説明

シリンダ装置

【課題】車体等の被取付側へ伝達する力を歪センサにより精度よく求めることができるシリンダ装置を提供する。
【解決手段】緩衝器11のボトム側となるシリンダ本体11Aの他端に取付アイ16を設けると共に、この取付アイ16の内側に取付ピン18を貫通して設ける。取付ピン18には、軸方向に延びる挿入孔18Fを設け、この挿入孔18Fには、カートリッジ式の歪センサカセット20を挿入する。この歪センサカセット20は、円管状の軸部材21と、該軸部材21の内側に取付けられた歪センサ22とにより構成する。そして、歪センサ22により、緩衝器11から車体2へ伝達される力を求め、該力を用いて緩衝器11が発生する減衰力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄道車両の制振ダンパ等に好適に用いられるシリンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鉄道車両には、車体(ばね上)と台車(ばね下)との間に減衰力調整式緩衝器等のシリンダ装置が設けられ、制御信号(指令電流)に応じて該シリンダ装置による減衰力特性を可変に制御する構成としたサスペンション制御装置(振動制御装置)が搭載されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この種の従来技術によるサスペンション制御装置では、例えば車体の左,右方向の振動をばね上速度、またはばね上加速度として検出し、この検出したばね上速度等に応じ、車体振動を低減させる減衰力を発生させるように、シリンダ装置のアクチュエータに対して制御信号を出力する構成となっている。
【0004】
ここで、シリンダ装置は、作動流体が封入された筒状のシリンダ本体と、該シリンダ本体の一端から突出するロッドとを有し、発生する力(減衰力)が調整可能な構成となっている。
【0005】
また、特許文献2には、シリンダ装置とヨークとをゴムブッシュ(弾性装置)を介して連結すると共に、該ゴムブッシュの変形量を圧力センサにより検出することにより、車輪が受ける荷重を測定できるようにした構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−24844号公報
【特許文献2】特開平3−158729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示された構成は、荷重の検出精度、信頼性、耐久性、メンテナンス時の交換容易性等を十分に確保することができないという問題がある。
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、車体等の被取付側へ伝達する力を歪センサにより精度よく求めることができるシリンダ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するため、本発明は、シリンダ本体と、該シリンダ本体の一端から突出するロッドとを有し、発生する力が調整可能なシリンダ装置に適用される。
【0010】
そして、本発明が採用する構成の特徴は、前記シリンダ本体の他端またはロッドの突出端の少なくとも一方に設けられた取付アイと、該取付アイに貫通する取付ピンと、該取付ピンの歪を測定する歪センサと、からなり、該歪センサの出力から被取付側へ伝達する力を求め、前記発生する力を制御する構成としたことにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車体等の被取付側へ伝達する力を歪センサにより精度よく求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるシリンダ装置が搭載された鉄道車両を模式的に示す断面図である。
【図2】鉄道車両を構成する台車等を模式的に示す図1の上側からみた平面図である。
【図3】図2中の左側のシリンダ装置を示す平面図である。
【図4】シリンダ装置のボトム側を示す図3中の(IV)部の拡大断面図である。
【図5】シリンダ装置のボトム側を示す図4中の矢示V−V方向からみた正面図である。
【図6】軸部材、歪センサ等を示す一部破断の斜視図である。
【図7】取付ピンの歪と車体に加わる力との関係を示す特性線図である。
【図8】図1中のコントローラを示すブロック図である。
【図9】歪センサの出力を用いて減衰力指令値を求めた場合の、該減衰力指令値と車体に作用する実際の減衰力との時間変化の一例を示す特性線図である。
【図10】歪センサの出力を用いずに減衰力指令値を求めた場合の、該減衰力指令値と車体に作用する実際の減衰力との時間変化の一例を示す特性線図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態によるシリンダ装置のボトム側を示す図4と同様位置の拡大断面図である。
【図12】シリンダ装置のボトム側を示す図11中の矢示XII−XII方向からみた正面図である。
【図13】本発明の第3の実施の形態による軸部材、歪センサ等を示す図4中の(XIII)部に相当する拡大断面図である。
【図14】本発明の第4の実施の形態による軸部材、歪センサ等を示す図13と同様位置の拡大断面図である。
【図15】本発明の第5の実施の形態によるシリンダ装置のボトム側を示す図4と同様位置の拡大断面図である。
【図16】本発明の第6の実施の形態による軸部材、歪センサ等を示す図15中の(XVI)部に相当する拡大断面図である。
【図17】軸部材を単体で示す図16と同方向から見た図である。
【図18】本発明の第7の実施の形態によるシリンダ装置のボトム側を示す図4と同様位置の拡大断面図である。
【図19】本発明の第8の実施の形態によるシリンダ装置のボトム側を示す図4と同様位置の拡大断面図である。
【図20】本発明の第9の実施の形態によるシリンダ装置のボトム側を示す図4と同様位置の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態によるシリンダ装置を、例えば鉄道車両に搭載されるサスペンション制御装置(振動制御装置)に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0014】
図1ないし図9は本発明の第1の実施の形態を示している。図において、鉄道車両1は、例えば乗客、乗員等が乗車する車体2と、該車体2の下側に設けられ車輪3を介して2本のレール4に案内される台車5とにより大略構成されている。なお、図1および図2では、車体2の前,後方向の一側に設けられた1台の台車5のみを示しているが、台車5は、車体2の前,後方向の両側にそれぞれ設けられるものである。
【0015】
ここで、車体2の下部、より具体的には、車体2の下面側で各台車5と上,下方向に対向する部位には、該車体2の下面から下側に突出するように中心ピン6が固設されている。この中心ピン6の左,右方向両側には、後述する緩衝器11のボトム側が取付ピン18を介して取付けられている。
【0016】
一方、台車5は、左,右方向に離間して設けられた左側梁5A,右側梁5Bと、これら左,右の側梁5A,5Bを連結する前横梁5C、中央横梁5D、後横梁5Eとにより大略構成されている。そして、左,右の側梁5A,5Bは、車輪3が取付けられた車軸7を、軸受装置8を介して回転自在に支持している。
【0017】
また、車体2に設けられた中心ピン6と台車5の中央横梁5Dとの間には、これら車体2と台車5との間で前,後方向に加わる牽引力や制動力を伝達する牽引装置(図示せず)が設けられている。この牽引装置は、例えば上からみてI字状またはZ字状のリンク機構により構成されている。
【0018】
そして、牽引装置は、台車5に対して車体2が上,下方向、左,右方向、ヨー(台車旋回)方向、およびピッチング方向に相対変位する(動く)ことを許容しつつ、これら車体2と台車5との間で牽引力や制動力を伝達できるように、車体2の中心ピン6と台車5の中央横梁5Dとの間を連結している。
【0019】
また、台車5の中央横梁5Dには、左,右方向に離間して1対の取付ブラケット5Fが設けられている。これら各取付ブラケット5Fには、後述する緩衝器11のロッド側が取付ピン14を介して揺動可能に取付けられている。
【0020】
ばね上となる車体2とばね下となる台車5との間には、セミアクティブサスペンションと呼ばれるサスペンション装置9が設けられている。このサスペンション装置9は、台車5に対して車体2を上,下方向および水平方向の揺動を可能に支持する空気ばね10と、車体2に設けられた中心ピン6と台車5の中央横梁5Dとの間に横置き状態で配設されたシリンダ装置としての減衰力調整式緩衝器11(以下、緩衝器11という)とにより大略構成されている。
【0021】
本実施の形態の場合は、車体2と台車5との間に一対の空気ばね10と一対の緩衝器11とを左,右方向に離間して設ける構成となっている。また、台車5は、車体2の前,後方向の両側にそれぞれ設けられるから、一車両当たり(一車体当たり)、合計4個の空気ばね10と8個の緩衝器11を有する構成となっている。
【0022】
ここで、各緩衝器11は、発生する力(減衰力)が調整可能なシリンダ装置、例えばセミアクティブダンパと呼ばれる減衰力調整式の油圧緩衝器を用いて構成され、台車5に対する車体2の左,右方向の振動に対して振動を低減させるような減衰力を発生することにより、車体2の左,右方向の振動を低減するものである。
【0023】
これら各緩衝器11は、図3ないし図5に示すように、作動流体が封入された筒状のシリンダ本体11Aと、該シリンダ本体11A内に変位可能に収納されたピストン(図示せず)と、一端側(図3の左端側)がシリンダ本体11Aの一端から突出すると共に他端側(図3の右端側)がピストンに固着されるロッド11Bと、該ロッド11Bの周囲を覆うカバー11Cと、ピストンを含むシリンダ本体11A内に設けられ作動流体の流れを抑制して減衰力を発生させる減衰力発生機構(図示せず)とにより大略構成されている。
【0024】
また、緩衝器11には、発生減衰力の特性(減衰力特性)をハードな特性(硬特性)からソフトな特性(軟特性)に連続的に調整するため、減衰力発生機構の調整を外部から行う減衰力調整バルブ、例えば電流制御型の比例ソレノイドバルブ等からなるアクチュエータ12(図3参照)が付設されている。そして、緩衝器11は、アクチュエータ12へのDUTY信号(電流指令値)に応じて減衰力特性を調節可能としている。なお、減衰力調整用のアクチュエータ12は、減衰力特性を連続的でなくとも、2段階又は複数段階に調整可能なものであってもよい。
【0025】
何れにしても、緩衝器11のロッド側となるロッド11Bの突出端には、該ロッド11Bの突出端を台車5の取付ブラケット5Fに取付けるための取付アイ13が設けられている。そして、取付アイ13の内側には、取付ピン14が貫通して設けられている。即ち、取付アイ13の内側には、円環状のゴムブッシュ(図示せず)が焼付け等の手段を用いて固着され、該ゴムブッシュの内側には、取付ピン14が取付けられている。そして、取付ピン14の長さ方向両端側は、台車5の取付ブラケット5Fにそれぞれボルト15(図3参照)を用いて固定されている。
【0026】
一方、緩衝器11のボトム側となるシリンダ本体11Aの他端(図3の右端)には、該シリンダ本体11Aの他端を車体2の中心ピン6に取付けるための取付アイ16が設けられている。そして、この取付アイ16の内側には、取付ピン18が貫通して設けられている。即ち、取付アイ16の内側には、円環状のゴムブッシュ17が焼付け等の手段を用いて固着され、該ゴムブッシュ17の内側には、取付ピン18が取付けられている。
【0027】
ここで、取付ピン18は、図4および図5に示すように、軸方向中間部に位置して断面円形に形成された円筒部18Aと、該円筒部18Aの軸方向両側に位置して一対の取付面18Bがそれぞれ設けられた一側取付部18C,他側取付部18Dとにより大略構成されている。そして、これら各取付部18C,18Dには、取付面18Bに対して直交する方向に延びるボルト挿入孔18Eがそれぞれ設けられ、各取付部18C,18Dは、ボルト挿入孔18Eに挿通されるボルト19を用いて車体2の中心ピン6に対して固定されている。
【0028】
また、取付ピン18には、後述する歪センサカセット20が圧入されている。このために、取付ピン18の円筒部18Aには、取付ピン18の軸方向に延びる挿入孔18Fが、円筒部18Aの両側面同士を貫通するように形成されている。そして、この挿入孔18Fに、カートリッジ式の歪センサカセット20が取付ピン18の軸方向に挿入されている。
【0029】
歪センサカセット20は、図4および図6に示すように、円管状に形成され挿入孔18F内に圧入される軸部材21と、該軸部材21の内側で該軸部材21の軸方向中間部に取付けられた後述の歪センサ22と、該歪センサ22と後述のコントローラ27とを接続するためのセンサ線23とにより大略構成されている。そして、取付ピン18の挿入孔18Fに、歪センサ22が取付けられた軸部材21を挿入することにより、歪センサカセット20を取付ピン18に着脱可能に取付ける構成となっている。
【0030】
この場合、図4に示すように、歪センサカセット20を取付ピン18の挿入孔18Fに挿入した状態で、挿入孔18Fの両端側には、それぞれボルト24が螺合され、該各ボルト24により歪センサカセット20(軸部材21)の長さ方向両側が拘束されている。これにより、歪センサカセット20は、取付ピン18の挿入孔18Fから抜出ることが阻止されると共に、挿入孔18F内に軸方向の位置決めがされた状態で固定される構成となっている。また、各ボルト24のうち一方(図4の下側)のボルト24には、後述の歪センサ22に接続されたセンサ線23を引出すための貫通孔24Aが設けられている。
【0031】
貫通孔24Aを通じて引出されたセンサ線23は、図3に示すように、取付アイ16とシリンダ本体11Aとに沿うように配設され、アクチュエータ12の内部に引込まれている。そして、センサ線23は、アクチュエータ12とコントローラ27とを接続するケーブル25(図3参照)と共にコントローラ27に接続される構成となっている。
【0032】
次に、取付ピン18の歪を測定する歪センサ22について説明する。
【0033】
歪センサ22は、取付ピン18の歪を測定することにより、取付ピン18が取付けられた被取付側へ伝達する力、即ち、緩衝器11から車体2(中心ピン6)に作用する力を直接検出(測定)するものである。ここで、図7に示すように、取付ピン18の軸方向に関する歪量と該取付ピン18を通じて緩衝器11から車体4に加わる力とは相関関係を有する。
【0034】
そこで、歪センサ22は、取付ピン18の軸方向に関する歪を測定し、該歪から車体2に加わる力を求めるように構成している。具体的には、歪センサ22は、該歪センサ22と共に歪センサカセット20を構成する軸部材21の軸方向中間部に取付けられ、取付ピン18と共に歪む(変形する)該軸部材21を介して取付ピン18の歪を測定する構成となっている。
【0035】
ここで、本実施の形態のよる歪量測定手段としての歪センサ22について詳述する。本実施の形態に示す歪センサ22としては、従来から知られている歪ゲージの他、昨今開発された半導体歪ゲージを用いてもよい。
【0036】
まず、従来から知られている歪ゲージは、Cu−Ni系合金やNi−Cr系合金の金属薄膜の配線パターンを、可撓性のあるポリイミドやエポキシ樹脂フィルムで覆った構造であり、歪ゲージを被測定物に接着剤で接着して使用するもので、金属薄膜が歪を受けて変形したときの抵抗変化から、歪量を算出するものである。また、金属薄膜の歪ゲージでは、抵抗変化が小さいため、得られる電気信号を増幅する必要があり、そのため外部にアンプが必要となる。
【0037】
これに対し、半導体歪ゲージは、検知部を金属薄膜ではなく、シリコン等の半導体に不純物をドープして形成した半導体ピエゾ抵抗を利用したものである。半導体歪ゲージは、歪に対する抵抗変化率が金属薄膜を用いた従前の歪ゲージの数十倍と大きく、微小な歪、例えば、1με程度の歪を測定することが可能である。また、半導体歪ゲージは、抵抗変化が大きいため、得られた電気信号を外部のアンプを用いずに使用することもでき、さらには、半導体歪ゲージの数ミリ角のチップにアンプ回路や温度センサおよび温度補償回路、オフセット除去回路等を作りこむことも可能である。さらには、無線回路等を設けて、非接触でデータを取出すことも可能である。
【0038】
この半導体歪ゲージは、被測定物に接着剤や金属接合により固定することも可能であり、また、半導体歪ゲージを金属板に対し、スポット溶接により固定することも可能である。
【0039】
本実施の形態では、半導体歪ゲージを用いた方が歪量の測定精度が高く、取付スペースも少なくて済むので好ましいが、測定精度や取付スペースが許されれば、従来から知られている歪ゲージを用いてもよい。
【0040】
何れにしても、本実施の形態では、上述のような歪センサ22は、該歪センサ22と共に歪センサカセット20を構成する軸部材21の軸方向中間部に取付けられている。そして、歪センサ22は、取付ピン18と共に変形する軸部材21を介して取付ピン18の歪を検出(測定)し、その検出信号をセンサ線23を通じて後述するコントローラ27に出力する構成となっている。
【0041】
この場合、歪センサ22を含む歪センサカセット20は、取付ピン18の内部に設置する構成となっているため、水滴、粉塵、飛び石等による歪センサ22の損傷を防止できる他、点検時等に実施されるハンマ等による打検等に対しても歪センサ22の損傷を防止することができる。これにより、歪センサ22の信頼性、耐久性を確保することができる。
【0042】
また、歪センサ22を、軸部材21に取付けることによりカートリッジ式の歪センサカセット20として取り扱うことができるため、取付ピン18に対する取付け取外しを容易に行うことができ、メンテナンス時の交換容易性を確保することもできる。
【0043】
さらに、歪センサ22は、歪センサカセット20を取付ピン18の挿入孔18F内に取付けた状態で、取付ピン18のうちで撓み量が最も大きくなる挿通孔18Fの軸方向中間部に位置する構成となっている。このため、取付ピン18の歪と相関関係を有する車体2に作用する力、即ち、取付ピン18を通じて緩衝器11から車体2に作用する実際の減衰力を精度よく求めることができ、検出精度、制御性能の向上を図ることができる。
【0044】
次に、26は車体2に設けられた加速度センサで、該加速度センサ26は、鉄道車両1のばね上側となる車体2側で該車体2の左,右方向の振動加速度を検出するものである、このために、加速度センサ26は、例えば車体2の下部、即ち、車体2の下面側で緩衝器11の近傍となる位置に取付けられている。
【0045】
そして、加速度センサ26は、車体2の左,右方向の振動加速度を検出し、その検出信号を後述のコントローラ27に出力する。なお、加速度センサ26は、車両の前,後方向両側に設けられた各台車5に対応してそれぞれ設けられているため、一車両当たり(一車体当たり)、合計2個の加速度センサ26を有する構成となっている。
【0046】
次に、緩衝器11の発生減衰力の調整(制御)を行うコントローラ(制御器)27について説明する。
【0047】
27はマイクロコンピュータ等により構成されるコントローラで、該コントローラ27は、車体2の左,右方向の振動を低減すべく、サンプリング時間ごとに例えばスカイフック理論(スカイフック制御則)に基づいて緩衝器11を制御するものである。なお、ここでは制御側はLQG制御則、あるいはH∞制御則等によっても構わない。ここで、コントローラ27は、その入力側が歪センサ22、加速度センサ26等に接続され、出力側が緩衝器11のアクチュエータ12等に接続されている。
【0048】
また、コントローラ27は、ROM、RAM等からなる記憶部27Aを有している。そして、この記憶部27Aには、図8中に示すスカイフック制御部28に用いられる制御処理用プログラム、図8中に示す力換算部29で用いられる取付ピン18の歪と車体2に作用する力との関係を表すマップ、計算式等が格納されている。
【0049】
コントローラ27は、図8に示すように、スカイフック制御部28、力換算部29、力制御器30、電流制御器33等を備えて構成されている。そして、コントローラ27は、後述の如く力制御器30による電流指令値に応じたDUTY信号を緩衝器11のアクチュエータ12に出力することにより、緩衝器11は、車体2の左,右方向の振動を低減するものである。
【0050】
ここで、車体2に設けられた加速度センサ26からの信号が入力されるスカイフック制御部28は、加速度センサ26からの信号に従ってスカイフック理論による目標減衰力(スカイフック制御量)を求めるものである。換言すれば、スカイフック制御部28は、緩衝器11が発生すべき目標減衰力である、計算上の必要減衰力を算出し、該計算上の必要減衰力の値に応じた信号を後述の力制御器30に出力する。
【0051】
一方、緩衝器11の取付ピン18に取付けられた歪センサ22からの信号が入力される力換算部29は、歪センサ22からの信号に従って緩衝器11から車体2に作用する力を求めるものである。具体的には、力換算部29は、取付ピン18の歪と車体2に作用する力との相関関係を表すマップ、計算式等を用いて、歪センサ22からの信号(歪量)を、車体2に作用する力に換算し、該車体2に作用する力の値に応じた信号を、後述の力制御器30に出力する。
【0052】
力制御器30は、力換算部29で求められた車体2に作用する力、即ち、緩衝器11から取付ピン18を通じて車体2に作用する実際の減衰力を、フィードバックするためのものである。ここで、力制御器30は、力換算部29で求められた実際の減衰力とスカイフック制御部28で求められた計算上の必要減衰力との差を目標値に対する誤差として演算する差演算部31と、該差演算部31からの信号(目標値に対する誤差)に従ってPI制御(比例動作と積分動作とを組み合わせたフィードバック制御)による減衰力指令(電流指令値)を求めるPI制御器32とにより構成されている。そして、力制御器30は、制御上最適な減衰力指令を生成し、緩衝器11に設けられたアクチュエータ12に対する電流指令値を算出する。
【0053】
力制御器30のPI制御器32からの信号(減衰力指令)が入力される電流制御器33は、電流値取得部34からアクチュエータ12に流れる電流値情報によって電流制御系を構成すると共に、該アクチュエータ12に対して制御信号を出力する。より具体的には、電流制御器33は、例えばパルス波のDUTY比を変化させるPWM制御(パルス幅変調制御)を行うべく、力制御器30から出力される電流指令値に応じたDUTY信号をアクチュエータ12出力するものである。
【0054】
そして、緩衝器11は、電流制御器33からのDYTY信号(制御信号)に応じて、減衰力特性をハードな特性(硬特性)とソフトな特性(軟特性)との間で連続的、または複数段で可変に制御(調整)される。これにより、台車5に対する車体2の左,右方向の振動を低減することができる。
【0055】
ところで、緩衝器の制御性能を向上させるためには、緩衝器が発生する減衰力を測定し、その測定値をフィードバックできるように構成することが好ましい。この理由は、緩衝器の減衰力を測定可能な場合は、減衰力を直接制御可能な力制御系を構成でき、緩衝器の減衰力を測定せずに減衰力を制御する場合と比較して制御性能を高くできるためである。
【0056】
ここで、緩衝器の減衰力を測定するには、ロッドあるいはシリンダ本体の軸方向に圧縮状態で圧力センサ等の荷重センサを取付ける構成や、緩衝器の油圧を圧力センサで測定する構成、緩衝器のうち荷重が加わることによって変形する部位に歪センサを貼り付ける構成等が考えられる。
【0057】
一方、制御性能のさらなる向上を図るためには、緩衝器が発生する減衰力ではなく、緩衝器から車体に加わる力、即ち、緩衝器と車体との間に設けられるゴムブッシュの撓み等の影響も含んだ値となる、実際に緩衝器から車体に伝達される力を測定し、その測定値をフィードバックできるように構成することがより好ましい。この場合は、緩衝器の減衰力を測定する場合と比較して、制御性能をより高くすることができる。
【0058】
ここで、前述の特許文献2に開示された構成は、ゴムブッシュの変形量を検出し、該検出値から車輪に加わる荷重を求める構成となっている。しかし、荷重の検出精度、信頼性、耐久性、メンテナンス時の交換容易性等を十分に確保することができない虞がある。
【0059】
また、自動車用のサスペンション装置を構成する緩衝器は、車体側にゴムブッシュが取付けられる構成となっている。即ち、例えば自動車の場合は、緩衝器の取付ピンを、車体に対してゴムブッシュを介して取付ける構成となっている。このため、車体に加わる力を測定するためには、車体側にも手を加える必要がある。
【0060】
これに対し、鉄道用のサスペンション装置9を構成する緩衝器11は、車体2側にゴムブッシュが取付けられる構成ではなく、緩衝器11側の一部として、該緩衝器11の取付アイ16にゴムブッシュ17を設ける構成となっている。即ち、緩衝器11の取付ピン18は、車体2(中心ピン6)に対してゴムブッシュ等の弾性部材を介することなく直接取付ける構成となっている。このため、車体2側に手を加えなくても、緩衝器11側で車体2に加わる力を直接測定することができる。
【0061】
この場合、緩衝器11側の部材で、且つ、ゴムブッシュ17よりも車体2側の部材としては、取付ピン18が該当する。そこで、本実施の形態の場合は、取付ピン18の歪を、歪センサ22により測定することにより、該取付ピン18を介して緩衝器11から車体2に加わる力、即ち、ゴムブッシュ17の撓み等の影響も含まれた実際に緩衝器11から車体2に作用する減衰力を求める構成としている。
【0062】
これにより、本実施の形態の場合は、緩衝器11の被取付側へ伝達する力、即ち、緩衝器11から取付ピン18を介して車体2に作用する力(減衰力)を歪センサ22により精度よく求めることができる。しかも、歪センサ22により求められた車体2へ伝達する力は、緩衝器11が発生する減衰力のフィードバック制御に用いる構成としている。このため、緩衝器11による減衰性能(制振性能)を高めることができる。
【0063】
図9は、本実施の形態、即ち、歪センサ22の出力を用いて減衰力指令値を求めた場合の、該減衰力指令値と車体2に作用する実際の減衰力との時間変化の一例を示している。図10は、比較例として、歪センサ22の出力を用いずに減衰力指令値を求めた場合の、該減衰力指令値と車体2に作用する実際の減衰力との時間変化の一例を示している。
【0064】
これら図9および図10から明らかなように、歪センサ22の出力を緩衝器11が発生する減衰力のフィードバック制御に用いることにより、コントローラ27で算出される減衰力指令値と車体2に作用する実際の減衰力とをほぼ一致させることができる。これにより、緩衝器11による減衰性能(制振性能)を向上することができる。
【0065】
また、本実施の形態の場合は、歪センサ22を軸部材21の内側に取付けると共に、これら軸部材21と歪センサ22とにより構成される歪センサカセット20を、取付ピン18の内部に設置する構成となっている。このため、水滴、粉塵、飛び石等による歪センサ22の損傷を防止できる他、点検時等に実施されるハンマ等による打検等に対しても歪センサ22の損傷を防止することができる。これにより、歪センサ22の信頼性、耐久性を確保することができる。
【0066】
また、歪センサ22は、軸部材21に取付けることによりカートリッジ式の歪センサカセット20として取り扱うことができるため、取付ピン18に対する取付け取外しを容易に行うことができ、メンテナンス時の交換容易性を確保することもできる。
【0067】
また、歪センサ22は、歪センサカセット20を取付ピン18の挿入孔18F内に取付けた状態で、取付ピン18のうちで撓み量が最も大きくなる挿通孔18Fの軸方向中間部に位置する構成となっている。このため、取付ピン18の歪と相関関係を有する車体2に作用する力、即ち、取付ピン18を通じて緩衝器11から車体2に作用する実際の減衰力を精度よく求めることができ、検出精度、制御性能の向上を図ることができる。
【0068】
さらに、取付ピン18には、挿入孔18Fを形成する加工を施すだけで済むため、緩衝器11の製造作業が面倒になることも抑制することができ、製作性(製作容易性)を確保することもできる。
【0069】
また、歪センサカセット20は、取付ピン18をゴムブッシュ17に取り付けた後に該取付ピン18の挿入孔18F内に挿入することにより、該取付ピン18に容易に取付けることができる。このため、この面からも、製造作業が面倒になることを抑制することができる。
【0070】
次に、図11および図12は本発明の第2の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、取付ピンを被取付側に取付けるためのボルトを用いて歪センサカセットを取付ピンの挿入孔に固定する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0071】
緩衝器11のボトム側の取付アイ16の内側には、円環状のゴムブッシュ17を介して取付ピン18が取付けられている。そして、取付ピン18には、該取付ピン18の長さ方向全体にわたる挿入孔41が形成されている。即ち、上述した第1の実施の形態の場合は、取付ピン18の円筒部18Aの両側面の間を貫通するように挿入孔18Fが形成されていたのに対して、本実施の形態の場合は、取付ピン18の軸方向一端面と他端面との間を貫通するように挿入孔41が形成されている。
【0072】
そして、挿入孔41の軸方向寸法が第1の実施の形態の挿入孔18Fに比べて長くなったことに伴って、本実施の形態の歪センサカセット42の軸方向寸法、即ち、歪センサカセット42を構成する軸部材43の軸方向寸法も長くなっている。具体的には、軸部材43の軸方向寸法は、取付ピン18を車体2に設けられ中心ピン6に固定するためのボルト19の離間寸法と同じ長さに設定している。これにより、これら両ボルト19を用いて歪センサカセット42を、取付ピン18の挿入孔41に軸方向の位置決めがされた状態で固定することができる。
【0073】
かくして、このように構成される第2の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態によれば、取付ピン18を被取付側となる車体2(中心ピン6)に取付けるためのボルト19を用いて歪センサカセット42を取付ピン18の挿入孔41に固定する構成としているため、上述した第1の実施の形態で用いていたボルト24を省略することができ、部品点数の低減を図ることができる。
【0074】
次に、図13は本発明の第3の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、歪センサカセット51(を構成する軸部材52)を3箇所の面で図4に示す挿入孔18Fと接する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1,第2の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0075】
本実施の形態の歪センサカセット51は、上述した第1の実施の形態の歪センサカセット20に比べ、挿入孔18Fと軸部材52とが3箇所でのみ接触しているため、挿入孔18Fに歪センサカセット51を挿抜する際の抵抗を小さくすることができ、挿抜に関する作業性が大きく向上する。また,歪センサカセット51が挿抜時に変形するリスクを小さくできる。
【0076】
図14は本発明の第4の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、歪センサカセット61(を構成する軸部材62)を2箇所の面で図4の挿入孔18Fと接する構成としたことにある。この第4の実施の形態は、第3の実施の形態の変形例で、得られる効果は第3の実施の形態と同様である。
【0077】
次に、図15は本発明の第5の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、歪センサカセットを構成する軸部材に軸方向の外力を加えた状態で該歪センサカセットを挿入孔に配置する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0078】
本実施の形態の歪センサカセット71は、上述した第1の実施の形態の歪センサカセット20に比べて軸方向寸法を長くしている。即ち、歪センサカセット71を構成する軸部材72の軸方向長さ寸法を、上述した第1の実施の形態の歪センサカセット20を構成する軸部材21の軸方向長さ寸法よりも長くしている。
【0079】
これにより、歪センサカセット71を取付ピン18の挿入孔18Fに挿入すると共に、挿入孔18Fの両端側にそれぞれボルト24を螺合した状態で、歪センサカセット71の軸部材72に両ボルト24から軸方向の外力(圧縮力)が加わる構成となっている。
【0080】
換言すれば、軸部材72は、各ボルト24によって該軸部材72に軸方向の外力を加えた状態で、取付ピン18の挿入孔18Fに配置される構成となっている。そして、この状態で、軸部材72は、各ボルト24から加わる外力により若干湾曲変形した状態で挿入孔18Fに固定される構成となっている。
【0081】
かくして、このように構成される第5の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態によれば、歪センサカセット71の軸部材72は、ボルト24によって該軸部材72に軸方向の外力を加えた状態で、取付ピン18の挿入孔18Fに配置される構成となっている。このため、取付ピン18の歪をヒステリシス分が少なくなるように歪センサ22で検出することができる。
【0082】
換言すれば、本実施の形態の場合は、軸部材72にボルト24によって軸方向の初期荷重を付与することができ、歪センサ22により検出される歪の初期値の設定にばらつきをなくすことができる。即ち、例えばボルト24の締め付けトルクを規制(管理)する等によって、軸部材72に所定の初期荷重を常に付与することができ、歪センサ22により検出される歪の初期値を一定の値に設定することができる。これにより、歪センサカセット71の取付作業を行う作業者によって、歪センサ22により検出される歪の初期値がばらつくことを抑制することができ、検出精度の向上や検出値の信頼性を確保することができる。
【0083】
次に、図16および図17は本発明の第6の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、歪センサカセット81を構成する軸部材82に軸方向の外力を加えた状態で該歪センサカセット81を挿入孔18Fに配置する構成としたこと、および歪センサカセット81に軸方向の外力(圧縮力)Fが作用すると、歪センサカセット81が部分的に径方向に寸法が増大するよう変形することにある。なお、本実施の形態では、上述した第1ないし第5の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0084】
本実施の形態の歪センサカセット81を構成する軸部材82は、その軸方向の3箇所位置に厚みが他の部分よりも薄くなった薄肉部分を形成している。このため、歪センサカセット81を挿入孔18Fに挿入し、この挿入孔18Fの両端側にそれぞれボルト24(図15参照)を螺合することにより、歪センサカセット81の軸部材82に両ボルト24から軸方向の外力(圧縮力)Fが加わると、図16に矢印Kで示すように、歪センサカセット81(軸部材82)の薄肉部分が径方向に寸法が増大する。この結果、本実施の形態では、上述した第3の実施の形態のように、3箇所の面で図4の挿入孔18Fと接する構成としたことと同様の効果を得ることができる。
【0085】
次に、図18は本発明の第7の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、歪センサカセット91(を構成する軸部材92)を3箇所の面で止めねじ(セットスクリュー)93で固定することにより、図4の挿入孔18Fと接する構成としたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1,第2の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。この第7の実施の形態は、第3の実施の形態の変形例で,得られる効果は第3の実施の形態と同様である。
【0086】
次に、図19は本発明の第8の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、図4に示す挿入孔18Fを屈曲させて構成し、ひいては歪センサカセット101を屈曲させて挿入孔18F内に設置することにある。
【0087】
ここでは、歪センサカセット101(を構成する軸部材102)には両ボルト24によって軸方向の外力(圧縮力)は加えない構成となっている。本実施の形態では、上述の第5の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0088】
次に、図20は本発明の第9の実施の形態を示している。本実施の形態の特徴は、歪センサを取付ピンの軸方向に離間して2つ設ける構成としたことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0089】
歪センサカセット111は、円管状に形成され挿入孔18F内に圧入される軸部材112と、該軸部材112の内側で該軸部材112の軸方向に離間して取付けられた2つ(一対)の歪センサ22と、該各歪センサ22とコントローラ27とを接続するセンサ線23とにより大略構成されている。そして、取付ピン18の軸方向に離間して設けられた2つの歪センサ22の出力から、車体2へ伝達する力、即ち、取付ピン18を通じて緩衝器11から車体2に作用する減衰力を求める構成となっている。
【0090】
かくして、このように構成される第9の実施の形態においても、前述した第1の実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態によれば、緩衝器11から取付ピン18にこじり力が作用しても、このこじり力をキャンセルしてシリンダ本体11Aの軸方向のみの力を求めることができる。即ち、こじり力は、取付ピン18の軸方向中心を挟んで軸方向一端側と他端側とでその応力の方向が反転する。このため、取付ピン18の軸方向に離間して設けられた2つの歪センサ22の出力の平均値を取ることにより、こじり力がキャンセルされたシリンダ本体11Aの軸方向のみの力を求めることができる。これにより、検出精度の向上や検出値の信頼性を確保することができる。
【0091】
なお、上述した第9の実施の形態では、取付ピン18の軸方向に離間して2つの歪センサ22を設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、取付ピン18の軸方向に離間して3つ以上の歪センサ22を設ける構成としてもよい。
【0092】
上述した各実施の形態では、緩衝器11のボトム側を車体2に取付けるための取付ピン18に歪センサ22を設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、緩衝器(シリンダ装置)のロッド側を車体や台車に取付けるための取付ピンに歪センサを設ける構成としてもよい。
【0093】
ただし、緩衝器11のボトム側の取付ピン18に歪センサ22を設ける構成とした場合には、センサ線23をアクチュエータ12に向けて配設することにより、該アクチュエー12とコントローラ27とを接続するケーブル25と束ねてコントローラ27側に引出すことができる。この為、この面からは、緩衝器11のボトム側の取付ピン18に歪センサ22を設けることが好ましい。
【0094】
一方、緩衝器(シリンダ装置)のロッド側の取付ピンに歪センサを設ける構成とした場合は、ロッド側の歪センサから、無線等により非接触でシリンダ本体側のセンサ線にセンサ信号を伝達する構成とすることができる。そして、シリンダ本体側のセンサ線は、該シリンダ本体側からアクチュエーとコントローラとを接続するケーブルと束ねてコントローラ側に引出すことができる。
【0095】
上述した各実施の形態では、車体2側に取付けられる取付ピン18に歪センサ22を設ける構成とした場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、台車側に取付けられる取付ピンに歪センサを設ける構成としてもよい。この場合には、歪センサにより緩衝器(シリンダ装置)から台車に加わる力を求めることができる。
【0096】
上述した各実施の形態では、緩衝器11により車体2の左,右方向の振動を低減するように構成した場合を例に挙げて説明した。しかし、これに限らず、例えば、緩衝器により車体の上,下方向の振動を低減するように構成してもよい。
【0097】
以上の実施の形態によれば、歪センサにより取付ピンの歪を測定することにより、該取付ピンを介してシリンダ装置から被取付側へ伝達する力を求める構成としている。このため、歪センサにより、シリンダ装置から被取付側へ伝達する力を精度よく求めることができる。
【0098】
しかも、歪センサにより求められた被取付側へ伝達する力は、シリンダ装置が発生する力(減衰力)の制御(フィードバック制御)に用いる構成としている。このため、シリンダ装置が発生する力の制御性能、例えば、減衰性能、制振性能等を高めることもできる。
【0099】
実施の形態によれば、歪センサを少なくとも取付ピンの軸方向に離間して2つ設ける構成としているので、シリンダ装置と被取付側との間でこじり力が作用しても、このこじり力をキャンセルしてシリンダ本体の軸方向のみの力を求めることができる。これにより、検出精度のさらなる向上や検出値のさらなる信頼性の確保を図ることができる。
【0100】
実施の形態によれば、取付ピンに軸方向に延びる挿入孔を形成し、該挿入孔に歪センサを取付た軸部材を挿入する構成としているので、歪センサを軸部材と共に一まとめに取扱うことができる。このため、取付ピンに対する歪センサの取付け取外しを容易に行うことができ、メンテナンス時の交換容易性を確保することができる。また、水滴、粉塵、飛び石等による歪センサの損傷を防止できる他、点検時等に実施されるハンマ等による打検等に対しても歪センサの損傷を防止することができる。これにより、歪センサの信頼性、耐久性を確保することができる。
【0101】
実施の形態によれば、軸部材を軸方向に外力を加えた状態で挿入孔に配置する構成としているので、軸部材に初期荷重を付与することができ、歪センサにより検出される歪の初期値の設定にばらつきをなくすことができる。即ち、外力の大きさを管理する等によって、軸部材に所定の初期荷重を常に付与することができ、歪センサにより検出される歪の初期値を一定の値に設定することができる。これにより、軸部材の取付作業を行う作業者によって、歪センサにより検出される歪の初期値がばらつくことを抑制することができ、検出精度の向上や検出値の信頼性を確保することができる。
【符号の説明】
【0102】
1 鉄道車両
2 車体(被取付側)
3 車輪
4 レール
5 台車
9 サスペンション装置
10 空気ばね
11 緩衝器(シリンダ装置)
11A シリンダ本体
11B ロッド
12 アクチュエータ
16 取付アイ
18 取付ピン
18F,41 挿入孔
20,42,51,61,71,81,91,101,111 歪センサカセット
21,43,52,62,72,82,92,102,112 軸部材
22 歪センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ本体と、該シリンダ本体の一端から突出するロッドとを有し、発生する力が調整可能なシリンダ装置において、
前記シリンダ本体の他端またはロッドの突出端の少なくとも一方に設けられた取付アイと、
該取付アイに貫通する取付ピンと、
該取付ピンの歪を測定する歪センサと、からなり、
該歪センサの出力から被取付側へ伝達する力を求め、前記発生する力を制御することを特徴とするシリンダ装置。
【請求項2】
前記歪センサは、少なくとも前記取付ピンの軸方向に離間して2つ設け、前記2つの歪センサの出力から前記シリンダ本体の軸方向のみの被取付側へ伝達する力を求めることを特徴とする請求項1に記載のシリンダ装置。
【請求項3】
前記取付ピンに軸方向に延びる挿入孔を形成し、該挿入孔に前記歪センサを取付た軸部材を挿入したことを特徴とする請求項1または2に記載のシリンダ装置。
【請求項4】
前記軸部材は、該軸部材に軸方向に外力を加えた状態で、前記挿入孔に配置したことを特徴とする請求項3に記載のシリンダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−40640(P2013−40640A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177016(P2011−177016)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】