説明

シート形成用組成物、シート形成用組成物の製造方法、および、ディスプレイパネル製造用シート状未焼成体

【課題】無機粉末の分散性が高く、均一な膜厚の塗膜を形成することができ、かつ、焼成後のシュリンクを抑制することができるシート形成用組成物、該シート形成用組成物の製造方法、およびディスプレイパネル製造用シート状未焼成体を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)少なくとも、(i)水酸基を有する重合性モノマーと、(ii)CH2=CR−COOCm2m+1(Rは水素原子またはアルキル基、mは6以上の整数を表す。)で示される重合性モノマーと、(iii)CH2=CR−COOCn2n+1(Rは水素原子またはアルキル基、nは4以下の整数を表す。)で示される重合性モノマーとの共重合体であるバインダー樹脂と、(B)無機粉末と、(C)溶剤とを含有してなるシート形成用組成物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート形成用組成物、その製造方法、および、当該シート形成用組成物を用いたディスプレイパネル製造用シート状未焼成体に関する。
【背景技術】
【0002】
放電現象を利用して多数の微細なセルを自己発光させることにより画像を形成するプラズマディスプレイは、大画面、薄型、軽量、フラットという、従来のディスプレイでは実現できなかった優れた特徴を有しており、その普及が図られている。
【0003】
従来のプラズマディスプレイは、縦方向にリブを入れたストレート構造のセルが主流であった。しかし、近年、プラズマディスプレイ前面への効率的な導光を図るため、縦方向だけでなく横方向にもリブを入れたワッフル構造のセルが開発された。セルをワッフル構造にすることで、隣接セルからの漏光を防ぎ、極めて高効率な前面への導光を実現できる。
【0004】
ワッフル構造型セルを有するプラズマディスプレイは、透明電極とバス電極からなる複合電極が互いに平行に形成された前面板と、上記複合電極と直交するようにアドレス電極が互いに平行に形成された背面板とが対向して配設され、一体化されてなる表示素子である。前記前面板は表示面となる透明ガラス基板を有しており、このガラス基板の内側、すなわち背面板側には、上記複合電極が配置されている。そして、この複合電極を覆うように誘電体層が形成され、この誘電体層上にはパターニングされたスペーサ層が設けられており、この誘電体層およびスペーサ層の表面にはMgO等からなる保護膜が形成されている。一方、背面板の基板の前面板側には、上記のアドレス電極が配置され、このアドレス電極を覆うように誘電体層が形成され、この誘電体層上に下記の発光部が形成されている。
【0005】
上記の複合電極とアドレス電極とが交差する空間に位置することになる前記発光部は多数のセルから構成されている。多数のセルは、前記誘電体層上の縦横方向に形成されたリブによって構成されており、リブの壁面とリブ内の誘電体層の表面、すなわち各セルの内面と底面を覆うようにして蛍光体層が設けられている。プラズマディスプレイでは、前面板の複合電極間に交流電源から所定の電圧を印加して電場を形成することにより、セル内で放電が行われ、この放電により生じる紫外線により蛍光体層を発光させる。
【0006】
ワッフル構造型のプラズマディスプレイでは、誘電体層上に、ライン状に等間隔に配列した多数のスペーサ層が設けられている。この前面板では、前記スペーサ層がリブと接触するため、リブで囲まれてなる各セルの上部に隙間ができ、この隙間を通じて各セルへ希ガスを導入できる。
【0007】
このようなプラズマディスプレイ前面板を製造する方法としては、フォトリソグラフィー法を利用した製造方法が主流となっている。なお、以下、ディスプレイ前面板をディスプレイパネルともいう。
【0008】
以下、フォトリソグラフィー法を利用した製造プロセスを説明する。まず、ガラス基板上に非感光性のガラスペースト膜からなる誘電体層、および、感光性のガラスペースト膜からなるスペーサ層を形成し、このスペーサ層に、フォトマスクを介して紫外線などを照射する。つぎに、現像処理してレジストパターンを顕在化させ、これを500℃〜700℃で焼成することにより誘電体層およびスペーサ層を同時に形成する。
【0009】
フォトリソグラフィー法を利用した製造方法では、1度の焼成で、誘電体層およびスペーサ層を同時に焼成できるため、スクリーン印刷法を利用した製造方法と比較して製造コストを抑えることができるという利点がある。
【0010】
前述の誘電体層およびスペーサ層を形成するためのガラスペースト組成物は、バインダー樹脂を適当な有機溶剤に溶解させたバインダー成分に、ガラスフリットを分散させることによって調製できる。バインダー樹脂としては、ガラス基板への密着性の観点から、従来から水酸基含有樹脂が用いられてきた。このような水酸基含有樹脂を溶解する有機溶剤としては、水酸基含有樹脂に対する溶解性および環境安全性の観点から、工業的生産レベルではアルコール系の溶剤が主流である。
【0011】
また、従来、バインダーとして用いられる樹脂としては、バインダー樹脂に柔軟性をもたせる観点から、長鎖を有する重合性モノマーを構成単位とするアクリル樹脂が用いられてきた(下記特許文献1参照)。
【0012】
【特許文献1】特開平08−095241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前述のバインダー樹脂においては、水酸基含有樹脂とアルコール系溶剤を組み合わせたバインダー成分中にガラスフリットを添加すると、ガラスフリットが均一に分散せず、しばしばガラスフリットが凝集するといった問題があった。
【0014】
均一な塗膜を形成するためには、バインダー成分中にガラスフリットを均一に分散させることが極めて重要である。ガラスフリットが均一に分散していないと、すなわち、ガラスフリットのバインダー成分への分散に濃淡ができると、離型支持フィルム上にガラスペースト組成物を塗布して塗膜を形成する際、分散の濃い部分である塊状のガラスペーストによってスジ引きなどが発生し、品質劣化を招く原因となっていた。
【0015】
ガラスフリットの分散性とバインダー樹脂中の水酸基量との間には密接な関係があり、バインダー樹脂の水酸基量を増加させることにより、ガラスフリットの分散性を向上させることは可能である。しかし、バインダー樹脂中の水酸基量が増加すると、誘電体層の焼成工程においてシュリンクが発生し、基板と誘電体層の間に歪力が生じて、誘電体層にひび割れが発生するといった新たな問題を引き起こすといった問題があった。
【0016】
さらに、上記特許文献1のように、長鎖を有する重合性モノマーをバインダー樹脂の構成単位として用いることにより、バインダー樹脂中の水酸基に対する立体障害が発生するため、ガラスフリットの分散性が低下するという問題があった。また、この問題点を回避しようとして水酸基を有する重合性モノマーの構成単位の構成比率を増加させると、焼成時の熱収縮によって誘電体層にひび割れが発生するという前述の問題があった。
【0017】
このように、従来のガラスペースト組成物では、ガラスフリットの分散性と誘電体層の平坦性を同時に向上させることは困難であった。
【0018】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、ガラスフリットの分散性が高く、かつ、焼成時のシュリンクが低減し、均一な膜厚を有する塗膜を形成できるシート形成用組成物、およびその製造方法を提供することを目的とする。さらには、焼成時のシュリンクが低減し、均一な膜厚を有し、かつ、柔軟性が高く電極への追従性に優れたディスプレイパネル製造用シート状未焼成体を提供することをも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究の結果、ガラスフリットの分散性を高めるためには、ガラスフリットの表面に吸着した水分に由来する水酸基とバインダー樹脂に由来する水酸基とを優先的に水素結合させることが重要であることを知るに至った。
【0020】
この点から、バインダー樹脂に軟化点が低い長鎖を有する重合性モノマー構成単位を用いると、バインダー樹脂に柔軟性をもたせる点では有利であるが、一方、バインダー樹脂中の水酸基に対する立体障害が発生するため、ガラスフリットの表面に吸着した水分に由来する水酸基とバインダー樹脂に由来する水酸基との水素結合が阻害され、ガラスフリットの分散性が低下すると考えられた。
【0021】
そこで、水酸基を有する重合性モノマー構成単位と、長鎖を有する重合性モノマー構成単位と、短鎖を有する重合性モノマー構成単位とを含むバインダー樹脂を構成することにより、バインダー樹脂に柔軟性をもたせたまま、バインダー樹脂中の水酸基に対する立体障害を減少させ、ガラスフリットの分散性も高めることができることを見出した。
【0022】
すなわち、本発明のシート形成用組成物は、(A)少なくとも、(i)水酸基を有する重合性モノマーと、(ii)CH2=CR−COOCm2m+1(Rは水素原子またはアルキル基、mは6以上の整数を表す。)で示される重合性モノマーと、(iii)CH2=CR−COOCn2n+1(Rは水素原子またはアルキル基、nは4以下の整数を表す。)で示される重合性モノマーとの共重合体であるバインダー樹脂と、(B)無機粉末と、(C)溶剤とを含有してなることを特徴とする。
【0023】
前記(C)成分である溶剤としては、水酸基を有しない有機溶剤であることが好ましい。また、本発明のシート組成物は、さらに、光重合性単量体および光重合開始剤を含有することができる。
【0024】
本発明のシート形成用組成物の製造方法は、以上のようなシート組成物の製造方法であって、
(A)バインダー樹脂とその他の成分とを混合し、この混合物を混練する混練工程を含むことを特徴とする。
【0025】
本発明のディスプレイパネル製造用シート状未焼成体は、基板上に誘電体層が形成されてなるディスプレイパネルにおける前記誘電体層を製造するために用いるシート状未焼成体であって、
離型支持フィルム上に少なくとも以上のようなシート組成物から得られた未焼成膜が形成されてなることを特徴とする。前記ディスプレイパネルとしては、プラズマディスプレイパネルが好ましい。
【0026】
ここで、本願明細書において、「ディスプレイパネル製造用シート状未焼成体」とは、ディスプレイパネルを製造する際、離型支持フィルム上に製膜された層を、離型支持フィルムから剥がしてガラス基板上に接着するために用いられるシート状材料を意味する。
【発明の効果】
【0027】
本発明のシート形成用組成物は、柔軟性が高く分散性に優れる特定の3成分系アクリル樹脂を含有してなるため、該シート形成用組成物を用いることにより、柔軟性が高く電極への追従性に優れ、焼成時の収縮の少ない良好な誘電体層およびスペーサ層を提供できる。特に、本発明のディスプレイパネル製造用シート状未焼成体は、プラズマディスプレイ、プラズマアドレス液晶ディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイなどの各種ディスプレイの誘電体やスペーサ材料層等を作成する材料として用いられ、特に高精密化が要求されるプラズマディスプレイ前面板の誘電体層およびスペーサ材料層の作成に好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
〔シート組成物〕
本発明のシート形成用組成物は、(A)少なくとも、(i)水酸基を有する重合性モノマーと、(ii)CH2=CR−COOCm2m+1(Rは水素原子またはアルキル基、mは6以上の整数を表す。)で示される重合性モノマーと、(iii)CH2=CR−COOCn2n+1(Rは水素原子またはアルキル基、nは4以下の整数を表す。)で示される重合性モノマーとの共重合体であるバインダー樹脂と、(B)無機粉末と、(C)溶剤とを含有してなることを特徴とする。
本発明のシート形成用組成物は、(A)バインダー樹脂として、少なくとも、柔軟性が高く分散性に優れる特定の3成分系アクリル樹脂を含有してなるため、後述するように該シート形成用組成物を用いることにより、柔軟性が高く電極への追従性に優れ、焼成時の収縮の少ない良好な誘電体層およびスペーサ層を提供できる。
【0029】
前記(A)成分中、(i)水酸基を有する重合性モノマー構成単位は、バインダー樹脂の水酸基として、ガラスフリットなどの無機成分の分散性を高める効果を有する。また、(ii)CH2=CR−COOCm2m+1(Rは水素原子またはアルキル基、mは6以上の整数を表す。)で示される重合性モノマー構成単位と、(iii)CH2=CR−COOCn2n+1(Rは水素原子またはアルキル基、nは4以下の整数を表す。)で示される重合性モノマー構成単位は、本発明のシート組成物によって形成される誘電体層などの柔軟性を高める効果を有する。さらに、(iii)の構成単位を含有することにより、バインダー樹脂の水酸基に対する立体障害が減少し、前記柔軟性を低減させることなく、前記分散性の低減を防ぐ効果を有する。以上のように、本発明のシート形成用組成物は、これらの3成分系アクリル樹脂を含有してなるため、該シート形成用組成物を用いた誘電体層およびスペーサ層は、柔軟性が高く電極への追従性に優れ、焼成時の収縮が少ない。
【0030】
本発明のシート形成用組成物には、感光性をもたせることもできる。例えば、感光性を付与するための成分として、さらに、光重合性単量体および光重合開始剤を含有することにより、本発明のシート組成物をプラズマディスプレイ前面板におけるスペーサ層の製造に使用することもできる。
【0031】
(A)バインダー樹脂
前記(i)水酸基を有する重合性モノマー構成単位を構成する重合性モノマーとしては、前記バインダー樹脂に水酸基を導入できる重合性モノマーであれば、特に限定されることなく、様々な重合性モノマーを使用することができる。
【0032】
前記水酸基を有する重合性モノマーであって、前記バインダー樹脂に水酸基を導入できる重合性モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、2−メタクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、エチレングリコールモノアクリレート、エチレングリコールモノメタクリレート、グリセロールアクリレート、グリセロールメタクリレート、ジペンタエリトリトールモノアクリレート、ジペンタエリトリトールモノメタクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレンなどを挙げることができる。
【0033】
また、前記(ii)および(iii)の(メタ)アクリル酸エステル構成単位を構成する重合性モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルアクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルアクリレート、i−ブチルメタクリレート、sec−ブチルアクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、3−エチルヘキシルアクリレート、3−エチルヘキシルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソミリスチルメタクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレートなどを挙げることができる。
【0034】
前記バインダー樹脂(A)中、(i)成分である重合性モノマーの構成比率は、5〜30モル%であることが好ましい。重合性モノマーの構成比率がこの範囲より低下すると、無機成分の分散性が低下し、この範囲を超えると、焼成時の収縮により誘電体層にクラックが発生するため、好ましくない。(i)成分である重合性モノマーの構成比率は、15〜25モル%であることがさらに好ましい。
【0035】
前記(ii)の構成単位は、下記一般式(1)
CH2=CR−COOCm2m+1 ・・・(1)
で示される重合性モノマー構成単位である。前記(ii)の構成単位を含有することにより本発明のシート組成物によって形成される誘電体層などの柔軟性を高める効果を有する。
【0036】
上記一般式(1)中、Rは水素原子またはアルキル基、mは6以上の整数を表す。このアルキル基としては、例えば、メチル基を挙げることができる。前記Rとしては、熱分解性の点から、メチル基が好ましい。また、mの好ましい範囲は、10から16の整数である。
【0037】
前記(ii)の重合性モノマー構成単位を構成する重合性モノマーとしては、例えば、3−エチルヘキシルアクリレート、3−エチルヘキシルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、イソミリスチルアクリレート、イソミリスチルメタクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレートなどを挙げることができる。これらの重合性モノマーの中でも、柔軟性の点から、ラウリルメタクリレートが好ましい。
【0038】
前記バインダー樹脂(A)中、(ii)の重合性モノマー構成単位を構成する重合性モノマー構成比率は10〜40モル%であることが好ましい。重合性モノマーの構成比率がこの範囲より低下すると柔軟性が低下し、この範囲を超えると、バインダー樹脂中の水酸基に対する立体障害により無機成分の分散性が低下するため好ましくない。(ii)の重合性モノマー構成単位を構成する重合性モノマー構成比率は20〜30モル%であることがさらに好ましい。
【0039】
前記(iii)の構成単位は、下記一般式(2)
CH2=CR−COOCn2n+1 ・・・(2)
で示される重合性モノマー構成単位である。前記(iii)の構成単位を含有することにより、バインダー樹脂の水酸基に対する立体障害が減少し、前記柔軟性を低減させることなく、前記分散性の低減を防ぐ効果を有する。
【0040】
上記一般式(2)中、Rは水素原子またはアルキル基、nは4以下の整数を表す。このアルキル基としては、例えば、メチル基を挙げることができる。前記Rとしては、熱分解性の点から、メチル基が好ましい。また、n=4であるブチルエステルが好ましい。
【0041】
前記(iii)の重合性モノマー構成単位を構成する重合性モノマーとしては、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、n−プロピルメタクリレート、i−プロピルアクリレート、i−プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルアクリレート、i−ブチルメタクリレート、sec−ブチルアクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレートなどを挙げることができる。これらの重合性モノマーの中でも、柔軟性の点から、i−ブチルメタクリレートが好ましい。
【0042】
前記バインダー樹脂(A)中、(iii)成分である重合性モノマーの構成比率は5〜80モル%であることが好ましく、5〜60モル%であることがさらに好ましい。重合性モノマーの構成比率がこの範囲より低下すると、バインダー樹脂中の水酸基に対する立体障害を抑制する効果が低下し、この範囲を超えると柔軟性が低下するため、好ましくない。
【0043】
前記バインダー樹脂(A)としては、前記重合性モノマー(i)から(iii)と、さらに、前記重合性モノマー(i)から(iii)とは異なる少なくとも1種の重合性モノマー(iv)との共重合体であってもよい。
【0044】
前記第4の構成単位を構成する重合性モノマー(iv)としては、前記バインダー樹脂中の水酸基に対して立体障害を起こさないものであれば、特に限定することなく様々な重合性モノマーを使用することができる。
【0045】
前記第4の構成単位を構成する重合性モノマー(iv)としては、例えば、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールメタクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノアクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコールモノメタクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレンモノアクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレンモノメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートなどの(i)から(iii)とは異なる(メタ)アクリル酸エステル構成単位を構成する重合性モノマーを挙げることができる。
また、その他の前記第4の構成単位を構成する重合性モノマー(iv)としては、例えばクロトン酸、ケイ皮酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸やそのエステルを挙げることができ、前述の(メタ)アクリル酸エステルの例示化合物をフマレートに代えたフマル酸エステル類、マレエートに代えたマレイン酸エステル類、クロトネートに代えたクロトン酸エステル類、イタコネートに代えたイタコン酸エステル類をその例として挙げることができる。
さらに、α−メチルスチレン、o−ビニルトルエン、m−ビニルトルエン、p−ビニルトルエン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、o−メトキシスチレン、m−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、酢酸ビニル、酪酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、イソプレン、クロロプレン、3−ブタジエンなども挙げることができる。
【0046】
前記第4の構成単位を構成する重合性モノマー(iv)としては、下記一般式(3)
CH2=CR−COOC511 ・・・(3)
で示される重合性モノマーも含まれる。
【0047】
上記一般式(3)中、Rは水素原子またはアルキル基を表す。このアルキル基としては、例えば、メチル基を挙げることができる。
【0048】
前記バインダー樹脂の好ましい分子量は、4万〜12万であることが好ましく、6万〜12万であることがさらに好ましい。
【0049】
また、本発明のシート形成用組成物中、(A)成分のバインダー樹脂としては、以上のような側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂と、他のバインダー樹脂を組み合わせてもよい。他のバインダー樹脂としては、セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロースなどのセルロース誘導体や、さらに、これらセルロース誘導体とエチレン性不飽和カルボン酸や(メタ)アクリレート化合物等との共重合体を用いることができる。さらに、バインダー樹脂としては、ポリビニルアルコールとブチルアルデヒドとの反応生成物であるポリブチラール樹脂などのポリビニルアルコール類、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、α−メチル−β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、α−メチル−β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、α,α−ジメチル−β−プロピオラクトン、β,β−ジメチル−β−プロピオラクトンなどのラクトン類が開環重合したポリエステル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等のアルキレングリコール単独または二種以上のジオール類と、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸などのジカルボン酸類との縮合反応で得られたポリエステル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリペンタメチレングリコールなどのポリエーテル類、ビスフェノールA、ヒドロキノン、ジヒドロキシシクロヘキサン等のジオール類と、ジフェニルカーボネート、ホスゲン、無水コハク酸等のカルボニル化合物との反応生成物であるポリカーボネート類が挙げられる。以上のバインダー樹脂は単独でも又2種以上の混合物でも使用できる。
【0050】
この場合、前記側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂と他のバインダー樹脂の総和100質量部に対して、側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂の割合を30質量部以上、他のバインダー樹脂の割合を70質量部以下とする。好ましくは、側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂の割合が50質量部以上、他のバインダー樹脂の割合が50質量部以下であり、より好ましくは側鎖に水酸基を有するバインダー樹脂の割合が70質量部以上、他のバインダー樹脂の割合が30質量部以下である。他のバインダー樹脂の割合が増加すると、無機粉末の分散性及び柔軟性を低下させる場合があるので好ましくない。
【0051】
(B)無機粉末
本発明のシート形成用組成物は、バインダー樹脂を有機溶剤に溶解したバインダー成分中に無機粉末を分散させペースト状とすることができる。
【0052】
本発明に用いる無機粉末は、焼成することでガラス化するガラスフリットであることが好ましく、例えば、PbO−SiO2系、PbO−B23−SiO2系、ZnO−SiO2系、ZnO−B23−SiO2系、BiO−SiO2系、BiO−B23−SiO2系、PbO−B23−SiO2−Al23系、PbO−ZnO−B23−SiO2系などが挙げられる。
【0053】
また、ガラスフリットに加えて、セラミックス(コーディライト等)、金属等の無機粉末を用いてもよい。このような無機粉末として、具体的には、酸化コバルト、酸化鉄、酸化クロム、酸化ニッケル、酸化銅、酸化マンガン、酸化ネオジウム、酸化バナジウム、酸化セリウムチペークイエロー、酸化カドミウム、酸化ルテニウム、シリカ、マグネシア、スピネルなどNa、K、Mg、Ca、Ba、Ti、Zr、Al等の各酸化物等が挙げられる。また、ZnO:Zn、Zn3(PO42:Mn、Y2SiO5:Ce、CaWO4:Pb、BaMgAl1423:Eu、ZnS:(Ag,Cd)、Y23:Eu、Y2SiO5:Eu、Y3A1512:Eu、YBO3:Eu、(Y,Gd)BO3:Eu、GdBO3:Eu、ScBO3:Eu、LuBO3:Eu、Zn2SiO4:Mn、BaAl1219:Mn、SrAl1319:Mn、CaAl1219:Mn、YBO3:Tb、BaMgAl1423:Mn、LuBO3:Tb、GdBO:Tb、ScBO3:Tb、Sr6Si33Cl4:Eu、ZnS:(Cu,Al)、ZnS:Ag、Y22S:Eu、ZnS:Zn、(Y,Cd)BO3:Eu、BaMgAl1223:Euなどの蛍光体粉末、鉄、ニッケル、パラジウム、タングステン、銅、アルミニウム、銀、金、白金等の金属粉末等が挙げられる。
【0054】
無機粉末の粒子径は、平均粒径が0.1〜10μm、より好ましくは0.5〜8μmが好適に用いられる。平均粒径が10μmを超えると、焼成後の表面粗さが低下するため好ましくなく、平均粒径が0.1μm未満では焼成時に微細な空洞が形成され絶縁不良発生の原因となり好ましくない。前記無機粉末の形状としては、球状、ブロック状、フレーク状、デンドライト状が挙げられ、その単独又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
また、無機粉末は物性値の異なる微粒子の混合物であってもよい。特に、ガラスフリットと熱軟化点の異なるセラミックス粉末等を用いることによって、焼成時の収縮率を抑制することができる。この無機粉末は、シート形成用組成物の用途に応じて形状、物性値の組合せ等を変えて配合するのがよい。
【0056】
(C)有機溶剤
本発明に用いる有機溶剤としては、バインダー樹脂を容易に溶解できる有機溶剤でれば特に限定されない。これらの溶剤の中でも、その分子内に水酸基を有しない有機溶剤が無機粉末の分散性を上げる点で好ましい。このような有機溶剤としては、エーテル類、ケトン類、エステル類からなる群より選ばれる少なくとも一種の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0057】
前記バインダー樹脂を容易に溶解できる有機溶剤の具体例としては、水酸基を有する有機溶剤を挙げることもできる。このような水酸基を有する有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、3−メトキシ−3−メチルブタノール等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールのアルキルエーテル類等を挙げることができる。
【0058】
前記分子内に水酸基を有しない有機溶剤の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、エチレングリコールモノヘキシルエーテルアセテート、グリセリントリアセテート、グリセリントリラウリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトフェノン、イソホロン、エチル-N-ブチルケトン、ジアセトンアルコール(4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン)、ジイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、ジ−N−プロピルケトン、メチル−N−アミルケトン(アミルメチルケトン)、メチルシクロヘキサノン、メチル−N−ブチルケトン、メチル−N−プロピルケトン、メチル−N−ヘキシルケトン、メチル−N−ヘプチルケトン、アジピン酸ジエチル、アセチルクエン酸トリメチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸ブチル、安息香酸イソアミル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸ブチル、安息香酸プロピル、安息香酸ベンジル、ギ酸イソアミル、ギ酸イソブチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、ギ酸プロピル、ギ酸ヘキシル、ギ酸ベンジル、ギ酸メチル、クエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、酢酸アミル、酢酸アリル、酢酸イソアミル、酢酸メチルイソアミル、酢酸メトキシブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソプロピル、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸第二ヘキシル、酢酸−2−エチルヘキシル、酢酸−2−エチルブチル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸−n−ブチル、酢酸第二ブチル、酢酸イソプロピル、酢酸ベンジル、酢酸メチルシクロヘキシル、シュウ酸ジアミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジブチル、酒石酸ジエチル、酒石酸ジブチル、ステアリン酸アミル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸ブチル、乳酸アミル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、フタル酸エステル、γ-ブチロラクトン、プロピオン酸イソアミル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ベンジル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジブチル、酪酸イソアミル、酪酸イソプロピル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、アルカン類、トルエン、ヘキサン類、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロペンタン、ハロゲン化炭化水素、含窒素化合物等を例示することができる。
【0059】
これらの中でも、沸点250℃以下の有機溶剤、特に沸点100℃〜200℃の有機溶剤が好ましく、具体的には、ジクロルエチルエーテル(沸点178.6℃)、n−ブチルエーテル(沸点140.9℃)、ジイソアミルエーテル(沸点173.2℃)、メチルフェニルエーテル(沸点153.9℃)、エチルフェニルエーテル(沸点170.1℃)、クレジルメチルエーテル(沸点171.8〜176.7℃)、エチルベンジルエーテル(沸点185℃)、エピクロルヒドリン(沸点117℃)、ジグリシジルエーテル(沸点103℃)、1,4−ジオキサン(沸点101.4℃)、トリオキサン(沸点114.5℃)、フルフラール(沸点162℃)、シネオール(沸点176〜177℃)、ジエチルアセタール(沸点104.2℃)、メチル−n−プロピルケトン(沸点102.4℃)、メチル−n−ブチルケトン(沸点127.2℃)、メチルイソブチルケトン(沸点116.7℃)、メチル−n−アミルケトン(沸点150.2℃)、メチル−n−ヘキシルケトン(沸点174℃)、ジエチルケトン(沸点101.7℃)、エチル−n−ブチルケトン(沸点147.4℃)、ジ−n−プロピルケトン(沸点144.2℃)、ジイソブチルケトン(沸点168.2℃)、アセトニルアセトン(沸点191.4℃)、ジアセトンアルコール(沸点163〜167.9℃)、メシチルオキシド(沸点131.4℃)、ホロン(沸点198.2℃)、シクロヘキサノン(沸点156℃)、o−メチルシクロヘキサノン(沸点165℃)、ギ酸−n−ブチル(沸点106.8℃)、ギ酸アミル(沸点130.4℃)、酢酸−n−プロピル(沸点101.6℃)、酢酸−n−ブチル(沸点126.3℃)、酢酸イソブチル(沸点118℃)、酢酸第二ブチル(沸点112.2℃)、酢酸−n−アミル(沸点149.0℃)、酢酸イソアミル(沸点142℃)、酢酸メチルイソアミル(沸点146.3℃)、酢酸メトキシブチル(沸点173℃)、酢酸第二ヘキシル(沸点146.3℃)、酢酸−2−エチルブチル(沸点162〜163℃)、酢酸−2−エチルヘキシル(沸点197.5〜198℃)、酢酸シクロヘキシル(沸点175〜176℃)、酢酸メチルシクロヘキシル(沸点181.5〜186.5℃)、プロピオン酸−n−ブチル(沸点146.8℃)、プロピオン酸イソアミル(沸点160.3℃)、酪酸メチル(沸点102.3℃)、酪酸エチル(沸点121.3℃)、酪酸−n−ブチル(沸点164.8℃)、酪酸イソアミル(沸点179℃)、オキシイソ酪酸エチル(沸点147.5〜149℃)、アセト酢酸メチル(沸点171.7℃)、アセト酢酸エチル(沸点180.4℃)、イソ吉草酸イソアミル(沸点192.7℃)、乳酸メチル(沸点143.8℃)、乳酸エチル(沸点154.1℃)、乳酸−n−ブチル(沸点188℃)、安息香酸メチル(沸点199.5℃)、シュウ酸ジエチル(沸点183.5℃)、マロン酸ジエチル(沸点198.9℃)等が好ましい。また、以上の溶剤は単独でも2種以上を組み合わせてもよい。複数の溶剤を組み合わせた場合、共沸する温度が250℃以下であることが好ましく、特に100℃〜200℃であることが好ましい。
【0060】
(D)その他の成分
本発明のシート形成組成物は、上述の(A)バインダー樹脂、(B)無機粉末、および、(C)溶剤を必須成分として含有するものであり、その用途に応じて、さらに(D)他の成分を含有せしめることができる。
【0061】
例えば、本発明のシート形成用組成物をプラズマディスプレイ前面板におけるスペーサ層の製造に使用する場合は、上述の3種の必須成分のほか、感光性を付与するための成分として、さらに、光重合性単量体および光重合開始剤を添加する。
【0062】
前記光重合性単量体としては、前記(A)成分中の構成単位(i)を構成する水酸基を有する重合性モノマーを挙げることができるが、重合可能なエチレン性不飽和結合を2個以上有するモノマー(以下、多官能性モノマーという)が好ましい。多官能性モノマーとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコールのジアクリレート又はジメタクリレート類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコールのジアクリレート又はジメタクリレート類、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールのポリアクリレート又はポリメタクリレート類やそれらのジカルボン酸変性物などが挙げられる。この中で、具体的には、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールプロパンテトラメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリトリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサメタクリレート等が挙げられる。
【0063】
前記光重合開始剤としては、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モリフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、3,3−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、ベンゾフェノン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−ベンゾイル−4'−メチルジメチルスルフィド、4−ジメチルアミノ安息香酸、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4−ジメチルアミノ安息香酸−2−エチルヘキシル、4−ジメチルアミノ安息香酸−2−イソアミル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンジル−β−メトキシエチルアセタール、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、o−ベンゾイル安息香酸メチル、ビス(4−ジメチルアミノフェニル)ケトン、4,4'−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4'−ジクロロベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、α、α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス−(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス−(9−アクリジニル)ペンタン、1,3−ビス−(9−アクリジニル)プロパンなどが挙げられる。これら光重合開始剤は単独でも2種以上を組み合わせてもよい。
【0064】
また、本発明のシート形成用組成物をプラズマディスプレイ前面板における誘電体層の製造に使用する場合、誘電体層には、スペーサ層を感光させる、つまりスペーサ層に含まれる光重合開始剤を光活性化させる波長の光を吸収できる、光吸収剤を添加することもできる。このような光吸収剤としては、300〜450nmの波長を吸収するものが好適に用いられ、例えば、アゾ系染料、アミノケトン系染料、キサンテン系染料、キノリン系染料、ベンゾフェノン系染料、トリアジン系染料、ベンゾトリアゾール系染料、アントラキノン系染料が挙げられる。
【0065】
このように誘電体層が、スペーサ層に含まれる光重合開始剤を光活性化させる波長の光を吸収できる光吸収剤を含有することで、誘電体層とスペーサ層を積層した状態でスペーサ層を露光して所定形状にパターニングした際に、第1の層に入った光が誘電体層内部の無機粉末などによって散乱することを防ぐことができる。つまり、仮に光吸収剤が含まれていなかったならば、誘電体層内の無機粉末などの粒子によって光が散乱するので、スペーサ層が誘電体層から不確定な方向で入射する光により露光されてしまい、結果的にマスク通りの正確なパターン形成ができなくなる。それを防ぐためには、誘電体層を焼成し、透明なガラス状態にした後、スペーサ層を形成し露光し再び焼成するといったように、2回焼成しなければならない。しかし、誘電体層中に光吸収剤を含有せしめることにより、一度に焼成することができ、所望のパターンを形成できる。
【0066】
また、可塑性を付与するために可塑剤を添加することもできる。可塑剤としては、公知のものを用いることができ、沸点が200℃以上で室温で液体の透明性に優れるものが好ましい。その可塑剤の例としては、フタル酸ジメチルやフタル酸ジエチル、フタル酸ジブチルやフタル酸ジヘプチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシルやフタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシルやフタル酸ジブチルベンジル、フタル酸ジオクチルやブチルフタリルブチルグリコレートなどのフタル酸系化合物、アジピン酸ジイソブチルやアジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシルやアジピン酸ジブトキシエチルなどのアジピン酸系化合物、セバシン酸ジブチルやセバシン酸ジ−2−エチルヘキシルなどのセバシン酸系化合物、リン酸トリエチルやリン酸トリフェニル、リン酸トリクレジルやリン酸トリキシレニル、リン酸クレジルフェニルなどのリン酸系化合物、ジオクチルセバケートやメチルアセチルリシノレートなどの脂肪酸系化合物、ジイソデシル−4,5−エポキシテトラヒドロフタレートなどのエポキシ系化合物、トリメリット酸トリブチルやトリメリット酸トリ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリn−オクチルやトリメリット酸トリイソデシルなどのトリメリット酸系化合物、その他、オレイン酸ブチルや塩素化パラフィン、ポリブテンやポリイソブチレンなどが挙げられる。これらは必要に応じて1種又は2種以上を配合できる。
【0067】
〔シート形成用組成物の製造方法〕
本発明のシート形成用組成物の製造方法は、(A)バインダー樹脂とその他の成分とを混合し、この混合物を混練する混練工程を含むシート形成用組成物の製造方法であることを特徴とする。
【0068】
本発明においては、バインダー樹脂、有機溶剤、および無機粉末の混合順序は特に限定されない。例えば、バインダー樹脂、有機溶剤、無機粉末の3成分を一度に混合してもよいし、予めバインダー樹脂を有機溶剤に溶解させてバインダー成分を調整してから、このバインダー成分に無機粉末を添加して混合することもできる。以下、後者の方法を例にして本発明の無機ペースト組成物の製造方法について詳細に説明するが、各成分の混合順序はこれに限定されるものではない。
【0069】
まず、バインダー樹脂および溶剤をかき混ぜ機で混合することにより、バインダー樹脂を溶解させ、バインダー成分を調整する。この際、光重合性単量体、光重合開始剤や、可塑剤、分散剤、粘着性付与剤、表面張力調整剤、安定剤、消泡剤などの各種添加剤を添加してもよい。
【0070】
バインダー成分を調整した後、このバインダー成分中に無機粉末を添加して混合物を調整し、この混合物を混練することによって無機粉末を分散させる。
【0071】
このように混練工程を経て、無機粉末を分散させた混合物は、そのまま本発明のシート組成物として用いることが可能である。
【0072】
また、無機粉末を分散させた混合物に、さらに他の成分を添加したものをシート形成用組成物として使用してもよい。例えば、無機粉末を分散させ、無機粉末をバインダー樹脂と水素結合させた後においては、無機粉末―バインダー樹脂間の水素結合は比較的安定に保たれるため、アルコール等の水酸基を有する有機溶剤を添加しても、無機粉末―バインダー樹脂間の水素結合に与える影響は小さい。したがって、混練工程後、必要に応じて、アルコール等の水酸基を有する有機溶剤を添加して無機ペースト組成物の濃度を調整してもよい。
【0073】
〔ディスプレイパネル製造用シート状未焼成体〕
本発明に係るシート状未焼成体は、離型支持フィルム上に本発明のシート形成用組成物を塗布し、この塗膜を乾燥させることにより未焼成膜を形成したものである。また、前記未焼成膜上に、さらに被覆フィルムが張り合わされたものであってもよい。例えば、非感光性のシート形成用組成物を用いたシート状未焼成体の場合は、プラズマディスプレイ前面板の誘電体層の形成材料として使用可能であり、感光性のシート形成用組成物を用いたシート状未焼成体の場合は、プラズマディスプレイ前面板のスペーサ層の形成材料として使用可能である。本発明のシート状未焼成体は、未焼成膜の表面を容易に剥離可能な離型フィルムにより保護されて、貯蔵、搬送、および取り扱いが容易とされる。
【0074】
本発明に係るシート状未焼成体は、無機粉末が均一に分散した本発明のシート形成用組成物を用いて形成されるため、高い膜平坦性を有する。また、焼成時にシュリンクの発生を抑制することができるため、ひび割れ等のない均一な膜厚を有する誘電体層、スペーサ層を得ることができる。したがって、品質の高いディスプレイパネルを製造することが可能となる。
【0075】
また、本発明のシート状未焼成体は、予め製造しておき、使用期限はあるものの所定期間を貯蔵しておくことができるので、ディスプレイパネルを製造する場合に、即座に使用することができ、ディスプレイパネルの製造の効率化を高めることができる。
【0076】
本発明のシート状未焼成体は、未焼成膜の両面を容易に剥離可能な離型フィルムにより保護した形態で供給することが好ましい。具体的には、可剥離性の支持フィルム上に、誘電体層を形成し、その上に保護層として保護フィルムを被覆する。
【0077】
本発明のシート状未焼成体の製造に使用する支持フィルムとしては、支持フィルム上に製膜された各層を支持フィルムから容易に剥離することができ、各層をガラス基板上に転写できる離型フィルムであれば特に限定なく使用でき、例えば膜厚15〜125μmのポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂フィルムからなる可撓性フィルムが挙げられる。前記支持フィルムには必要に応じて、転写が容易となるように離型処理されていることが好ましい。
【0078】
支持フィルム上に未焼成膜を形成するに際しては、本発明のシート形成用組成物を調整し、支持フィルム上にアプリケーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーター、カーテンフローコーターなどを用いてシート形成用組成物を塗布する。特にロールコーターが膜厚の均一性に優れ、かつ厚さの厚い膜が効率よく形成できて好ましい。
【0079】
塗膜を乾燥させた後、無機ペースト膜の表面には未使用時に未焼成膜を安定に保護するため保護フィルムを貼着するのがよい。この保護フィルムとしては、シリコーンをコーティングまたは焼き付けした厚さ15〜125μm程度のポリエチレンテレフタレートフイルム、ポリプロピレンフイルム、ポリエチレンフィルムなどが好適である。
【0080】
ディスプレイパネルの製造に際しては、本発明のシート状未焼成体から保護フィルムを剥離し、ガラス基板の電極設置面に露出した無機ペースト膜を重ね合わせて、支持フィルム上から加熱ローラを移動させることにより、未焼成膜を基板の表面に熱圧着させる。
【0081】
熱圧着は、基板の表面温度を80〜140℃に加熱し、ロール圧1〜5kg/cm2、移動速度0.1〜10.0m/分の範囲で行うのがよい。前記ガラス基板は予熱されていてもよく、予熱温度としては例えば40〜100℃の範囲が選択される。
【0082】
未焼成膜上から剥離した保護フィルムは、順次巻き取りローラでロール状に巻き取って保存すれば再利用が可能である。
【0083】
このようにして、基板の表面に未焼成膜を加熱接着した後、未焼成膜から支持フィルムを剥離して、未焼成膜を表面に露出させる。未焼成膜から剥離した支持フィルムもまた、順次巻き取りローラでロール状に巻き取って保存すれば再利用が可能である。
【0084】
このようにしてガラス基板の表面に未焼成膜を形成した後、500℃〜700℃で焼成することにより、未焼成膜に含まれるガラスフリットが焼結され誘電体層および/またはスペーサ層となる。焼成工程で、未焼成膜に含まれる有機物は、揮発、分解され、誘電体層およびスペーサ層には有機成分は実質的に残らない。これによって、本発明のディスプレイパネルが得られる。
【0085】
このようにして、ディスプレイパネルを製造した後、表面に露出している誘電体層をMgO等の保護膜で被覆することが好ましい。
【実施例】
【0086】
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0087】
<実施例1〜6、比較例1および2>
(1)ガラスペースト組成物(本発明のシート形成用組成物)の調整
(A)バインダー樹脂、(C)溶剤、および(D)その他の成分をかきまぜ機で3時間混合することにより有機成分を調整後、該有機成分(固形分50%)40質量部とガラスフリット(PbO−SiO2系)80質量部を混練りすることでガラスペースト組成物である本発明のシート組成物を調整した。シート形成用組成物調製に用いた成分とその量(単位は質量部)を下記の表1に示した。
【0088】
(2)本発明のシート状未焼成体の製造
得られたガラスペースト組成物をポリエチレンテレフタレートからなる支持フィルム上にリップコーターを用いて塗布し、塗膜を100℃で6分間乾燥して溶剤を完全に除去し、厚さ60μmのガラスペースト膜(本発明における未焼成膜)を支持フィルム上に形成した。次にガラスペースト膜上に25μm厚みのポリエチレンフィルムを張り合わせシート状未焼成体を製造した。
【0089】
(3)誘電体フィルム層の形成
(2)で得られたシート状未焼成体のポリエチレンフィルムを剥がしながら、予め80℃に加熱しておいたバス電極が形成されたガラス基板にホットロールラミネーターにより105℃でガラスペースト膜をラミネートした。エア圧力は3kg/cm2とし、ラミネート速度は1.0m/minとした。
【0090】
(4)ガラスペースト膜の評価
実施例1〜6および比較例1および2のガラスペースト膜の性能を評価するため、下記の評価項目について、それぞれ試験を行った。評価結果を下記の表1に示した。
【0091】
<支持フィルム剥離後のガラスペースト膜の外観観察>
上記(3)で得られた誘電体層の支持フィルムであるポリエチレンテレフタレートを剥離した後、ガラスペースト膜の外観観察を行った。評価は、以下のように、○および×で示した。
○:スジ及びクレーター等の欠陥は見られなかった。
×:スジ及びクレーター等の欠陥が見られた。
【0092】
<焼成前の表面粗さ(Rmax)の計測>
触針式表面粗さ計にて、ガラスペースト膜の表面粗さを計測した。計測値(μm)を下記の表1に示した。
【0093】
<焼成後の表面粗さ(Rmax)の計測>
焼成後の特性を評価するため、昇温スピード1.0℃/minで加熱させ580℃で30分間保持する焼成処理を行った後、触針式表面粗さ計にて、ガラスペースト膜の表面粗さを計測した。計測値(μm)を下記の表1に示した。
【0094】
<耐電圧の測定>
焼成後、ガラスペースト膜の耐電圧を測定した。評価は、以下のように、○および×で示した。
○:面内で値が安定している。
×:面内で耐電圧にバラツキが見られる。
【0095】
<泡発生の観察>
焼成後、電極端部における追従不良による泡発生の有無の観察を行った。評価は、以下のように、○および×で示した。
○:泡の発生が見られなかった。または問題ないレベルの泡(3μm)があった。
×:泡の発生が見られた。
【0096】
【表1】

【0097】
<評価結果>
本発明のシート形成用組成物を用いた実施例1〜6においては、ガラスフリットの分散性が極めて良好であり、表1の焼成前の表面粗さRmaxおよび焼成後の表面粗さRmaxの評価結果からも分かるように、平坦性の高いガラスペースト膜を形成することができ、耐電圧も安定していた。また、焼成後の電極端部における追従不良による泡の発生は、いずれも、泡の発生が見られないか、問題のないレベルの泡の発生であった。
【0098】
これに対し、比較例1および2においては、実施例1〜6と比較してガラスフリットの分散性が不十分であった。表1の焼成前の表面粗さRmaxおよび焼成後の表面粗さRmaxの評価結果からも分かるように、実施例1〜6と比較して、特に比較例2において膜厚平坦性が劣り、面内で耐電圧にバラツキが見られた。また、焼成後の電極端部における追従不良による泡の発生は、いずれも、明らかな泡の発生が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0099】
以上のように、本発明にかかるシート形成用組成物は、無機粉末の分散性が高く、均一な膜厚の塗膜を形成することができる。また、焼成後のシュリンクを抑制することができるため、多層回路や、プラズマディスプレイ、プラズマアドレス液晶ディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイなどの各種のディスプレイ、特に高精密化が要求されるプラズマディスプレイ前面板の誘電体層およびスペーサ層の形成材料として極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも、(i)水酸基を有する重合性モノマーと、(ii)CH2=CR−COOCm2m+1(Rは水素原子またはアルキル基、mは6以上の整数を表す。)で示される重合性モノマーと、(iii)CH2=CR−COOCn2n+1(Rは水素原子またはアルキル基、nは4以下の整数を表す。)で示される重合性モノマーとの共重合体であるバインダー樹脂と、(B)無機粉末と、(C)溶剤とを含有してなるシート形成用組成物。
【請求項2】
前記(C)成分である溶剤が、水酸基を有しない有機溶剤であることを特徴とする請求項1に記載のシート形成用組成物。
【請求項3】
さらに、光重合性単量体および光重合開始剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載のシート形成用組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のシート形成用組成物の製造方法であって、前記(A)バインダー樹脂とその他の成分とを混合し、この混合物を混練する混練工程を含むことを特徴とするシート形成用組成物の製造方法。
【請求項5】
基板上に誘電体層が形成されてなるディスプレイパネルにおける前記誘電体層を製造するために用いるシート状未焼成体であって、
離型支持フィルム上に少なくとも請求項1〜3のいずれか1項に記載のシート形成用組成物から得られた未焼成膜が形成されてなることを特徴とするディスプレイパネル製造用シート状未焼成体。
【請求項6】
前記ディスプレイパネルがプラズマディスプレイパネルであることを特徴とする請求項5に記載のディスプレイパネル製造用シート状未焼成体。

【公開番号】特開2006−8792(P2006−8792A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186194(P2004−186194)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】