説明

シート送りシャフトおよびその製造方法

【課題】 給紙やフィルム送り効果の高いスパイク状の突起をシャフトの加工変形を生じさせることなく、金属製丸棒の外周に形成できるようにする。
【解決手段】 シート送りシャフトにおいて、送りローラ2との間にシートを挾んで対向する金属製丸棒1の円周面上に回転方向に立ち上がる複数の突起A,Bを塑性加工によって形成させてなるシート送りシャフトSにおいて、上記突起が金属製丸棒外周面で軸方向の異なる少なくとも二箇所に目打ち加工によって形成されると共に互いに立ち上り方向が相反する複数のスパイク状の突起からなり、更に同一方向に立ち上る複数の突起を円周方向と軸方向とに沿って列設するとともに、反対方向に立ち上がる複数の突起を前記突起列に続けて軸方向にずらして形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プロッター、印刷機器や事務機用プリンタなどの紙送りや、オーバヘッドプロジェクタなどで使用するフィルムなどのシートの送り出し等を行うのに利用するシート送りシャフトおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
事務機用プリンタなどの紙送り装置には、ゴム製の給紙ローラが用いられていたが、カラー印刷のように紙送りを前後に繰り返しつつ多色刷りを行う場合には、紙の送りスピードや紙質により紙送りムラが生じて色ずれを生じることがあり、また、給紙ローラの摩耗による変質,変形が避けられないという不都合があった。
【0003】
一方、これに対して、金属製シャフトに直接目立て加工を行って、突起を一体に形成したシート送りシャフトが、例えば特許文献1および特許文献2に示されている。この方法によれば、金属製ローラシャフトに一体に形成した突起が、スリップを生じ難くして正確に紙送りを行うので、多色刷り用の紙送りローラとして利用できる。
【特許文献1】特開平8‐86309号公報
【特許文献2】特開平10‐109777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来のシート送りシャフトでは、給紙ローラとしての金属製シャフトの表面に、シャフトと一体に小突起が多数形成されるが、特許文献1の方法による突起の形成に際して、加工圧力が加わるためシャフトの変形が生じる場合があり、紙送りを正確に行うことができないことがあるという課題があった。
【0005】
また、給紙ローラとしての金属製シャフトの表面に、特許文献2の方法によりシャフトと一体に、小突起が正逆方向に多数形成される形態の場合には、これに接触する紙やシートを強制的に送り出すことができるが、この送り出しがカラー印刷などでは往復搬送を繰り返しながら行われるために、紙送りエラーが皆無とはいえない場合があり、時には僅かなスリップを生じてしまうという課題があった。
【0006】
すなわち、特許文献1に記載された方法によるシャフトでは、突起を形成するための加工を行うとき、シャフトが回転しないように十分な押さえ力をシャフトに加える必要がある。
【0007】
そのために、シャフトに加わる力によってシャフトが変形することがあり、このような変形したシャフトでは正確な紙送りができないという課題があった。
【0008】
一方、特許文献2に記載された方法によるシャフトでは、図12に示される目打ち用切刃25、26によって形成された突起を拡大して模式的に表した図11および図14で説明すると、シャフトが矢印方向に回転して紙送りがなされるときには、突起aの先端の尖った部分が用紙を確実に捉えることによって、用紙を矢印の給送側へ確実に引き込みあるいは送り出すことができる。
【0009】
しかし、その次の段階では突起bが用紙を捉えることになり、前述の場合とは違って突起の背面側が用紙を捉えることになる。そのため、目打ちがされて素材面が露出した粗い面ではあるが、突起aの先端が尖った部分に比べると、必ずしも確実な捕捉ができない場合が生じる惧れがあった。
【0010】
すなわち、図11、図14に示されるように円周方向の配列でシャフトと一体に、小突起a,bが正逆方向に交互に形成されるため、搬送力が強い突起aと弱い突起bとが交互に給紙を捉えることになる。
【0011】
このことは、実質的に突起の数が減少したかのような状態になることを意味し、突起aのときに比べて突起bが寄与すべきときに、給紙エラーを生じる惧れがあるという課題があった。
【0012】
特に、このような現象が生じるのは、ロール紙を給送する場合には用紙のタルミを防止するために、送り出す側の用紙に若干の引張り力(一般に、バックテンションといわれる)を掛けてあることから、給送側により強い搬送力が求められ、これが弱くなると給紙エラーを生じ易くなると考えられる。
【0013】
また、比較的厚みのある用紙や、腰の強い用紙あるいは表面が滑らかで、突起が突き刺さり難い用紙が使用されるときなどにも生じると考えられる。
【0014】
この発明は、前記のような課題を解決するものであり、金属製丸棒周面への突起加工を改良し、紙や硬質のフィルムなどのシートも正確な位置に保持しながら目的の方向へ正確に送給できるシート送りシャフトを提供することを目的とする。
【0015】
すなわち、図11および図14に示す突起bを突起aにして、総ての突起が同一の搬送力を生じ、搬送力を向上させるようにすることを目的とする。
【0016】
また、この発明は、給紙やフィルム送り効果の高いスパイク状の突起を、シャフトの加工変形を生じさせることなく、金属製丸棒の外周に形成できるシート送りシャフトの製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するため、本発明の手段は、送りローラとの間にシートを挾んで対向する金属製丸棒の円周面上に回転方向に立ち上がる複数の突起を塑性加工によって形成させてなるシート送りシャフトにおいて、上記突起が金属製丸棒外周面で軸方向の異なる少なくとも二箇所に目打ち加工によって一対をなして形成されると共に、互いに立ち上り方向が相反する複数のスパイク状の突起からなり、更に同一方向に立ち上る複数の突起を円周方向に沿って列設するとともに、反対方向に立ち上がる複数の突起を前記突起列に続けて軸方向にずらして形成したことを特徴とするものである。
【0018】
この場合、反対方向に立ち上がる複数の突起を前記突起列に続けて軸方向にずらしかつ高さを低くして形成すること、あるいは反対方向に立ち上がる複数の突起を軸方向で両側にずらしかつ高さを低くして形成されているのが好ましい。
【0019】
同じく他の手段は、反対方向に立ち上がる複数の突起を前記突起列に続けて軸方向にずらし、かつ同一方向に立ち上がる突起から離れるにつれ、高さが順次低くなるように形成されているのが好ましい。
【0020】
また、同一方向に立ち上る複数の突起を円周方向に沿って列設するとともに、最も外側に位置する突起群の突起高さを外側へ進むにつれて順次低く形成されているのが好ましい。
【0021】
同じく他の手段は、金属製丸棒を支持台上に支持させると共に該金属製丸棒を順次回転させ、互いに対向しかつ群ごとに軸方向にずらした面側に目打ち切り刃群が形成された目打ち部材によって、前記金属製丸棒外周面の群ごとに軸方向にずれた位置に対向する少なくとも二箇所に同時に目打ち加工を行って、立ち上がり方向が相反する複数のスパイク状の突起を形成することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、次の効果がある。 請求項1から4に記載の発明によれば、金属製丸棒の円周面上に、該金属製丸棒の回転方向に立ち上がる複数のスパイク状の突起を、連続して同一方向に形成するようにしたので、ロール紙や硬質のフィルムなどのシートも正確な位置に保持して目的の方向へ正確に送給できるという基本的効果が得られる。
【0023】
加えて、これとは別に軸方向にずらした位置に立ち上り方向が逆であって、好ましくは高さの低い突起が形成されているので、シャフトの変形がなく正確な突起が形成され、金属製丸棒のいずれの方向の回転によっても、ロール紙やフィルムなどのシートを確実に目的の方向に送り出すことができるという効果が得られる。
【0024】
また、請求項5および6に記載の発明によれば、加圧ローラに負荷される荷重が大きくなった場合において、シャフトの撓みが生じたときにおいても確実な給送を確保できるという効果が得られる。
【0025】
さらに、請求項7に記載の発明によれば、金属製丸棒を支持台上に支持させると共に該金属製丸棒を順次回転させ、互いに対向しかつ群ごとに軸方向にずらした面側に目打ち切り刃群が形成された目打ち部材によって、前記金属製丸棒周面の群ごとに軸方向にずれた位置に同時に目打ち加工を行って、立ち上がり方向が相反する複数のスパイク状の突起を形成するようにしたので、簡単な目打ち手段を用いて給紙やフィルムの送り効果の高いスパイク状の突起を持ったシート送りシャフトをローコストに製造できるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、この発明の実施の一形態を図について説明するが、図1は、この発明のシート送りシャフトを有する紙送り装置要部の斜視図である。
【0027】
同図において、金属製丸棒1からなるシート送りシャフトSは、このシート送りシャフトSとの間に給送用の紙3を挟むために、硬質ゴム等の送りローラ2と対向させるのが一般的でありこれに倣っている。
【0028】
また、金属製丸棒1には、図2に拡大して示すように、全長を三つの領域に分けた円周上に、該金属製丸棒1の回転方向に鈍角で立ち上がる複数のスパイク状の突起A,Bが塑性加工によって、円周方向および軸方向に沿って形成されている。
【0029】
給送用の突起Aは、給送される用紙の厚さによって30〜300μmの高さに形成される。
【0030】
すなわち、本発明に係るシート送りシャフトSは、送りローラ2との間に紙3,フィルムなどのシートを挾んで相対向する金属製丸棒1の円周面上に回転方向に立ち上がる複数の突起A,Bを塑性加工によって一対をなして形成させてなるものである。
【0031】
そして、上記突起Aが金属製丸棒1の周面に目打ち加工によって形成される複数のスパイク状の突起からなり、更に同一方向に立ち上る複数の突起Aを円周方向と軸方向とに沿って列設するとともに、反対方向に立ち上がる複数の突起Bを前記突起列に続けて軸方向にずらしかつ高さを低くして形成したことを特徴とする。
【0032】
この場合、反対方向に立ち上がる複数の突起Bを軸方向で両側にずらしかつ高さを低くして形成し、あるいは、反対方向に立ち上がる複数の突起Bを前記突起A列に続けて軸方向にずらし、かつ同一方向に立ち上がる突起Aから離れるにつれ高さが順次低くなるように形成するのが好ましい。
【0033】
そして、突起Aは、図3に示すように、後述の目打ち切刃によって金属製丸棒1の回転方向に鈍角に立ち上がるスパイク状に形成され、円周方向と軸方向とに沿って立ち上がる突起群をなす。
【0034】
一方、突起Bは、これとは逆方向でしかも前記突起群に隣接して軸方向にずれて一対をなして形成される。
【0035】
したがって、円周面上で円周方向と軸方向とにそれぞれ隣り合う突起Aは、その突起群内では立ち上がり方向が同一で、これとは軸方向にずれかつ隣接して突起A群と一対をなして形成されている突起Bとは逆方向の立ち上がりとなる。
【0036】
図4には突起A、Bの配列を説明するため、シャフト1の断面が具体的に示されている。
【0037】
かかる構成になるシート送りシャフトでは、金属製丸棒1の外周に形成された突起Aの先端が鋭利に尖っていることと合わせて、突起Aの目立てによって切り起こされた面は粗い材料面が露出している。
【0038】
それゆえ、金属製丸棒1のいずれの回転方向にあっても、ロール紙や比較的柔軟な印刷用紙のほか、オーバヘッドプロジェクタなどで使用する比較的硬いフィルムのいずれをも確実に引っ掛けて、送りローラ2との相互作用によりスムースに規定方向および規定位置に正しく送り出し、あるいは戻すことができる。
【0039】
したがって、これを多色刷りのカラー印刷などに利用すれば、半永久的に紙やフィルムに変形が生じることがなく、色ずれのない美しい色の多色刷を実現可能にする。
【0040】
図5は、この発明のシート送りシャフトの製造装置を示す斜視図であり、同図において、Vブロック12は、このベース11上に設置された支持台であり、リフタ13は、Vブロック12上に支持した加工材としての金属製丸棒1を、Vブロック12上から押し上げている。
【0041】
また、樹脂カラー14は、金属製丸棒1に巻装され、これがリフタ13上に直接触れるのを回避している。
【0042】
材料外し枠15は、ベース11上に立設されており、加工が済んだ金属製丸棒がパンチの目打ち用切刃に食い付いたまま上がるのを阻止する。
【0043】
さらに、保持ブッシュ16は、金属製丸棒1の一端を支持しており、この保持ブッシュ16に割り付け歯車17が一体に取り付けられ、この割り付け歯車17は、ステッピングモータ18の駆動歯車19に噛合されている。
【0044】
なお、ねじ20は、保持ブッシュ16を金属製丸棒1に固定する。また、廻り止め部材21は、エアーシリンダなどの動力を受けて前記割り付け歯車17に先端が噛合される。
【0045】
多点位置決め用のモータシリンダ22の先端は、マグネットチップ23を介して金属製丸棒1の一端に当接される。
【0046】
パンチユニット24は、プレス機により昇降駆動され、一対の目打ち部材25,26が挿入孔29を締結具(ボルト・ナットなど)27によって取り付け固定されている。
【0047】
そして、この目打ち部材25,26は、例えば、図6、図7に示すように、それぞれ互いに対向する片面に複数条の目打ち用切刃28、30が縦方向に刻設されている。
【0048】
また、目打ち部材25,26は、金属製丸棒1の外径寸法に対応して予め計算された間隔を保って、図7に示すように互いに対向して取り付けられている。
【0049】
目打ち部材26は図6(a)に、目打ち部材25は図6(b)にそれぞれ示されている。
【0050】
なお図6、図7において切刃28、30は拡大して描かれているので、数も実物よりも少なく表現されている。
【0051】
これらの互いに対向する目打ち用切刃28、30は、突起Aを一群とする切刃28と突起Bを一群とする切刃30とが隣接するように、軸方向に位置をずらして形成され、取り付け具であるパンチユニット24上に設置されている。
【0052】
さらに、図6(a)に示す切刃30は、図6(b)に示す切刃28から両側へ離れるにつれて、加工により形成される突起高さが低くなるように構成されている。
【0053】
次に、かかる製造装置を用いて、シート送りシャフトを製造する工程を、図8および図9を参照しながら説明する。
【0054】
まず、パンチユニット24の上昇時にリフタ13上に樹脂カラー14および保持ブッシュ16が支持されるように、金属製丸棒1をVブロック12上に設置する。
【0055】
そして、目打ち部材25,26はに示すように、金属製丸棒1の軸芯を通る線と平行に維持された状態で上下方向に作動する。
【0056】

このとき、リフタ13は、スプリング(図示しない)によって2ミリ乃至3ミリ持ち上げられており、このことによって、モータシリンダ22による軸方向の移動時に、加工部がVブロック12と干渉するのを回避している。
【0057】
次に、廻り止め部材21の先端を割り付け用歯車17から噛合解除し、ステッピングモータ18を回転させるなどして金属製丸棒1の加工位置を決め、位置が決まったときに、ネジ20により保持ブッシュ16を金属製丸棒1に固定し、さらに、廻り止め部材21の先端を歯車17に噛合させる。
【0058】
そして次に、上死点位置にあるパンチユニット24を下降させ、図8に示すように、各目打ち部材25,26の目打ち用切刃28、30を、金属製丸棒1周面の対向する箇所で金属製丸棒1の軸芯から予め計算された間隔を保って、軸芯を通る線と平行に切り込ませる。
【0059】
この切り込みによって、図3および図4に示すように、互いに相反する向きにスパイク状の突起A,Bが90度またはこれを超える角度で、かつ所定の高さで円周の外方に起立することとなる。
【0060】
つまり、図9のように、スパイク状の突起Aは、金属製丸棒1の回転方向であって、該金属製丸棒1の外径寸法に対応して予め計算された寸法だけ軸芯Pから離れて、軸芯Pを通る直径線aと平行な垂直位置bで切り込まれて、外方に該金属製丸棒1から等しい高さで直接立ち上がる。
【0061】
一方、スパイク状の突起Bは、突起Aとは異なり反対側で突起Aの列に隣接し、軸方向に沿って両側に向けて順次低くなるように、該金属製丸棒1の外径寸法に対応して予め計算された寸法だけ軸芯Pから離れて、軸芯Pを通る直径線aと平行な垂直位置cで切り込まれて、外方に該金属製丸棒1から直接立ち上がる。
【0062】
この場合に、突起Bの形成には、突起Aを形成するときに切り刃28がシャフト1に作用する回転力と、突起Bの切り刃30がシャフト1に作用する回転力とが釣り合うようになっていればよい。
【0063】
つまり、図9において軸芯Pからの距離が異なれば、位置aと位置bとの差がシャフト1に回転力を与えることになる。
【0064】
そして、切り刃28と切り刃30とが軸芯Pからの距離と突起A、Bの数の差とで回転力を与えないように調整すれば、シャフトの回転力が生じないように構成できる。
【0065】
このようにすれば、回転を防止するためにシャフトを押さえる必要がなく、シャフトを変形させることなく突起A、Bを形成できる。
【0066】
こうして、各一列ずつの突起A,Bが形成された後は、目打ち用切刃28、30の金属製丸棒1に対する食い込みを材料外し枠15の助けを借りて解除し、パンチユニット24を上死点まで上昇させる。
【0067】
続いて、廻り止め部材21を再び割り付け用歯車17から噛合解除し、ステッピングモータ18を一定角度分だけ回転させ、駆動歯車19に噛合された割り付け用歯車17も同様に一定角度分だけ回転させて、金属製丸棒1の回転支持位置を変化させる。
【0068】
こうして、金属製丸棒1の回転位置が決められた後は、廻り止め部材17により割り付け用歯車17の回転位置を再びロックして、パンチユニット24の作動による目打ち部材25,26の下降が行われ、先に形成された各列の突起A,Bの円周方向で隣の列に、それぞれ同様の突起A,Bが形成されることとなる。
【0069】
図8、図9は、二つの目打ち部材25,26における目打ち用切刃28、30による前記のような突起A,Bの形成工程を示し、図8は、突起A,B形成前の状態であり、図9に示すようなパンチユニット24の下降により、突起A,Bの切込みが同時に行われ、各一列ずつの突起A,Bが順次形成される。
【0070】
この後、パンチユニット24を上昇させた上で、ステッピングモータ18により割り付け用歯車17を一定量だけさらに回転させて、金属製丸棒1を同方向に1ピッチ分だけ回転させる。
【0071】
そして、再び割り付け用歯車17の廻り止め、すなわち、ロックをした上でパンチユニット24を下降させ、各二列の前記突起A,Bと円周方向にそれぞれ隣合うように金属製丸棒1上に他の突起A,Bを形成する。
【0072】
また、かかる動作が順次繰り返されて、金属製丸棒1が一回転して第一回目の加工を終了する。
【0073】
最終工程では最後に1歯分回転して加工開始点に戻ることとなり、多点位置決め用のモータシリンダ22によって、金属製丸棒1は次の加工位置に送られることとなる。
【0074】
続いて、その位置でかかる動作を再び継続すると、目打ち部材25,26の各目打ち用切刃28、30が第一回目の加工で形成された各突起A,Bのブロックの隣に、所定の間隔を置いて互いに立ち上がり方向が異なる突起A,Bのブロックが、形成されることとなる。
【0075】
つぎに、紙送り効率の向上などを目的として、図1に示す送りローラ2に対する負荷が加重されることによって、シャフトSに変形が生じることがあり、この場合においても給送を確実にする必要があるが、そのための実施形態について説明する。
【0076】
この場合には負荷が加重されることによって、シャフト1は図2に示す金属製丸棒1に形成される三つの突起群Aのうち、中央の突起群が上に突出する傾斜した状態になる。
【0077】
そのために中央の突起群は給送に寄与する率が低くなり、両側の突起群のうち比較的外側にある突起だけに、集中して給送力が掛かるようになり、正常な給送ができなくなる。
【0078】
この現象に対応するために、図2の両側の突起群に形成する突起Aを、外側へ行くにしたがって順次高さが低くなるように形成してある。
【0079】
図10は、この部分のシャフトの状態を示す断面図であって、左側がシャフト1の外側になっており、各突起Aは右側が高く左側へ行くにつれて低くなるように形成されている。
【0080】
つまり、シャフト1は、負荷の加重によって、例えば図10に示す位置ではシャフトが傾斜角θをもつことになる。
【0081】
そこで、この傾斜角θに合わせて突起Aの高さを調整すれば、この群の突起Aの総てが給送に寄与することが可能になり、正常な給送を維持できるようになる。
【0082】
上記説明から明らかなように、図10に示す最も外側に位置する突起群の突起高さを、外側へ進むにつれて順次低く形成することによって、両側の突起群は、何れも給送紙に対して平行に接触し、多くの突起が給送に寄与できて正常な給送が可能になる。
【0083】
なお、上記説明では突起Aの一群と隣り合う突起Bは、突起Aの両側に形成した場合の実施形態について説明したが、左右何れかの片側だけであっても実施可能である。
【0084】
また、突起Bの高さについて、突起Aの高さよりも低い実施形態について説明したが、同一高さであっても突起Aと突起Bとでは、突起そのものに搬送力の差があるから実施上の問題は少なく、このような実施形態も本発明の技術思想の範囲である。
【0085】
また、突起Bは、突起Aから離れるにつれて順次高さが低くなるように形成した実施形態を示したものであるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、これとは逆に順次高くしたり、一定の低さを維持した同一の突起であったりしても、その突起が給送紙に作用しない高さであれば効率的に実施できる。
【0086】
さらに、突起Aの一群と隣り合う突起Bは、突起Aに隣接して形成した場合の実施形態について説明したが、これに限定されず突起Aの一群に隣接しあるいは若干離し、つまり突起Aの一群に続けるように形成しても実施できる。
【0087】
すなわち、逆方向の突起が給送に寄与せず、悪影響を及ぼさないようになっているのである。
【0088】
このことから、突起Aは給送用の突起であり、突起Bは、工法上から追加される加工突起の役割をもつのである。
【0089】
また、上記実施例においては、目打ち用切刃28、30によって金属製丸棒1に切り込みを行い、スパイク状の突起A,Bが90度またはこれを超える角度(鈍角)で形成されるものであるがこれに限定されない。
【0090】
すなわち、90度以下の角度(鋭角)で切込みを行った場合においても、シャフトの回転方向を逆にした場合の給送に適用すれば、上記実施形態の場合と同様の効果を得ることができる。
【0091】
すなわち、エッチングや転造によって突起を形成した製品が実用化されている市場の実情に鑑みれば、それらに比べると90度以下の鋭角であっても、先端が鋭利に尖っている本願による突起が形成されたシャフトは、給送効率が遥かに高いことは容易に理解できる。
【0092】
以上述べたのは何れも本発明の一実施形態であって、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲内で、適宜変更して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】この発明の実施の一形態によるシート送りシャフトを有する紙送り装置を示す要部の斜視図である。
【図2】図1におけるシート送りシャフトを拡大して示す斜視図である。
【図3】図1における突起形状を拡大して示す斜視図である。
【図4】図1における突起形状を拡大して示す部分断面図である。
【図5】この発明の実施の一形態によるシート送りシャフトの製造装置を示す斜視図である。
【図6】(a),(b)は図5における目打ち部材を示す斜視図である。
【図7】図5における目打ち部材の配置例を示す下面図である。
【図8】図3における目打ち用切刃による突起の形成工程を示す第一工程図である。
【図9】図3における目打ち用切刃による突起の形成工程を示す第二工程図である。
【図10】この発明の他の実施形態における最も外側に位置する突起群の突起高さを、外側へ進むにつれて順次低く形成した突起形状を拡大して示す部分断面図である。
【図11】従来例における目打ち用切刃による突起形状を拡大して示す斜視図である。
【図12】従来例における目打ち部材の配置例を示す下面図である。
【図13】従来例における突起形状を拡大して示す部分断面図である。
【図14】従来例における突起の配置例を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0094】
1 金属製丸棒
12 Vブロック(支持台)
24 パンチユニット
25,26 目打ち部材
28,30 目打ち用切刃
A,B 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送りローラとの間にシートを挾んで対向する金属製丸棒の円周面上に回転方向に立ち上がる複数の突起を塑性加工によって形成させてなるシート送りシャフトにおいて、上記突起が金属製丸棒外周面で軸方向の異なる少なくとも二箇所に目打ち加工によって一対をなして形成されると共に互いに立ち上り方向が相反する複数のスパイク状の突起からなり、更に同一方向に立ち上る複数の突起を円周方向と軸方向とに沿って列設するとともに、反対方向に立ち上がる複数の突起を前記突起列に続けて軸方向にずらして形成したことを特徴とするシート送りシャフト。
【請求項2】
送りローラとの間にシートを挾んで対向する金属製丸棒の円周面上に回転方向に立ち上がる複数の突起を塑性加工によって形成させてなるシート送りシャフトにおいて、上記突起が金属製丸棒外周面で軸方向の異なる少なくとも二箇所に目打ち加工によって一対をなして形成されると共に互いに立ち上り方向が相反する複数のスパイク状の突起からなり、更に同一方向に立ち上る複数の突起を円周方向と軸方向とに沿って列設するとともに、反対方向に立ち上がる複数の突起を前記突起列に続けて軸方向にずらしかつ高さを低くして形成したことを特徴とするシート送りシャフト。
【請求項3】
送りローラとの間にシートを挾んで対向する金属製丸棒の円周面上に回転方向に立ち上がる複数の突起を塑性加工によって形成させてなるシート送りシャフトにおいて、上記突起が金属製丸棒外周面で軸方向の異なる少なくとも二箇所に目打ち加工によって一対をなして形成されると共に互いに立ち上り方向が相反する複数のスパイク状の突起からなり、更に同一方向に立ち上る複数の突起を円周方向と軸方向とに沿って列設するとともに、反対方向に立ち上がる複数の突起を前記突起列に続けて軸方向で両側にずらしかつ高さを低くして形成したことを特徴とするシート送りシャフト。
【請求項4】
送りローラとの間にシートを挾んで対向する金属製丸棒の円周面上に回転方向に立ち上がる複数の突起を塑性加工によって形成させてなるシート送りシャフトにおいて、上記突起が金属製丸棒外周面で軸方向の異なる少なくとも二箇所に目打ち加工によって一対をなして形成されると共に互いに立ち上り方向が相反する複数のスパイク状の突起からなり、更に同一方向に立ち上る複数の突起を円周方向と軸方向とに沿って列設するとともに、反対方向に立ち上がる複数の突起を前記突起列に続けて軸方向にずらすとともに同一方向に立ち上がる突起から離れるにつれ高さが順次低くなるように形成したことを特徴とするシート送りシャフト。
【請求項5】
送りローラとの間にシートを挾んで対向する金属製丸棒の円周面上に回転方向に立ち上がる複数の突起を塑性加工によって形成させてなるシート送りシャフトにおいて、上記突起が金属製丸棒外周面で軸方向の異なる少なくとも二箇所に目打ち加工によって一対をなして形成されると共に互いに立ち上り方向が相反する複数のスパイク状の突起からなり、更に同一方向に立ち上る複数の突起を円周方向と軸方向とに沿って列設するとともに、最も外側に位置する突起群の突起高さを外側へ進むにつれて順次低く形成し、反対方向に立ち上がる複数の突起を前記突起列に続けて軸方向にずらして形成したことを特徴とするシート送りシャフト。
【請求項6】
送りローラとの間にシートを挾んで対向する金属製丸棒の円周面上に回転方向に立ち上がる複数の突起を塑性加工によって形成させてなるシート送りシャフトにおいて、上記突起が金属製丸棒外周面で軸方向の異なる少なくとも二箇所に目打ち加工によって一対をなして形成されると共に互いに立ち上り方向が相反する複数のスパイク状の突起からなり、更に同一方向に立ち上る複数の突起を円周方向と軸方向とに沿って列設するとともに、最も外側に位置する突起群の突起高さを外側へ進むにつれて順次低く形成し、反対方向に立ち上がる複数の突起を前記突起列に続けて軸方向にずらして形成したことを特徴とする請求項2から請求項5の何れかに記載のシート送りシャフト。
【請求項7】
金属製丸棒を支持台上に支持させると共に該金属製丸棒を順次回転させ、互いに対向しかつ群ごとに軸方向にずらした面側に目打ち切り刃群が形成された目打ち部材によって、前記金属製丸棒周面の群ごとに軸方向にずれた位置に同時に目打ち加工を行って、立ち上がり方向が相反する複数のスパイク状の突起を一対をなして形成することを特徴とするシート送りシャフトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−207954(P2008−207954A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−48647(P2007−48647)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(596151825)株式会社 塚田螺子製作所 (3)
【Fターム(参考)】