説明

シリコン系材料のエッチング方法

エッチングされた表面にカラム又はピラーを形成するために、シリコン基板を小さな局所的領域において選択的にエッチングする方法が記載されている。シリコン基板は、フッ化水素と、銀塩と、アルコールとのエッチング溶液中に保持される。アルコールを含めることは、シリコンカラムのより大きな充填密度を提供する。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
発明の分野
本発明は、シリコン系材料のエッチング方法に関する。
【0002】
背景技術
シリコンピラーをつくるためのシリコン系材料の選択エッチングは、例えば、リチウム蓄電池の陰極をつくるのに有利であることが知られている。1つのこのようなアプローチは、参照によりここに組み込まれている米国特許第7033936号に記載されている。この文書によると、塩化セシウムの半球状の島をシリコン基板表面上に堆積させることによってマスクをつくり、これら島を含んだ基板表面を膜で被覆し、これら半球状構造体(それらを被覆した膜を含む)をこの表面から除去して、半球体があった領域が露出したマスクをつくることによって、ピラーが製作される。次に、反応性イオンエッチングを使用して基板を先の露出した領域においてエッチングし、レジストを、例えば物理スパッタリングによって除去して、複数のシリコンピラーからなるアレイを、エッチングされていない領域、すなわち、半球体の位置の間の領域に残す。
【0003】
代わる化学的なアプローチが、Peng K-Q, Yan, Y-J, Gao S-P及びZhu J.の、Adv. Materials, 14 (2002), p.1164-1167と、Adv. Functional Materials, (2003), 13, No 2 2月, p.127-132と、Adv. Materials, 16 (2004), p.73-76とに記載されている。Pengらは、化学的方法によってナノピラーをシリコン上につくる方法を示している。この方法に従うと、n型又はp型であり得る、{111}面が溶液に曝されたシリコンウェハが、以下の溶液:5MのHF及び20mMのAgNO3を使用して、50℃でエッチングされる。ピラーは、約20ミクロン/時で形成され、24ミクロン以下のピラー高さが報告されている。高さを別とすれば、平均ピラー径、充填密度又は表面均一性などの他の寸法データは与えられていない。この方法は、約1cm2のチップ上でのみ行われている。これら論文において仮定されているメカニズムは、最初の段階において、孤立した銀のクラスターがシリコン表面上に無電解堆積されることである。第2段階において、銀ナノクラスター及びそれらを取り囲んでいるシリコンの領域がローカル電極として働いて、銀ナノクラスターを取り囲んでいる領域においてシリコンの電解酸化を起してSiF6カチオンを形成し、これらカチオンがエッチング部位から離れて拡散して、銀ナノクラスターの下にあるシリコンをピラー形状に残す。特には硝酸塩の状態にある、銀以外の金属、例えばNi、Fe、Co、Cr及びMgが、シリコンピラーを形成するのに使用され得ることが提案されている。
【0004】
K. PengらのAngew. Chem. Int. Ed., 44 (2005), p.2737-2742及びK. PengらのAdv. Funct. Mater., 16 (2006), p.387-394は、Pengらによる前述の論文に記載されたものと同じエッチング方法に関しているが、核生成/銀ナノ粒子堆積工程及びエッチング工程が、別々の溶液において行われる。第1(核生成)工程では、シリコンチップが、1分間に亘り、4.6MのHF及び0.01MのAgNO3の溶液中に置かれる。次に、第2(エッチング)工程が、30又は50分間に亘り、別の溶液、すなわち、4.6MのHF及び0.135MのFe(NO33の溶液中で行われる。両方の工程とも、50℃で行われる。それぞれ、高さが約6及び4ミクロンで、径が約20及び20乃至40nmであるピラーが報告されている。ピラーは、{111}平面上で{111}方向に成長する。ピラー充填密度(表面均一性)も、使用されるシリコンチップの寸法も開示されていない。シリコンウェハは、n型又はp型であり得る。これら論文では、エッチング工程について、前述の論文とは別のメカニズム、すなわち、銀(Ag)ナノ粒子の下にあるシリコンが除去され、ナノ粒子が、漸次、バルクシリコン中へと沈降して、銀ナノ粒子の直下にない領域にシリコンのカラムを残すことが提案されている。
【0005】
より高いピラー、ピラーの密度の増加及びピラーの分布の均一性の向上への要求がある。更に、ピラー形成(エッチング)の速度を高めることが望ましいであろう。更には、Pengによって説明されたアプローチは{111}面に限られているので、これらアプローチの適用可能性は制限されている。
【0006】
発明の開示
本発明は、特許請求の範囲において説明されている。
【0007】
ここで説明される方法に従うと、シリコン系基板上にシリコンピラーをつくる改善された化学的方法が提供される。
【0008】
まず、標準的な半導体材料において、シリコンウェハからチップ(約1乃至15cm2であり得る)をとり、チップの片面は研磨され、もう一方の面は傷が付けられる(distress)(粗らされる)。ウェハのこの面は、シリコンの{100}又は{110}結晶面に対応する。シリコンは、例えば従来のドーピング剤の何れかを使用して、望まれるようにシリコンをn型又はp型にするためにドーピングされ得る。シリコンチップの典型的な抵抗率は、10のプラスマイナス二乗オームcm(1 ohm cm plus or minus tow powers of ten)である。例えば、n型シリコンの場合、抵抗率は典型的には及び概して1オームcmであり、ここで説明される実施形態におけるドーピングレベルは、臨界的ではないことに気付かれるであろう。
【0009】
本発明の方法に供される前に、RCA−1エッチング(すなわち、1:1:1の体積比の水:88アンモニア:濃過酸化水素)を使用して、表面を均一に清浄及び親水性にしても良い。次の製造段階において、シリコンチップが、その裏(粗い方)側で、薄いAu/Cr被覆(例えば、10Au/1Cr、約200nm厚の膜)によって保護され得る。
【0010】
このエッチング方法は、2つの段階を含んでいる。第1段階は、離散した金属堆積物をシリコン表面上に形成する核生成であり、第2段階は、基板の実際のエッチングである。本発明に従ってこれら2つの段階を行うことによって、密度と高さとの双方の点でより均一なピラーアレイが得られる。
【0011】
第1の核生成段階は、離散した金属堆積物をシリコンの表面上に形成する。ある実施形態での核生成段階において使用される水溶液の化学組成は、
−1乃至40体積%のアルコール、例えば、エタノール,この溶液の典型的なアルコール含有量は、全体の水溶液の総体積に基づき、5乃至40体積%、例えば15乃至40体積%、任意に約5又は6体積%である,と、
−1.5乃至10モル濃度(M)、例えば5乃至7.5M、例えば約6.8Mのフッ化水素酸(典型的な濃度の例は、4.5−9M、例えば6.8乃至7.9Mである。4.5M、6.8M、7.9M及び9MのHF又はフッ化物塩の溶液は、それぞれ、濃(40%)HFを溶液中に20体積%、30体積%、35体積%及び40体積%含んでいることに対応することに気付かれたい)と、
−フッ化物イオンの存在下において、シリコン基板上の離散した領域に無電解堆積する5乃至100mM、例えば10乃至65mMの金属塩,この塩は、任意に、銀塩、例えば硝酸銀であり、この塩の濃度は、12.6乃至24mM、例えば24mMであり得る(12.6乃至22.1mMの溶液は、31.5mMの銀溶液を40乃至70%含有した溶液に相当し、24mM溶液は、0.06M(60mM)の銀溶液を40%含有した溶液に相当することに気付かれたい),と
である。
【0012】
核生成反応が起こる温度は、0乃至30℃、例えば室温(20℃)であり得る。核生成反応は、迅速に、例えば10秒以内に起こるであろうが、基板は約15分間以内、例えば約10分間に亘り、基板と接触させられ得る。アルコール、例えばエタノールを含むことと、核生成反応段階を比較的低温、例えば室温で行う行為とは、この化学プロセスを減速させる効果を有する。従って、金属堆積物、例えば銀のより均一な分布が達成され、続いて、より均一に離間した複数のピラーが得られる。
【0013】
第2段階はエッチングであり、その最中に、シリコンピラーが形成される。エッチング段階で使用される溶液は、核生成段階で使用されるものと同じでも別のものでも良い。同じ溶液が使用される場合、第2(エッチング)段階は、第1(核生成)段階から途切れず続いても良く、第1及び第2段階の全体の所要時間は、概して5乃至50分の範囲にある。別の溶液が使用される場合、第1核生成段階は、概して、5乃至10分であり得る。エッチング段階で使用される溶液は、
−フッ化水素酸(HF),フッ化物イオンの濃度は4乃至15M、例えば4.5乃至8Mであり得る,と、
−フッ化物イオンの存在下でシリコンを酸化させることが可能な金属塩,この塩は、任意に、銀塩又は鉄塩であり、好ましくは、銀又は鉄の硝酸塩である。この塩の濃度は、10乃至40mM、例えば20乃至30mMでも良く、例えば約25mMであり得る,と
であり得る。
【0014】
アルコールは、エッチング段階では必要ない。
【0015】
エッチング段階は、任意に、ドープ密度に応じて、核生成段階よりも高温で行われる。2つの段階間での温度の上昇は、少なくとも20℃、例えば少なくとも35℃であり得る。エッチング段階は、30乃至80℃、例えば45乃至75℃、例えば60乃至75℃の温度で行われ得る。約45分以内に、高さが約70乃至75ミクロンであり、径が0.2ミクロンである、高さにばらつきのない複数のピラーを達成することができる。エッチング段階はより短い時間で行われても良いが、カラムはより短いであろう。
【0016】
得られたシリコン系基板は、その付属のシリコンピラーと共に、リチウムイオン蓄電池用の陰極として使用され得る。これは、発明者は、これらシリコンピラーが、崩壊も破壊されもせずに可逆的にリチウムイオンと反応でき、それにより、多数回の充放電サイクルに亘って良好な容量維持を提供すると信じているからである。或いは、これらピラーは、シリコンファイバを形成するために、基板のエッチングされていない部分から剪断されても良い。本発明の基板は、リチウムイオン電池の電極に特に応用される。
【0017】
ピラー表面密度(被覆率)は、以下の比Fで説明され得る:
F =P/[R + P]
ここで、Pは、ピラーとして存在するシリコンの量であり、Rは、除去されたシリコンの量である。
【0018】
一定のピラー高さについては、Fの値が大きくなるにつれ、単位面積当たりの可逆的なリチウムイオン容量が大きくなり、電極の電気容量が大きくなる。また、Fの値が大きくなるにつれ、シリコンファイバをつくるのに採取され得るシリコン材料の量が多くなる。ピラー充填密度Fは、核生成段階によって最大にされ、出願人は、40%までの被覆率を達成している。
【0019】
上で説明されたプロセスでは、Fは、典型的には、約15乃至20%である。
【0020】
或る実施形態では、本発明は、シリコン基板をエッチングする方法であって、シリコン基板を、エッチング用フッ化物酸(fluoride acid)又はフッ化物塩の溶液と、銀塩と、アルコールとの溶液と接触させることを含んだ方法を提供する。銀塩は、水溶性であり、例えば硝酸銀である。この溶液の硝酸銀の含有量は、31.5mMの硝酸銀溶液に基づいて、40乃至70%の範囲内にあっても良く、これは、12.6乃至22.1mMの硝酸銀という最終溶液中の硝酸銀濃度と等価である。フッ化物酸は、フッ化水素を含み、その溶液中における含有量は、濃(40%又は22.6M)HFに基づいて、30%乃至40%(6.8乃至9Mという最終溶液中のHF濃度と等価である)であり、例えば35乃至40%(7.9乃至9Mという最終溶液中のHF濃度)の範囲内にあり、例えば40%(9Mという最終溶液中のHF濃度)である。アルコールは、エタノールでも良く、最終溶液におけるその含有量は、15乃至40%の範囲内にあり得る。また、この溶液は、10乃至30%の範囲内、例えば20%の水を含んでいても良い。
【0021】
この方法は、5乃至50分の範囲内の時間、例えば10分間に亘って、10乃至30°の範囲内の温度、例えば20℃の溶液中に基板を放置することを含み得る。この方法は、40乃至45分、例えば45分間に亘り、この溶液の温度を、20乃至75℃の範囲内の温度へと上昇させることを更に含み得る。
【0022】
この方法は、続いて、更なる銀又は硝酸銀、例えば5乃至10%、例えば6%の更なる銀又は硝酸銀を添加することを含み得る。前の段落で述べたように、温度を上昇させる場合、温度を上昇させる際に更なる銀を添加しても良く、これら2つの更なる量を、10分後及び20分後の各々に添加しても良い。
【0023】
エッチングは、{100}又は{110}面で行われ得る。
【0024】
また、本発明は、上で説明された方法によってつくられた、エッチングされたシリコン基板も提供する。
【0025】
以下の2つの例は、特許請求されたプロセスを例証している。
【0026】
例1
清浄なシリコンサンプル(約1cm2であり2−5オームcmのn型材料であって、上で説明されたようにバックコーティングされている)を、上向きに({100}面)、50mlのエッチング溶液が入ったポリプロピレンビーカー内に置く。このエッチング溶液の組成は、
12.5mlのHF(40%)、
2.5mlのエチルアルコール、
35mlの31.5mMのAgNO3
であり、
5.7MのHF、
5体積%のエチルアルコール、
22mMのAgNO3
を含んだ水溶液に相当する。
【0027】
サンプル面上での銀の均一な核生成を得るため、サンプルを、10分間に亘り、室温(約20℃)で放置する。以下で議論されるように、エタノール(又は他のアルコール)が、HFケミストリーへの変更に必要である。
【0028】
核生成段階の後に、エッチング段階が続く。エッチング段階において、上記溶液中に浸漬されたシリコン基板を、45分間に亘り、例えば75℃にある恒温槽内に置く。すなわち、エッチング段階で使用される溶液は、核生成段階で使用された溶液と同じである。この方法の詳細な条件及び特には継続時間に依存して、この処理は、シリコンをエッチングし、その結果、高さが20乃至100ミクロン、典型的には高さが60乃至100ミクロンのピラーをもたらす。
【0029】
例2
代わりのアプローチに従い、
−20mlの0.06MのAgNO3(最終溶液において24mM)と、
−17.5mlの濃HF(最終溶液において7.0M)と、
−2.5mlのEtOH(最終溶液において5体積%)と、
−10mlのH2Oと
からなるマスター溶液(合計で50ml)から始める。次に、以下の手順(a)乃至(c)の1つが行われる。
【0030】
(a)清浄なシリコンサンプル(約1cm2であり、2−5オームcmのn型材料であって、上で説明されたようにバックコーティングされている)を、上向きに({100}面)、10分間に亘って、20℃の50mlの上記マスター溶液が入ったポリプロピレンビーカー内に置く。この直後に、温度を53℃へと上昇させ、同時に、更なる銀塩を、この場合には3mlの0.6MのAgNO3溶液を添加することによって添加する。45分後、このチップを取り出して、リンスする。得られたピラーは〜85ミクロンの高さであり、これは、3mlの0.6MのAgNO3溶液の第2添加なしに得られたものよりも50%大きい。
【0031】
(b)清浄なシリコンサンプル(約1cm2であり、2乃至5オームcmのn型材料であって、上で説明されたようにバックコーティングされている)を、上向きに({100}面)、10分間に亘って、20℃の50mlの上記マスター溶液が入ったポリプロピレンビーカー内に置く。この段階の直後に、エッチング段階のために、温度を53℃へと上昇させ、同時に、1mlの0.6MのAgNO3溶液を添加する。10分後、更なる1mlの0.6MのAgNO3溶液を添加し、更に10分後、別の1mlの0.6MのAgNO3溶液を添加する。53℃にある合計時間は45分であり、結果として、高さが85乃至100ミクロンであり、平均径が0.2ミクロンである均一なピラーをもたらす。
【0032】
このような硝酸銀溶液の更なる添加は、エッチング段階の進行中、例えば、15分間、25分間及び35分間の反応後か、又は、例えば、10分間及び20分間の反応後に為され得る。このプロセスにおいて、被覆率Fは、15乃至20%と算出される。
【0033】
(c)清浄なシリコンサンプル(約1cm2であり、10オームcmのn型材料であり、上で説明されたようにバックコーティングされている)を、上向きに({100}面)、10分間に亘って、20℃の50mlの上記マスター溶液が入ったポリプロピレンビーカー内に置き、次に、エッチング段階用の新たな溶液へと移動させる。この溶液は、例えば、以下から構成され得る。
【0034】
20mlの水、
12.5mlの60mMのFe(NO33(aq)及び
17.5mlの40%のHF。
【0035】
高さが40ミクロンの均一な複数のピラーが、45分で達成される。Fは、SEM分析を使用して測定され、約30%である。Fe(NO33の濃度のばらつきは、約0.2乃至0.6ミクロンのピラーの径のばらつきをもたらす。
【0036】
エッチングプロセスの最中のFe(NO33及び/又はAgNO3溶液の連続的な又は段階的な添加は、向上した均一性及び増加したピラー高さの双方を与える。
【0037】
本発明のアプローチは、以前得られたものの約5倍という増加したピラー高さと、数平方センチメートルに亘る著しく向上した均一性とを提供することがわかっている。結果として、径が10乃至15センチメートルであるウェハの全体に亘って高さ及び充填密度が均一なシリコン系電極を製作することができる。或いは、ピラーは、これと共に譲受けをした(co-assign herewith)、参照によりここに組み込まれている"A method of fabricating fibres composed of silicon or a silicon-based material and their use in lithium rechargeable batteries"と題された同時係属の英国特許出願第0601319.7においてより詳細に記載されているように、例えば、電池の陰極をつくるための続いての引き離し又は「採取」のために成長させられ得る。
【0038】
アルコール、例えば、エタノールなどのC1-4アルカノールを核生成工程に含めることは、幾つかの利点を提供することがわかっている。
【0039】
まず、核生成効果の面で、エタノールの添加は、第1バイタル(vital)期間(約10秒間)において、より均一な銀の堆積物を与える。これは、ピラーのより均一な空間分布をもたらす。
【0040】
エタノール添加の効果は、組成効果(composition effect)を考えると、更に理解することができる。特には、エタノール濃度を変更する(総体積を50mlに維持しながらも、水/アルコールの比を変えることにより)ことは、ピラー高さに対する重要な影響を有し、これは、核生成段階で起こると信じられている。濃度が5体積%(即ち、50ミルの総溶液量中の2.5mlのエタノール)を超えて増加する場合、ピラー高さが減少する傾向がある。更なるデータを以下の表に示す。
【表1】

【0041】
温度効果の面では、核生成は、非常に迅速に、<10秒で起こる。室温で核生成されたピラーは、より高い核生成温度で得られたものよりも高く、従って、発明者は、核生成段階のために室温を使用した場合、プロセスのより優れた制御があることを信じている。10オームcmのn型シリコンウェハについては、温度を、核生成のために、10分間に亘って室温(20°乃至25℃)に維持し、次に、エッチング段階のために、45分間に亘って50℃まで上昇させると、ピラーの高さは〜30ミクロンとなるであろう。70℃乃至75℃では、ピラーの高さは〜60ミクロンであろう。
【0042】
高さが〜75ミクロンの範囲内にあるピラーを45分で得ることができる。高さが120ミクロンまでのピラーも得られた。この方法を使用することによって観察される増加した高さについての1つの理由は、Fe(NO33エッチング溶液中に少量のAgNO3を含める(50mlの溶液中に添加された1mlの60mM)ことにある。
【0043】
エッチング段階が同じ時間に亘って80℃で行われる場合、ピラーは、初めは形成されるものの、破壊される。しかしながら、80℃で行われるエッチング段階のためのエッチング時間が短縮されると、ピラーが確認できる。この最後の結果は、テーパー状のピラー構造をもたらす横方向のエッチング(lateral etching)が幾らかあり、垂直方向に対する横方向のエッチング速度の比が温度と共に増加するために生じるのかも知れない。しかしながら、80℃でのピラー形成における析出物(precipitate)の崩壊は、どちらかといえば、{110}面上での保護吸着質の損失によって説明される。
【0044】
0.1オームcm乃至1000オームcmの範囲内にある抵抗率のドーピングのレベルは何の影響も及ぼさないことがわかっている。また、このプロセスは、n−及びp−型のシリコンの双方に働く。1乃至10オームcmの範囲内では、p型シリコンは、n型シリコンよりも僅かに早くエッチングされることがわかっている。更には、ピラーの成長は、{100}面に限られない。シリコン構造体の成長は、表面に対して約45°の角度を為して傾斜したピラー及びシートを含んだ{110}面上でも観察される。
【0045】
{100}面上でのエッチングは、ウェハ面に対し直角のピラーを与えるであろう。{110}面上には、ウェハ面に対し45°の角度を為すピラーがつくられる。更に、保護吸着質が(110)面上にある場合には、{111}上に垂直なピラーが成長し得る。エッチング速度の順序は、{100}>{111}>>{110}である。
【0046】
ナイフを用いた採取は、繊維材料に加えて、多量の粒状シリコンを与えるので、シリコン繊維の採取は、一般には、超音波を使用して行われる。
【0047】
また、このエッチングプロセスは、超大規模集積(VLSI)電子グレードの単結晶ウェハ又はそれの不合格サンプルの何れかに対して行うことができる。より安価な選択肢として、光起電力グレードの多結晶性材料も使用され得る。使用され得る更に安価な材料は、結晶質金属グレード(crystalline metallical grade)のシリコンである。
【0048】
上で説明された方法によってつくられたピラー構造体は、リチウムイオン蓄電池における使用のためのシリコン陰極を含んだ何れかの適切な実施において使用され得ることは明らかであろう。ここで説明された構造体は「ピラー」と名付けられているが、何れの適切なピラー状、繊維状又は毛状の構造体も包含されることが認識されるであろう。更に、上で述べられたパラメータを適切な場合には変更できること、及び、この材料が、適切なドーピングを行った純シリコン系材料を超えて、例えばシリコンゲルマニウム混合物まで及び得ることが認識されるであろう。
【0049】
ここでシリコン系材料として言及されたものは、純シリコン若しくはドープシリコン、又は、シリコン−ゲルマニウム混合物若しくは何らかの他の適切な混合物などの他のシリコン系材料を含んでいる。ピラーがつくられる基板は、100乃至0.0001オームcmの範囲内にあるn型でもp型でも良いし、又は、それは、適切なシリコンの合金、例えばSixGe1-xでも良い。
【0050】
エタノールの代わりに他のアルコールが使用されても良く、フッ化物塩、例えばフッ化アンモニウムなどの他のエッチング剤が使用されても良い。
【0051】
エッチング及び核生成は、双方とも、例えば、
Si + 6F + 4Ag = (SiF62− + 4Ag
などのガルバニック交換反応である。
【0052】
硝酸銀の代わりに他の可溶な銀塩が使用されても良く、ガルバニック交換反応を提供する可溶な塩、特には硝酸塩の状態の代わりの金属、例えば電気的な陽性が銀に近い又はそれよりも低い金属が採用され得る。核生成は金属塩を必要とするが、エッチングは、もし還元電位が、標準水素スケール(the normal hydrogen scale)で、0乃至0.8Vの範囲内にあるか又はそれに近ければ、金属イオン又は水素イオン若しくは硝酸イオンなどの非金属イオンの何れも(又はこれら双方を)使用することができる。上述のPengらの文献は、銀の代わりに使用され得る代わりの金属を述べている。+0.8V乃至0.0V(標準水素電極(SHE)に対して)の電位を有する金属イオン、例えばCu2+イオン(+0.34V(SHEに対して)にある)が、銀イオンの代わりに使用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板をエッチングする方法であって、シリコン基板を、
フッ化物酸又はフッ化物塩と、
フッ化物イオンの存在下における金属の前記シリコン上への無電解堆積が可能な金属塩と、
アルコールと
の水溶液に接触させることを含んだ方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法であって、前記金属塩が、銀塩、任意には硝酸銀である方法。
【請求項3】
請求項2記載の方法であって、前記溶液の前記硝酸銀の含有量は、0.2乃至16重量%、例えば、0.75重量%乃至0.7重量%の範囲内にある方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載の方法であって、前記溶液の前記金属塩の含有量、例えば前記銀又は硝酸銀の含有量は、5乃至100mM、例えば12.6乃至24mM、例えば12.6乃至22.1mMの範囲内にある方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項記載の方法であって、前記フッ化物酸は、フッ化水素を、3乃至20重量%、例えば8乃至20%、例えば10乃至15%、例えば約12又は13.6%の含有量で含有している方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項記載の方法であって、前記エッチング用フッ化物酸は、フッ化水素を、1.5乃至10M、例えば5乃至7.5M、例えば約6.8Mの含有量で含有している方法。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項記載の方法であって、前記アルコールはエタノールである方法。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項記載の方法であって、前記アルコールの含有量は、40体積%以下、例えば3%乃至40%、例えば5乃至40%、例えば15乃至30%の範囲内にある方法。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項記載の方法であって、0℃乃至30℃の範囲にある温度、例えば20℃にある溶液中に前記基板を放置する段階を更に含んだ方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法であって、前記放置する工程は、5乃至50分の範囲内の時間、例えば約10分間に亘って続く方法。
【請求項11】
請求項1乃至10記載の何れか1項記載の方法であって、前記溶液の温度を、40℃乃至75℃の範囲にある温度へと上昇させることを更に含んだ方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法であって、30乃至100分の範囲内の時間、例えば約45分間に亘って、前記基板が、前記上昇させられた温度にある前記溶液中に放置される方法。
【請求項13】
請求項1乃至12の何れか1項記載の方法であって、前記方法の進行中に、更なる銀塩、例えば硝酸銀又は鉄塩、例えば硝酸鉄を添加することを更に含んだ方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法であって、添加される前記銀塩又は鉄塩の量は、0.1乃至2重量%の範囲内、例えば約1重量%である方法。
【請求項15】
請求項13又は14記載の方法であって、前記更なる銀塩又は鉄塩は、前記溶液の前記銀又は鉄の濃度を、2mM乃至6mMだけ、例えば2.85mM乃至5.45mMだけ増加させる量で添加される方法。
【請求項16】
請求項13乃至15の何れか1項記載の方法であって、請求項11又は12に従属した場合、前記更なる銀塩又は前記鉄塩が、温度を上昇させる際に添加される方法。
【請求項17】
請求項16記載の方法であって、銀塩又は鉄塩の第1の量が、温度を上昇させる際に添加され、次に、少なくとも1つの更なる量が、例えば10分後及び20分後に添加される方法。
【請求項18】
請求項1乃至11の何れか1項記載の、シリコン基板をエッチングする方法であって、前記接触させる工程は、第1溶液を使用する第1段階を形成し、前記方法は、
フッ化物酸と鉄塩、例えばFe(NO33とを含有した第2溶液に、前記シリコン基板を接触させることを含んだ第2段階
を更に含んだ方法。
【請求項19】
請求項18記載の方法であって、15分までの範囲内の時間、例えば約10分間に亘り、前記基板が、前記第1溶液中に放置される方法。
【請求項20】
請求項18又は19記載の方法であって、前記第2段階が、前記第1段階よりも高い温度、例えば、30乃至80℃の範囲内にある温度、例えば45乃至75℃、例えば60°乃至75℃で行われる方法。
【請求項21】
請求項18乃至20の何れか1項記載の方法であって、前記第2段階は、40乃至50分の範囲内の時間、例えば約45分間に亘って行われる方法。
【請求項22】
請求項18乃至21の何れか1項記載の方法であって、前記第2溶液が、銀塩を、例えば60mMまでの量で含んでいる方法。
【請求項23】
請求項18乃至22の何れか1項記載の方法であって、銀塩又は鉄塩、例えばFe(NO33及び/又はAgNO3を、前記方法の進行中に前記溶液へと、特には、第2段階の最中に前記第2溶液へと添加することを更に含んだ方法。
【請求項24】
請求項23記載の方法であって、添加される更なる銀又は鉄の塩の量は、前記溶液の銀又は鉄の濃度を10mM以下、例えば2乃至6mM増加させる量である方法。
【請求項25】
請求項23又は24記載の方法であって、前記銀又は鉄塩が、前記第2溶液へと、2回以上に亘って添加される方法。
【請求項26】
請求項18乃至25の何れか1項記載の方法であって、40乃至50分の範囲内の時間、例えば45分間に亘り、前記基板が、前記第2溶液中に放置される方法。
【請求項27】
請求項1乃至26の何れか1項記載の方法であって、エッチングが、{100}面か又は{110}面か又は{111}面で行われる方法。
【請求項28】
請求項1乃至27の何れか1項記載の方法によってつくられたエッチングされたシリコン基板。
【請求項29】
請求項28記載のエッチングされたシリコン基板を含んだ陰極を具備したリチウム蓄電池。

【公表番号】特表2009−524264(P2009−524264A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551860(P2008−551860)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【国際出願番号】PCT/GB2007/000204
【国際公開番号】WO2007/083152
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(508222575)ネクソン・リミテッド (2)
【Fターム(参考)】