説明

シリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの検査装置及び検査方法

【課題】レーザ光を照射し、照射によって生じる蛍光の波長と強度から不純物成分を特定し、かつ不純物成分の含有量を算出することによって、ルツボ内表面の極表層に含まれる不純物成分のみを検出するシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの検査装置及び検査方法を提供する。
【解決手段】レーザ光が導かれる出光ファイバ4と、石英ガラスルツボの内表面から蛍光を受光するための受光ファイバ6と、分光器7よって分光された所定波長の光の蛍光強度を検出する検出器9と、予め求めた不純物成分に対応する蛍光波長と不純物成分の含有量に対する蛍光強度データに基づいて、不純物成分の特定と含有量の算出を行うコンピュータ10と、石英ガラスよりも高屈折率のマッチングオイルの薄膜を前記石英ガラスルツボ内表面に形成するマッチングオイル供給管13aと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの検査装置及び検査方法に関し、特に、レーザ光を照射し、照射によって生じる蛍光の波長と強度から不純物の特定と含有量を検出するシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの検査装置及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ディバイスの基板として用いられるシリコン単結晶は、主にチョクラルスキー(CZ法)により製造されている。
具体的には、シリコン単結晶引上用石英ガラスルツボ内に多結晶シリコン原料を装填し、ルツボを周囲から加熱することによって多結晶シリコン原料を溶融させて、吊り下げられた種結晶をシリコン融液に浸して除々に引き上げることによって、シリコン単結晶インゴットを成長させ、シリコン単結晶を製造している。
【0003】
このシリコン単結晶引き上げに用いられる石英ガラスルツボは、天然石英ガラス原料粉末を原料として製造されている。この天然石英ガラス原料粉末には、Na、K、Li、Al、Ti等の不純物成分が含まれている。このような不純物成分は、石英ガラスルツボを製造する際に、極少量蒸発するが、その大部分は石英ガラスルツボに残留する。
このような不純物が残留した石英ガラスルツボを用いて、シリコン単結晶引上げを行うと、不純物成分がシリコン融液中に溶け込みシリコン単結晶のMCL(Metal contamination level)異常を引き起こすという問題があった。
【0004】
この問題を回避するために、シリコン単結晶引上に用いられる石英ガラスルツボの不純物成分の含有量について測定し、不純物成分が一定の基準値以下であるかを検証する検査が行われている。
例えば、特許文献1には、365nmよりも短い波長の紫外光を、シリカガラスルツボの壁面に照射し、該壁面の内表面及び内表面近傍において発生する420nm乃至600nmの範囲内の波長の蛍光斑点の個数を計測するシリコン単結晶引上用シリカガラスルツボの検査方法が提案されている。
【0005】
この検査方法によれば、365nmよりも短い波長の紫外光を、シリカガラスルツボの壁面に照射し、蛍光斑点の個数を計測するため、不純物成分が偏在していても、局所的な不純物成分の含有量について測定できる。
【0006】
また、同様に特許文献2においても、石英ルツボの表面に電子ビームを照射し、その照射領域に表われる局所的な輝点の存在によって希土類系不純物の存在を検出する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−146496号公報
【特許文献2】特開平3−170393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献1に示された石英ガラスルツボのルツボの検査方法にあっては、紫外光がシリカガラスルツボの壁面の内表面内部に侵入するため、内表面及び内表面近傍(内表面より約5mmの深さ)に存在する不純物成分を検出するものであった。
また、特許文献2に示された石英ガラスルツボのルツボの検査方法においても、電子ビームがシリカガラスルツボの壁面の内表面内部に侵入するため、測定の対象はルツボの内側表面のみならず表面近傍すなわち表面から深さ50μm程度迄の領域が含まれ、かかる領域に存在する不純物を検出するものであった。
このように特許文献1,2に示された、いずれの石英ガラスルツボの検査方法にあっても、ルツボの内側表面のみならず表面近傍の領域が含まれ、内表面の極表層に含まれる不純物成分のみを検出することができないという技術的課題があった。
【0009】
本発明者は、紫外線レーザのようなレーザ光を全反射させてエバネッセント波を発生させ、エバネッセント波により励起された分子(不純物成分)から得られる蛍光の強度に表れる変化を測定することにより、石英ガラスルツボの内表面の極表層に存在する不純物成分の特定と含有量を検出することを鋭意研究し、本発明を想到したものである。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、レーザ光を照射し、照射によって生じる蛍光の波長と強度から不純物成分を特定し、かつ不純物成分の含有量を算出することによって、ルツボ内表面の極表層に含まれる不純物成分のみを検出するシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの検査装置及び検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するため、本発明に係るシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの検査装置は、レーザ光源と、前記レーザ光源からのレーザ光が導かれる出光ファイバと、前記出光ファイバが設けられた検出部と、前記検出部に設けられた、石英ガラスルツボの内表面から蛍光を受光するための受光ファイバと、前記受光ファイバに接続された分光器と、前記分光器よって分光された所定波長の光の蛍光強度を検出する検出器と、前記検出器が受光した所定波長の蛍光の強度の演算処理を行い、予め求めた不純物成分に対応する蛍光波長と不純物成分の含有量に対する蛍光強度データに基づいて、不純物成分の特定と含有量の算出を行うコンピュータと、前記分光器よって分光する所定波長を可変するための波長コントローラと、前記検出部に設けられた、石英ガラスよりも高屈折率のマッチングオイルの薄膜を前記石英ガラスルツボ内表面に形成するマッチングオイル供給管と、を備えたことを特徴としている。
【0012】
このように石英ガラスルツボ内表面に、石英ガラスよりも高屈折率のマッチングオイルの薄膜が形成されているため、前記石英ガラスルツボとマッチングオイル薄膜の界面でレーザ光が全反射し、レーザ光の石英ガラスルツボ内層へ浸み込みが抑制される。
そして、レーザ光の全反射によって生じるエバネッセント波により、励起された不純物成分から得られる蛍光波長、蛍光の強度に基づいて不純物成分が特定され、不純物成分の含有量が求め、石英ガラスルツボ内表面の極表層に含まれる不純物成分のみが検出される。
【0013】
ここで、前記検出部に、前記出光ファイバ及び前記受光ファイバが同一水平面上に相対向して配置され、かつマッチングオイルの供給管は石英ガラスルツボ内表面に相対向するように配置されていることが望ましい。
このように、前記出光ファイバ及び前記受光ファイバが同一水平面上に相対向して配置されているため、検出部が石英ルツボの底面部方向に移動した場合であっても、受光ファイバが光を検出できない等の不都合が生じる虞がない。
また、マッチングオイルの供給管が石英ガラスルツボ内表面に相対向するように配置されているため、噴射、噴霧、塗布等により、石英ガラスルツボ内表面にマッチングオイルの薄膜を容易に形成することができる。
【0014】
また、前記検査部に一端が固定された支持棒を備え、前記支持棒が駆動手段によって、石英ガラスルツボ内表面に沿って石英ガラスルツボの周方向及び軸線方向に移動するように構成されていることが望ましい。
このように、支持棒が駆動手段によって、石英ガラスルツボ内表面に沿って石英ガラスルツボの周方向及び軸線方向に移動するように構成されているため、石英ガラスルツボの全域にわたって検査することができる。
【0015】
また、上述した目的を達成するため、本発明に係るシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの検査方法は、上記石英ガラスルツボの検査装置を用いた検査方法であって、予め、不純物成分に対応する蛍光波長と不純物成分の含有量に対する蛍光強度データを求める工程と、検出部を石英ガラスルツボ内表面の所定位置に配置する工程と、石英ガラスルツボ内表面の所定位置に、石英ガラスよりも高屈折率のマッチングオイルの薄膜を形成する工程と、前記レーザ光源からレーザ光を照射し、石英ガラスルツボの内表面から蛍光を発光させる工程と、前記蛍光を受光し、所定波長の蛍光強度を検出する工程と、前記検出器が受光した前記所定波長の蛍光の強度の演算処理を行い、予め求めた不純物成分に対応する蛍光波長と不純物成分の含有量に対する蛍光強度データに基づいて、不純物成分の特定と、不純物成分の含有量の算出を行う工程とを備えることを特徴としている。
この検査方法によれば、前記したように石英ガラスルツボ内表面の極表層に含まれる不純物成分のみを検出することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、上記事情に鑑みなされたものであり、レーザ光を照射し、照射によって生じる蛍光の波長と強度から不純物成分を特定し、かつ不純物成分の含有量を算出することによって、ルツボ内表面の極表層に含まれる不純物成分のみを検出するシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの検査装置及び検査方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明にかかるシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの検査装置の概略構成図である。
【図2】図2は図1の検出部の拡大図である。
【図3】図3はシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの検査装置の使用状態を示す斜視図である。
【図4】図4はレーザ光の全反射の状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明にかかるシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの検査装置及び検査方法は、石英ガラスルツボ内表面に、石英ガラスよりも高屈折率のマッチングオイルの薄膜を形成し、前記石英ガラスルツボとマッチングオイルの界面で、紫外線レーザのようなレーザ光を全反射させてエバネッセント波を発生させ、エバネッセント波により励起された不純物成分の分子から得られる蛍光の強度を測定して、石英ガラスルツボに含まれる不純物成分の特定と、含有量の算出を行うものである。
【0019】
まず、本発明にかかるシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの検査装置について、図1乃至図4に基づいて説明する。尚、図1は、本発明にかかるシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの検査装置の概略構成図、図2は図1の検出部の拡大図、図3はシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの検査装置の使用状態を示す斜視図、図4はレーザ光の全反射の状態を示す概念図である。
【0020】
図1に示すように、このシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの検査装置1は、レーザ光源2と、前記レーザ光源2から発振された波長を選択し、単一の波長を導出する波長板3を備えている。
このレーザ光は、前記波長板3から光ファイバ(出光ファイバ)4によって検出部5に導かれる。このレーザ光源2としては、具体的には、エキシマレーザ、半導体レーザ等を用いることができ、エバネッセント波を発生させる観点から、500nm以下の波長を有するレーザ光であることが好ましい。
【0021】
また、前記検出部5には、検査対象の石英ガラスルツボAの内表面から蛍光を受光するための光ファイバ(受光ファイバ)6が設けられ、この光ファイバ6には、所定の波長の光を分光する分光器7が接続されている。
更に、この分光器7には、分光器7よって分光された光を増幅する光電子増倍管8が接続され、この光電子増倍管8には、所定波長の蛍光の強度を検出する検出器9が接続されている。
【0022】
前記レーザ光の入射により石英ガラスルツボAの内表面から発せられた蛍光は、前記検出器9にて受光され、受光した蛍光の強度データが、前記検出器9から演算処理を行うコンピュータ10に出力される。このコンピュータ10には表示部11が設けられ、蛍光スペクトルが表示されるように構成されている。
【0023】
また、コンピュータ10は、記憶部10aと演算処理部10bを備え、前記コンピュータ10の記憶部10aには、各不純物成分に対応する蛍光波長と、予め測定された各不純物成分の含有量に対する蛍光強度のデータが記憶されている。
このコンピュータ10は、分光器7よって分光された光の特定の波長(波長コントローラ12による指定された波長)と、記憶部10aに記憶されている不純物成分に対応する蛍光波長とを演算処理部10bで対比し、不純物成分を特定するように構成されている。
また、前記コンピュータ10は、予め測定された各不純物成分の含有量に対する蛍光強度のデータと、検出器9からの受光した蛍光の強度データとを対比し、不純物成分の含有量を演算処理部10bで算出するように構成されている。
尚、前記コンピュータ10からの指示に基づいて分光器7の分光する光の波長を変更する波長コントローラ12を備えている。
【0024】
また、この石英ガラスルツボの検査装置1には、石英ガラスルツボAの内表面にマッチングオイルを形成するマッチングオイル供給器13が設けられている。このマッチングオイルは、レーザ光が入射される石英ガラスルツボ内表面に、石英ガラスよりも高い屈折率の薄膜を形成するためのものである。
図4に示すように、このマッチングオイルによる薄膜Mを石英ガラスルツボAの内表面に形成することにより、レーザ光Lが石英ガラスルツボAの内表面(極表層)で全反射し、内部へのレーザ光の浸み込みを抑制できる。
その結果、石英ガラスルツボAの内表面の極表層において、エバネッセント波により励起された不純物成分の分子から得られる蛍光強度を測定できる。
【0025】
前記マッチングオイル供給器13にはオイルタンク14が接続され、更にマッチングオイル供給器13には、マッチングオイル供給管13aが接続されている。
したがって、前記コンピュータ10からの指示に基づいて、マッチングオイルは、オイルタンク14、マッチングオイル供給器13、マッチングオイル供給管13aを介して、石英ガラスルツボ内表面に噴射あるいは噴霧、または塗布等され、石英ガラスルツボ内表面にマッチングオイルの薄膜が形成される。尚、図示しないが、マッチングオイル供給管13aの先端にノズルを設けても良い。
このマッチングオイルとしては、グリセリン、ベンゼン、半導体液浸露光用の有機高屈折率液体を用いることができる。
【0026】
また、前記検出部5は、石英ガラスルツボAの内表面に沿って移動可能に構成され、石英ガラスルツボ内表面の全域にわたって、不純物成分の検査行うことができるように構成されている。
具体的には、図2、図3に示すように、検査部5のフレーム5aに支持棒17の一端がヒンジ17aにより揺動可能(T方向)に取付けられ、更にこの支持棒17が、モータ等の駆動手段16によって、石英ガラスルツボ内表面に沿って石英ガラスルツボの周方向(R方向)に移動するように構成されている。また、この支持棒17は石英ガラスルツボ内表面に沿って石英ガラスルツボの軸線方向(Y方向)に移動するように構成されている。
【0027】
また、前記検出部5において、前記出光ファイバ4及び前記受光ファイバ6は、図3に示すように石英ガラスルツボの同一水平面上に位置するように相対向して配置されている。
これに対して、前記出光ファイバ4及び前記受光ファイバ6を、石英ガラスルツボAの軸線l方向に上下に配置するのは、好ましくない。即ち、検出部5を下方向に移動させ、ルツボ胴体部と底面部との近傍の検査を行う際、ルツボの曲面の曲率半径が変化するため、検出部の移動、あるいは光の検出に不都合が生じる虞があるため、好ましくない。
【0028】
また、マッチングオイルの供給管13aの開口部13a1は、石英ガラスルツAの内表面に相対向するように、前記検出部5に配置され、マッチングオイルの供給管からマッチングオイルを噴射、噴霧、塗布し、石英ガラスルツボ内表面にマッチングオイルの薄膜Mを形成することができるようになされている。
【0029】
このように構成された石英ガラスルツボの検査装置1を用いて、石英ガラスルツボの検査を行うには、まず、不純物成分に対応する蛍光波長と不純物成分の含有量に対する蛍光強度データを求める。各種不純物成分、含有量をドープさせた石英ガラス試料を作成し、不純物成分に対応する蛍光波長と不純物成分の含有量に対する蛍光強度データを求める。
【0030】
次に、前記コンピュータ10から位置移動コントローラ15に指示を与え、前記位置移動コントローラ15よって駆動手段16を制御し、検出部5を石英ガラスルツAの内表面の所定位置(検査位置)に配置する。
その後、オイルタンク14、マッチングオイル供給器13、マッチングオイル供給管13aを介して、石英ガラスルツボ内表面にマッチングオイルを噴射あるいは噴霧、または塗布等し、石英ガラスルツボAの内表面にマッチングオイルの薄膜Mを形成する。
【0031】
そして、レーザ光源2からレーザ光を照射し、前記波長板3から所定の波長のレーザ光を検出部5に導く。前記レーザ光の入射により石英ガラスルツボAの内表面から発せられた蛍光のうち、分光器7によって分光された所定波長の光が前記検出器9にて受光される。受光した蛍光の強度データが前記検出器9から演算処理を行うコンピュータ10に出力される。
【0032】
このコンピュータ10は、分光器7よって分光された光の特定の波長と、記憶部10aに記憶されている不純物成分に対応する蛍光波長と、演算処理部10bで対比し、不純物成分を特定する。
また、前記コンピュータ10は、予め測定された各不純物成分の含有量に対する蛍光強度のデータと、検出器9からの受光した蛍光の強度データとを対比し、不純物成分の含有量を演算処理部10bで算出する。
また、前記コンピュータ10から波長コントローラ12に、分光器7の分光する光の波長を変更する指示がなされ、変更された蛍光波長での蛍光の強度データが検出器9によって検出される。
【0033】
このようにして、石英ガラスルツAの内表面の所定位置における、種々の蛍光波長での蛍光強度データが求められ、不純物成分の特定、不純物成分の含有量の算出が行われる。
そして再び、位置移動コントローラ15によって駆動手段16を制御し、支持棒17を移動させることにより、検出部5を石英ガラスルツAの内表面の他の検査位置に移動させ、前記検査を繰り返す。
【0034】
この検査装置及び方法にあっては、石英ガラスルツボの局所に、不純物成分が高濃度に存在している場合であっても、これを検出することができる。また、レーザ光の全反射によって生じる蛍光の波長と強度から不純物成分を特定し、かつ不純物成分の含有量を算出するため、ルツボ内表面の極表層に含まれる不純物成分のみを検出することができる。
【実施例】
【0035】
24インチルツボ表面に半導体液浸露光用高屈折率液体をスプレー塗布した。続いて該表面にArFエキシマレーザー(193nm)光を臨界角で入射させ、その際に発生した蛍光波長を観察した。
ルツボ表面から発せられた蛍光は高感度蛍光検出器にて受光され蛍光スペクトルを表示させ、蛍光スペクトルのピーク分離を行ったところ545nm、550nm、560nmのピークが観察された。演算処理部で予め一般に公表されている蛍光波長と各不純物元素の成分との相関データ、及び事前に誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS)で評価した既知のサンプルにおける蛍光波長・強度との相関データが入力されており、これらデータと照合することで各蛍光ピークをアサインした。結果、各ピークはCu、Cr、Feであること判明した。
各不純物成分の含有量の算出としては入射光のエネルギー密度のより蛍光強度が変化するが、検出器で一次散乱入射光スペクトルを同時に検出しその光強度aと各不純物蛍光強度bを用いて、b/aの比を求めることで含有量を計算した。
b/aで求められる相対蛍光強度からCu濃度は100ppb、Cr濃度は68ppb、Feは200ppb含有されていることが判明した。
【符号の説明】
【0036】
1 石英ガラスルツボの検査装置
2 レーザ光源
3 波長板
4 光ファイバ(出光ファイバ)
5 検出部
5a フレーム
6 光ファイバ(受光ファイバ)
7 分光器
8 光電子増倍管
9 検出器
10 コンピュータ
10a 記憶部
10b 演算処理部
11 表示部
12 波長コントローラ
13 マッチングオイル供給器
13a マッチングオイル供給管
13a1 開口部
14 オイルタンク
15 位置移動コントローラ
16 駆動手段
17 支持棒
A 石英ガラスルツボ
M マッチングオイル薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、
前記レーザ光源からのレーザ光が導かれる出光ファイバと、
前記出光ファイバが設けられた検出部と、
前記検出部に設けられた、石英ガラスルツボの内表面から蛍光を受光するための受光ファイバと、
前記受光ファイバに接続された分光器と、
前記分光器よって分光された所定波長の光の蛍光強度を検出する検出器と、
前記検出器が受光した所定波長の蛍光の強度の演算処理を行い、予め求めた不純物成分に対応する蛍光波長と不純物成分の含有量に対する蛍光強度データに基づいて、不純物成分の特定と含有量の算出を行うコンピュータと、
前記分光器よって分光する所定波長を可変するための波長コントローラと、
前記検出部に設けられた、石英ガラスよりも高屈折率のマッチングオイルの薄膜を前記石英ガラスルツボ内表面に形成するマッチングオイル供給管と、
を備えたことを特徴とするシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの検査装置。
【請求項2】
前記検出部に、前記出光ファイバ及び前記受光ファイバが同一水平面上に相対向して配置され、かつマッチングオイルの供給管は石英ガラスルツボ内表面に相対向するように配置されていることを特徴とする請求項1記載されたシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの検査装置。
【請求項3】
前記検査部に一端が固定された支持棒を備え、
前記支持棒が駆動手段によって、石英ガラスルツボ内表面に沿って石英ガラスルツボの周方向及び軸線方向に移動するように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載されたシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの検査装置。
【請求項4】
前記請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの検査装置を用いた検査方法であって、
予め、不純物成分に対応する蛍光波長と不純物成分の含有量に対する蛍光強度データを求める工程と、
検出部を石英ガラスルツボ内表面の所定位置に配置する工程と、
石英ガラスルツボ内表面の所定位置に、石英ガラスよりも高屈折率のマッチングオイルの薄膜を形成する工程と、
前記レーザ光源からレーザ光を照射し、石英ガラスルツボの内表面から蛍光を発光させる工程と、
前記蛍光を受光し、所定波長の蛍光強度を検出する工程と、
前記検出器が受光した前記所定波長の蛍光の強度の演算処理を行い、予め求めた不純物成分に対応する蛍光波長と不純物成分の含有量に対する蛍光強度データに基づいて、不純物成分の特定と、不純物成分の含有量の算出を行う工程とを備えることを特徴とするシリコン単結晶引上用石英ガラスルツボの検査方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−17243(P2012−17243A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2010−290377(P2010−290377)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(507182807)コバレントマテリアル株式会社 (506)
【Fターム(参考)】