説明

シート状部材の接合装置

【課題】転写ドラムの耐久性を向上させるとともに、ジョイント手段の揺動爪の摩耗を低減させることのできるシート状部材の接合装置を提供する。
【解決手段】ジョイント手段9は、ゴムシート3の長さに応じて、転写ドラム1の軸線方向に移動する。ジョイント手段9は、転写ドラム1の軸線方向に移動後に下降して、転写ドラム1上に整列された2枚のゴムシート3を外表面側から引き寄せて、それぞれの対向側部を突き合わせ接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッドジョイント方式によりシート状部材を接合する接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数本の引き揃えコードを埋設したゴムシートにより、例えば、タイヤ構成部材の一例としてのカーカスプライを転写ドラム上に形成するに当たっては、所定の幅と、コードの延在方向を長さ方向とする所定の長さとを有する複数枚のゴムシート(短冊状のシート状部材)を、転写ドラムの軸線方向への延在姿勢で、その転写ドラムの所要の角度範囲内に順次に貼り付け、複数枚のゴムシートの相互を、それぞれの対向側部で突き合わせて接合することが行われている(特許文献1参照)。
【0003】
図1は、従来のシート状部材の接合装置を模式的に示す図であり、転写ドラムの回転方向側から見たときの図を示している。転写ドラム1の上方には、フレーム18により支持されたジョイント手段19が設けられている。ジョイント手段19は、ゴムシート3を引き寄せる揺動爪11を有しており、ジョイント手段19が下降すると、揺動爪11が、転写ドラム1上に配置された2枚のゴムシート3を外表面側から引き寄せて、それぞれの対向側部の突き合わせ接合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−062041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ゴムシート3の長さはタイヤサイズにより変化する。そのため、従来の接合装置では、ゴムシート3の長さによっては、2枚のゴムシートの対向側部の突き合わせ接合をもたらすジョイント手段19が、ゴムシートの接合時に転写ドラム1の表面に接触する可能性がある。例えば、図1に示すように、ゴムシート3の長さが極めて短い場合、ジョイント手段19が下降した時に、ジョイント手段19が、ゴムシート3が置かれていないドラム表面に接触し、ジョイント手段19のゴムシート3を引き寄せる揺動爪11によりドラム表面に傷を付けてしまう。そのため、従来の接合装置では、転写ドラム1の耐久性が悪く、また、ジョイント手段19の揺動爪11が摩耗するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、転写ドラムの耐久性を向上させるとともに、ジョイント手段の揺動爪の摩耗を低減させることのできるシート状部材の接合装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のシート状部材の接合装置は、ドラム上に設けられたジョイント手段により、前記ドラムの周面上に、前記ドラムの軸線方向に延在させて貼り付けられた複数枚の所定の幅および長さを有するシート状部材の対向側部を相互に引き寄せて突き合わせ接合するシート状部材の接合装置であって、前記ジョイント手段は、前記ドラムの幅分の長さを有し、前記シート状部材の対向側部を相互に引き寄せて突き合わせ接合する際に前記ドラムの軸線方向に移動し、前記ドラムの軸線方向の移動量が、前記ドラムの幅から前記シート状部材の長さを減算した長さであることを特徴とする。
【0008】
本発明のシート状部材の接合装置は、前記ジョイント手段に圧力を与える圧力可変装置を更に備え、前記圧力可変装置は、前記ジョイント手段が前記シート状部材の対向側部を相互に引き寄せて突き合わせ接合する力を可変にすることを特徴とする請求項1に記載のシート状部材の接合装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、シート状部材の長さに応じて、転写ドラムの軸線方向にジョイント手段を移動させて、ジョイント手段が、シート状部材の接合時にシート状部材の置かれていない転写ドラムの表面に接触しないようにしているので、転写ドラムの耐久性を向上させるとともに、ジョイント手段の揺動爪の摩耗を低減させることができる。
また、本発明は、圧力可変装置(電空レギュレータ)を用いることで、シート状部材の長さに応じてジョイント手段に与える圧力を制御して、シート状部材を突き合わせ接合する力を一定に保つことができるので、一定の接合強度を保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】従来のシート状部材の接合装置を模式的に示す図である。
【図2】本発明に係るシート状部材の接合装置の実施形態を模式的に示す図である。
【図3】図2に示す接合装置の側面図である。
【図4】ジョイント手段の要部拡大図である。
【図5】ジョイント手段の要部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。図2は、本発明に係るシート状部材の接合装置の実施形態を模式的に示す図であり、転写ドラムの回転方向側から見たときの図を示している。また、図3は、図2に示す接合装置の側面図である。
【0012】
円筒状の転写ドラム1の周面上には、タイヤ構成部材の一例としてのカーカスプライ等を形成するための、所定の幅と、コードの延在方向を長さ方向とする所定の長さとを有する複数枚の短冊状のゴムシート(シート状部材)3が、転写ドラム1の軸線方向への延在姿勢で、転写ドラム1の所要の角度範囲内に順次に貼り付けられている。円筒状の転写ドラム1の上方には、転写ドラム1の幅分の長さを有し、フレーム2によって支持されたジョイント手段9が設けられている。フレーム2には、転写ドラム1の軸線方向に、ドラム幅の1.5〜1.8倍の長さのガイド5、6が設けられている。ジョイント手段9は、このガイド5、6に沿って、転写ドラム1の軸線方向に移動できるようになっており、ゴムシート3を接合する際には、ゴムシート3が置かれていないドラム表面との接触を回避するために、転写ドラム1の軸線方向に移動する。ジョイント手段9のドラム軸線方向の移動量は、転写ドラム1の幅からゴムシート3の長さを減算した長さである。ジョイント手段9の移動にはサーボモーター(図示せず)を用いる。例えば、ゴムシート3の長さが300〜900mmの場合、ジョイント手段9は、転写ドラム1の軸線方向に0〜600mm移動する。
【0013】
ジョイント手段9は、転写ドラム1の軸線方向に移動後に下降して、転写ドラム1上に整列された2枚のゴムシート3を外表面側から引き寄せて、それぞれの対向側部を突き合わせ接合する。なお、ジョイント手段を下降させる機構については、図面の煩雑化を回避するため、図示を省略した。
【0014】
次に、2枚のゴムシート3の側部部分を突き合わせ接合する動作を、図4および図5に示すジョイント手段の要部拡大図を用いて説明する。
【0015】
ジョイント手段9は、図4に要部拡大図で示すように、ベースプレート10と、ベースプレート10にそれぞれの各端部分をヒンジ連絡して、相互の近接端を支点に互いに逆回りに揺動可能とした、対をなす揺動爪11a、11bと、それぞれの揺動爪11a、11bとベースプレート10との間に配設した、軟質の一対のチューブ状圧力容器14a、14bにて構成されている。
【0016】
チューブ状圧力容器14a、14bから加圧気体を排出したときは、対をなす揺動爪11a、11bは、それらの接触面12a、12bの、ゴムシート3への接触下で、図5に示すようにそれらのチューブ状圧力容器14a、14bを圧潰変形させる向きに、それぞれの支点の周りで揺動変位し、これにより、両揺動爪11a、11bの近接端部分が図の上方側へ変位する結果として、それぞれの接触面12a、12bの外側縁の相対距離D1が、揺動爪11a、11bの、図4に示す姿勢の下でのその相対距離D2に比して所期した通りに縮小される。
【0017】
従ってここでは、凹凸条等をなすそれぞれの接触面12a、12bが当接するそれぞれのゴムシート3の対向側部は、接触面12a、12bの凸条等の食い込み状態の下で、上述した相対距離の減少分だけ相互に引き寄せられ、これがため、ゴムシート3の対向側部は、それの延在方向の全体にわたって十分均等に、所期した通りに緊密に突合わせ接合される。
【0018】
また、図2に示すシート状部材の接合装置は、図示しない電空レギュレータ(圧力可変装置)を備えている。ジョイント手段9が転写ドラム1の軸線方向に移動すると、移動量に応じて、チューブ状圧力容器14a、14bの圧潰変形量が変わる。そのため、ジョイント手段9を転写ドラム1の軸線方向に移動させた後、ゴムシート3を接合させるときに、揺動爪11a、11bがゴムシート3を把持して接合する力が弱くなる。そこで、電空レギュレータを用いてジョイント手段9の移動量に応じてチューブ状圧力容器14a、14b内の圧力を可変させて、揺動爪11a、11bがゴムシート3を把持して接合する力を増加させる必要がある。すなわち、電空レギュレータは、チューブ状圧力容器14a、14b内の圧力を可変にして、ゴムシート3の長さの如何を問わず、揺動爪11a、11bがゴムシート3の対向側部を相互に引き寄せて突き合わせ接合する力が一定となるように制御する。
【0019】
上述したように、本発明は、ゴムシート3の長さに応じて、転写ドラム1の軸線方向にジョイント手段9を移動させて、ジョイント手段9が、ゴムシート3の接合時にゴムシート3の置かれていない転写ドラム1の表面に接触しないようにしているので、転写ドラム1の耐久性を向上させるとともに、ジョイント手段9の揺動爪の摩耗を低減させることができる。
また、本発明は、電空レギュレータを用いることで、シート状部材の長さに応じてジョイント手段に与える圧力を制御して、ゴムシート3を突き合わせ接合する力を一定に保つことができるので、一定の接合強度を保つことができる。
【符号の説明】
【0020】
1 転写ドラム
2、18 フレーム
3 ゴムシート
5、6 ガイド
9、19 ジョイント手段
10 ベースプレート
11a、11b 揺動爪
12a、12b 接触面
14a、14b チューブ状圧力容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラム上に設けられたジョイント手段により、前記ドラムの周面上に、前記ドラムの軸線方向に延在させて貼り付けられた複数枚の所定の幅および長さを有するシート状部材の対向側部を相互に引き寄せて突き合わせ接合するシート状部材の接合装置であって、
前記ジョイント手段は、前記ドラムの幅分の長さを有し、前記シート状部材の対向側部を相互に引き寄せて突き合わせ接合する際に前記ドラムの軸線方向に移動し、前記ドラムの軸線方向の移動量が、前記ドラムの幅から前記シート状部材の長さを減算した長さであることを特徴とする状部材の接合装置。
【請求項2】
前記ジョイント手段に圧力を与える圧力可変装置を更に備え、
前記圧力可変装置は、前記ジョイント手段が前記シート状部材の対向側部を相互に引き寄せて突き合わせ接合する力を可変にすることを特徴とする請求項1に記載のシート状部材の接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−218326(P2012−218326A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87453(P2011−87453)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】