説明

シートベルト装置の取付構造

【課題】シートベルト装置の巻取装置の高さ方向の位置に影響されることなく、また、外観に影響されることなくシートベルト装置を取り付けることが可能なシートベルト装置の取付構造を提供する。
【解決手段】車室3内の乗員を保護するシートベルト装置30の取付構造において、シートベルト装置のベルト巻取装置35が、車体側部におけるピラーガーニッシュ11とサイドライニング13との見切り線23近傍に配置され、ピラーガーニッシュに、シートベルト装置のベルト31および車室側配置部材を取り出し可能な開口部25が形成されるとともに、開口部におけるベルトの挿通箇所以外を覆うリッド部材27が取付可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートベルト装置の取付構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車やバスなどの車両には車室内の乗員を保護するためにシートベルト装置が設けられている(例えば、特許文献1参照)。近年では、ワンボックスタイプやワゴンタイプなどの車両で、3列シートを採用する車両が増えている。このような3列シートを採用している車両においては、3列目のシートのすぐ後ろにテールゲートが配されている。
【0003】
この3列目のシート用のシートベルト装置の取付構造としては、ベルト巻取装置を車体側部のピラーガーニッシュとサイドライニングとの見切り線より下方に配置し、該見切り線部分にベルトを挿通させる開口を形成した構造が一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−136609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したワンボックスタイプなどの車両において、リヤコンビランプの視認性を向上させるために、リヤコンビランプを車両の上部に配置させたいという要望や、3列目に乗車している乗員の快適性向上のために空調設備を設けたいという要望がある。しかしながら、従来のシートベルト装置の取付構造では、リヤコンビランプや空調設備を所望の位置に設けるスペースを確保することが困難であった。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、シートベルト装置の巻取装置の高さ方向の位置に影響されることなく、また、外観に影響されることなくシートベルト装置を取り付けることが可能なシートベルト装置の取付構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、車室(例えば、実施形態における車室3)内の乗員を保護するシートベルト装置(例えば、実施形態におけるシートベルト装置30)の取付構造において、前記シートベルト装置のベルト巻取装置(例えば、実施形態におけるベルト巻取装置35)が、車体側部におけるピラーガーニッシュ(例えば、実施形態におけるピラーガーニッシュ11)とサイドライニング(例えば、実施形態におけるリヤサイドライニング13)との見切り線(例えば、実施形態における見切り線23)近傍に配置され、前記ピラーガーニッシュに、前記シートベルト装置のベルト(例えば、実施形態におけるベルト31)および車室側配置部材(例えば、実施形態におけるリング部材33、ベルト支持部39、タング41)を取り出し可能な開口部(例えば、実施形態における開口部25)が形成されるとともに、該開口部における前記ベルトの挿通箇所以外を覆うリッド部材(例えば、実施形態におけるリッド部材27)が取付可能に構成されていることを特徴とするシートベルト装置の取付構造。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載した発明によれば、ベルト巻取装置がピラーガーニッシュとサイドライニングとの見切り線近傍に配されるため、ベルト巻取装置よりも下方に空間を形成することができる。また、ピラーガーニッシュに開口部を形成し、該開口部をリッド部材で閉塞することにより、外観に影響を及ぼすことなくシートベルト装置を取り付けることができる。つまり、従来よりもベルト巻取装置を高い位置に取り付けても、外観に影響されることがなくなる。言い換えれば、シートベルト装置のベルト巻取装置の高さ方向の位置に影響されることなく、また、外観に影響されることなくシートベルト装置を取り付けることができる。
また、ベルト巻取装置を車体上部に取り付けることにより、ベルト巻取装置の下方には従来の車両には無かったスペースを確保することができるため、リヤコンビランプの位置を従来よりも高い位置に取り付けることや3列目シート用の空調設備を所望の位置に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態における車両の後方からの斜視図(一部透視図)である。
【図2】本発明の実施形態におけるリヤインナパネルの正面図である。
【図3】図2のA部拡大図である。
【図4】図3のB−B線に沿う断面図である。
【図5】図2のA部拡大図であり、シートベルト装置の図示を省略し、ピラーガーニッシュのみを示す図である。
【図6】本発明の実施形態におけるシートベルト装置を車両に取り付ける方法を説明する図であり、ベルトおよびタングを室内側に取り出す状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。なお、本実施形態では、3列シートを有するワンボックスタイプの車両を用いて説明する。
図1に示すように、車両1の後方にあたる車室3の両側には、リヤインナパネル5が配されている。リヤインナパネル5の車室3側には、窓7の両側に配されるピラーガーニッシュ11と、ピラーガーニッシュ11の下方に連続するように設けられたリヤサイドライニング13と、を備えている。
【0011】
ピラーガーニッシュ11は、車両前方側に配されたピラーガーニッシュ11Aと、車両後方側に配されたピラーガーニッシュ11Bと、で構成されている。ピラーガーニッシュ11Aには2列目のシート用のシートベルト装置20が取り付けられており、ピラーガーニッシュ11Bには3列目のシート用のシートベルト装置30が取り付けられている。また、ピラーガーニッシュ11Bの後方側にはテールゲート19が開閉自在に配されている。
【0012】
ここで、図2、図3に示すように、ピラーガーニッシュ11Bには、車室3内側から外側方向に向かって窪んだ凹陥部21が形成されている。凹陥部21の上部にはシートベルト装置30のベルト31を摺動自在に支持するためのリング部材33が取り付けられている。また、この凹陥部21は、ピラーガーニッシュ11Bとリヤサイドライニング13との境界部に形成される見切り線23よりも上方に形成されている。
【0013】
また、図4に示すように、シートベルト装置30のベルト31を巻き取るためのベルト巻取装置35は、見切り線23近傍に配されている。ベルト巻取装置35は、巻取装置本体36と、巻取装置本体36をリヤインナパネル5に固定するためのブラケット6と、を備えている。つまり、ブラケット6とリヤインナパネル5との間をボルト38で締結することにより、ベルト巻取装置35はリヤインナパネル5に取り付けられている。
また、ベルト巻取装置35に設けられたベルト31は、ピラーガーニッシュ11Bに形成されたベルト挿通孔37を通過して車室3内に配されている。ベルト31は、ベルト挿通孔37から上方(天井面)に向かって配設されるとともに、リング部材33の貫通孔34を挿通した後に折り返して下方(床面)に向かって配設され、床面近傍に設けられたベルト支持部39(図2参照)においてベルト31の端部が支持固定されている。なお、ベルト31には、シート座面近傍に設けられたバックル(不図示)に嵌合されるタング41が設けられており、シートに着座した乗員がタング41とバックルとを連結することにより、乗員がシートベルト装置30にて保護されて安全性が確保される。
【0014】
さらに、図5に示すように、本実施形態では、凹陥部21の底面22に開口部25が形成されており、該開口部25を覆うリッド部材27が着脱可能に設けられている。
【0015】
次に、このように構成された車体構造にシートベルト装置30を取り付ける方法について説明する。
まず、シートベルト装置30を車体8に取り付ける。具体的には、車体8のリヤインナパネル5の所望の位置にシートベルト装置30のベルト巻取装置35を固定する。このとき、ベルト巻取装置35は、見切り線23近傍に固定される。また、ベルト巻取装置35の巻取装置本体36からベルト31の端部(ベルト支持部39が取り付けられた側の端部)が1m程度露出した状態、つまり、巻取装置本体36からベルト31の端部、リング部材33、タング41およびベルト支持部39が突出された状態で固定されている。
【0016】
続いて、リヤインナパネル5の車室3側にピラーガーニッシュ11およびリヤサイドライニング13が所定の位置に配される。このとき、ピラーガーニッシュ11Bのリッド部材27は取り付けられておらず、開口部25が形成された状態である。
【0017】
続いて、シートベルト装置30のベルト31および車室側配置部材であるリング部材33、タング41およびベルト支持部39を所定の位置に設置する。具体的には、ベルト巻取装置35の巻取装置本体36からベルト31を引き出すし、該ベルト31に既に取り付けられているリング部材33、タング41およびベルト支持部39を開口部25から車室3側へ引き出す。続いて、リング部材33を凹陥部21の所定の位置に固定するとともに、ベルト支持部39を車室3の床面近傍に支持固定する。このとき、図6に示すように、ピラーガーニッシュ11Bには開口部25が形成されているため、ベルト31、リング部材、タング41およびベルト支持部39を容易に車室3側に引き出すことができる。
【0018】
続いて、開口部25をリッド部材27で塞ぐ。つまり、ベルト挿通孔37を残した状態で、開口部25をリッド部材27で閉塞する。なお、リッド部材27はピラーガーニッシュ11Bと同じ材料で製造されている。したがって、開口部25をリッド部材27で閉塞しても、外観が損なわれることはない。
【0019】
本実施形態によれば、ベルト巻取装置35がピラーガーニッシュ11B(11)とサイドライニング13との見切り線23近傍に配されるため、ベルト巻取装置35よりも下方に空間を形成することができる。また、ピラーガーニッシュ11Bに開口部25を形成し、該開口部25をリッド部材27でベルト挿通孔37を残して閉塞することにより、外観に影響を及ぼすことなくシートベルト装置30を取り付けることができる。つまり、従来よりもベルト巻取装置35を高い位置に取り付けても、外観に影響されることがなくなる。言い換えれば、シートベルト装置30のベルト巻取装置35の高さ方向の位置に影響されることなく、また、外観に影響されることなくシートベルト装置30を車体8に取り付けることができる。
【0020】
また、ベルト巻取装置35を車体8の上部に取り付けることにより、ベルト巻取装置35の下方には空間を形成することができるため、リヤコンビランプの位置を従来よりも高い位置に取り付けることや、3列目シート用の空調設備を所望の位置に設けることができる。
【0021】
尚、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した実施形態に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、実施形態で挙げた具体的な構造や形状などはほんの一例に過ぎず、適宜変更が可能である。
例えば、本実施形態においては、車両の3列目シート用のシートベルト装置を用いて説明したが、1,2列目シート用のシートベルト装置に同様の取付構造を採用してもよい。
【符号の説明】
【0022】
3…車室 11(11A,11B)…ピラーガーニッシュ 13…リヤサイドライニング(サイドライニング) 23…見切り線 25…開口部 27…リッド部材 30…シートベルト装置 31…ベルト 33…リング部材(車室側配置部材)35…ベルト巻取装置 39…ベルト支持部(車室側配置部材) 41…タング(車室側配置部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の乗員を保護するシートベルト装置の取付構造において、
前記シートベルト装置のベルト巻取装置が、車体側部におけるピラーガーニッシュとサイドライニングとの見切り線近傍に配置され、
前記ピラーガーニッシュに、前記シートベルト装置のベルトおよび車室側配置部材を取り出し可能な開口部が形成されるとともに、
該開口部における前記ベルトの挿通箇所以外を覆うリッド部材が取付可能に構成されていることを特徴とするシートベルト装置の取付構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−57035(P2011−57035A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207307(P2009−207307)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】