シート貼付装置
【課題】 複数のバンプを有する半導体ウエハの表面に接着シートを貼付するときに、それらの間に気泡が発生することを防止することできるシート貼付装置を提供すること。
【解決手段】 半導体ウエハWは、多数のバンプBと、先ダイシングによって形成されたダイシングラインDLとを備えている。シート貼付装置10は、半導体ウエハWの表面W1に配置される接着シートH上を転動して押圧力を付与し、半導体ウエハWの表面W1に接着シートHを貼付する押圧ロールRを含んで構成される。接着シートHの貼付中に半導体ウエハWを平面視したときに、押圧ロールRの所定長さの中心軸線CTに対し、同時に重なるバンプBの個数が最大となる方向に対して平面内で所定角度シフトした方向に中心軸線CTが向けられている。
【解決手段】 半導体ウエハWは、多数のバンプBと、先ダイシングによって形成されたダイシングラインDLとを備えている。シート貼付装置10は、半導体ウエハWの表面W1に配置される接着シートH上を転動して押圧力を付与し、半導体ウエハWの表面W1に接着シートHを貼付する押圧ロールRを含んで構成される。接着シートHの貼付中に半導体ウエハWを平面視したときに、押圧ロールRの所定長さの中心軸線CTに対し、同時に重なるバンプBの個数が最大となる方向に対して平面内で所定角度シフトした方向に中心軸線CTが向けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート貼付装置に係り、更に詳しくは、複数の半田バンプ(以下、単に「バンプ」と称する)を有する半導体ウエハの表面に接着シートを貼付するときに、それらバンプの間に空気が混入することを防止することができるシート貼付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より知られている半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」と称する)として、フリップチップ方式により電気的な接続を確保する複数枚のチップを形成するものが知られている。このようなウエハWは、図8に示されるように、突起状をなす多数のバンプBと、先ダイシングによって平面視賽の目状にハーフカットされ、縦長の各チップCの外周縁に対応する位置に設けられた溝状(図10参照)のダイシングラインDLとが表面W1に形成され、その後ウエハWから各チップCを形成する工程では、先ず、ウエハWの表面W1及びバンプBを保護するため、貼付装置(特許文献1参照)を介してウエハWの表面に接着シートHを貼付し、その後、所定の研削装置によってウエハWの裏面側を研削し、ウエハWを極薄化することにより各チップCが形成される。
【0003】
ここで、前記貼付装置は、ウエハWを保持する保持テーブルと、ウエハWの表面W1に配置された接着シートH上を転動する押圧ロールR(図8参照)とを備えており、当該押圧ロールRによって接着シートHに押圧力が付与されるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−14807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記装置では、ウエハの基準位置(オリエンテーションフラットやVノッチ)を一旦決定し、位置決めすれば回路パターンがどうであれ、接着シートHは一定の方向にしか貼り合わせができないので、図9及び図10に示されるように、ウエハW表面W1と接着シートHとの間に空気が混入し、気泡Aが発生する領域SAが形成され易くなる。そのため、図11のように、先ダイシングによってウエハ表面側にハーフカットが行われているウエハWをその裏面側(同図中上面側)から研削していくと、当該研削に用いられる冷却水がダイシングラインDLを通じて気泡A内に侵入することとなる。これにより、バンプB及びウエハWの表面(同図中下面)が冷却水によって濡れたり、汚損してしまい、チップCの製品不良等を引き起こして歩留まりが低下するという不都合がある。しかも、研削加工によるウエハWの極薄化により、気泡Aの発生領域SAにおけるウエハWが膨らみ(図12参照)、この状態で、更に研削を継続すると、チップCの厚さが一定に保たれなくなり、これによっても製品不良の原因となる。
【0006】
ここで、本発明者は、前記不都合を回避するため、種々の観点から研究を行い、以下に述べる点で、気泡Aの発生とウエハWや貼付装置の条件との間に因果関係があるものと考えた。
【0007】
(1)気泡Aの発生領域SA
図8及び図9に示されるように、発生領域SAにおいて、気泡Aは隣り合うバンプBに跨るように位置している。発生領域SAは、ウエハWを平面視したときに、押圧ロールRの中心軸線CTの延出方向と略平行に延びている。しかも、発生領域SAには複数のバンプBが位置しており、例えば、チップC一枚の短寸幅を三倍した単位長さL(所定長さ)当たりの領域を例に挙げると、前記中心軸線CTに対し、同時に押圧するバンプBの個数mが最大(図8では、m=9)となる位置が発生領域SAとなる。
(2)接着シートH貼付時における押圧ロールRの変形具合
押圧ロールRの中心軸線がバンプBの直上を通過する際、押圧ロールRの下面側はバンプBの突出位置で凹むように弾性変形する。このとき、押圧ロールRが同時に押圧するバンプBが比較的少ない場合、図13(A)に示されるように、バンプBの突出形状に追従するように押圧ロールRの下面側が凹み変形する。つまり、押圧ロールRの下面の凹み変形量r1は、バンプBの突出高さb1と略同一となり、押圧ロールRの押圧力に対する抗力は、各バンプB及びウエハW表面W1により生じる。ところが、押圧ロールRが同時に押圧するバンプBが多くなると、一つのバンプB当たりの抗力が小さくなり、前記凹み変形の変形量が小さくなる。すると、図13(B)に示されるように、押圧ロールRの凹み変形量r2がバンプBの突出高さb1より小さくなり、バンプB以外のウエハW表面W1での接着シートHに対する押圧力が低下することとなる。
(3)前記(1)及び(2)のまとめ
従って、前記(1)及び(2)を総合的に考察すると、押圧ロールRの中心軸線CTの延出方向と略平行に並ぶバンプBの個数が多い発生領域SAにおいて、押圧ロールRの前記凹み変形量が小さくなる。その結果、押圧ロールRが各バンプBだけを押圧してウエハW表面W1に押圧力を殆ど付与しなくなり、ひいては、ウエハW表面W1に対する接着シートHの貼付が不完全となって発生領域SAに気泡Aが生じるものと考えられる。
ここで、押圧ロールR全体の押圧力を増大させれば、前記凹み変形量を大きくして気泡Aの発生を回避できるようにも思われるが、この場合、ウエハWが割れたり、折れ曲がったりし易くなるという別異の不都合を招来する。
そこで、本発明者は、押圧ロールRが同時に押圧するバンプBの個数に着目し、当該個数を減らすことができる貼付装置の構成及び条件を案出した。
【0008】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、ウエハの表面と接着シートとの間に気泡の発生を防止することができるシート貼付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、表面側に多数のバンプを備えた半導体ウエハの該表面側に接着シートを貼付するシート貼付装置であって、
前記半導体ウエハの表面に配置される接着シート上を転動して押圧力を付与する押圧ロールを含み、
前記押圧ロールの中心軸線は、接着シートの貼付中に半導体ウエハを平面視したときに、所定長さの前記中心軸線に対し、同時に重なるバンプの個数が最大となる方向に対して平面内で所定角度シフトした方向に向けられる、という構成を採っている。
【0010】
本発明において、前記半導体ウエハは、その表面が先ダイシングされる、という構成も好ましくは採用される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、押圧ロールにより押圧力を同時に付与するバンプの個数が少なくなるように、押圧ロールの中心軸線の向きを設定して接着シートの貼付を行うことができる。これにより、各バンプにおける押圧ロールの押圧力に対する抗力が低下することを抑制でき、押圧ロールがバンプの突出形状に追従するように凹み変形可能となる。その結果、押圧ロールからの押圧力が各バンプだけでなくウエハ表面にも常に付与され、従来のように、押圧力不足に起因するバンプ間の気泡の発生を防止することが可能となる。
【0012】
また、ウエハ表面が先ダイシングされている場合、ウエハ裏面の研削工程においても、接着シートによるウエハ表面及びバンプの密閉状態を確保することができ、従来のような冷却水の侵入等による汚損等を回避することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1には、本実施形態に係る概略平面図が示されている。この図において、シート貼付装置10は、ウエハWの表面W1に接着シートHを貼付する装置として構成されている。このシート貼付装置10は、ウエハWを収容するカセット11と、このカセット11からロボット12を介して取り出されたウエハWのアライメントを行うアライメント装置13と、このアライメント装置13から移載装置15を介してX方向(図1中左方向)に移動されたウエハWを保持する保持装置16と、接着シートH上を転動して押圧力を付与する押圧ロールRと、ウエハWに貼付された接着シートHの所定位置を切断する切断装置20とを備え、前記保持装置16に保持されたウエハW上に前記接着シートHを貼り付けるシート貼付部17(図4参照)と、切断装置20によって切り離された接着シートHを回収する回収装置55とを備えて構成されている。
【0015】
前記ウエハWは、その表面W1が回路面として形成されるとともに、表面W1が上面側となる状態でカセット11内に収容されている。図2において拡大して示されるように、ウエハWの構成は、前記従来例(図8)において説明したものと同一である。従って、ここでは、ウエハWの各構成について同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
バンプBについて詳述すると、特に限定されるものでないが、本実施形態では、それぞれのチップCにおけるバンプBの形成数及び形成位置は同一とされている。バンプBの形成位置は、各チップCの図2中上部における左右方向中央部に1つ形成され、チップCの同図中上下中間部に左右に沿って略等間隔に3つ形成され、チップCの同図中下部に左右に沿って2つ設けられている。そして、ウエハW全体として見たときに、前記上部、上下中間部及び下部の各バンプBが同図中左右方向に沿って略等間隔に並ぶようになっている。
【0016】
前記接着シートHは、ウエハWへの貼付前において、当該ウエハWの直径寸法より大きい幅寸法を備えた帯状に形成されるとともに、粘着面に剥離シートPが仮着された状態でシート貼付部17の後述する供給リールに巻回されている。
【0017】
前記ロボット12は、略円筒状のベース22と、このベース22に立設された上下動機構23と、この上下動機構23の上端に設けられるとともに略水平面内で回転可能な関節型のアーム24と、このアーム24の先端に取り付けられた略C字状若しくは略U字状の平面形状を備えた先端部25とを備えて構成されている。ロボット12は、先端部25によりカセット11内に収容されたウエハWの下面側を吸着保持し、この状態でアライメント装置13に移載する。
【0018】
前記アライメント装置13は、図3にも示されるように、ポンプ等(図示省略)に接続されてウエハWを上面で吸着する保持テーブル27と、この保持テーブル27を下側から支持するとともに、保持テーブル27を平面内で回転させる回転機構28と、この回転機構28の下側に設けられたX−Y移動機構29と、保持テーブル27の面内略中央部に設けられるとともに、保持テーブル27の上面から突出可能な円筒部材30Aを備えたリフター30と、保持テーブル27の上面側に設けられてウエハWのVノッチ等を検出するカメラ等からなるセンサ31とを備えて構成されている。円筒部材30Aは、その上面が保持テーブル27同様にウエハWを吸着保持可能となっており、保持テーブル27と略面一となる位置から昇降可能に設けられている。従って、保持テーブル27の上面から円筒部材30Aを突出させたときに、保持テーブル27からウエハWを上昇させた状態とし、保持テーブル27の上面とウエハWとの間にスペースを確保する。
【0019】
アライメント装置13によってアライメントを行ったウエハWは、移載装置15に受け渡されて保持装置16に移載される。移載装置15は、ウエハWを下面側から吸着保持するとともに、略C字状若しくは略U字状の平面形状を先端側に備えたアーム部材33と、このアーム部材33の基端側を支持するとともに、アーム部材33をY軸に沿って移動させるY軸ロボット34と、このY軸ロボット34を支持するとともに、Y軸ロボット34及びアーム部材33をX方向に沿って移動させるX軸ロボット35とにより構成されている。
【0020】
前記保持装置16は、前述のアライメント装置13に対して、Y方向への移動範囲が大きくした点と、センサ31を省略した点を除いて実質的に同様の構造が採用されている。従って、ここでは同一符号を用いるものとして説明を省略する。
【0021】
前記シート貼付部17は、図4に示されるように、前記接着シートHが剥離シートPに仮着された状態で巻回された原反を保持する供給リール37と、この供給リール37から延びる接着シートHを押圧ロールRに案内するガイドローラ38及びテンションローラ39と、接着シートHから剥離された剥離シートPを巻き取る巻取リール40と、この巻取リール40とテンションローラ39との間に設けられ、剥離シートPに繰り出し力を付与するドライブローラ42とを備えて構成されている。テンションローラ39、巻取リール40及びドライブローラ42には、図示しないモータ等の駆動手段を介して各シートH,Pを繰り出す駆動力が付与される。また、テンションローラ39及びドライブローラ42には、それらに接するピンチローラ43,44が設けられている一方、ピンチローラ44と巻取リール40との間にはガイドローラ45が設けられている。
【0022】
前記押圧ロールRは、シリコン等の樹脂材を用いて構成され、その表面側が弾性変形可能に設けられている。押圧ロールRは、その両端側をホルダー47により回転可能に支持されている。ホルダー47は、シリンダ48に連結されており、当該シリンダ48を駆動することで押圧ロールRを上下動させるようになっている。
【0023】
ここで、押圧ロールRと切断装置20との間には、接着シートHを保持可能な一対のチャック49,49が設けられ、これらチャック49,49は接着シートHの幅方向両側にそれぞれ配置されている。各チャック49,49は、上下移動用シリンダ50,50にそれぞれ連結されて上下に移動可能に設けられている。各上下移動用シリンダ50,50は、X方向(図4中紙面直交方向)に向けられたスライダ51にそれぞれ支持され、これにより、各チャック49,49がX方向に沿って相互に離間及び接近できるようになっており、前記接着シートHをウエハに貼り付ける時に接着シートHの幅方向に張力を与え、皺が発生しないように貼付できるようになっている。
【0024】
前記切断装置20は、接着シートHを切断可能な超音波カッター53と、この超音波カッター53を支持するとともに、超音波カッター53をX方向、上下方向に移動させる移動機構54とを備えて構成されている。切断装置20は、ウエハWに貼付された接着シートHを先ずは移動機構54の駆動によって、接着シートHの幅方向(X方向)に切断し、その後ウエハWの外周位置に前記超音波カッター53を移動させ、保持装置16の保持テーブル27を回転させてウエハWの外周に沿って接着シートHを切断する。そして、当該切断によって切り離された接着シートHが回収装置55によって回収される。
【0025】
次に、シート貼付装置10による接着シートHの貼付工程について説明する。
【0026】
カセット11に収容されたウエハWは、ロボット12の先端部25よって下面側から吸着保持され、アライメント装置13上に移動される。このとき、アライメント装置13のリフター30は、保持テーブル27から円筒部材30Aが突出した状態とされ、円筒部材30Aの上部にウエハWを吸着保持させる。その後、ウエハWと保持テーブル27との間からロボット12の先端部25を退避させた後、円筒部材30Aを下降し、保持テーブル27上にウエハWを吸着保持させる。そして、回転機構28及びX−Y移動機構29を介してウエハWを移動しながらVノッチ等をカメラ31により検出し、ウエハWのダイシングラインDLがX方向及びY方向に沿うようにアライメントを行う。
【0027】
アライメントを終えたウエハWは、アライメント装置13のリフター30を介して上昇された後、その下面側が移載装置15のアーム部材33に吸着保持されて保持装置16に移載される。このとき、保持装置16は、保持テーブル27が反時計方向に角度θ回転した状態とし、アライメント装置13と同様に、リフター30の円筒部材30Aが突出した状態で待機している。そして、移載装置15のアーム部材33から、保持装置16のリフター30を介して保持テーブル27にウエハWを吸着保持させた後、当該保持テーブル27を時計方向に角度θ回転する。その後、保持装置16がY方向に沿って図4中左側に移動する。
【0028】
保持装置16における保持テーブル27の図4中左端側が前記チャック49,49の下方位置に到達した時点で、保持装置16のY方向に沿う移動を停止する。このとき、各チャック49,49が接着シートHの幅方向両側を保持しつつ、スライダ51を介して各チャック49,49がX方向に相互に離間する力が付与され、接着シートHが幅方向に拡げられている。この状態で、図5(A)に示されるように、押圧ロールR及びチャック49,49が下降し、押圧ロールRを介してウエハWの外周部(図5(B)中左端部)に接着シートHを押し付ける。この際、各チャック49,49が接着シートHの保持を解除するとともに、テンションローラ39が送り方向に回転してウエハWの表面W1側に配置された接着シートHのテンションを緩和する。その後、図5(C)に示されるように、保持装置16を同図中左方向に移動することにより、押圧ロールRが接着シートH上を転動して押圧力を付与し、ウエハWと接着シートHとの貼付面積が次第に拡大するように貼付する。そして、図5(D)に示されるように、ウエハWの表面W1全体に接着シートHを貼付し終えると、保持テーブル27の移動を停止し、各チャック49,49により接着シートHを保持した後、切断装置20の超音波カッター53により接着シートHを幅方向に切断する。
【0029】
その後、保持装置16によりウエハWを移動しつつ、切断装置20の移動機構54を介して超音波カッター53をウエハW外周位置に移動し、保持装置16の保持テーブル27を回転させ、前記超音波カッター53によってウエハWに貼付された接着シートHをウエハWの外周に沿って切断する。この切断により、ウエハWの外側にはみ出る不要な接着シートHが切り離されて回収装置55により回収される。そして、保持装置16のリフター30によってウエハWを上昇させた後、前記ロボット12を介してウエハ11がカセット11内に収容される。
【0030】
ここで、前述の角度θ、接着シートHの貼付中における押圧ロールRの状態等について、図8で示した従来例と比較しながら更に検討する。
【0031】
ここにおいて、本実施形態のウエハWに対し、従来例の押圧ロールRの中心軸線CTの向きは、図8に示されるように、チップC一枚の短寸幅を三倍した単位長さLの中心軸線CTに対し、同時に重なるバンプBの個数mが最大(m=9)となる向きとなる。
この時の中心軸線を最大中心軸線CTmax(図2参照)とすると、本実施形態において、前記最大中心軸線CTmaxに対してその中心軸線CTは、角度θ(約30°)シフトしたように設定されている。このように、保持装置16の保持テーブル27を回転してウエハWの向きを設定することにより、接着シートHの貼付中にウエハWを平面視したときに、従来例に比べ、押圧ロールRの中心軸線CTが平面内で反時計方向に約30°シフトした方向に向けられる。この中心軸線CTの向きによれば、図2に示されるように、チップC一枚の短寸幅を三倍した単位長さLの前記中心軸線CTに対し、同時に重なるバンプBの個数mが多くてもm=4となり、前記従来例(m=9、同図(B)参照)に比べて個数mが約半数以下に減少する。つまり、接着シートHの貼付中に、前記長さLの中心軸線CTに対し、押圧ロールRにより同時に押圧力を付与されるバンプBの個数mの最大値を減らすことができる。
ところで、図6(A)及び(B)に示されるように、押圧ロールR全体の押圧力をFとし、当該押圧力Fに対する一つのバンプB当たりの抗力fとすると、当該抗力fを求める式は、以下のようになる。
抗力f=押圧力F/個数m
この式において、押圧力Fを一定とすれば、個数mを小さくすることにより抗力fを大きくすることができる。従って、本実施形態では、従来例に比べて個数mが約半数となるので、抗力fを約二倍に増大させることができる。これにより、接着シートHの貼付中に、押圧ロールRが常にバンプBの突出形状に追従するように凹み変形する、すなわち、図13(A)と同様に凹み変形することとなり、各バンプB及びウエハWの表面W1に押圧ロールRの押圧力を安定して付与することが可能となる。
【0032】
なお、保持装置16を介してウエハWを回転する角度θは、保持装置16の駆動を制御する図示しない制御部に予め記憶させることができ、ウエハWのバンプBの位置及び形成数に応じて適宜設定を変更することができる。
【0033】
従って、このような実施形態によれば、図7に示されるように、接着シートとウエハWの表面W1との間に気泡が発生することを回避することができ、それらを密着した状態に容易に維持することが可能となる。これにより、後工程においてバンプB及びウエハWの表面が冷却水によって濡れたり、汚損したり、チップCの製品不良等を引き起こして歩留まりを低下するという不都合は生じなくなる。しかも、研削加工によるウエハWの極薄化により、気泡Aの発生領域SAにおけるウエハWの膨らみ(図12参照)による研削時のチップCの厚さが不安定になることを防止し、安定した製品供給を行うことができる。
また、保持装置16の保持テーブル27を回転させることにより、アライメントされたウエハWの位置に対し、押圧ロールRの中心軸線CTの向きを簡単にシフトすることができる。
【0034】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施の形態に対し、形状、数量、材質、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材料などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0035】
例えば、前記個数mを測定するにあたって、基準となる中心軸線CTの長さは、前述の単位長さLに限られず種々の変更が可能であり、例えば、チップC一枚の短寸幅又は長寸幅をn倍(n≧2)した長さ等としてもよい。要するに、前記中心軸線CTの長さは、個数mが最大となる方向と、当該方向に対してシフトした方向とで同一とし、それらの方向における個数mを比較可能な長さとすれば足りる。
【0036】
例えば、前述のシフトする角度θは、前記個数mが最大にならない限りにおいて、45°や60°にする等、任意でその設定を変更することが可能である。
【0037】
更に、保持装置16を介してウエハWを角度θ回転したが、アライメント装置13によってウエハWを回転してもよい。この場合、アライメントを終えた後で、アライメント装置13を介してウエハWを角度θ回転させて、その後に移載装置15により保持装置16に移載する。これによれば、ウエハWの回転操作をアライメント装置13に集約することができ、保持装置16の回転機構28を省略することが可能となる。
【0038】
また、前記実施形態において、接着シートHを貼付する前に、バンプBを検出することで前記角度θを自動的に決定する識別手段を付加した構成としてもよい。この識別手段としては、バンプBの位置及び形成領域を検出可能なカメラ等のセンサと、当該センサの検出データに基づいて前記個数mが最大となる前記中心軸線の方向を検知する検知手段と、当該方向に対してシフトした前記中心軸線CTの方向を求める方向決定手段とを備えた構成が例示できる。
【0039】
更に、押圧ロールRによって接着シートHに押圧力を付与するときに、ウエハW上を押圧ロールRが往復するようにウエハWと押圧ロールRとを相対移動させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、主に、バンプを備えた半導体ウエハに接着シートを貼付するシート貼付装置に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態のシート貼付装置の概略平面図。
【図2】接着シートを貼付した半導体ウエハの部分拡大平面図。
【図3】図1のアライメント装置の右側面図。
【図4】シート貼付部の概略正面図。
【図5】(A)〜(D)は、半導体ウエハに接着シートを貼付する工程の説明図。
【図6】押圧ロールの押圧力とバンプの抗力を説明するための模式図。
【図7】図2のA−A線に沿う拡大断面図。
【図8】従来例に係る図2と同様の平面図。
【図9】図8の部分拡大図。
【図10】図9のB−B線に沿う断面図。
【図11】図10の半導体ウエハを研削加工した後の断面図
【図12】図11のC−C線に沿う断面図。
【図13】(A)及び(B)は、押圧ロールが押圧力を付与した状態の拡大断面図。
【符号の説明】
【0042】
10 シート貼付装置
B バンプ
CT 中心軸線
H 接着シート
W 半導体ウエハ
W1 表面
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート貼付装置に係り、更に詳しくは、複数の半田バンプ(以下、単に「バンプ」と称する)を有する半導体ウエハの表面に接着シートを貼付するときに、それらバンプの間に空気が混入することを防止することができるシート貼付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より知られている半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」と称する)として、フリップチップ方式により電気的な接続を確保する複数枚のチップを形成するものが知られている。このようなウエハWは、図8に示されるように、突起状をなす多数のバンプBと、先ダイシングによって平面視賽の目状にハーフカットされ、縦長の各チップCの外周縁に対応する位置に設けられた溝状(図10参照)のダイシングラインDLとが表面W1に形成され、その後ウエハWから各チップCを形成する工程では、先ず、ウエハWの表面W1及びバンプBを保護するため、貼付装置(特許文献1参照)を介してウエハWの表面に接着シートHを貼付し、その後、所定の研削装置によってウエハWの裏面側を研削し、ウエハWを極薄化することにより各チップCが形成される。
【0003】
ここで、前記貼付装置は、ウエハWを保持する保持テーブルと、ウエハWの表面W1に配置された接着シートH上を転動する押圧ロールR(図8参照)とを備えており、当該押圧ロールRによって接着シートHに押圧力が付与されるようになっている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−14807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記装置では、ウエハの基準位置(オリエンテーションフラットやVノッチ)を一旦決定し、位置決めすれば回路パターンがどうであれ、接着シートHは一定の方向にしか貼り合わせができないので、図9及び図10に示されるように、ウエハW表面W1と接着シートHとの間に空気が混入し、気泡Aが発生する領域SAが形成され易くなる。そのため、図11のように、先ダイシングによってウエハ表面側にハーフカットが行われているウエハWをその裏面側(同図中上面側)から研削していくと、当該研削に用いられる冷却水がダイシングラインDLを通じて気泡A内に侵入することとなる。これにより、バンプB及びウエハWの表面(同図中下面)が冷却水によって濡れたり、汚損してしまい、チップCの製品不良等を引き起こして歩留まりが低下するという不都合がある。しかも、研削加工によるウエハWの極薄化により、気泡Aの発生領域SAにおけるウエハWが膨らみ(図12参照)、この状態で、更に研削を継続すると、チップCの厚さが一定に保たれなくなり、これによっても製品不良の原因となる。
【0006】
ここで、本発明者は、前記不都合を回避するため、種々の観点から研究を行い、以下に述べる点で、気泡Aの発生とウエハWや貼付装置の条件との間に因果関係があるものと考えた。
【0007】
(1)気泡Aの発生領域SA
図8及び図9に示されるように、発生領域SAにおいて、気泡Aは隣り合うバンプBに跨るように位置している。発生領域SAは、ウエハWを平面視したときに、押圧ロールRの中心軸線CTの延出方向と略平行に延びている。しかも、発生領域SAには複数のバンプBが位置しており、例えば、チップC一枚の短寸幅を三倍した単位長さL(所定長さ)当たりの領域を例に挙げると、前記中心軸線CTに対し、同時に押圧するバンプBの個数mが最大(図8では、m=9)となる位置が発生領域SAとなる。
(2)接着シートH貼付時における押圧ロールRの変形具合
押圧ロールRの中心軸線がバンプBの直上を通過する際、押圧ロールRの下面側はバンプBの突出位置で凹むように弾性変形する。このとき、押圧ロールRが同時に押圧するバンプBが比較的少ない場合、図13(A)に示されるように、バンプBの突出形状に追従するように押圧ロールRの下面側が凹み変形する。つまり、押圧ロールRの下面の凹み変形量r1は、バンプBの突出高さb1と略同一となり、押圧ロールRの押圧力に対する抗力は、各バンプB及びウエハW表面W1により生じる。ところが、押圧ロールRが同時に押圧するバンプBが多くなると、一つのバンプB当たりの抗力が小さくなり、前記凹み変形の変形量が小さくなる。すると、図13(B)に示されるように、押圧ロールRの凹み変形量r2がバンプBの突出高さb1より小さくなり、バンプB以外のウエハW表面W1での接着シートHに対する押圧力が低下することとなる。
(3)前記(1)及び(2)のまとめ
従って、前記(1)及び(2)を総合的に考察すると、押圧ロールRの中心軸線CTの延出方向と略平行に並ぶバンプBの個数が多い発生領域SAにおいて、押圧ロールRの前記凹み変形量が小さくなる。その結果、押圧ロールRが各バンプBだけを押圧してウエハW表面W1に押圧力を殆ど付与しなくなり、ひいては、ウエハW表面W1に対する接着シートHの貼付が不完全となって発生領域SAに気泡Aが生じるものと考えられる。
ここで、押圧ロールR全体の押圧力を増大させれば、前記凹み変形量を大きくして気泡Aの発生を回避できるようにも思われるが、この場合、ウエハWが割れたり、折れ曲がったりし易くなるという別異の不都合を招来する。
そこで、本発明者は、押圧ロールRが同時に押圧するバンプBの個数に着目し、当該個数を減らすことができる貼付装置の構成及び条件を案出した。
【0008】
[発明の目的]
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、ウエハの表面と接着シートとの間に気泡の発生を防止することができるシート貼付装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明は、表面側に多数のバンプを備えた半導体ウエハの該表面側に接着シートを貼付するシート貼付装置であって、
前記半導体ウエハの表面に配置される接着シート上を転動して押圧力を付与する押圧ロールを含み、
前記押圧ロールの中心軸線は、接着シートの貼付中に半導体ウエハを平面視したときに、所定長さの前記中心軸線に対し、同時に重なるバンプの個数が最大となる方向に対して平面内で所定角度シフトした方向に向けられる、という構成を採っている。
【0010】
本発明において、前記半導体ウエハは、その表面が先ダイシングされる、という構成も好ましくは採用される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、押圧ロールにより押圧力を同時に付与するバンプの個数が少なくなるように、押圧ロールの中心軸線の向きを設定して接着シートの貼付を行うことができる。これにより、各バンプにおける押圧ロールの押圧力に対する抗力が低下することを抑制でき、押圧ロールがバンプの突出形状に追従するように凹み変形可能となる。その結果、押圧ロールからの押圧力が各バンプだけでなくウエハ表面にも常に付与され、従来のように、押圧力不足に起因するバンプ間の気泡の発生を防止することが可能となる。
【0012】
また、ウエハ表面が先ダイシングされている場合、ウエハ裏面の研削工程においても、接着シートによるウエハ表面及びバンプの密閉状態を確保することができ、従来のような冷却水の侵入等による汚損等を回避することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1には、本実施形態に係る概略平面図が示されている。この図において、シート貼付装置10は、ウエハWの表面W1に接着シートHを貼付する装置として構成されている。このシート貼付装置10は、ウエハWを収容するカセット11と、このカセット11からロボット12を介して取り出されたウエハWのアライメントを行うアライメント装置13と、このアライメント装置13から移載装置15を介してX方向(図1中左方向)に移動されたウエハWを保持する保持装置16と、接着シートH上を転動して押圧力を付与する押圧ロールRと、ウエハWに貼付された接着シートHの所定位置を切断する切断装置20とを備え、前記保持装置16に保持されたウエハW上に前記接着シートHを貼り付けるシート貼付部17(図4参照)と、切断装置20によって切り離された接着シートHを回収する回収装置55とを備えて構成されている。
【0015】
前記ウエハWは、その表面W1が回路面として形成されるとともに、表面W1が上面側となる状態でカセット11内に収容されている。図2において拡大して示されるように、ウエハWの構成は、前記従来例(図8)において説明したものと同一である。従って、ここでは、ウエハWの各構成について同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
バンプBについて詳述すると、特に限定されるものでないが、本実施形態では、それぞれのチップCにおけるバンプBの形成数及び形成位置は同一とされている。バンプBの形成位置は、各チップCの図2中上部における左右方向中央部に1つ形成され、チップCの同図中上下中間部に左右に沿って略等間隔に3つ形成され、チップCの同図中下部に左右に沿って2つ設けられている。そして、ウエハW全体として見たときに、前記上部、上下中間部及び下部の各バンプBが同図中左右方向に沿って略等間隔に並ぶようになっている。
【0016】
前記接着シートHは、ウエハWへの貼付前において、当該ウエハWの直径寸法より大きい幅寸法を備えた帯状に形成されるとともに、粘着面に剥離シートPが仮着された状態でシート貼付部17の後述する供給リールに巻回されている。
【0017】
前記ロボット12は、略円筒状のベース22と、このベース22に立設された上下動機構23と、この上下動機構23の上端に設けられるとともに略水平面内で回転可能な関節型のアーム24と、このアーム24の先端に取り付けられた略C字状若しくは略U字状の平面形状を備えた先端部25とを備えて構成されている。ロボット12は、先端部25によりカセット11内に収容されたウエハWの下面側を吸着保持し、この状態でアライメント装置13に移載する。
【0018】
前記アライメント装置13は、図3にも示されるように、ポンプ等(図示省略)に接続されてウエハWを上面で吸着する保持テーブル27と、この保持テーブル27を下側から支持するとともに、保持テーブル27を平面内で回転させる回転機構28と、この回転機構28の下側に設けられたX−Y移動機構29と、保持テーブル27の面内略中央部に設けられるとともに、保持テーブル27の上面から突出可能な円筒部材30Aを備えたリフター30と、保持テーブル27の上面側に設けられてウエハWのVノッチ等を検出するカメラ等からなるセンサ31とを備えて構成されている。円筒部材30Aは、その上面が保持テーブル27同様にウエハWを吸着保持可能となっており、保持テーブル27と略面一となる位置から昇降可能に設けられている。従って、保持テーブル27の上面から円筒部材30Aを突出させたときに、保持テーブル27からウエハWを上昇させた状態とし、保持テーブル27の上面とウエハWとの間にスペースを確保する。
【0019】
アライメント装置13によってアライメントを行ったウエハWは、移載装置15に受け渡されて保持装置16に移載される。移載装置15は、ウエハWを下面側から吸着保持するとともに、略C字状若しくは略U字状の平面形状を先端側に備えたアーム部材33と、このアーム部材33の基端側を支持するとともに、アーム部材33をY軸に沿って移動させるY軸ロボット34と、このY軸ロボット34を支持するとともに、Y軸ロボット34及びアーム部材33をX方向に沿って移動させるX軸ロボット35とにより構成されている。
【0020】
前記保持装置16は、前述のアライメント装置13に対して、Y方向への移動範囲が大きくした点と、センサ31を省略した点を除いて実質的に同様の構造が採用されている。従って、ここでは同一符号を用いるものとして説明を省略する。
【0021】
前記シート貼付部17は、図4に示されるように、前記接着シートHが剥離シートPに仮着された状態で巻回された原反を保持する供給リール37と、この供給リール37から延びる接着シートHを押圧ロールRに案内するガイドローラ38及びテンションローラ39と、接着シートHから剥離された剥離シートPを巻き取る巻取リール40と、この巻取リール40とテンションローラ39との間に設けられ、剥離シートPに繰り出し力を付与するドライブローラ42とを備えて構成されている。テンションローラ39、巻取リール40及びドライブローラ42には、図示しないモータ等の駆動手段を介して各シートH,Pを繰り出す駆動力が付与される。また、テンションローラ39及びドライブローラ42には、それらに接するピンチローラ43,44が設けられている一方、ピンチローラ44と巻取リール40との間にはガイドローラ45が設けられている。
【0022】
前記押圧ロールRは、シリコン等の樹脂材を用いて構成され、その表面側が弾性変形可能に設けられている。押圧ロールRは、その両端側をホルダー47により回転可能に支持されている。ホルダー47は、シリンダ48に連結されており、当該シリンダ48を駆動することで押圧ロールRを上下動させるようになっている。
【0023】
ここで、押圧ロールRと切断装置20との間には、接着シートHを保持可能な一対のチャック49,49が設けられ、これらチャック49,49は接着シートHの幅方向両側にそれぞれ配置されている。各チャック49,49は、上下移動用シリンダ50,50にそれぞれ連結されて上下に移動可能に設けられている。各上下移動用シリンダ50,50は、X方向(図4中紙面直交方向)に向けられたスライダ51にそれぞれ支持され、これにより、各チャック49,49がX方向に沿って相互に離間及び接近できるようになっており、前記接着シートHをウエハに貼り付ける時に接着シートHの幅方向に張力を与え、皺が発生しないように貼付できるようになっている。
【0024】
前記切断装置20は、接着シートHを切断可能な超音波カッター53と、この超音波カッター53を支持するとともに、超音波カッター53をX方向、上下方向に移動させる移動機構54とを備えて構成されている。切断装置20は、ウエハWに貼付された接着シートHを先ずは移動機構54の駆動によって、接着シートHの幅方向(X方向)に切断し、その後ウエハWの外周位置に前記超音波カッター53を移動させ、保持装置16の保持テーブル27を回転させてウエハWの外周に沿って接着シートHを切断する。そして、当該切断によって切り離された接着シートHが回収装置55によって回収される。
【0025】
次に、シート貼付装置10による接着シートHの貼付工程について説明する。
【0026】
カセット11に収容されたウエハWは、ロボット12の先端部25よって下面側から吸着保持され、アライメント装置13上に移動される。このとき、アライメント装置13のリフター30は、保持テーブル27から円筒部材30Aが突出した状態とされ、円筒部材30Aの上部にウエハWを吸着保持させる。その後、ウエハWと保持テーブル27との間からロボット12の先端部25を退避させた後、円筒部材30Aを下降し、保持テーブル27上にウエハWを吸着保持させる。そして、回転機構28及びX−Y移動機構29を介してウエハWを移動しながらVノッチ等をカメラ31により検出し、ウエハWのダイシングラインDLがX方向及びY方向に沿うようにアライメントを行う。
【0027】
アライメントを終えたウエハWは、アライメント装置13のリフター30を介して上昇された後、その下面側が移載装置15のアーム部材33に吸着保持されて保持装置16に移載される。このとき、保持装置16は、保持テーブル27が反時計方向に角度θ回転した状態とし、アライメント装置13と同様に、リフター30の円筒部材30Aが突出した状態で待機している。そして、移載装置15のアーム部材33から、保持装置16のリフター30を介して保持テーブル27にウエハWを吸着保持させた後、当該保持テーブル27を時計方向に角度θ回転する。その後、保持装置16がY方向に沿って図4中左側に移動する。
【0028】
保持装置16における保持テーブル27の図4中左端側が前記チャック49,49の下方位置に到達した時点で、保持装置16のY方向に沿う移動を停止する。このとき、各チャック49,49が接着シートHの幅方向両側を保持しつつ、スライダ51を介して各チャック49,49がX方向に相互に離間する力が付与され、接着シートHが幅方向に拡げられている。この状態で、図5(A)に示されるように、押圧ロールR及びチャック49,49が下降し、押圧ロールRを介してウエハWの外周部(図5(B)中左端部)に接着シートHを押し付ける。この際、各チャック49,49が接着シートHの保持を解除するとともに、テンションローラ39が送り方向に回転してウエハWの表面W1側に配置された接着シートHのテンションを緩和する。その後、図5(C)に示されるように、保持装置16を同図中左方向に移動することにより、押圧ロールRが接着シートH上を転動して押圧力を付与し、ウエハWと接着シートHとの貼付面積が次第に拡大するように貼付する。そして、図5(D)に示されるように、ウエハWの表面W1全体に接着シートHを貼付し終えると、保持テーブル27の移動を停止し、各チャック49,49により接着シートHを保持した後、切断装置20の超音波カッター53により接着シートHを幅方向に切断する。
【0029】
その後、保持装置16によりウエハWを移動しつつ、切断装置20の移動機構54を介して超音波カッター53をウエハW外周位置に移動し、保持装置16の保持テーブル27を回転させ、前記超音波カッター53によってウエハWに貼付された接着シートHをウエハWの外周に沿って切断する。この切断により、ウエハWの外側にはみ出る不要な接着シートHが切り離されて回収装置55により回収される。そして、保持装置16のリフター30によってウエハWを上昇させた後、前記ロボット12を介してウエハ11がカセット11内に収容される。
【0030】
ここで、前述の角度θ、接着シートHの貼付中における押圧ロールRの状態等について、図8で示した従来例と比較しながら更に検討する。
【0031】
ここにおいて、本実施形態のウエハWに対し、従来例の押圧ロールRの中心軸線CTの向きは、図8に示されるように、チップC一枚の短寸幅を三倍した単位長さLの中心軸線CTに対し、同時に重なるバンプBの個数mが最大(m=9)となる向きとなる。
この時の中心軸線を最大中心軸線CTmax(図2参照)とすると、本実施形態において、前記最大中心軸線CTmaxに対してその中心軸線CTは、角度θ(約30°)シフトしたように設定されている。このように、保持装置16の保持テーブル27を回転してウエハWの向きを設定することにより、接着シートHの貼付中にウエハWを平面視したときに、従来例に比べ、押圧ロールRの中心軸線CTが平面内で反時計方向に約30°シフトした方向に向けられる。この中心軸線CTの向きによれば、図2に示されるように、チップC一枚の短寸幅を三倍した単位長さLの前記中心軸線CTに対し、同時に重なるバンプBの個数mが多くてもm=4となり、前記従来例(m=9、同図(B)参照)に比べて個数mが約半数以下に減少する。つまり、接着シートHの貼付中に、前記長さLの中心軸線CTに対し、押圧ロールRにより同時に押圧力を付与されるバンプBの個数mの最大値を減らすことができる。
ところで、図6(A)及び(B)に示されるように、押圧ロールR全体の押圧力をFとし、当該押圧力Fに対する一つのバンプB当たりの抗力fとすると、当該抗力fを求める式は、以下のようになる。
抗力f=押圧力F/個数m
この式において、押圧力Fを一定とすれば、個数mを小さくすることにより抗力fを大きくすることができる。従って、本実施形態では、従来例に比べて個数mが約半数となるので、抗力fを約二倍に増大させることができる。これにより、接着シートHの貼付中に、押圧ロールRが常にバンプBの突出形状に追従するように凹み変形する、すなわち、図13(A)と同様に凹み変形することとなり、各バンプB及びウエハWの表面W1に押圧ロールRの押圧力を安定して付与することが可能となる。
【0032】
なお、保持装置16を介してウエハWを回転する角度θは、保持装置16の駆動を制御する図示しない制御部に予め記憶させることができ、ウエハWのバンプBの位置及び形成数に応じて適宜設定を変更することができる。
【0033】
従って、このような実施形態によれば、図7に示されるように、接着シートとウエハWの表面W1との間に気泡が発生することを回避することができ、それらを密着した状態に容易に維持することが可能となる。これにより、後工程においてバンプB及びウエハWの表面が冷却水によって濡れたり、汚損したり、チップCの製品不良等を引き起こして歩留まりを低下するという不都合は生じなくなる。しかも、研削加工によるウエハWの極薄化により、気泡Aの発生領域SAにおけるウエハWの膨らみ(図12参照)による研削時のチップCの厚さが不安定になることを防止し、安定した製品供給を行うことができる。
また、保持装置16の保持テーブル27を回転させることにより、アライメントされたウエハWの位置に対し、押圧ロールRの中心軸線CTの向きを簡単にシフトすることができる。
【0034】
本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施の形態に対し、形状、数量、材質、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材料などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0035】
例えば、前記個数mを測定するにあたって、基準となる中心軸線CTの長さは、前述の単位長さLに限られず種々の変更が可能であり、例えば、チップC一枚の短寸幅又は長寸幅をn倍(n≧2)した長さ等としてもよい。要するに、前記中心軸線CTの長さは、個数mが最大となる方向と、当該方向に対してシフトした方向とで同一とし、それらの方向における個数mを比較可能な長さとすれば足りる。
【0036】
例えば、前述のシフトする角度θは、前記個数mが最大にならない限りにおいて、45°や60°にする等、任意でその設定を変更することが可能である。
【0037】
更に、保持装置16を介してウエハWを角度θ回転したが、アライメント装置13によってウエハWを回転してもよい。この場合、アライメントを終えた後で、アライメント装置13を介してウエハWを角度θ回転させて、その後に移載装置15により保持装置16に移載する。これによれば、ウエハWの回転操作をアライメント装置13に集約することができ、保持装置16の回転機構28を省略することが可能となる。
【0038】
また、前記実施形態において、接着シートHを貼付する前に、バンプBを検出することで前記角度θを自動的に決定する識別手段を付加した構成としてもよい。この識別手段としては、バンプBの位置及び形成領域を検出可能なカメラ等のセンサと、当該センサの検出データに基づいて前記個数mが最大となる前記中心軸線の方向を検知する検知手段と、当該方向に対してシフトした前記中心軸線CTの方向を求める方向決定手段とを備えた構成が例示できる。
【0039】
更に、押圧ロールRによって接着シートHに押圧力を付与するときに、ウエハW上を押圧ロールRが往復するようにウエハWと押圧ロールRとを相対移動させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、主に、バンプを備えた半導体ウエハに接着シートを貼付するシート貼付装置に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本実施形態のシート貼付装置の概略平面図。
【図2】接着シートを貼付した半導体ウエハの部分拡大平面図。
【図3】図1のアライメント装置の右側面図。
【図4】シート貼付部の概略正面図。
【図5】(A)〜(D)は、半導体ウエハに接着シートを貼付する工程の説明図。
【図6】押圧ロールの押圧力とバンプの抗力を説明するための模式図。
【図7】図2のA−A線に沿う拡大断面図。
【図8】従来例に係る図2と同様の平面図。
【図9】図8の部分拡大図。
【図10】図9のB−B線に沿う断面図。
【図11】図10の半導体ウエハを研削加工した後の断面図
【図12】図11のC−C線に沿う断面図。
【図13】(A)及び(B)は、押圧ロールが押圧力を付与した状態の拡大断面図。
【符号の説明】
【0042】
10 シート貼付装置
B バンプ
CT 中心軸線
H 接着シート
W 半導体ウエハ
W1 表面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側に多数のバンプを備えた半導体ウエハの該表面側に接着シートを貼付するシート貼付装置であって、
前記半導体ウエハの表面に配置される接着シート上を転動して押圧力を付与する押圧ロールを含み、
前記押圧ロールの中心軸線は、接着シートの貼付中に半導体ウエハを平面視したときに、所定長さの前記中心軸線に対し、同時に重なるバンプの個数が最大となる方向に対して平面内で所定角度シフトした方向に向けられていることを特徴とするシート貼付装置。
【請求項2】
前記半導体ウエハは、その表面が先ダイシングされていることを特徴とする請求項1記載のシート貼付装置。
【請求項1】
表面側に多数のバンプを備えた半導体ウエハの該表面側に接着シートを貼付するシート貼付装置であって、
前記半導体ウエハの表面に配置される接着シート上を転動して押圧力を付与する押圧ロールを含み、
前記押圧ロールの中心軸線は、接着シートの貼付中に半導体ウエハを平面視したときに、所定長さの前記中心軸線に対し、同時に重なるバンプの個数が最大となる方向に対して平面内で所定角度シフトした方向に向けられていることを特徴とするシート貼付装置。
【請求項2】
前記半導体ウエハは、その表面が先ダイシングされていることを特徴とする請求項1記載のシート貼付装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−24743(P2006−24743A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−201495(P2004−201495)
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月8日(2004.7.8)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】
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