説明

シート切断方法およびシート切断装置

【課題】ノッチを有したウェハに貼付した接着シートにおけるノッチ部の切り残しを抑制することができるシート切断方法およびシート切断装置を提供すること。
【解決手段】ノッチKの傾斜K1,K2および谷部K3に刃先が沿うようにカッタ刃72を回転させつつ移動させて接着シートSを切断することで、ノッチK部分に接着シートSの切り残しが存在しない、あるいは最小限の切り残ししか存在しないようにでき、後工程であるウェハWの裏面研削工程等において、接着シートSの切り残しがウェハWと研削刃との間に挟まってウェハWを破損させたり、切り残しの部分が剥離して洗浄水が入り込んだりすることが防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハに貼付された接着シートを切断するシート切断方法およびシート切断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造工程において、被着体としての半導体ウェハ(以下、単にウェハという場合がある)の表面に保護テープ等の接着シートを貼付するとともに、貼付した接着シートをウェハの外縁に沿ってカッタ刃で切断する切断装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。この切断装置は、アライメントのために外縁の一部にV形状のノッチが形成された半導体ウェハを対象とし、その外縁に沿って接着シートを切断するとともにノッチに沿った部分の接着シートも切断するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−125871号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された切断装置では、ノッチ部においてカッタ刃がノッチの傾斜に沿わずに移動して接着シートを切断するため、ノッチの谷部近傍に接着シートが残ってしまうことになる。このため、接着シートを貼付したウェハの裏面研削工程等において、ノッチ部に残った接着シートがウェハと研削刃(砥石)との間に挟まり、ウェハを破損させてしまう可能性がある。さらに、ノッチ部に残った接着シート部分を切っ掛けとして当該接着シートがウェハから剥がれてしまい、裏面研削工程等において使用される洗浄水がウェハ表面側に入り込むことによって、ウェハ表面の回路を破損させてしまう。
【0005】
本発明の目的は、ノッチを有したウェハに貼付した接着シートにおけるノッチ部の切り残しを抑制することができるシート切断方法およびシート切断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明のシート切断方法は、外縁の一部に一方の傾斜と他方の傾斜とを備えたV形状のノッチが形成されるとともに表面に接着シートが貼付された半導体ウェハの外縁に沿ってカッタ刃を相対移動させて当該接着シートを切断するシート切断方法であって、前記ノッチの一方の傾斜に沿って前記接着シートを切断する第1傾斜切断工程と、前記ノッチの他方の傾斜に沿って前記接着シートを切断する第2傾斜切断工程と、前記半導体ウェハの外縁に沿って前記接着シートを切断する外縁切断工程とを備え、前記第1傾斜切断工程および第2傾斜切断工程において、前記カッタ刃の刃先を前記ノッチの傾斜に沿わせて前記接着シートを切断する、という構成を採用している。
【0007】
この際、本発明のシート切断方法では、前記半導体ウェハの径方向外側から内側に前記刃先を向けて前記第1傾斜切断工程を実施し、この第1傾斜切断工程に続いて前記カッタ刃を回転させ、前記半導体ウェハの径方向外側から内側に前記刃先を向けて前記第2傾斜切断工程を実施ことが好ましい。
また、本発明のシート切断方法では、前記半導体ウェハの径方向外側から内側に前記刃先を向けて前記第1傾斜切断工程を実施し、この第1傾斜切断工程に続いて前記カッタ刃を回転させ、前記半導体ウェハの径方向内側から外側に前記刃先を向けて前記第2傾斜切断工程を実施し、この第2傾斜切断工程に続いて前記カッタ刃を回転させるとともに、前記半導体ウェハの外縁に沿うように前記刃先の向きを変更させながら前記外縁切断工程を実施してもよい。
以上のシート切断方法では、前記第1傾斜切断工程および第2傾斜切断工程の少なくとも一方において、前記半導体ウェハの面交差方向から前記カッタ刃を前記接着シートに差し込む動作のみによって当該接着シートを切断してもよい。
【0008】
また、本発明のシート切断方法は、前記半導体ウェハの外縁の少なくとも一部に沿って前記外縁切断工程を実施し、この外縁傾斜切断工程に続いて前記カッタ刃を回転させ、前記半導体ウェハの径方向外側から内側に前記刃先を向けて前記第1傾斜切断工程を実施し、この第1傾斜切断工程に続いて前記カッタ刃を回転させ、前記半導体ウェハの径方向内側から外側に前記刃先を向けて前記第2傾斜切断工程を実施し、この第2傾斜切断工程の後に前記カッタ刃を回転させるとともに、前記半導体ウェハの外縁に沿うように前記刃先の向きを変更させながら前記外縁切断工程の残りを実施する、という構成を採用してもよい。
さらに、本発明のシート切断方法では、前記ノッチは、前記一方および他方の傾斜同士を結ぶ谷部を備え、前記第1傾斜切断工程および第2傾斜切断工程の少なくとも一方の工程に続いて、前記カッタ刃を回転させ、前記谷部に沿うように前記刃先の向きを変更させながら前記接着シートを切断することが好ましい。
【0009】
一方、本発明のシート切断装置は、外縁の一部に一方の傾斜と他方の傾斜とを備えたV形状のノッチが形成されるとともに表面に接着シートが貼付された半導体ウェハの外縁に沿ってカッタ刃を相対移動させて当該接着シートを切断するシート切断装置であって、前記いずれかのシート切断方法によって前記接着シートを切断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上のような本発明によれば、第1傾斜切断工程および第2傾斜切断工程において、カッタ刃の刃先をノッチの傾斜に沿わせて接着シートを切断することで、ノッチ部分に接着シートが残ることがなく、ウェハの裏面研削工程等において、接着シートがウェハと研削刃との間に挟まってウェハを破損させてしまう事態を回避することができる。さらに、ノッチ部分に接着シートが残らないことから、その部分を切っ掛けとした接着シートの剥離を防止することができ、裏面研削工程等において、洗浄水等の浸入によるウェハの回路破損を防止することができる。
また、第1傾斜切断工程や第2傾斜切断工程において、カッタ刃を差し込む動作のみによって接着シートを切断するようにすれば、半導体ウェハの面に沿った方向へのカッタ刃の移動を省略することができ、カッタ刃の移動制御を簡略化することができる。
さらに、第1傾斜切断工程や第2傾斜切断工程に続いて、ノッチの谷部に沿って刃先を移動させて接着シートを切断するようにすれば、ノッチの谷部に接着シートが残ることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のシート切断装置を備えるシート貼付装置の全体図。
【図2】図1のシート切断装置の動作説明図。
【図3】図1のシート切断装置の図2とは異なる動作説明図。
【図4】図1のシート切断装置の図2、図3とは異なる動作説明図。
【図5】図1のシート切断装置の図2〜図4とは異なる動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態では、特に明示しない限り、「上」、「下」、「左」、「右」といった方位を示す用語は、図1を基準として用いる。
図1において、シート貼付装置1は、一方の面である表面WAと他方の面である裏面WBとを有した被着体としてのウェハWに対し、回路が形成された表面WAに接着シートSを貼付するとともに、貼付した接着シートSをウェハWの外縁WCに沿って切断する装置である。ここで、ウェハWの外縁WCの一部には、当該ウェハWの結晶方位を示すためのV形状のノッチK(図2〜図5参照)が形成されており、このノッチKは、外縁WCから当該ウェハWの径方向内側に向かう一方の傾斜としての傾斜K1と、他方の傾斜としての傾斜K2と、これらの傾斜K1,K2同士を結ぶ谷部K3とを有して形成されている。
【0013】
シート貼付装置1は、裏面WB側からウェハWを支持する支持手段2と、ウェハWの表面WAに対向させて帯状の接着シートSを供給する供給手段5と、供給された接着シートSを外周テーブル32およびウェハWの表面WAに押圧して貼付する押圧手段6と、ウェハWに貼付された接着シートSを当該ウェハWの外縁WCに沿って切断するシート切断装置7と、各部の動作を制御する制御手段8とを備えて構成されている。
【0014】
支持手段2は、図示しない吸引口を介して裏面WB側からウェハWを吸着保持するとともに、ウェハWの外縁WCと略同一の外形でかつ平坦な支持面22を有する円盤形状のテーブル21と、平面視方形の形状に設けられ、内部に円形の穴34が形成されるとともに、テーブル21の支持面22と平行でかつ平坦な平坦面33が形成された外周テーブル32と、穴34の底面部31上に固定されるとともに、出力軸42がテーブル21下面に固定された駆動機器としての直動モータ41とを備えている。なお、平坦面33には、貼付された接着シートSを剥離可能なように、フッ素樹脂等が積層されて不接着処理が施されている。
【0015】
供給手段5は、支持手段2に対して左側である接着シートSの供給側に設けられる供給側フレーム5Aと、支持手段2に対して右側である回収側に設けられる回収側フレーム5Bと、図示しないリニアモータなどの駆動機器で駆動されて左右方向に移動自在に設けられる移動フレーム5Cとを備えて構成されている。
【0016】
供給側フレーム5Aには、基材BSに接着剤ADが積層され、ロール状に巻回された接着シートSを支持する支持ローラ51と、支持ローラ51から引き出された接着シートSを案内するガイドローラ52と、駆動機器としてのモータ53Aで駆動されて接着シートSを送り出す駆動ローラ53と、この駆動ローラ53との間に接着シートSを挟み込むピンチローラ54とが設けられている。回収側フレーム5Bには、図示しないモータ等の駆動機器で駆動されて接着シートSの不要部分を巻き取って回収する回収ローラ55と、接着シートSの不要部分を案内する2つのガイドローラ56とが設けられている。移動フレーム5Cには、駆動機器としてのモータ57Aで駆動される駆動ローラ57と、この駆動ローラ57との間に接着シートSを挟み込むピンチローラ58とが設けられている。
【0017】
押圧手段6は、図示しないリニアモータなどの駆動機器で駆動されて左右方向に移動自在に設けられるフレーム61と、このフレーム61に支持されて接着シートSの基材BS側に当接可能な押圧ローラ62と、フレーム61を上下動させる図示しない直動モータ等の駆動機器とを備えて構成されている。なお、押圧ローラ62は、ゴムや樹脂等で構成された弾性変形可能な部材によって形成されている。
【0018】
シート切断装置7は、支持手段2よりも図1中紙面奥側に設けられた駆動機器としての多関節ロボット71と、この多関節ロボット71の先端部に設けられるカッタ刃72とを備えて構成されている。多関節ロボット71は、ベース73と、このベース73に対して鉛直軸PA(上下方向の軸)を中心として回転可能に軸支された第1アーム711と、この第1アーム711に対して鉛直軸PAに直交する水平軸(図1では紙面直交方向の軸)を中心として回転可能に軸支された第2アーム712と、この第2アーム712に対して水平軸を中心として回転可能に軸支された第3アーム713と、この第3アーム713の延出軸EAを中心として回転可能に軸支された第4アーム714と、この第4アーム714に対して延出軸EAに直交する軸(図1では紙面直交方向の軸)を中心として回転可能に軸支された第5アーム715と、この第5アーム715の延出軸CAを中心として回転可能に軸支された第6アーム716とを備え、第6アーム716に設けられた図示しないチャック機構によって、カッタ刃72が取り付けられたカッターツール78を支持可能に設けられている。
【0019】
制御手段8は、CPUなどの演算手段やメモリなどの記憶手段を有したコンピュータからなる制御装置81と、オペレータの操作や適宜な検出手段に基づいてウェハWや接着シートS等に関する各種情報を制御装置81に入力する入力手段82とを備えて構成されている。ここで、各種情報としては、ウェハWの径寸法や厚み寸法、ノッチKの形状に関する寸法、位置情報、接着シートSの厚み寸法などが例示できる。なお、それら情報は、入力手段82から制御装置81に入力してもよいし、図示しないセンサ等の検出手段によって自動で制御装置81に入力してもよいし、予め制御装置81のメモリに記憶されていてもよい。制御装置81は、各種情報に応じて、外縁WCに沿った接着シートSの切断経路や、ノッチK部分の切断手順、接着シートSへのカッタ刃72の差し込み深さなどの制御指令をシート切断装置7等の駆動機器に出力する。
【0020】
以下、シート貼付装置1の動作を説明する。
先ず、各種情報を入力手段82から制御装置81に入力してシート貼付装置1をスタンバイ状態としておく。その後、ウェハWがテーブル21の支持面22に載置されると、供給手段5は、駆動ローラ57を停止したままで移動フレーム5Cを支持手段2の左側から右方向に移動し、この移動に同期して支持ローラ51から接着シートSの未使用部分を繰り出すとともに、回収ローラ55で接着シートSの不要部分を巻き取る。これにより、ウェハWの表面WAの上方に接着シートSの接着剤AD側を対向させて供給する。次に、制御装置81からの指令を受けた直動モータ41は、ウェハWの表面WAと外周テーブル32の平坦面33とが同一平面内に位置するように、テーブル21を上昇または下降させる。次に、押圧手段6は、図示しない直動モータを駆動して押圧ローラ62を下降させ、この押圧ローラ62で接着シートSを押し下げ、接着剤AD面を平坦面33に押圧する。さらに、押圧手段6は、押圧ローラ62を押圧したままで図示しないリニアモータを駆動し、押圧ローラ62を左方向に移動させて接着シートS上を転動させ、平坦面33およびウェハWの表面WAに順次接着剤AD面を押圧して貼付する。
【0021】
以上のようにして平坦面33およびウェハWの表面WAに接着シートSを貼付した後、シート切断装置7は、多関節ロボット71を駆動して制御手段8に入力されたウェハWの径寸法の情報を基にしてウェハWの外縁WCに沿ってカッタ刃72で接着シートSを切断する。この際、制御装置81は、多関節ロボット71やカッターツール78の動作を制御し、ノッチKの形状に応じてカッタ刃72の移動経路や刃先72Aの向きを適宜に変更しつつ接着シートSを切断する。
【0022】
具体的には、多関節ロボット71の動作によりカッタ刃72を回転させ、ウェハWの径方向内側に刃先72Aを向け、刃先72Aを形成する刃の左側面72Bを傾斜K1と平行となるようにする。次に、図2(A)に示すように、カッタ刃72を傾斜K1におけるウェハWの径方向外側に下降させ、当該カッタ刃72を接着シートSに突き刺す。次いで、カッタ刃72を傾斜K1に沿ってウェハWの径方向内側に移動させる(第1傾斜切断工程)。その後、カッタ刃72を回転させ、谷部K3に沿うように刃先72Aの向きを変更させながらカッタ刃72をノッチKの谷部K3の形状に沿って移動させることで、谷部K3の一部又は全部に沿って接着シートSを切断し、第1切断部C1を形成する(図2(B)参照)。
そして、一旦、カッタ刃72を接着シートSから離隔させてから、カッタ刃72を回転させ、ウェハWの径方向内側に刃先72Aを向け、刃先72Aを形成する刃の右側面72Cを傾斜K2と平行となるようにする。次に、図2(B)に示すように、カッタ刃72を傾斜K2におけるウェハWの径方向外側に下降させ、当該カッタ刃72を接着シートSに突き刺す。次いで、カッタ刃72を傾斜K2に沿ってウェハWの径方向内側に移動させる(第2傾斜切断工程)。その後、カッタ刃72を回転させ、谷部K3に沿うように刃先72Aの向きを変更させながらカッタ刃72をノッチKの谷部K3の形状に沿って移動させることで、谷部K3に沿って接着シートSを切断し、第1切断部C1と連なる第2切断部C2を形成する(図2(C)参照)。
その後、再度、カッタ刃72を接着シートSから離隔させてから、カッタ刃72を回転させ、ウェハWの円周方向に刃先72Aを向け、刃の左側面72BがウェハWの接線方向(刃先72Aが位置するウェハWの外縁における接線方向であって、以降「円周切断方向」という)に向くようにする(図2(C)参照)。次に、図2(C)に示すように、第2切断部C2のウェハWの径方向外側に連なるようにカッタ刃72を接着シートSに突き刺し、カッタ刃72を回転させ、ウェハWの外縁WCに沿うように刃先72Aを向けるとともに、ウェハWの外縁WCに沿うように刃先72Aの向きを変更させながら、カッタ刃72をウェハWの外縁WCの形状に沿って移動させる。そして、外縁WCに沿って切断された切断部が、第1切断部C1に連なることで、ウェハWの全周に沿って接着シートSが切断される(外縁切断工程)。
【0023】
以上のようにして接着シートSを切断したら、シート切断装置7がウェハW上から退避するとともに押圧ローラ62が上昇し、接着シートSが貼付されたウェハWは、適宜な搬送装置によって搬出されて裏面研削などの後工程に送られる。その後、供給手段5は、移動フレーム5Cを左方向に移動させることで、ウェハWの外縁WCに沿って切断され、平坦面33上に貼付されている接着シートSの不要部分を駆動ローラ57で剥離する。そして、次のウェハWが支持手段2に支持されると、以降上述と同様の動作が繰り返される。
【0024】
なお、シート切断装置7による接着シートSの切断手順としては、図2で説明したものに限らず、図3〜図5に示す各手順によって接着シートSを切断してもよい。
図3に示す切断手順では、先ず、カッタ刃72を回転させ、ウェハWの径方向内側に刃先72Aを向け、刃の左側面72Bを傾斜K1と平行となるようにする。次に、図3(A)に示すように、カッタ刃72を傾斜K1におけるウェハWの径方向外側に下降させ、当該カッタ刃72を接着シートSに突き刺す。次いで、カッタ刃72を傾斜K1に沿ってウェハWの径方向内側に移動させることで、切断部C3が形成される(図3(B)参照)(第1傾斜切断工程)。その後、カッタ刃72を回転させ、谷部K3に沿うように刃先72Aの向きを変更させながらカッタ刃72をノッチKの谷部K3の形状に沿って移動させることで、図3(B)に示すように、谷部K3に沿って接着シートSを切断する。そして、カッタ刃72を接着シートSから離隔させることなく、カッタ刃72を回転させ、ウェハWの径方向外側に刃先72Aを向け、刃の左側面72Bを傾斜K2と平行となるようにする。次いで、傾斜K2に沿ってカッタ刃72をウェハWの径方向外側に移動させる(第2傾斜切断工程)。その後、カッタ刃72を接着シートSから離隔させることなく、図3(C)に示すように、カッタ刃72を回転させ、刃先72Aを円周切断方向に向ける。次いで、カッタ刃72を回転させ、ウェハWの外縁WCに沿うように刃先72Aを向けるとともに、ウェハWの外縁WCに沿うように刃先72Aの向きを変更させながら、カッタ刃72をウェハWの外縁WCの形状に沿って移動させる。そして、外縁WCに沿って切断された切断部が、先に切断した切断部C3に連なることで、ウェハWの全周に沿って接着シートSが切断される(外縁切断工程)。
なお、図4に示す切断手順のように、ウェハWの外縁WCの所定位置における接着シートSにカッタ刃72を突き刺して切断部C4を形成してから、図3で示した切断手順を行うようにしてもよい。
【0025】
図5に示す切断手順では、先ず、カッタ刃72を回転させウェハWの径方向内側に刃先72Aを向け、刃の左側面72Bを傾斜K1と平行となるようにする。次に、図5(A)に示すように、カッタ刃72を傾斜K1におけるウェハWの径方向外側に下降させ、ウェハWの面交差方向からカッタ刃72を接着シートSに突き刺す。次いで、カッタ刃72を傾斜K1に沿って移動させることなく、図5(B)に示すように、カッタ刃72を深く差し込むことによって、カッタ刃72の切断方向の幅によって傾斜K1に沿った接着シートSの切断部C5を形成する(図5(C)参照)(第1傾斜切断工程)。なお、ノッチKの傾斜K1、K2の長さは0.5mm〜3mm程度であり、カッタ刃72の切断方向の幅は10mmに設定されている。そして、一旦、カッタ刃72を接着シートSから離隔させてから、カッタ刃72を回転させ、ウェハWの径方向内側に刃先72Aを向け、刃の右側面72Cを傾斜K2と平行となるようにする。次に、図5(C)に示すように、カッタ刃72を傾斜K2におけるウェハWの径方向外側に下降させ、当該カッタ刃72を接着シートSに突き刺す。その後、カッタ刃72を傾斜K2に沿って移動させることなく、図5(D)に示すように、カッタ刃72を深く差し込むことによって、カッタ刃72の切断方向の幅によって傾斜K2に沿った接着シートSの切断部C6を形成する(図5(E)参照)(第2傾斜切断工程)。その後、図5(E)に示すように、カッタ刃72を上方に移動させてカッタ刃72の差し込み深さを浅くし、カッタ刃72を回転させ、谷部K3に沿うように刃先72Aの向きを変更させながらカッタ刃72をノッチKの谷部K3の形状に沿って移動させることで、谷部K3に沿って接着シートSを切断し、切断部C6が切断部C5と連なる。次いで、再度、カッタ刃72を接着シートSから離隔させてから、カッタ刃72を回転させ、円周切断方向に刃先72Aを向ける。次に、第6切断部C6のウェハWの径方向外側に連なるように、カッタ刃72を接着シートSに突き刺し、カッタ刃72を回転させ、ウェハWの外縁WCに沿うように刃先72Aを向けるとともに、ウェハWの外縁WCに沿うように刃先72Aの向きを変更させながら、カッタ刃72をウェハWの外縁WCの形状に沿って移動させる。そして、切断部が切断部C5に連なることで、ウェハWの全周に沿って接着シートSが切断される(外縁切断工程)。
【0026】
以上のような本実施形態によれば、次のような効果がある。
すなわち、ノッチKの傾斜K1,K2および谷部K3に刃先が沿うようにカッタ刃72を回転させ、切断方向に刃先72Aを向けて接着シートSを切断することで、ノッチK部分に接着シートSの切り残しが存在しない、あるいは最小限の切り残ししか存在しないようにでき、後工程であるウェハWの裏面研削工程等において、接着シートSの切り残しがウェハWと研削刃との間に挟まってウェハWを破損させたり、切り残しの部分が剥離して洗浄水が入り込んだりすることが防止できる。
【0027】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。また、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0028】
例えば、本発明における半導体ウェハとしては、シリコン半導体ウェハや化合物半導体ウェハ等が例示できる。また、接着シートSは、マウント用シートや、保護シート、ダイシングテープ、ダイボンディングテープなど、半導体ウェハに貼付される各種シートやテープ、フィルムであってもよい。
また、前記実施形態では、シート貼付装置1の一部にシート切断装置7を設けた構成を説明したが、本発明のシート切断装置は、シート貼付装置とは別に設けられてよいし、シート貼付装置以外の装置の一部として設けられるものであってもよい。
また、前記実施形態では、シート切断装置7が多関節ロボット71を有して構成されていたが、これに限らず、前述の切断手順を実施できる程度にカッタ刃の動作を制御可能なものであればよい。
さらに、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダおよびロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
【符号の説明】
【0029】
7 シート切断装置
72 カッタ刃
72A 刃先
K ノッチ
K1,K2 傾斜
K3 谷部
S 接着シート
W ウェハ
WA 表面
WB 裏面
WC 外縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外縁の一部に一方の傾斜と他方の傾斜とを備えたV形状のノッチが形成されるとともに表面に接着シートが貼付された半導体ウェハの外縁に沿ってカッタ刃を相対移動させて当該接着シートを切断するシート切断方法であって、
前記ノッチの一方の傾斜に沿って前記接着シートを切断する第1傾斜切断工程と、
前記ノッチの他方の傾斜に沿って前記接着シートを切断する第2傾斜切断工程と、
前記半導体ウェハの外縁に沿って前記接着シートを切断する外縁切断工程とを備え、
前記第1傾斜切断工程および第2傾斜切断工程において、前記カッタ刃の刃先を前記ノッチの傾斜に沿わせて前記接着シートを切断することを特徴とするシート切断方法。
【請求項2】
前記半導体ウェハの径方向外側から内側に前記刃先を向けて前記第1傾斜切断工程を実施し、
この第1傾斜切断工程に続いて前記カッタ刃を回転させ、前記半導体ウェハの径方向外側から内側に前記刃先を向けて前記第2傾斜切断工程を実施することを特徴とする請求項1に記載のシート切断方法。
【請求項3】
前記半導体ウェハの径方向外側から内側に前記刃先を向けて前記第1傾斜切断工程を実施し、
この第1傾斜切断工程に続いて前記カッタ刃を回転させ、前記半導体ウェハの径方向内側から外側に前記刃先を向けて前記第2傾斜切断工程を実施し、
この第2傾斜切断工程に続いて前記カッタ刃を回転させるとともに、前記半導体ウェハの外縁に沿うように前記刃先の向きを変更させながら前記外縁切断工程を実施することを特徴とする請求項1に記載のシート切断方法。
【請求項4】
前記第1傾斜切断工程および第2傾斜切断工程の少なくとも一方において、前記半導体ウェハの面交差方向から前記カッタ刃を前記接着シートに差し込む動作のみによって当該接着シートを切断することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のシート切断方法。
【請求項5】
前記半導体ウェハの外縁の少なくとも一部に沿って前記外縁切断工程を実施し、
この外縁傾斜切断工程に続いて前記カッタ刃を回転させ、前記半導体ウェハの径方向外側から内側に前記刃先を向けて前記第1傾斜切断工程を実施し、
この第1傾斜切断工程に続いて前記カッタ刃を回転させ、前記半導体ウェハの径方向内側から外側に前記刃先を向けて前記第2傾斜切断工程を実施し、
この第2傾斜切断工程の後に前記カッタ刃を回転させるとともに、前記半導体ウェハの外縁に沿うように前記刃先の向きを変更させながら前記外縁切断工程の残りを実施することを特徴とする請求項1に記載のシート切断方法。
【請求項6】
前記ノッチは、前記一方および他方の傾斜同士を結ぶ谷部を備え、
前記第1傾斜切断工程および第2傾斜切断工程の少なくとも一方の工程に続いて、前記カッタ刃を回転させ、前記谷部に沿うように前記刃先の向きを変更させながら前記接着シートを切断することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のシート切断方法。
【請求項7】
外縁の一部に一方の傾斜と他方の傾斜とを備えたV形状のノッチが形成されるとともに表面に接着シートが貼付された半導体ウェハの外縁に沿ってカッタ刃を相対移動させて当該接着シートを切断するシート切断装置であって、
請求項1から請求項6のいずれかに記載のシート切断方法によって前記接着シートを切断することを特徴とするシート切断装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−198980(P2011−198980A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63716(P2010−63716)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】