説明

シート接合用熱接着フィルム

【課題】
本発明は、シート接合用熱接着フィルムのスリット加工をしたり、トムソン刃による打抜き加工をしたりする際に、スリット刃やトムソン刃等のカットに用いた刃や、切断したシートの断面および表面にホットメルト接着剤成分が付着しないシート接合用熱接着フィルムを提供する。
【解決手段】
基材フィルムの両面にホットメルト接着剤層を設けてなり、少なくとも1つの層が、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、クロロプレン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を用いてなる接着性樹脂と、一般式(A)に示すエチレンオキサイド基を少なくとも1つ以上有する界面活性剤とを含有し、前記接着性樹脂100質量部に対し、前記界面活性剤を0.1〜5質量部含んでいるシート接合用熱接着フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト接着剤層/基材フィルム層/ホットメルト接着剤層よりなる2つのシートを接合するためのシート接合用熱接着フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
シートを接合するためのシート接合用熱接着フィルムは、通常、該シート接合用熱接着フィルムをロール状態やシート状態等の所望の形態に加工されて用いられる。しかし、ロール状態で用いる際には、基材にホットメルト接着剤が塗布された後、所望のロール幅でスリット加工するとき、連続的に断裁加工をしていく過程において、スリット刃にホットメルト接着剤成分が付着してしまい、スリット刃の切れが悪くなったり、付着した接着剤成分が、スリット断面に付着して、搬送ロールを汚してしまったり、熱接着フィルムの表面を汚してしまったりする問題がある。また、シート状態で用いる際は、凸状の金型および凹状の金型を用いた、いわゆるトムソン刃等を用いて打抜き加工されるが、同様に連続して打抜き加工をしていく過程において、トムソン刃にホットメルト接着剤成分が付着してしまい、打抜き断面や打抜きシートの表面を汚してしまう問題がある。
【0003】
このような問題点を解決する方法として、スリット加工や打抜き加工等の作業をする上で、ホットメルト成分が付着する前に刃の清掃作業を行なわなければならず、非常に煩雑で、生産性も上がらないという問題を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-143063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の背景に鑑み、かかる問題点を解決し、シート接合用熱接着フィルムのスリット加工をしたり、トムソン刃による打抜き加工をしたりする際に、スリット刃やトムソン刃等のカットに用いた刃や、切断したシートの断面および表面にホットメルト接着剤成分が付着しないシート接合用熱接着フィルムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を採用するものである。すなわち、
(1)基材フィルムの両面にホットメルト接着剤層を設けてなるシート接合用熱接着フィルムであって、
前記ホットメルト接着剤層の少なくとも1つの層が、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、クロロプレン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を用いてなる接着性樹脂と、一般式(A)に示すエチレンオキサイド基を少なくとも1つ以上有する界面活性剤とを含有し、
前記接着性樹脂100質量部に対し、前記界面活性剤を0.1〜5質量部含んでいるシート接合用熱接着フィルム。
[化1]−(CHCHO)− (A)
(ここでlは整数を表す)
(2)前記一般式(A)に示すエチレンオキサイド基を少なくとも1つ以上有する界面活性剤の数平均分子量(Mn)が、500以上20000以下である(1)に記載のシート接合用熱接着フィルム、
(3)前記一般式(A)に示すエチレンオキサイド基を少なくとも1つ以上有する界面活性剤が、一般式(B)または(C)で示されるブロック単位の1つ以上からなるブロック共重合体である(1)または(2)に記載のシート接合用熱接着フィルム、
[化2]HO―(CHCHO)−(R−O)−(CHCHO)−H (B)
[化3]HO−(R−O)−(CHCHO)−(R−O)−H (C)
(ここで、Rはプロピレン基を表し、m、n、o、p、q、rは整数を表す)
(4)前記一般式(A)に示すエチレンオキサイド基を少なくとも1つ以上有する界面活性剤を含有するホットメルト接着剤層の表面および/または外表面と垂直に交わる平面の表面自由エネルギーがー43mN/m以上である(1)〜(3)のいずれかに記載のシート接合用熱接着フィルム、
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載のシート接合用熱接着フィルムの少なくとも1つの表面に離型フィルムが積層された積層シート接合用熱接着フィルム、
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スリット加工をしたり、トムソン刃による打抜き加工をしたりする際に、スリット刃やトムソン刃等のカットに用いた刃や、切断したシートの断面および表面にホットメルト接着剤成分が付着しないシート接合用熱接着フィルムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、前記課題、つまりシート接合用熱接着フィルムのスリット加工をしたり、トムソン刃による打抜き加工をしたりする際に、スリット刃やトムソン刃等のカットに用いた刃や、切断したシートの断面および表面にホットメルト接着剤成分が付着しない優れたシート接合用熱接着フィルムについて、鋭意検討し、接合用熱接着フィルムを構成する特定のホットメルト接着剤に特定な官能基を有する界面活性剤を配してみたところ、かかる課題を一挙に解決することを究明したものである。
【0009】
本発明のシート接合用熱接着フィルムは、基材フィルム層の両面にホットメルト接着剤層を設けたシート接合用熱接着フィルムであり、2つのシートの面同士を熱接着するために用いられる。
【0010】
本発明で用いられるホットメルト接着剤層は、少なくとも1つの層が、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、クロロプレン樹脂より選ばれる少なくとも1つ以上の接着性樹脂と、下記一般式(A)で表されるエチレンオキサイド基を少なくとも1つ以上有する界面活性剤とを含有してなるホットメルト接着剤層を設けて構成されているものである。
−(CHCHO)− (A)
(ここでlは整数を表す)
まず、ホットメルト接着剤層を構成する接着性樹脂としては、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、クロロプレン樹脂より選ばれる少なくとも1つ以上を用いてなるものであるが、これらの中でもポリエステル樹脂または(メタ)アクリル樹脂を接着性樹脂として使用するのが好ましく、基材との接着力や、耐熱性などの点から良好であり、さらに樹脂の融点が40℃以上150℃以下のポリエステル樹脂または(メタ)アクリル樹脂を接着性樹脂として使用するのが、特に好ましく用いられる。融点が40℃未満であると、熱接着時にホットメルト接着剤が流動してしまうことで接着させたくない部分にまで接着剤が流れ、接着させてしまったり、150℃よりも大きいと、熱接着の際に高い温度をかけないと、接着させることができなくなることがあって、作業効率が悪くなったり、被接着体であるシートが熱で損傷してしまう場合がある。
【0011】
一般式(A)で表されるエチレンオキサイド基を少なくとも1つ以上有する界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリル−硫酸エステルナトリウム塩等のポリオキシエチレン−アルキル硫酸エステル−ナトリウム塩、ポリオキシエチレン−ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン−セチルエーテル、ポリオキシエチレン−オレイルエーテル、ポリオキシエチレン−ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレン−イソデシルエーテル等のポリオキシエチレン−アルキルエーテル、
ポリオキシエチレン−モノラウレート、ポリオキシエチレン−モノステアレート、ポリオキシエチレン−モノオレート等のポリオキシエチレン−アルキルエステル、
ポリオキシエチレンソルビタン−モノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタン−モノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタン−モノオレート、ポリオキシエチレンソルビタン−モノオレート等のソルビタンエステル・エチレンオキシド付加型、
ポリオキシエチレン−ヤシ脂肪酸グリセリル等のモノグリセライド・エチレンオキシド付加型、
ポリオキシエチレン−硬化ヒマシ油等のトリグリセライド・エチレンオキシド付加型、
ポリオキシエチレン−ラウリルアミン、ポリオキシエチレン−アルキル(ヤシ)アミン、ポリオキシエチレン−ステアリルアミン、ポリオキシエチレン−オレイルアミン、ポリオキシエチレン−牛脂アルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキル−プロピレンジ゛アミン等のアルキルポリエーテルアミン型
ポリオキシエチレン−モノメチルエーテル、ポリオキシエチレン−ジメチルエーテル、ポリオキシエチレン−グリセリルエーテル、ポリオキシエチレン・α,ω−ビス−3−アミノプロピル−エーテル、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール−ポリエチレングリコール (ブロックコポリマー)などの界面活性剤が挙げられる。
【0012】
より好ましくは、一般式(B)または(C)で示されるブロック単位の1つ以上からなるブロック共重合体である。
【0013】
HO−(CHCHO)−(R−O)−(CHCHO)−H (B)
HO−(R−O)−(CHCHO)−(R−O)−H (C)
(ここで、Rはプロピレン基を表し、m、n、o、p、q、rは整数を表す)
前記一般式(B)もしくは(C)で表されるブロック単位を1つ以上からなるブロック共重合体としては、上記一般式(B)で示されるブロック単位1つ以上からなるブロック共重合体の市販されている具体例として、Pluronic(R) PE3100,PE3500,PE4300,PE6100,PE6120,PE6200,PE6400,PE6800,PE7400,PE8100,PE9200,PE9400,PE10100,PE10300,PE10400,PE10500(以上ビーエーエスエフジャパン(株)製)、
アデカ(R)プルロニックL−23,L−31,L−33,L−34,L−35,F−38,L−42,L−43,L−44,L−61,L−62,L−64,P−65,F−68,L−71,L−72,P−75,P−77,L−81,P−84,P−85,F−88,L−92,P−94,F−98,L−101,P−103,P−104,P−105,F−108,L−121,L−122,P−123,F−127(以上(株)ADEKA製)、
ニューポールPE−34,PE−61,PE−62,PE−64,PE−68,PE−71,PE−74,PE−75,PE−78,PE−108,PE−128(以上三洋化成工業(株)製)、
プロノン(R)#124P,#188P,#407P(以上日本油脂(株)製)等が挙げられる。
【0014】
上記一般式(C)で示されるブロック単位1つ以上からなるブロック共重合体の市販される具体例としてとして、Pluronic(R) RPE1720,RPE1740,RPE2035,RPE2510,RPE2520,RPE2525,RPE3110(以上ビーエーエスエフジャパン(株)製)、
アデカ(R)プルロニック17R−2,17R−3,17R−4,25R−1,25R−2(以上(株)ADEKA製)等が挙げられる。
【0015】
前記ホットメルト接着剤層を構成する前記一般式(A)に示すエチレンオキサイド基を少なくとも1つ以上有する界面活性剤の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500〜20000、より好ましくは2000〜20000、特に好ましくは5000〜18000であるのがよい。すなわち、かかる分子量が500以上だと該シート接合用熱接着フィルムのスリット加工をしたり、トムソン刃による打抜き加工をしたりする際に、スリット刃やトムソン刃等のカットに用いた刃や、切断したシートの断面および表面にホットメルト接着剤成分が付着することを良好に防止することができ、その結果、スリット刃やトムソン刃の清掃頻度が格段に減少するので好ましい。かかる分子量が20000以下であると、ブロック共重合体を接着性樹脂に均一に分散させやすくなるので好ましい。
【0016】
また、かかるブロック共重合体の融点は、特に制限するものではないが、25℃以上であるものが好ましい。より好ましくは、30℃以上であり、更に好ましくは、40℃以上である。融点が25℃未満であると、ホットメルト接着剤層から前記ブロック共重合体がブリードしやすくなり、ホットメルト接着剤の接着強度がばらつくことで接着強度が安定しなくなってしまうことがある。
【0017】
本発明の一般式(A)に示すエチレンオキサイド基を少なくとも1つ以上有する界面活性剤を有するホットメルト接着剤層は、接着性樹脂100質量部に対し、一般式(A)に示すエチレンオキサイド基を少なくとも1つ以上有する界面活性剤の量が0.1〜5質量部含まれるものである。好ましくは、0.15〜2質量部であり、更に好ましくは、0.2〜1質量部である。界面活性剤の量が0.1質量部未満であると、スリット刃やトムソン刃等のカットに用いた刃や、切断したシートの断面および表面にホットメルト接着剤成分が付着することを防止する効果が発揮されず、5質量部より大きいとホットメルト接着剤の接着性が損なわれ、所望の接着強度を得られなくなる。0.1〜5質量部であると、スリット刃やトムソン刃等のカットに用いた刃や、切断したシートの断面および表面にホットメルト接着剤成分が付着することを防止することができ、且つ所望の接着強度を維持することができる。
【0018】
本発明のシート接合用接着フィルムは、少なくとも1つの層に一般式(A)で表される界面活性剤を有するホットメルト接着剤層が設けられていればよい。一般式(A)で表される界面活性剤を含有しないホットメルト接着剤層を片面に設ける場合、該ホットメルト接着剤層は、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、クロロプレン樹脂より選ばれる少なくとも1つ以上を用いてなるものであるが、これらの中でもポリエステル樹脂または(メタ)アクリル樹脂を接着性樹脂として使用するのが好ましく、基材との接着力や、耐熱性などの点から良好であり、さらに樹脂の融点が40℃以上150℃以下のポリエステル樹脂または(メタ)アクリル樹脂を使用するのが、特に好ましく用いられる。
【0019】
また、本発明では一般式(A)で表される界面活性剤を有するホットメルト接着剤層に用いた接着性樹脂を用いることが好ましい。
【0020】
ホットメルト接着剤としては、例えば、アロンメルトPES−120L、PES−140H、PES−111EE、PES310S30、PES375S40、PPET1008、PPET1025、PPET2102、PPET1303S(以上、東亞合成株式会社製)、Y−167、H−930−S、H−180S(以上、田中ケミカル株式会社製)、ニチゴーポリエスター(R)SP−154、SP−165、SP−170、SP−176(以上、日本合成化学株式会社製)、バイロン(R)200、240、300、550、BX1001(以上、東洋紡株式会社製)、などが挙げられる。
【0021】
本発明の一般式(A)に示すエチレンオキサイド基を少なくとも1つ以上有する界面活性剤を有するホットメルト接着剤層の表面および/または外表面と垂直に交わる平面の表面自由エネルギーは43mN/m以上であることが好ましい。表面自由エネルギーが43mN/m未満であると、スリット刃やトムソン刃等のカットに用いた刃や、切断したシートの断面および表面にホットメルト接着剤成分が付着することを防止する効果が発揮しないことがあり、43mN/m以上であることによりホットメルト接着剤成分が付着することを効果的に防止することができる。
【0022】
本発明のシート接合用熱接着フィルムには、ロール状に巻かれた状態にする場合、少なくとも1つの表面に離型フィルムを積層することが好ましい。離型フィルムは、基材フィルムに両面または片面にシリコーン樹脂等をコーティングした公知のものを使用することができ、該離型フィルムを少なくとも1つの表面に積層した積層シート接合用熱接着フィルムとすることでブロッキングすることなく、ロール状に巻かれた状態にすることができる。
【0023】
具体的には、
(1)少なくとも片面にシリコーン樹脂のコーティングで離型処理した離型フィルム用いて、該離型処理面と一方のホットメルト接着剤層が接するように積層し、次いで、もう一方のホットメルト接着剤層も同様に該離型フィルムの離型処理面ともう一方のホットメルト接着剤層が接するように積層する、
(2)両面にシリコーン樹脂のコーティング等で離型処理した離型フィルムをいずれか一方のホットメルト接着剤層と積層する、
ことによりロール状に巻かれた状態にすることができる。
【0024】
本発明で用いられる基材としては、プラスチックフィルム、合成紙、紙または表面処理が施された複合シートが好ましく用いられるが、中でも寸法安定性や耐久性等の点からプラスチックフィルムが好ましい。
【0025】
プラスチックフィルムの材質としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ−ρ−フェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。また、これらの共重合体やブレンド物やさらに架橋した化合物を用いることもできる。
【0026】
さらに、上記プラスチックフィルムの中でも、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレート、ポリエチレンα,β−ビス(2−クロルフェノキシ)エタン4,4’−ジカルボキシレート、ポリブチレンテレフタレートなどからなるフィルムが好ましく、これらの中で機械的特性、作業性などの品質、経済性などを総合的に勘案すると、ポリエチレンテレフタレートからなるフィルムが特に好ましく用いられる。
【0027】
基材の厚みは特に限定されないが、通常10μm〜500μm、好ましくは20μm〜300μm、より好ましくは30μm〜200μmであることが望ましい。
【0028】
また、ホットメルト接着剤層の付着量は、片面1〜50g/m2であることが好ましく、より好ましくは2〜30g/m2である。付着量が1g/m2より少ないと加工時の擦り傷等により付着層の脱落や、ピンホールが発生したり、所望の接着強度を得られなくなることがある。その結果、接着強度のバラツキが発生することがある。また、付着量が50g/m2より多くなると、スリット刃やトムソン刃等のカットに用いた刃や、切断したシートの断面および表面にホットメルト接着剤成分が付着することを防止する効果が小さくなり、好ましくない。
【0029】
次に本発明のシート接合用熱接着フィルム製造する手段について、以下説明する。ホットメルト接着剤層は、該ホットメルト接着剤層を構成する成分を含む塗布液を基材に塗布し塗膜とすることで形成することができる。かかる塗布液は、例えば、接着性樹脂と界面活性剤を混合したものを熱溶融して得ることができる。
【0030】
該塗布液の塗布方法は特に限定されないが、グラビアコート法、リバースコート法、キスコート法、ダイコート法、およびバーコート法などの方法を用いることができる。この際、基材上には塗布液を塗布する前に、必要に応じて空気中あるいはそのほかの雰囲気中でのコロナ放電処理や、プライマー処理などの表面処理を施すことによって、塗布性が良化するのみならず、液体受容層をより強固に基材上に形成することができる。なお、塗布液濃度、塗膜乾燥条件または、塗膜の冷却条件は特に限定されるものではないが、塗膜乾燥条件は基材の諸特性に悪影響を及ぼさない範囲で行なうことが望ましい。
【0031】
また、本発明のホットメルト接着剤層は、上記塗布液で予め膜状物を作り、それを基材に貼着することで形成することができる。貼着する場合は、シリコーン系樹脂フィルム等の離型フィルムに塗布液を塗工し、基材に転写する方法が採用される。
【実施例】
【0032】
以下に本発明を実施例により具体的に説明を行なうが、本発明はこれらの実施例により限定されたものではない。なお、実施例において、試験片の特性の評価方法は、以下のとおりである。
【0033】
〔ホットメルト表面の表面自由エネルギー〕
JISK6768(1999)に基づき、エチレングリコールモノエチルエーテル25.3mlとホルムアミド74.7mlを混合して得られた、ぬれ張力43.0mN/mの試験用混合液をホットメルト接着剤層表面に3滴滴下して、直ちにワイヤーバーを引いて拡げる。判定は、43.0mN/m試験用混合液の液膜を明るいところで観察し、液膜が2秒以上破れないで塗布された時の状態を保っている場合は、43.0mN/m以上(○)、また逆に2秒以下で液膜が破れる場合を43.0mN/m未満(×)とした。なお測定は、温度23℃、相対湿度50%の標準試験室雰囲気で行った。
【0034】
〔ホットメルト接着剤層の接着強度〕
東レ(株)製ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム”ルミラー”(R)(タイプ38S10)上に、前記各試験片作成方法の手順で作成した試験片を重ね合わせ、ヒートシーラーを用いて、シール温度120℃、シール時間1.0秒、シール圧力0.2MPaの条件で接着させた。この接着体をJISK6854−1(1999)に従い、はく離速度50mm/分、90°はく離によるはく離接着強さを測定した。
【0035】
〔トムソン刃の付着性および切れ性評価方法〕
5mmφの孔をあけることができるトムソン刃を用いて、切断ストローク10mm、切断材料に対する瞬間切断速度を40mm/秒にし、1分間に60個の割合で1000個および2000個の孔を試料にあけた。このときのトムソン刃にホットメルト接着剤が付着しているかの有無を観察した。
【0036】
(実施例1)
東レ(株)製ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム“ルミラー”(R)(タイプ100E20)を基材とした。また塗布液として融点65℃のポリエステル系接着剤樹脂をトルエン/MEK(メチルエチルケトン)=4/1(質量比)に溶解した42%溶液(東亞合成株式会社製アロンメルトHM−12)と、一般式(B)で表されるブロック共重合体A〔三洋化成工業(株)製 ニューポールPE−68(数平均分子量(Mn)8350)〕を用意し、有効成分が、100質量部/5質量部の割合になるように塗布液を調合した。この塗布液をコンマコーターにて基材の片面に45g/m塗布し、120℃で30秒乾燥して片面(A面)にホットメルト層を有するフィルムを得た。ホットメルト層の塗布厚さは20μmであった。次いで同じ塗布液を基材の反対の面(B面)にも同様にして塗布液を56g/m塗布し、25μmのホットメルト層を形成し、シート接合用熱接着フィルムを作成した。
【0037】
(実施例2)
ブロック共重合体A 5質量部を一般式(B)で表されるブロック共重合体B〔(株)ADEKA製 アデカ(R)プルロニックF−88(数平均分子量(Mn)10800)〕 0.5質量部に変えた以外は、実施例1と同様の評価を行なった。
【0038】
(実施例3)
東レ(株)製ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム“ルミラー”(R)(タイプ100S10)を基材とした。また塗布液として融点65℃のポリエステル系接着剤樹脂をトルエン/MEK(メチルエチルケトン)=4/1(質量比)に溶解した30%溶液(東亞合成株式会社製アロンメルトPES310S30)と、一般式(B)で表されるブロック共重合体C〔(株)ADEKA製 アデカ(R)プルロニックF−88(数平均分子量(Mn)10800)〕を用意し、有効成分が、100質量部/1質量部の割合になるように塗布液を調合した。この塗布液をコンマコーターにて基材の片面に33g/m2塗布し、150℃で30秒乾燥して片面(A面)にホットメルト層を有するフィルムを得た。ホットメルト層の塗布厚さは10μmであった。次いで一般式(B)で表されるブロック共重合体を含まない、融点65℃のポリエステル系接着剤樹脂をトルエン/MEK(メチルエチルケトン)=4/1(質量比)に溶解した30%溶液(東亞合成株式会社製アロンメルトPES310S30)のみを塗布液とし、基材の反対の面(B面)にも同様にして50g/m2塗布し、15μmのホットメルト層を形成し、シート接合用熱接着フィルムを作成した以外は、実施例1と同様の評価を行った。
【0039】
(実施例4)
ブロック共重合体A 5質量部を一般式(B)で表されるエチレンオキサイド基を有する界面活性剤D〔ビーエーエスエフジャパン(株)製 Pluronic(R)3100、(数平均分子量(Mn)1150)〕 0.2質量部に代えた以外は、実施例1と同様の評価を行なった。
【0040】
(実施例5)
ブロック共重合体A 5質量部を一般式(C)で表されるエチレンオキサイド基を有する界面活性剤E〔(株)ADEKA製 アデカ(R)プルロニック25R2(数平均分子量(Mn)2800)〕 4.5質量部に代えた以外は、実施例1と同様の評価を行なった。
【0041】
(比較例1)
ブロック共重合体A 5質量部を0.01質量部に代えた以外は、実施例1と同様の評価を行なった。
【0042】
(比較例2)
ブロック共重合体A 5質量部を8質量部に代えた以外は、実施例1と同様の評価を行なった。
【0043】
(比較例3)
ブロック共重合体A 5質量部を0質量部に代えた以外は、実施例1と同様の評価を行なった。
【0044】
(比較例4)
ブロック共重合体A 5質量部を界面活性剤F(日油(株)製:シントレッキス(R)EH−R;2−エチルヘキシル-硫酸エステルナトリウム塩、(化4))に変えた以外は、実施例1と同様の評価を行った。
(比較例5)
ブロック共重合体A 5質量部を界面活性剤G(日油(株)製:ニッサンカチオン(R)SA;オクタデシルアミン酢酸塩、(化5))に変えた以外は、実施例1と同様の評価を行った。
[化4]C(C)CH−CH−O−SO
[化5]C1837−NH・CH−COOH
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
表1から明らかなように実施例1〜5で示す表面自由エネルギーが43mN/m以上のホットメルト接着剤層を有するシート接合用熱接着フィルムは、接着強度を十分に有しながら、且つ、トムソン刃にホットメルト接着剤成分が付着することがなかった。
これに対して比較例1および比較例3は、表面自由エネルギーが43mN/m以下であるため、接着強度は、十分な強度を有しているが、トムソン刃にホットメルト接着剤成分の付着が認められた。比較例2および比較例4は、表面自由エネルギーが43mN/m以上であり、ホットメルト接着剤成分の付着は認められなかったが、接着強度の著しい低下が見られた。比較例5は、1000個の孔をあけた後は、トムソン刃に接着剤の付着が認められなかったが、2000個の孔をあけた後には、トムソン刃に接着剤の付着が認められた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの両面にホットメルト接着剤層を設けてなるシート接合用熱接着フィルムであって、
前記ホットメルト接着剤層の少なくとも1つの層が、ポリエステル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ポリアミド樹脂、クロロプレン樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂を用いてなる接着性樹脂と、一般式(A)に示すエチレンオキサイド基を少なくとも1つ以上有する界面活性剤とを含有し、
前記接着性樹脂100質量部に対し、前記界面活性剤を0.1〜5質量部含んでいるシート接合用熱接着フィルム。
[化1]−(CHCHO)− (A)
(ここでlは整数を表す)
【請求項2】
前記一般式(A)に示すエチレンオキサイド基を少なくとも1つ以上有する界面活性剤の数平均分子量(Mn)が、500以上20000以下である請求項1に記載のシート接合用熱接着フィルム。
【請求項3】
前記一般式(A)に示すエチレンオキサイド基を少なくとも1つ以上有する界面活性剤が、一般式(B)または(C)で示されるブロック単位の1つ以上からなるブロック共重合体である請求項1または2に記載のシート接合用熱接着フィルム。
[化2]HO―(CHCHO)−(R−O)−(CHCHO)−H (B)
[化3]HO−(R−O)−(CHCHO)−(R−O)−H (C)
(ここで、Rはプロピレン基を表し、m、n、o、p、q、rは整数を表す)
【請求項4】
前記一般式(A)に示すエチレンオキサイド基を少なくとも1つ以上有する界面活性剤を含有するホットメルト接着剤層の表面および/または外表面と垂直に交わる平面の表面自由エネルギーがー43mN/m以上である請求項1〜3のいずれかに記載のシート接合用熱接着フィルム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のシート接合用熱接着フィルムの少なくとも1つの表面に離型フィルムが積層された積層シート接合用熱接着フィルム。

【公開番号】特開2011−83895(P2011−83895A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−235960(P2009−235960)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】