説明

シートパッドの発泡成形型及びその発泡成形型を用いたシートパッドの製造方法

【課題】シートパッドの肉厚部に欠肉の発生を防止して、成形性の精度の高いシートパッドを成形する発泡成形型及びその発泡成形型を用いたシートパッドの製造方法を提供する。
【解決手段】パッド本体部112の上端から後方に突出する下方向に屈曲して延在する肉厚部116a、肉厚部から更に下方に延在して漸次肉厚が減少する端部絞り部116bを備えたシートパッド110を発泡成形するシートパッドの発泡成形型10において、肉厚部の外側面を成形する成形面を有する第1型14、第1型と隣接して配置されて端部絞り部の外側面を成形する成形面を有する第2型16、第2型と隣接して配置されて部絞り部の先端部分を成形する成形面を有する第3型18、を備え、第1型と第2型との間で第1接合部PL1が構成されるとともに第2型と第3型との間で第2接合部PL2が構成され、第1接合部及び第2接合部から成形空間内のガスが成形空間の外部に排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートパッドの発泡成形型及びその発泡成形型を用いたシートパッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の前部座席は、例えば、図7で自動車の前部座席100の概略を示すように、乗員の臀部を支持するシートクッション部102、背部を支持するシートバック部104を備える。シートバック部104は、シートバックフレーム(図示しない)にシートバックパッドが被覆されて構成される。
【0003】
図8は、シートバックパッド110の概略断面図である。図示のように、シートバックパッド110は、パッド本体部112、張り出し部114、フランジ部116を備え、発泡樹脂材料を発泡させたウレタンフォームによって断面視略C字状に形成される。乗員の背もたれ部となるパッド本体部112は、前面部112a及び前面部112aと対向する背面部112bを有するとともに、下端がシートバックパッド110の後方側に屈曲形成されたシートバックフレーム係合部112cが形成される。図示しないシートバックフレームに装着されるシートバックパッド110の内側面には、その全域に亘って補強材118が張設される。
【0004】
シートバックパッド110の上部には、シートバックパッド110の後方向に突出して延在する張り出し部114、及び張り出し部114から下方向に屈曲するフランジ部116を備える。フランジ部116は、張り出し部114に対して肉厚が増大された肉厚部116a及び肉厚部116aから下方に連続するとともに漸次肉厚が減少してシートバックパッド110の下方向に先端部116cが突出する端部絞り部116bを備え、車体後方からの衝撃入力に対するクッション効果及びシートバック部104の後面視における意匠的効果を高めている。
【0005】
このようなシートバックパッド110は、下型及び下型に対して型締めされる上型及び中子型を有する発泡成形型によって成形される。この発泡成形型の型締め状態で、各型の成形面の間でシートバックパッドを成形するキャビティが構成され、上型と中子型との間のキャビティにおいてフランジ部が成形される。
【0006】
ところが、このような発泡成形型で、シートバックパッド110が成形される場合は、発泡樹脂材料が中子型を迂回してフランジ部116を成形するキャビティに流入することとなるので、発泡樹脂材料に混在する空気や、発泡時に発生する炭酸ガスの流動性が低くなって発泡樹脂材料の流入が効率よく実現されず、フランジ部116に形成された肉厚部116aの表面にガスが集まりやすくなって肉厚部116aに欠肉が発生することがある。欠肉が発生すると、この欠肉に後から肉盛り加工を施して補修する必要が生じるので、シートバックパッド110の成形効率、成形精度が低下する。
【0007】
そこで、フランジ部116においてガスが集まりやすい箇所を成形する成形面(例えば肉厚部116aを成形する成形面や、フランジ部116の端部絞り部116bの成形面)に、フランジ部116を成形するキャビティを構成する上型と中子型との型分割線PL(パーティングライン)を形成し、この型分割線PLから発泡樹脂材料に混在する空気を排出する技術が知られている。
【0008】
特許文献1には、型分割線PLが、フランジ部116の端部絞り部116bの成形面に形成された発泡成形型が開示されている。この発泡成形型について、図9に基づいて説明する。
【0009】
図9は、発泡成形型120の概略断面図である。図示のように、上型122及び中子型124が下型126に対して型締めされた状態で、シートバックパッドを成形するキャビティ130が形成されるとともに、上型122と中子型124との間にチャンバ132が形成される。上記フランジ部116を成形するキャビティ130aを構成する上型と中子型との型分割線PLは、フランジ部116の端部絞り部116bの外側面を成形する成形面と端部絞り部116bの先端部116cを成形する成形面との間に形成され、この型分割線PLがやや拡大されて隙間128が形成される。
【0010】
キャビティ130内で発泡樹脂材料が加熱されると、発泡樹脂材料がキャビティ130に流入充填されて、シートバックパッドが成形される。このとき、炭酸ガスや発泡樹脂材料に混在した空気等のガスは、隙間128からチャンバ132に排出されて、欠肉の発生が回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平9−99445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記特許文献1に記載された発泡成形型120によると、フランジ部116の端部絞り部116bの外側面を成形する成形面と端部絞り部116bの先端部116cを成形する成形面との間に形成された型分割線PLが拡大された隙間128からガスが排出される。
【0013】
しかし、上記型分割線PLからは、肉厚部116aに集まるガスを排出しきることができず、そのまま発泡樹脂材料に取り残されてしまう場合がある。そうすると、上記のように欠肉が発生することとなり、依然として、シートバックパッド110の成形効率、成形精度を向上しえないことが懸念される。特に、上記のようにシートバックパッド110は、そのフランジ部116における衝撃荷重の吸収及び意匠性の向上の点から、更なる成形精度の向上が要求される。
【0014】
従って、かかる点に鑑みてなされた本発明の目的は、肉厚部に欠肉の発生を防止して、成形性の精度の高いシートパッドを成形する発泡成形型及びその発泡成形型を用いたシートパッドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明によるシートパッドの発泡成形型は、パッド本体部の上端から後方に突出する張り出し部から前記パッド本体部に対して離間して下方向に屈曲して延在する肉厚部、及び該肉厚部から更に下方に延在するとともに漸次肉厚が減少する端部絞り部を備えたシートパッドを発泡成形する成形空間を有するシートパッドの発泡成形型において、前記肉厚部の外側面を成形する成形面を有する第1型と、該第1型と隣接して配置されて前記端部絞り部の外側面を成形する成形面を有する第2型と、該第2型と隣接して配置されて前記端部絞り部の先端部分を成形する成形面を有する第3型と、を備え、前記第1型と第2型との間で第1接合部が構成されるとともに前記第2型と第3型との間で第2接合部が構成され、前記第1接合部及び第2接合部から前記成形空間内のガスが前記成形空間の外部に排出されることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、発泡成形時のガスが集まりやすい肉厚部の外側面を成形する成形面から端部絞り部の外側面を成形する成形面に移行する間に、第1型と第2型との間の第1接合部が形成される。一方、端部絞り部の外側面を成形する成形面から端部絞り部の先端部を成形する成形面に移行する間に、第2型と第3型との間の第2接合部が形成される。
【0017】
すなわち、ガスが集まりやすい2箇所に第1接合部及び第2接合部が形成されているので、発泡樹脂材料の流動によって、これら第1接合部及び第2接合部にガスが効率的に流入して成形空間の外部に排出される。その結果、肉厚部に欠肉が発生することを効果的に抑制することができるので、成形精度の高いシートパッドを得ることができる。なお、ここでシートパッドとは、シートバックパッド、シートクッションパッドのいずれをも含むものである。
【0018】
請求項2に記載の発明によるシートパッドの発泡成形型は、請求項1に記載のシートパッドの発泡成形型において、前記第1型は、前記肉厚部の外側面を成形する成形面から前記成形空間の外部まで延在する第1接合面を有するとともに型締め及び型開き方向に揺動する上型で構成され、前記第3型は、前記端部絞り部の先端部分を成形する成形面から前記成形空間の外部まで延在する第2接合面を有するとともに前記上型に接離可能に支持された第2中子型で構成され、前記第2型は、前記第1接合面に接合する上型接合第1面及び前記第2接合面に接合される第2中子型接合面を有して前記上型に接離可能に支持された第1中子型で構成された、ことを特徴とする。
【0019】
この構成は、請求項1の第1型〜第3型の内容を具体的に明らかにしたものであり、上型に対して接離可能に支持される第1中子型を設ける簡易な構成によって、発泡成形時のガスが集まりやすい2箇所に第1接合部及び第2接合部が構成される。従って、これら第1接合部及び第2接合部にガスが効率的に流入して成形空間の外部に排出される。その結果、簡易な構成によって、肉厚部に欠肉が発生することを抑制して成形精度の高いシートパッドを得るという本願請求項1の目的を効果的に達成することができる。
【0020】
請求項3に記載の発明によるシートパッドの発泡成形型は、請求項1または2に記載のシートパッドの発泡成形型において、前記第1接合部は、前記肉厚部の外側面を成形する成形面と前記端部絞り部の外側面を成形する成形面との間から上方に延在することを特徴とする。
【0021】
この構成によれば、第1接合部は肉厚部の外側面を成形する成形面と端部絞り部の外側面を成形する成形面との間から上方に延在しており、第1接合部に流入するガスを効率的に外部に導いて排出することができるので、シートパッドの成形精度を向上させることができる。
【0022】
請求項4に記載の発明によるシートパッドの発泡成形型は、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシートパッドの発泡成形型において、前記第2接合部は、前記端部絞り部の外側面を成形する成形面と前記端部絞り部の先端部分を成形する成形面との間から上方に延在することを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、第2接合部は端部絞り部の外側面を成形する成形面と端部絞り部の先端部分を成形する成形面との間から上方に延在しており、第2接合部に流入するガスを効率的に外部に導いて排出することができるので、シートパッドの成形精度を向上させることができる。
【0024】
請求項5に記載の発明によるシートパッドの製造方法は、請求項2〜4に記載のシートパッドの発泡成形型を用いたシートパッドの製造方法であって、前記成形空間内の成形面に発泡樹脂材料が注入された状態で前記上型が型締め方向に移動されて型締めされる型締め工程と、該型締め工程の後に前記発泡樹脂材料が発泡されてシートパッドが成形されるとともに前記第1接合部及び第2接合部から前記成形空間内に存在するガスが排出される樹脂材料発泡成形工程と、前記第1中子型及び前記第2中子型が前記上型に接合された状態で前記上型が型開き方向に移動されて型開きされ、前記第1中子型及び第2中子型が前記上型から離間する方向に移動されて前記成形されたシートパッドが前記上型から離型される離型第1工程と、該離型第1工程の後に前記第2中子型が前記上型から更に離間する方向に移動されて前記成形されたシートパッドが前記第1中子型から離型される離型第2工程と、を備えることを特徴とする。
【0025】
この構成によれば、発泡成形時のガスが集まりやすい箇所に構成された第1接合部及び第2接合部にガスが効率的に流入して成形空間の外部に排出される。その結果、肉厚部に欠肉が発生することを効果的に抑制することができるので、成形精度の高いシートパッドを得ることができる。
【0026】
また、第1中子型と第2中子型が上型から離間する方向に移動されて上型と第1中子型の接合が解除されるので、第1接合部に沿って成形されたバリがこれらの型に噛み込まれることなく、シートパッドと連続した状態で離型される。更に、第2中子型が上型から更に離間する方向に移動され、あるいは第2中子型が第1中子型に対してより大きな移動量で上型から更に離間する方向に移動されることで、第1中子型と第2中子型との接合が解除されるので、第2接合部に沿って成形されたバリがこれらの型に噛み込まれることなく、シートパッドと連続した状態で離型される。従って、シートパッドの成形精度を更に向上させることができる。
【発明の効果】
【0027】
この発明によると、発泡成形時のガスが集まりやすい肉厚部の外側面を成形する成形面から端部絞り部の外側面を成形する成形面に移行する間に、第1型と第2型との間の第1接合部が形成される。一方、端部絞り部の外側面を成形する成形面から端部絞り部の先端部を成形する成形面に移行する間に、第2型と第3型との間の第2接合部が形成される。
【0028】
すなわち、ガスが集まりやすい2箇所に第1接合部及び第2接合部が形成されているので、発泡樹脂材料の流動によって、これら第1接合部及び第2接合部にガスが効率的に流入して成形空間の外部に排出される。その結果、肉厚部に欠肉が発生することを効果的に抑制することができるので、成形精度の高いシートパッドを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る発泡成形型の概略を説明する図である。
【図2】図1の矢線Aで示す要部の拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る発泡成形型の動作状態を説明する図である。
【図4】同じく、本発明の実施の形態に係る発泡成形型の動作状態を説明する図である。
【図5】同じく、本発明の実施の形態に係る発泡成形型の動作状態を説明する図である。
【図6】同じく、本発明の実施の形態に係る発泡成形型の動作状態を説明する図である。
【図7】自動車の前部座席の概略を説明する図である。
【図8】シートバックパッドの概略を説明する断面図である。
【図9】従来の発泡成形型の概略を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、図1〜図5、及び図8を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明の一実施の形態に係る発泡成形型で成形されるシートパッドが、自動車の前部座席のシートバック部のシートバックパッドである場合を例として説明する。
【0031】
図1は、本発明の実施の形態に係る発泡成形型の概略を説明する図である。図示のように、発泡成形型10は、下型12及び第1型となる上型14を備える。上型14は、ヒンジ22を揺動軸として下型12に対して矢線Oで示す型開き方向及び矢線Cで示す型締め方向に揺動するとともに、この揺動方向と交差する方向に延在して形成される。
【0032】
上型14には、第2型となる第1中子型16及び第3型となる第2中子型18が連結される。第1中子型16は、第1エアシリンダ24の第1シリンダロッド24aを介して上型14に連結されて第1エアシリンダ24によって上型14に対して接離されるとともに、上型14の揺動方向と交差する方向に延在して形成される。第2中子型18は、第2エアシリンダ26の第2シリンダロッド26aを介して上型14に連結されて第2エアシリンダ26によって上型14に対して接離されるとともに、上型14の揺動方向と交差する方向に延在して形成される。この第1エアシリンダ24及び第2エアシリンダ26は、図示しないエアシリンダ回路によって、減圧量や加圧量等が調節される。
【0033】
第1中子型16及び第2中子型18が上型14に接合された状態で、下型12に対して上型14が型締め方向Cに移動されると、これらの下型12、上型14及び第1中子型16、第2中子型18の各成形面によって、シートバックパッド110を成形するキャビティ20が構成される。
【0034】
キャビティ20は、パッド本体部112及び張り出し部114を成形する第1キャビティ20a、及び張り出し部114から連続するフランジ部116を成形する第2キャビティ20bを備える。
【0035】
第1キャビティ20aは、パッド本体部112の前面部112a及びシートバックフレーム係合部112cの外側面を成形する前面部成形面12aが形成されてヒンジ22を揺動軸とした上型14の揺動方向と交差する方向に延在する下型12と、パッド本体部112の背面部112b及びシートバックフレーム係合部112cの内側面を成形する背面部成形面18aが形成されてヒンジ22を揺動軸とする上型14の揺動方向と交差する方向に延在する第2中子型18との協働によって構成される。
【0036】
図2は、図1の矢線Aで示す要部拡大図である。図示のように、第2キャビティ20bは、上型14、第1中子型16、第2中子型18の協働によって構成される。
【0037】
上型14は、フランジ部116の外側面を成形する湾曲して形成されたフランジ部外側面成形面14A及び第1中子型16を嵌合する第1中子型嵌合部14B、一般面14Cを備えて断面略ハット状に形成される。第1中子型嵌合部14Bは、フランジ部外側面成形面14Aから連続するとともに上方に屈曲して矢線Rで示す端部絞り部116bの延在方向へ傾斜して延在する中子型接合第1面14Ba、中子型接合第1面14Baから端部絞り部延在方向Rへ屈曲して延在するとともにシリンダロッド受入孔14fが略中央部分に開口形成された中子型接合第2面14Bbを有し、これら中子型接合第1面14Baと中子型接合第2面14Bbとによって第1接合面を構成する。更に、第1中子型嵌合部14Bは、中子型接合第2面14Bbから下方に屈曲して中子型接合第1面14Baから離間する方向に傾斜して延在する中子型接合第3面14Bcを備え、中子型接合第3面14Bcから端部絞り部延在方向Rへ屈曲して一般面14Cまで延在する。
【0038】
第1中子型16は、上型14に接合された状態の断面形状において、端部絞り部116bの外側面を成形する端部絞り部外側面成形面16A、端部絞り部外側面成形面16Aの端部から上型14の中子型接合第1面14Ba方向に屈曲して延在してフランジ部116の端部を成形するフランジ部端部成形面16Bを備える。更に、フランジ部端部成形面16Bから連続する上型嵌合部16C及び上型嵌合部16Cから連続する第2中子型接合面16Dを有して形成される。
【0039】
上型嵌合部16Cは、上型14に接合された状態の断面形状において、フランジ部端部成形面16Bから上方に屈曲して上型14の端部絞り部延在方向Rへ傾斜して延在するとともに上型14の中子型接合第1面14Baと接合する上型接合第1面16Ca、上型接合第1面16Caから端部絞り部延在方向Rへ屈曲して延在するとともにシリンダロッド受入孔14fから挿入された第1エアシリンダ24の第1シリンダロッド24aが連結されて上型14の中子型接合第2面14Bbと接合する上型接合第2面16Cb、上型接合第2面16Cbから下方に屈曲して上型接合第1面16Caから離間する方向に傾斜して延在するとともに上型14の中子型接合第3面14Bcと接合する上型接合第3面16Ccを備える。
【0040】
この上型接合第3面16Ccから更に下方に屈曲して上型接合第1面16Caに近接する方向に傾斜して、後述する第2中子型18の第1中子型接合面18eと接合して端部絞り部外側面成形面16Aまで延在する第2中子型接合面16Dが形成されて、第1中子型16が形成される。
【0041】
第2中子型18は、上型14に接合された状態の断面形状において、フランジ部116の内側面を成形する蛇行して延在するフランジ部内側面成形面18b、及びフランジ部内側面成形面18bから端部絞り部延在方向Rへ屈曲して延在して端部絞り部116bの内側面を成形する端部絞り部内側面成形面18c、端部絞り部内側面成形面18cから上方に屈曲して延在して端部絞り部116bの先端部116cを成形する端部絞り部先端部成形面18d、端部絞り部先端部成形面18dから更に上方に屈曲して端部絞り部延在方向Rへ傾斜して延在する第1中子型接合面18e、第1中子型接合面18eから端部絞り部延在方向Rに屈曲して上型14の一般面14Cと近接する上型接合端部18fを有して形成される。そして、第1中子型接合面18eと上型接合端部18fとによって、第2接合面が構成される。
【0042】
第1中子型16及び第2中子型18が上型14に対して離間した状態において、第1エアシリンダ24が減圧されると、第1中子型16の上型嵌合部16Cが上型14の第1中子型嵌合部14Bに嵌合して、第1中子型16が上型14に接合される。すなわち、上型接合第1面16Caが中子型接合第1面14Baに接合し、上型接合第2面16Cbが中子型接合第2面14Bbに接合し、上型接合第3面16Ccが中子型接合第3面14Bcに接合する。そして、上型接合第1面16Caと中子型接合第1面14Baとの間及び上型接合第2面16Cbと中子型接合第2面14Bbとの間、上型接合第3面16Ccと中子型接合第3面14Bcとの間の極微小な間隙によって、キャビティ20と発泡成形型10の外部との間を連通する第1接合部となる型分割第1部PL1が構成される。
【0043】
この型分割第1部PL1がシリンダロッド受入孔14fに連通して、型分割第1部PL1に流入するキャビティ20内のガスがシリンダロッド受入孔14fからキャビティ20外に排出される。
【0044】
第1中子型16が上型14に接合され、かつ第2中子型18が上型14に対して離間した状態において、第2エアシリンダ26が減圧されると、第2中子型18が上型14及び第1中子型16に接合される。すなわち、第1中子型接合面18eが第2中子型接合面16Dに接合し、上型接合端部18fの上面が中子型接合第3面14Bcの下面に接合して、上型接合端部18fと中子型接合第3面14Bcとの下面との間の極微小な間隙によって、キャビティ20と発泡成形型10の外部との間を連通する型分割第3部PL3が構成される。それとともに、第2中子型接合面16Dと第1中子型接合面18eとの間の極微小な間隙によって、キャビティ20と発泡成形型10の外部との間を連通する第2接合部となる型分割第2部PL2が構成される。
【0045】
この型分割第2部PL2が型分割第3部PL3に連通して、型分割第2部PL2に流入するキャビティ20内のガスが、型分割第3部PL3からキャビティ20外に排出される。
【0046】
次に、発泡成形型10を用いたシートバックパッド110の成形について、図3〜図6を用いて説明する。図3〜図6は、発泡成形型10を用いて、シートバックパッド110を成形する過程の概略を説明する図である。図3で示すように、上型14、第1中子型16及び第2中子型18を下型12に対して型開きするとともに、第1中子型16を第1エアシリンダ24によって上型14に接合させる一方で、第2中子型18を上型14に対して離間させる。この状態において、補強材118を、第2中子型18の背面部成形面18aに、例えば、磁性シール等の固着部材を用いて張設する(補強材張設工程)。そして、各型の成形面に予め離型材を塗布しておき、その上で、下型12の前面部成形面12aに、発泡樹脂材料Mを所定量注入する(発泡樹脂材料注入工程)。
【0047】
その後、図4で示すように、第2中子型18を第2エアシリンダ26によって上型14に接合させ、この状態で上型14を下型12に対する型締め方向Cに移動させると型締めが完了し、第1キャビティ20a及び第2キャビティ20bを有するキャビティ20が構成される(型締め工程)。
【0048】
キャビティ20が構成された後、発泡樹脂材料Mを所定時間加熱して発泡させると、第1キャビティ20a内で発泡樹脂材料Mが発泡して充満するとともに、第2キャビティ20b内にも発泡樹脂材料Mが流入する。このとき、端部絞り部外側面成形面16Aから端部絞り部先端部成形面18dに移行する間に、第2キャビティ20bと発泡成形型10の外部との間を連通する型分割第1部PL1が構成されているので、肉厚部116aに集まったガスが発泡樹脂材料Mの流動によって型分割第1部PL1に流入してシリンダロッド受入孔14fから排出されて、欠肉の発生が回避される。同時に、余剰の発泡樹脂材料Mが型分割第1部PL1に流入する。
【0049】
また、端部絞り部外側面成形面16Aから端部絞り部先端部成形面18dに移行する間に型分割第2部PL2が構成され、型分割第2部PL2と連通する型分割第3部PL3が構成されているので、発泡樹脂材料Mの流動によって型分割第2部PL2にガスが流入して型分割第3部PL3から排出されて、欠肉の発生が回避される。同時に、余剰の発泡樹脂材料Mが型分割第2部PL2に流入する。
【0050】
そして、発泡樹脂材料Mが硬化されてウレタンフォームが生成され、図5で示すように、シートバックパッド110が成形される(樹脂材料発泡成形工程)。同時に、型分割第1部PL1及び型分割第2部PL2に流入した余剰の発泡樹脂材料Mによって、バリが成形される。
【0051】
シートバックパッド110が成形された後、離型工程に移行する。図6(a)で示すように、上型14及び第1中子型16、第2中子型18を型開き方向Oに移動させてシートバックパッド110を下型12から離型させる。そして、第1エアシリンダ24及び第2エアシリンダ26を同時に同じ加圧量で加圧すると、第1シリンダロッド24aと第2シリンダロッド26aが同ストロークで加圧方向に移動して、第1中子型16及び第2中子型18が上型14から離間し、シートバックパッド110のフランジ部116における肉厚部116aが、上型14のフランジ部外側面成形面14aから離型する。このとき、上型14と第1中子型16との接合が解除されているので、型分割第1部PL1に余剰の発泡樹脂材料Mが流入して成形されたバリは肉厚部116aと連続した状態で、シートバックパッド110が離型される(離型第1工程)。
【0052】
次に、図6(b)で示すように、第2エアシリンダ26を更に加圧すると、第2シリンダロッド26aが加圧方向に移動して、図2で示す第2中子型18の第1中子型接合面18eが第1中子型16の第2中子型接合面16Dから離間し、シートバックパッド110のフランジ部116における端部絞り部116bが、上型14のフランジ部外側面成形面14Aから離型する。このとき、第1中子型16と第2中子型18の接合が解除されているので、型分割第2部PL2に余剰の発泡樹脂材料Mが流入して成形されたバリは端部絞り部116bと連続した状態で、シートバックパッド110が離型される(離型第2工程)。
【0053】
その後更に、シートバックパッド110を第2中子型18から離型させることにより、離型工程が完了する。
【0054】
上記構成を有する発泡成形型10によれば、フランジ部外側面成形面14Aから端部絞り部外側面成形面16Aに移行する間に、上型14と第1中子型16とによって型分割第1部PL1が構成される。従って、発泡樹脂材料Mの流動によって、肉厚部116aに集まった、発泡樹脂材料Mに混在する空気や発泡時に発生する炭酸ガス等のガスがこの型分割第1部PL1に効率的に流入して、シリンダロッド受入孔14fから排出される。一方、端部絞り部外側面成形面16Aから端部絞り部先端部成形面18dに移行する間に、第1中子型16と第2中子型18とによって型分割第2部PL2が構成される。従って、発泡樹脂材料Mの流動によって、ガスが型分割第2部PL2に効率的に流入して、型分割第3部PL3から排出される。その結果、フランジ部116の肉厚部116aに欠肉が発生することを効果的に抑制することができるので、成形精度の高いシートバックパッド110を得ることができる。
【0055】
また、第1中子型16と第2中子型18とを別個独立に可動させる構成とする、すなわち、シートバックパッド110の離型の初期段階では第1中子型16と第2中子型18とを可動させる第1エアシリンダ24と第2エアシリンダ26とを同時に同じ加圧量で同じストロークをもって作動させると、第1中子型16及び第2中子型18が上型14から離間し、シートバックパッド110の肉厚部116aと連続して形成されたバリが第1中子型16の上型接合第1面16Caに付着する。その後、更に第2エアシリンダを作動させて第2中子型18を第1中子型16から離間させると、シートバックパッド110の端部絞り部116bと連続して形成されたバリが第2中子型18の第1中子型接合面18eに付着する。従って、バリがシートバックパッド110から切断されて上型14に取り残されることがないので、シートバックパッド110の欠損を防止して成形精度を向上させることができる。また、バリが上型14や第1中子型16、第2中子型18に残らないので、発泡成形型10からバリを除去する等の作業負担を軽減することができる。
【0056】
第2中子型18とは別個に第1中子型16を設ける簡易な構成で型分割第1部PL1及び型分割第2部PL2を形成することができ、シートバックパッド110の成形精度の向上を図ることができる。
【0057】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施の形態では、シートパッドが自動車の前部座席100のシートバック部104のシートバックパッド110であることを例として説明したが、自動車の後部座席のシートバック部のシートバックパッドであってもよく、更に、航空機や船舶、列車等のシートバック部のシートバックパッドにも適用できる。また、シートバック部104のシートバックパッド110のみならず、シートクッション部102のシートクッションパッドにも適用できる。
【0058】
また、上記実施の形態では、図示しないエアシリンダ回路によって第1エアシリンダ24が制御されている場合を例として説明したが、第1エアシリンダ24に代えてスプリングを用いて、第1中子型16が上型14に接合された状態で、第1中子型16を上型14方向に付勢させてもよい。すなわち、第2エアシリンダ26の作動によってスプリングを可動させるように、例えばスライドコア機構を構成して、第2中子型18の動作に第1中子型16の動作を追従させてもよい。
【符号の説明】
【0059】
10 発泡成形型
12 下型
14 上型(第1型)
14B 第1中子嵌合部
14Ba 中子型接合第1面(第1接合面)
14Bb 中子型接合第2面(第1接合面)
14Bc 中子型接合第3面
14C 一般面
16 第1中子型(第2型)
16C 上型嵌合部
16Ca 上型接合第1面
16Cb 上型接合第2面
16Cc 上型接合第3面
16D 第2中子型接合面
18 第2中子型(第3型)
18e 第1中子型接合面(第2接合面)
18f 上型接合端部(第2接合面)
20 キャビティ
20a 第1キャビティ
20b 第2キャビティ
24 第1エアシリンダ
26 第2エアシリンダ
PL1 型分割第1部(第1接合部)
PL2 型分割第2部(第2接合部)
PL3 型分割第3部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッド本体部の上端から後方に突出する張り出し部から前記パッド本体部に対して離間して下方向に屈曲して延在する肉厚部、及び該肉厚部から更に下方に延在するとともに漸次肉厚が減少する端部絞り部を備えたシートパッドを発泡成形する成形空間を有するシートパッドの発泡成形型において、
前記肉厚部の外側面を成形する成形面を有する第1型と、
該第1型と隣接して配置されて前記端部絞り部の外側面を成形する成形面を有する第2型と、
該第2型と隣接して配置されて前記端部絞り部の先端部分を成形する成形面を有する第3型と、を備え、
前記第1型と第2型との間で第1接合部が構成されるとともに前記第2型と第3型との間で第2接合部が構成され、前記第1接合部及び第2接合部から前記成形空間内のガスが前記成形空間の外部に排出されることを特徴とするシートパッドの発泡成形型。
【請求項2】
前記第1型は、
前記肉厚部の外側面を成形する成形面から前記成形空間の外部まで延在する第1接合面を有するとともに型締め及び型開き方向に揺動する上型で構成され、
前記第3型は、
前記端部絞り部の先端部分を成形する成形面から前記成形空間の外部まで延在する第2接合面を有するとともに前記上型に接離可能に支持された第2中子型で構成され、
前記第2型は、
前記第1接合面に接合する上型接合第1面及び前記第2接合面に接合される第2中子型接合面を有して前記上型に接離可能に支持された第1中子型で構成された、
ことを特徴とする請求項1に記載のシートパッドの発泡成形型。
【請求項3】
前記第1接合部は、
前記肉厚部の外側面を成形する成形面と前記端部絞り部の外側面を成形する成形面との間から上方に延在することを特徴とする請求項1または2に記載のシートパッドの発泡成形型。
【請求項4】
前記第2接合部は、
前記端部絞り部の外側面を成形する成形面と前記端部絞り部の先端部分を成形する成形面との間から上方に延在することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシートパッドの発泡成形型。
【請求項5】
請求項2〜4に記載のシートパッドの発泡成形型を用いたシートパッドの製造方法であって、
前記成形空間内の成形面に発泡樹脂材料が注入された状態で前記上型が型締め方向に移動されて型締めされる型締め工程と、
該型締め工程の後に前記発泡樹脂材料が発泡されてシートパッドが成形されるとともに前記第1接合部及び第2接合部から前記成形空間内に存在するガスが排出される樹脂材料発泡成形工程と、
前記第1中子型及び前記第2中子型が前記上型に接合された状態で前記上型が型開き方向に移動されて型開きされ、前記第1中子型及び第2中子型が前記上型から離間する方向に移動されて前記成形されたシートパッドが前記上型から離型される離型第1工程と、
該離型第1工程の後に前記第2中子型が前記上型から更に離間する方向に移動されて前記成形されたシートパッドが前記第1中子型から離型される離型第2工程と、
を備えることを特徴とするシートパッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−173346(P2011−173346A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39612(P2010−39612)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】