説明

シート搬送装置及び画像形成装置

【課題】搬送経路の曲げ搬送部において異なる種類のシート材を円滑に搬送することが可能なシート搬送装置を提供する。
【解決手段】本発明のシート搬送装置は、ストレート搬送部S1とその搬送方向下流側に連設された曲げ搬送部M1を有する搬送経路と、搬送経路に沿ってシート材P1を搬送する搬送手段18と、ストレート搬送部S1と曲げ搬送部M1の連設部Yのシート搬送方向下流側でシート材P1にエアを吹き付けて当該シート材P1を搬送経路に沿う方向へ曲げるエア吹き付け手段31と、シート材P1の種類を検知するシート種類検知手段又はシート材の種類を入力するシート種類入力手段と、シート種類検知手段の検知情報又は前記シート種類入力手段の入力情報に基づいて、エア吹き付け手段31によるエアの吹出位置Xと風量の少なくとも一方を変更可能に制御する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート材を搬送するシート搬送装置と、それを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット印刷装置において、図11に示すように、インクジェット印刷部100の用紙搬送方向下流側において、用紙を下方へ曲げて案内するように構成されたものがある(特許文献1参照)。この場合、インクジェット印刷部100で画像が形成された用紙は、搬送ベルト200によって下流へと搬送され、切換爪400やガイド板などによって搬送経路R10へと案内される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年、インクジェット印刷装置を含む画像形成装置の小型化に伴い、用紙搬送経路における曲げ搬送部の屈曲度が大きくなってきている。特に、このように構成された画像形成装置において、上記のように、画像形成された直後の用紙を下方に曲げて搬送すると、図12に示すように、曲げ搬送部において用紙Pの未乾燥の画像形成面Gが切換爪400等に擦れて画像が乱れる虞がある。
【0004】
また、図13に示すように、用紙Pの前端e1が曲げ搬送部に設けた切換爪400などに当接したときに搬送抵抗が生じると、これにより用紙Pの搬送速度が低下することがある。このとき、用紙Pの後端e2側において画像形成が行われていた場合は、搬送速度の低下によって、用紙Pの後端e2側での画像形成が正確に行われなくなる虞がある。このような問題は、画像形成装置の小型化のためにインクジェット印刷部から曲げ搬送部までの距離を短くした場合や、長い用紙を搬送した場合などに生じやすくなる。
【0005】
また、上記曲げ搬送部における画像形成面の擦れや用紙の搬送速度の低下は、剛性の小さい薄紙等でも発生する虞があるが、剛性の大きい厚紙等では、曲げ搬送部での円滑な搬送が困難となるため、より顕著となる傾向にある。さらに、曲げ搬送部における用紙の搬送を円滑に行えないと、用紙のスキューやジャムなどが生じる虞もある。
【0006】
そこで、本発明は、斯かる事情に鑑み、搬送経路の曲げ搬送部において異なる種類のシート材を円滑に搬送することが可能なシート搬送装置、及びそのシート搬送装置を備えた画像形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、ストレート搬送部とその搬送方向下流側に連設された曲げ搬送部を有する搬送経路と、前記搬送経路に沿ってシート材を搬送する搬送手段と、前記ストレート搬送部と前記曲げ搬送部の連設部のシート搬送方向下流側でシート材にエアを吹き付けて当該シート材を前記搬送経路に沿う方向へ曲げるエア吹き付け手段と、シート材の種類を検知するシート種類検知手段又はシート材の種類を入力するシート種類入力手段と、前記シート種類検知手段の検知情報又は前記シート種類入力手段の入力情報に基づいて、前記エア吹き付け手段によるエアの吹出位置と風量の少なくとも一方を変更可能に制御する制御手段とを備えたシート搬送装置である。
【0008】
エア吹き付け手段によってシート材にエアを吹き付けることにより、そのシート材を非接触で搬送経路に沿う方向へ曲げて、曲げ搬送部におけるシート材と周辺部材との当接を抑制することができる。これにより、シート材を曲げ搬送部において円滑に搬送することが可能となる。また、シート種類検知手段の検知情報又はシート種類入力手段の入力情報に基づいて、エアの吹出位置と風量の少なくとも一方を変更することが可能であるので、各種シート材に適した吹出位置又は風量でエアを吹き付けることができるようになり、シート材に対して十分かつ確実に曲げ作用を発揮することができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のシート搬送装置において、前記シート種類検知手段で検知されたシート材又は前記シート種類入力手段で入力されたシート材の種類が剛性の小さいあるいは薄いシート材である場合は、前記吹出位置の前記連設部に対する前記ストレート搬送部の直進方向の距離を短くし、前記シート種類検知手段で検知されたシート材又は前記シート種類入力手段で入力されたシート材の種類が剛性の大きいあるいは厚いシート材である場合は、前記吹出位置の前記連設部に対する前記ストレート搬送部の直進方向の距離を長くするように構成したものである。
【0010】
剛性の小さいあるいは薄いシート材を搬送する場合は、吹出位置の連設部に対する距離を短くすることにより、吹き付けたエアによってシート材に浮き上がりや挙動の乱れが生じるのを防止できる。これにより、スキューやジャムを発生させずにシート材を搬送することができる。また、剛性の大きいあるいは厚いシート材を搬送する場合は、吹出位置の連設部に対する距離を長くすることにより、シート材をエアによって十分かつ確実に曲げることができる。これにより、シート材の曲げ不足によるスキューやジャムの発生を防止できる。
【0011】
請求項3の発生は、請求項1又は2に記載のシート搬送装置において、前記シート種類検知手段で検知されたシート材又は前記シート種類入力手段で入力されたシート材の種類が剛性の小さいあるいは薄いシート材である場合は、前記風量を少なくし、前記シート種類検知手段で検知されたシート材又は前記シート種類入力手段で入力されたシート材の種類が剛性の大きいあるいは厚いシート材である場合は、前記風量を多くするように構成したものである。
【0012】
剛性の小さいあるいは薄いシート材を搬送する場合は、風量を少なくすることにより、吹き付けたエアによってシート材に浮き上がりや挙動の乱れが生じるのを防止できる。これにより、スキューやジャムを発生させずにシート材を搬送することができる。また、剛性の大きいあるいは厚いシート材を搬送する場合は、風量を多くすることにより、シート材をエアによって十分かつ確実に曲げることができる。これにより、シート材の曲げ不足によるスキューやジャムの発生を防止できる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載に記載のシート搬送装置において、前記エア吹き付け手段は、気流発生装置と、当該気流発生装置で発生させた気流によってエアを吹き出す吹出口と、当該吹出口の位置を調整する吹出位置調整部材とを有するものである。
【0014】
これにより、吹出位置をシート材に対して適した位置に調整することができるようになる。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載に記載のシート搬送装置において、前記エア吹き付け手段は、気流発生装置と、当該気流発生装置で発生させた気流によってエアを吹き出す吹出口と、前記気流発生装置で発生させた気流を前記吹出口へ案内する導風路と、当該導風路を通って前記吹出口から吹き出すエアの風量を調整する風量調整部材とを有するものである。
【0016】
これにより、風量をシート材に対して適した量に調整することができるようになる。
【0017】
請求項6の発明は、請求項1から3のいずれか1項に記載のシート搬送装置において、前記エア吹き付け手段は、気流発生装置と、当該気流発生装置で発生させた気流によってエアを吹き出す吹出口と、当該吹出口の位置を調整する吹出位置調整部材と、前記気流発生装置で発生させた気流を前記吹出口へ案内する導風路と、当該導風路を通って前記吹出口から吹き出すエアの風量を調整する風量調整部材とを有するものである。
【0018】
これにより、吹出位置と風量をシート材に対して適した位置と量に調整することができるようになる。
【0019】
請求項7の発明は、請求項6に記載のシート搬送装置において、前記吹出位置調整部材と前記風量調整部材とを一体的に構成したものである。
【0020】
吹出位置調整部材と風量調整部材とが一体的に構成されていることにより、構成を簡素化することができる。また、吹出位置と風量の調整を1つの駆動装置によって行うことが可能となるので、コストの削減と動作信頼性の向上を図れる。
【0021】
請求項8の発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載に記載のシート搬送装置において、前記エア吹き付け手段は、気流発生装置と、当該気流発生装置で発生させた気流によってエアを吹き出す吹出口と、前記気流発生装置の出力を調整する制御手段とを有するものである。
【0022】
この場合は、上記風量調整部材などを設ける必要がないので、コストの削減を図れると共に、耐久性の点でも有利となる。
【0023】
請求項9の発明は、請求項4又は6に記載のシート搬送装置において、前記吹出位置調整部材を、前記吹出口が形成された移動可能な部材で構成したものである。
【0024】
これにより、吹出口が形成された部材を移動させるだけの簡単な構成によって、吹出位置を調整することができ、安価で信頼性の高い装置とすることができる。
【0025】
請求項10の発明は、請求項5又は6に記載のシート搬送装置において、前記風量調整部材を、前記導風路内の気流通過断面の大きさを可変可能な部材で構成したものである。
【0026】
これにより、導風路内の気流通過断面の大きさを変更するだけの簡単な構成によって、風量を調整することができ、安価で信頼性の高い装置とすることができる。
【0027】
請求項11の発明は、請求項5又は6に記載のシート搬送装置において、前記風量調整部材を、前記導風路内の気流の一部を外部へ逃がすための孔を開閉可能な部材で構成したものである。
【0028】
これにより、導風路内の気流の一部を外部へ逃がす簡単な構成によって、風量を調整することができ、安価で信頼性の高い装置とすることができる。
【0029】
請求項12の発明は、請求項1から11のいずれか1項に記載のシート搬送装置を備えた画像形成装置である。
【0030】
画像形成装置が、請求項1から11のいずれか1項に記載のシート搬送装置を備えているので、これらのシート搬送装置による上記効果が得られる。これにより、曲げ搬送部におけるシート材の搬送を円滑に行うことが可能となるので、シート材の画像形成面が擦れることによる画像の乱れや、シート材の搬送速度が低下することよる画像形成不良等の不具合を防止することが可能となる。
【発明の効果】
【0031】
本発明のシート搬送装置によれば、エア吹き付け手段によってシート材にエアを吹き付けることにより、そのシート材を非接触で搬送経路に沿う方向へ曲げることができるので、曲げ搬送部におけるシート材と周辺部材との当接を抑制することができる。また、シート材の種類に基づいて、エアの吹出位置と風量の少なくとも一方を変更することが可能であるので、各種シート材に適した吹出位置又は風量でエアを吹き付けることができ、シート材に対して十分かつ確実に曲げ作用を発揮することができる。これにより、曲げ搬送部においてシート材を円滑に搬送することができ、シート材が周辺部材に当接することによるスキューやジャムなどの不具合を高度に防止することが可能となる。
【0032】
また、画像形成装置が本発明のシート搬送装置を備えることにより、曲げ搬送部でシート材の画像形成面が擦れることによる画像の乱れや、曲げ搬送部でシート材の搬送速度が低下することよる画像形成不良等の不具合を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明のシート搬送装置を搭載したインクジェットプリンタの概略構成図である。
【図2】前記プリンタに搭載した第1エア吹き付け装置の概略構成図である。
【図3】前記第1エア吹き付け装置の概略構成図である。
【図4】前記第1エア吹き付け装置の制御系を示すブロック図である。
【図5】前記プリンタに設けた操作パネルの紙種選択モードの表示部を示す図である。
【図6】前記第1エア吹き付け装置における吹出位置と風量の調整動作のフローチャートである。
【図7】吹出位置と風量の調整を行うための制御テーブルを示す図である。
【図8】吹出位置と風量が不適切な値に設定された場合の状態を示す図である。
【図9】前記第1エア吹き付け装置の他の実施形態を示す図である。
【図10】前記第1エア吹き付け装置の他の実施形態を示す図である。
【図11】従来のインクジェット印刷装置の構成を示す図である。
【図12】従来のインクジェット印刷装置の課題を説明するための図である。
【図13】従来のインクジェット印刷装置の課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0035】
まず、図1に基づいて、本発明のシート搬送装置を搭載した画像形成装置の全体構成について説明する。
図1において、符号1は、本発明に係る画像形成装置としてのインクジェットプリンタの装置本体である。当該装置本体1には、画像読取部2と、画像形成部3と、給紙部4等が配設されている。
【0036】
画像読取部2は、原稿台上に置かれた原稿を、密着イメージセンサー(図示せず)を配した読み取り位置に給紙し、当該密着イメージセンサーによる画像読み取り後に、原稿排出トレイ(図示せず)に原稿を排紙するように構成されている。画像形成部3は、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のライン型インクジェットヘッド10Y,10M、10C,10Kを有する画像形成ヘッドユニット11を備えている。給紙部4には、シート材としての用紙Pを収容した複数の給紙カセット12が配設されている。各給紙カセット12には、収容されている用紙Pを送り出すための供給ローラ13が設けてある。各供給ローラ13の用紙搬送方向下流側には、用紙Pを一枚ずつ分離するためのフィードリバースローラ対50a,50b,51a,51bが配設されている。また、本実施形態では、装置本体1の図の右側に、別の給紙部としての給紙装置6が配設されている。給紙装置6又は給紙カセット12から供給された用紙は、画像形成部3で画像が形成された後、最終的に装置本体1の図の左側に設けられた排紙トレイ20に排出されるようになっている。また、画像形成後の用紙に、ステイプル処理、折り処理、穿孔処理及び製本処理等のいわゆる後処理を施す後処理装置(フィニッシャ)を設けてもよい。
【0037】
図1において、二点鎖線は用紙が搬送される搬送経路である。また、その二点鎖線に付された矢印の方向は、用紙の搬送方向を示す。本実施形態では、搬送経路は、第1〜第5搬送経路A〜Eによって構成されている。
【0038】
第1搬送経路Aは、上記給紙カセット12又は給紙装置6から供給された用紙を画像形成部3へ案内するための搬送経路である。詳しくは、第1搬送経路Aは、給紙カセット12から給紙された用紙を画像形成部3へ案内するための縦方向及び横方向の搬送経路と、給紙装置6から給紙された用紙を画像形成部3へ案内するための横方向の搬送経路とが、途中で合流して構成されている。また、第1搬送経路Aにおいて、合流箇所の搬送方向上流側には、用紙のスキュー補正と搬送タイミングの調整を行うレジストローラ対25a,25bが配設されている。
【0039】
第2搬送経路Bは、画像形成後の用紙を機外へ排出するための搬送経路であり、第1搬送経路Aから水平方向に直進するように配設されている。第2搬送経路Bの搬送方向下流端側には、用紙を機外に排出するための排出ローラ対26a,26bが配設されている。また、排出ローラ対26a,26bよりも、搬送方向上流側には、用紙のカールを除去するためのデカーラ部90が設けられている。デカーラ部90としては、例えば、3つのコロを対向させてそれらの間にカール矯正のための湾曲経路を形成したものや、ソフトローラにハードローラを当接させてその当接部にカール矯正のための湾曲経路を形成したものなど、既存の従来技術を採用可能である。
【0040】
第3搬送経路Cは、第1搬送経路Aの搬送方向下流側から下方へ伸び、装置本体1の下部で上方へ引き返して、第2搬送経路Bのデカーラ部90の上流側で合流している。また、第3搬送経路Cの搬送方向上流側で、第2搬送経路Bと分かれている箇所には、用紙を第2搬送経路Bと第3搬送経路Cのいずれかに選択して案内するための切換爪28が配設されている。また、第3搬送経路Cの途中には、正逆回転可能な反転搬送ローラ対27a,27bが配設されている。反転搬送ローラ対27a,27bが正回転する場合は、用紙は図の下方の排出方向へと搬送され、反転搬送ローラ対27a,27bが逆回転する場合は、用紙は前記排出方向とは逆方向(図の上方)へ搬送されるようになっている。また、反転搬送ローラ対27a,27bの正回転時の搬送方向(排出方向)の上流側には、用紙の後端を検知する検知センサ95が配設されている。
【0041】
第4搬送経路Dは、第3搬送経路Cの反転搬送ローラ対27a,27bよりも正回転時の搬送方向(排出方向)の上流側で分岐し、第1搬送経路Aに合流するように配設されている。また、第4搬送経路Dが第3搬送経路Cから分岐する箇所には、第3搬送経路Cから逆送される用紙を第4搬送経路Dへ案内するための切換爪29が配設されている。
【0042】
第5搬送経路Eは、第3搬送経路Cの反転搬送ローラ対27a,27bよりも正回転時の搬送方向(排出方向)の上流側で分岐し、第3搬送経路Cの下流側で合流するように配設されている。また、第5搬送経路Eが第3搬送経路Cから分岐する箇所には、第3搬送経路Cから逆送される用紙を第5搬送経路Eへ案内するための切換爪30が配設されている。
【0043】
また、装置本体1には、上記搬送経路に沿って用紙を搬送するための各種搬送手段を備えたシート搬送装置が搭載されている。このシート搬送装置は、搬送手段の1つとして、画像形成部3の下方に配設された搬送ベルト18を備える。搬送ベルト18は、無端状のベルトで構成されており、1つの駆動ローラ14と3つの従動ローラ15,16,17によって張架されている。また、搬送ベルト18には、テンションローラ19によって所定の張力が付与されている。駆動ローラ14は図示しない駆動装置によって回転駆動可能となっており、駆動ローラ14が回転することによって、搬送ベルト18は図の矢印方向に回転するようになっている。また、従動ローラ15と従動ローラ17の用紙搬送方向の下流側には、それぞれ用紙を検知する用紙検知センサ35,36が設けてある。
【0044】
ここで、搬送ベルト18上で用紙を担持して搬送する搬送面(搬送経路)は、水平状に配設された第1ストレート搬送部S1と、その搬送方向下流側に連設された円弧状の第1曲げ搬送部M1と、その搬送方向下流側に傾斜して連設された第2ストレート搬送部S2と、その搬送方向下流側に連設された円弧状の第2曲げ搬送部M2と、その搬送方向下流側に傾斜して連設された第3ストレート搬送部S3とによって構成されている。
【0045】
また、シート搬送装置は、搬送ベルト18の裏面側からエアを吸引して用紙を搬送ベルト18に吸着させるエア吸着手段を備えている。このエア吸着手段は、搬送ベルト18の裏面側に配設された導風路としての第1〜第4吸引ダクト21〜24と、各吸引ダクト21〜24からそれぞれ独立してエア吸引するエア吸引手段としての吸引用ファン(図示省略)を有している。上記搬送ベルト18には、エアを吸引するための多数の小孔が形成されており、これら小孔から各吸引ダクト21,22,23,24を介してエアを吸引することにより、搬送ベルト18上に用紙を吸着させる仕組みとなっている。
【0046】
各吸引ダクトの配設位置について詳しく説明すると、第1吸引ダクト21は、画像形成部3の下方で第1ストレート搬送部S1に対向して配設されている。第2吸引ダクト22は、第1曲げ搬送部M1の用紙搬送方向上流側近傍で第1ストレート搬送部S1に対向して配設されている。第3吸引ダクト23は、第2ストレート搬送部S2に対向した位置に配設されている。また、第4吸引ダクト24は、第3ストレート搬送部S3に対向した位置に配設されている。
【0047】
また、シート搬送装置は、搬送ベルト18に用紙を静電吸着させる静電吸着手段を備える。静電吸着手段は、搬送ベルト18上で用紙を帯電させる帯電手段としての帯電器33によって構成されている。図1に示すように、帯電器33は、画像形成部3よりも用紙搬送方向の下流側に配設されている。一方、搬送ベルト18は、その表面に絶縁層、裏面に導電層を有する多層構造となっている。また、搬送ベルト18を張架する駆動ローラ14、従動ローラ15,16,17、テンションローラ19のうちの少なくとも1つが、表面を導電性の金属で構成したローラで構成され、それが図示しないアースに接続されている。帯電器33によって用紙を帯電させると、用紙の表面に蓄えられた電荷と、アース接続された搬送ベルト18の逆極性の電荷とによって発生する電気的な引力で、用紙が搬送ベルト18に吸着される仕組みとなっている。
【0048】
上記帯電器33としては、非接触型のコロナ帯電器、特に用紙表面電位を制御しやすいスコロトロン型帯電器を採用することが望ましい。接触型の帯電器を適用することも可能であるが、帯電器が用紙の画像形成面と接触することで汚れると、その汚れが次に通過する用紙に付着して画質が低下する虞がある。
【0049】
また、搬送ベルト18上の用紙担持領域の下流側、つまり第3ストレート搬送部S3の用紙搬送方向下流側には、用紙に溜まった電荷を除電する除電手段としての除電器34が配設されている。除電器34としては、例えば、除電ブラシ等の接触型のものを使用することができるが、除電ブロア等の非接触型のものを使用した方が、用紙上の画像を乱す虞がないため望ましい。
【0050】
また、搬送ベルト18の外周側には、搬送ベルト18で搬送される用紙にエアを吹き付けるエア吹き付け手段としての第1エア吹き付け装置31と第2エア吹き付け装置32が設けてある。第1エア吹き付け装置31は、第1曲げ搬送部M1(又は従動ローラ16の位置)よりも用紙搬送方向の下流側に配設されている。第2エア吹き付け装置32は、第2曲げ搬送部M2(又は従動ローラ17の位置)よりも用紙搬送方向の下流側に配設されている。
【0051】
また、別の搬送手段としての搬送ベルト39が、第2搬送経路Bに配設されている。この搬送ベルト39も、多数の小孔が形成された無端状のベルトで構成され、駆動ローラ37及び従動ローラ38によって張架されている。また、その搬送ベルト39の下方には、搬送ベルト39に形成された小孔からエアを吸引するための吸引ダクト40が配設されている。この吸引ダクト40にも、図示しない吸引用ファンが設けられている。そして、その吸引用ファンを駆動させることによって、搬送ベルト39の小孔からエアを吸引して、用紙を搬送ベルト39上に吸着できるようになっている。
【0052】
また、その他の搬送手段として、複数の搬送ローラ52a,52b〜61a,61bが配設されている。各搬送ローラの中で、用紙の画像形成面側に接触する方のローラ(図1の符号56a,57a,58a,59a,60a,61a,61bで示すローラ)には、画像形成面との接触面積が小さいローラを採用している。具体的には、それらのローラは、プラスチック製又はゴム製のローラ部材の表面にセラミック等の砥粒を多数接着して構成されている。これにより、ローラは画像形成面に対して点接触することができ、画像形成面の乱れが生じにくくなる。また、用紙の画像形成面側に接触するローラを、薄肉の金属等で形成した拍車ローラで構成してもよい。この場合も、ローラが画像形成面に対して点接触となるため、同様に画像形成面の乱れが生じにくくなる。また、同様に、上記排出ローラ対26a,26bの両方のローラと、上記反転搬送ローラ対27a,27bの用紙の画像形成面側に接触する方のローラ27aも、画像形成面との接触面積が小さいローラで構成されおり、画像形成面の乱れを生じにくくしている。
【0053】
さらに、本実施形態では、用紙の画像形成面の乱れを防止するために、上流側と下流側のローラ間の線速差を極力無くすようにしている。これにより、上流側と下流側のローラ間で、用紙が撓むことによって画像形成面が搬送ガイド板に当接したり、反対に用紙が引っ張られることによって画像形成面がローラと擦れたりするのを防止することが可能となる。上流側と下流側のローラ間の線速をほぼ一定にするには、例えば、上流側のローラにワンウェイクラッチを設けたり、上流側と下流側のローラを同じ駆動モータで駆動させたりすることによって可能である。
【0054】
以下、図1を参照しつつ、本発明に係るインクジェットプリンタの基本動作について説明する。
印刷開始の指示があると、給紙カセット12又は給紙装置6から用紙Pが送り出される。送り出された用紙Pは、レジストローラ対25a,25bに突き当たって一時停止される。これにより、用紙のスキューが補正される。その後、所定のタイミングでレジストローラ対25a,25bの回転を開始し、用紙Pが搬送ベルト18上へ搬送される。用紙Pは、第1吸引ダクト21のエア吸引によって搬送ベルト18上に吸着され、その状態で搬送ベルト18が回転することにより、用紙Pは画像形成ヘッドユニット11の下方へ搬送される。また、このとき、用紙検知センサ35によって用紙Pの先端が検知される。そして、この用紙検知センサ35の検知に基づいて、画像形成ヘッドユニット11が所定のタイミングで駆動され、画像読取部2で読み取った原稿の画像情報に基づいて、各色のインクジェットヘッド10Y,10M,10C,10Kのノズルから用紙Pにインクが吐出される。かくして、用紙P上にフルカラー画像が形成される。
【0055】
また、4つのインクジェットヘッド10Y,10M,10C,10Kのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのインクジェットヘッドを使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。また、この間の搬送ベルト18の速度は極力変動しないように制御されているが、実際はその速度変動を図示しない検知装置によって検知することにより、用紙位置に合わせた正確なタイミングでインクの吐出が行われる。
【0056】
上記画像形成部3で画像が形成された用紙Pをそのまま機外に排出する場合は、切換爪28を図の点線で示す位置に配設して、用紙Pを水平方向に直進させる。そして、用紙Pは第2搬送経路Bに配設した搬送ベルト39上へと搬送され、吸引ダクト40のエア吸引によって用紙Pは搬送ベルト39上に吸着される。その状態で搬送ベルト39が回転することにより、用紙Pは下流へと搬送され、デカーラ部90で用紙のカールが除去された後、排出ローラ対26a,26bによって用紙Pは機外へと排出される。
【0057】
また、上記画像形成後の用紙Pを、第3搬送経路Cを通過させてから機外に排出する場合は、切換爪28を図の実線で示す位置に配設し、用紙Pを第1搬送経路Aから第3搬送経路Cへと案内できるようにする。この状態で搬送ベルト18が回転することにより、用紙Pは第1〜第4吸引ダクト21〜24のエア吸引によって搬送ベルト18に吸着されつつ第3搬送経路Cへと搬送されるが、搬送ベルト18上の第1曲げ搬送部M1と第2曲げ搬送部M2の位置ではそれぞれ従動ローラ16,17が存在するため、その箇所においてエア吸着力を発揮することができない。そのため、この場合は、帯電器33によって用紙Pを帯電させ、用紙Pと搬送ベルト18との間に静電吸着力を発生させることにより、第1曲げ搬送部M1と第2曲げ搬送部M2の位置においても吸着力が発揮されるようにする。
【0058】
しかし、第1曲げ搬送部M1では搬送経路(又は搬送ベルト18)が曲がっているため、上記のように静電吸着力を作用させても、用紙Pを搬送ベルト18に確実に吸着させにくく、用紙の厚さや剛性、その他の条件によっては、用紙Pの前端が第1曲げ搬送部M1の搬送方向下流側において浮き上がって、画像形成面が切換爪28等の周辺部材に強く当接する可能性がある。
【0059】
そこで、第1曲げ搬送部M1の搬送方向下流側に配設した第1エア吹き付け装置31によって、用紙Pにエアを吹き付けて、用紙Pを搬送ベルト18(又は搬送経路)に沿う方向へ曲げるようにしている。これにより、用紙Pの先端を切換爪28等に強く当接させることなく搬送することができる。そして、エアによって曲げられた用紙Pは、第3吸引ダクト23のエア吸引によって搬送ベルト18に吸着される。また、特に用紙Pの剛性が大きい場合は、第1エア吹き付け装置31によって用紙Pの先端を曲げると、反対に用紙Pの後端が第1曲げ搬送部M1の搬送方向上流側で搬送ベルト18から浮き上がることがある。このような場合は、第2吸引ダクト22によってエア吸引を行い、用紙Pの後端が浮き上がらないようにする。なお、上述のように、各吸引ダクトは独立して吸引可能に構成されているため、第2吸引ダクト22のエア吸引動作は、他の吸引ダクトの動作の影響を受けずに制御することができる。
【0060】
用紙Pが第2曲げ搬送部M2の位置に搬送されると、この位置でも搬送経路(又は搬送ベルト18)が曲がっているため、上記第1曲げ搬送部M1と同様に用紙Pが搬送ベルト18から浮き上がる可能性ある。そのため、ここでは、第2エア吹き付け装置32によって、用紙Pにエアを吹き付けて、用紙Pを搬送ベルト18(又は搬送経路)に沿う方向へ曲げるようにする。こうして、吹き付けエアによって曲げられた用紙Pは、第4吸引ダクト24のエア吸引によって搬送ベルト18に吸着される。
【0061】
その後、用紙Pが除電器34を通過するとき、用紙Pに溜まった電荷が除電され、静電吸着力が解除される。そして、用紙Pは、駆動ローラ14の位置で搬送ベルト18から離脱して、反転搬送ローラ対27a,27bへと搬送される。また、切換爪29と切換爪30は、用紙Pの通過を妨げないように、それぞれ図の実線に示す位置に配設されている。反転搬送ローラ対27a,27bへ到達した用紙Pは、正回転する反転搬送ローラ対27a,27bと、その搬送方向下流側に配設した複数の搬送ローラによって第2搬送経路Bへと搬送される。そして、用紙Pは、デカーラ部90でカールが除去された後、排出ローラ対26a,26bによって機外へと排出される。
【0062】
以上のように、第3搬送経路Cは、反転搬送ローラ対27a,27bを正回転させた場合は、用紙を排出する方向へと案内する排出路として機能する。また、この場合、用紙は第3搬送経路Cを通過することによって、下方へ迂回してから第2搬送経路Bへ案内されるため、用紙Pを排出までの搬送経路を長くすることができ、十分にインクを乾かしてから用紙Pを排出することが可能となる。
【0063】
また、両面印刷を行う場合は、画像形成部3において画像が形成された用紙Pを、第1搬送経路Aから第3搬送経路Cへ搬送する。この場合も、用紙Pは、搬送ベルト18によって斜め下方へと搬送されるが、ここでの搬送動作は、上記第3搬送経路Cを通過させて用紙Pを排出する場合と同様に行われる。そして、この場合は、用紙Pの後端が検知センサ95で検知されたとき、その検知信号に基づいて、反転搬送ローラ対27a,27bの正回転が停止される。その後、第4搬送経路Dの分岐箇所にある切換爪29を図の点線の位置に切り換え、用紙Pを第4搬送経路Dへ案内できる状態にする。この状態で、反転搬送ローラ対27a,27bを逆回転させることにより、用紙Pを逆送して第4搬送経路Dへ案内する。これにより、用紙Pは前後が反転された状態で第4搬送経路Dへと搬送される。この場合、第3搬送経路Cは、用紙を前後反転させて搬送する反転路として機能する。
【0064】
そして、用紙Pは、第4搬送経路Dを通って第1搬送経路Aへ案内され、表裏が反転された状態で再度画像形成部3へと搬送される。このように、第4搬送経路Dは、第3搬送経路Cから逆送された用紙Pを、両面印刷を行うために再度第1搬送経路Aへと案内する両面搬送経路として機能する。そして、画像形成部3において用紙Pの裏面に表側の場合と同様にして画像が形成される。
【0065】
両面に画像が形成された用紙Pは、第1搬送経路Aから第2搬送経路Bへ水平方向に搬送される。このとき、第1搬送経路Aと第2搬送経路Bとの間の切換爪28は、図の点線の位置に切り換えられている。また、第1搬送経路Aから第2搬送経路Bへと用紙Pを搬送する際、第1エア吹き付け装置31からのエア吹き付け、及び帯電器33による用紙Pの帯電は行わない。そして、用紙Pは、第2搬送経路Bに配設した搬送ベルト39によって上記と同様に下流へ搬送され、デカーラ部90で用紙のカールが除去された後、排出ローラ対26a,26bによって機外へと排出される。
【0066】
また、片面印刷でページ順積載を行う場合は、画像形成部3において画像が形成された用紙Pを、第1搬送経路Aから第3搬送経路Cへ搬送する。ここでの搬送ベルト18による搬送動作も、上記第3搬送経路Cを通過させて用紙Pを排出する場合と同様である。そして、この場合、用紙Pの後端が反転搬送ローラ対27a,27bの位置に到達したとき、反転搬送ローラ対27a,27bの正回転を停止する。その後、第5搬送経路Eの分岐箇所にある切換爪30を図の点線の位置に切り換え、用紙Pを第5搬送経路Eへ案内できる状態にする。この状態で、反転搬送ローラ対27a,27bを逆回転させることにより用紙Pを逆送させ、用紙Pは第5搬送経路Eへと搬送される。そして、用紙Pは、第5搬送経路Eを通って第2搬送経路Bへと送られる。このように、第5搬送経路Eは、第3搬送経路Cで逆送される用紙Pを、画像形成部3へと案内せずにそのまま第2搬送経路Bへと案内するための搬送経路として機能する。その後、用紙Pは、デカーラ部90でカールが除去された後、排出ローラ対26a,26bによって機外へと排出される。これにより、用紙Pは、前後及び表裏が反転された状態で排出され、ページ順に揃えた状態で排紙トレイ20上に積載される。
【0067】
以下、図2及び図3に基づいて、上記第1エア吹き付け装置31の構成について詳しく説明する。
第1エア吹き付け装置31は、気流発生装置としてのシロッコファン41と、導風路としてのダクト42と、吹出位置を調整するための吹出位置調整部材43と、風量を調整するための風量調整部材44と、吹出位置調整部材43及び風量調整部材44のそれぞれを独立して駆動させる2つの駆動装置45,46と、吹出位置調整部材43及び風量調整部材44のそれぞれの位置を検知する位置検知手段としての2つの位置検知センサ47,48等を有している。
【0068】
ダクト42は、シロッコファン41で発生させた気流を図の下方へ案内するように配設されており、ダクト42の下部開口部42aには、吹出位置調整部材43が配設されている。吹出位置調整部材43は、水平方向にスライド可能に支持された板状の部材で構成されている。また、吹出位置調整部材43を構成する板状の部材には、吹出口43aが形成されている。この吹出口43aを形成した箇所以外では、ダクト42の下部開口部42aは吹出位置調整部材43によって閉塞されている。これにより、ダクト42で案内した気流は、吹出口43aから吹き出されるように構成されている。
【0069】
吹出位置調整部材43を駆動させる駆動装置45は、吹出位置調整用モータ62と、それによって回転駆動するピニオンギア63を有している。吹出位置調整部材43には、ピニオンギア63と噛合するラック歯64が水平方向に設けられている。これにより、吹出位置調整用モータ62からの駆動力によってピニオンギア63が回転すると、吹出位置調整部材43が水平方向に移動して、吹出口43aの位置を変更可能となっている。
【0070】
吹出位置調整部材43を配設した位置よりもダクト42の導風方向上流側には、風量調整部材44が配設されている。風量調整部材44は、ダクト42内で水平方向にスライド可能に支持された板状の部材で構成されている。
【0071】
風量調整部材44を駆動させる駆動装置46は、風量調整用モータ65と、それによって回転駆動するピニオンギア66を有している。風量調整部材44には、ピニオンギア66と噛合するラック歯67が水平方向に設けられている。この場合も、風量調整用モータ65からの駆動力によってピニオンギア66が回転すると、風量調整部材44が水平方向に移動するようになっている。このように、風量調整部材44を移動させてダクト42内の気流通過断面の大きさを変更することで、吹出口43aから吹き出されるエアの風量を調整可能となっている。
【0072】
以上のように、上記第1エア吹き付け装置31は、エアの吹出位置と風量を変更可能に構成されているが、これらの制御は用紙の種類に基づいて行われるようになっている。以下、その制御を行うための構成及び方法について説明する。
【0073】
図4は、上記第1エア吹き付け装置31の制御系を示すブロック図である。
図4に示すように、制御部9は、シート種類入力手段8によって入力されたシート材の種類の情報に基づいて、吹出位置調整用モータ62と風量調整用モータ65を制御するように構成されている。本実施形態では、シート種類入力手段8は、インクジェットプリンタの装置本体に設けてある操作パネル8としている。また、本プリンタに接続されたパソコン等を、シート材の種類(紙種)を入力するシート種類入力手段とすることも可能である。また、特有のセンサによってシート材の種類(紙種)を検知するシート種類検知手段70を設け、そのシート種類検知手段70の検知情報に基づいて制御部9が各モータ62,65を制御するように構成してもよい。その場合は、使用者による入力作業を不要にすることが可能である。また、上記制御部9は、装置本体に搭載されたCPU等で構成されている。
【0074】
図5は、操作パネル8の紙種選択モードの表示部を示す。
操作パネル8は、タッチパネル式の液晶表示部で構成されており、本実施形態では、「標準紙」「薄紙」「厚紙」のいずれかを選択して入力可能となっている。例えば、「標準紙」は55〜70K紙程度、「薄紙」は45K紙未満、「厚紙」は110〜135K紙程度としている。また、それら以外の紙種を任意設定することも可能である。
【0075】
吹出位置の調整は、図2及び図3に示す距離L1の大きさを変更することで行う。具体的には、距離L1は、吹出口43aの中心X(吹出位置)と、第1ストレート搬送部S1と第1曲げ搬送部M1の連設部Y(又は従動ローラ16の回転中心)との、第1ストレート搬送部S1の直進方向の距離である。
【0076】
また、風量の調整は、図2及び図3に示す距離L2の大きさを変更することによって行う。具体的には、距離L2は、風量調整部材44の先端Vとそれと対向するダクト42の内面Zとの間の距離である。
【0077】
図6は、吹出位置と風量の調整動作のフローチャートである。
図6に示すように、まず、使用者が操作パネル8によって紙種を入力したら、用紙の搬送動作を開始する前に、吹出位置調整用モータ62と風量調整用モータ65の駆動を開始し、吹出位置調整部材43と風量調整部材44を移動させる。そして、それらの移動を位置検知センサ47,48で確認して、距離L1とL2が入力された紙種情報に基づいて予め設定された大きさとなるように、吹出位置調整部材43と風量調整部材44の移動を停止する。そして、シロッコファン41を駆動させエアを吹き出す。これで、用紙搬送の準備が完了した状態となり、その後、用紙の搬送を開始する。
【0078】
また、上記距離L1,L2の調整は、図7に示す制御テーブルに基づいて決定される。
例えば、入力された紙種が薄紙であった場合は、図2に示すように、距離L1と距離L2を共に小さくする。具体的には、図7の制御テーブルに基づいて、距離L1を5〜10mmの範囲内に設定し、距離L2を5〜10mmの範囲内に設定する。また、入力された紙種が厚紙であった場合は、図3に示すように、距離L1と距離L2を共に大きくする。具体的には、図7の制御テーブルに基づき、距離L1を30〜40mmの範囲内に設定し、距離L2を50mm以上に設定する。同様に、入力された紙種が標準紙である場合も、制御テーブルに基づいて距離L1,L2を設定する。
【0079】
図3に示すように、搬送ベルト18によって厚紙P2が搬送されてきた場合、従動ローラ16の下流側において、厚紙Pの先端が搬送ベルト18から浮き上がろうとする。この浮き上がりを抑制するために、第1エア吹き付け装置31からのエアの吹き付けを行うが、厚紙P2は剛性が大きいため、風量を多くして大きな風力でエアの吹き付けなければ、厚紙P2を下方へ十分かつ確実に曲げることができない。そのため、図3に示すように、距離L2を大きくすることで、ダクト42内の気流通過断面の大きさを大きくし、吹出口43aから吹き出されるエアの風量を多くする。
【0080】
また、てこの原理により、厚紙P2にエアが吹き付けられる位置(すなわち力点)は、厚紙P2が搬送ベルト18に支持される位置(すなわち支点)に対して、遠い方が大きな曲げ力を作用させることができる。このため、図3に示すように、厚紙P2を曲げる場合は、距離L1を大きくし、吹出口43aの位置(図の符号Xの位置)を厚紙P2の支点(図の符号Yの位置)から遠くなるようにしている。このように、厚紙P2を搬送する場合は、風量を多くし、かつ、吹出位置を厚紙P2の支点から遠くに設定することによって、厚紙P2を下方へ十分かつ確実に曲げるようにしている。
【0081】
一方、図2に示すように、薄紙P1を搬送する場合は、反対に紙の剛性が小さいので、風量を少なくし、さらに、吹出位置を薄紙P1の支点から近い位置に設定しても、十分かつ確実に曲げることが可能である。
【0082】
反対に、薄紙P1にエアを吹き付ける場合に、距離L1と距離L2を共に大きく設定すると、図8に示すように、支点から遠い位置で吹き付けられる強力なエアによって、薄紙P1の先端の挙動が乱れ浮き上がってしまう。このように、薄紙P1の浮き上がりが生じると、スキューが生じたり、薄紙P1が周辺部材に当接してジャムや紙シワが生じたりする。従って、距離L1及び距離L2は、用紙の厚さや剛性に応じて適切な値に設定されることが重要である。
【0083】
以上のように、本実施形態では、エアの吹出位置と風量を、用紙の種類に応じて変更可能に構成しているので、厚さや剛性の異なる用紙に対して十分かつ確実に曲げ作用を発揮することができ、スキューやジャムなどの発生を確実に防止することが可能である。また、吹出位置調整部材43と風量調整部材44をスライド移動させるだけの簡単な構成によって、吹出位置と風量を調整することができるので、安価で信頼性が高い装置とすることができる。
【0084】
図9と図10は、上記第1エア吹き付け装置31の他の実施形態を示す図である。
図9及び図10において、符号80は水平方向にスライド移動可能なスライド部材であり、符号71はスライド部材80を駆動させる駆動装置である。この駆動装置71は、調整用モータ72と、それによって回転駆動するピニオンギア73を有している。スライド部材80には、ピニオンギア73と噛合するラック歯74が水平方向に設けられている。これにより、調整用モータ72からの駆動力によってピニオンギア73が回転すると、スライド部材80が水平方向に移動するようになっている。
【0085】
また、スライド部材80には、シロッコファン41で発生させた気流を吹き出すための吹出口80aが形成されている。このため、スライド部材80が水平方向にスライド移動すると、吹出口80aの位置が変化し、エアの吹出位置を変更することが可能となっている。すなわち、スライド部材80は、吹出位置を変更可能な吹出位置調整部材としての機能を有する。
【0086】
また、スライド部材80には、ダクト42内の気流の一部を外部へ逃がすための孔42bを開閉するための蓋部80bが設けられている。図9に示すように、スライド部材80が図の右側に移動してダクト42の孔42bが開放された場合は、その孔42bからダクト42内の気流の一部を外部へ逃がすことが可能となる。これにより、吹出口80aへ誘導される気流の量が減少し、風量を少なくすることができる。また、図10に示すように、スライド部材80が図の左側に移動してダクト42の孔42bが閉塞された場合は、吹出口80aへ誘導される気流の量が増加し、風量を多くすることができる。このように、スライド部材80は、吹出口80aへ誘導する気流の量を増減することによりエアの風量を調整可能な風量調整部材としての機能も有している。
【0087】
以上のように、本実施形態では、吹出位置を調整するための吹出位置調整部材と、風量を調整するための風量調整部材とが、スライド部材80として一体的に構成されているので、上記実施形態に比べて構成を簡素化することができる。また、吹出位置と風量の調整を1つの駆動装置によって行うことが可能となるので、コストの削減と動作信頼性の向上を図れる。また、スライド部材80をスライド移動させるだけの簡単な構成によって、吹出位置と風量を調整することができるので、安価で信頼性が高い装置とすることができる。なお、スライド部材80の垂直方向に配設された蓋部80bと水平方向に配設された板部(吹出口80aを形成した部分)とを別体で構成することも可能である。
【0088】
以下、図9及び図10を参照して、本実施形態における吹出位置と風量の調整動作について説明する。
図9に示すように、搬送ベルト18によって薄紙P1が搬送される場合は、スライド部材80を図の右側へ移動させ、吹出口80aの位置を薄紙P1の支点から近い位置に配置する。また、このとき、ダクト42の孔42bが開放されることにより、気流の一部が外部へ逃がされ風量が少なくなる。さらに、本実施形態では、ダクト42内に、気流の量を規制するための導風ガイド81が配設していることにより、吹出口80aへ誘導される風量を適切な風量となるように制限している。このように、薄紙P1に対しては、近い位置で小さな風力のエアを吹き付けることにより、上記実施形態と同様に薄紙P1を安定して下方へ曲げることが可能である。
【0089】
また、図10に示すように、搬送ベルト18によって厚紙P2が搬送される場合は、スライド部材80を図の左側に移動させて、吹出口80aの位置を厚紙P2の支点から遠い位置へ配置する。また、このとき、ダクト42の孔42bが閉塞されることにより、風量が増加する。このように、剛性の大きい厚紙P2に対しては、遠い位置で強い風力のエアを吹き付けることによって、上記実施形態と同様に厚紙P2を下方へ十分かつ確実に曲げることができる。
【0090】
また、本実施形態におけるエアの吹出位置の調整は、上記実施形態と同様に、各紙種に基づいて図9又は図10に示す距離L1を変更することによって行う。また、本実施形態における吹出位置の調整動作も、基本的に上記実施形態と同様である(図6参照)。まず、使用者が操作パネルによって紙種を入力した後、用紙の搬送動作を開始する前に、調整用モータ72の駆動を開始し、スライド部材80を移動させる。そして、その移動を位置検知センサ82で確認して、距離L1が入力された紙種情報に基づいて予め設定された大きさとなるように、スライド部材80の移動を停止する。そして、シロッコファン41を駆動させエアを吹き出す。これで、用紙搬送の準備が完了した状態となり、その後、用紙の搬送を開始する。なお、本実施形態における吹出位置と風量の調整動作のフローチャートは図示省略する。
【0091】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。上記本発明の各実施形態では、風量の調整を、スライド移動可能な部材を用いることで可能としているが、例えば、シロッコファンの出力をCPU等の制御手段によって調整することによっても、吹出口からの風量を調整することは可能である。この場合は、上記実施形態のような風量調整部材44などを設ける必要がないので、コスト削減を図ることができると共に、耐久性の点でも有利となる。また、上記風量調整部材44は、スライド移動することによってダクト42内の気流通過断面の大きさを変更可能に構成されているが、風量調整部材44をダクト42内で角度変更可能な板状の部材で構成し、それの角度調整を行うことでダクト42内の気流通過断面の大きさを変えるようにしてもよい。
【0092】
また、上述の実施形態では、第1エア吹き付け装置31のエアの吹出位置と風量の両方を紙種に応じて調整するように構成しているが、いずれか一方のみを調整することによっても、用紙に対するエアによる曲げ力を変更することが可能である。
【0093】
また、図1に示す第2エア吹き付け装置32の吹出位置と風量の少なくとも一方を、変更可能に構成してもよい。この場合、図1に示す第2曲げ搬送部M2(又は従動ローラ17の位置)を通過する用紙に対して、その種類に適した吹出位置又は風量でエアを吹き付けることができるようになる。
【0094】
また、本発明は、曲げ搬送部の搬送方向下流側でシート材が搬送経路から浮き上がるような構成のシート搬送装置であれば適用可能であり、搬送手段や搬送経路の向きなどは上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明に係るシート搬送装置は、図1に示すインクジェットプリンタ以外に、電子写真方式の画像形成部を備えたプリンタや、それ以外の複写機、ファクシミリ、あるいはこれらの複合機等の画像形成装置にも搭載可能である。
【0095】
以上のように、本発明によれば、エア吹き付け手段によって用紙等のシート材にエアを吹き付けることにより、そのシート材を非接触で搬送経路に沿う方向へ曲げることができるので、曲げ搬送部におけるシート材と周辺部材との当接を抑制することができる。これにより、曲げ搬送部においてシート材を円滑に搬送することができ、シート材が周辺部材に当接することによるスキューやジャムなどの不具合を防止することが可能となる。
【0096】
特に、上記本発明の実施形態のように、シート材の画像形成面が曲げ搬送部の外周側に面して搬送される場合は、その画像形成面が搬送経路の外周側案内面を形成するガイド板などに当接しやすいため、このような画像形成装置において本発明を適用することにより、画像の乱れを効果的に防止できる。また、シート材の前端が曲げ搬送部に到達したときに、シート材の後端側で画像形成が行われていても、曲げて搬送においてシート材を円滑に搬送することができるので、シート材の後端側での画像形成を正確に行うことが可能である。
【0097】
また、エアの吹出位置と風量の少なくとも一方を、シート材の種類に応じて変更可能となっているので、各種シート材に適した吹出位置又は風量でエアを吹き付けることができる。これにより、厚さや剛性の異なるシート材に対して十分かつ確実に曲げ作用を発揮することができ、スキューやジャムなどの発生を高度に防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0098】
8 操作パネル(シート種類入力手段)
9 制御部(制御手段)
18 搬送ベルト(搬送手段)
31 第1エア吹き付け装置(エア吹き付け手段)
32 第2エア吹き付け装置(エア吹き付け手段)
41 シロッコファン(気流発生装置)
42 ダクト(導風路)
42b 孔
43 吹出位置調整部材
43a 吹出口
44 風量調整部材
70 シート種類検知手段
A〜E 第1〜第5搬送経路
L1 距離
M1,M2 第1・第2曲げ搬送部
P 用紙(シート材)
S1〜S3 第1〜第3ストレート搬送部
X 吹出位置
Y 連設部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0099】
【特許文献1】特開2009−274368号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ストレート搬送部とその搬送方向下流側に連設された曲げ搬送部を有する搬送経路と、
前記搬送経路に沿ってシート材を搬送する搬送手段と、
前記ストレート搬送部と前記曲げ搬送部の連設部のシート搬送方向下流側でシート材にエアを吹き付けて当該シート材を前記搬送経路に沿う方向へ曲げるエア吹き付け手段と、
シート材の種類を検知するシート種類検知手段又はシート材の種類を入力するシート種類入力手段と、
前記シート種類検知手段の検知情報又は前記シート種類入力手段の入力情報に基づいて、前記エア吹き付け手段によるエアの吹出位置と風量の少なくとも一方を変更可能に制御する制御手段とを備えたことを特徴とするシート搬送装置。
【請求項2】
前記シート種類検知手段で検知されたシート材又は前記シート種類入力手段で入力されたシート材の種類が剛性の小さいあるいは薄いシート材である場合は、前記吹出位置の前記連設部に対する前記ストレート搬送部の直進方向の距離を短くし、
前記シート種類検知手段で検知されたシート材又は前記シート種類入力手段で入力されたシート材の種類が剛性の大きいあるいは厚いシート材である場合は、前記吹出位置の前記連設部に対する前記ストレート搬送部の直進方向の距離を長くするように構成した請求項1に記載のシート搬送装置。
【請求項3】
前記シート種類検知手段で検知されたシート材又は前記シート種類入力手段で入力されたシート材の種類が剛性の小さいあるいは薄いシート材である場合は、前記風量を少なくし、
前記シート種類検知手段で検知されたシート材又は前記シート種類入力手段で入力されたシート材の種類が剛性の大きいあるいは厚いシート材である場合は、前記風量を多くするように構成した請求項1又は2に記載のシート搬送装置。
【請求項4】
前記エア吹き付け手段は、気流発生装置と、当該気流発生装置で発生させた気流によってエアを吹き出す吹出口と、当該吹出口の位置を調整する吹出位置調整部材とを有する請求項1から3のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項5】
前記エア吹き付け手段は、気流発生装置と、当該気流発生装置で発生させた気流によってエアを吹き出す吹出口と、前記気流発生装置で発生させた気流を前記吹出口へ案内する導風路と、当該導風路を通って前記吹出口から吹き出すエアの風量を調整する風量調整部材とを有する請求項1から3のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項6】
前記エア吹き付け手段は、気流発生装置と、当該気流発生装置で発生させた気流によってエアを吹き出す吹出口と、当該吹出口の位置を調整する吹出位置調整部材と、前記気流発生装置で発生させた気流を前記吹出口へ案内する導風路と、当該導風路を通って前記吹出口から吹き出すエアの風量を調整する風量調整部材とを有する請求項1から3のいずれか1項に記載に記載のシート搬送装置。
【請求項7】
前記吹出位置調整部材と前記風量調整部材とを一体的に構成した請求項6に記載のシート搬送装置。
【請求項8】
前記エア吹き付け手段は、気流発生装置と、当該気流発生装置で発生させた気流によってエアを吹き出す吹出口と、前記気流発生装置の出力を調整する制御手段とを有する請求項1から4のいずれか1項に記載のシート搬送装置。
【請求項9】
前記吹出位置調整部材を、前記吹出口が形成された移動可能な部材で構成した請求項4又は6に記載のシート搬送装置。
【請求項10】
前記風量調整部材を、前記導風路内の気流通過断面の大きさを可変可能な部材で構成した請求項5又は6に記載のシート搬送装置。
【請求項11】
前記風量調整部材を、前記導風路内の気流の一部を外部へ逃がすための孔を開閉可能な部材で構成した請求項5又は6に記載のシート搬送装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載のシート搬送装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−162318(P2011−162318A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27602(P2010−27602)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】