説明

シングルレバー水栓

【課題】固定ナットのねじ込みによる押込力を弁ケースの中央側に効果的に作用させ得、シール部材を効果的に圧縮変形させ得て、そのシール機能を十分に発揮させることができ、シールの信頼性の高いシングルレバー水栓を提供する。
【解決手段】固定弁体58と、可動弁体60及び弁ケース65を備えた弁ユニット46と、筒状の回転体94とを有するシングルレバー水栓において、弁ユニット46を固定する固定ナット56には、弁ケース65の立上り壁118の上端面を押込方向に押圧する第1押圧部124を設けておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はシングルレバー水栓に関し、特に弁ユニットの弁ケースを固定ナットのねじ込みにより押込状態に固定する形式のシングルレバー水栓に関する。
【背景技術】
【0002】
単一のレバーハンドルの操作によって吐止水及び吐水の水量調節を行い、また吐水の温度調節を行うシングルレバー水栓として、弁ユニットの弁ケースを固定ナットのねじ込みにより押圧し、弁ユニットをその保持体としての本体ボデーに押込状態に固定する形式のものが従来公知である。
例えば下記特許文献1に、この種のシングルレバー水栓が開示されている。
【0003】
図9はその具体例を示している。
図において200は弁ユニット(弁カートリッジ)で、固定弁体202と、固定弁体202上を摺動運動する可動弁体204とを有しており、それらが弁ケース206内部に収容されている。
ここで可動弁体204は、固定弁体202に接する摺動体207と、後述するレバーハンドルの操作によって駆動される被駆動部208とから成っている。
210は本体ボデーとしてのハウジングで、円筒状をなす周壁212及び底部214を有している。
【0004】
216は、弁ケース206内部に回転可能に組み込まれた円筒状の回転体で、218は回転体216に対し支持ピン220を介し結合され、レバーハンドルと一体に支持ピン220周りに回転運動し、また回転体216の軸心周りに回転体216とともに回転運動し、レバーハンドルの操作を上記可動弁体204に伝えて、可動弁体204を対応する方向に摺動運動させる駆動アームである。
ここで支持ピン220は紙面と直角方向に配向されており、その軸端部が回転体216に設けられた径方向に貫通の保持孔内に嵌入されて、そこに保持されている。
【0005】
上記弁ケース206は、上側のケース本体230と下側の底蓋232との分割構造とされていて、それらが互いに組み合わされている。
【0006】
ケース本体230は、支持ピン220に対して径方向に対向し、回転体216の外周面に相対回転可能に嵌合した状態で立ち上がる円筒状の立上り壁222と、立上り壁222に続いて径方向外方に環状に張り出した肩部224と、肩部224の外周端から立ち下がる周壁226とを有する形状をなしている。
肩部224は図中上面が水平な面、詳しくはハウジング210の軸心と直角方向の面をなしており、また立上り部222は、この肩部224の上面から垂直に立ち上がっている。
ここで立上り壁222は、支持ピン220の抜けを防止する抜け防止壁としての働きをなしている。
【0007】
228は固定ナットで、この固定ナット228のハウジング210へのねじ込みにより弁ケース206、詳しくは上側のケース本体230が下向きに押圧され、以て弁ユニット200がハウジング210内部に押込状態に固定される。
【0008】
弁ユニット200には、ハウジング210における底部214と底蓋232との間を水密にシールするリング状の弾性を有するシール部材234,底蓋232と固定弁体202との間を水密にシールするリング状の弾性を有するシール部材236及び238、可動弁体204における摺動体207と被駆動部208との間を水密にシールするリング状の弾性を有するシール部材240がそれぞれ設けられており、上記固定ナット228のねじ込みにより弁ユニット200に加えられる下向きの押込力で、それらシール部材234,236及び238がそれぞれ押込方向に弾性的に圧縮されるようになっている。
各シール部材234,236及び238はその圧縮力に基づいてシールを行う。
即ち図9に示すシングルレバー水栓において、各シール部材234,236及び238によるシールは、固定ナット228のねじ込みによる押込みによって確保される。
【0009】
ところでこの図9に示すシングルレバー水栓の場合、固定ナット228が弁ケース206におけるケース本体230の肩部224を、つまりケース本体226の外周側の部分を下向きに押圧する。
【0010】
ところがその外周側の部分の下側には、可動弁体204の移動空間のための空洞部Sが生じており、そのため固定ナット228にてケース本体226を下向きに押圧したときに肩部224が撓みを生じ、そのため固定ナット228による締付力が、弁ケース206の径方向の中央側に位置しているシール部材234,236及び238に効果的に加わらず、これにより各シール部材234,236及び238の圧縮変形が十分でなく、それらによるシールを十分に発揮させることが難しい問題のあることが判明した。
【0011】
尚図9の例は、弁ケース206が上側のケース本体230と下側の底蓋232との分割構造とされ、固定ナット228のねじ込みによりケース本体230が底蓋232に対し相対的に図中下向きに移動することによって、シール部材236,238を圧縮する場合の例であるが、ケース本体230と底蓋232とが一体構造をなしている場合においてもシール部材234を十分に圧縮させられない問題があり、この場合においてもシール部材234によるシールが十分でないといった問題が生ずる。
【0012】
尚本発明に対する先行技術として、下記特許文献2にはシングルレバー式水栓についての発明が示され、そこにおいてカートリッジケース(弁ケース)を本体部(本体ボデー)へのねじ込みにより押圧するカバーナット(固定ナット)とカートリッジケースとにまたがって回止めリングを介挿し、カバーナットとカートリッジケースとを回止めリングを介し一体回転させるようになした点が、また回止めリング13がカートリッジケースの上面に接している点が図中開示されているが、この回止めリングはカートリッジケースを下向きに押圧するものではなく、本発明とは異なっている。
【0013】
また下記特許文献3には、シングルレバー式混合水栓についての発明が示され、そこにおいてカートリッジケース(弁ケース)の上部にストッパ用のリングが嵌着され、そのリングがカートリッジケースの上面に接している点が開示されている。
但しこのものも固定ナットのねじ込みによってカートリッジケースの上面を押圧するものではなく、本発明とは別異のものである。
【0014】
【特許文献1】特開2003−28320号公報
【特許文献2】特開平9−242924号公報
【特許文献2】特開平11−22837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は以上のような事情を背景とし、固定ナットのねじ込みによる押込力を弁ケースの中央側に効果的に作用させ得、これによりシール部材を効果的に圧縮変形させ得て、かかるシール部材によるシール機能を十分に発揮させることができ、シールの信頼性の高いシングルレバー水栓を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
而して請求項1のものは、(イ)固定弁体と、該固定弁体上を摺動運動する可動弁体及びそれら固定弁体及び可動弁体を内部に収容する弁ケースを備えた弁ユニットと、(ロ)該弁ケースの内部に回転可能に設けられた筒状の回転体と、(ハ)該回転体に対して支持ピンを介して結合され、レバーハンドルと一体に該支持ピン周りに回転運動し、また該回転体とともに該回転体の軸心周りに回転運動し、該レバーハンドルの操作を前記可動弁体に伝えて、該可動弁体を対応する方向に摺動運動させる駆動アームと、を有し、前記弁ユニットは、前記弁ケースの上部且つ前記支持ピンに対して径方向に対向する部分が、前記回転体の外周面に相対回転可能に嵌合する状態で立ち上がる筒状の立上り壁とされているとともに、該弁ユニットを保持する本体ボデーへの固定ナットのねじ込みにより該弁ケースが押圧され、弾性を有するシール部材を該固定ナットのねじ込みによる押込方向に圧縮変形させるものとなしてあるシングルレバー水栓において、前記固定ナットには、前記弁ケースの前記立上り壁の上端面を前記押込方向に押圧する第1押圧部が設けてあることを特徴とする。
【0017】
請求項2のものは、請求項1において、前記弁ケースは、前記筒状の立上り壁に続く下側部分に、該立上り壁から径方向外方に環状に張り出した肩部と、該肩部の外周端から下向きに立下がる周壁とを有する形状となしてあり、前記固定ナットには、該肩部を前記押込方向に押圧する第2押圧部が更に設けてあることを特徴とする。
【0018】
請求項3のものは、請求項1,2の何れかにおいて、前記弁ユニットは、前記弁ケースが上側のケース本体と下側の底蓋との分割構造とされており、前記固定ナットのねじ込みにより該ケース本体が該底蓋に対して相対的に押込移動されることで、少なくとも一部の前記シール部材を圧縮させるものであることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0019】
以上のように本発明は、弁ユニットを保持する本体ボデーにねじ込まれ、弁ユニットを本体ボデーに押込状態に固定する固定ナットに、弁ケースの上記の立上り壁の上端面を押込方向に押圧する第1押圧部を設けたもので、本発明によれば、固定ナットのねじ込みによる押込力を、弁ケースに対し従来よりも弁ケースの中央側の部位で加えることが可能となる。
これにより弾性を有するシール部材に対して、固定ナットのねじ込みによる押込力を効果的に及ぼし得て、シール部材を十分に押込方向に圧縮することが可能となる。
そしてそのことにより、シール部材のシール機能を従来に増して十分に発揮させることが可能となり、シールの信頼性を高めることができる。
【0020】
請求項2は、上記弁ケースを、筒状の立上り壁に続く下側部分に立上り壁から径方向外方に環状に張り出した肩部と、その肩部の外周端から立ち下がる周壁とを有する形状となし、そして上記の固定ナットに、その肩部を押込方向に押圧する第2押圧部を更に設けたもので、この請求項2によれば、固定ナットに設けた第1押圧部にて立上り壁の上端面に対し、固定ナットのねじ込みによる押込力を加えることができるのみならず、径方向外方に張り出した肩部に対しても、固定ナットの第2押圧部による押込力を加えることができる。
【0021】
これにより、固定ナットによる押込力を弁ケースを介してシール部材に対し一層効果的に及ぼすことができ、シール性能をより一層高めることができる。
【0022】
尚、部品製造の際の寸法のばらつきや組付けのばらつき等によって、固定ナットの第1押圧部と第2押圧部とを、立上り壁の上端面と肩部とに同時に当接させることが難しい場合も生ずる。
この場合において、先ず第2押圧部が肩部に当接し、そして第2押圧部による押圧によりその肩部が微小量撓み変形した時点で、第1押圧部が立上り壁の上端面に当接してこれを押圧するように、それら第1押圧部,第2押圧部の位置ないし形状を設定しておくことができる。
このようにしておけば、第1押圧部,第2押圧部のそれぞれを確実に立上り壁の上端面と肩部とに当接させ、固定ナットの押込力をそれらに及ぼすことができる。
【0023】
本発明では、弁ユニットにおける弁ケースが上側のケース本体と下側の底蓋とが一体構造のものに対して適用することも可能であり、この場合においても弁ケースと本体ボデーとの接触部分をシールするシール部材を固定ナットによる押込みで十分に圧縮変形させ得る効果が得られるが、本発明は特に弁ケースが上側のケース本体と下側の底蓋とが分割されており、固定ナットのねじ込みによりケース本体が底蓋に対して相対的に押込方向に移動することで少なくとも一部のシール部材を圧縮させるものに適用して好適なものである(請求項3)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は取付基体としてのカウンタで、このカウンタ10に対し、互いに離隔した位置において水栓本体12と吐水部14とが設けられている。
吐水部14は、吐水ヘッド16と、これを保持するホルダ18とを有しており、その吐水ヘッド16が、これに接続された可撓性のホース20とともに収納位置から引出可能とされている。
【0025】
吐水ヘッド16は、先端下面に吐水口22を有しており、更にまたその前面に吐水をストレート吐水からシャワー吐水に若しくはその逆に切り換える切換操作部24が設けられている。
この吐水部14はまた、その全体がスライド管26のスライド移動を伴って上昇位置と下降位置との間で上下に移動可能とされている。
【0026】
水栓本体12は、その内部に後述の弁ユニット(弁カートリッジ)46を収容しており、また上部にはレバーハンドル28が設けられていて、そのレバーハンドル28が弁ユニット46に作動的に連結されている。
30は水栓本体12に水,湯を流入させるための流入管で、ここではその流入管30が可撓管にて構成されている。
【0027】
32は水栓本体12から水,湯若しくは混合水(以下単に混合水とする)を流出させる流出管で、ここではこの流出管32が銅管から成っている。
この流出管32の下端部には、上記ホース20の端部が接続金具を介して接続されている。
【0028】
図2に、水栓本体12の内部構造がその周辺部とともに詳しく示してある。
同図に示しているように、水栓本体12はカウンタ10に形成した取付穴34において、締結ナット36により三角パッキン38を介してカウンタ10に締結固定されている。
【0029】
図2において、40は水栓本体12の本体ボデーを成すハウジングで、円筒状をなす樹脂製の周壁42と、これとは別体をなす金属製の底部44とを有しており、その内部に弁ユニット46を収容状態で保持している。
樹脂製の周壁42からは、同じく樹脂製の挿通部48が一体に図中下向きに延び出している。
挿通部48は取付穴34を下向きに挿通し、そしてその外周面に形成された雄ねじに、カウンタ10の裏側で上記の締結ナット36がねじ込まれ、上記周壁42の下面をカウンタ10に着座させる状態に、ハウジング40をカウンタ10に締結固定している。
【0030】
上記底部44には水,湯の流入通路50及び混合水の流出通路52が形成されており、そしてその流入通路50に内部を連通させる状態で、上記の流入管30が底部44に対してねじ結合され、また流出通路52に内部を連通させる状態で、上記の銅管から成る流出管32が溶接にて接合されている。
この実施形態では、ハウジング40が後述の固定ナット56とともに化粧カバー54にて外側から覆われている。
【0031】
図3に、弁ユニット46の構成が組付状態で周辺部とともに詳しく示してある。
同図に示しているように弁ユニット46は、セラミックディスクから成る固定弁体58と、固定弁体58上を摺動する可動弁体60とを有しており、それらが弁ケース65内に収容されている。
【0032】
ここで可動弁体60は、固定弁体58に直接接触するセラミックディスクから成る摺動体62と、レバーハンドル28からの操作力を受けて駆動され、摺動体62と一体に移動する、摺動体62とは別体をなす被駆動部64とを有している。
固定弁体58には水,湯の流入口66と混合水の流出口68とが設けられている。
一方可動弁体60には、流入口66から流入した水と湯とを混合する混合室70が形成されている。
混合室70内の混合水は、固定弁体58の流出口68を通じて図中下方に流出せしめられる。
【0033】
上記弁ケース65は、図中上側のケース本体72と、下側の底蓋75との2分割構造とされており、それらが上下に組み合されて弁ケース65を構成している。
詳しくは、図7に示しているようにケース本体65には周方向複数個所において下向きに突出する弾性片が設けられており、その弾性片に貫通の係止孔74が設けられている。
【0034】
一方底蓋75には、対応する周方向位置において図中上向きの突出部が設けられており、その突出部の先端に係止爪76が設けられ、その係止爪76が係止孔74に係入せしめられている。
そしてこれら係止孔74と係止爪76との弾性的な係合作用によって、ケース本体72と底蓋75とが互いに組み付けられている。
【0035】
この実施形態において、係止孔74は係止爪76に対し図中上下方向寸法が大きくされており、係止爪76が係止孔74内において相対的に上下に移動可能となしてある。
図4は、固定ナット56をねじ込む前の状態を表している。このとき係止爪76は係止孔74の下辺にほぼ接した状態にある。
この状態で固定ナット56がねじ込まれ、ケース本体72に対して図中下向きの押込力が加えられると、ケース本体72が底蓋75に対し相対的に下向きに移動し、そして図3に示す最終の組付状態で係止爪76が係止孔74の上下の中間位置に位置した状態となる。
即ちこの実施形態では、底蓋75に対して上側のケース本体72が相対的に図中下向きに移動可能とされている。
【0036】
底蓋75は、図7,図8にも示しているように下面から下向きに突出した一対の筒状部78と、脚80とを有しており、図3及び図4に示しているようにそれらの先端(下端)がハウジング40における底部44の上面に当接せしめられている。
この一対の筒状部78の内部には水,湯の流入通路81が形成されており、図2及び図3,図4に示しているように、この流入通路81が底部44に形成された流入通路50及び固定弁体58に形成された流入口66に連通せしめられている。
また流入通路81とは別の位置において、固定弁体58の流出口68に連通した流出通路82が設けられている。
【0037】
上記混合室70内の混合水は、固定弁体58の流出口68を経て底蓋75の流出通路82に流出せしめられ、更にその下側の水室84へと流出せしめられる。
この水室84に到った混合水は、上記の流出管32及びホース20を通じて吐水部14へと送られる。
ここで水室84は、底蓋75とハウジング40における底部44及び周壁42との間に形成されている。
【0038】
この底蓋75の外周面には、図3,図6,図7,図8にも示しているように弾性を有するリング状のシール部材85が環状溝内に保持されており、このシール部材85によって、底蓋75の外周面とハウジング40における周壁42の内周面との間が水密にシールされている。
【0039】
一方、底蓋75における上記の筒状部78の先端面(下端面)には、弾性を有するリング状のシール部材86が流入通路81を取り巻くようにして環状溝内に保持されており、このシール部材86によって、筒状部78と底部44との間が水密にシールされている。
【0040】
他方底蓋75の上面には、図7にも示しているように一対の流入通路81,流出通路82をそれぞれ取り巻くようにして、弾性を有する一対のリング状のシール部材88及び90が保持されており、これらシール部材88,90によって、底蓋75と固定弁体58との間が水密にシールされている。
【0041】
また可動弁体60においては、摺動体62の上面に、混合室70を取り巻くようにして弾性を有するリング状のシール部材92が保持されており、このシール部材92によって、摺動体62と被駆動部64との間が水密にシールされている。
【0042】
ここでシール部材86,88,90は何れも図中下向きの力を受けて圧縮変形し、その圧縮変形状態の下でシール機能を発揮する。
特にシール部材88,90は、図3及び図4に示しているように断面形状が縦長の形状をなしており、このシール部材88,90が上下に圧縮せしめられることで、その反発力が固定弁体58と可動弁体60の摺動体62との間に作用し、それら固定弁体58と摺動体62とが、その弾性的な反発力に基づいて良好に密着状態に接触せしめられ、固定弁体58と摺動体62との間の水密接触が確保される。
【0043】
図3において、94は回転体で弁ケース65内部に回転可能に組み込まれている。
回転体94は、図7に示しているように円筒状をなしており、その下端に径方向外方に環状に張り出したフランジ部96を有している。
98は駆動アームで、図2に示しているように固定ビス100にてレバーハンドル28に締結固定され、レバーハンドル28と一体移動するようになっている。
駆動アーム98は、支持ピン102を介して回転体94に結合されている。
ここで支持ピン102は紙面と直角方向に配向され、軸端部が回転体94に設けられた貫通の保持孔に嵌入せしめられて、そこに保持されている。
【0044】
この駆動アーム98の図中下端部には、図7に示しているように一対のフォーク部104が突出形状で設けられており、それらフォーク部104が、可動弁体60における被駆動部64の凹部106内に係入せしめられている。
【0045】
駆動アーム98は、レバーハンドル28と一体に支持ピン102周りに回転運動し、また回転体94の回転軸心周りに回転体94とともに回転運動し、レバーハンドル28の操作を可動弁体60に伝えて、可動弁体60を対応する方向に摺動運動させる。
【0046】
具体的には、レバーハンドル28が図2中上下方向に回動操作されると、駆動アーム98が図3中支持ピン102周りに左右方向に回転運動し、可動弁体60を図中左右方向に移動させて吐止水及び水量調節動作を行わせる。
またレバーハンドル28が図2中紙面と直角方向に回動操作されると、駆動アーム98が回転体94とともにその軸心周りに回転運動し、可動弁体60を同方向に回転運動させて混合水の温度調節動作を行わせる。
【0047】
尚、可動弁体60における被駆動部64にはウォーターハンマー防止機構108が内蔵されている。
このウォーターハンマー防止機構108は、シリンダ壁110と、シリンダ壁110に摺動可能に嵌合した状態で回転体94に固定されたピストン112と、そのピストン112に対し摺動可能に嵌入した弁体114及び水通路116を有している。
【0048】
このウォーターハンマー防止機構108は、可動弁体60が図3中左右方向に移動したとき、水通路116を通じて水を出入させ、その際の抵抗に基づいてレバーハンドル28の急速な閉止操作(止水操作)を抑制し、ウォーターハンマーの発生を防止する。
【0049】
弁ユニット46における弁ケース65の上記のケース本体72は、その上部且つ支持ピン102に対して径方向に対向する部分(支持ピン102周りの部分)が、回転体94の外周面に相対回転可能な状態で立ち上がる円筒状の立上り壁118とされている。
【0050】
ケース本体72は、図3,図7,図8に示しているようにこの立上り壁118に続く下側部分が、径方向外方に環状に張り出した肩部120とされており、更にこの肩部120の下側に続く部分が、肩部120の外周端から立ち下がる円筒状の周壁122とされている。
ここで立上り壁118は、支持ピン102が回転体94から抜けるのを防止する抜け防止壁としての働きをなしている。
また肩部120は、その下面が回転体94におけるフランジ部96の上面に回転可能に接触せしめられている。
【0051】
このケース本体72を下向きに押圧する上記の固定ナット56は、図3(及び図2)に示しているように、ハウジング40における周壁42に嵌合する部分の内周面に雌ねじを有し、その雌ねじにおいて周壁42の上端部外周面の雄ねじにねじ込まれ、そのねじ込みによる押込力をケース本体72に対して、即ち弁ユニット46に対して下向きに及ぼしている。
【0052】
この固定ナット56には、図3及び図2の部分拡大図に示しているように、ケース本体72における上記の立上り壁118の上端面に下向きに当接し、これを下方に押圧する第1押圧部124が、径方向内方に突出する状態で周方向に円環状に設けられている。
固定ナット56にはまた、ケース本体72の肩部120に対して下向きに当接し、これを下方に押圧する第2押圧部126が周方向に円環状に設けられている。
128は、袋ナットから成る固定ナット56の雌ねじ部よりも小径に形成された工具係合部で、この工具係合部128は、図5に示しているように平面形状が6角形状をなしている。
【0053】
上記第2押圧部126は、工具係合部128と雌ねじ部を有する大径の筒状部とを径方向に結ぶように径方向外方に張り出している。
尚、ケース本体72における肩部120の上面は、ハウジング40における周壁42の軸心と直角方向の面、即ち図3中水平な面をなしており、これに対応して第2押圧部126の下面もまた水平な面をなしている。
【0054】
この実施形態では、弁ユニット46をハウジング40内部に嵌め入れた後、固定ナット56をハウジング40の周壁42にねじ込んで行くことで、弁ユニット65がハウジング40内に押込状態に固定される。
【0055】
このとき、固定ナット56のねじ込みによる押込力にて、弁ケース65における底蓋75が、シール部材86を圧縮変形させながらハウジング40における底部44に押し付けられる。
また弁ケース65におけるケース本体72が、底蓋75に対して固定ナット56による押込力にて相対的に下向きに接近移動し、このとき図3の部分拡大図に示すように、シール部材88,90が下向きに圧縮変形せしめられて、底蓋75と固定弁体58との間を水密にシールするとともに、その圧縮変形による反発力を固定弁体58に及ぼし、これにより固定弁体76と可動弁体60における摺動体62とを強く密着状態に接触せしめ、固定弁体58と摺動体62との接触面を水密シール状態とする。
【0056】
この実施形態では、固定ナット56が第1押圧部124と第2押圧部126とを備え、それぞれにおいてケース本体72の立上り壁118の上端面、及び肩部120の上面を下向きに押圧し、固定ナット56のねじ込みによる押込力をケース本体72に作用させる。
【0057】
以上のような本実施形態によれば、固定ナット56のねじ込みによる押込力を、弁ケース65に対し従来よりも中央側の部位で加えることができる。
これによりシール部材86に対して、更にはシール部材88,90に対して固定ナット56のねじ込みによる押込力を効果的に及ぼし得て、シール部材86,88,90を十分に押込方向に圧縮変形させることができる。
そしてそのことにより、シール部材86,88,90のシール機能を従来に増して十分に発揮させることが可能となり、シールの信頼性を高めることができる。
【0058】
更に本実施形態では、弁ケース65を、筒状の立上り壁118に続く下側部分に、立上り壁118から径方向外方に環状に張り出した肩部120と、その肩部120の外周端から立ち下がる周壁122とを有する形状となし、そして上記の固定ナット56に、その肩部120を押込方向に押圧する第2押圧部126を更に設けていることから、この実施形態によれば、固定ナット56に設けた第1押圧部124にて立上り壁118の上端面を下向きに押圧するのに加えて、肩部120に対しても、固定ナット56の第2押圧部126による押込力を加えることができる。
【0059】
これにより、固定ナット56による押込力を弁ケース65を介してシール部材86,88,90に対し一層効果的に及ぼすことができ、シール性能をより一層高めることができる。
【0060】
尚本実施形態では、弁ケース65が上側のケース本体72と下側の底蓋75との分割構造をなしており、固定ナット56のねじ込みによりケース本72体が底蓋75に対して相対的に押込方向に移動することで弁ケース65内部のシール部材88,90を十分に圧縮し、シール機能を発揮させることができる。
【0061】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば弁ユニット46における弁ケース65が上側のケース本体と下側の底蓋との分割構造とされておらず、それらが一体構造をなしているものに対して本発明を適用することも可能であるし、またケース本体72が上記のような肩部を有しておらず、従って固定ナット56に第1押圧部124のみを設けておくといったことも可能である。
更に本発明は上記例示した形態以外の他の様々な形態のシングルレバー水栓に対して適用することが可能である等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の一実施例であるシングルレバー水栓の概略全体構成を示す図である。
【図2】同実施形態における水栓本体の内部構造を周辺部とともに示す図である。
【図3】同実施形態における弁ユニットを組付け状態で周辺部とともに示す図である。
【図4】図3における弁ユニットを固定ナット締付前の状態で周辺部とともに示す図である。
【図5】図2の各部材を分解して示す斜視図である。
【図6】図2の各部材を分解して示す断面図である。
【図7】図3の各部材を分解して示す斜視図である。
【図8】図3の各部材を分解して示す断面図である。
【図9】従来のシングルレバー水栓の一例の要部を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
28 レバーハンドル
40 ハウジング
46 弁ユニット(弁カートリッジ)
56 固定ナット
58 固定弁体
60 可動弁体
65 弁ケース
72 ケース本体
75 底蓋
86,88,90 シール部材
94 回転体
98 駆動アーム
102 支持ピン
118 立上り壁
120 肩部
122 周壁
124 第1押圧部
126 第2押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)固定弁体と、該固定弁体上を摺動運動する可動弁体及びそれら固定弁体及び可動弁体を内部に収容する弁ケースを備えた弁ユニットと、(ロ)該弁ケースの内部に回転可能に設けられた筒状の回転体と、(ハ)該回転体に対して支持ピンを介して結合され、レバーハンドルと一体に該支持ピン周りに回転運動し、また該回転体とともに該回転体の軸心周りに回転運動し、該レバーハンドルの操作を前記可動弁体に伝えて、該可動弁体を対応する方向に摺動運動させる駆動アームと、を有し、
前記弁ユニットは、前記弁ケースの上部且つ前記支持ピンに対して径方向に対向する部分が、前記回転体の外周面に相対回転可能に嵌合する状態で立ち上がる筒状の立上り壁とされているとともに、該弁ユニットを保持する本体ボデーへの固定ナットのねじ込みにより該弁ケースが押圧され、弾性を有するシール部材を該固定ナットのねじ込みによる押込方向に圧縮変形させるものとなしてあるシングルレバー水栓において
前記固定ナットには、前記弁ケースの前記立上り壁の上端面を前記押込方向に押圧する第1押圧部が設けてあることを特徴とするシングルレバー水栓。
【請求項2】
請求項1において、前記弁ケースは、前記筒状の立上り壁に続く下側部分に、該立上り壁から径方向外方に環状に張り出した肩部と、該肩部の外周端から下向きに立下がる周壁とを有する形状となしてあり、
前記固定ナットには、該肩部を前記押込方向に押圧する第2押圧部が更に設けてあることを特徴とするシングルレバー水栓。
【請求項3】
請求項1,2の何れかにおいて、前記弁ユニットは、前記弁ケースが上側のケース本体と下側の底蓋との分割構造とされており、前記固定ナットのねじ込みにより該ケース本体が該底蓋に対して相対的に押込移動されることで、少なくとも一部の前記シール部材を圧縮させるものであることを特徴とするシングルレバー水栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−65762(P2010−65762A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−232705(P2008−232705)
【出願日】平成20年9月10日(2008.9.10)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】