説明

シロ−イノシトールの製造方法

NAD+非存在下でミオ−イノシトールをシロ−イノソースに変換する新規なNAD+非依存型ミオ−イノシトール2−デヒドロゲナーゼ、NADHまたはNADPH存在下でシロ−イノソースを立体特異的にシロ−イノシトールへ還元する新規酵素シロ−イノシトールデヒドロゲナーゼ、及びミオ−イノシトールをシロ−イノシトールに変換する能力を有するアセトバクター属またはバークホルデリア属に属する新規な微生物を提供する。これらの酵素又は微生物を用いてシロ−イノシトールを製造する。また、シロ−イノシトール及びシロ−イノシトール以外の中性糖を含有する混合液にホウ酸及び金属塩を加えてシロ−イノシトール・ホウ酸複合体を形成させ、前記複合体を混合液から分離し、分離した複合体を酸に溶解して酸性溶液又は酸性懸濁液を調製し、該酸性溶液又は酸性懸濁液からシロ−イノシトールを精製する。


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【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセトバクター属またはバークホルデリア属に属する微生物であって、ミオ−イノシトールをシロ−イノシトールに変換する能力を有する微生物を、ミオ−イノシトールを含む溶液中でミオ−イノシトールに作用させることにより、シロ−イノシトールを前記溶液中に生成蓄積させ、該溶液中からシロ−イノシトールを採取することを特徴とする、シロ−イノシトールの製造方法。
【請求項2】
前記ミオ−イノシトールを含む溶液がミオ−イノシトールを含有する液体培地であり、前記微生物を、該液体培地中で培養することによりミオ−イノシトールに作用させることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
培養により得られた前記微生物の菌体を、前記溶液中でミオ−イノシトールに作用させることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記微生物が、アセトバクター・セルビシエ、アセトバクター・マローラム、またはバークホルデリア・アンドロポゴニスに属する微生物である請求項1〜3のいずれかの項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記微生物が、アセトバクター・エスピーAB10281株(FERM BP-10119)またはその変異株である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
ミオ−イノシトールをシロ−イノシトールに変換する能力を有する、アセトバクター・エスピーAB10281株(FERM BP-10119)またはその変異株。
【請求項7】
少なくとも以下の理化学的性質を有するNAD+非依存型ミオ−イノシトール2−デヒドロゲナーゼ
(a)作用:電子受容物質の存在下で、ミオ−イノシトールから電子を奪いシロ−イノソースを生成する反応を触媒する、
(b)至適pH:pH4.5〜5.5において活性が極大値を示す、
(c)補因子:1モルの酵素に1モルのヘム鉄を含有する、
(d)阻害剤:1mMのSn2+イオンにより酵素活性が1%以下に阻害される、
(e)サブユニット構造:少なくとも分子量76kダルトンと46kダルトンのタンパク質を含有するヘテロマーである、
(f)基質特異性:D−キロ−イノシトール、ムコ−イノシトール、ミオ−イノシトールに反応し、D−キロ−1−イノソース、L−キロ−2−イノソース、シロ−イノソースへ、それぞれ、変換する。アロ−イノシトール、シロ−イノシトール、L−キロ−イノシトール、グルコースには反応しない。
【請求項8】
NAD+非依存型ミオ−イノシトール2−デヒドロゲナーゼ生産能を有するアセトバクター属に属する微生物を培養し、培養された微生物の菌体から、NAD+非依存型ミオ−イノシトール2−デヒドロゲナーゼを分離精製することを特徴とする、NAD+非依存型ミオ−イノシトール2−デヒドロゲナーゼの製造方法。
【請求項9】
前記微生物がアセトバクター・エスピーAB10253株 (FERM BP-10136)である、請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
ミオ−イノシトール及び電子受容体を含有する溶液中で、NAD+非依存型ミオ−イノシトール2−デヒドロゲナーゼをミオ−イノシトールに作用させてシロ−イノソースを生成せしめ、生成したシロ−イノソースを溶液中から分離精製することを特徴とする、シロ−イノソースの製造方法。
【請求項11】
ミオ−イノシトール及び電子受容体を含有する溶液中で、NAD+非依存型ミオ−イノシトール2−デヒドロゲナーゼをミオ−イノシトールに作用させてシロ−イノソースを生成させる工程、前記シロ−イノソースに還元剤を作用させてシロ−イノシトールを生成させる工程、及び前記シロ−イノシトールを分離精製する工程を含む、シロ−イノシトールの製造方法。
【請求項12】
アセトバクター・エスピーのAB10253株を変異処理し、得られた変異株から、NAD+非依存型ミオ−イノシトール2−デヒドロゲナーゼ活性を指標にして選別することを特徴とする、シロ−イノソース製造用微生物のスクリーニング方法。
【請求項13】
微生物を含む天然試料の中から微生物を単離し、単離された微生物から、NAD+非依存型ミオ−イノシトール2−デヒドロゲナーゼ活性を指標にして選別することを特徴とする、シロ−イノソース製造用微生物のスクリーニング方法。
【請求項14】
請求項12又は13に記載のスクリーニング方法によって得られたシロ−イノソース製造用微生物を、ミオ−イノシトールを含有する培地で培養することにより、ミオ−イノシトールからシロ−イノソースを生成せしめ、生成したシロ−イノソースを培地から分離精製することを特徴とする、シロ−イノソースの製造方法。
【請求項15】
請求項12又は13に記載のスクリーニング方法によって得られたシロ−イノソース製造用微生物を、ミオ−イノシトールを含有する培地で培養することにより、ミオ−イノシトールからシロ−イノソースを生成させる工程、前記シロ−イノソースに還元剤を作用させてシロ−イノシトールを生成させる工程、及び前記シロ−イノシトールを分離精製する工程を含む、シロ−イノシトールの製造方法。
【請求項16】
下記の理化学的性質を有するシロ−イノシトールデヒドロゲナーゼ。
反応:下記反応式に示すように、シロ−イノシトールとシロ−イノソース間の酸化還元反応を触媒し、NADHまたはNADPH存在下で、シロ−イノソースを立体特異的にシロ−イノシトールへ還元する。
【化1】

【請求項17】
さらに、下記の理化学的性質を有する、請求項16に記載のシロ−イノシトールデヒドロゲナーゼ。
(1)分子量および会合特性 : 38〜46kダルトン、2または3量体を形成する。
(2)補酵素 : NAD+若しくはNADP+又はNADH若しくはNADPHを補酵素とする。
(3)活性化重金属 : Co2+イオンの存在下で活性化される。
(4)阻害重金属 : Sn2+イオンの存在下で阻害される。
(5)至適pH : pH5〜9で活性を有する。
【請求項18】
以下の(A)または(B)のタンパク質。
(A)配列番号28に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)配列番号28に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、シロ−イノシトールとシロ−イノソース間の酸化還元反応を触媒し、NADHまたはNADPH存在下で、シロ−イノソースを立体特異的にシロ−イノシトールへ還元する酵素活性を有するタンパク質。
【請求項19】
以下の(A)または(B)のタンパク質をコードするDNA。
(A)配列番号28に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)配列番号28に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、シロ−イノシトールとシロ−イノソース間の酸化還元反応を触媒し、NADHまたはNADPH存在下で、シロ−イノソースを立体特異的にシロ−イノシトールへ還元する酵素活性を有するタンパク質。
【請求項20】
以下の(a)または(b)のDNA。
(a)配列番号27に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
(b)配列番号27に記載の塩基配列もしくは同塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNAとストリジェントな条件下でハイブリダイズし、シロ−イノシトールとシロ−イノソース間の酸化還元反応を触媒し、NADHまたはNADPH存在下で、シロ−イノソースを立体特異的にシロ−イノシトールへ還元する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項21】
請求項19または20に記載のDNAを含むベクター。
【請求項22】
請求項19または20に記載のDNA、または請求項21に記載のベクターを保持する形質転換微生物。
【請求項23】
形質転換する宿主が大腸菌である請求項22に記載の形質転換微生物。
【請求項24】
請求項22または23に記載の形質転換微生物を培養し、培養物からシロ−イノシトールデヒドロゲナーゼを採取することを特徴とする、シロ−イノシトールデヒドロゲナーゼの製造方法。
【請求項25】
請求項16に記載のシロ−イノシトールデヒドロゲナーゼと、NAD+またはNADP+存在下でミオ−イノシトールを酸化しシロ−イノソースを生成する反応を触媒するミオ−イノシトール2−デヒドロゲナーゼ(EC1.1.1.18)とを共存させた溶液中、pH6.0〜8.5で、かつNAD+ またはNADP+存在下で、ミオーイノシトールを基質として、シロ−イノシトールへ酵素変換反応させることを特徴とする、シローイノシトールの製造方法。
【請求項26】
溶液中に、シロ−イノソースを0.01〜3%になるように添加することを特徴とする、請求項25に記載のシローイノシトールの製造方法。
【請求項27】
溶液中に、シロ−イノソースを0.2〜0.5%になるように添加することを特徴とする、請求項25に記載のシローイノシトールの製造方法。
【請求項28】
溶液中に、Co塩および/または、Mg塩を0.01〜5.0mMになるように添加することを特徴とする、請求項25に記載のシローイノシトールの製造方法。
【請求項29】
溶液中に、Co塩および/または、Mg塩を0.2〜2.0mMになるように添加することを特徴とする、請求項25に記載のシローイノシトールの製造方法。
【請求項30】
溶液中のミオ−イノシトール濃度が5〜22%になるように調製し、酵素反応で生成したシロ−イノシトールを反応溶液中で結晶化させ、シロ−イノシトールを系外に結晶として、ろ別することを特徴とする、請求項25に記載のシローイノシトールの製造方法。
【請求項31】
シロイノシトールデヒドロゲナーゼが以下の(A)または(B)のタンパク質である請求項25に記載の製造方法。
(A)配列番号28に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(B)配列番号28に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、シロ−イノシトールとシロ−イノソース間の酸化還元反応を触媒し、NADHまたはNADPH依存下で、シロ−イノソースを立体特異的にシロ−イノシトールへ還元する酵素活性を有するタンパク質。
【請求項32】
シロイノシトールデヒドロゲナーゼが以下の(a)または(b)のDNAによってコードされるタンパク質である請求項25に記載の製造方法。
(a)配列番号27に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
(b)配列番号27に記載の塩基配列もしくは同塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNAとストリジェントな条件下でハイブリダイズし、シロ−イノシトールとシロ−イノソース間の酸化還元反応を触媒し、NADHまたはNADPH依存下で、シロ−イノソースを立体特異的にシロ−イノシトールへ還元する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項33】
シロイノシトールデヒドロゲナーゼが以下の(C)または(D)のタンパク質である請求項25に記載の製造方法。
(C)配列番号2、4、6、8、10、12または14に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
(D)配列番号2、4、6、8、10、12または14に記載のアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有し、シロ−イノシトールとシロ−イノソース間の酸化還元反応を触媒し、NADHまたはNADPH存在下で、シロ−イノソースを立体特異的にシロ−イノシトールへ還元する酵素活性を有するタンパク質。
【請求項34】
シロイノシトールデヒドロゲナーゼが以下の(c)または(d)のDNAによってコードされるタンパク質である請求項25に記載の製造方法。
(c)配列番号1、3、5、7、9、11または13に記載の塩基配列のコード領域を含むDNA。
(d)配列番号1、3、5、7、9、11または13に記載の塩基配列もしくは同塩基配列に相補的な塩基配列を有するDNAとストリジェントな条件下でハイブリダイズし、シロ−イノシトールとシロ−イノソース間の酸化還元反応を触媒し、NADHまたはNADPH存在下で、シロ−イノソースを立体特異的にシロ−イノシトールへ還元する酵素活性を有するタンパク質をコードするDNA。
【請求項35】
シロ−イノシトール及びシロ−イノシトール以外の中性糖を含有する混合液に、該混合液中に溶解したシロ−イノシトールの2倍モル以上の量のホウ酸及び金属塩を加え、かつ該混合液のpHを8.0〜11.0に調整してシロ−イノシトール・ホウ酸複合体を形成させる第1の工程、前記複合体を混合液から分離する第2の工程、分離した複合体を酸に溶解させてシロ−イノシトールとホウ酸に開裂させる第3の工程、第3の工程で得られた酸性溶液又は酸性懸濁液からシロ−イノシトールを単離精製する第4の工程を含む、シロ−イノシトールの製造方法。
【請求項36】
前記第1の工程において、加えるホウ酸及び金属塩の量が、前記混合液中に溶解したシロ−イノシトールの2倍モル以上、かつ3倍モル以下であることを特徴とする、請求項35に記載の製造方法。
【請求項37】
前記第1の工程において、前記混合液のpHを9.0〜10.0に調整することを特徴とする、請求項35に記載の製造方法。
【請求項38】
前記金属塩が、NaCl、NaHCO3、Na2CO3、Na2SO4、NaHSO4、NaH2PO4、Na2HPO4、Na3PO4、硼砂、KCl、KHCO3、K2CO3、K2SO4、KHSO4、KH2PO4、K2HPO4、K3PO4、MgCl2、MgCO3、およびMgSO4からなる群より選ばれる1種または2種類以上の金属塩である、請求項35に記載の製造方法。
【請求項39】
前記シロ−イノシトール及びシロ−イノシトール以外の中性糖を含有する混合液が、シロ−イノソースを含有する溶液中でシロ−イノソースを還元することにより得られるミオ−イノシトール及びシロ−イノシトールを含有する混合液である、請求項35に記載の製造方法。
【請求項40】
前記第3の工程において、前記複合体を酸に溶解させて得られた溶液を0.1規定以上の酸性に調整し、かつ、前記第4の工程において、前記酸性溶液を強酸性イオン交換樹脂、及び強塩基性イオン交換樹脂又はホウ酸選択的吸着樹脂に接触させた後、該酸性溶液からシロ−イノシトールを析出させることを特徴とする、請求項35に記載の製造方法。
【請求項41】
前記第4の工程において、前記酸性溶液又は酸性懸濁液に水溶性有機溶媒を加えてシロ−イノシトールを析出させることを特徴とする、請求項35に記載の製造方法。
【請求項42】
前記水溶性有機溶媒がエタノール又はメタノールであり、前記酸性溶液又は酸性懸濁液に対して、エタノールを0.3〜3倍容、又はメタノールを0.3〜5倍容加えることを特徴とする、請求項41に記載の製造方法。
【請求項43】
前記水溶性有機溶媒がエタノール又はメタノールであり、前記酸性溶液又は酸性懸濁液に対して、エタノールを0.6〜1.5倍容、またはメタノールを0.9容〜2倍容加えることを特徴とする、請求項41に記載の製造方法。
【請求項44】
シロ−イノソースを含有する溶液中において、シロ−イノソースを水素化ホウ素金属塩を用いて還元し、ミオ−イノシトール及びシロ−イノシトールを含有する混合液を得る第1の工程、前記混合液に酸を加えて混合液中のシロ−イノシトール・ホウ酸複合体を溶解させ、かつ溶液を0.01規定以上の酸性溶液に調整する第2の工程、及び前記酸性溶液に、水溶性有機溶媒をミオ−イノシトールが析出しない量で加えて、シロ−イノシトールのみを析出させる第3の工程を含む、シロ−イノシトールの製造方法。
【請求項45】
前記第3の工程において、加える水溶性有機溶媒がエタノール、メタノール又は1−プロパノールであり、前記酸性溶液に対して、エタノールを0.2〜0.4倍容、メタノールを0.2〜0.8倍容、又は1−プロパノールを0.2〜0.4倍容加えることを特徴とする、請求項44に記載の製造方法。
【請求項46】
前記第3の工程において、加える水溶性有機溶媒がエタノール、メタノール又は1−プロパノールであり、前記酸性溶液に対して、エタノールを0.35〜0.45倍容、メタノールを0.45〜0.55倍容、又は1−プロパノールを0.35〜0.45倍容加えることを特徴とする、請求項44に記載の製造方法。

【図1】
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【国際公開番号】WO2005/035774
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【発行日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514651(P2005−514651)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015174
【国際出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000242002)北興化学工業株式会社 (182)
【Fターム(参考)】