説明

シリコンウエハ多点温度測定装置

【課題】被測定物の多点において温度センサを用いて温度測定を行い、且つ、その温度測定を行う際に温度センサと温度測定装置との間の信号の送受信を無線で行うシリコンウエハ多点温度測定装置の提供
【解決手段】シリコンウエハ加熱手段内のシリコンウエハ素材に装着された複数個の圧電振動子と、この圧電振動子と共に装着されたセンサーアンテナ部に所定の掃引信号波を送信して、圧電振動子の残響振動波を受信する。そして、この残響振動波の周波数を計測し、計測した周波数に基づいてシリコンウエハ素材の表面温度を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
圧電振動子を温度測定センサとして使用することにより、シリコンウエハ基板の多点の温度測定を同時に行い、その測定結果が無線で送信されてくるようにしたシリコンウエハ多点温度測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、我々が使用している多くの電子機器には、集積回路(IC)が使われている。
この集積回路は、半導体素子を集積して種種の回路基板を形成するもので、通常、シリコン(Si)の単結晶版からなるシリコンウエハを用いて形成される。形成された集積回路上にはICが多数作りこまれており、そのICを切り分けたICチップをパッケージに収納し、電子機器に組み込むものである。
この集積回路を形成するためには、膨大な製造工程を経ることになるが、大別すると前工程と後工程とに分類することができる。前工程としては、洗浄工程、成膜工程、リソグラフィ工程、不純物拡散工程等があり、シリコンウエハ上にICチップを作り込む工程である。後工程はシリコンウエハ上のICチップを最終検査して製品として完成させる工程である。
【0003】
また、上記した前工程においては、シリコン酸化膜を成長させる工程や不純物拡散工程等のシリコンウエハを加熱して、例えば250℃以上の高温の雰囲気中で行う加工工程がある。この加工工程を行うには、シリコンウエハを所定の温度まで加熱、或いは、その加熱した温度を所定時間保持するといった精度の高い温度制御技術が必要となる。このような精度の高い温度制御をシリコンウエハに対して行うためには、シリコンウエハの表面温度の上昇速度の観測データや、表面各所の微少な温度差等を検出するなどの技術が必要となってくる。
【0004】
加熱したシリコンウエハの表面温度を測定する際には、温度の変化に対して物理的な常数が変化する温度センサが使用され、さらに、この温度センサの特性を電気的に検出することによって、シリコンウエハの表面温度を測定することが行われている。 ただ、シリコンウエハを高温の雰囲気の中で加熱するために、シリコンウエハの表面温度を測定する温度センサには、相当の耐熱性が要求される。このとき使用される温度センサとしては、熱電対の起電圧を測定するやり方や、温度により電気抵抗が変化する白金抵抗帯、サーミスタ等の感温素子等が知られている。しかし、より高精度の温度センサ(温度測定素子)としては、水晶片等、共振特性の変化を電気的に測定する水晶温度センサが知られている。
【0005】
ところで、温度測定技術としては、通常、1箇所の特定点を1個の温度プローブを使用して測定する。しかし、シリコンウエハがある程度の大きさを持ち、特定の加熱状況下に置かれているような場合には、複数点(多点)の温度を同時に測定することがある。これは、集積回路を製造するにあたっては精密な作業が要求され、さらに近年では、ますます高密度の集積回路を大量に製造するため大型化されているシリコンウエハ全体が均一な温度に加熱されていなければ、完成した集積回路から取り出したICチップの完成品の品質にむらが出てしまう可能性があるからである。完成した集積回路から、良品のICチップを何枚取り出せるかの歩留まりの高さは、製造コストに大きく影響する問題であり、故に、シリコンウエハの多点において温度を短時間に測定して、シリコンウエハ全体が均一に加熱されているかを測定する必要がある。
【0006】
図14は、シリコンウエハ上において多点の温度測定を行う場合の一例を模式図として示したものである。
この図14では、ある大きさを有するシリコンウエハ6に対して、所定の複数箇所の温度を同時に測定する場合の温度センサとして圧電素子温度センサ1a、1b、1c、1d、1e・・・・を用いている。この圧電素子温度センサ1a、1b、1c、1d、1e・・・・は、例えば水晶結晶材から所定の結晶軸でカットされた水晶振動片の両面に電極を付けた水晶振動子を所定の容器内に固定したものである。
そして、この圧電素子温度センサ1a、1b、1c、1d、1e・・・・を、図示するように、所定の測定位置に当接し、各圧電素子温度センサ1a、1b、1c、1d、1e・・・に、例えば同軸にケーブル2a、2b、2c、2d、2e・・・・を接続して所定の交流信号を供給するようにする。そして、複数台の温度測定装置(ネットワークアナライザ)3,3,3をY1,Y2,Y3として設置して、各圧電素子温度センサ1a、1b、1c、1d、1e・・・の電気的な特性変化を検出することにより、各圧電素子温度センサ1a、1b、1c、1d、1e・・・が接触している各点の温度を同時に測定するようにしているものである。
【0007】
また、図14でシリコンウエハ6の多点の温度測定に用いた圧電素子温度センサ1a、1b、1c、1d、1e・・・・における圧電振動子としての水晶振動片の温度に対する電気的な特性の変化は、水晶振動片を発信器とする発信周波数の変化であっても良い。しかし、一般的には水晶振動子が温度によって変化する水晶振動子のインピーダンス特性(共振点や反共振点の周波数)を、供給する交流信号の周波数を変化させながら測定する温度測定装置3により検知することによって行うこともできる。
また、図14で説明した水晶振動子を使用した圧電素子温度センサ1a、1b、1c、1d・、1e・・・等を用いて、シリコンウエハ6やその他広範囲の液体等の各所の位置における温度を同時点で綿密に測定する場合、分解能が0.001℃ぐらいの高精度で温度測定を行うことができる。
【0008】
図15は例えばシリコンウエハを加熱して、そのシリコンウエハ上の各所の温度を高い精度で均一にして、種種の加工が行われる前に行う温度測定のための想定図を示したものである。なお、図14と同一部分は同一の符号を記載している。
【0009】
この図15に示すように、複数個の加熱ランプLが内蔵されている加熱装置4を加熱電源5から供給される電力で加熱してシリコンウエハ6を所定温度に加熱するだけでは、大型化されたシリコンウエハ6の各所の温度が完全に均一化されることは困難になっている。
そこで、まず、シリコンウエハ6の所定の箇所に図14に示したような圧電素子温度センサ1a、1b、1c、1d、1e、(5個の場合を示す)を配置し、それぞれをケーブル2a、2b、2c、2d、2eを介して多端子の温度測定装置3に接続する。そして、このようなやり方で検出した各所の温度の測定結果の情報を制御装置7に取込み、この測定結果に基づいて制御装置7から、加熱装置4の各所の各加熱ランプLの部分を局所的に制御する。そうすることで、シリコンウエハ6の全体が十分に均一な所定の温度となるように制御することができると考えられる。
【0010】
【特許文献1】特開2003−215188
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、図14、図15のように、大型化したシリコンウエハ6の温度の測定を行うときは、温度測定点の測定箇所を増加させる必要性があり、温度センサとなる圧電素子温度センサ1a、1b、1c、1d、1e・・・の分散配置作業と、圧電素子温度センサ1a、1b、1c、1d、1e・・・をそれぞれネットワークアナライザ等からなる温度測定装置3に接続する作業が非常に繁雑になるという問題があった。
また、各圧電素子温度センサ1をシリコンウエハに配置するときに、どうしても各ケーブル2をシリコンウエハの上を引き回す必要があり、温度測定する為の測定冶具として精度の高いものではなかった。
さらに、各圧電素子温度センサ1と各温度測定装置3とを繋ぐ各ケーブル2が、シリコンウエハを加熱する工程時に高温に晒されたことによる障害で機能及び性能などが低下する場合があり、シリコンウエハの正確な温度を測定することが出来ない場合もある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そこで、本発明のシリコンウエハ多点温度測定装置は、かかる問題点に鑑みなされたものであり、シリコンウエハ加熱手段内の被加工シリコンウエハ設置位置に設置されるシリコンウエハ素材と、前記シリコンウエハ素材の所定の位置にセンサーアンテナ部と共に装着された複数個の圧電振動子と、前記センサーアンテナ部に電磁波を照射すると共に、前記圧電振動子の残響振動波を受信するための送受信アンテナと、前記送受信アンテナを介して前記センサーアンテナ部に所定の掃引信号波を送信する送信部と、前記センサーアンテナ部から発信された残響振動波の周波数を計測する計測部とを備え、前記残響振動波の周波数に基づいて前記シリコンウエハ素材の表面温度を測定するようにした。
【0013】
上記センサーアンテナ部は、上記圧電振動子の励振電極に対して並列に接続されているループアンテナによって構成されている。
また、上記センサーアンテナ部、及び圧電振動子は石英材によって被覆されることにより1組の温度センサとされ、上記シリコンウエハ素材の表面に全部、又は一部が埋設されている。
【0014】
上記センサーアンテナ部に照射される掃引信号波は、所定の周波数でステップアップして上記圧電振動子の共振周波数が含まれる帯域を掃引する。
また、上記残響振動波の周波数は、上記計測部において周波数カウンタで計測される。
また、上記シリコンウエハ加熱手段は、縦型ファーネス型とされている。
【0015】
上記シリコンウエハ加熱手段は、RTP型である。
また、上記圧電振動子は水晶片によって構成されている。
また、上記圧電振動子はランガサイトによって構成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明のシリコンウエハ多点温度測定装置は、シリコンウエハ加熱手段内のシリコンウエハ素材に装着された複数個の圧電振動子と、この圧電振動子と共に装着されたセンサーアンテナ部に所定の掃引信号波を送信して、圧電振動子の残響振動波を受信することができる。そして、この残響振動波の周波数を計測し、計測した周波数に基づいてシリコンウエハ素材の表面温度を測定することができる。
したがって、シリコンウエハ素材の温度を測定するための圧電振動子の数が多くなっても、掃引信号波をセンサーアンテナ部へ送信することができ、且つ、ケーブルを介さずに残響振動波を受信することができるので、精度の高い温度測定を行うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本願発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態という)を説明する。
図1は、本願発明の第1の実施の形態としてのシリコンウエハ多点温度測定装置10の概要を説明する全体的な模式図である。
図示するシリコンウエハ多点温度測定装置10は、例えば集積回路(IC)を製造する過程で加工用シリコンウエハを加熱して高温の雰囲気中で行う加熱加工工程の際、加工用シリコンウエハの表面温度が均一となるよう温度の調節を行うために使用される。
【0018】
この温度調節を行うためにシリコンウエハ多点温度測定装置10としては、先ず、チャンバ外に温度測定装置11とインピーダンス整合器12を設置して相互を同軸ケーブル25で接続されている。この温度測定装置11は、所定の範囲で周波数が変化するスイープ発信器や位相検出器、電流測定器、方向性結合器等を備えている。
そして、インピーダンス整合器12とチャンバ内の石英17や耐熱性の材料に被覆されている小型送受信アンテナ14a、14b、14c、14d、14e、14f・・・とが同じく耐熱性の材料である石英などで被服された、単心、または多芯耐熱ケーブル13(以下、単に耐熱ケーブルともいう)と同軸ケーブル25を介して接続されている。このとき、相互を接続するために用いられるケーブルとしては、図示するようにチャンバ外には同軸ケーブル25を用いて、チャンバ内には高温に耐えられるような多芯耐熱ケーブル13を用いている。そして、この2本のケーブルをチャンバ外とチャンバ内の境界においてコネクタ26で接続して使用している。
【0019】
さらに、シリコンウエハ多点温度測定装置10は、温度測定用の治具となる測定用シリコンウエハ18の表面温度を測定するための温度センサとして複数個の圧電素子温度センサ16a、16b、16c、16d、16e、16f・・・を使用する。そして、上記複数の圧電素子温度センサ16a、16b、16c、16d、16e、16f・・・に、センサーアンテナ15a、15b、15c、15d、15e、15f・・・をそれぞれ取り付けるものである。センサーアンテナ15a、15b、15c、15d、15e、15f・・・が取り付けられた圧電素子温度センサ16a、16b、16c、16d、16e、16f・・・は、図1に示めすように測定用シリコンウエハ18の表面の所定の箇所、例えば温度分布を測定したいと思われる測定点に埋設する。このとき、圧電素子温度センサ16a、16b、16c、16d、16e、16f・・・の一部が埋設されるようにしてもよいし、取り付けられたセンサーアンテナ15a、15b、15c、15d、15e、15f・・・と一緒に全てが埋設されてもよい。
また、上下方向に対峙して配置されている圧電素子温度センサ16a、16b、16c、16d、16e、16f・・・とセンサーアンテナ15a、15b、15c、15d、15e、15f・・・のペアは、シリコン素材でそれぞれ被覆されるようにする。これは、圧電素子温度センサ16a、16b、16c、16d、16e、16f・・・で温度を測定する際、測定物に接触する部分には測定物の素材に近い、耐熱性のある素材を用いることで測定誤差を抑えようとするものである。
そして、圧電素子温度センサ16a、16b、16c、16d、16e、16f・・・とセンサーアンテナ15a、15b、15c、15d、15e、15f・・・の同心軸上に、石英17で被覆されたそれぞれの小型送受信アンテナ14a、14b、14c、14d、14e、14f・・・が設置されるようにする。なお、小型送受信アンテナ14a、14b、14c、14d、14e、14f・・・を被覆している石英17は、耐熱性があい、加熱加工工程の温度に耐えられる素材のものであれば石英17でなくてもよい。
【0020】
なお、以降、圧電素子温度センサ16a、16b、16c、16d、16e、16f・・・と、これに取り付けられているセンサーアンテナ15a、15b、15c、15d、15e、15f・・・とのそれぞれのペアを、図1に示しているように、必要に応じて、チャンネルCh1(圧電素子温度センサ16a、センサーアンテナ15a)、チャンネルCh2(圧電素子温度センサ16b、センサーアンテナ15b)、チャンネルCh3(圧電素子温度センサ16c、センサーアンテナ15c)、チャンネルCh4(圧電素子温度センサ16d、センサーアンテナ15d)、チャンネルCh5(圧電素子温度センサ16e、センサーアンテナ15e)、チャンネルCh6(圧電素子温度センサ16f、センサーアンテナ15f)・・・、として説明する。
また、以降は、小型送受信アンテナ14a、14b、14c、14d、14e、14f・・・、センサーアンテナ15a、15b、15c、15d、15e、15f・・・、圧電素子温度センサ16a、16b、16c、16d、16e、16f・・・、チャンネルCh1、チャンネルCh2、チャンネルCh3、チャンネルCh4、チャンネルCh5、チャンネルCh6・・・を説明する場合、特に個別に説明する必要が無いときは、小型送受信アンテナ14、センサーアンテナ15、圧電素子温度センサ16、チャンネルChとして説明していく。
【0021】
本発明では、測定用シリコンウエハ18の温度を計測する温度センサとして圧電素子温度センサ16を用いている。この圧電素子温度センサ16は、外部から共振周波数又は共振周波数近傍の成分を含んだ電磁波で励振すると温度によって固有の残響振動が励振後に発生する。そして、その発生した固有の残響振動は、センサーアンテナ15、小型送受信アンテナ14を介して温度測定装置11が受信する。温度測定装置11は、受信した圧電素子温度センサ16から発信された固有の残響振動を基に温度を算出し、その算出結果を例えば表示部17に表示するものである。このとき、温度測定装置11は、どこの小型送受信アンテナ14から送信されてきた残響振動かを確認することで、どの圧電素子温度センサ16の温度かを知ることが出来る。
なお、温度センサとして使用できる圧電振動子としては、水晶、ランガサイト、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム、酸化亜鉛、等がある。
【0022】
第1の実施の形態において、測定用シリコンウエハ18の温度を計測するやり方としては、先ず、温度測定装置11から各チャンネルCh毎に、任意の周波数帯から始めて段階的に周波数帯をステップアップさせながら送信する掃引信号波を小型送受信アンテナ14を介して送信する。例えば、チャンネルCh1では、その掃引信号波の周波数が圧電振動子の共振周波数の近傍であるとき、掃引信号波を停止した直後に、そのときの温度に応じた残響振動波を発信する。この残響振動波は、センサーアンテナ15を介して小型送受信アンテナ14が受信し、温度測定装置11は、チャンネルCh1からの残響振動波が得られたら、その残響振動波の周波数に基づいて温度を算出するものである。
このようにして、温度測定装置11は、測定用シリコンウエハ18上に設置されている全てのチャンネルChから順番に残響振動波を得て、各チャンネルChの温度、即ち、測定用シリコンウエハ18上の各点の温度を算出するものである。そして、温度測定装置11は算出結果を加熱制御装置90へ送信し、この加熱制御装置90は加熱手段91を制御してチャンバ内で加熱された測定用シリコンウエハ18の温度が均一となるように温度を調整するものである。なお、算出した温度データから形成された加熱制御データは、上記いずれかの装置に保存しておくことが好ましい。
【0023】
第1の実施の形態において、温度測定装置11が各チャンネルCh毎の残響振動波を得ることができるのは、各チャンネルChの同心軸上に小型送受信アンテナ14を配置しているからであり、これによりリアルタイムで全てのチャンネルChの温度を観測することも可能となる。つまり、全ての圧電素子温度センサ16が測定用シリコンウエハ18の温度を短時間で観測することができるものである。また、この場合、温度測定装置11は、どの小型送受信アンテナ14から送信されてきた残響振動波の周波数かを知ることができるので、当然にどのチャンネルChからの残響振動波の周波数かを知ることが出来る。このため、圧電素子温度センサ16の圧電振動子としては、全て同じ共振周波数特性を持つ圧電振動子を使用することができるものである。
また、温度測定装置11は、温度の計測を小型送受信アンテナ14をチャンネルCh毎に切り換えて行うことで、複数のチャンネルChで温度の計測を行う場合でも1台で観測することができる。
また、センサーアンテナ15と小型送受信アンテナ14は無線で通信を行うので、測定用シリコンウエハ18上にコードを這わさなくてもよい。
【0024】
図2に示すのは、第2の実施の形態としてのシリコンウエハ多点温度測定装置10の概要を説明する全体的な模式図である。図示するシリコンウエハ多点温度測定装置10は、図1で説明した第1の実施の形態と、小型送受信アンテナ14が設置される位置が異なる他は同様の構成を有している。
図2の第2の実施の形態では、チャンバ外に温度測定装置11と、インピーダンス整合器12を設置して相互を同軸ケーブル25で接続し、このインピーダンス整合器12とチャンバ内に設置される石英17に被覆されている小型送受信アンテナ14とを多芯耐熱ケーブル13で接続している。このとき、小型送受信アンテナ14は、図示するように、測定用シリコンウエハ18に埋設されている圧電素子温度センサ16とそれに取り付けられているセンサーアンテナ15の円周上に配置されるように設置する。この各圧電素子温度センサ16とセンサーアンテナ15の円周上に小型送受信アンテナ14を配置するやり方は、測定用シリコンウエハ18の上下方向に余分な空間が無く、小型送受信アンテナ14を設置することが出来ない場合などに用いるやり方である。
また、インピーダンス整合器12と小型送受信アンテナ14を接続するケーブルは、第1の実施例と同様に、チャンバ外は同軸ケーブル25を用い、チャンバ内は多芯耐熱ケーブル13を用いて互いをコネクタ26で接続させる。
【0025】
この第2の実施の形態において測定用シリコンウエハ18の温度を計測するやり方は、小型送受信アンテナ14の設置位置が変更になっただけで、第1の実施の形態と同様のやり方で温度を計測することができる。
そして、第2の実施の形態においても、図2に示したように小型送受信アンテナ14を配置することで、リアルタイムで全てのチャンネルChの温度を計測することができ、また、チャンネルCh毎に切り換えて計測することができるので1台の温度測定装置11で観測することができる。
また、図2に示す温度測定装置11は、上記図1に示した温度測定装置11と同様に算出結果を加熱制御装置90へ送信し、この加熱制御装置90は加熱手段91を制御してチャンバ内の温度を調整するものである。
また、第2の実施の形態の場合も、圧電素子温度センサ16の圧電振動子として、同じ共振周波数特性の圧電振動子を使用することができ、さらに、センサーアンテナ15と小型送受信アンテナ14は無線通信が可能であり、測定用シリコンウエハ18上にコードを這わさなくてよい。
【0026】
図3に示すのは、第3の実施の形態としてのシリコンウエハ多点温度測定装置10の概要を説明するための全体的な模式図である。この図3に示すシリコンウエハ多点温度測定装置10は、図1で説明したシリコンウエハ多点温度測定装置10の小型送受信アンテナ14に換えて、単一の大型送受信アンテナ20を設置すると共に、共振周波数が異なるようにした複数個の圧電素子温度センサ16を使用する。
つまり、チャンバ外には、温度測定装置11とインピーダンス整合器12とが同軸ケーブル25で接続されて設置され、チャンバ内の測定用シリコンウエハ18に埋設されている各圧電素子温度センサ16とそれに取り付けられているセンサーアンテナ15の上方にすべての圧電素子温度センサ16と通信が可能な単一の大型送受信アンテナ20を設置するものである。そして、この単一の大型送受信アンテナ20も例えば石英17で被覆され、インピーダンス整合器12と接続されている。図3において、互いを接続するケーブルには、チャンバ外は同軸ケーブル25をチャンバ内は単芯耐熱ケーブル19をコネクター26で接続して使用している。
【0027】
第3の実施の形態としてのシリコンウエハ多点温度測定装置10において、測定用シリコンウエハ18の温度を測定するやり方としては、先ず、温度測定装置11から全てのチャンネルChを励振できるような掃引信号波を送信する。このとき、各チャンネルChの圧電素子温度センサ16にはそれぞれ共振周波数特性の違う圧電素子を使用しているので、温度測定装置11は、各圧電素子温度センサ16とその圧電素子の共振周波数特性との組み合わせを記憶しておくことで、受信した残響振動波の周波数特性で、どのチャンネルChからの残響振動波かを知ることが出来る。そして、温度測定装置11は、残響振動波が得られたら、その残響振動波の周波数に基づいて温度を算出する。
【0028】
このように、第3の実施の形態のシリコンウエハ多点温度測定装置10においては、共振周波数の異なる複数のチャンネルChの圧電素子温度センサ16と単一の大型送受信アンテナ20を用いることで、測定用シリコンウエハ18の温度を観測することが出来る。そして、この単一の大型送受信アンテナ20とセンサーアンテナ15もワイヤレス方式なので、測定用シリコンウエハ18の上で多数のコードを這わさなくてよい。
そして、図3に示す温度測定装置11は、上記図1、図2で示した温度測定装置11と同様に算出結果を加熱制御装置90へ送信し、この加熱制御装置90は加熱手段91を制御してチャンバ内の測定用シリコンウエハ18の温度が均一になるように温度を調整するものである。
【0029】
また、この単一の大型送受信アンテナ20としては、例えば方形状となるようにアンテナを形成したものを使用してもよいし、測定用シリコンウエハ18の上方に設置したときに、この測定用シリコンウエハ18の表面を覆うように螺旋状のアンテナ(ループ状のアンテナ)を形成したものを使用してもよい。
【0030】
ここで、上記図3において示した単芯耐熱ケーブル19について説明する。この単芯耐熱ケーブル19は、高温に晒されるチャンバ内で使用されるので、インピーダンス整合(マッチング)をとる為のアクティブ素子を実装することは難しい。そこで、図4に示すような構成とした。なお、図1、図2に示した多芯耐熱ケーブル13は、単芯耐熱ケーブル19を複数本束にしたケーブルのことである。
図4に示す単芯耐熱ケーブル19は、給電線を用いて小型送受信アンテナ14・単一の大型送受信アンテナ20とツイストコード22が形成されており、この給電線は高温下でも耐えれるように銅線又は白金線が用いられている。
インピーダンス整合器21は、小型送受信アンテナ14又は、単一の大型送受信アンテナ20とツイストコード22とのインピーダンスの整合を取る為に設けられているインピーダンス整合器である。このインピーダンス整合器21とツイストコード22とは耐熱性のある石英23で封入されている。
そして、チャンバ内(高温部)のツイストコード22からチャンバ外(常温部)の温度測定装置11へ周波数を送信するときのインピーダンスの整合は、チャンバ外に設置されている第2のインピーダンス整合器12において行われるものである。
また、単芯耐熱ケーブル19に備えられる小型送受信アンテナ14・大型送受信アンテナ20等は、後述する熱処理装置に設置される場合、耐熱性のある石英17により被覆し、内部の導線の酸化や腐食を防止するようにしている。
【0031】
図5、図6は、測定用シリコンウエハ18又は被加工用シリコンウエハを加熱して高温の雰囲気中で行う加熱加工工程の際に使用される熱処理装置を示す図である。
図5に示すのは、加工用シリコンウエハを1枚づつ熱処理する枚葉型熱処理装置100の断面図である。図示する枚葉型熱処理装置100は、例えばRTP(Rapid Thermal Process)装置とし、加工用シリコンウエハの加熱加工が行われる。
このRTP装置において加熱加工を行う場合、先ず、チャンバ30内に備えられる石英の支持台31の上に測定用シリコンウエハ18を載せる。なお、図示は省略したが、図5に示す測定用シリコンウエハ18の表面には、先に述べたように複数のシリコンで被覆された圧電素子温度センサ16とセンサーアンテナ15とのペアが配置されているものとする。そして、測定用シリコンウエハ18の上下に位置するように設置されている複数の加熱ランプ32で測定用シリコンウエハ18を加熱して、測定用シリコンウエハ18上の各所の温度を測定する。
次に、このRTP装置において加熱加工工程を行う際は、測定用シリコンウエハ18に代えて加工用シリコンウエハを支持第31に置き、閉会可能なドア33を閉め、加熱加工工程で使用される窒素やアルゴン等のガスがガス入口34からチャンバ30内に注入される。そして、チャンバ30内に注入されたガスはガス出口35から排出される。
また、図5では、耐熱性のある石英17で被覆している小型送受信アンテナ14を、チャンバ30の上方でチャンバ30と複数の加熱ランプ32の間に、圧電素子温度センサ16とセンサーアンテナ15の同心軸上に小型送受信アンテナ14が位置するように設置している。なお、図示した石英17には小型送受信アンテナ14が被覆されているが図示は省略した。
そして、このRTP装置では加熱ランプ32やチャンバ30等を囲むように反射板36が設けられている。
【0032】
この図5に示したRTP装置においては、高速に温度を昇降できる等の特徴を有している。また、このRTP装置は、チャンバ30と加熱ランプ32の間に石英17で被覆した小型送受信アンテナ14を設置する空間があるので、第1の実施の形態と第3の実施の形態において加熱加工を行う場合に好適である。
また、図5の説明において図示した石英17は、図示しない小型送受信アンテナ14を被覆していると説明したが、第3の実施の形態において加熱加工を行う場合、石英17に被覆されるのは単一の大型送受信アンテナ20となる。
また、実際にRTP装置を使用して加熱加工を行う場合、1日に大量の加工用シリコンウエハの加熱加工を行う場合がある。そのとき、加熱加工を行う毎に表面温度を観測して加熱加減を調節する温度調節作業をするのではなく、例えば、RTP装置を作動させて、最初に測定用シリコンウエハ18の温度調節作業を行うようにして、このとき調節した温度設定データでその後の加熱加工を行うようにしてもよい。
【0033】
図6は、複数の加工用シリコンウエハを一度に熱処理する場合に用いられる、バッチ型熱処理装置200の断面図を示している。
図示するバッチ型熱処理装置200は、例えば縦型ファーネスとし、この縦型ファーネスにおいて加工用シリコンウエハの加熱加工工程を行うときは、まず、例えば石英ボート40の内側に加工用シリコンウエハを図示するようにセットする。この石英ボート40には、複数枚(例えば100枚程度)のシリコンウエハ18をセットすることができ、実際には、図6に示した枚数以上の加工用シリコンウエハを石英ボート40にセットすることができる。
なお、図示は省略したが、先に述べたように図6に示した加工用シリコンウエハのうち、所定の枚数毎に温度測定用の計測用シリコンウエハ18を配置し、その表面には、それぞれシリコンで被覆された圧電素子温度センサ16とセンサーアンテナ15とのペアが配置されている。所定の間隔をおいて配置した計測用シリコンウエハ18に圧電素子温度センサ16とセンサーアンテナ15とのペアを配置するのは、後述する縦型ファーネスにおいて加熱加工工程を行うときの温度調節作業のためである。
【0034】
そして、図6では、石英ボート40の外側を囲むように石英17に被覆された小型送受信アンテナ14を圧電素子温度センサ16とセンサーアンテナ15とのペアが配置されている測定用シリコンウエハ18の近傍に設置される。このとき、各小型送受信アンテナ14は、測定用シリコンウエハ18の各センサアンテナ15と互いに信号を送受信可能な位置に配置されればよい。
また、図示する縦型ファーネスは、石英ボード43とその外側に設置された小型送受信アンテナ14を取り囲むように石英反応管41を設けている。この石英反応管41内に、加熱加工工程において使用される窒素やアルゴン等のガスをガス入口42から注入し、このガスはガス出口43から排出される。そして、この石英反応管41の外側には均熱管44が備えられ、更にその外側に加熱ランプ45が複数個備えられている。この加熱ランプ45が加熱することによって石英反応管41内の石英ボート40にセットされている加工用シリコンウエハが加熱されるものである。
【0035】
図6に示した縦型ファーネスの場合、一度に複数枚(例えば100枚程度)の加工用シリコンウエハの加熱加工を行うことができるが、そのとき、加工用シリコンウエハの表面温度が石英ボート40にセットされる位置で違いがでないようにする必要がある。そこで、所定の間隔毎にセットされている測定用シリコンウエハ18の表面温度を測定することで、石英ボード43にセットされている加工用シリコンウエハの表面温度が均一となるように加熱加減を調整するものである。
図6では、圧電素子温度センサ16とセンサーアンテナ15とのペアを石英ボード43の上段、中断、下段に設置されている測定用シリコンウエハ18に埋設している。しかし、石英ボート40にセットされる全ての加工用シリコンウエハの表面温度が均一に加熱されるような温度調節作業が行えるだけの計測データを得ることが出来れば、図示した位置以外の所に圧電素子温度センサ16とセンサーアンテナ15とのペアを設置してもよい。
【0036】
また、上記した縦型ファーネスにおいて加熱加工を行う場合、図示するように複数の加工用シリコンウエハを石英ボート40にセットして加熱加工を行うものであり、加工用シリコンウエハの上下の空間に小型送受信アンテナ14を設置するのは難しい。そこで、小型送受信アンテナ14を測定用シリコンウエハ18の横側に設置することでセンサーアンテナ15と信号の送受信を行う、第3の実施の形態の場合の加熱加工工程において使用することが出来る。
【0037】
ここまで説明してきたシリコンウエハ多点温度測定装置10においては、測定用シリコンウエハ18の表面温度を計測するために、圧電素子温度センサ16とセンサーアンテナ15とのペアが計測用シリコンウエハ18に埋設されるものである。このため、圧電素子温度センサ16とセンサーアンテナ15とのペアは、加熱加工工程において測定用シリコンウエハ18と同様に高温の雰囲気中に晒されることになるので、その構造は耐熱性を有する必要があるものである。
まず、圧電素子温度センサ16としては、2つで1組の励振電極を圧電振動子の上下を挟むように設置する。そして、その上に加熱加工時の高温にも耐えられる、例えば導線として、銅や白金線でできたループアンテナをセンサーアンテナ15として設置する。このとき、センサーアンテナ15の電極を、圧電素子温度センサ16の2つの励振電極に接続する。このように上下で重ね合わせた圧電素子温度センサ16とセンサーアンテナ15を、第1の実施の形態でも説明したように、耐熱性のあるシリコンで被覆されるようにするものである。
このような構成にすることにより、加熱加工工程においても、温度測定装置11からの掃引信号波をセンサーアンテナ15から圧電素子温度センサ16へ送信することができ、また、圧電素子温度センサ16から残響振動波をセンサーアンテナ15が受信し、その残響振動波を温度測定装置11へ送信して、測定用シリコンウエハ18の温度計測が行われるものである。
【0038】
図7(a)には、本発明で温度センサとして水晶片を使用した場合の水晶振動子の共通点付近における電気的な等価回路を示している。図示するLは外付けされるセンサーアンテナであり、水晶振動子は、並列容量Co、付加容量C1、モーショナルインピーダンスとなるリアクタンスL1、実効抵抗R1、として示している。この等価回路は、一般的にインピーダンス値が最小となる低い方の直列共振点frと、インピーダンス値が最大となる高い周波数で半(並列)共振点faが現れる。
図7(b)は、共振点付近のインピーダンス変化特性を拡大して示したもので、fr点は直列共振点、fa点は並列共振点であり、水晶振動子はこれらの共振点の周波数差Δfの区間で誘導性リアクタンスを示す。
【0039】
図8は、温度センサの圧電振動子から発信される残響振動波の共振周波数と温度の関係について示した図である。
図8(a)は、圧電振動子の圧電素子として水晶片が使用されている場合のある温度範囲内での残響振動波の共振周波数と温度の関係を示した図である。図示するように水晶が用いられた圧電振動子は、この水晶と同じ共振周波数又は近似した共振周波数を受信した場合、温度が高くなるにつれて発信される残響振動波の共振周波数も高くなる傾向をもたせることができる。
また、図8(b)は、圧電振動子の圧電素子としてランガサイトを使用している場合の残響振動波の共振周波数と温度の関係を示した図である。このランガサイトの圧電振動子は、水晶と同じ共振周波数又は近似した共振周波数を受信すると、温度が低くなるにつれて発信される残響振動波の共振周波数も低くなる傾向をもたせることができる。
【0040】
一般に圧電振動子の共振周波数fと温度Tは非直的な変化となり、例えば以下の多項式によって周波数の変化率を算出するようにしている。

Δf/f=A(T-To)+B(T-To)2+C(T-To)3・・・+n(T-To)n

この多項式においては、それぞれ、共振周波数の違う圧電素子に対応したA,B,C・・・nの係数を事前にキャリブレーション等で求めておき、それぞれの圧電素子に対応した係数として温度測定装置11の記憶部に記憶しておく。そして、測定用シリコンウエハ18の表面温度と予想される任意の温度Tから基準温度Toを減算した温度(T-To)を求め、周波数の変化率であるΔf/fを求める。このとき、(T-To)、(T-To)2、(T-To)3・・・(T-To)nのnの次数は、n=9〜13次として計算すると、近似誤差の少ない周波数の変化率を算出することができる。
【0041】
上記図8において説明したように、温度測定装置11は、圧電振動子からの残響振動波の共振周波数を基にして測定用シリコンウエハ18の温度を測定するものであるが、そのときの温度測定装置11における温度測定の動作原理について図9において説明する。
先ず、温度測定装置11からは、任意のチャンネルCh、又は、全てのチャンネルChへ掃引信号波における所定の帯域の共振周波数信号である送信信号Aを送信する。温度測定装置11から送信された送信信号Aは、小型送受信アンテナ14又は単一の大型送受信アンテナ20を介して任意のチャンネルCh、又は全てのチャンネルChへ送信される。この送信信号Aは期間t0の間、温度測定装置11から送信され、送信信号Aの送信期間、期間t0が終了したタイミング以降、温度測定装置11は受信期間Bの期間t1の間、圧電素子温度センサ16からの残響信号Cを検出するために待機する。そして、温度測定装置11は、エコー検出信号Dが圧電素子温度センサ16から発信された残響振動波である残響信号Cを検出したら、エコー検出信号Dの期間t3が終了した直後から残響信号Cの計測を開始する。この残響信号Cを計測する期間としては、計測パルスEの期間t2の間である。図示するように、計測パルスEの期間t2と同じ期間に、計測タイミング信号Fが残響信号Cの交番信号のみ(残響周波数のみ)をを計測する。そして、計測パルスEが発信している期間t2が終了したタイミングで演算Gを行う。この演算Gでは、計測した残響信号の発信周波数に基づいて温度を観測するものである。そして、演算Gをおこなう期間t4が終了したタイミングで、温度センサ16の受信期間Bも終了する。
なお、受信期間Bの間に圧電素子温度センサ16からの残響信号Cをエコー検出信号Dが検出しなかった場合は、エコー検出信号Dの期間t3が終了したタイミングで受信期間Bの期間t1も終了して、掃引信号波における別の帯域の周波数を任意のチャンネルCh、又は、全てのチャンネルChへ送信する。
【0042】
図10は、第1、第2の実施の形態において温度測定を行うときに一台の温度測定装置11から送信される掃引信号波の周波数の変化図であり、各チャンネルCh毎に階段状に変換していることを示している。
図示する掃引信号波は、任意の周波数帯から始まり段階的にステップアップしながら先ずチャンネル1へ送信されるものである。そして、図示するチャンネルCh1での受信タイミングで圧電素子温度センサ16からの残響振動波を待機する。この受信期間に残響振動波を受信することが出来たら、次のチャンネルCh2へ切り換えて掃引信号波を送信し、同様にチャンネルCh2において残響振動を波を検出し、以下、全てのチャンネルの残響振動波の検出から、測定用シリコンウエ18ハ上の各点の温度情報を取得する。
図10では、温度測定装置11から各チャンネルChへ掃引信号波を送信する前の期間t0、受信した残響振動波を基に温度の計測と演算を行うための時間としている。
なお、図10では、第1、第2の実施の形態における掃引信号波の周波数変化について説明したが、単一の大型送受信アンテナ20で全てのチャンネルChを掃引する第3の実施の形態については、温度測定装置11は、全てのチャンネルChからの残響振動波が受信できるように、周波数を徐々に変化させながらより広い掃引幅で掃引信号波を送信し続けるようにする。
【0043】
図11は、第1、第2の実施の形態において小型送受信アンテナ14又は単一の大型送受信アンテナ20から励振周波数の信号を送信すると共に残響信号を検出し、その共振周波数を計測するために用いられる温度測定装置11のブロック図を示した図である。この温度測定装置11は、例えばマイクロコンピュータで形成される制御部81により全体を統括制御するようにされている。
図示する信号出力部70は、制御部81の制御に基づき、基準クロック信号を出力する信号源であり、カウンタ71はクロック信号を計測し、所定の計算値でリセットされるカウンタ回路である。D/A変換器72は、制御部81の制御に基づき、カウンタ71によりカウントされた値に基づいて、デジタル信号からアナログ信号へ入力信号を変換する変換器である。VOC73は、D/A変換器72の出力信号レベルによって周波数が変化する電圧可変発信器である。
送信部74は、VCO73から出力される信号(階段状の掃引)を制御部81の制御に基づき、所定の周波数に変換し、パワーアップする周波数変換器や高周波増幅器を備え、SW(スイッチ回路)75を介して送信部74からの信号を小型送信受信アンテナ14もしくは単一の大型送受信アンテナ20へ送信する。
また、小型送信受信アンテナ14もしく単一の大型送受信アンテナ20で受信された残響振動波は、受信期間(例えば、送信期間t0の終了)後からSW75で切り換えられて受信部76へ入力されるように制御部81の制御に基づき行う。
そして、受信部76は、入力された外部からの信号(残響波)を効果的に増幅する。また、検波部77は、入力信号を検波し残響波の有無を検出する検波回路である。
RAM79は、例えば上記カウンタ71の計算出力でインクリメントされたデータを保持しており、検波部77からの残響波が検出された時点でそのカウントデータが読出されるようなRAMテーブルである。そして、前記RAM79から読み出されたデータが制御部81において演算され、必要に応じて測定用シリコンウエハ18の各部の温度を表示部80へ表示するものである。
【0044】
図12は、第1、第2、第3の実施の形態において用いられる他の形式の温度測定装置11のブロック図示したものである。
この図12に示す温度測定装置11は、上記図11に示した温度測定装置11と同様に小型送受信アンテナ14又は単一の大型送受信アンテナ20から励振周波数の信号を送信すると共に残響信号を検出し、その共振周波数を計測するために用いられる。また、この図11に示す温度測定装置11においても、例えばマイクロコンピュータで形成される制御部81により全体を統括制御するようにされている。
【0045】
この図においても信号出力部70は、制御部81の制御に基づき、基準クロック信号を出力する信号源であり、カウンタ71aは信号出力部70からの基準クロック信号を計測して、所定の計算値でリセットされるカウンタ回路である。D/A変換器72は、制御部81の制御に基づき、カウンタ71aにより計算された値に基づいてデジタル信号からアナログ信号へ入力信号を変換する変換器である。そして、VCO73は、入力信号レベル、すなわちカウンタ71aのカウント値によって周波数が変化する掃引型の電圧可変発信器である。
送信部74は、制御部81の制御に基づき、VCO73から出力された掃引信号波を初手の周波数に変換すると共にパワーアップして。SW75を介して小型送信受信アンテナ14もしくは単一の大型送受信アンテナ20へ送信する。
又、小型送信受信アンテナ14若しくは単一の大型送受信アンテナ20からの信号は上記制御部81の制御に基づきスイッチ回路75を介して、受信部76に入力される。入力された外部からの信号(残響波)は、検波部77において検波され、残響波の有無を検出する検波回路とされている。
この実施例では検波部77の出力によって、計測パルス発生器78が駆動され計測用のパルス信号が発生するようにしている。そして、この計測用のパルス信号によって受信部76の出力、すなわち、残響波信号波が入力されているカウンタ71bを制御し、残響信号波の周波数を直接カウンタ71bで計測して、その計測値をRAM79に記憶させる。
RAM79に記憶されているデータは制御部81において温度データに変換され、そのデータが表示部80等に表示されると共に、その温度データが先に説明した加熱手段の温度制御データとして出力されるものである。
【0046】
図13は、センサーアンテナ15と小型送受信アンテナ14又は単一の大型送受信アンテナ20との間で信号の送受信が良好となる距離(D)を縦軸に、センサーアンテナ15のインダクタンスを横軸に示している。
図示するように、センサーアンテナ15と小型送受信アンテナ14又は単一の大型送受信アンテナ20との間で送受信が良好に行われる距離が最大距離Dmとなるときの、センサーアンテナ15のインダクタンス値Lmを示している。このインダクタンス値Lmは、実験によるとインダクタンス値Lmと振動素子の並列容量Coとの共振周波数が、圧電振動子の共振周波数(モーショナル)と近似するように選択することが好ましい。
【0047】
なお、温度測定装置11で測定した計測用シリコンウエハ18の温度を表示部80ではなく、例えば音声で表現されるようにしてもよい。また、温度測定装置11から直接、計測用シリコンウエハ18の加熱加工を行う熱処理装置へ温度情報を供給して熱処理装置の温度制御を行うように構成することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のシリコンウエハ多点温度測定装置で測定されたシリコンウエハの加熱加工時の温度データは、制御用のコンピュータに取り込まれ、所定の演算処理を行ってシリコンウエハを加熱する加熱装置にフィードバックされ、このシリコンウエハで施される加熱加工工程が正確に行われるようにするために使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第1の実施の形態におけるシリコンウエハ多点温度測定装置の概略図を示した図である。
【図2】第2の実施の形態におけるシリコンウエハ多点温度測定装置の概略図を示した図である。
【図3】第3の実施の形態におけるシリコンウエハ多点温度測定装置の概略図を示した図である。
【図4】単芯耐熱ケーブルの構成の一例を示す図である。
【図5】加熱加工工程においシリコンウエハを加熱する枚葉型熱処理装置の構成の一例を示す図である。
【図6】加熱加工工程においシリコンウエハを加熱するバッチ型熱処理装置の構成の一例を示す図である。
【図7】温度センサに用いられる圧電振動子の共通点付近における電気的な等価回路と、共振点付近のインピーダンス変化特性を拡大した図である。
【図8】圧電振動子から発信される周波数と温度との関係を示した図である。
【図9】温度測定装置において発信周波数を基にして温度を測定する際の温度測定の動作原理について示した図である。
【図10】温度測定装置から送信する周波数の変化と、圧電振動子からの周波数を受信するタイミングを示した図である。
【図11】第1の実施の形態、第2の実施の形態で用いられる温度測定装置の構成の一例を示したブロック図である。
【図12】第3の実施の形態で用いられる温度測定装置の構成の一例を示したブロック図である。
【図13】センサーアンテナと送受信アンテナ・大型送受信アンテナの距離とセンサーアンテナのインダクタンスとの関係を示した図である。
【図14】被測定物に対する多点の温度測定を行うための模式図である。
【図15】半導体ウエハ基板の加熱方法と、温度測定装置の説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1(1a,1b,1c,1d,1e)・ 16(16a,16b,16c,16d,16e,16f) 圧電素子温度センサ、2(2a,2b,2c,2d,2e) ケーブル、3(Y1,Y2,Y3)・11 温度測定装置、4 加熱装置、5 加熱電源、6 シリコンウエハ、10 シリコンウエハ多点温度測定装置、12 インピーダンス整合器、13 多芯耐熱ケーブル、14(14a,14b,14c,14d,14e,14f) 小型送受信アンテナ、15(15a,15b,15c,15d,15e,15f) センサーアンテナ、16(16a,16b,16c,16d,16e,16f)、17・23 石英、18 計測用シリコンウエハ、19 単芯耐熱ケーブル、20 大型送受信アンテナ、21 特性インピーダンス、22 ツイストコード、25 同軸ケーブル、26 コネクタ、30 チャンバー、31 支持台、32・45 加熱ランプ、33 ドア、34・42 ガス入口、35・43 ガス出口、36 反射板、40 石英ボート、41 石英反応管、44 均熱管、70 信号出力部、71(71a,71b) カウンタ、72 D/A変換器、73 VCO、74 送信部、75 SW、76 受信部、77 検波部、78 計測パルス発信器、79 RAM、80 表示部、81 制御部、90 加熱制御装置、91 加熱手段、100 枚葉型熱処理装置、200 バッチ型熱処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコンウエハ加熱手段内の被加工シリコンウエハ設置位置に設置されるシリコンウエハ素材と、
前記シリコンウエハ素材の所定の位置にセンサーアンテナ部と共に装着された複数個の圧電振動子と、
前記センサーアンテナ部に電磁波を照射すると共に、前記圧電振動子の残響振動波を受信するための送受信アンテナと、
前記送受信アンテナを介して前記センサーアンテナ部に所定の掃引信号波を送信する送信部と、
前記センサーアンテナ部から発信された残響振動波の周波数を計測する計測部とを備え、
前記残響振動波の周波数に基づいて前記シリコンウエハ素材の表面温度を測定することを特徴とするシリコンウエハ多点温度測定装置。
【請求項2】
上記センサーアンテナ部は、上記圧電振動子の励振電極に対して並列に接続されているループアンテナによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシリコンウエハ多点温度測定装置。
【請求項3】
上記センサーアンテナ部、及び圧電振動子は耐熱材によって被覆されることにより1組の温度センサとされ、上記シリコンウエハ素材の表面に全部、又は一部が埋設されていることを特徴とする請求項1に記載のシリコンウエハ多点温度測定装置。
【請求項4】
上記センサーアンテナ部に照射される掃引信号波は、所定の周波数でステップアップして上記圧電振動子の共振周波数が含まれる帯域を掃引するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のシリコンウエハ多点温度測定装置。
【請求項5】
上記残響振動波の周波数は、上記計測部において周波数カウンタで計測されることを特徴とする請求項1に記載のシリコンウエハ多点温度測定装置。
【請求項6】
上記シリコンウエハ加熱手段は、枚葉型であることを特徴とする請求項1に記載のシリコンウエハ多点温度測定装置。
【請求項7】
上記シリコンウエハ加熱手段は、バッチ型とされていることを特徴とする請求項1に記載のシリコンウエハ多点温度測定装置。
【請求項8】
上記圧電振動子は水晶片によって構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシリコンウエハ多点温度測定装置。
【請求項9】
上記圧電振動子はランガサイトによって構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシリコンウエハ多点温度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−229428(P2009−229428A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−78765(P2008−78765)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000220664)東京電波株式会社 (22)
【Fターム(参考)】