説明

シート給送装置、画像読取装置及び画像形成装置

【課題】シートの重送を確実に防止することができるシート給送装置、該シート給送装置を備えた画像読取装置及び画像形成装置の提供。
【解決手段】手差トレイ230に積載される用紙の用紙搬送方向の先端と給紙ローラ234との間に、用紙ガイド220に対して進退自在に構成された用紙押さえ部材240を備える。給紙ローラ234及び反転ローラ235の圧接部に複数枚の用紙が侵入したとき、反転ローラ235を逆回転させて反転ローラ側の用紙を手差トレイ230側へ退避させるが、このとき、用紙押さえ部材240を用紙ガイド220の上面から突出させることで、退避させる用紙と用紙押さえ部材240とを接触させ、退避させるときの移動量を抑える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートの重送を確実に防止することができるシート給送装置、該シート給送装置を備えた画像読取装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置における給紙方式として、定型サイズの用紙を給紙カセットに多量に収納しておき、この給紙カセットから1枚ずつ用紙を取り出して印字処理部へ給紙する給紙カセット方式と、不定型サイズの用紙又は少量だけ用いる用紙を手差トレイに載置し、この手差トレイから用紙を取り込んで印字処理部へ供給する手差トレイ方式とが併用されている。
【0003】
手差トレイには印字要求に見合う枚数だけ用紙を載置することが多いため、手差トレイの載置量は少量であったが、近年の処理の高速化(画像処理の高速化、印字処理の高速化など)に伴い、手差トレイにおける用紙積載量が増加する傾向にある。図8は従来の手差給紙ユニットの概略構成を示す模式図であり、図9は手差給紙ユニットの動作を説明する説明図である。図8に示す手差給紙ユニット53は、用紙を載置するための手差トレイ530を備え、用紙搬送方向と直交する方向の用紙載置位置を規制するために、例えばラック/ピニオンギア等の機構により前記方向にスライド可能に構成された用紙規制板531が配置されており、用紙サイズに応じて適宜調整され、搬送用紙の斜行を防止するために使用されている。
【0004】
このように用紙搬送方向と直交する方向には用紙規制板531によって用紙位置の規制が行われているが、用紙搬送方向(特に、手差トレイ530に載置される用紙の後端)については用紙位置を規制する部材が設けられていないことが一般的である。すなわち、手差トレイ530は、給紙ミス等を避けるために用紙載置面は装置側が低く、載置される用紙の後端側が高くなるように傾斜がつけた状態で装置側面に配置され、給紙性能の向上が図られているため、必ずしも用紙の後端位置を規制する必要がなかった。
【0005】
このような手差トレイ530において、近年のように多量の用紙を載置し、1回の印字処理で多量の用紙を使用する場合、前述した給紙カセット方式と同様に、ピックアップローラ532により取り出すべき用紙P1と次に搬送されるべき用紙P2との間で摩擦帯電が発生し、用紙積載部に摩擦帯電した電荷が蓄積され、用紙搬送時に複数枚の用紙が同時的に搬送される重送が発生する虞がある(図9(a)を参照)。重送された状態で用紙が印字処理部へ搬送された場合、印字品位の低下を招くだけでなく、周辺部材と擦れ合うことにより、ジャムが発生したり、周辺部材が破損したりする虞がある。
【0006】
このため、手差給紙ユニット53においては、給紙ローラ534及び給紙ローラ534と対峙し圧接される反転ローラ535を用いて、手差トレイ530から取り出した用紙P1と次に搬送される用紙P2とを捌くことにより、印字処理部には1枚の用紙が搬送されるように構成していた。この反転ローラ535は、給紙工程中に絶えず反転回転しているのではなく、反転ローラ535の回転シャフトに配置されるトルクリミッタが所定負荷を受けたとき、シャフト軸と駆動軸とが連結し、逆回転する手法が採用されている。したがって、給紙用紙が1枚の正常な搬送が行われる場合には駆動負荷が小さいため駆動連結が行われず、給紙ローラ534に対し従動回転することとなっている。一方、給紙用紙が複数枚の重送時には駆動負荷が大きいため駆動連結が生じ、給紙ローラ534の回転方向とは逆回転をする(図9(b)を参照)。
【0007】
給紙ローラ534の回転と反転ローラ535の回転とは互いに逆方向であるから、給紙された給紙ローラ534側の用紙は用紙搬送方向の下流側へ搬送され、所定の給紙先である印字処理部に搬送されることになるが、反転ローラ535側の用紙は用紙搬送方向の上流側へ搬送され、手差トレイ530に用紙が戻されることになる。
【特許文献1】特開平3−172238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
反転ローラ535の作用により重送とされる用紙を手差トレイ530側へ退避させる際、用紙の種類に応じて移動量(戻り量)が変化する。すなわち、反転ローラ535の回転速度を一定とした場合、用紙に働く作用(戻し力)は一定であるため、用紙の種類が薄紙の場合には用紙の腰が弱く、戻し力が充分に用紙に伝達されず、座屈するようになり、戻り量が比較的少なくなる。この場合、給紙ローラ534から少しだけ上流側へ退避することで重送が解消されるため、次の給紙時には重送は生じない。
【0009】
しかしながら、用紙の種類が厚紙の場合には、用紙の腰が強いため、反転ローラの戻し力が直接的に用紙に伝わり、戻り量が多くなる。特に、葉書などの小さなサイズの厚紙に関しては戻し力に対して用紙の重量が軽いため、戻り量が多く、以下の問題が生じる。
【0010】
すなわち、手差トレイ530に戻された用紙P2の用紙搬送方向の先端が、図9(c)に示すように、給紙時のピックアップローラ532の降下ポイントより上流側まで戻ってしまうと、次の給紙工程において、戻された用紙P2の下側に積載されている用紙P3がピックアップローラ532により取り出されることとなり、2枚の用紙P2,P3が一度に搬送されるため必ず重送が生じる。
【0011】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、給紙ローラと収容されるシート搬送方向の先端との間に、重送されたシートと接触可能に構成した進退自在の接触部材を備えることにより、重送されたシートを退避させるときの移動量を抑え、確実に重送を防止することができるシート給送装置、該シート給送装置を備えた画像読取装置及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るシート給送装置は、シートを収容するシート収容部と、該シート収容部から取り出したシートを所定の供給先へ搬送する給紙ローラと、該給紙ローラでのシートの重送を検出する検出手段と、該検出手段がシートの重送を検出した場合、重送されたシートをシート搬送方向の上流側へ退避させる退避手段とを備えるシート給送装置において、前記給紙ローラと前記シート収容部に収容されるシートのシート搬送方向の先端との間に、重送されたシートと接触可能に構成した進退自在の接触部材を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明にあっては、給紙ローラと収容されるシートのシート搬送方向の先端との間に、重送されたシートと接触可能に構成した進退自在の接触部材を備えるため、重送されたシートをシート収容部側へ退避させるときの移動量を抑えることができ、次の給紙工程において重送が防止される。
【0014】
本発明に係るシート給送装置は、前記接触部材は、前記シートを退避させる際に前記シートの表面又は裏面に接触するように構成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明にあっては、接触部材は、シートを退避される際にシートの表面又は裏面に接触するように構成されているため、重送時に退避させるシートと接触部材との間に摩擦が生じる。
【0016】
本発明に係るシート給送装置は、前記供給先へシートを搬送する際に前記接触部材を前記シートから離隔させ、前記検出手段が重送を検出した場合に前記接触部材を重送されたシートに接触させるべく前記接触部材を移動させる手段を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、通常の搬送時には接触部材はシートから離隔し、重送を検出した場合にシートと接触するように構成しているため、通常の給紙工程における搬送動作が妨げられることはなく、重送時にのみ接触部材がシートと接触して退避させるときの移動量を抑える。
【0018】
本発明に係るシート給送装置は、前記給紙ローラと対向配置された反転ローラと、該反転ローラの駆動軸に軸支されたトルクリミッタとを備え、該トルクリミッタが負荷の増大を検出し、前記反転ローラが駆動源と連結して前記反転ローラの駆動が開始された場合、前記検出手段は重送を検出したと判断するようにしてあることを特徴とする。
【0019】
本発明にあっては、重送されたシートを捌くために従来から設けられている反転ローラの回転を検出することによって重送が検出される。
【0020】
本発明に係るシート給送装置は、前記シートと前記接触部材との接触により、前記退避手段がシートを退避させる際のシートの移動量を規制するようにしてあることを特徴とする。
【0021】
本発明にあっては、シートと接触部材との接触により退避させるときの移動量を規制するようにしているため、次の給紙工程において重送が再発する可能性が低くなる。
【0022】
本発明に係るシート給送装置は、前記シート収容部に収容されたシートに当接可能に配置したピックアップローラを備え、退避させるシートの前記搬送方向の先端が、前記ピックアップローラと前記シート収容部に収容されたシートとの当接部位より上流側へ戻ることを規制するようにしてあることを特徴とする。
【0023】
本発明にあっては、ピックアップローラと収容されたシートとの当接部位より上流側へシートが戻ることを規制するため、次の給紙工程において搬送されるシートは、退避手段によって退避させたシートとなる。
【0024】
本発明に係るシート給送装置は、前記接触部材は弾性を有することを特徴とする。
【0025】
本発明にあっては、接触部材として、ゴム、発泡性のスポンジ、コルクなどの弾性を有する部材を用いることにより、退避させる用紙と接触させる場合であっても、シートに傷や破れが発生する虞がなく、無駄な用紙の廃棄、印字品位の低下を招来しない。
【0026】
本発明に係るシート給送装置は、前記シート収容部は手差トレイであることを特徴とする。
【0027】
本発明にあっては、シート搬送方向の後端位置を規制する規制部材を有しない手差トレイに適用することで、手差トレイの給紙機構において重送発生が低減される。
【0028】
本発明に係る画像読取装置は、前述した発明の何れか1つに記載のシート給送装置と、該シート給送装置により給送されるシート上に記録された画像を読み取る画像読取手段とを備えることを特徴とする。
【0029】
本発明にあっては、重送が防止されるので、大量の画像を読み取る場合であっても処理の低下が起こらない。
【0030】
本発明に係る画像形成装置は、前述した発明の何れか1つに記載のシート給送装置と、該シート給送装置により給送されるシート上に画像を形成する画像形成手段とを備えることを特徴とする。
【0031】
本発明にあっては、重送が防止されるので、大量の画像を印刷する場合であっても処理の低下が起こらない。
【発明の効果】
【0032】
本発明による場合は、給紙ローラと収容されるシートのシート搬送方向の先端との間に、重送されたシートと接触可能に構成した進退自在の接触部材を備えるため、重送されたシートをシート収容部側へ退避させるときの移動量を抑えることができ、次の給紙工程において重送を防止することができる。
【0033】
本発明による場合は、接触部材は、シートを退避される際にシートの表面又は裏面に接触するように構成されているため、シート表面又は裏面と接触部材との摩擦によって退避させるときの移動量を抑えることができる。
【0034】
本発明による場合は、通常の搬送時には接触部材はシートから離隔し、重送を検出した場合にシートと接触するように構成しているため、通常の給紙工程における搬送動作が妨げられることはなく、重送時にのみ接触部材がシートと接触して退避させるときの移動量を抑えることができる。
【0035】
本発明による場合は、重送されたシートを捌くために従来から設けられている反転ローラの回転を検出することによって重送を検出することができる。
【0036】
本発明による場合は、シートと接触部材との接触により退避させるときの移動量を規制するようにしているため、次の給紙工程において重送が再発する可能性を低くすることができる。
【0037】
本発明による場合は、ピックアップローラと収容されたシートとの当接部位より上流側へシートが戻ることを規制するため、退避手段によって退避させたシートを次の給紙工程において確実に搬送することができ、重送の再発を防止することができる。
【0038】
本発明による場合は、接触部材として、ゴム、発砲性のスポンジ、コルクなどの弾性を有する部材を用いることにより、退避させる用紙と接触させる場合であっても、シートに傷や破れが発生する虞がなく、無駄な用紙の廃棄、印字品位の低下を防止することができる。
【0039】
本発明による場合は、シート搬送方向の後端位置を規制する規制部材を有しない手差トレイに適用することで、手差トレイの給紙機構において重送発生を低減させることができる。
【0040】
本発明による場合は、重送を防止することが可能であるため、処理効率を低下させることなく大量の画像を自動的に読み取ることができる。
【0041】
本発明による場合は、重送を防止することが可能であるため、処理効率を低下させることなく大量の画像を一度に印刷することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
図1は本発明に係るシート給送装置を備えたデジタル複合機の全体構成を示す断面図である。図1に示すデジタル複合機は、用紙、OHPフィルムなどのシート(以下、単に用紙という)上に画像を形成するプリンタユニット1、このプリンタユニット1に対して用紙を供給する給紙ユニット2、及び原稿画像を光学的に読み取ることにより画像データを生成するスキャナユニット3を備える。
【0043】
スキャナユニット3は、光学式の画像読取手段として、光源ユニット32、ミラーユニット33、及び読取ユニット34を備える。光源ユニット32は、原稿台31に載置された原稿又は自動原稿搬送装置35から送られてくる原稿に対して読取用の光を照射する。ミラーユニット33は、原稿からの反射光を読取ユニット34へ導くために反射面が互いに直交するように配置された一対のミラーを備える。読取ユニット34は、ミラーユニット33から導かれる光をアナログ信号に変換するCCDなどの読取素子、この読取素子によって得られたアナログ信号をデジタル信号に変換するAD変換器、変換されたデジタル信号に対してCCDの感度ムラ等の補正を行い画像データとして出力するDSP等を備える。
【0044】
プリンタユニット1は、電子写真方式の画像形成手段として、露光ユニット10、現像器11、感光体ドラム12、帯電器13、クリーナユニット14、転写ユニット15、定着ユニット16等を備え、スキャナユニット3にて生成された画像データ又は図に示していない通信手段にて取得したプリントデータに基づき、給紙ユニット2から搬送される用紙上に画像を形成する。
【0045】
露光ユニット10は、レーザ照射部および反射ミラーを備えたレーザスキャニングユニット(LSU)などを備え、帯電器13によって均一に帯電された感光体ドラム12を入力された画像データに応じて露光することにより、感光体ドラム12の表面に画像データに応じた静電潜像を形成する。帯電器13は、感光体ドラム12の表面を所定の電位に均一に帯電させるための帯電手段であり、例えば、チャージャー型の帯電器が使用される。
【0046】
現像器11は、感光体ドラム12上に形成された静電潜像を現像剤であるトナーで顕像化する。クリーナユニット14は、現像・画像転写後における感光体ドラム12上の表面に残留したトナーを、除去・回収するものである。
【0047】
感光体ドラム12上で顕像化されたトナーは、給紙ユニット2から搬送されてくる用紙上に転写される。このための転写ユニット15は、トナーと逆極性の電界を印加して、用紙上にトナー像を転写するための機構である。例えば、静電潜像が負極性の電荷を有している場合、転写ユニット15への印加極性は正極性となる。
【0048】
本画像形成装置の転写ユニット15は、駆動ローラ、従動ローラ等のローラにより架設され、所定の抵抗値を有する転写ベルトを有する。感光体ドラム12と転写ベルトとの接触部には転写電界を印加し得る転写ローラが配置されている。転写ローラは導電性及び弾性を有しており、転写ローラの作用により、感光体ドラム12と転写ベルトとは互いに所定の幅(転写ニップ)を有して面接触する。これによって搬送される用紙への転写効率の向上が図られる。転写ユニット15にてトナー像が転写された用紙は、用紙搬送方向の下流側に設けられた定着ユニット16に搬送される。
【0049】
定着ユニット16は、加熱ローラ及び加圧ローラを備えており、加熱ローラと加圧ローラの圧接部(定着ニップ)において、搬送される用紙上の未定着トナーを加熱ローラ表面の温度で加熱して溶融させ、加圧ローラによる圧接力でトナー像を用紙上に定着させる。
【0050】
給紙ユニット2は、それぞれ異なる種類、サイズの用紙を収容する給紙カセット21a〜21d、定型サイズの用紙を多量に収納可能な大容量給紙カセット22、及び主として不定型サイズを取込むための手差給紙ユニット23が配置されている。
【0051】
給紙ユニット2から供給される用紙は、所定の経路に沿って設けられた搬送ローラの作用によりレジストローラ18まで搬送される。そして、レジストローラ18に到達した用紙を一旦停止させ、停止させた用紙の先端と感光体ドラム12上のトナー像を合致させるタイミングでレジストローラ18を再回転させる。そのとき、感光体ドラム12上のトナー像が転写ユニット15の作用により用紙上に転写される。トナー像が転写された用紙は定着ユニット16へ導かれ、用紙上のトナー像が画像として定着する。画像が定着した用紙は排紙ローラ19の作用により排紙トレイ20に排出される。
【0052】
以下、本実施の形態に係る手差給紙ユニット23の構成及び動作について説明する。図2は本実施の形態に係る手差給紙ユニット23の構成を説明する模式図である。手差給紙ユニット23は、ユーザが所望するサイズ、材質の用紙を複数枚収容することができる手差トレイ230、この手差トレイ230に対し用紙搬送方向に直交する方向の用紙載置位置を規制する用紙規制板231、手差トレイ230に収容された用紙をその最上層から取り出すためのピックアップローラ232、ピックアップローラ232によって手差トレイ230から取り出した用紙を印字部へ供給するために下流側の搬送路221へ送り出すための給紙ローラ234、重送時の用紙を捌くための反転ローラ235を備える。
【0053】
ピックアップローラ232は、給紙ローラ234の回転軸に軸支されたアーム部(不図示)の先端に取り付けられている。ピックアップローラ232は、通常給紙タイミングになるまで積載用紙の給紙ポイントには到達しておらず、給紙ポイントの上方で待機した状態をとる。給紙要求がなされると回転する給紙ローラ234の回転軸に軸支される電磁石等によって駆動連結が起こり、給紙ローラ234とピックアップローラ232とを連結する駆動ベルト233が回転し、回転モーメントによってピックアップローラ232が給紙ポイントまで降下する。ピックアップローラ232の表面との摩擦力によって最上位に積載されている用紙が手差トレイ230から取り出される。
【0054】
ピックアップローラ232によって取り出された用紙は、給紙ローラ234と手差トレイ230との間に設けられた用紙ガイド220の上面を通過して、給紙ローラ234と反転ローラ235との圧接部に到達する。圧接部に到達した用紙は、給紙ローラ234の作用によって下流側の搬送路221へ送り出される。
【0055】
反転ローラ235は、給紙ローラ234に圧接された状態で配置される。反転ローラ235は、重送時に給紙方向に対して反転回転し、重送された用紙(すなわち、本来搬送すべき用紙と共に搬送された用紙)を手差トレイ230側へ退避させる効果を有する。反転ローラ235の反転回転の可否は次のように決定される。
【0056】
すなわち、トルクリミッタ206(図6を参照)が反転ローラ235の回転軸に軸支されていて、搬送用紙が1枚のときはトルクリミッタ206の駆動負荷が小さく、駆動源204b(図6を参照)との連結は行われない。したがって、搬送用紙の搬送力によって従動回転し、みかけ上、給紙ローラ234と共に搬送用紙を搬送路221へ送り出していることになる。他方、重送が発生し、搬送用紙が複数枚となる場合、複数枚の搬送用紙が給紙ローラ234と反転ローラ235との間の圧接部に侵入すると、トルクリミッタ206の負荷が増大し、駆動源204bとの連結が行われ、反転ローラ235の駆動軸が回転することで反転ローラ235は給紙ローラ234とは逆方向の回転をし、反転ローラ235側の用紙(重送された用紙)を手差トレイ230に戻すこととなる。
【0057】
また、手差トレイ230には、積載用紙の用紙搬送方向に直交する方向の用紙位置を合わせて搬送用紙の斜行による用紙のシワや破れの発生、印字画像の欠けを防止するために用紙規制板231が配置されている。この用紙規制板231は、用紙サイズに合わせて移動可能なようにラック/ピニオンギアに連結され、手差トレイ230に対してスライド可能に構成されている。一方、積載される用紙の後端位置については、その位置を規制するような部材が設けられていない。図に示すように手差トレイ230自体が、装置側が低く用紙後端側が高くなるように傾斜が付けられた状態で設置されており、積載された用紙は自然に用紙先端位置が定まるためである。
【0058】
このように構成される手差給紙ユニット23では、重送が発生した後に反転ローラ235の作用によって用紙を手差トレイ230側に戻した場合、前述したような問題点が生じる。すなわち、重送時に反転ローラ235側の用紙が用紙搬送方向の上流側へ戻されることになるが、反転ローラ235の戻し力によってピックアップローラ232の給紙ポイントより上流側へ戻った場合、次の給紙工程では、戻された用紙の下側に位置する用紙(本来、戻された用紙の次に搬送されるべき用紙)がピックアップローラ232によって取り出され、その用紙の上側に戻された用紙を引き連れて搬送するため、重送が生じる虞が非常に高くなる。
【0059】
このときに発生する重送の状態は非常に悪く、下側の用紙が給紙ローラ234と反転ローラ235とに挟持された場合はトルクリミッタ206の負荷増大はなく、下側の用紙が搬送路221に侵入するが、上側の用紙が給紙ローラ234と反転ローラ235とに挟持される位置まで進行した時にトルクリミッタ206の負荷が増大する。その結果、反転ローラ235は反転回転を始めるが、反転ローラ235の機能は、重送された用紙先端を反転ローラ235の戻し力で戻すことにあり、下側の用紙を搬送する程の搬送力はなく、たとえ上側の用紙が給紙ローラ234の回転力で搬送路を通過しても、下側の用紙は給紙ローラ234と反転ローラ235とに挟持された状態で滞留し、図に示していない用紙入紙センサがオン状態を維持し、搬送ジャムとなり装置の停止を招来することとなる。
【0060】
このような問題点を解決するために、本実施の形態では、給紙ローラ234と手差トレイ230との間にて用紙押さえ部材240を配置している。図3は用紙押さえ部材240の構成を示す模式図である。図3(a)は用紙搬送方向と直交する方向から眺めた部分断面図を示し、図3(b)は用紙搬送方向から眺めた部分断面図を示している。用紙押さえ部材240は、用紙ガイド220の上面を通過する用紙と接触可能に構成された接触部材241と、接触部材241を用紙ガイド220に設けられた開口部220aから進退自在に移動させるためのソレノイド242を備える。
【0061】
接触部材241は、用紙搬送方向と直交する方向に所定の幅を有し、ゴム、発泡性のスポンジ、コルクなどの弾性を有する材料により断面視で半円形に形成される。通常の用紙搬送時には、接触部材241は用紙ガイド220の下方側に位置しており、通過する用紙と接触部材241とが接触しないように構成されている。一方、重送を検出し、反転ローラ235の作用により用紙を手差トレイ230側へ退避させる際、ソレノイド242の動作によって接触部材241を上方に移動させ、接触部材241の一部を用紙ガイド220の開口部220aから突出させることにより、接触部材241と退避中の用紙とが接触するように構成されている。
【0062】
以下、重送発生時の手差給紙ユニット23の動作を説明する。図4及び図5は重送発生時の手差給紙ユニット23の動作を説明する説明図である。給紙要求が入力される前には、図4(a)に示すように、ピックアップローラ232は給紙ポイントの上方で待機した状態をとる。給紙要求がなされると給紙ローラ234とピックアップローラ232とを連結する駆動ベルト233が回転し、回転モーメントによってピックアップローラ232が給紙ポイントまで降下する。
【0063】
給紙ポイントに到達したピックアップローラ232の作用により、手差トレイ230に積載されている用紙のうち最上層の用紙P1が手差トレイ230から取り出されることになるが、その下側の用紙P2との間に静電気力等が働く場合、用紙P1と共に用紙P2も搬送されることになる(図4(b))。このように複数の用紙P1,P2が給紙ローラ234と反転ローラ235との圧接部に侵入すると重送が発生する(図4(c))。
【0064】
複数の用紙P1,P2が給紙ローラ234と反転ローラ235との圧接部に侵入した場合、1枚搬送時と比較して反転ローラ235の駆動負荷が増加するため、反転ローラ235の駆動軸に軸支されるトルクリミッタ206の負荷増大により、反転ローラ235を駆動する駆動源204bと連結し、反転ローラ235に駆動伝達され、給紙ローラ234の回転方向とは逆回転する(図5(a))。
【0065】
反転ローラ235が駆動連結されたことを認識した場合、用紙ガイド220の下方に配置される用紙押さえ部材240のソレノイド242を作動させ、接触部材241の一部を用紙ガイド220の上面より上側に突出させる(図5(b))。用紙ガイド220の上面より上側に突出した接触部材241は、反転ローラ235の作用によって手差トレイ230側へ戻る用紙P2の裏面に接触し、両者の摩擦力が戻し力に対する負荷となり、負荷がない場合と比較して戻り量が押さえられる。この結果、退避させた用紙P2の先端位置がピックアップローラ232の給紙ポイントより上流側へ戻ることが防止され、次の給紙工程において、用紙P2が手差トレイ230から取り出されることになり(図5(c))、重送の再発が防止される。
【0066】
図6は手差給紙ユニット23の制御系の構成を示すブロック図である。手差給紙ユニット23は、マイクロコンピュータ等で構成される制御部200を備えており、給紙処理に係る制御を行う。制御部200には、プリンタユニット1と各種情報のやり取りを行うために信号の入出力が行われるI/O201、スキャナユニット3と各種情報のやり取りを行うために信号の入出力が行われるI/O203、給紙ローラ234等の駆動源204bを駆動するための駆動部204a、給紙ローラ234及び反転ローラ235の圧接部で生じる重送を検出するための重送検出部205、重送時に退避させる用紙の移動量を押さえるための用紙押さえ部材240が接続されている。
【0067】
図7は手差給紙ユニット23による給紙処理の手順を示すフローチャートである。制御部200は、まず、I/O201を通じてプリンタユニット1から給紙開始信号が入力されたか否かを判断することにより、給紙要求があるか否かを判断する(ステップS11)。給紙要求がない場合(S11:NO)、給紙要求があるまで待機する。
【0068】
給紙要求があると判断した場合(S11:YES)、駆動部204aに指示を与えて駆動源204bを駆動させることにより、給紙ローラ234及びピックアップローラ232を駆動し(ステップS12)、手差トレイ230から取り出した用紙の搬送を行う(ステップS13)。
【0069】
次いで、重送検出部205は、トルクリミッタ206が作動し、反転ローラ235が逆回転したか否かを判断する(ステップS14)。トルクリミッタ206が作動せず、反転ローラ235が逆回転しない場合(S14:NO)、重送が発生していないと判断できるため、そのまま給紙処理を続行する(ステップS18)。
【0070】
トルクリミッタ206が作動し、反転ローラ235が逆回転したと判断した場合(S14:YES)、重送検出部205は重送を検出したとして(ステップS15)、検出結果を制御部200に通知する。
【0071】
制御部200が重送検出部205から重送を検出した旨の通知を受信した場合、用紙押さえ部材240のソレノイド242を作動させることにより、用紙押さえ部材240を上昇させる(ステップS16)。そして、給紙ローラ234及び反転ローラ235の作用により、給紙ローラ234側に位置する上側用紙を用紙搬送方向の下流側へ、反転ローラ235側に位置する下側用紙を用紙搬送方向の上流側へ搬送し(ステップS17)、給紙処理を続行する(S18)。
【0072】
次いで、制御部200は、次給紙があるか否かを判断し(ステップS19)、次給紙があると判断した場合(S19:YES)、処理をステップS12へ戻す。次給紙がないと判断した場合(S19:NO)、新たな給紙開始信号の入力を待ち受ける待機状態に移行する(ステップS20)。
【0073】
なお、本実施の形態では、プリンタユニット1が備える手差給紙ユニット23について説明したが、スキャナユニット3に搭載された自動原稿搬送装置35の給紙機構として適用できることは勿論のことである。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明に係るシート給送装置を備えたデジタル複合機の全体構成を示す断面図である。
【図2】本実施の形態に係る手差給紙ユニットの構成を説明する模式図である。
【図3】用紙押さえ部材の構成を示す模式図である。
【図4】重送発生時の手差給紙ユニットの動作を説明する説明図である。
【図5】重送発生時の手差給紙ユニットの動作を説明する説明図である。
【図6】手差給紙ユニットの制御系の構成を示すブロック図である。
【図7】手差給紙ユニットによる給紙処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】従来の手差給紙ユニットの概略構成を示す模式図である。
【図9】手差給紙ユニットの動作を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0075】
23 手差給紙ユニット
220 用紙ガイド
230 手差トレイ
231 用紙規制板
232 ピックアップローラ
234 給紙ローラ
235 反転ローラ
240 用紙押さえ部材
241 接触部材
242 ソレノイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを収容するシート収容部と、該シート収容部から取り出したシートを所定の供給先へ搬送する給紙ローラと、該給紙ローラでのシートの重送を検出する検出手段と、該検出手段がシートの重送を検出した場合、重送されたシートをシート搬送方向の上流側へ退避させる退避手段とを備えるシート給送装置において、
前記給紙ローラと前記シート収容部に収容されるシートのシート搬送方向の先端との間に、重送されたシートと接触可能に構成した進退自在の接触部材を備えることを特徴とするシート給送装置。
【請求項2】
前記接触部材は、前記シートを退避させる際に前記シートの表面又は裏面に接触するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載のシート給送装置。
【請求項3】
前記供給先へシートを搬送する際に前記接触部材を前記シートから離隔させ、前記検出手段が重送を検出した場合に前記接触部材を重送されたシートに接触させるべく前記接触部材を移動させる手段を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のシート給送装置。
【請求項4】
前記給紙ローラと対向配置された反転ローラと、該反転ローラの駆動軸に軸支されたトルクリミッタとを備え、該トルクリミッタが負荷の増大を検出し、前記反転ローラが駆動源と連結して前記反転ローラの駆動が開始された場合、前記検出手段は重送を検出したと判断するようにしてあることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載のシート給送装置。
【請求項5】
前記シートと前記接触部材との接触により、前記退避手段がシートを退避させる際のシートの移動量を規制するようにしてあることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載のシート給送装置。
【請求項6】
前記シート収容部に収容されたシートに当接可能に配置したピックアップローラを備え、退避させるシートの前記搬送方向の先端が、前記ピックアップローラと前記シート収容部に収容されたシートとの当接部位より上流側へ戻ることを規制するようにしてあることを特徴とする請求項5に記載のシート給送装置。
【請求項7】
前記接触部材は弾性を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1つに記載のシート給送装置。
【請求項8】
前記シート収容部は手差トレイであることを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れか1つに記載のシート給送装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8の何れか1つに記載のシート給送装置と、該シート給送装置により給送されるシート上に記録された画像を読み取る画像読取手段とを備えることを特徴とする画像読取装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項8の何れか1つに記載のシート給送装置と、該シート給送装置により給送されるシート上に画像を形成する画像形成手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−280121(P2008−280121A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124930(P2007−124930)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】