説明

シリンダボアの加工方法および同加工装置

【課題】 オープンデッキ型のシリンダブロックにおけるシリンダボアの真円度を高める。
【解決手段】 V型6気筒エンジンのシリンダブロック1の各バンク1a,1bにそれぞれ鋳込まれる3つのシリンダライナ3のうち、真中のシリンダライナ3にホーニング加工を施すことにより第2シリンダボア(又は第3シリンダボア)を形成する。この際、シリンダライナ3の先端部分をクランプアーム36により外側からクランプすることによりシリンダライナ3をその配列方向に圧縮し、さらにシリンダボア2の真円度測定を行うときの作業温度よりも高い温度に温調されたクーラントをノズル18からシリンダライナ3に供給しながらホーニングヘッド16により当該シリンダライナ3の内周面を加工する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車エンジン等のシリンダブロックの製造に関し、特にシリンダボアを加工する方法および同加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、エンジンのシリンダブロックは、軽量化のために従来の鋳鉄製ブロックのものに代わりダイキャスト製法によるアルミニウム合金製ブロックのものが主流となっている。このダイキャスト製法によるアルミニウム合金製のシリンダブロックでは、ピストンとの間の耐摩耗性を向上するため、一般にはシリンダブロックの鋳造時に、鉄系の材料からなるシリンダライナを鋳込み、鋳造後にこのシリンダライナの内面をホーニング加工(真円加工)することによりシリンダボアを形成することが行われている。
【0003】
図7は、このようなアルミニウム合金製のシリンダブロックの1つを斜視図で概略的に示している。この図に示すシリンダブロック1には、シリンダライナ3により形成される4つのシリンダボア2が直列に設けられている。シリンダボア2を形成する各シリンダライナ3は隣接するもの同士が互いに結合されることにより一体化されている。
【0004】
シリンダライナ3の外側には、ウォータージャケットを形成するための隙間4が形成されており、シリンダライナ3はその基端部のみでシリンダブロック本体部分(すなわちアルミのダイキャスト部分)に対して支持されている。なお、このようにシリンダライナ3がその基端部でのみ支持されているタイプのシリンダブロック1は、一般にオープンデッキ型のシリンダブロックと呼ばれ、ウォータージャケット内を流通する冷却水によりシリンダライナ3の上部まで十分に冷却することができるという特徴を有している。
【特許文献1】特開2002−339794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オープンデッキ型のシリンダブロックも、シリンダライナが鋳込まれるこの種のシリンダブロックと同様に鋳造後にシリンダライナ3の内面を真円加工することによりシリンダボア2が形成されるが、直列に並ぶ4つのシリンダボア2のうち、特に内側2つのシリンダボア2に関して次のような現象が生じることが知られている。すなわち、図7に仮想線で示すようにシリンダボア2を先端部2a、中央部2b、基端部2cと区別した場合、基端部2cではシリンダボア2がほぼ真円となるものの、先端部2aおよび中央2bではシリンダボア2が楕円になる傾向があり、しかも先端部2aと中央部2bとではその楕円の向きが異なるという現象が発生する。具体的には、図8に示すようにシリンダボア2の配列方向をX軸方向、これと直交する方向をY軸方向とすると、シリンダボア2の先端部2aではY軸方向に細長の楕円となり、中央部2bではX軸方向に細長の楕円になる傾向がある。
【0006】
これは主にオープンデッキ型のシリンダブロックの構造、およびシリンダボアの加工時(加工工程)と真円度測定時(測定工程)との温度差に起因するものである。すなわち、オープンデッキ型のシリンダブロック1では、シリンダライナ3は、その基端部でのみ支持されているためシリンダライナ3の先端部分(つまりシリンダボア2の先端部2a)には加工熱が溜まり易く、また、シリンダライナ3同士が直列に一体に結合された構造では、その配列方向の伸長(熱膨張)がこれと直交する方向(Y軸方向)の伸長よりも大きくなる傾向がある。他方、シリンダブロック1の加工後は、抜取り検査によりシリンダブロック1の各部を測定してその品質をチェックすることが行われるが、この測定工程では測定環境の差異による測定差を排除するために、シリンダブロック1を測定室に持ち込み、規格化された特定の作業温度(20°C)下で測定するのが一般的である。そのため、
(1)シリンダライナ3の先端部分(シリンダボア2の先端部2a)については、加工熱の影響を受けてシリンダライナ3がX軸方向に伸長した状態でホーニング加工が進められた後、測定工程では、温度降下によりその伸長分だけシリンダライナ3がX軸方向に縮小した状態で真円度の測定が行われることにより、結果的にボア形状がY軸方向に細長の楕円となる。
【0007】
(2)シリンダライナ3の中央部分(シリンダボア2の中央部2b)では、熱がシリンダライナ3の先端側又は基端側に逃げるため加工熱による影響は少ない。但し、シリンダライナ3は、隣接するシリンダライナ3との連結部分の肉厚がそれ以外の部分の肉厚に比べて厚く、Y軸方向に比べてX軸方向の剛性が大きいため、真円加工時にはホーニングヘッドの切込みに対してライナ内壁がY軸方向に逃げ易く(スプリングバックが生じ易く)、その結果、X軸方向への切込みが促進されてボア形状が同方向に細長の楕円となる。なお、このような剛性による影響はシリンダライナ3の先端部分についても同様であるが、先端部分では熱膨張の影響の方が大きいためにボア形状はY軸方向に細長の楕円となる。
【0008】
これらに対して、シリンダライナ3の下端部分(シリンダボア2の基端部2c)は、シリンダブロック本体部分に近いため、シリンダライナ3はその全周に亘って剛性の差が殆どなく、また、シリンダブロック本体部分に加工熱が逃げ易いために熱膨張の影響を受けることも殆どない。そのため、基端部2cではボア形状が真円又はそれにより近い形状となる。
【0009】
なお、以上は4つのシリンダボア2が直列に並ぶ直列4気筒エンジンのシリンダブロック1の例であるが、V型6気筒エンジンのシリンダブロックのようにバンクにそれぞれ3つのシリンダボアが直列に並ぶシリンダブロックでは、各バンクのシリンダボアのうち特に真中のシリンダボアに関して同様の現象が生じる傾向にある。
【0010】
上記のようなシリンダボア2の部分的な楕円化は、多くの場合は許容範囲内のレベルでありエンジンに致命的な影響を与えるものではないが、エンジンの性能や耐久性をより高める上では、シリンダボア2の真円度はより高いものである方が望ましい。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、いわゆるオープンデッキ型のシリンダブロックの製造に関し、シリンダボアの形成後、その真円度を特定の作業温度下で測定する場合に、その作業温度下でのシリンダボアの真円度を高めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題に鑑み、本願出願人は、シリンダボアの加工条件に関して種々の試行錯誤を繰り返し、シリンダボアの加工時にシリンダライナに特定の歪みを与えておくこと、また、クーラントの温度を制御してホーニング加工中の作業温度をコントロールすることによりシリンダボアの真円度を高めることが可能となることを見出した。
【0013】
すなわち、本発明に係るシリンダボアの加工方法は、直列に並び、かつ隣接するもの同士が互いに結合されることにより一体化された複数のシリンダライナを有し、これらシリンダライナがその並び方向と直交する方向における一端側でシリンダブロック本体部分に支持され、かつ前記シリンダライナとシリンダブロック本体部分との間にウォータージャケット用の隙間が設けられた状態で前記シリンダライナがシリンダブロック本体部分に一体に支持されてなるオープンデッキ型シリンダブロックの前記各シリンダライナに対してホーニング加工を施すことによりシリンダボアを形成し、その後、少なくとも一部のシリンダブロックのシリンダボアの真円度を特定の作業温度下で測定するようにしたシリンダブロックの製造方法における前記シリンダボアの加工方法であって、前記各シリンダライナの内周面にクーラントを供給しながらホーニング加工を施すことによりシリンダボアを形成するとともに、このシリンダボアの形成工程において前記複数のシリンダライナのうち少なくともその並び方向における両端のシリンダライナ以外のシリンダライナにホーニング加工を施す際に、当該シリンダライナの先端部分を前記並び方向に圧縮した状態でホーニング加工を行うようにしたものである。
【0014】
この加工方法によると、直列に並んだ複数のシリンダライナのうち少なくとも両端のもの以外のシリンダライナのホーニング加工に関しては、シリンダライナの並び方向にシリンダライナの先端部分を圧縮した状態でホーニング加工を実施するため、当該先端部分における前記並び方向の熱膨張を抑えた状態でホーニング加工を進めることが可能となる。そのため、シリンダボア先端部分の伸縮に伴う真円度への影響を効果的に排除して、当該先端部分の前記特定の作業温度下での真円度を向上させることが可能となる。
【0015】
この方法においては、さらに両端のシリンダライナ以外のシリンダライナにホーニング加工を施す際に、前記クーラントとしてシリンダボアの真円度を測定するときの前記作業温度よりも高い温度に制御されたクーラントを供給するようにするのが好ましい。
【0016】
このように真円度を測定する際の前記作業温度よりも高い温度のクーラントを供給すると、シリンダライナの中央部分でのシリンダライナの前記並び方向における熱膨張(伸長)を促進させることが可能となり、結果的に真円度を高めることが可能となる。すなわち、シリンダライナの中央部分では、シリンダライナの剛性との関係でシリンダライナの並び方向に偏ってホーニングヘッドの切込みが進む傾向にあるが(偏加工が起き易いが)、前記特定の作業温度よりも高い温度であってシリンダライナの前記並び方向の伸長を促進させ得る温度に制御したクーラントを供給しながらホーニング加工を施すと、ホーニング加工時にはシリンダライナ(中央部分)が前記並び方向に大きく膨張し、加工後は温度降下によりその分だけ縮小する結果、見かけ上、上記のような偏加工を是正することが可能となり、これによりシリンダボア中央部分の真円度が向上することとなる。
【0017】
なお、上記のような加工方法においてより具体的には、例えば両端のシリンダライナにクランプアームをそれぞれ挿入し、これらクランプアームによりそれらの間のシリンダライナをクランプすることにより当該シリンダライナを前記並び方向に圧縮した状態で当該シリンダライナに対してホーニング加工を施し、前記クランプアームを取り外した後、前記両端のシリンダライナに対してホーニング加工を施すようにするのが好適である。
【0018】
この加工方法によると、両端以外のシリンダライナを確実に圧縮した状態でホーニング加工を施すことが可能となる。しかも、両端以外のシリンダライナにホーニング加工を施した後にその両端のシリンダライナにホーニング加工を施すので、クランプアームによるクランプ痕等が両端のシリンダライナ(シリンダボア)内に残ることがなく、全てのシリンダボアを適切に形成することが可能となる。
【0019】
一方、本発明に係るシリンダボア加工装置は、シリンダライナの内周面にホーニング加工を施すホーニングヘッドと、前記ホーニングヘッドによるシリンダライナの加工中にクーラントを供給するクーラント供給手段とを備え、複数のシリンダライナが直列に並んだ状態で鋳込まれたシリンダブロックの前記シリンダライナにホーニングヘッドを挿入し、かつ前記クーラント供給手段によりクーラントを供給しながらシリンダライナの内周面にホーニング加工を施すことによりシリンダボアを形成するシリンダボア加工装置において、前記ホーニング加工中に、当該加工中のシリンダライナをクランプすることにより当該シリンダライナの先端部分をシリンダライナの前記並び方向に圧縮する圧縮手段を備えているものである。
【0020】
また、この加工装置において、前記圧縮手段は一対のクランプアームをもち、これらクランプアームを前記複数のシリンダライナのうちその並び方向における両端のシリンダライナにそれぞれ挿入し、これらクランプアームの間のシリンダライナをクランプすることにより当該シリンダライナを前記並び方向に圧縮するように構成されているのが好適である。
【0021】
これらの加工装置によると、シリンダライナに対してホーニング加工を施す際に、必要に応じてシリンダライナの先端部分を圧縮した状態でホーニング加工を行うことが可能になるため、請求項1又は3に係る方法に基づいてシリンダボアを加工することが可能となる。
【0022】
また、この加工装置においては、前記クーラント供給手段により供給されるクーラントの温度を制御可能な温度制御手段を備えているのが好適である。
【0023】
この加工装置によると、シリンダライナに対してホーニング加工を施す際に、必要に応じてクーラントの温度を任意の温度に制御することが可能となる。そのため、請求項2に係る方法に基づいてシリンダボアを加工することが可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の請求項1〜3に係るシリンダボアの加工方法によると、いわゆるオープンデッキ型シリンダブロックのシリンダボアの加工に際し、従来のようにシリンダボアが楕円形状となるのを有効に回避することができる。そのため、シリンダボアの真円度を高めてエンジンの性能や耐久性を高めることができるようになる。また、請求項4乃至6に係るシリンダボアの加工装置によると、シリンダボアの加工を請求項1〜3に係る加工方法に基づいて良好に実施することができる。そのため、真円度の高いシリンダボアを形成することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0026】
図1は本発明に係るシリンダボア加工装置を模式的に示している。この図に示すシリンダボア加工装置(以下、加工装置と略す)は、シリンダブロックにホーニング加工を施すことによりシリンダボアを形成するもので、例えばシリンダブロックの加工ラインに組込まれた状態で使用され、治具パレット12に固定された状態で搬送されてくるシリンダブロック1に対して加工を施すように構成されている。
【0027】
ここで、当実施形態の加工対象であるシリンダブロック1について簡単に説明する。図2はシリンダブロック1を平面図で模式的に示している。この図に示すシリンダブロック1は、V型6気筒の自動車エンジンのシリンダブロックであっていわゆるオープンデッキ型のブロック構造を有している。
【0028】
すなわち、シリンダブロック1は、アルミニウム合金から構成される本体部分に所定角度で傾く一対のバンク1a,1bを有しており、これらバンク1a,1bに、シリンダボア2を形成するための3つのシリンダライナ3をそれぞれ直列に備えている。
【0029】
バンク1a,1bのシリンダライナ3はそれぞれ隣接するもの同士が互いに連結されることにより一体化されている。また、シリンダライナ3の外側には、ウォータージャケットを形成するための隙間4が形成されており、各シリンダライナ3はその基端部(下端部)でシリンダブロック1の本体部分に対して支持されている。
【0030】
なお、以下の説明において特に必要がある場合には、エンジンの気筒の呼び名(同図中に丸付き数字で示す)に準じ、各シリンダボア2を第1〜第6のシリンダボア2a〜2fと呼ぶことにする。また、各バンク1a,1bにおけるシリンダライナ3の配列方向をX軸方向、これと直交する方向(バンク1a,1bの並び方向)をY軸方向という。
【0031】
図1に戻って、前記加工装置は、治具パレット12に固定された状態でコンベア10に沿って搬送されてくるシリンダブロック1の前記シリンダライナ3に対してホーニング加工を施す2つのステージS1,S2(第1ステージS1、第2ステージS2という)と、これらステージS1,S2にクーラントを供給するクーラント供給装置21とを備えている。
【0032】
第1ステージS1は、各バンク1a,1bに並ぶシリンダライナ3のうち、それぞれ真中のシリンダライナ3にホーニング加工を施すことにより、第1〜第6のシリンダボア2a〜2fのうち第3および第4のシリンダボア2c,2dを形成するステージである。
【0033】
このステージS1には、ホーニングヘッド16を有するホーニング盤14と、シリンダブロック1に対してクーラントを供給するノズル18と、加工対象となるシリンダライナ3をクランプするクランプ装置20と、シリンダブロック1を治具パレット12から持上げてその姿勢を変える図外の姿勢切換えロボット等とが設けられている。
【0034】
ホーニング盤14の前記ホーニングヘッド16は鉛直軸回りに回転および昇降可能に設けられており、モータを駆動源とする回転駆動機構および昇降駆動機構により駆動されるようになっている。
【0035】
クランプ装置20(本発明に係る圧縮手段に相当)は、ホーニング加工中、加工対象となるシリンダライナ3をその外側からクランプすることにより当該シリンダライナ3を径方向に圧縮するもので、図3および図4に示すような構成を有している。
【0036】
すなわち、クランプ装置20は、略水平に支持されるプレート状のメインフレーム31と、このフレーム31に対して揺動可能に連結される同じくプレート状の可動フレーム32とを有している。可動フレーム32は、ベアリングを介して前記メインフレーム31に回転自在に支持されている略水平な支持軸33の先端に連結アーム34を介して固定されており、これにより前記支持軸33回りに揺動可能に支持されている。
【0037】
可動フレーム32には、その上面部分に一対の細長のクランプアーム36が設けられている。これらクランプアーム36は、所定間隔を隔て、かつ先端部分(図4では上端部分)を可動フレーム32から大きく突出させた状態で該フレーム32の上面部分に配置されており、それぞれ支持軸37を介して長手方向中央部分が可動フレーム32に支持されることにより、該フレーム32の上面部分に沿って前記支持軸37回りに回動可能に支持されている。
【0038】
各クランプアーム36の後端部分は、可動フレーム32に搭載された油圧シリンダ38のピストンロッド39先端にそれぞれ連結されている。この油圧シリンダ38は同軸上に一対のピストンロッド39を有し、圧油の給排に応じて各ロッド39を反対方向に同時に進退駆動するいわゆる複動型ダブルシリンダであり、各ピストンロッド39の先端に前記クランプアーム36がそれぞれ連結されている。これにより油圧シリンダ38への圧油の給排切換えに応じて前記ピストンロッド39が進退すると、これに伴い各クランプアーム36が支持軸37を支点として互いに反対方向に回転駆動されるようになっている。そして、両ピストンロッド39が突出した油圧シリンダ38のロッド突出駆動状態では、図3の二点鎖線に示すように先端が互いに接近した状態(クランプ状態)に両クランプアーム36が保持され、一方、両ピストンロッド39が引き込まれた油圧シリンダ38のロッド引込み駆動状態では、同図の実線に示すように先端が互いに離間した状態(クランプ解除状態)に両クランプアーム36が保持されるようになっている。
【0039】
メインフレーム31には、その上面部分に支柱31aが立設されており、この支柱31aに単動ピストン型の油圧シリンダ40が下向きに、すなわちピストンロッド40aが下向きになる状態で支持されている。油圧シリンダ40のピストンロッド40aの先端には前記支持軸33に固定されたリンク42の一端が軸連結されている。これにより油圧シリンダ40への圧油の給排切換えに応じてピストンロッド40aが進退すると、これに伴い可動フレーム32が支持軸33及び連結アーム34を介して揺動するようになっている。具体的には、ピストンロッド40aが引き込まれた油圧シリンダ40のロッド引込駆動状態では、図4の実線に示すように可動フレーム32が略水平となる姿勢(待機姿勢)に保持される一方、ピストンロッド40aが突出した油圧シリンダ40のロッド突出駆動状態では、同図の二点鎖線に示すように可動フレーム32が支持軸33を支点として斜め下向きに傾斜した姿勢(作業姿勢)に保持されるようになっている。
【0040】
つまり、油圧シリンダ40の作動により可動フレーム32が待機姿勢から作業姿勢に切換えられ、さらに油圧シリンダ38の作動により両クランプアーム36が上記クランプ解除状態からクランプ状態に切換えられることにより、両クランプアーム36の先端部36aによりシリンダライナ3をその径方向(X軸方向)外側からクランプし得るように構成されている。両クランプアーム36によるシリンダライナ3のクランプ力は、シリンダライナ3の肉厚等の条件により異なるが、当実施形態では、例えば0.7Mpaに設定されている。
【0041】
なお、図示を省略するが、前記このクランプ装置20は、メインフレーム31を介して油圧リンダを駆動源とする進退駆動機構に連結されており、この進退駆動機構の作動に応じて第1ステージS1に位置決めされているシリンダブロック1の上方に望む作業位置と、この作業位置からコンベア10の方向に退避した待機位置(図1に示す位置)とに進退駆動されるように構成されている。
【0042】
前記ホーニング盤14は、この種のシリンダブロックのシリンダボアの加工に使用されるホーニング盤と同様の構成を有するものであり、従って、ここではその詳細な説明については省略することとする。
【0043】
一方、第2ステージS2は、各バンク1a,1bのシリンダライナ3のうち、それぞれ両端のシリンダライナ3にホーニング加工を施すことにより、第1〜第6のシリンダボア2a〜2fのうち第1,第2,第5および第6の各シリンダボア2a,2b,2e,2fを形成するステージである。
【0044】
この第2ステージS2は、図1に示すように、クランプ装置20を備えていない点を除き、基本的には第1ステージS1と同様の構成とされている。但し、第2ステージS2のホーニング盤14には、一対のホーニングヘッド16が搭載されており(図1では紙面に直交する方向に並んで設けられている)、バンク1a(又は1b)の3つのシリンダライナ3のうち両端のシリンダライナ3に対して同時にホーニング加工を施すことができるように構成されている。
【0045】
なお、ステージS1,S2の各ノズル18は、それぞれ前記クーラント供給装置21にそれぞれ接続されており、これによりホーニング加工中、各ノズル18からシリンダブロック1(シリンダライナ3)に対してクーラントが供給されるとともに、このクーラントが循環されながら繰り返し使用されるようになっている。
【0046】
すなわち、クーラント供給装置21は、タンク22、ポンプ24、フィルタ(図示省略)、供給配管25a、クーラント回収パン(図示省略)および回収配管25b等を有し、前記タンク22内に貯溜されたクーラントを、ポンプ24の作動により供給配管25aを通じて各ステージS1,S2のノズル18に給送する一方で、シリンダブロック1への吹き付け後、クーラント回収パン19に溜まった使用済みクーラントを、回収配管25bを通じてタンク22に戻すように構成されている。
【0047】
タンク22には温調器26と温度センサ28とが設けられており、温度センサ28による検出温度に基づき温調器26が制御されることによりタンク22内に貯溜されるクーラントの温度が一定温度に保たれるようになっている。
【0048】
クーラントの温度は、シリンダボア2の加工後、抜取り検査により少なくとも加工後の一部のシリンダブロック1のシリンダボア2の真円度を測定する測定工程における作業温度(測定を行う際の雰囲気温度)よりも高い所定の温度に保たれるようになっており、詳しくは、第1ステージS1のホーニング加工時に生じるシリンダライナ中央部分におけるX軸方向の偏加工と同方向におけるシリンダライナ3の熱膨張とが良好にバランスし、その後、測定工程においてシリンダボア2の真円度を測定したときに、上記のような偏加工が見かけ上是正されてシリンダライナ中央部分の真円度が良好に確保される温度に保たれるようになっている。例えば当実施形態では、測定工程の上記作業温度は20°Cとされており、クーラントの温度は27°C〜30°Cの範囲内の特定温度、好ましくは27°Cに保たれるようになっている。このクーラントの温度については後に補足する。
【0049】
なお、温調器26の具体的な構成については図示を省略しているが、温調器26は、例えば冷媒を流通させる冷却コイルと加温用ヒータとを有し、これらコイルおよびヒータがタンク22内のクーラントに浸漬された構成となっており、前記温度センサ28による検出温度に基づいて前記コイルへの冷媒の流量制御および前記ヒータのオンオフ制御が行われることによりクーラントの温度を調整するように構成されている。
【0050】
次に、上記のように構成された加工装置によるシリンダブロック1(シリンダボア2)の加工(本発明に係るシリンダボアの加工方法)について説明する。
【0051】
まず、シリンダブロック1を支持した治具パレット12がコンベア10に沿って第1ステージS1に搬入され、所定の作業位置に位置決めされる。この際、ホーニング盤14のホーニングヘッド16は上昇端位置にセットされており、また、クランプ装置20は初期状態、つまり両クランプアーム36がクランプ解除状態に保持され、かつ可動フレーム32が待機姿勢に保持された状態で前記待機位置にセットされている。
【0052】
シリンダブロック1は、図1に示すようにバンク1a,1bのうち何れか一方側のバンク(同図ではバンク1a)が上向き、つまりシリンダヘッド側が上を向き、かつコンベア10による搬送方向と直交する方向(図1では紙面に直交する方向)にシリンダライナ3が並ぶように治具パレット12上に固定され、この状態で第1ステージS1に搬入される。そして、ホーニングヘッド16にバンク1aのシリンダライナ3のうち真中のシリンダライナ3が対応するようにシリンダブロック1が位置決めされる。
【0053】
シリンダブロック1の位置決めが完了すると、クランプ装置20が待機位置から前進駆動されて作業位置にセットされ、さらにクランプ装置20が作動することによりバンク1aのシリンダライナ3のうち真中のシリンダライナ3がクランプアーム36によりクランプされる。詳しくは、可動フレーム32が作業姿勢に切換えられることにより各クランプアーム36の先端部36aが両側のシリンダライナ3、つまり加工対象である真中のシリンダライナ3の両側に位置するシリンダライナ3内にそれぞれに挿入され(図4の二点鎖線参照)、その後、両クランプアーム36がクランプ状態に切換えられる。これにより図5(a)に示すように、真中のシリンダライナ3の上端部分がX軸方向(つまりシリンダライナ3の配列方向)外側から両クランプアーム36によりクランプされることとなる。
【0054】
シリンダライナ3がクランプされると、図外のバルブが操作されることにより各ノズル18からシリンダライナ3に対してクーラントが吹き付けられるとともに、ホーニング盤14の前記ホーニングヘッド16が駆動される。そして、ホーニングヘッド16が回転駆動されながらシリンダライナ3に挿入されることにより当該シリンダライナ3に対してホーニング加工が施され、この加工によりシリンダブロック1のシリンダボア2(第3シリンダボア2c)が形成されることとなる。
【0055】
こうして第2シリンダボア2cが形成されると、クーラントの供給が停止され、ホーニングヘッド16が上昇端位置にリセットされるとともに、クランプ装置20が初期状態に切換えられて待機位置にリセットされる。
【0056】
そして、姿勢切換えロボットによりシリンダブロック1が持上げられた後、他方側のバンク1bが上向きとなるようにシリンダブロック1が治具パレット12に対して載せ換えられた後、上記と同様の動作に従って、当該他方側のバンク1bの真中のシリンダライナ3に対してホーニング加工が施される。これによりシリンダブロック1の第4シリンダボア2dが形成されることとなる。
【0057】
第3および第4のシリンダボア2c,2dの形成が完了すると、次いでシリンダブロック1がコンベア10に沿って第1ステージS1から第2ステージS2に搬送され、第2ステージS2の所定の作業位置に位置決めされる。この際、シリンダブロック1は、第1ステージS1での作業終了時の姿勢、つまり他方側のバンク1bが上向きとなる姿勢のままで第2ステージS2に搬入される。
【0058】
そして、まずバンク1bの両端2つのシリンダライナ3にそれぞれホーニングヘッド16が挿入されて当該シリンダライナ3にホーニング加工が施されることにより第2および第6のシリンダボア2b,2fが形成され、その後、シリンダブロック1の姿勢が切換えられ、同様にして他方側のバンク1aの外側2つのシリンダライナ3にそれぞれホーニング加工が施されることにより第1および第5のシリンダボア2a,2eが形成される。なお、ホーニング加工中は、各ノズル18から各シリンダライナ3に対してクーラントが供給される。
【0059】
こうして第2ステージS2において第1,第2,第5および第6の各シリンダボア2a,2b,2e,2fが形成されると、コンベア10に沿ってシリンダブロック1が次工程へと搬出され、当該加工装置による一連のシリンダボア加工が終了することとなる。
【0060】
以上のような加工装置(加工方法)によると、各バンク1a,1bのシリンダボア2のうち真中に位置する第2および第3のシリンダボア2c,2dを形成する際には、クランプ装置20によりシリンダライナ3の先端部分をクランプすることによりシリンダライナ3を圧縮し、クーラントとしてシリンダブロック1の測定工程の作業温度(20°C)よりも十分に高い温度(27°C〜30°C)に温度調整されたクーラントを供給するようにしているので、V型6気筒エンジンの第2,第3のシリンダボア2c,2dの真円度、つまり測定工程における前記作業温度下での真円度を従来に比べて効果的に高めることができる。
【0061】
すなわち、バンク1a,1bのシリンダライナ3のうち特に真中のシリンダライナ3(第2,第3のシリンダボア2c,2dに対応するシリンダライナ3)ついては、従来技術でも説明した通り、先端部分では、ホーニング加工中にシリンダライナ3がX軸方向に大きく伸長(熱膨張)し、加工後は温度降下により同方向に大きく縮小する結果、シリンダボア2がY軸方向に細長の楕円になる傾向があり、また、中央部分では、シリンダライナ3同士の連結部分の剛性が高いことによりホーニングヘッド16による切込みがX軸方向に促進され易く(X軸方向に偏加工が生じ易く)、シリンダボア2がX軸方向に細長の楕円になる傾向がある。
【0062】
これに対して上記実施形態の加工方法によると、ホーニング加工中は、シリンダライナ3をクランプ装置20によりクランプすることにより該シリンダライナ3の先端部分の伸長(熱膨張)を強制的に抑えた状態でホーニング加工を進めるため、熱膨張による真円度への影響を排除することができ、その結果、シリンダボア2(2c,2d)の先端部分を真円又はこれにより近い形状に形成することができる。
【0063】
また、ホーニング加工中は、上述のように温調器26によって測定工程の作業温度よりも高い特定温度に制御されたクーラントを供給するようにしているので、シリンダボア2(2c,2d)の中央部分につても真円又はこれにより近い形状に形成することができる。すなわち、シリンダライナ3の中央部分では、上記の通り、剛性との関係でホーニングヘッド16によるX軸方向の偏加工が促進される傾向にあるが、この加工装置ではホーニング加工中、シリンダライナ3の中央部分でのX軸方向の熱膨張を促進させ、かつ加工後、温度降下によりシリンダライナ3がX軸方向に縮小して上記の偏加工が見かけ上是正され得るようにクーラントの温度が制御されている(つまり、シリンダライナ3のX軸方向における偏加工と温度降下に伴う同方向におけるシリンダライナ3の縮小とがバランスするようにクーラントの温度が制御されている)。従って、ホーニング加工中、ホーニングヘッド16によりX軸方向の偏加工が行われることとなるが、加工後、つまり測定工程では、温度降下に伴いシリンダライナ3がX軸方向に縮小することにより上記のような偏加工が見かけ上是正されることとなり、結果的に、シリンダボア2(2c,2d)の中央部分を真円又はこれにより近い形状に形成することができる。
【0064】
そして、シリンダライナ3の基端部分については、従来と同様に、熱膨張や剛性による影響を比較的受け難いことから、結果的に、シリンダボア2(2c,2d)は、その軸方向全体に亘って真円又はこれに極めて近い形状に形成されることとなる。
【0065】
下記の表1は、従来方法に基づくシリンダボア、すなわち、例えば20°Cのクーラントを供給しながらシリンダライナをクランプすることなくホーニング加工を施した場合のシリンダボアの真円度と、上記実施形態の加工方法に基づくシリンダボア、すなわち、30°Cのクーラントを供給しながらシリンダライナをクランプした状態で加工を施した場合のシリンダボアと真円度とを、JIS−B−0621−1984に基づきシリンダボアの先端部、中央部、基端部に分けて測定した結果である。
【0066】
【表1】

【0067】
この表からも、上記実施形態の加工方法によると、シリンダボア2の真円度が向上することが考察できる。なお、同表はV型6気筒エンジンの第2,第3シリンダボア(図2参照)についての比較例であって、同表の各位置(先端部、中央部、基端部)の数値のうち上段の数値は第2シリンダボアの値を、下欄の数値は第3シリンダボアの数値をそれぞれ示している。
【0068】
以上のように上記実施形態の加工装置(加工方法)によると、いわゆるオープンデッキ型シリンダブロック1のシリンダボア2の加工に際し、従来のように特に第2,第3のシリンダボア2c,2dが部分的に楕円形状に形成されるという現象を有効に回避することができる。そのため、シリンダボア2の真円度を高めてエンジンの性能や耐久性をより良く高めることができるようになる。
【0069】
ところで、上述した加工装置(加工方法)は本発明に係るシリンダボア加工装置(同加工方法)の一の実施形態であって、加工装置の具体的な構成や具体的な加工方法は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0070】
例えば、上記実施形態のクランプ装置20では、バンク1a(又は1b)に並んだシリンダライナ3のうち両端のシリンダライナ3にそれぞれクランプアーム36の先端を挿入することにより真中のシリンダライナ3をその外側からクランプするように構成されているが、例えば、両端のシリンダライナ3にクランプアーム36を挿入することなく真中のシリンダライナ3をその外側からクランプするように構成してもよい。この場合の一例として、例えば各クランプアーム36の先端部分に、図6に二点鎖線で示すように、シリンダライナ3の軸方向(同図では紙面に直交する方向)に互いに平行に延びる一対の係止爪51とこれらを連結する連結片52とを備えたコ字型の係合部50を設けておくようにしてもよい。すなわち、同図に示すように、シリンダライナ3の各連結部分に対してそれぞれ該連結部分を跨ぐように各クランプアーム36の係合部50を装着することにより前記連結部分の外側に形成される谷間に前記係止爪51を挿入し、この状態で両クランプアーム36を接近させることにより、各係合部50の係止爪51により真中のシリンダライナ3をその外側からクランプするようにする。このような構成によっても、シリンダライナ3をその外側から良好に圧縮した状態でホーニング加工を行うことができる。
【0071】
なお、クランプ装置20として図6のような構成を採用する場合には、第1ステージS1と第2ステージS2の構成を入れ替え、まずバンク1a,1bに並ぶシリンダライナ3のうち両端のシリンダライナ3を加工し、その後、真中のシリンダライナ3を加工するように構成してもよい。すなわち、両端のシリンダライナ3にクランプアーム36を挿入して真中のシリンダライナ3をクランプする上記実施形態の装置では、両端のシリンダライナ3の内壁にクランプアーム36が当接してクランプ痕が残るため、加工精度を確保する観点から常に両端のシリンダライナ3の加工を真中のシリンダライナ3よりも後に行う必要がある。しかし、図6のようなクランプ装置20の構成によると、クランプアーム36がシリンダライナ3の内壁に当接することが無いため加工精度との関係で加工順序を設ける必要が無い。従って、上記のように加工順序を入れ替えることが可能となる。
【0072】
また、上記実施形態では、V型6気筒エンジンのシリンダブロック1のシリンダボア2を加工する方法および装置として本発明を適用しているが、勿論、複数の気筒が一列に並ぶ直列多気筒エンジン、あるいは水平対向多気筒エンジンのシリンダブロックを加工する場合にも本発明は適用可能である。この場合、例えば直列4気筒エンジンのシリンダブロック(図7,図8参照)の場合には内側2つのシリンダライナに対し、また、直列6気筒エンジンのシリンダブロックの場合には内側4つのシリンダライナに対してホーニング加工を施す際にシリンダライナをクランプするようにすればよい。なお、クランプするシリンダライナが連続して複数個並ぶ直列4気筒あるいは直列6気筒エンジンの場合、シリンダライナにクランプアーム36を挿入してクランプする上記実施形態のクランプ装置20を用いると、一のシリンダライナの加工後、これに隣接するシリンダライナを加工しようとすると常に加工済みのシリンダライナの内壁にクランプアーム36を当接させる必要が生じる。そのため、直列4気筒あるいは直列6気筒エンジン等の場合には、シリンダライナ内にクランプアームを挿入することなくシリンダライナをクランプできるクランプ装置(例えば図6に示すような係合部50をもつクランプ装置20)を採用するのが好ましい。但し、可能な場合には、シリンダライナにクランプアーム36を挿入する上記実施形態のクランプ装置20を用いても構わない。すなわち、両端のシリンダライナにクランプアーム36を挿入することによりその内側に配列される複数のシリンダライナを一体にクランプし、この状態で同内側のシリンダライナに対して同時にホーニング加工を施すようにしてもよい。なお、V型エンジンや水平対向エンジンについては、バンク毎に上記直列4気筒、あるいは6気筒エンジンの加工に準ずればよい。
【0073】
また、実施形態では、上記のようにシリンダライナ3の先端部分をクランプアーム36によりクランプしているが、場合によっては、シリンダライナ3のより中央部分寄りの位置をクランプアーム36によりクランプするようにしてもよい。要は、シリンダライナ3の先端が径方向に圧縮されていればよいので、クランプアーム36によるシリンダライナ3のクランプ位置は必ずしもシリンダライナ3の先端部分である必要はなく具体的な諸条件に応じて決定すればよい。
【0074】
例えば、上記実施形態では、シリンダブロック1の第2,第3のシリンダボア2c,2dの加工に際し、クランプ装置20により0.7Mpaのクランプ力でシリンダライナ3をクランプし、27°Cに温度制御されたクーラントをシリンダライナ3に供給するようにしているが、クランプ装置20による具体的なクランプ力やクーラントの具体的な温度は、シリンダライナ3の具体的な寸法等に応じて、真円度の高いシリンダボア2が得られるように適宜選定するようにすればよい。
【0075】
また、上記実施形態では、複数のシリンダライナ3のうちその並び方向における両端のシリンダライナ3以外のシリンダライナ3にホーニング加工を施す場合にのみシリンダライナ3の先端部分を並び方向に圧縮する例について説明したが、両端のシリンダライナ3の真円度をより向上させたい場合には、両端のシリンダライナ3にホーニング加工を施す場合にも当該シリンダライナ3の先端部分を並び方向に圧縮するようにしてもよい。この場合には、図6に示すような係合部50をもつクランプ装置20により両端のシリンダライナ3を外側からクランプした状態で両端のシリンダライナ3にホーニング加工を施すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明に係るシリンダボア加工装置の構成示す模式図である。
【図2】ワークであるシリンダブロック(V型6気筒エンジンのシリンダブロック)を模式的に示した平面図である。
【図3】シリンダボア加工装置に組込まれるクランプ装置の構成示す平面略図である。
【図4】クランプ装置の構成示す図3のA−A線断面図である。
【図5】シリンダブロックの加工状況を示す斜視図である((a)はクランプ装置によりシリンダライナをクランプした状態、(b)はホーニングヘッドによるホーニング加工中の状態を示す)。
【図6】クランプ装置の別の構成例(クランプアームの先端部分)を示す平面模式図である。
【図7】自動車の直列4気筒エンジンを示す斜視図(一部断面図)である。
【図8】シリンダブロックに鋳込まれるシリンダライナを示す平面図である。
【符号の説明】
【0077】
1 シリンダブロック
2 シリンダボア
3 シリンダライナ
1a,1b バンク
14 ホーニング盤
16 ホーニングヘッド
18 ノズル
20 クランプ装置
22 タンク
24 ポンプ
25a 供給配管
25b 回収配管
26 温調器
28 センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列に並び、かつ隣接するもの同士が互いに結合されることにより一体化された複数のシリンダライナを有し、これらシリンダライナがその並び方向と直交する方向における一端側でシリンダブロック本体部分に支持され、かつ前記シリンダライナとシリンダブロック本体部分との間にウォータージャケット用の隙間が設けられた状態で前記シリンダライナがシリンダブロック本体部分に一体に支持されてなるオープンデッキ型シリンダブロックの前記各シリンダライナに対してホーニング加工を施すことによりシリンダボアを形成し、その後、少なくとも一部のシリンダブロックのシリンダボアの真円度を特定の作業温度下で測定するようにしたシリンダブロックの製造方法における前記シリンダボアの加工方法であって、
前記各シリンダライナの内周面にクーラントを供給しながらホーニング加工を施すことによりシリンダボアを形成するとともに、このシリンダボアの形成工程において前記複数のシリンダライナのうち少なくともその並び方向における両端のシリンダライナ以外のシリンダライナにホーニング加工を施す際に、当該シリンダライナの先端部分を前記並び方向に圧縮した状態でホーニング加工を行うことを特徴とするシリンダボアの加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載のシリンダボアの加工方法において、
少なくとも前記両端のシリンダライナ以外のシリンダライナにホーニング加工を施す際に、さらに前記クーラントとしてシリンダボアの真円度を測定するときの前記作業温度よりも高い温度に制御されたクーラントを供給することを特徴とするシリンダボアの加工方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシリンダボアの加工方法において、
前記両端のシリンダライナにクランプアームをそれぞれ挿入し、これらクランプアームによりそれらの間のシリンダライナをクランプすることにより当該シリンダライナを前記並び方向に圧縮した状態で当該シリンダライナに対してホーニング加工を施し、前記クランプアームを取り外した後、前記両端のシリンダライナに対してホーニング加工を施すことを特徴とするシリンダボアの加工方法。
【請求項4】
シリンダライナの内周面にホーニング加工を施すホーニングヘッドと、前記ホーニングヘッドによるシリンダライナの加工中にクーラントを供給するクーラント供給手段とを備え、複数のシリンダライナが直列に並んだ状態で支持されたシリンダブロックの前記シリンダライナにホーニングヘッドを挿入し、かつ前記クーラント供給手段によりクーラントを供給しながらシリンダライナの内周面にホーニング加工を施すことによりシリンダボアを形成するシリンダボア加工装置において、
前記ホーニング加工中に、当該加工中のシリンダライナをクランプすることにより当該シリンダライナの先端部分をシリンダライナの前記並び方向に圧縮する圧縮手段を備えていることを特徴とするシリンダボア加工装置。
【請求項5】
請求項4に記載のシリンダボアの加工装置において、
前記圧縮手段は一対のクランプアームをもち、これらクランプアームを前記複数のシリンダライナのうちその並び方向における両端のシリンダライナにそれぞれ挿入し、これらクランプアームの間のシリンダライナをクランプすることにより当該シリンダライナを前記並び方向に圧縮することを特徴とするシリンダボア加工装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のシリンダボア加工装置において、
前記クーラント供給手段により供給されるクーラントの温度を制御可能な温度制御手段を備えていることを特徴とするシリンダボア加工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−152858(P2006−152858A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−341918(P2004−341918)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【出願人】(391003668)トーヨーエイテック株式会社 (145)
【Fターム(参考)】