説明

シリコーン樹脂組成物、ならびに、これを用いて得られるシリコーン樹脂含有構造体および光半導体素子封止体

【課題】優れた耐硫化性を損なわず、かつ、被着体に対する密着性にも優れたシリコーン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】硬化性シリコーン樹脂組成物(A)100質量部に対して、亜鉛化合物(B)0.01〜5質量部と、ポリアルキレンオキシド鎖を有する化合物(C)0.01〜5質量部と、を含有するシリコーン樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン樹脂組成物、ならびに、これを用いて得られるシリコーン樹脂含有構造体および光半導体素子封止体に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン樹脂は、耐熱性に優れているが、エポキシ樹脂等と比較して気体透過性が高い。そのため、シリコーン樹脂で封止された銀メッキが、空気中の硫化水素によって腐食し、経時的に変色してしまうことがあった。
このような経時的な変色に対する対策としては、シリコーン樹脂の架橋密度を上げ樹脂を硬くする方法や、シリコーン樹脂とガスバリア性が高い樹脂を共重合させる方法等が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−188503号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、銀の経時的な変色に対する対策として従来採用されていた上述の方法では、十分な耐硫化性が得られないことを明らかにしたうえで、シリコーン樹脂に所定量の亜鉛化合物を配合することにより、優れた耐硫化性が得られることを見出した。
しかしながら、所定量の亜鉛化合物を配合したシリコーン樹脂は、硬化後において、被着体に対する密着性に劣る場合があることが分かった。
【0005】
そこで、本発明は、優れた耐硫化性を損なわず、かつ、被着体に対する密着性にも優れたシリコーン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、所定量の亜鉛化合物を配合した硬化性シリコーン樹脂に、さらに、ポリアルキレンオキシド鎖を有する化合物(C)を所定量配合することによって、耐硫化性を損なわずに、密着性も良好にすることができることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(7)を提供する。
【0007】
(1)硬化性シリコーン樹脂組成物(A)100質量部に対して、亜鉛化合物(B)0.01〜5質量部と、ポリアルキレンオキシド鎖を有する化合物(C)0.01〜5質量部と、を含有するシリコーン樹脂組成物。
【0008】
(2)上記硬化性シリコーン樹脂組成物(A)が、シラノール基またはケイ素原子に結合した加水分解性基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン(a)、ならびに、加水分解性シラン、その加水分解物、および、その加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であるシラン化合物(b)のいずれか一方または両方と、縮合触媒(c)と、を含有する上記(1)に記載のシリコーン樹脂組成物。
【0009】
(3)上記硬化性シリコーン樹脂組成物(A)が、ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン(d)と、ケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するポリオルガノハイドロジェンポリシロキサン(e)と、ヒドロシリル化触媒(f)と、を含有し、上記水素原子の量が、上記アルケニル基1モル当たり0.1〜5.0モルである、上記(1)または(2)に記載のシリコーン樹脂組成物。
【0010】
(4)上記硬化性シリコーン樹脂組成物(A)が、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオルガノポリシロキサン(g)と、熱重合開始剤および/または光重合開始剤(h)と、を含有する上記(1)〜(3)のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物。
【0011】
(5)上記硬化性シリコーン樹脂組成物(A)が、エポキシ基を有するオルガノポリシロキサン(i)を含有する、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物。
【0012】
(6)銀を含む部材と、上記部材を覆う、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物を硬化させて得られるシリコーン樹脂層と、を備えるシリコーン樹脂含有構造体。
【0013】
(7)凹部を有する枠体と、上記凹部の底部に配置された光半導体素子と、上記凹部の内側面に配置された銀を含む部材と、上記凹部に充填されて上記光半導体素子と上記部材とを封止する、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物を硬化させて得られる封止材と、を備える光半導体素子封止体。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れた耐硫化性を損なわず、かつ、被着体に対する密着性にも優れたシリコーン樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のシリコーン樹脂含有構造体としての積層体の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明のシリコーン樹脂含有構造体としての積層体の別の一例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の光半導体素子封止体の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の光半導体素子封止体の別の一例を模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の光半導体素子封止体のさらに別の一例を模式的に示す断面図である。
【図6】本発明の組成物および/または本発明の光半導体素子封止体を用いたLED表示器の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<シリコーン樹脂組成物>
本発明のシリコーン樹脂組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう。)は、硬化性シリコーン樹脂組成物(A)100質量部に対して、亜鉛化合物(B)0.01〜5質量部と、ポリアルキレンオキシド鎖を有する化合物(C)0.01〜5質量部と、を含有するシリコーン樹脂組成物である。
以下、本発明の組成物が含有する各成分について詳細に説明する。
【0017】
<硬化性シリコーン樹脂組成物(A)>
本発明の組成物に含有される硬化性シリコーン樹脂組成物(A)は、硬化性シリコーン樹脂(A1)を含む組成物であれば、特に限定されない。
【0018】
上記硬化性シリコーン樹脂(A1)は、例えば、シラノール基(ケイ素原子に結合したヒドロキシ基)、ケイ素原子に結合した加水分解性基、ケイ素原子に結合したアルケニル基、ハイドロジェンシリル基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、アミノ基、カルビノール基、メルカプト基、カルボキシ基、フェノール基などの反応性官能基;フェニル基などの芳香族基、アルキル基、アルケニル基などの炭化水素基;等を有することができる。
上記硬化性シリコーン樹脂(A1)は、反応性官能基を1分子中に2個以上有することができ、また、反応性官能基をその末端もしくは両末端および/または側鎖に有することができる。
【0019】
上記硬化性シリコーン樹脂(A1)の骨格としては、例えば、シラン、シリコーンオリゴマー、シリコーン樹脂、オルガノシロキサン、ジオルガノシロキサン、オルガノポリシロキサン、ジオルガノポリシロキサン等が挙げられ、これらの骨格は、直鎖または分岐のいずれであってもよい。
【0020】
上記硬化性シリコーン樹脂(A1)の骨格としてのオルガノシロキサン(以下、「オルガノシロキサン(A11)」ともいう。)としては、例えば、下記式(1)で表されるものが挙げられる。
1−SiR12−O−[SiR12−O]n−SiR12−X2 (1)
上記式(1)中、R1は炭素数1〜18のアルキル基またはアリール基を示し、複数のR1はそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、X1およびX2はそれぞれ独立に反応性官能基を示し、nは1以上の整数である。
上記式(1)中、R1が示す炭素数1〜18のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基等が挙げられる。R1が示すアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。これらのうち、R1が示す基としては、メチル基またはフェニル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
上記式(1)中、nは、上記オルガノシロキサン(A11)の重量平均分子量に対応する数値とすることができ、10〜15000の整数であるのが好ましい。
【0021】
また、上記オルガノシロキサン(A11)は、1種単独であっても2種以上が併用されていてもよい。上記オルガノシロキサン(A11)が2種以上併用される場合、2種以上の上記オルガノシロキサン(A11)は、それぞれ、同一の反応性官能基を有してもよいし、異なる反応性官能基を有してもよい。
このとき、ある1種類の反応性官能基を有する上記オルガノシロキサン(A11)に対して、その反応性官能基と反応し、硬化剤として働く反応性官能基を有する上記オルガノシロキサン(A11)を組み合わせることができる。なお、この場合、後者の上記オルガノシロキサン(A11)の量は、その反応性官能基が、前者の上記オルガノシロキサン(A11)が有する反応性官能基に対して、0.1〜10当量となる量とすることができる。
【0022】
上記硬化性シリコーン樹脂組成物(A)としては、具体的には、例えば、下記のシリコーン樹脂組成物[1]〜[4]が挙げられる。
【0023】
・硬化性シリコーン樹脂組成物[1]:シラノール基またはケイ素原子に結合した加水分解性基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン(a)、ならびに、加水分解性シラン、その加水分解物、および、その加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であるシラン化合物(b)のいずれか一方または両方と、縮合触媒(c)と、を含有する硬化性シリコーン樹脂組成物。
なお、上記硬化性シリコーン樹脂組成物[1]においては、上記オルガノポリシロキサン(a)、および/または、上記シラン化合物(b)を、シリコーンレジンとすることできる。
【0024】
・硬化性シリコーン樹脂組成物[2]:ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン(d)と、ケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するポリオルガノハイドロジェンポリシロキサン(e)と、ヒドロシリル化触媒(f)と、を含有する硬化性シリコーン樹脂組成物。
上記水素原子の量は、上記アルケニル基1モル当たり、0.1〜5.0モルであるのが好ましい。
【0025】
・硬化性シリコーン樹脂組成物[3]:1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオルガノポリシロキサン(g)と、熱重合開始剤および/または光重合開始剤(h)と、を含有する硬化性シリコーン樹脂組成物。
【0026】
・硬化性シリコーン樹脂組成物[4]:エポキシ基を有するオルガノポリシロキサン(i)を含有する硬化性シリコーン樹脂組成物。
上記硬化性シリコーン樹脂組成物[4]は、任意成分として、例えば、酸無水物、カルボン酸、アミン化合物、ルイス酸触媒、ルイス塩基触媒からなる群から選ばれる少なくとも1種(j)をさらに含有することができる。
【0027】
上記硬化性シリコーン樹脂組成物[1]〜[4]に含まれる各成分としては、特に限定されず、例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0028】
上記オルガノシロキサン(a)、(d)、(g)および(i)の製造方法としては、特に限定されず、例えば、従来公知のものが挙げられる。
これらオルガノシロキサンの分子量は、1,000〜1,000,000であるのが好ましく、6,000〜100,000であるのがより好ましい。
なお、本発明において、分子量は、クロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量であるものとする。
【0029】
上記硬化性シリコーン樹脂組成物[1]〜[4]の製造方法としては、特に限定されない。
上記硬化性シリコーン樹脂組成物[1]〜[4]は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記硬化性シリコーン樹脂組成物[1]〜[4]のうち、上記硬化性シリコーン樹脂組成物[1]であるのが好ましい。
【0030】
<硬化性シリコーン樹脂組成物[1]>
次に、上記硬化性シリコーン樹脂組成物[1]に含有される各成分について詳細に説明する。
【0031】
[オルガノポリシロキサン(a)]
上記オルガノポリシロキサン(a)は、シラノール基またはケイ素原子に結合した加水分解性基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンであり、シラノール基またはケイ素原子に結合した加水分解性基を少なくとも2個有するジオルガノポリシロキサンであるのが好ましく、シラノール基もしくはケイ素原子に結合した加水分解性基を少なくとも2個有するオルガノポリジメチルシロキサンであるのがより好ましい。
上記オルガノポリシロキサン(a)としては、例えば、下記式(2)で表されるものが挙げられる。
【0032】
【化1】

【0033】
上記式(2)中、mは、上記オルガノポリシロキサン(a)の重量平均分子量に対応する数値とすることができ、10〜15000の整数であるのが好ましい。
【0034】
また、オルガノポリシロキサン(a)としては、主鎖が網目状のシリコーンレジンが挙げられる。このようなシリコーンレジンとしては、例えば、RSiO1/2単位(式中、Rはそれぞれ独立に非置換または置換の炭素数1〜6の1価の炭化水素基を表わす)およびSiO4/2単位を繰り返し単位とするシリコーンレジンa1が挙げられる。
【0035】
シリコーンレジンa1において、RSiO1/2単位中のRとしては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソ−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基などのアルケニル基;フェニル基などのアリール基;クロロメチル基、3−クロロプロピル基、1−クロロ−2−メチルプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基などのハロゲン化アルキル基;等が挙げられ、中でも、メチル基、ビニル基、フェニル基であるのが好ましく、メチル基であるのがより好ましい。
【0036】
シリコーンレジンa1において、SiO4/2単位1モルに対するRSiO1/2単位の割合は、0.5〜1.2モルであり、好ましくは0.65〜1.15モルである。RSiO1/2単位の割合がこの範囲であれば、本発明の組成物の硬化物は、強度が適切となり、また、透明性にも優れる。
【0037】
また、シリコーンレジンa1は、SiO4/2単位1モルに対し、RSiO2/2単位およびRSiO3/2単位(各式中、Rはそれぞれ独立に非置換または置換の炭素数1〜6の1価の炭化水素基を表わす)のうち少なくとも1つを、各単位がそれぞれ1.0モル以下で各単位の合計が1.0モル以下となるように有していてもよく、より好ましくは、RSiO2/2単位およびRSiO3/2単位の各単位が0.2〜0.8モルで各単位の合計が1.0モル以下である。このようは配合割合であれば、本発明の組成物は、透明性に優れる。このような配合割合の具体例としては、SiO4/2単位1モルに対し、RSiO2/2単位0.2モルとRSiO3/2単位0.7モルとの組み合わせが挙げられる。
【0038】
さらに、シリコーンレジンa1は、シラノール基を6.0質量%未満有する。シラノール基の含有量は、0.1重量%以上が好ましく、0.2〜3.0重量%がより好ましい。シラノール基の含有量がこの範囲であれば、本発明の組成物の硬化物の硬さが適切となって接着性が良好となり、また、強度も適切となる。
【0039】
シリコーンレジンa1の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法により製造することができ、例えば、各単位に対応するアルコキシ基含有シラン化合物を有機溶媒中で共加水分解し縮合させて、実質的に揮発性分を含まないものとして得ることができる。
具体的には、例えば、RSiOMeとSi(OMe)とを、所望によりRSi(OMe)および/またはRSi(OMe)とともに、有機溶媒中で共加水分解し縮合させればよい(各式中、Rはそれぞれ独立に非置換または置換の炭素数1〜6の1価の炭化水素基を表わし、Meはメチル基を表わす)。
有機溶媒としては、共加水分解・縮合反応により生成するオルガノポリシロキサンを溶解することのできるものが好ましく、具体例としては、トルエン、キシレン、塩化メチレン、ナフサミネラルスピリット等を挙げることができる。
【0040】
このようなシリコーンレジンa1としては、市販品を使用することができ、例えば、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製のトリメトキシケイ酸である「SR1000」が挙げられる。
【0041】
[シラン化合物(b)]
上記シラン化合物(b)は、加水分解性シラン、その加水分解物、および、その加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
加水分解性シランとしては、1分子中に1個のケイ素原子を有し、かつ、アルコキシ基、フェノキシ基などの加水分解性基を有するものであれば特に限定されない。以下、このような加水分解性シランを、「シラン化合物b1」ということがある。
加水分解性シランの加水分解物としては、上記シラン化合物b1を加水分解させることによって得られるものであれば特に限定されない。加水分解は部分加水分解であってもよい。
加水分解性シランの加水分解縮合物としては、上記シラン化合物b1を加水分解して縮合させることによって得られるものであれば特に限定されない。加水分解縮合は部分加水分解縮合であってもよい。以下、このような加水分解縮合物を、「シラン化合物b2」ということがある。
【0042】
上記シラン化合物(b)は、1分子中に1個以上の有機基を有することができる。上記シラン化合物(b)が有することができる有機基としては、例えば、酸素原子、窒素原子および硫黄原子からなる群から選ばれる少なくとも1種のヘテロ原子を含んでもよい炭化水素基が挙げられ、具体例としては、例えば、アルキル基(炭素数1〜6のものが好ましい。)、(メタ)アクリレート基、アルケニル基、アリール基、これらの組合せ等が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチルアリル基等が挙げられる。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。これらのうち、耐熱着色安定性に優れるという理由から、メチル基、(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリロキシアルキル基が好ましい。
【0043】
〔シラン化合物b1〕
上記シラン化合物b1としては、例えば、下記式(3)で表されるものが挙げられる。
Si(OR2n34-n (3)
上記式(3)中、nは2、3または4であり、R2はアルキル基であり、R3は有機基であり、上記シラン化合物(b)が有することができる有機基として記載したものと同義である。
【0044】
上記シラン化合物b1としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどのトリアルコキシシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロピルオキシシランなどのテトラアルコキシシラン;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランなどの(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン;等が挙げられる。
なお、(メタ)アクリロキシトリアルコキシシランは、アクリロキシトリアルコキシシランまたはメタクリロキシトリアルコキシシランであることを意味する。(メタ)アクリレート基、(メタ)アクリロキシアルキル基についても同様である。
【0045】
〔シラン化合物b2〕
上記シラン化合物b2としては、例えば、下記式(4)で表される化合物が挙げられる。
4mSi(OR5n(4-m-n)/2 (4)
上記式(4)中、R4は有機基であり、R5はアルキル基であり、mは0<m<2、nは0<n<2、m+nは0<m+n≦3である。ここで、R4が示す有機基は、上記シラン化合物(b)が有することができる有機基として記載したものと同義であり、R5が示すアルキル基は、上記シラン化合物(b)が有することができる有機基としてのアルキル基として記載したものと同義である。
【0046】
上記シラン化合物b2としては、例えば、メチルメトキシオリゴマーなどのシリコーンアルコキシオリゴマーが挙げられる。
シリコーンアルコキシオリゴマーは、主鎖がポリオルガノシロキサンであり、分子末端がアルコキシシリル基で封鎖されたシリコーンレジンである。
メチルメトキシオリゴマーは、上記式(4)で表される化合物に該当し、その具体例としては、下記式(5)で表されるものが表されるものが挙げられる。
【0047】
【化2】

【0048】
上記式(5)中、R6はメチル基であり、aは1〜100の整数であり、bは0〜100の整数である。
メチルメトキシオリゴマーは、市販品を使用することができ、例えば、x−40−9246(重量平均分子量6000、信越化学工業社製)が挙げられる。
【0049】
また、上記シラン化合物b2としては、例えば、少なくとも片末端にアルコキシシリル基を有し、1分子中に3個以上のアルコキシ基(アルコキシシリル基由来のもの)を有する化合物(以下、「シラン化合物b3」ともいう)が好ましい形態として挙げられる。
上記シラン化合物b3は、例えば、両末端シラノール基を有するポリシロキサン1モルに対してアルコキシリル基を有するシラン化合物1モル以上を脱アルコール縮合した反応物として得ることができる。
上記シラン化合物b3を製造するために使用される、アルコキシ基を有するシラン化合物としては、例えば、上記式(3)で表される化合物、上記式(4)で表される化合物等が挙げられる。
上記シラン化合物b3を製造するために使用される、両末端シラノール基を有するポリシロキサンとしては、例えば、上記式(2)で表される化合物等が挙げられる。
上記シラン化合物b3としては、例えば、下記式(6)で表されるものが挙げられる。
【0050】
【化3】

【0051】
上記式(6)中、nは、上記シラン化合物b3の分子量に対応する数値とすることができる。
上記式(6)で表される化合物は、例えば、両末端にシラノール基を有するポリシロキサンを、テトラメトキシシラン(上記式(3)で表される化合物に相当する)で変性することによって製造することができる。
【0052】
上記シラン化合物(b)は、上記式(3)、上記式(4)で表されるものが好ましく、テトラエトキシシランなどのテトラアルコキシシラン;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどの(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシラン;メチルメトキシオリゴマー;がより好ましい。
【0053】
上記シラン化合物(b)の分子量は、100〜1,000,000であるのが好ましく、1000〜100,000であるのがより好ましい。
なお、上記シラン化合物(b)が上記シラン化合物b2である場合、その分子量は、クロロホルムを溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量であるものとする。
【0054】
上記シラン化合物(b)の製造方法としては、特に限定されず、例えば、従来公知のものが挙げられる。
上記シラン化合物(b)は、1主単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0055】
上記シラン化合物(b)を、上記オルガノポリシロキサン(a)と併用する場合においては、上記シラン化合物(b)の量は、上記オルガノポリシロキサン100質量部に対して、1〜2000質量部であるのが好ましく、10〜1000質量部であるのがより好ましい。
【0056】
[縮合触媒(c)]
上記縮合触媒(c)としては、加水分解性基含有シリル基やシラノール基を加水分解、縮合させることができるものであれば特に限定されず、例えば、スズ、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、カルシウム、バリウムなどの金属を含む金属化合物;ホウ素化合物;等が挙げられ、中でも、ジルコニウム化合物(c1)および/またはスズ化合物(c2)が好ましい。
【0057】
〔ジルコニウム化合物(c1)〕
上記ジルコニウム化合物(c1)としては、例えば、下記式(7)で表されるジルコニウム金属塩が挙げられる。
【0058】
【化4】

【0059】
上記式(7)中、nは1〜3の整数であり、R7は炭素数1〜16の炭化水素基であり、R8は炭素数1〜18の炭化水素基である。
上記式(7)においてnが2以上である場合、複数のR7は同じでも異なっていてもよい。また、nが1〜2である場合複数のR8は同じでも異なっていてもよい。
上記式(7)のR7が示す炭化水素基の炭素数は、3〜16であるのが好ましく、4〜16であるのがより好ましい。
上記式(7)のR7が示す炭化水素基は、直鎖状でも分岐状でもよく、不飽和結合を有することができ、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子などのヘテロ原子を有することもできる。
上記式(7)のR7が示す炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0060】
上記式(7)のR7が示す炭化水素基としての脂環式炭化水素基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などのシクロアルキル基;ナフテン環(ナフテン酸由来のシクロパラフィン環);アダマンチル基、ノルボルニル基などの縮合環系炭化水素基;等が挙げられ、中でも、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ナフテン環、アダマンチル基であるのが好ましい。
上記式(7)のR7が示す炭化水素基としての芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アズレン等が挙げられ、中でも、フェニル基であるのが好ましい。
上記式(7)のR7が示す炭化水素基としての脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルペンチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基等が挙げられる。
【0061】
上記式(7)のR8が示す炭化水素基の炭素数は、耐熱着色安定性、薄膜硬化性により優れ、相溶性に優れるという理由から、3〜8であるのが好ましい。
上記式(7)のR8が示す炭化水素基としては、例えば、上記式(7)のR7が示す炭化水素基として記載したものが挙げられ、中でも、脂肪族炭化水素基であるのが好ましい。
【0062】
上記式(7)において、R8O−で表されるアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(n−プロポキシ基、イソプロポキシ基)、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられ、中でも、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基(n−プロポキシ基、イソプロポキシ基)、ブトキシ基、ペンチルオキシ基であるのが好ましい。
【0063】
上記式(7)で表されるジルコニウム金属塩としては、ジルコニウムトリブトキシモノナフテート、ジルコニウムトリブトキシモノイソブチレート、ジルコニウムトリブトキシモノ2エチルヘキサノエートであるのが好ましい。
【0064】
上記ジルコニウム化合物(c1)は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記ジルコニウム化合物(c1)の製造方法としては、例えば、Zr(OR84(ジルコニウムテトラアルコキシド。R8は炭素数1〜18の炭化水素基であり、上記式(7)のR8と同義である。)1モルに対して、R7−COOHで表されるカルボン酸(R7は炭素数1〜16の炭化水素基であり、上記式(7)のR7と同義である。)1モル以上4モル未満を用いて、窒素雰囲気下、20〜80℃の条件下で攪拌することによって製造する方法が挙げられる。
【0065】
上記ジルコニウム化合物(c1)を製造するために用いるZr(OR84としては、例えば、ジルコニウムテトラメトキシド、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトラノルマルブトキシド等が挙げられる。
【0066】
上記ジルコニウム化合物(c1)を製造するために用いるカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、イソブタン酸、オクチル酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、ラウリン酸などの脂肪族カルボン酸;ナフテン酸、シクロプロパンカルボン酸、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキシルカルボン酸(シクロヘキサンカルボン酸)、アダマンタンカルボン酸、ノルボルナンカルボン酸などの脂環式カルボン酸;安息香酸などの芳香族カルボン酸;等が挙げられる。
【0067】
〔スズ化合物(c2)〕
上記スズ化合物(c2)としては、特に限定されず、例えば4価のスズ化合物が挙げられる。4価のスズ化合物としては、例えば、少なくとも1個のアルキル基と少なくとも1個のアシル基とを有する4価のスズ化合物が挙げられ、アシル基をエステル結合として有することができる。
【0068】
上記スズ化合物(c2)としての4価のスズ化合物としては、例えば、下記式(8)で表されるもの;下記式(8)で表されるもののビス型、ポリマー型;等が挙げられる。
9a−Sn−[O−CO−R104-a (8)
上記式(8)中、R9はアルキル基であり、R10は炭化水素基であり、aは1〜3の整数である。
9が示すアルキル基としては、炭素数1以上のものが挙げられ、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、オクチル基等が挙げられる。
10が示す炭化水素基としては、特に限定されず、例えば、上記式(7)のR7が示す炭化水素基として記載したものが挙げられる。
【0069】
上記スズ化合物(c2)としては、例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズマレエートなどのジアルキルスズ化合物(上記式(8)で表され、aが2であるもの);ジブチルスズオキシアセテートジブチスズオキシオクチレート、ジブチルスズオキシラウレートジブチルスズビスメチルマレート、ジブチルスズオキシオレエートなどのジアルキルスズの2量体;ジブチルスズマレートポリマー、ジオクチルスズマレートポリマーなどのポリマー;モノブチルスズトリス(2−エチルヘキサノエート)(上記式(8)で表され、aが1であるもの);等が挙げられる。
これらのうち、透明性、耐硫化性により優れ、耐熱着色安定性、薄膜硬化性に優れるという理由から、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオレエート、ジブチルスズジラウリレート、ジブチルスズオキシアセテートジブチルスズオキシオクチレート、ジブチルスズオキシラウレート、モノブチルスズトリス(2−エチルヘキサノエート)が好ましい。
【0070】
上記縮合触媒(c)の製造方法は、特に限定されない。
上記縮合触媒(c)の量は、上記オルガノポリシロキサン(a)および/または上記シラン化合物(b)100質量部に対して、0.01〜1質量部であるのが好ましく、0.05〜0.5質量部であるのがより好ましい。
【0071】
上記縮合触媒(c)は、1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
上記ジルコニウム化合物(c1)と上記スズ化合物(c2)とを併用する場合、上記スズ化合物(c2)の量は、上記ジルコニウム化合物(c1)1モルに対して、0.1モル以上4モル未満であるのが好ましく、0.5〜1.5モルであるのがより好ましい。
【0072】
<亜鉛化合物(B)>
本発明の組成物には、上記硬化性シリコーン樹脂組成物(A)100質量部に対して、亜鉛化合物(B)が0.01〜5質量部含有される。これにより、本発明の組成物は、耐硫化性に優れる。これは、上記亜鉛化合物(B)が有する亜鉛に硫化水素が配位し、硫化水素がトラップされるためと考えられる。
【0073】
上記亜鉛化合物(B)としては、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、水酸化亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛および硝酸亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種1モルに対して、酸を1.5モル以上2モル未満反応させることによって得られるものを用いることができる。
この際に用いる酸としては、特に限定されず、例えば、無機酸、有機酸(例えば、有機カルボン酸)、これらのエステル等が挙げられる。
無機酸としては、例えば、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。
有機酸において、有機カルボン酸がカルボキシ基以外に有する炭化水素基としては、特に限定されず、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせ等が挙げられる。このような有機酸としては例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリル酸、2−エチルヘキサン酸などの炭素数1〜30の飽和カルボン酸;(メタ)アクリル酸などの不飽和カルボン酸;等が挙げられる。
酸のエステルにおいて、エステルを形成する炭化水素基としては、特に限定されず、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせ等が挙げられる。
これらのうち、リン酸、2−エチルヘキサン酸、ナフテン酸、これらのエステルが好ましい。
【0074】
上記亜鉛化合物(B)としては、例えば、Zna(O)x(OH)y(−O−CO−R11zという式で表されるものが挙げられる。式中、R11は炭化水素基であり、この炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組み合わせ等が挙げられる。R11が複数である場合、複数のR11はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また式中、aは1以上の数であり、x、yは0以上の数であり、zは1以上の数であり、z/aは2未満であり、[(2x+y+z)/a]=2である。
aは、1〜2の数であるのが好ましく、xは、0〜1の数であるのが好ましく、yは、0〜1の数であるのが好ましく、zは、1〜2の数であるのが好ましい。
上記亜鉛化合物(B)の具体例としては、Zn(OH)(−O−CO−R11)、R11−CO−O−Zn−O−Zn−O−CO−R11等が挙げられる。
また、上記亜鉛化合物(B)は、xが1以上の場合、例えば、−Zn−O−Zn−等の結合をその構造中に有することができる。このような結合は、上記亜鉛化合物(B)を製造する過程で、生成物質が例えば脱水縮合することによって形成されうる。
【0075】
上記亜鉛化合物(B)の製造方法は、特に限定されず、例えば、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、水酸化亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛および硝酸亜鉛からなる群から選ばれる少なくとも1種と、酸とを、室温の条件下または加熱して撹拌することにより製造する方法が挙げられる。
【0076】
上記亜鉛化合物(B)の量は、本発明の組成物が、耐硫化性、透明性よりに優れるという理由から、上記硬化性シリコーン樹脂組成物(A)100質量部に対して、0.01〜10質量部であるのが好ましく、0.01〜1質量部であるのがより好ましい。
【0077】
<ポリアルキレンオキシド鎖を有する化合物(C)>
本発明の組成物には、上記硬化性シリコーン樹脂組成物(A)100質量部に対して、ポリアルキレンオキシド鎖を有する化合物(C)(以下、「アルキレンオキシド化合物(C)」ということがある。)が0.01〜5質量部含有される。これにより、本発明の組成物は、上記亜鉛化合物(B)を含有することで得られた耐硫化性を損なわずに、被着体に対する密着性にも優れる。
これは、亜鉛化合物(B)による耐硫化性を損なわない程度に、アルキレンオキシド化合物(C)のポリアルキレンオキシド鎖が亜鉛化合物(B)の亜鉛に一部配位することによって、亜鉛化合物(B)による密接阻害を緩和するためと考えられる。
【0078】
上記アルキレンオキシド化合物(C)としては、1分子中にポリアルキレンオキシド鎖を有するものであれば、特に限定されない。
上記アルキレンオキシド化合物(C)が有するポリアルキレンオキシド鎖としては、例えば、下記式(9)で示される繰り返し単位が重合した重合体が挙げられる。
−(R12−O)− (9)
上記式(9)中、R12は炭素数1〜18のアルキレン基を示し、このアルキレン基としては、直鎖状であっても分岐状であってもよく、例えば、メチレン基、エチレン基、n−プロピレン基、n−ブチレン基、n−ペンチレン基、n−ヘキシレン基、iso−プロピレン基、iso−ブチレン基、2−メチルプロピレン基、iso−ペンチレン基、2−メチルブチレン基、1,2ジメチルプロピレン基、1,3−ジメチルプロピレン基、1,1−ジメチルプロピレン基、2,2−ジメチルプロピレン基、iso−ヘキシレン基、2−メチルペンチレン基、3−メチルペンチレン基等が挙げられ、メチレン基、エチレン基であるのが好ましい。
【0079】
上記アルキレンオキシド化合物(C)が有するポリアルキレンオキシド鎖は、上記式(9)で示される繰り返し単位が1種単独でが重合した重合体であっても、2種以上が重合した共重合体(ブロック共重合体、または、ランダム共重合体)であってもよい。
また、上記アルキレンオキシド化合物(C)が有するポリアルキレンオキシド鎖において、上記式(9)で示される繰り返し単位の重合度(繰り返し単位の数)としては、1〜1000個であるのが好ましく、1〜100個であるのがより好ましい。
【0080】
このような上記アルキレンオキシド化合物(C)としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール、これらの共重合体等が挙げられる。
これらのうち、本発明の組成物の密着性がより優れるという理由から、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)であるのが好ましい。
【0081】
また、上記アルキレンオキシド化合物(C)としては、ポリアルキレンオキシド鎖が別の主鎖に導入されたものであってもよく、例えば、ポリアルキレンオキシド鎖がシリコーンに導入された変性シリコーン(変性シリコーンオイル)を好適に用いることができる。
このような変性シリコーンとしては、例えば、ジメチルポリシロキサンの両末端、片末端、側鎖等にあるメチル基の一部を、−R(C24O)a(C36O)bR′で置換したもの(ただし、Rは炭素数1以上のアルキレン基を示し、R′は水素原子または炭素数1以上のアルキル基を示し、aおよびbは0以上の整数を示し、a+b>1である。)が挙げられ、市販品としては、X−22−4741、KF−1002、X−22−4952、X−22−4272、X−22−6266(いずれも、信越化学工業社製)が挙げられる。
【0082】
上記アルキレンオキシド化合物(C)の重量平均分子量としては、200〜5000であるのが好ましく、200〜2000であるのがより好ましい。
【0083】
本発明の組成物は、上記アルキレンオキシド化合物(C)を1種単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
また、上記アルキレンオキシド化合物(C)の量は、本発明の組成物の密着性がより優れるという理由から、上記硬化性シリコーン樹脂組成物(A)100質量部に対して、0.1〜10質量部であるのが好ましく、0.3〜3質量部であるのがより好ましい。
【0084】
<亜鉛化合物(B)と併用可能な成分>
また、本発明の組成物は、触媒活性の観点から、亜鉛化合物(B)と併用させて、さらに、スズ化合物、ランタノイド化合物、ジルコニウム化合物、ハフニウム化合物等を含有することができる。
【0085】
本発明の組成物に含有されるスズ化合物としては、スズを含有する化合物であれば特に限定されず、例えば、2価のスズ化合物、4価のスズ化合物が挙げられる。
2価のスズ化合物としては、ビス(2−エチルヘキサン酸)スズ、ジ(n−オクチル酸)スズ、ジナフテン酸スズ、ジステアリン酸スズ等が挙げられる。
4価のスズ化合物としては、ジオクチルスズビス(アセチルアセトナート)、ジオクチルスズ塩と正ケイ酸エチルとの反応物等が挙げられる。
【0086】
本発明の組成物に含有されるランタノイド化合物としては、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ジスプロシウム(Dy)、イッテルビウム(Yb)などのランタノイド原子(Ln)を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ランタン、セリウム、ジスプロシウムまたはイッテルビウムの2−エチルヘキサン酸塩等が挙げられる。
【0087】
本発明の組成物に含有されるジルコニウム化合物としは、ジルコニウム原子と有機基とを有する化合物であれば、特に限定されず、例えば、ジオクチル酸ジルコニル、ナフテン酸ジルコニル;ジルコニウムトリブトキシモノナフテート、ジルコニウムトリブトキシモノイソブチレート、ジルコニウムトリブトキシモノ2エチルヘキサノエート、ジルコニウムトリブトキシモノシクロプロパンカルボキシレート、ジルコニウムトリブトキシモノシクロペンタンカルボキシレート、ジルコニウムトリブトキシモノシクロヘキサンカルボキシレート、ジルコニウムトリブトキシモノアダマンタンカルボキシレート、ジルコニウムトリブトキシモノナフテート;ジルコニウムトリブトキシモノナフテート、ジルコニウムトリブトキシモノイソブチレート、ジルコニウムトリブトキシモノ2エチルヘキサノエート;等が挙げられる。
【0088】
本発明の組成物に含有されるハフニウム化合物としては、ハフニウム原子と有機基とを有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ハフニウムトリブトキシモノナフテート、ハフニウムトリブトキシモノイソブチレート、ハフニウムトリブトキシモノ2エチルヘキサノエート、ハフニウムトリブトキシモノシクロプロパンカルボキシレート、ハフニウムトリブトキシモノシクロペンタンカルボキシレート、ハフニウムトリブトキシモノシクロヘキサンカルボキシレート、ハフニウムトリアルコキシモノベンゼンカルボキシレート、ハフニウムトリブトキシモノアダマンタンカルボキシレート、ハフニウムジブトキシジナフテート、ハフニウムトリプロポキシモノナフテート;ハフニウムジ−n−ブトキサイド(ビス−2,4−ペンタジオネート)、ハフニウム−2,4−ペンタジオネート、ハフニウムテトラメチルペンタジオネート、ハフニウムトリフルオロペンタジオネート;等が挙げられる。
【0089】
<その他の成分>
本発明の組成物は、上記の成分以外に、本発明の目的や効果を損なわない範囲で必要に応じてさらに添加剤を含有することができる。
添加剤としては、例えば、硬化剤、亜鉛化合物以外の金属化合物、触媒(例えば、縮合触媒、ヒドロシリル化触媒、ルイス酸触媒、ルイス塩基触媒、カチオン重合触媒等)、重合開始剤(例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤等)、無機フィラー、酸化防止剤、滑剤、紫外線吸収剤、熱光安定剤、分散剤、帯電防止剤、重合禁止剤、消泡剤、硬化促進剤、溶剤、蛍光物質(無機物、有機物を含む)、老化防止剤、ラジカル禁止剤、接着性改良剤、難燃剤、界面活性剤、保存安定性改良剤、オゾン老化防止剤、増粘剤、可塑剤、放射線遮断剤、核剤、カップリング剤、導電性付与剤、リン系過酸化物分解剤、顔料、金属不活性化剤、物性調整剤等が挙げられる。
【0090】
硬化剤としては、特に限定されず、例えば、アミン化合物(ポリアミン化合物)、ポリアミド化合物、ジシアンジアミド、酸無水物、カルボン酸化合物、フェノール樹脂等が挙げられ、具体例としては、エチレンジアミン、トリエチレンペンタミン、ヘキサメチレンジアミン、ダイマー酸変性エチレンジアミン、N−エチルアミノピペラジン、イソホロンジアミンなどの脂肪族アミン類;メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルスルホン、4,4’−ジアミノジフェノルメタン、4,4’−ジアミノジフェノルエーテルなどの芳香族アミン類;メルカプトプロピオン酸エステル、エポキシ樹脂の末端メルカプト化合物などのメルカプタン類;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールAD、テトラメチルビスフェノールS、テトラブロモビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、テトラフルオロビスフェノールA、ビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4−(1−(4−(1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル)フェニル)エチリデン)ビスフェノール、フェノールノボラック、クレゾールノボラック、ビスフェノールAノボラック、臭素化フェノールノボラック、臭素化ビスフェノールAノボラックなどのフェノール樹脂類;上記のフェノール樹脂類の芳香環を水素化したポリオール類;ポリアゼライン酸無水物、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物、メチル−ノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物などの脂環式酸無水物類;無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などの芳香族酸無水物類;2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどのイミダゾール類およびその塩類;上記の脂肪族アミン類、芳香族アミン類、および/または、イミダゾール類とエポキシ樹脂との反応により得られるアミンアダクト類;アジピン酸ジヒドラジドなどのヒドラジン類;ジメチルベンジルアミン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカ−7−エンなどの第3級アミン類;トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類;ジシアンジアミド;等が挙げられる。
【0091】
蛍光物質(無機物)としては、例えば、YAG系蛍光体、ZnS系蛍光体、Y22S系蛍光体、赤色発光蛍光体、青色発光蛍光体、緑色発光蛍光体等が挙げられる。
【0092】
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、上記硬化性シリコーン樹脂組成物(A)、上記亜鉛化合物(B)、および、必要に応じて使用することができる添加剤を混合することによって製造する方法が挙げられる。本発明の組成物は、1液型または2液型として製造することが可能である。
【0093】
本発明の組成物は、例えば、接着剤、プライマー、封止材(例えば、光半導体素子用)等として使用できる。本発明の組成物を封止材として使用できる光半導体素子としては、例えば、発光ダイオード(LED)、有機電界発光素子(有機EL)、レーザーダイオード、LEDアレイ等が挙げられる。LEDとしては、例えば、ハイパワーLED、高輝度LED、汎用輝度LED等が挙げられる。
また、本発明の組成物は、例えば、ディスプレイ材料、光記録媒体材料、光学機器材料、光部品材料、光ファイバー材料、光・電子機能有機材料、半導体集積回路周辺材料等の用途に用いることができる。
【0094】
本発明の組成物の被着体としては、例えば、金属(例えば、第11族の金属)、ガラス、ゴム、半導体(例えば、光半導体素子)、ポリフタルアミドなどの樹脂等が挙げられる。なお、第11族の金属としては、銅、銀および金からなる群から選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
本発明の組成物は、透明性、耐硫化性により優れるという理由から、銀を含む部材の存在下で使用されるのが好ましい。本発明の組成物から得られるシリコーン樹脂層は、被着体と接着することができる。
【0095】
<使用方法>
本発明の組成物の使用方法としては、例えば、銀を含む部材の存在下で本発明の組成物を硬化させる硬化工程を備える使用方法が挙げられる。以下、当該使用方法を、本発明の組成物の使用方法(以下、「本発明の使用方法」ともいう。)として説明する。
【0096】
本発明の使用方法に用いられる銀を含む部材としては、例えば、銀、銀メッキ等が挙げられ、具体例としては、リフレクタ等が挙げられる。
【0097】
上記硬化工程は、加熱および/または光照射によって、本発明の組成物を硬化させる工程であってもよい。本発明の組成物を加熱する温度としては、80℃〜150℃付近が好ましく、150℃付近がより好ましい。また、本発明の組成物を光照射する際に用いる光としては、例えば、紫外線、電子線等が挙げられる。
【0098】
<シリコーン樹脂含有構造体>
本発明のシリコーン樹脂含有構造体は、銀を含む部材と、上記部材を覆う、本発明の組成物を硬化させて得られるシリコーン樹脂層と、を備える。上記シリコーン樹脂層は、上記部材を、直接覆ってもよく、別の層(例えば、樹脂層、ガラス層、空気層)を介して覆ってもよい。
【0099】
本発明のシリコーン樹脂含有構造体は、光半導体素子を有するのが好ましい。光半導体素子としては、特に限定されず、例えば、本発明の組成物を封止材として使用できる光半導体素子として例示したものが挙げられる。
本発明のシリコーン樹脂含有構造体が光半導体素子を有する態様としては、例えば、上記シリコーン樹脂層が、光半導体素子を介して、上記部材を覆う態様(すなわち、光半導体素子が、上記シリコーン樹脂層と上記部材との間にある態様);上記シリコーン樹脂層が、並列に配置された光半導体素子と上記部材とを直接覆う態様;等が挙げられる。また、後者の態様においては、間隔を空けて並列に配置された2個の上記部材の間に、光半導体素子が配置されていてもよい。
【0100】
次に、本発明のシリコーン樹脂含有構造体としての積層体(積層体100、積層体200)を、図1および図2に基いて説明する。
図1は、本発明のシリコーン樹脂含有構造体としての積層体の一例を模式的に示す断面図である。図1に示すように、積層体100は、銀を含む部材120を備える。部材120の上には、シリコーン樹脂層102が直接的に配置されている。
図2は、本発明のシリコーン樹脂含有構造体としての積層体の別の一例を模式的に示す断面図である。図2に示すように、積層体200は、銀を含む部材220を備える。部材220の上には、光半導体素子203が直接的に配置され、光半導体素子203の上には、シリコーン樹脂層202が直接的に配置されている。なお、シリコーン樹脂層202と光半導体素子203との間に、図示しない透明な層(例えば、樹脂層、ガラス層、空気層等)が配置されていてもよい。
【0101】
<光半導体素子封止体>
本発明の光半導体素子封止体は、凹部を有する枠体と、上記凹部の底部に配置された光半導体素子と、上記凹部の内側面に配置された銀を含む部材と、上記凹部に充填されて上記光半導体素子と上記部材とを封止する、本発明の組成物を硬化させて得られる封止材と、を備える。
銀を含む部材としては、特に限定されず、例えば、本発明の使用方法に用いられる銀を含む部材として例示したものが挙げられる。また、光半導体素子としては、特に限定されず、例えば、本発明の組成物を封止材として使用できる光半導体素子として例示したものが挙げられる。本発明の光半導体素子封止体は、1個当たり、1または2以上の上記光半導体素子を有することができる。
【0102】
次に、本発明の光半導体素子封止体について図3〜図5に基いて説明する。
図3は、本発明の光半導体素子封止体の一例を模式的に示す断面図である。図3に示すように、光半導体素子封止体300は、凹部302を有する枠体304を備える。凹部302の底面は開口している。そのため、枠体304には、この開口を囲うようにして端部(端部312、端部314)が形成されている。枠体304の下方位置には、外部電極309を有する基板310が配置されている。基板310は、凹部302の底部を形成している。凹部302の底部には、光半導体素子303が配置されている。光半導体素子303は、上面が発光層(図示せず)となる向きで、凹部302に配置される。光半導体素子303の下面は、マウント部材301によって固定される。マウント部材301は、例えば、銀ペースト、樹脂等である。光半導体素子303の各電極(図示せず)と外部電極309とは、導電性ワイヤー307によってワイヤーボンディングされている。
【0103】
凹部302の内側面には、銀を含む部材としてのリフレクタ320が配置されている。凹部302には、封止材308が充填されており、封止材308は、光半導体素子303およびリフレクタ320を封止している。ここで、封止材308は、本発明の組成物を硬化させて得られたものである。
封止材308は、凹部302において、斜線部306まで充填されていてもよい。また、凹部302において308で示す部分を他の透明な層とし、封止材308を斜線部306にのみ配置するようにしてもよい。このような封止材308は、蛍光物質等を含有することができる。
【0104】
なお、光半導体素子封止体300としては、枠体304の端部(端部312、端部314)が一体的に結合し、凹部302の底部を形成する態様であってよい。この態様の場合、リフレクタ320は、凹部302の内側面のみならず、凹部302の底部にも配置される。そして、光半導体素子303は、凹部302の底部に配置されたリフレクタ320の上に配置される。
【0105】
このような光半導体素子封止体300においては、本発明の組成物を硬化させて得られた封止材308が用いられているため、銀を含む部材であるリフレクタ320の腐食(例えば、変色)を抑制することができる。
また、凹部302に充填された封止材308は、低硬度で硬化収縮が小さいため、硬化収縮によって凹部302から剥がれたり、導電性ワイヤー307が断線したりするのを抑制することができる。
【0106】
図4は、本発明の光半導体素子封止体の別の一例を模式的に示す断面図である。図4に示す光半導体素子封止体400は、図3に示した光半導体素子封止体300の上にレンズ401を配置したものである。レンズ401としては、本発明の組成物を用いて形成されたものを用いることができる。
【0107】
図5は、本発明の光半導体素子封止体のさらに別の一例を模式的に示す断面図である。図5に示す光半導体素子封止体500においては、ランプ機能を有する樹脂506の内部に、基板510およびインナーリード505が配置されている。基板510は凹部を有する枠体を有し、この凹部の底部には光半導体素子503が配置され、この凹部の内側面にはリフレクタ520が配置され、この凹部には本発明の組成物を硬化させて得られた封止材502が配置されている。
リフレクタ520は、この凹部の底部に配置されていてもよい。光半導体素子503は、基板510上にマウント部材501で固定されている。光半導体素子503の各電極(図示せず)は、導電性ワイヤー507によってワイヤーボンディングされている。樹脂506は、本発明の組成物を用いて形成されてもよい。
【0108】
次に、本発明の組成物および/または本発明の光半導体素子封止体をLED表示器に利用する場合について、図6に基いて説明する。
図6は、本発明の組成物および/または本発明の光半導体素子封止体を用いたLED表示器の一例を示す模式図である。
図6に示すLED表示器600は、その一部に遮光部材605が配置された筐体604を有する。筐体604の内部には、複数の光半導体素子封止体601がマトリックス状に配置されている。光半導体素子封止体601は、封止材606によって封止されている。
ここで、封止材606としては、本発明の組成物を硬化させて得られる封止材を用いることができる。また、光半導体素子封止体601としては、本発明の光半導体素子封止体を用いることができる。
【0109】
本発明のシリコーン樹脂含有構造体、および、本発明の光半導体素子封止体の用途としては、例えば、自動車用ランプ(例えば、ヘッドランプ、テールランプ、方向ランプ等)、家庭用照明器具、工業用照明器具、舞台用照明器具、ディスプレイ、信号、プロジェクター等が挙げられる。
【実施例】
【0110】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0111】
<シリコーン樹脂組成物の製造>
下記第1表に示す成分を同表に示す量(単位:質量部)で用い、これらを真空かくはん機で均一に混合してシリコーン樹脂組成物を製造した。
【0112】
<評価>
以下に示す方法で、評価を行なった。結果を下記第1表に示す。
<透過率>
製造されたシリコーン樹脂組成物を、後述する硬化条件で硬化させて、透過率測定用硬化サンプル(厚さ:2mm)を得た。得られたサンプルについて、JIS K0115:2004に準拠して、紫外・可視吸収スペクトル測定装置(島津製作所社製)を用いて波長400nmにおける透過率を測定した。
透過率が、80%以上であれば、透明性に優れるものとして評価できる。なお、得られた硬化サンプルが白濁していた場合には、下記第1表に「白濁」と記載した。
【0113】
<密着性>
製造されたシリコーン樹脂組成物を、縦25mm×横10mm×厚さ1mmのスペーサーを用いて、被着体(ポリフタルアミド板)上に流し込み、後述する硬化条件で硬化させて、硬化物と被着体との積層体を得た。
次に、得られた積層体について、スパチュラを用いて、硬化物を被着体から手剥離させ、その際の破壊形態によって、密着性を評価した。すなわち、破壊形態が凝集破壊であった場合には、密着性に優れるものとして「○」と評価し、破壊形態が界面破壊であった場合には、密着性に劣るものとして「×」と評価した。なお、密着性の評価を行わなかった場合には、下記第1表に「−」と記載した。
【0114】
<耐硫化性>
[硬化サンプル作成]
製造されたシリコーン樹脂組成物を、銀メッキ上に厚さ1mm程度になるよう塗布し、後述する硬化条件で硬化させて、耐硫化性評価用の硬化サンプルを得た。
【0115】
[耐硫化性試験]
10Lのデシケーターの底に、粉状に粉砕した硫化鉄10g程度(下記塩酸0.5mmolに対して大過剰)を置いた。次に、デシケーター内における硫化鉄の上方に、硫化鉄に接触しないように目皿(貫通孔を有する)を取り付け、取り付けた目皿上に硬化サンプルを置いた。次に、硫化鉄に塩酸0.5mmolを滴下することにより、硫化水素0.25mmolを発生させ(反応式:FeS+2HCl→FeCl2+H2S)、デシケーター内の硫化水素の濃度を0.05質量%(理論値:約560ppm)とした。
【0116】
[耐硫化性の評価基準]
上記の耐硫化性試験の開始(硫化水素の発生)から24時間後および72時間後に、目視により硬化サンプルにおける銀の変色を確認した。変色が確認されなかった場合には耐硫化性に優れるものとして「○」と評価し、若干の変色が確認された場合は耐硫化性にやや優れるものとして「△」と評価し、変色が確認された場合には耐硫化性に劣るものとして「×」と評価した。なお、耐硫化性の評価を行わなかった場合には、下記第1表に「−」と記載した。
【0117】
<耐熱着色安定性>
製造されたシリコーン樹脂組成物を、後述する硬化条件で硬化させて、初期硬化物を得た。さらに、得られた初期硬化物を、150℃で10日間加熱して、耐熱硬化物を得た。耐熱硬化物の透過率が、初期硬化物の透過率に対して80%以上であった場合には耐熱着色安定性に優れるものとして「○」と評価し、70%以上80%未満であった場合には耐熱着色安定性にやや優れるものとして「△」と評価し、70%未満であった場合には耐熱着色安定性に劣るものとして「×」と評価した。なお、耐熱着色安定性の評価を行わなかった場合には、下記第1表に「−」と記載した。
【0118】
<硬化条件>
・シリコーン樹脂組成物が、後述する縮合触媒1または縮合触媒2を含有する場合:150℃で24時間加熱
・シリコーン樹脂組成物が、後述するヒドロシリル化触媒を含有する場合:150℃で6時間加熱
・シリコーン樹脂組成物が、後述する熱重合開始剤を含有する場合:150℃3時間加熱
・シリコーン樹脂組成物が、光重合開始剤を含有する場合:高圧水銀灯照射条件下で積算光量8000mJ/cm2照射
・シリコーン樹脂組成物が、酸無水物およびアミン化合物を含有する場合:150℃で3時間加熱
・シリコーン樹脂組成物が、ルイス酸触媒を含有する場合:150℃で3時間加熱
【0119】
【表1】

【0120】
【表2】

【0121】
【表3】

【0122】
【表4】

【0123】
上記第1表中の各成分は、以下のものを使用した。
・(a)ポリシロキサン1:ポリジメチルシロキサン−α,ω−ジオール(ss10、信越化学工業、重量平均分子量:49000、反応性官能基:シラノール基、平均官能基数:2個)
【0124】
・(a)ポリシロキサン2:下記のとおり製造した両末端トリメトキシシリルシロキサン(重量平均分子量:55000、反応性官能基:メトキシシリル基、平均官能基数:6個)
500mLの3つ口フラスコに、攪拌機とリフラックスコンデンサーとを備え付け、両末端にシラノール基を有するポリシロキサン(ss10、信越化学工業社製)100質量部、テトラメトキシシラン10質量部、および、酢酸0.1質量部を添加し、窒素雰囲気下で100℃で6時間反応させ、1H−NMR分析によってss10が有するシラノール基の消失を確認し、得られた反応物をポリシロキサン2とした。ポリシロキサン2の主たる構造は、下記式で示される。
【0125】
【化5】

【0126】
・(a)ポリシロキサン3:下記のとおり製造した末端ポリメトキシシリルシロキサン(重量平均分子量:60000、反応性官能基:メトキシシリル基、平均官能基数:14個)
500mLの3つ口フラスコに、攪拌機とリフラックスコンデンサーとを備え付け、両末端にシラノール基を有するポリシロキサン(ss10)100質量部、メチルトリメトキシシランの部分加水分解物(KC−89、信越化学工業社製)10質量部、および、酢酸0.1質量部を添加し、窒素雰囲気下で140℃で15時間反応させ、1H−NMR分析によってss10が有するシラノール基の消失を確認し、得られた反応物をポリシロキサン3とした。ポリシロキサン3の主たる構造は、下記式で示される。
【0127】
【化6】

【0128】
・(a)ポリシロキサン4:両末端シラノールジメチルシリコーンオイル(PRX−413、東レ・ダウコーニング社製、重量平均分子量:4000、反応性官能基:シラノール基、平均官能基数:2個)
・(b)ポリシロキサン5:シリコーンアルコキシオリゴマー(x−40−9246、信越化学工業社製、重量平均分子量:6000、反応性官能基:アルコキシシリル基、平均官能基数:0<n<2)
【0129】
・(c)縮合触媒1:トリブトキシナフテン酸Zr(0.03質量部)と、ジブチルスズアセテート(0.02質量部、日東化成社製)との混合物
トリブトキシナフテン酸Zrの製造は以下のとおりである。
87.5質量%濃度のジルコニウムテトラブトキシド(関東化学社製)11.4g(0.026mol)と、ナフテン酸(東京化成社製、カルボキシ基に結合する炭化水素基の炭素原子数の平均:15、中和価220mg、以下同様。)6.6g(0.026mol)とを、三ツ口フラスコに投入し、窒素雰囲気下、室温で2時間程度攪拌し、目的合成物を得た。
なお、ナフテン酸の中和価は、ナフテン酸1gを中和するために必要なKOHの量である。
合成物の定性は、フーリエ変換赤外分光光度計(FT−IR)を用いて行った。その結果、カルボン酸由来のCOOHに帰属される1700cm-1付近の吸収が反応後は消失し、1450〜1560cm-1付近のCOOZrに由来するピークを確認した。
トリブトキシナフテン酸Zrが有するナフテート基(RCOO−)中のRの平均炭素原子数は15である。
・(c)縮合触媒2:モノブチルトリス2−エチルヘキサノエートスズ(日東化成社製)
【0130】
・(d)ポリシロキサン6:ビニル基を有するジメチルポリシロキサン(DMS−V35、Gelest社製、重量平均分子量:49500、反応性官能基:ビニル基、平均官能基数:2個)
・(e)ポリシロキサン7:ハイドロジェンシリル基を有するジメチルポシリロキサン共重合体メチルハイドロジェンポリシロキサン(KF−9901、信越化学工業社製、反応性官能基:ハイドロジェンシリル基)
・(f)ヒドロシリル化触媒:プラチナム−シクロビニルメチルシロキサン錯体(SIP6832.2、Gelest社製)
【0131】
・(g)ポリシロキサン8:下記のとおり製造した、両末端にメタクリルオキシプロピルジメトキシシリル基を有するポリジメチルシロキサン(重量平均分子量:35000、反応性官能基:メタクリルオキシ基、平均官能基数:2個)
両端にシラノール基を有するポリジメチルシロキサン(ss70、信越化学工業社製、重量平均分子量:28,000)100質量部と、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM503、信越化学工業社製)4質量部と、触媒としての2−エチルへキサン酸スズ(関東化学社製)0.01質量部とを、反応容器に入れ、圧力を10mmHg、温度を80℃に保ちながら、6時間反応させ、反応物を得た。
得られた反応物について、1H−NMR分析を行い、ポリジメチルシロキサンの両末端がメタクリルオキシプロピルジメトキシシリル基であることを確認した。
このようにして得られた、両末端にメタクリルオキシプロピルジメトキシシリル基を有するポリジメチルシロキサンを、ポリシロキサン8(M−ss70)とした。
【0132】
・(h)熱重合開始剤:パーブチルO(日本油脂社製)
・(h)光重合開始剤:イルガキュア184(チバ・ジャパン社製)
・(i)ポリシロキサン9:両末端エポキシ基含有ポリシロキサン(x−22−163B、信越化学工業社製、反応性官能基:エポキシ基、平均官能基数:2個)
・(j)酸無水物:下記式で表される両末端無水コハク酸変性シリコーン(DMS−Z21、Gelest社製、重量平均分子量:500)
【0133】
【化7】

【0134】
・(j)アミン化合物:特殊アミン(サンアプロ社製)
・(j)ルイス酸触媒:トリフルオロホウ素エチルエーテラート錯体(東京化成工業社製)
【0135】
・1.6−2EHA−Zn:酸化亜鉛(ホープ製薬社製)1モルに対して2−エチルヘキサン酸(ホープ製薬社製)1.6モルを加えて室温下で撹拌し、透明の均一な液体を得た。得られた液体を1.6−2EHA−Znとした。
・1.8−2EHA−Zn:2−エチルヘキサン酸の量を1.8モルに代えたほかは、1.6−2EHA−Znと同様にして製造を行い、透明の均一な液体を得た。得られた液体を1.8−2EHA−Znとした。
・2.0−2EHA−Zn:2−エチルヘキサン酸の量を2.0モルに代えたほかは、1.6−2EHA−Znと同様にして製造を行い、透明の均一な液体を得た。得られた液体を2.0−2EHA−Znとした。
【0136】
・アルキレンオキシド化合物1:エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル(X−22−4741、信越化学工業社製)
・アルキレンオキシド化合物2:ポリエーテル変性シリコーンオイル(X−22−6266、信越化学工業社製)
・アルキレンオキシド化合物3:PTMG(重量平均分子量:2000)
・アルキレンオキシド化合物4:PEG(日油社製、重量平均分子量:200)
【0137】
上記第1表に示す結果から明らかなように、実施例I〜IVについては、透過率が高く透明性に優れるとともに、密着性にも優れることが分かった。また、耐硫化性および耐熱着色安定性にも優れていた。
これに対して、アルキレンオキシド化合物1〜4を含有しない比較例(I−1および2,II−1および2,III−1および2、ならびに、IV−1〜3)は、密着性に劣ることが分かった。
また、アルキレンオキシド化合物1〜4の含有量が本発明の範囲の上限値を超える比較例(I−3,II−3,III−3、および、IV−4)は、白濁が見られた。
【符号の説明】
【0138】
100,200 積層体(シリコーン樹脂含有構造体)
102,202 シリコーン樹脂層
120,220 部材
203,303,503 光半導体素子
300,400,500,601 光半導体素子封止体
301,501 マウント部材
302 凹部
304 枠体
306 斜線部
307,507 導電性ワイヤー
308,502,606 封止材(他の透明な層)
309 外部電極
312,314 端部
310,510 基板
320,520 リフレクタ
401 レンズ
506 樹脂
600 LED表示器
604 筐体
605 遮光部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性シリコーン樹脂組成物(A)100質量部に対して、
亜鉛化合物(B)0.01〜5質量部と、
ポリアルキレンオキシド鎖を有する化合物(C)0.01〜5質量部と、
を含有するシリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
前記硬化性シリコーン樹脂組成物(A)が、
シラノール基またはケイ素原子に結合した加水分解性基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン(a)、ならびに、加水分解性シラン、その加水分解物、および、その加水分解縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であるシラン化合物(b)のいずれか一方または両方と、
縮合触媒(c)と、
を含有する請求項1に記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化性シリコーン樹脂組成物(A)が、
ケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン(d)と、
ケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有するポリオルガノハイドロジェンポリシロキサン(e)と、
ヒドロシリル化触媒(f)と、を含有し、
前記水素原子の量が、前記アルケニル基1モル当たり0.1〜5.0モルである、請求項1または2に記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項4】
前記硬化性シリコーン樹脂組成物(A)が、
1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有するオルガノポリシロキサン(g)と、
熱重合開始剤および/または光重合開始剤(h)と、
を含有する請求項1〜3のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項5】
前記硬化性シリコーン樹脂組成物(A)が、
エポキシ基を有するオルガノポリシロキサン(i)を含有する、請求項1〜4のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物。
【請求項6】
銀を含む部材と、
前記部材を覆う、請求項1〜5のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物を硬化させて得られるシリコーン樹脂層と、
を備えるシリコーン樹脂含有構造体。
【請求項7】
凹部を有する枠体と、
前記凹部の底部に配置された光半導体素子と、
前記凹部の内側面に配置された銀を含む部材と、
前記凹部に充填されて前記光半導体素子と前記部材とを封止する、請求項1〜5のいずれかに記載のシリコーン樹脂組成物を硬化させて得られる封止材と、
を備える光半導体素子封止体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−111850(P2012−111850A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261999(P2010−261999)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】