシリコンウェーハの製造方法は、上記の評価方法によってウェーハのBMD存在状態を評価する評価工程と、
この評価工程に基づいてウェーハ面内方向および/または複数ウェーハ間でBMD存在状態が均一化するようにウェーハの製造条件を設定する工程と、
を有することにより上記課題を解決した。
本発明は、前記BMD存在状態とデバイス工程上での不良チップのコンポジットマップ図とを関連させ、
ウェーハ品質レベルの不具合が、デバイス工程、ウェーハ熱処理工程および単結晶製造工程のどの工程に起因するか解析し、これらの改善条件を設定することが望ましい。
本発明においては、前記BMD存在状態の評価工程の評価に基づいて、
デバイス工程におけるゲッタリング効果の最適化を図るようにウェーハ全体のBMD存在状態を調整する手段か、または、DZ層深さ寸法を最適化するようにウェーハ全体のBMD存在状態を調整する手段を採用することが可能である。
本発明のシリコンウェーハは、上記のシリコンウェーハの製造方法によって製造され、
ウェーハ面内方向および/または複数ウェーハ間で均一なBMD存在状態を有することにより上記課題を解決した。
【0012】
本発明のシリコンウェーハの評価方法においては、本体ロットから試験評価用に抜き取ったウェーハを矩形(短冊状)に切断してその切断片を積み重ねて、切断片の切断面が面一になるように断面を形成して、この断面をCCDカメラの付属した光学顕微鏡等の画像処理手段(撮影装置)で一度撮影し、この画像を画像処理手段(演算装置)で処理して各切断片の切断前位置に対応するウェーハ面内方向における各位置のデータとしてのBMD存在状態(分布)データとし、このウェーハ全体のデータを評価することで、ウェーハ全体に対して、BMDがどのような状態で存在しているかという状態を把握して、ウェーハの品質を評価することが可能となる。
さらに、この評価方法は、上述の非特許文献1のようにウェーハの断面を最長直径と同じ長さでスキャンする必要があり、かつ、全ての切断面ごとにこのスキャンする必要があったものと比べて、ウェーハ評価の処理時間を大幅に短縮することができる。
【0013】
ここで、「切断する」とは、劈開すること等切断片を形成する切断以外の方法をも含むものとされ、また、「切断面」とは、切断または劈開等によって形成された面を示し、また、「切断片」とは上記の「切断」によって断片化されたウェーハの破片を示すものとする。
また、「積み重ねる」とは、切断片を積層するとの意味で、各切断片を接着・固定して次の断面を形成するようにする手段であれば他の方法をも含むものとされるとともに、「断面」とは、上記の切断面を連続して形成される積層体の側面を示すものとする。
また、「画像処理手段」とは、CCDカメラ等の撮像装置および、この撮像装置によって取得した画像の画像処理をする演算装置・記憶装置・出力装置(表示装置)等を含むものとする。撮像装置の使用例としては画像解析装置 ライカ製Q500IW−EX(CCDカメラ:ソニー製XC−75CE)等がある。
【0014】
さらに、本明細書中、BMD存在状態とは、ウェーハ面内方向における所定の位置におけるBMDがどのように存在しているかという状態を示すもので、具体的には、ウェーハ面内方向の所定位置においてBMDがウェーハ深さ方向のどの位置に位置しているか、また密度はどの程度か、密度の深さ方向における変化度合いはどうか、密度の深さ方向ピーク位置がどうか、これらを含むBMD層とDZ層との状態はどのような分布状態かという情報(BMDデータ)と、これらの情報のウェーハ面内方向における配置をも含む情報(マップデータ)、特に、ウェーハ面内方向における、BMD深さ分布、BMD密度深さ分布、BMDピーク位置深さ分布、ウェーハ裏面および表面近傍のBMDピークに挟まれた部分のBMD密度分布、および、DZ層深さ(厚さ)分布を含むものとされ、このようなBMDの位置・分布等に関する情報を全て含んだデータとすることができる。
また、BMD存在状態の均一化と云った場合には、ウェーハ面内方向における均一化および、複数ウェーハ間における均一化を意味することができる。
【0015】
また、本発明のシリコンウェーハの評価方法においては、ウェーハ切断面を複数回スキャンすることなく、一度だけ前記断面を撮影することで一枚のウェーハ面内方向全体における各位置のBMDデータを測定することができるため、処理時間を短縮することができる。また、ウェーハ面内方向各位置のBMDデータから画像処理手段により、ウェーハ面内方向全体のBMD存在状態を算出して、画像処理手段の記憶装置等に記憶し、その後にマップデータとして出力装置等に表示するなどの出力をおこなうことができる。
【0016】
ここで、画像処理は演算装置でおこなわれるものとされ、撮像装置等によって得られた画像データにおいて、BMDの部分またはBMD密度の高い部分がそうでない部分より色が濃い(画面が暗い)ことから、この画像データの明暗を変換し、これをウェーハ深さ方向におけるBMDデータとして統計処理して、BMD存在状態を評価するという手段を採用することができる。
また、この画像処理においては、あらかじめ設定されたピクセル数および所定のアスペクト比によって規定される複数画素のグループ毎に、上述するように欠陥の状態を判断することで、画像データをBMDデータに変換することもでき、例えば、CCDカメラの各画素ごとにその明るさにより欠陥有無を判断し、このことから、画像データをBMDデータに変換することもできる。
【0017】
このとき、画像データをBMD存在状態とする画像処理においては、カメラとサンプル(積片体)との相対位置の座標を記憶し、さらにこの深さ方向のBMDデータを切断前のウェーハの面内分布となるように統計処理して、BMD存在状態を評価することができる。
【0018】
また、本発明の前記断面を表面処理することにより、画像処理手段によるBMDデータの取得をより容易にすることができる。
ここで、表面処理とは、上記の画像処理(撮影)の前処理として、例えば、表面粗研磨、鏡面研磨した上、セコ液やライト液といった選択エッチング液に浸してBMDの顕在化のためにおこなう処理を意味する。
これにより、前記断面の凹凸を減らして滑らかにし断面全体における画像データの正確性を向上するものとされ、特に、劈開により積片体を形成した場合などには有効である。その結果、画像処理手段における、光学顕微鏡を介してCCDカメラが捉えるBMD像をより鮮明にし、画像処理時の2値化を容易にすることができる。
【0019】
また、本発明のシリコンウェーハの評価方法では、前記画像処理手段において、観測した各切断片における前記BMD存在状態を、前記ウェーハにおける平面位置に対応して3次元的に描画することで、BMD存在状態をウェーハ面内方向全体におけるマップデータとして評価することが可能である。
これにより、ウェーハ製造における検査工程における自動的な合格/不合格処理判断や統計処理のデータや、あるいは、欠陥マップ、欠陥イメージ、コンポジットマップ等の欠陥データ解析、または、歩留まり解析システム等の解析システムの結果と、マップデータとしてのBMD存在状態と、を関連して評価することが容易になり、より正確な原因解析をおこなうことを可能とすることができる。
さらに、これらの原因解析によりデバイス欠陥やウェーハとしての不具合が、どの工程に起因するか、また、熱処理工程、デバイス工程などの工程のうち、どの要因に因るものかを解析することが可能となる。
【0020】
ここで、コンポジットマップとは、ある評価対象ロットの各ウェーハにおけるデバイス工程上の不良チップ位置データを、ロット中の各ウェーハのデータにわたって一枚のマップに加算したもので、例えば、コンポジットマップでウェーハ周縁一部分のみに不良チップが集中していた場合には、その部分への製造工程中の汚染源の存在等が考えられる、というものである。
【0021】
本発明のシリコンウェーハの評価方法では、前記画像処理手段において、本体ロットから試験評価用に抜き取った複数のウェーハ間における各ウェーハのBMD存在状態を比較評価することにより、シリコン単結晶軸方向における各ウェーハのBMD存在状態を評価することができ、単結晶製造工程に起因する欠陥の原因解析をおこなうことが可能となる。
【0022】
本発明のシリコンウェーハの製造方法は、上記の評価方法によってウェーハのBMD存在状態を評価する評価工程と、この評価工程に基づいてウェーハ面内方向でBMD存在状態が均一化するようにウェーハの製造条件を設定する工程と、を有することにより、BMD存在状態評価結果からフィードバックしてウェーハの処理条件を設定して、BMD存在状態がウェーハ面内方向に均一化したウェーハを提供することが容易になる。特に、ウェーハ品質に影響のあるファクターとして、DZ層の深さ寸法、深さ方向のBMD密度ピーク分布をウェーハ面内方向で所定の適性値範囲に設定したウェーハを提供することが容易になる。
これにより、素子製造後のリーク電流増大や酸化膜耐圧低下等、半導体デバイスの特性に大きな影響を及ぼしてしまうことを防止できるとともに、ウェーハにおけるゲッタリング効果を最適化することが可能となる。従って、ウェーハ製造における歩留まりを向上することが可能となる。
【0023】
本発明のシリコンウェーハの製造方法は、上記の評価方法によってウェーハのBMD存在状態を評価する評価工程と、この評価工程に基づいて複数ウェーハ間でBMD存在状態が均一化するようにウェーハの製造条件を設定する工程と、を有することにより、所定のロットにおける複数ウェーハ間におけるBMD存在状態評価結果からフィードバックしてウェーハの処理条件を設定してBMD存在状態が均一化された複数ウェーハを提供することが容易になる。同時に、BMD存在状態評価結果からフィードバックして単結晶製造条件を設定してBMD存在状態が複数ウェーハ間で不均一になることを低減することが容易になる。
【0024】
これにより、素子製造後のリーク電流増大や酸化膜耐圧低下等、半導体デバイスの特性に及ぼす影響を低減して、ゲッタリング効果を最適化したウェーハを提供することが可能となる。従って、ウェーハ製造における歩留まりを向上することが可能となる。
また、デバイスプロセス固有の要求BMD存在状態を提供することで、デバイスプロセスに最適な品質のウェーハを提供でき、これにより、最大のデバイス収率を得られるという効果を奏する。
【0025】
本発明は、前記ウェーハ面内方向におけるBMD存在状態とデバイス工程上での不良チップのコンポジットマップ図とを関連させ、ウェーハ品質レベルの不具合が、デバイス工程、ウェーハ熱処理工程および単結晶製造工程のどの工程に起因するか解析し、これらの対策のためのプロセス条件改善や最適化を図ることができる。ここで、ウェーハ品質レベルでの不具合とは、デバイス工程後の不良チップの割合をウェーハとして評価したものとする。
【0026】
上記プロセス条件改善や最適化とは、ウェーハ面内方向BMD存在状態の評価に基づくフィードバックとして、ウェーハ面内方向BMD存在状態均一化を図るために、材料結晶の選択、単結晶成長条件の変更あるいは後述するウェーハの処理条件を設定することを示す。
【0027】
ウェーハ処理条件とは、RTA温度条件、同昇温速度、同降温速度、保持温度およびこれらの処理時間等を意味するものである。
これらの条件は、例えば、BMD存在状態のフィードバックの結果として、ウェーハ表面付近に位置するDZ層の深さを3μm程度以上50μm程度以下の所定値に設定するとともに、DZ層の内側にあるBMD層におけるBMD分布を、図3に示すようなウェーハ表面・裏面のDZ層を越えた深さにピークを有する状態に設定することができる。また、BMD層におけるBMD密度を、106 個/mm3 〜1011 個/mm3 とすることがこのましい。
【0028】
このようなBMD存在状態を得るようにフィードバックすることにより、デバイスの活性領域に形成された半導体素子の接合リーク電流増大や酸化膜耐圧低下等、半導体デバイスの特性に大きな影響を及ぼしてしまうことを防止するとともに、充分なゲッタリング効果を有するウェーハを提供することが可能となる。
【0029】
本発明においては、前記BMD存在状態の評価工程の評価に基づいて、デバイス工程におけるゲッタリング効果の最適化を図るようにウェーハ全体のBMD存在状態を調整する手段か、または、DZ層深さ寸法を最適化するようにウェーハ全体のBMD存在状態を調整する手段を採用することが可能である。
具体的には、DZ層が薄すぎる場合には、熱処理温度を下げる、また、DZ層が厚すぎる場合には、熱処理温度を上げる、BMD層が薄すぎる場合には、熱処理温度を下げるか、降温速度のレート(急冷)を下げる、また、BMD層が厚すぎる場合には、熱処理温度を上げる、BMD密度が充分でない場合には、RTA処理温度を上昇させることにより、BMD密度を最適化する、また、BMD密度過多の場合、素材単結晶の酸素濃度を下げる、というように、製造条件へのフィードバックをおこない、BMD存在状態の最適化をおこなうことができる。
【0030】
本発明のシリコンウェーハは、上記のシリコンウェーハの製造方法によって製造され、ウェーハ面内方向および/または複数ウェーハ間で均一なBMD存在状態を有することによりウェーハ品質のよいウェーハを提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のシリコンウェーハの評価方法および製造方法によれば、ウェーハを切断片として積み重ね、この断面をCCDカメラ等の画像処理手段で一度撮影し、この画像を画像処理して評価することで、従来の方法に比べて、その処理時間を大幅に短縮することができ、上記の評価方法によって、ウェーハ面内方向データとしてのBMD存在状態を評価し、この結果をフィードバックしてウェーハの製造条件を設定することで、BMD存在状態がウェーハ面内方向に不均一になることを低減して、リーク電流増大や酸化膜耐圧低下等、半導体デバイスの特性に大きな影響を及ぼすことを防止できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明に係るシリコンウェーハの評価方法、製造方法、および、シリコンウェーハの一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の評価方法を示す模式図であり、ウェーハ切断状態と積片体を示すものであり、図2は、本実施形態の評価方法を示す斜視図である。図において、符号Wはウェーハ(シリコンウェーハ)、W1は切断片である。
【0033】
本実施形態のシリコンウェーハの製造方法においては、図7に示すフローチャートのように、ステップS3〜S6で示すシリコンウェーハの評価方法によってウェーハWを評価し、この評価に基づいて製造するものである。したがって、評価方法を先に説明する。
【0034】
本実施形態の評価方法においては、ウェーハWのBMD存在状態を評価するものである。
このために、本実施形態においては、図7において、ステップS3で示されるウェーハ切断工程として、図1に示すように、ウェーハWを平面視して略矩形の切断片W1,W1に切断し、次に、ステップS4で示される積片体形成工程(切断片積重工程)として、これら切断片W1,W1を積み重ねて積片体Sとする。
この切断工程において、(1,1,0)面からの劈開を利用して、各切断片W1をウェーハWから切断することがもできる。
【0035】
このとき、例えば切断片W1の同一方向の切断面、つまり、図1のウェーハWにおいて、各切断片W1の上側の切断面W2が略面一になるように積層するとともに、平面視して切断面(断面)W2と直交するウェーハWの中心線Lが一致するようにして積み重ねて接着し積片体Sを形成する。ここで、接着方法としては、アダルタイト等の接着剤を用いることができる。
さらに、図1、図2に示すように、この積片体Sの断面S0を鏡面状に研磨し、選択エッチングしておく。
【0036】
次いで、ステップS5で示される断面測定工程として、この切断面W2,W2で形成された積片体Sの側面(断面)S0を、図2に示すように、画像処理手段における撮像装置としてのカメラCで観測し、BMD分布を評価する。この画像処理手段の撮像装置は、光学顕微鏡付きのCCDカメラ等とされ、ウェーハW切断面で得られる一定の画像信号処理により、ウェーハ端を検出して測定を開始できるエッジ検出機能を有するものとされる。
【0037】
ここで、切断片W1,W1はそれぞれ、ウェーハWを平面視して幅0.5〜1.0cm程度の寸法に切断することが好ましい。
また、積片体Sとして重ね合わせるものは、デバイスとして実際に使用する部分のみでよく、略円形のウェーハWのうち、図1に示すように縁部の切断片W1’は、その切断面W2が隣り合う切断片W1の相当する切断面W2で評価をおこなうことが可能なため、使用しないこともできる。このとき、この各切断片W1,W1のウェーハWにおける切断前の位置と、各切断片W1,W1を積片体Sとして積層した順番とを画像処理手段の記録装置等に記録しておく。
【0038】
側面S0を画像処理手段のカメラCで撮影した後、この映像を画像処理手段の画像処理装置により画像処理することで、BMD存在状態を評価する。このとき、CCDカメラの所定の画素部分に対応する画像信号が明視野では黒くなっている状態の場合、これをBMDが存在するものだと判断し、そうでない状態の場合、BMDがないと判断する。このように撮影された映像を示す模式図を図4に示す。
ここで、所定の画素部分とは、連続するあらかじめ設定したアスペクト比に対応した形状とされる画素部分、例えば連続する上下2つの画素を一つの単位画像部分とすることができる。
【0039】
図4はウェーハWまたは切断片W1の表面に対応した図であり、ウェーハWの裏面に対応した場合も同様の状態とすることができる。図においては、ウェーハWまたは切断片W1の表面側に対応してDZ層Dが存在し、その内側(図では下側)にBMDの存在するBMD層Bが存在する。
図において、黒班で示すものがBMDを表している。また、DZ層の深さとは、図4に示すように所定の間隔Δxごとに黒班の領域を結んで仮想包絡線Kを形成し、ウェーハ表面からこの仮想包絡線Kまでの距離D1,D2,D3・・・をそれぞれ図3に示すDZ層深さとする。
【0040】
ここで、画像処理におけるスキャンニングは、図2において示すように積片体Sとして積層した切断片W1,W1をその長さが最小となるようにスキャンするものとする。例えば、図2に示す側面S0において、最上部に積層された切断片W1の左端側から右端側に向かってスキャンし、続けてそのすぐ下側に位置する切断片W1を右端側から左端側に向かってスキャンし、同様にそのすぐ下側に位置する切断片W1の左端側から右端側に向かってスキャンする・・・というように、全ての切断片W1にわたってスキャンするものとする。
【0041】
このような画像データからDZ層Dの深さ寸法、BMD層Bの深さ寸法、およびBMD密度、BMD密度ピーク位置等を算出し、これをウェーハWの深さ方向分布として、数値データに変換する。そして、このデータを先に記憶した切断片W1の切断前の位置に応じて並べ替えるように変換し、ウェーハwの面内方向分布データとしてマップデータ化し、BMD存在状態とする。
【0042】
図5、図6は本実施形態におけるBMDデータをマップデータとしたものである。
図5において、BMD存在状態の一例として、ウェーハ面内方向(X−Y方向)に対する各短冊状に切断した切断片W1のDZ層深さデータ、つまりウェーハW面内方向におけるDZ層深さデータをZ方向にDxとしたものを示す。このDZ層深さDxは、図4におけるD1,D2,・・を連続したものに対応している。
図6は、BMD存在状態の一例として、ウェーハW面内方向におけるBMDピークの表面からの深さをデータとしてZ軸方向にプロットしたものであり、図において、BpはBMDピーク深さを示す。
【0043】
次いで、ステップS6に示すように、これらの数値から評価対象であるウェーハWを評価する。
【0044】
つまり、評価対象であるウェーハWに対して、BMD存在状態の値がウェーハ面内全体で所定の範囲内にあるか否かをそれぞれチェックして、対象ウェーハWの面内方向における各数値が上記の範囲内にある場合には、出荷可能な製品として評価する。また、これらの数値が、上記の範囲内にない場合には、後述するように製造工程の条件をフィードバックして改善するという評価とする。
このBMD存在状態が所定の範囲とされる例としては、例えば、DZ層Dの深さDxが3μm程度以上50μm程度以下に設定されることや、BMD層Bピーク密度の値が108mm3程度以上1012mm3 程度以下の範囲の所定値に設定されることができる。
【0045】
これは、上記BMD存在状態の各値がその範囲に設定されていない場合には、充分なゲッタリング効果を得ることができない可能性や、接合リーク電流増大や酸化膜耐圧低下等、半導体デバイスの特性に大きな影響を及ぼしてしまう可能性があり好ましくないためである。
デバイス工程でのウェーハ評価法としては、さらに、ウェーハ面内のチップ不良分布と、あるいはそれらの分布をウェーハ間でまとめ、より不良が再現されやすいコンポジットマップとし、このようなデバイス不良分布データと、上記のBMD存在状態との相互評価をおこない、最適化を図るためのデータとすることができる。
【0046】
次に、上記の評価方法からフィードバックをおこなうシリコンウェーハの製造方法を説明する。
【0047】
本実施形態のシリコンウェーハの製造方法では、CZ法により引き上げたインゴットからウェーハWを切り出し、図7のステップS1に示す単結晶製造品質確認工程として、ウェーハWを切りだしたインゴットの成長時における酸素濃度等の結晶成長条件を確認するとともに、このウェーハWがインゴットの軸方向におけるどの位置にあったのかを確認する。
【0048】
次いで、ステップS2に示す熱処理工程として、まず、アルゴンガス等の不活性ガス又は水素ガス等の還元性ガスの雰囲気中で、1050℃以上1250℃以下の高温で短時間の急速加熱・急冷の熱処理(RTA)を施し、内部に高濃度の空孔(Vacancy)を形成し、急冷により凍結する。このときの熱処理時間は1〜60secとされ、昇温速度は、例えば、30〜70℃/secとされ、また、降温速度は5〜500℃/secとされる。
【0049】
この熱処理(RTA処理)後に、該熱処理より低い温度で、空孔への酸素析出をおこなうために熱処理(例えば、800℃4時間の熱処理に連続して1000℃16時間の熱処理)を熱処理炉などでほどこすことにより、表層では、空孔の外方拡散と酸化膜形成にともなう格子間Siの注入による空孔と格子間Siによる対消滅によって表層にDZ層Dを形成するとともに、内部(特に表面近傍)に酸素析出による高BMD密度のBMD層Bを形成する。
【0050】
上記酸素析出のための熱処理により、図4に示すように、深さ方向のBMD密度はM型の分布となり、表面近傍に最大値(BMDピーク密度)を有するとともに深さ方向の中間部分に極小値(BMDバルク密度)を有する。そして、このBMDピーク密度は、BMDバルク密度に対して2倍以上となるよう設定する。BMDピーク密度は、BMDバルク密度に対して3倍以上となるよう設定してもかまわない。
【0051】
次に、ウェーハWの評価をおこなうために、前述のステップS3〜S6の各工程をおこなう。ステップS6の評価により、OKとされた場合には、ステップS8の製品化工程を経て製品として出荷されるとともに、NOとされた場合には、その状態に応じてフィードバックし、ステップS7に示すように、ウェーハ処理条件としての熱処理工程S2における条件で改善可能なものは、各条件を修正、あるいは、結晶特性値条件、例えば、酸素濃度レベル制御をおこなう。またステップS7において、ステップS2の熱処理で改善不可能な状態であれば、ステップS1に戻って、インゴットの選定をやりなおすかまたは単結晶(インゴット)製造工程の製造条件を修整する。
【0052】
ここで、ステップS2に戻って改善されるウェーハ処理条件としては、RTA温度条件、同昇・降温速度、酸素析出熱処理温度条件、各処理時間等が挙げられる。
これらの条件を修正することにより、BMD存在状態が適性な範囲になるようにする。
【0053】
例えば、ステップS6において、図5に示すDZ層深さDxが所定の範囲から逸脱している場合には、どの工程に起因するものかを判断し、ステップS7において、熱処理工程S2に起因するものだと判断した場合には、次のように製造条件にフィードバックする。
例えば、図5に示すDZ層深さDxの所定の範囲からの逸脱が、熱処理中に発生した欠陥に起因するものだと判断された場合には、熱処理治具の形状対策を施すことができる。
また、図6の情報から、BMD存在状態が所定のウェーハ品質に対して適合しているかどうかを判断してウェーハを評価し、この条件を図5の例と同様に製造条件にフィードバックすることにより、最適なBMD存在状態やゲッタリング能力制御をおこなうことができる。
【0054】
また、具体的に各条件をフィードバックして修正する例としては、次のようのものがある。
1. DZ層Dの深さが2μm程度の部分が存在する等薄すぎる場合には、熱処理温度を下げて調節する。
2. DZ層Dの深さが10μm程度以上である等厚すぎる場合には、熱処理温度を上げて調節する。
3. また、BMD層Bピーク深さが50μm以上と厚すぎる場合には、熱処理温度を上げて調節する。
4. BMD層Bピーク深さが10μm程度と薄すぎる場合には、熱処理温度を下げるか、降温速度のレート(急冷)を下げて調節する。
5. また、BMD層BにおけるBMD密度が充分でない場合には、RTA処理温度を上昇させる。
【0055】
本実施形態のシリコンウェーハの評価方法においては、ウェーハWを矩形の切断片W1として積み重ねて積片体Sとし、この積片体S1のS0をCCDカメラCで一度撮影し、この画像を画像処理して評価することで、ウェーハWの面内方向全体のデータであるBMD存在状態を評価することが可能となる。これにより、従来のようにウェーハWの断面を最長直径と同じ長さでスキャンするだけではウェ−ハの全体にわたるDZ層深さ分布やBMD密度ピーク深さ分布などの重要な分布情報が得られず、デバイスの所望するBMD存在状態制御が充分におこない得なかった状態を改善することができる。また、正確なBMD存在状態、例えばウェーハW面内のDZ層深さ分布、BMD密度ピーク深さ分布等を把握することができ、これらの分布から、熱処理条件、熱処理治具形状、結晶特性、結晶製造条件へのフィードバックをおこなうことができるため、デバイスの所望する最適品質を有するウェーハを得ることが可能となる。
【0056】
また、全ての切断片W1切断面ごとにこのスキャンをおこなう必要がないため、処理時間を大幅に短縮することが可能となる。さらに、ウェーハWの切断面を複数回スキャンすることなく、一度だけ側面S0を撮影することでウェーハW面内方向データであるBMD存在状態を測定することができ、処理時間を短縮することができる。
【0057】
本実施形態のシリコンウェーハの製造方法は、上記の評価方法によって、BMD存在状態を評価し、この結果をフィードバックしてウェーハ製造工程の熱処理工程における処理条件を設定することで、ウェーハ面内でBMD存在状態の均一化を図ることができ、DZ層Dの深さ寸法DxおよびBMD層Bの深さ寸法Bp等のBMD存在状態をウェーハ面内方向全体で適性な値の範囲とすることが容易になる。これにより、リーク電流増大や酸化膜耐圧低下等、半導体デバイスの特性に大きな影響を及ぼすことのないシリコンウェーハWを製造することができる。
【0058】
なお、本実施形態においては、シリコンウェーハの評価方法によってウェーハWの熱処理条件にフィードバックをおこなった例を示したが、インゴット製造の工程における酸素濃度レベル、酸素濃度分布等の条件にフィードバックすることもできる。
【0059】
具体的には、ステップS6,S7において、図5に示すDZ層深さDxの所定の範囲からの逸脱が、リング状の分布で結晶の酸素濃度分布、あるいは、欠陥分布起因であれば、素材料結晶の品質特性にフィードバックして、インゴットの選択をおこなうか、インゴットの引き上げ時の条件にフィードバックすることにより分布改善を図ることができる。
また、図6の情報から、BMD存在状態が所定のウェーハ品質に対して適合しているかどうかを判断してウェーハを評価し、この条件を図5の例と同様に、材料結晶の選択、成長条件の変更等製造条件にフィードバックすることにより、最適なBMDピーク位置の制御をおこなうことができる。
【0060】
この場合には、以下のような条件でフィードバックをおこなうことができる。
1. DZ層Dの深さが2μm程度の部分が存在する等薄すぎる場合には、素材結晶の酸素濃度をOLD ASTM値0.1×1018atoms/cm3 単位で下げることにより制御できる。
2. DZ層Dの深さが10μm程度以上である等厚すぎる場合には、素材結晶の酸素濃度をOLD ASTM値0.1×1018atoms/cm3 単位で上げることにより制御できる。
3. また、BMD層Bのピーク位置深さが50μm程度と厚すぎる場合には、素材結晶の酸素濃度をOLD ASTM値0.1×1018atoms/cm3 単位で上げることにより制御できる。
4. BMD層Bのピーク位置深さが5μm程度と浅すぎる場合には、素材結晶の酸素濃度をOLD ASTM値0.1×1018atoms/cm3 単位で下げることにより制御できる。
5. また、BMD層BにおけるBMD密度が充分でない場合には、素材結晶の酸素濃度をOLD ASTM値0.1×1018atoms/cm3 単位で上げることにより制御できる。
【0061】
(実施例)
以下、本発明に係る実施例を説明する。
図8は、図4の模式図に対応したウェーハ断面を示す実際の画像であり、(a)では全体にBMDが分布する例であり、(b)および(c)は表面側にDZ層が形成されかつ厚み方向中央部分にIG層(BMD層)が形成された例である。
これら図8の画像において、黒くなっている部分、および、そうでない部分が明確に判別でき、これらの画像から、BMDが存在する部分とBMDがない部分とを判断することで、BMD存在状態を評価すること、例えば、表面側のDZ層(無欠陥層)の存在が判別可能なことがわかる。
【0062】
図9は上述した図2に示す実施形態のように、積片体Sの断面S0を鏡面状に研磨して選択エッチングした後、図7のステップS5で示される断面測定工程として、この切断面W2,W2で形成された積片体Sの側面(断面)S0を、撮像装置としてのカメラCで観測した画像である。
図10は、図9における積層体Sの断面S0を拡大したものであり、ウェーハW1の上下にある黒い層は接着剤によって形成された接着層である。
【0063】
図11は、ウェーハW1におけるBMD存在状態の値を算出する画像の例であり、実際には、図11のように各データセグメントdtsのように領域を分割し、この各データセグメントdts内におけるBMDを算出する。
セグメントごとのウェーハ断面内BMD値を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
この表1でa,b,c・・・は図11のような各列のデータセグメントdtsに対応し、1,2,3・・・は図11の各行のようなデータセグメントdtsに対応する。
図12は、表1のデータセグメントdtsごとのBMD値を表したグラフである。
【0066】
図13は、本発明の評価方法を適応するシリコンウェーハ断面のBMD画像であり、ウェーハ中心から、0mm,25mm,50mm,75mm,90mmの位置におけるウェーハ断面のBMD画像データであり、図14は、上記の評価方法からフィードバックをおこなったシリコンウェーハ断面のBMD画像である。
図13におけるウェーハはアンモニア雰囲気におけるRTA処理温度が1150℃であり、このウェーハのけるBMD分布では、表面付近におけるBMDが多すぎてDZ層(無欠陥層)厚さ寸法が小さいため、上記のフィードバックとして、RTA温度を1140℃とした例である。これにより、ウェーハ表面におけるDZ層厚さが大きくなったことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係るシリコンウェーハの評価方法および製造方法の一実施形態を示すウェーハの平面図、切断片および積片体を示す模式斜視図である。
【図2】本発明に係るシリコンウェーハの評価方法および製造方法の一実施形態を示す模式斜視図である。
【図3】シリコンウェーハ深さ方向Tにおける裏面から表面までのBMD存在状態を示すグラフである。
【図4】シリコンウェーハの切断面において、表面近傍の一部分でのBMD存在状態を示す模式図である。
【図5】本実施形態のシリコンウェーハの評価方法におけるウェーハ面内方向におけるDZ層深さ分布を示すものである。
【図6】本実施形態のシリコンウェーハの評価方法におけるウェーハ面内方向におけるBMDピーク位置分布を示すものである。
【図7】本発明に係るシリコンウェーハの評価方法および製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施例を示すもので、図4の模式図に対応したウェーハ断面を示す実際の画像である。
【図9】本発明の実施例を示すもので、積片体Sの側面S0を、撮像装置としてのカメラCで観測した画像である。
【図10】本発明の実施例を示すもので、図9における積層体Sの断面S0を拡大したものである。
【図11】本発明の実施例を示すもので、ウェーハW1におけるBMD存在状態の値を算出する画像の例である。
【図12】本発明の実施例を示すもので、データセグメントdtsごとのBMD値を表したグラフである。
【図13】本発明の実施例を示すもので、本発明の評価方法を適応するシリコンウェーハ断面のBMD画像である。
【図14】本発明の実施例を示すもので、本発明の評価方法からフィードバックをおこなったシリコンウェーハ断面のBMD画像である。
【符号の説明】
【0068】
W ウェーハ
W1 切断片
W2 切断面
S 積片体
S0 側面
B BMD層
C 画像処理手段
D DZ層
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェーハの評価方法、その評価方法を使用する製造方法、および、その製造方法により製造されたシリコンウェーハに用いて好適な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
CZ(チョクラルスキー)法または磁場を印加した引上法で引上成長されたシリコン単結晶を加工して作製されたシリコンウェーハは、酸素不純物を多く含んでおり、この酸素不純物は転位や欠陥等を生じさせる酸素析出物(BMD:Bulk Micro Defect)となる。この酸素析出物がデバイスが形成される表面にある場合、リーク電流増大や酸化膜耐圧低下等の原因になって半導体デバイスの特性に大きな影響を及ぼす。
【0003】
このため、特許文献1などには、シリコンウェーハ表面に対し、1050℃以上の高温で短時間の急速加熱・急冷の熱処理(RTA:Rapid Thermal Annealing)を所定の雰囲気ガス中で施し、内部に高濃度の原子空孔(Vacancy:以下、単に空孔と称す)を形成し、急冷により凍結するとともに、この後の熱処理で表面において空孔を外方拡散させることによりDZ層(無欠陥層)を形成する方法が用いられている。そして、上記DZ層形成後に、上記温度より低温で熱処理を施すことで、内側に酸素析出核を形成・安定化してゲッタリング効果を有するBMD層(欠陥層)を形成する工程が採用されている。
【特許文献1】特許第1643364号公報
【非特許文献1】H.MIYAIRI:Jpn.J.Appl.Phys.31(1992)Pt.2,No.9B
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のシリコンウェーハにおいては、上記BMD存在状態(分布)がウェーハ面内方向に均一でない場合があり、このようなBMD存在状態、例えば、DZ層の深さ等がウェーハ面内方向に均一にならないことによって、半導体デバイスの特性に大きな影響を及ぼすという問題があった。
【0005】
半導体デバイス特性、すなわち、シリコンウェーハ品質を特徴づけるBMD存在状態を分析・評価する方法としては、非特許文献1に記載されるように、ウェーハ断面を顕微鏡等により観察する方法が知られている。この技術では、シリコンウェーハの直径に沿った方向におけるBMD存在状態を観測することが可能である。
しかし、非特許文献1には、ウェーハ断面での深さ方向(厚さ方向)におけるBMD密度ピーク位置を計測するという記載はなく、さらに、BMD密度ピーク位置等BMD存在状態のウェーハ面内方向全域のデータを得ることという思想が記載あるいは示唆されてはいない。
【0006】
このため、非特許文献1の技術では、一断面の評価は容易におこない得るが、ウェーハ全体におけるBMD存在状態のマップ情報(ウェーハ深さ方向のデータをウェーハ面内方向全体のデータとしてもの)が得られないため、ウェーハ全体の評価ができないという問題があった。
さらに、非特許文献1に記載されたような方法を適応して、ウェーハ深さ方向のデータをウェーハ全体にわたるBMD存在状態として分析・評価しようとした場合、時間がかかかりすぎるため実際的でないという問題がある。
【0007】
また、ウェーハの量産段階に至ると、その品質改善・維持を果たす上で、ウェーハ状態を評価することが重要であるが、部分的なBMDのデータのみならず、ウェーハ面内方向全面データとしてのBMD存在状態データ、あるいはこれにかえてウェーハ全面を代表することが可能なデータを評価することが必要となってきた。
【0008】
このような、シリコンウェーハ面内方向全体(全面)における評価データは、後工程での半導体デバイス製造における歩留まりを最適化する上で非常に重要なものである。
また、BMD層やDZ層はデバイス工程で顕在化するため、デバイス工程前に、相当する熱処理をおこない評価をおこなったり、デバイスプロセス中にモニタウェーハを入れ析出状態を確認する方法があるが、いずれの場合も、ウェーハ全体にわたってのBMD存在状態の評価が重要となる。
【0009】
そして、上述した不均一なBMD存在状態は、CZ法によってインゴットを引き上げる際の条件、熱処理条件、熱処理治具、さらには、後工程の熱処理不具合等に起因すると考えられるが、根本的にこれらを改善するための技術は知られていなかった。
また、歩留まり改善のためにデバイス工程後にまとめるコンポジットマップ(後述)があるが、この不良位置とBMD存在状態との関連性を考慮して、上記の不良原因を改善し、その対策によって歩留まり改善を為すことはおこなわれていなかった。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、シリコンウェーハにおいて、BMD存在状態(分布)を効率よく測定して評価可能とすること、また、この評価に基づいてBMD存在状態の均一化を向上するという目的を達成しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のシリコンウェーハの評価方法は、ウェーハを平面視して短冊状の切断片に切断する工程と、
前記切断片の切断面が略面一の断面となるようにこれら切断片を積み重ねて積片体とする工程と、
前記断面を画像処理手段で観測し、BMD存在状態を評価する工程と、
を有することにより上記課題を解決した。
また、本発明の前記断面を表面処理することが好ましい。
また、本発明は、前記画像処理手段において、観測した各切断片における前記BMD存在状態を、前記ウェーハにおける平面位置に対応して3次元的に描画して評価することが可能である。
本発明は、前記画像処理手段において、複数のウェーハにおける前記BMD存在状態を基に、シリコン単結晶軸方向における各ウェーハのBMD存在状態を評価することができる。
本発明のシリコンウェーハの製造方法は、上記の評価方法によってウェーハのBMD存在状態を評価する評価工程と、
この評価工程に基づいてウェーハ面内方向および/または複数ウェーハ間でBMD存在状態が均一化するようにウェーハの製造条件を設定する工程と、
を有することにより上記課題を解決した。
本発明は、前記BMD存在状態とデバイス工程上での不良チップのコンポジットマップ図とを関連させ、
ウェーハ品質レベルの不具合が、デバイス工程、ウェーハ熱処理工程および単結晶製造工程のどの工程に起因するか解析し、これらの改善条件を設定することが望ましい。
本発明においては、前記BMD存在状態の評価工程の評価に基づいて、
デバイス工程におけるゲッタリング効果の最適化を図るようにウェーハ全体のBMD存在状態を調整する手段か、または、DZ層深さ寸法を最適化するようにウェーハ全体のBMD存在状態を調整する手段を採用することが可能である。
本発明のシリコンウェーハは、上記のシリコンウェーハの製造方法によって製造され、
ウェーハ面内方向および/または複数ウェーハ間で均一なBMD存在状態を有することにより上記課題を解決した。
【0012】
本発明のシリコンウェーハの評価方法においては、本体ロットから試験評価用に抜き取ったウェーハを矩形(短冊状)に切断してその切断片を積み重ねて、切断片の切断面が面一になるように断面を形成して、この断面をCCDカメラの付属した光学顕微鏡等の画像処理手段(撮影装置)で一度撮影し、この画像を画像処理手段(演算装置)で処理して各切断片の切断前位置に対応するウェーハ面内方向における各位置のデータとしてのBMD存在状態(分布)データとし、このウェーハ全体のデータを評価することで、ウェーハ全体に対して、BMDがどのような状態で存在しているかという状態を把握して、ウェーハの品質を評価することが可能となる。
さらに、この評価方法は、上述の非特許文献1のようにウェーハの断面を最長直径と同じ長さでスキャンする必要があり、かつ、全ての切断面ごとにこのスキャンする必要があったものと比べて、ウェーハ評価の処理時間を大幅に短縮することができる。
【0013】
ここで、「切断する」とは、劈開すること等切断片を形成する切断以外の方法をも含むものとされ、また、「切断面」とは、切断または劈開等によって形成された面を示し、また、「切断片」とは上記の「切断」によって断片化されたウェーハの破片を示すものとする。
また、「積み重ねる」とは、切断片を積層するとの意味で、各切断片を接着・固定して次の断面を形成するようにする手段であれば他の方法をも含むものとされるとともに、「断面」とは、上記の切断面を連続して形成される積層体の側面を示すものとする。
また、「画像処理手段」とは、CCDカメラ等の撮像装置および、この撮像装置によって取得した画像の画像処理をする演算装置・記憶装置・出力装置(表示装置)等を含むものとする。撮像装置の使用例としては画像解析装置 ライカ製Q500IW−EX(CCDカメラ:ソニー製XC−75CE)等がある。
【0014】
さらに、本明細書中、BMD存在状態とは、ウェーハ面内方向における所定の位置におけるBMDがどのように存在しているかという状態を示すもので、具体的には、ウェーハ面内方向の所定位置においてBMDがウェーハ深さ方向のどの位置に位置しているか、また密度はどの程度か、密度の深さ方向における変化度合いはどうか、密度の深さ方向ピーク位置がどうか、これらを含むBMD層とDZ層との状態はどのような分布状態かという情報(BMDデータ)と、これらの情報のウェーハ面内方向における配置をも含む情報(マップデータ)、特に、ウェーハ面内方向における、BMD深さ分布、BMD密度深さ分布、BMDピーク位置深さ分布、ウェーハ裏面および表面近傍のBMDピークに挟まれた部分のBMD密度分布、および、DZ層深さ(厚さ)分布を含むものとされ、このようなBMDの位置・分布等に関する情報を全て含んだデータとすることができる。
また、BMD存在状態の均一化と云った場合には、ウェーハ面内方向における均一化および、複数ウェーハ間における均一化を意味することができる。
【0015】
また、本発明のシリコンウェーハの評価方法においては、ウェーハ切断面を複数回スキャンすることなく、一度だけ前記断面を撮影することで一枚のウェーハ面内方向全体における各位置のBMDデータを測定することができるため、処理時間を短縮することができる。また、ウェーハ面内方向各位置のBMDデータから画像処理手段により、ウェーハ面内方向全体のBMD存在状態を算出して、画像処理手段の記憶装置等に記憶し、その後にマップデータとして出力装置等に表示するなどの出力をおこなうことができる。
【0016】
ここで、画像処理は演算装置でおこなわれるものとされ、撮像装置等によって得られた画像データにおいて、BMDの部分またはBMD密度の高い部分がそうでない部分より色が濃い(画面が暗い)ことから、この画像データの明暗を変換し、これをウェーハ深さ方向におけるBMDデータとして統計処理して、BMD存在状態を評価するという手段を採用することができる。
また、この画像処理においては、あらかじめ設定されたピクセル数および所定のアスペクト比によって規定される複数画素のグループ毎に、上述するように欠陥の状態を判断することで、画像データをBMDデータに変換することもでき、例えば、CCDカメラの各画素ごとにその明るさにより欠陥有無を判断し、このことから、画像データをBMDデータに変換することもできる。
【0017】
このとき、画像データをBMD存在状態とする画像処理においては、カメラとサンプル(積片体)との相対位置の座標を記憶し、さらにこの深さ方向のBMDデータを切断前のウェーハの面内分布となるように統計処理して、BMD存在状態を評価することができる。
【0018】
また、本発明の前記断面を表面処理することにより、画像処理手段によるBMDデータの取得をより容易にすることができる。
ここで、表面処理とは、上記の画像処理(撮影)の前処理として、例えば、表面粗研磨、鏡面研磨した上、セコ液やライト液といった選択エッチング液に浸してBMDの顕在化のためにおこなう処理を意味する。
これにより、前記断面の凹凸を減らして滑らかにし断面全体における画像データの正確性を向上するものとされ、特に、劈開により積片体を形成した場合などには有効である。その結果、画像処理手段における、光学顕微鏡を介してCCDカメラが捉えるBMD像をより鮮明にし、画像処理時の2値化を容易にすることができる。
【0019】
また、本発明のシリコンウェーハの評価方法では、前記画像処理手段において、観測した各切断片における前記BMD存在状態を、前記ウェーハにおける平面位置に対応して3次元的に描画することで、BMD存在状態をウェーハ面内方向全体におけるマップデータとして評価することが可能である。
これにより、ウェーハ製造における検査工程における自動的な合格/不合格処理判断や統計処理のデータや、あるいは、欠陥マップ、欠陥イメージ、コンポジットマップ等の欠陥データ解析、または、歩留まり解析システム等の解析システムの結果と、マップデータとしてのBMD存在状態と、を関連して評価することが容易になり、より正確な原因解析をおこなうことを可能とすることができる。
さらに、これらの原因解析によりデバイス欠陥やウェーハとしての不具合が、どの工程に起因するか、また、熱処理工程、デバイス工程などの工程のうち、どの要因に因るものかを解析することが可能となる。
【0020】
ここで、コンポジットマップとは、ある評価対象ロットの各ウェーハにおけるデバイス工程上の不良チップ位置データを、ロット中の各ウェーハのデータにわたって一枚のマップに加算したもので、例えば、コンポジットマップでウェーハ周縁一部分のみに不良チップが集中していた場合には、その部分への製造工程中の汚染源の存在等が考えられる、というものである。
【0021】
本発明のシリコンウェーハの評価方法では、前記画像処理手段において、本体ロットから試験評価用に抜き取った複数のウェーハ間における各ウェーハのBMD存在状態を比較評価することにより、シリコン単結晶軸方向における各ウェーハのBMD存在状態を評価することができ、単結晶製造工程に起因する欠陥の原因解析をおこなうことが可能となる。
【0022】
本発明のシリコンウェーハの製造方法は、上記の評価方法によってウェーハのBMD存在状態を評価する評価工程と、この評価工程に基づいてウェーハ面内方向でBMD存在状態が均一化するようにウェーハの製造条件を設定する工程と、を有することにより、BMD存在状態評価結果からフィードバックしてウェーハの処理条件を設定して、BMD存在状態がウェーハ面内方向に均一化したウェーハを提供することが容易になる。特に、ウェーハ品質に影響のあるファクターとして、DZ層の深さ寸法、深さ方向のBMD密度ピーク分布をウェーハ面内方向で所定の適性値範囲に設定したウェーハを提供することが容易になる。
これにより、素子製造後のリーク電流増大や酸化膜耐圧低下等、半導体デバイスの特性に大きな影響を及ぼしてしまうことを防止できるとともに、ウェーハにおけるゲッタリング効果を最適化することが可能となる。従って、ウェーハ製造における歩留まりを向上することが可能となる。
【0023】
本発明のシリコンウェーハの製造方法は、上記の評価方法によってウェーハのBMD存在状態を評価する評価工程と、この評価工程に基づいて複数ウェーハ間でBMD存在状態が均一化するようにウェーハの製造条件を設定する工程と、を有することにより、所定のロットにおける複数ウェーハ間におけるBMD存在状態評価結果からフィードバックしてウェーハの処理条件を設定してBMD存在状態が均一化された複数ウェーハを提供することが容易になる。同時に、BMD存在状態評価結果からフィードバックして単結晶製造条件を設定してBMD存在状態が複数ウェーハ間で不均一になることを低減することが容易になる。
【0024】
これにより、素子製造後のリーク電流増大や酸化膜耐圧低下等、半導体デバイスの特性に及ぼす影響を低減して、ゲッタリング効果を最適化したウェーハを提供することが可能となる。従って、ウェーハ製造における歩留まりを向上することが可能となる。
また、デバイスプロセス固有の要求BMD存在状態を提供することで、デバイスプロセスに最適な品質のウェーハを提供でき、これにより、最大のデバイス収率を得られるという効果を奏する。
【0025】
本発明は、前記ウェーハ面内方向におけるBMD存在状態とデバイス工程上での不良チップのコンポジットマップ図とを関連させ、ウェーハ品質レベルの不具合が、デバイス工程、ウェーハ熱処理工程および単結晶製造工程のどの工程に起因するか解析し、これらの対策のためのプロセス条件改善や最適化を図ることができる。ここで、ウェーハ品質レベルでの不具合とは、デバイス工程後の不良チップの割合をウェーハとして評価したものとする。
【0026】
上記プロセス条件改善や最適化とは、ウェーハ面内方向BMD存在状態の評価に基づくフィードバックとして、ウェーハ面内方向BMD存在状態均一化を図るために、材料結晶の選択、単結晶成長条件の変更あるいは後述するウェーハの処理条件を設定することを示す。
【0027】
ウェーハ処理条件とは、RTA温度条件、同昇温速度、同降温速度、保持温度およびこれらの処理時間等を意味するものである。
これらの条件は、例えば、BMD存在状態のフィードバックの結果として、ウェーハ表面付近に位置するDZ層の深さを3μm程度以上50μm程度以下の所定値に設定するとともに、DZ層の内側にあるBMD層におけるBMD分布を、図3に示すようなウェーハ表面・裏面のDZ層を越えた深さにピークを有する状態に設定することができる。また、BMD層におけるBMD密度を、106 個/mm3 〜1011 個/mm3 とすることがこのましい。
【0028】
このようなBMD存在状態を得るようにフィードバックすることにより、デバイスの活性領域に形成された半導体素子の接合リーク電流増大や酸化膜耐圧低下等、半導体デバイスの特性に大きな影響を及ぼしてしまうことを防止するとともに、充分なゲッタリング効果を有するウェーハを提供することが可能となる。
【0029】
本発明においては、前記BMD存在状態の評価工程の評価に基づいて、デバイス工程におけるゲッタリング効果の最適化を図るようにウェーハ全体のBMD存在状態を調整する手段か、または、DZ層深さ寸法を最適化するようにウェーハ全体のBMD存在状態を調整する手段を採用することが可能である。
具体的には、DZ層が薄すぎる場合には、熱処理温度を下げる、また、DZ層が厚すぎる場合には、熱処理温度を上げる、BMD層が薄すぎる場合には、熱処理温度を下げるか、降温速度のレート(急冷)を下げる、また、BMD層が厚すぎる場合には、熱処理温度を上げる、BMD密度が充分でない場合には、RTA処理温度を上昇させることにより、BMD密度を最適化する、また、BMD密度過多の場合、素材単結晶の酸素濃度を下げる、というように、製造条件へのフィードバックをおこない、BMD存在状態の最適化をおこなうことができる。
【0030】
本発明のシリコンウェーハは、上記のシリコンウェーハの製造方法によって製造され、ウェーハ面内方向および/または複数ウェーハ間で均一なBMD存在状態を有することによりウェーハ品質のよいウェーハを提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のシリコンウェーハの評価方法および製造方法によれば、ウェーハを切断片として積み重ね、この断面をCCDカメラ等の画像処理手段で一度撮影し、この画像を画像処理して評価することで、従来の方法に比べて、その処理時間を大幅に短縮することができ、上記の評価方法によって、ウェーハ面内方向データとしてのBMD存在状態を評価し、この結果をフィードバックしてウェーハの製造条件を設定することで、BMD存在状態がウェーハ面内方向に不均一になることを低減して、リーク電流増大や酸化膜耐圧低下等、半導体デバイスの特性に大きな影響を及ぼすことを防止できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明に係るシリコンウェーハの評価方法、製造方法、および、シリコンウェーハの一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の評価方法を示す模式図であり、ウェーハ切断状態と積片体を示すものであり、図2は、本実施形態の評価方法を示す斜視図である。図において、符号Wはウェーハ(シリコンウェーハ)、W1は切断片である。
【0033】
本実施形態のシリコンウェーハの製造方法においては、図7に示すフローチャートのように、ステップS3〜S6で示すシリコンウェーハの評価方法によってウェーハWを評価し、この評価に基づいて製造するものである。したがって、評価方法を先に説明する。
【0034】
本実施形態の評価方法においては、ウェーハWのBMD存在状態を評価するものである。
このために、本実施形態においては、図7において、ステップS3で示されるウェーハ切断工程として、図1に示すように、ウェーハWを平面視して略矩形の切断片W1,W1に切断し、次に、ステップS4で示される積片体形成工程(切断片積重工程)として、これら切断片W1,W1を積み重ねて積片体Sとする。
この切断工程において、(1,1,0)面からの劈開を利用して、各切断片W1をウェーハWから切断することがもできる。
【0035】
このとき、例えば切断片W1の同一方向の切断面、つまり、図1のウェーハWにおいて、各切断片W1の上側の切断面W2が略面一になるように積層するとともに、平面視して切断面(断面)W2と直交するウェーハWの中心線Lが一致するようにして積み重ねて接着し積片体Sを形成する。ここで、接着方法としては、アダルタイト等の接着剤を用いることができる。
さらに、図1、図2に示すように、この積片体Sの断面S0を鏡面状に研磨し、選択エッチングしておく。
【0036】
次いで、ステップS5で示される断面測定工程として、この切断面W2,W2で形成された積片体Sの側面(断面)S0を、図2に示すように、画像処理手段における撮像装置としてのカメラCで観測し、BMD分布を評価する。この画像処理手段の撮像装置は、光学顕微鏡付きのCCDカメラ等とされ、ウェーハW切断面で得られる一定の画像信号処理により、ウェーハ端を検出して測定を開始できるエッジ検出機能を有するものとされる。
【0037】
ここで、切断片W1,W1はそれぞれ、ウェーハWを平面視して幅0.5〜1.0cm程度の寸法に切断することが好ましい。
また、積片体Sとして重ね合わせるものは、デバイスとして実際に使用する部分のみでよく、略円形のウェーハWのうち、図1に示すように縁部の切断片W1’は、その切断面W2が隣り合う切断片W1の相当する切断面W2で評価をおこなうことが可能なため、使用しないこともできる。このとき、この各切断片W1,W1のウェーハWにおける切断前の位置と、各切断片W1,W1を積片体Sとして積層した順番とを画像処理手段の記録装置等に記録しておく。
【0038】
側面S0を画像処理手段のカメラCで撮影した後、この映像を画像処理手段の画像処理装置により画像処理することで、BMD存在状態を評価する。このとき、CCDカメラの所定の画素部分に対応する画像信号が明視野では黒くなっている状態の場合、これをBMDが存在するものだと判断し、そうでない状態の場合、BMDがないと判断する。このように撮影された映像を示す模式図を図4に示す。
ここで、所定の画素部分とは、連続するあらかじめ設定したアスペクト比に対応した形状とされる画素部分、例えば連続する上下2つの画素を一つの単位画像部分とすることができる。
【0039】
図4はウェーハWまたは切断片W1の表面に対応した図であり、ウェーハWの裏面に対応した場合も同様の状態とすることができる。図においては、ウェーハWまたは切断片W1の表面側に対応してDZ層Dが存在し、その内側(図では下側)にBMDの存在するBMD層Bが存在する。
図において、黒班で示すものがBMDを表している。また、DZ層の深さとは、図4に示すように所定の間隔Δxごとに黒班の領域を結んで仮想包絡線Kを形成し、ウェーハ表面からこの仮想包絡線Kまでの距離D1,D2,D3・・・をそれぞれ図3に示すDZ層深さとする。
【0040】
ここで、画像処理におけるスキャンニングは、図2において示すように積片体Sとして積層した切断片W1,W1をその長さが最小となるようにスキャンするものとする。例えば、図2に示す側面S0において、最上部に積層された切断片W1の左端側から右端側に向かってスキャンし、続けてそのすぐ下側に位置する切断片W1を右端側から左端側に向かってスキャンし、同様にそのすぐ下側に位置する切断片W1の左端側から右端側に向かってスキャンする・・・というように、全ての切断片W1にわたってスキャンするものとする。
【0041】
このような画像データからDZ層Dの深さ寸法、BMD層Bの深さ寸法、およびBMD密度、BMD密度ピーク位置等を算出し、これをウェーハWの深さ方向分布として、数値データに変換する。そして、このデータを先に記憶した切断片W1の切断前の位置に応じて並べ替えるように変換し、ウェーハwの面内方向分布データとしてマップデータ化し、BMD存在状態とする。
【0042】
図5、図6は本実施形態におけるBMDデータをマップデータとしたものである。
図5において、BMD存在状態の一例として、ウェーハ面内方向(X−Y方向)に対する各短冊状に切断した切断片W1のDZ層深さデータ、つまりウェーハW面内方向におけるDZ層深さデータをZ方向にDxとしたものを示す。このDZ層深さDxは、図4におけるD1,D2,・・を連続したものに対応している。
図6は、BMD存在状態の一例として、ウェーハW面内方向におけるBMDピークの表面からの深さをデータとしてZ軸方向にプロットしたものであり、図において、BpはBMDピーク深さを示す。
【0043】
次いで、ステップS6に示すように、これらの数値から評価対象であるウェーハWを評価する。
【0044】
つまり、評価対象であるウェーハWに対して、BMD存在状態の値がウェーハ面内全体で所定の範囲内にあるか否かをそれぞれチェックして、対象ウェーハWの面内方向における各数値が上記の範囲内にある場合には、出荷可能な製品として評価する。また、これらの数値が、上記の範囲内にない場合には、後述するように製造工程の条件をフィードバックして改善するという評価とする。
このBMD存在状態が所定の範囲とされる例としては、例えば、DZ層Dの深さDxが3μm程度以上50μm程度以下に設定されることや、BMD層Bピーク密度の値が108mm3程度以上1012mm3 程度以下の範囲の所定値に設定されることができる。
【0045】
これは、上記BMD存在状態の各値がその範囲に設定されていない場合には、充分なゲッタリング効果を得ることができない可能性や、接合リーク電流増大や酸化膜耐圧低下等、半導体デバイスの特性に大きな影響を及ぼしてしまう可能性があり好ましくないためである。
デバイス工程でのウェーハ評価法としては、さらに、ウェーハ面内のチップ不良分布と、あるいはそれらの分布をウェーハ間でまとめ、より不良が再現されやすいコンポジットマップとし、このようなデバイス不良分布データと、上記のBMD存在状態との相互評価をおこない、最適化を図るためのデータとすることができる。
【0046】
次に、上記の評価方法からフィードバックをおこなうシリコンウェーハの製造方法を説明する。
【0047】
本実施形態のシリコンウェーハの製造方法では、CZ法により引き上げたインゴットからウェーハWを切り出し、図7のステップS1に示す単結晶製造品質確認工程として、ウェーハWを切りだしたインゴットの成長時における酸素濃度等の結晶成長条件を確認するとともに、このウェーハWがインゴットの軸方向におけるどの位置にあったのかを確認する。
【0048】
次いで、ステップS2に示す熱処理工程として、まず、アルゴンガス等の不活性ガス又は水素ガス等の還元性ガスの雰囲気中で、1050℃以上1250℃以下の高温で短時間の急速加熱・急冷の熱処理(RTA)を施し、内部に高濃度の空孔(Vacancy)を形成し、急冷により凍結する。このときの熱処理時間は1〜60secとされ、昇温速度は、例えば、30〜70℃/secとされ、また、降温速度は5〜500℃/secとされる。
【0049】
この熱処理(RTA処理)後に、該熱処理より低い温度で、空孔への酸素析出をおこなうために熱処理(例えば、800℃4時間の熱処理に連続して1000℃16時間の熱処理)を熱処理炉などでほどこすことにより、表層では、空孔の外方拡散と酸化膜形成にともなう格子間Siの注入による空孔と格子間Siによる対消滅によって表層にDZ層Dを形成するとともに、内部(特に表面近傍)に酸素析出による高BMD密度のBMD層Bを形成する。
【0050】
上記酸素析出のための熱処理により、図4に示すように、深さ方向のBMD密度はM型の分布となり、表面近傍に最大値(BMDピーク密度)を有するとともに深さ方向の中間部分に極小値(BMDバルク密度)を有する。そして、このBMDピーク密度は、BMDバルク密度に対して2倍以上となるよう設定する。BMDピーク密度は、BMDバルク密度に対して3倍以上となるよう設定してもかまわない。
【0051】
次に、ウェーハWの評価をおこなうために、前述のステップS3〜S6の各工程をおこなう。ステップS6の評価により、OKとされた場合には、ステップS8の製品化工程を経て製品として出荷されるとともに、NOとされた場合には、その状態に応じてフィードバックし、ステップS7に示すように、ウェーハ処理条件としての熱処理工程S2における条件で改善可能なものは、各条件を修正、あるいは、結晶特性値条件、例えば、酸素濃度レベル制御をおこなう。またステップS7において、ステップS2の熱処理で改善不可能な状態であれば、ステップS1に戻って、インゴットの選定をやりなおすかまたは単結晶(インゴット)製造工程の製造条件を修整する。
【0052】
ここで、ステップS2に戻って改善されるウェーハ処理条件としては、RTA温度条件、同昇・降温速度、酸素析出熱処理温度条件、各処理時間等が挙げられる。
これらの条件を修正することにより、BMD存在状態が適性な範囲になるようにする。
【0053】
例えば、ステップS6において、図5に示すDZ層深さDxが所定の範囲から逸脱している場合には、どの工程に起因するものかを判断し、ステップS7において、熱処理工程S2に起因するものだと判断した場合には、次のように製造条件にフィードバックする。
例えば、図5に示すDZ層深さDxの所定の範囲からの逸脱が、熱処理中に発生した欠陥に起因するものだと判断された場合には、熱処理治具の形状対策を施すことができる。
また、図6の情報から、BMD存在状態が所定のウェーハ品質に対して適合しているかどうかを判断してウェーハを評価し、この条件を図5の例と同様に製造条件にフィードバックすることにより、最適なBMD存在状態やゲッタリング能力制御をおこなうことができる。
【0054】
また、具体的に各条件をフィードバックして修正する例としては、次のようのものがある。
1. DZ層Dの深さが2μm程度の部分が存在する等薄すぎる場合には、熱処理温度を下げて調節する。
2. DZ層Dの深さが10μm程度以上である等厚すぎる場合には、熱処理温度を上げて調節する。
3. また、BMD層Bピーク深さが50μm以上と厚すぎる場合には、熱処理温度を上げて調節する。
4. BMD層Bピーク深さが10μm程度と薄すぎる場合には、熱処理温度を下げるか、降温速度のレート(急冷)を下げて調節する。
5. また、BMD層BにおけるBMD密度が充分でない場合には、RTA処理温度を上昇させる。
【0055】
本実施形態のシリコンウェーハの評価方法においては、ウェーハWを矩形の切断片W1として積み重ねて積片体Sとし、この積片体S1のS0をCCDカメラCで一度撮影し、この画像を画像処理して評価することで、ウェーハWの面内方向全体のデータであるBMD存在状態を評価することが可能となる。これにより、従来のようにウェーハWの断面を最長直径と同じ長さでスキャンするだけではウェ−ハの全体にわたるDZ層深さ分布やBMD密度ピーク深さ分布などの重要な分布情報が得られず、デバイスの所望するBMD存在状態制御が充分におこない得なかった状態を改善することができる。また、正確なBMD存在状態、例えばウェーハW面内のDZ層深さ分布、BMD密度ピーク深さ分布等を把握することができ、これらの分布から、熱処理条件、熱処理治具形状、結晶特性、結晶製造条件へのフィードバックをおこなうことができるため、デバイスの所望する最適品質を有するウェーハを得ることが可能となる。
【0056】
また、全ての切断片W1切断面ごとにこのスキャンをおこなう必要がないため、処理時間を大幅に短縮することが可能となる。さらに、ウェーハWの切断面を複数回スキャンすることなく、一度だけ側面S0を撮影することでウェーハW面内方向データであるBMD存在状態を測定することができ、処理時間を短縮することができる。
【0057】
本実施形態のシリコンウェーハの製造方法は、上記の評価方法によって、BMD存在状態を評価し、この結果をフィードバックしてウェーハ製造工程の熱処理工程における処理条件を設定することで、ウェーハ面内でBMD存在状態の均一化を図ることができ、DZ層Dの深さ寸法DxおよびBMD層Bの深さ寸法Bp等のBMD存在状態をウェーハ面内方向全体で適性な値の範囲とすることが容易になる。これにより、リーク電流増大や酸化膜耐圧低下等、半導体デバイスの特性に大きな影響を及ぼすことのないシリコンウェーハWを製造することができる。
【0058】
なお、本実施形態においては、シリコンウェーハの評価方法によってウェーハWの熱処理条件にフィードバックをおこなった例を示したが、インゴット製造の工程における酸素濃度レベル、酸素濃度分布等の条件にフィードバックすることもできる。
【0059】
具体的には、ステップS6,S7において、図5に示すDZ層深さDxの所定の範囲からの逸脱が、リング状の分布で結晶の酸素濃度分布、あるいは、欠陥分布起因であれば、素材料結晶の品質特性にフィードバックして、インゴットの選択をおこなうか、インゴットの引き上げ時の条件にフィードバックすることにより分布改善を図ることができる。
また、図6の情報から、BMD存在状態が所定のウェーハ品質に対して適合しているかどうかを判断してウェーハを評価し、この条件を図5の例と同様に、材料結晶の選択、成長条件の変更等製造条件にフィードバックすることにより、最適なBMDピーク位置の制御をおこなうことができる。
【0060】
この場合には、以下のような条件でフィードバックをおこなうことができる。
1. DZ層Dの深さが2μm程度の部分が存在する等薄すぎる場合には、素材結晶の酸素濃度をOLD ASTM値0.1×1018atoms/cm3 単位で下げることにより制御できる。
2. DZ層Dの深さが10μm程度以上である等厚すぎる場合には、素材結晶の酸素濃度をOLD ASTM値0.1×1018atoms/cm3 単位で上げることにより制御できる。
3. また、BMD層Bのピーク位置深さが50μm程度と厚すぎる場合には、素材結晶の酸素濃度をOLD ASTM値0.1×1018atoms/cm3 単位で上げることにより制御できる。
4. BMD層Bのピーク位置深さが5μm程度と浅すぎる場合には、素材結晶の酸素濃度をOLD ASTM値0.1×1018atoms/cm3 単位で下げることにより制御できる。
5. また、BMD層BにおけるBMD密度が充分でない場合には、素材結晶の酸素濃度をOLD ASTM値0.1×1018atoms/cm3 単位で上げることにより制御できる。
【0061】
(実施例)
以下、本発明に係る実施例を説明する。
図8は、図4の模式図に対応したウェーハ断面を示す実際の画像であり、(a)では全体にBMDが分布する例であり、(b)および(c)は表面側にDZ層が形成されかつ厚み方向中央部分にIG層(BMD層)が形成された例である。
これら図8の画像において、黒くなっている部分、および、そうでない部分が明確に判別でき、これらの画像から、BMDが存在する部分とBMDがない部分とを判断することで、BMD存在状態を評価すること、例えば、表面側のDZ層(無欠陥層)の存在が判別可能なことがわかる。
【0062】
図9は上述した図2に示す実施形態のように、積片体Sの断面S0を鏡面状に研磨して選択エッチングした後、図7のステップS5で示される断面測定工程として、この切断面W2,W2で形成された積片体Sの側面(断面)S0を、撮像装置としてのカメラCで観測した画像である。
図10は、図9における積層体Sの断面S0を拡大したものであり、ウェーハW1の上下にある黒い層は接着剤によって形成された接着層である。
【0063】
図11は、ウェーハW1におけるBMD存在状態の値を算出する画像の例であり、実際には、図11のように各データセグメントdtsのように領域を分割し、この各データセグメントdts内におけるBMDを算出する。
セグメントごとのウェーハ断面内BMD値を表1に示す。
【0064】
【表1】
【0065】
この表1でa,b,c・・・は図11のような各列のデータセグメントdtsに対応し、1,2,3・・・は図11の各行のようなデータセグメントdtsに対応する。
図12は、表1のデータセグメントdtsごとのBMD値を表したグラフである。
【0066】
図13は、本発明の評価方法を適応するシリコンウェーハ断面のBMD画像であり、ウェーハ中心から、0mm,25mm,50mm,75mm,90mmの位置におけるウェーハ断面のBMD画像データであり、図14は、上記の評価方法からフィードバックをおこなったシリコンウェーハ断面のBMD画像である。
図13におけるウェーハはアンモニア雰囲気におけるRTA処理温度が1150℃であり、このウェーハのけるBMD分布では、表面付近におけるBMDが多すぎてDZ層(無欠陥層)厚さ寸法が小さいため、上記のフィードバックとして、RTA温度を1140℃とした例である。これにより、ウェーハ表面におけるDZ層厚さが大きくなったことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明に係るシリコンウェーハの評価方法および製造方法の一実施形態を示すウェーハの平面図、切断片および積片体を示す模式斜視図である。
【図2】本発明に係るシリコンウェーハの評価方法および製造方法の一実施形態を示す模式斜視図である。
【図3】シリコンウェーハ深さ方向Tにおける裏面から表面までのBMD存在状態を示すグラフである。
【図4】シリコンウェーハの切断面において、表面近傍の一部分でのBMD存在状態を示す模式図である。
【図5】本実施形態のシリコンウェーハの評価方法におけるウェーハ面内方向におけるDZ層深さ分布を示すものである。
【図6】本実施形態のシリコンウェーハの評価方法におけるウェーハ面内方向におけるBMDピーク位置分布を示すものである。
【図7】本発明に係るシリコンウェーハの評価方法および製造方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【図8】本発明の実施例を示すもので、図4の模式図に対応したウェーハ断面を示す実際の画像である。
【図9】本発明の実施例を示すもので、積片体Sの側面S0を、撮像装置としてのカメラCで観測した画像である。
【図10】本発明の実施例を示すもので、図9における積層体Sの断面S0を拡大したものである。
【図11】本発明の実施例を示すもので、ウェーハW1におけるBMD存在状態の値を算出する画像の例である。
【図12】本発明の実施例を示すもので、データセグメントdtsごとのBMD値を表したグラフである。
【図13】本発明の実施例を示すもので、本発明の評価方法を適応するシリコンウェーハ断面のBMD画像である。
【図14】本発明の実施例を示すもので、本発明の評価方法からフィードバックをおこなったシリコンウェーハ断面のBMD画像である。
【符号の説明】
【0068】
W ウェーハ
W1 切断片
W2 切断面
S 積片体
S0 側面
B BMD層
C 画像処理手段
D DZ層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを平面視して短冊状の切断片に切断する工程と、
前記切断片の切断面が略面一の断面となるようにこれら切断片を積み重ねて積片体とする工程と、
前記断面を画像処理手段で観測し、BMD存在状態を評価する工程と、
を有することを特徴とするシリコンウェーハの評価方法。
【請求項2】
前記断面を表面処理することを特徴とする請求項1記載のシリコンウェーハの評価方法。
【請求項3】
前記画像処理手段において、観測した各切断片における前記BMD存在状態を、前記ウェーハにおける平面位置に対応して3次元的に描画して評価することを特徴とする請求項1または2記載のシリコンウェーハの評価方法。
【請求項4】
前記画像処理手段において、複数のウェーハにおける前記BMD存在状態を基に、シリコン単結晶軸方向における各ウェーハのBMD存在状態を評価することを特徴とする請求項1または2記載のシリコンウェーハの評価方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載される評価方法によってウェーハのBMD存在状態を評価する評価工程と、
この評価工程に基づいてウェーハ面内方向および/または複数ウェーハ間でBMD存在状態が均一化するようにウェーハの製造条件を設定する工程と、
を有することを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載されるシリコンウェーハの製造方法において、
前記BMD存在状態とデバイス工程上での不良チップのコンポジットマップ図とを関連させ、
ウェーハ品質レベルの不具合が、デバイス工程、ウェーハ熱処理工程および単結晶製造工程のどの工程に起因するか解析し、これらの改善条件を設定することを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載されるシリコンウェーハの製造方法において、
前記BMD存在状態の評価工程の評価に基づいて、デバイス工程におけるゲッタリング効果の最適化を図るようにウェーハ全体のBMD存在状態を調整することを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
【請求項8】
請求項5または6に記載されるシリコンウェーハの製造方法において、
前記BMD存在状態の評価工程の評価に基づいて、DZ層深さ寸法を最適化するようにウェーハ全体のBMD存在状態を調整することを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
【請求項9】
請求項5から8のいずれかに記載されるシリコンウェーハの製造方法によって製造され、
ウェーハ面内方向および/または複数ウェーハ間で均一なBMD存在状態を有することを特徴とするシリコンウェーハ。
【請求項1】
ウェーハを平面視して短冊状の切断片に切断する工程と、
前記切断片の切断面が略面一の断面となるようにこれら切断片を積み重ねて積片体とする工程と、
前記断面を画像処理手段で観測し、BMD存在状態を評価する工程と、
を有することを特徴とするシリコンウェーハの評価方法。
【請求項2】
前記断面を表面処理することを特徴とする請求項1記載のシリコンウェーハの評価方法。
【請求項3】
前記画像処理手段において、観測した各切断片における前記BMD存在状態を、前記ウェーハにおける平面位置に対応して3次元的に描画して評価することを特徴とする請求項1または2記載のシリコンウェーハの評価方法。
【請求項4】
前記画像処理手段において、複数のウェーハにおける前記BMD存在状態を基に、シリコン単結晶軸方向における各ウェーハのBMD存在状態を評価することを特徴とする請求項1または2記載のシリコンウェーハの評価方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載される評価方法によってウェーハのBMD存在状態を評価する評価工程と、
この評価工程に基づいてウェーハ面内方向および/または複数ウェーハ間でBMD存在状態が均一化するようにウェーハの製造条件を設定する工程と、
を有することを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載されるシリコンウェーハの製造方法において、
前記BMD存在状態とデバイス工程上での不良チップのコンポジットマップ図とを関連させ、
ウェーハ品質レベルの不具合が、デバイス工程、ウェーハ熱処理工程および単結晶製造工程のどの工程に起因するか解析し、これらの改善条件を設定することを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載されるシリコンウェーハの製造方法において、
前記BMD存在状態の評価工程の評価に基づいて、デバイス工程におけるゲッタリング効果の最適化を図るようにウェーハ全体のBMD存在状態を調整することを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
【請求項8】
請求項5または6に記載されるシリコンウェーハの製造方法において、
前記BMD存在状態の評価工程の評価に基づいて、DZ層深さ寸法を最適化するようにウェーハ全体のBMD存在状態を調整することを特徴とするシリコンウェーハの製造方法。
【請求項9】
請求項5から8のいずれかに記載されるシリコンウェーハの製造方法によって製造され、
ウェーハ面内方向および/または複数ウェーハ間で均一なBMD存在状態を有することを特徴とするシリコンウェーハ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−207877(P2007−207877A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22833(P2006−22833)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(302006854)株式会社SUMCO (1,197)
【Fターム(参考)】
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