シート
衝突時に短時間で作動する衝突ストッパ51を有するシート。 下部がフロア側に取り付けられ、上部がシートクッション側に取り付けられることにより、シートクッションを支え、垂直面内での前後方向の傾動により、シートクッションの高さを調整する支持リンク23と、回転端部が垂直面内で前後方向に回転できるように、基端部がフロア側に取り付けられ、回転端部側には、側方に突出した突起(57)が設けられたストッパリンク55と、突起の移動軌跡と交差する方向に延びるように、支持リンク23側に設けられ、想定する方向の衝突荷重を受けて突起と係合すると、突起と協働して支持リンク23のそれ以上の回転を禁止する凹凸面61と、突起が凹凸面61と係合しない位置にて突起に当接し、突起が凹凸面61からそれ以上離れることを禁止するストッパ(65)と、突起がストッパに当接する方向にストッパリンク55を付勢する付勢手段(67)とで構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアに対するシートクッションの高さを調整する高さ調整機構を備えたシートであって、上記高さ調整機構が、下部がフロア側に取り付けられ上部がシートクッション側に取り付けられた支持リンクにより、シートクッションを支え、この支持リンクの垂直面内での前後方向の傾動により、シートクッションの高さを調整するように構成されたシートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートのアウタ側(窓側)及びインナ側(車室内側)の前部及び後部には、それぞれ、シートクッションを支えるフロント支持リンク及びリア支持リンクが設けられており、これら支持リンクは高さ調整機構の一部を構成している。
【0003】
フロント支持リンク及びリア支持リンクは、フロア側部材(リンク)とシート側部材(リンク)との間に連結され、フロア側部材及びシートクッション側部材と共に四節回転連鎖(リンク機構)を構成している。
【0004】
又、アウタ側、インナ側のうちのいずれか一方の側(以下の説明では、アウタ側とする)には、リア支持リンク(フロント支持リンクでも可)を傾動させる駆動機構部が組み込まれている。そして、アウタ側のリア支持リンクの回転は、伝達ロッドを介してインナ側のリンク機構へ伝達され、両側のリンク機構の同期をとるようになっている。
【0005】
即ち、シートのアウタ側のリンク機構は、駆動機構部によって直接駆動され、インナ側のリンク機構は、伝達ロッドを介してアウタ側のリンク機構に追従して動くようになっている。
【0006】
車両の衝突時に、シートに作用した衝突荷重(慣性力)は、シートクッション側から、アウタ側とインナ側のリンク機構のフロント支持リンク及びリア支持リンクに伝達される。
【0007】
この時、駆動機構部が組み込まれたアウタ側のリンク機構では、駆動機構部が衝突荷重を支えるのでフロント支持リンク及びリア支持リンクの回転を阻止できるが、インナ側のリンク機構では、衝突荷重が伝達ロッドを捩じる力として作用するので、伝達ロッドが捩れ、その分、フロント支持リンク及びリア支持リンクが回転することになる。
【0008】
このため、車両が前方へ衝突(前突)し、大きな衝突荷重がシートに作用した場合に、インナ側のリンク機構では、フロント支持リンク及びリア支持リンクが前方に回転し、シートクッションが前方へせり出すことになる。逆に、後方で衝突した場合(後突)には、シートクッションが後方に沈み込むことになる。
【0009】
このようなシートクッションの移動を防止するために、インナ側のリンク機構に衝突ストッパを設けることが知られている。図1及び図2に示した衝突ストッパは、シートクッション側に設けられた複数の歯が形成された歯付セグメント(被噛合部材)101,102と、支持リンク103に回転可能に設けられ、歯付セグメント101,102の歯に噛合可能な歯を有する爪レバー(噛合部材)104と、支持リンク103側に形成され、爪レバー104に係合し、爪レバー104の歯が歯付セグメント101,102の歯と噛合しない位置でそれ以上の爪レバー104の歯付セグメント101,102から離れる方向の回転を禁止するロック穴105と、爪レバー104をロック穴105方向に付勢するロックばね106とを有している。
【0010】
そして、シートに衝突荷重が作用すると、慣性により爪レバー104は、ロックばね106の付勢力に抗して回転し、歯付セグメント101,102と噛合する。この爪レバー104と歯付セグメント101,102の噛合により、支持リンク103の回転が禁止され、シートクッションの移動も禁止される。
【特許文献1】特表2003−513850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のシートでは、衝突荷重を受けると、噛合部材の歯が被噛合部材の歯に噛合することにより、シートクッションの移動を禁止するようにしている。
この構成において、シートに衝突荷重が作用しない状態では、支持リンクの回転を阻害しないように、噛合部材の歯は被噛合部材の複数の歯から完全に離れていなければならない。
【0012】
噛合部材と被噛合部材とが歯と歯で噛み合う従来構成の場合、所定の歯の高さが必要になるので、シートに衝突荷重が作用しない状態での噛合部材の被噛合部材からの退避距離が大きい。加えて、従来構成では、噛合部材の退避位置での位置決め精度を高くとれないため、その分、噛合部材の被噛合部材からの退避距離を大きく設定する必要がある。
【0013】
よって、車両の衝突時に、噛合部材の歯が被噛合部材の歯に完全に噛合するまでに時間がかかり、シートクッションの移動量が大きくなるという問題点がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、車両の衝突時に、シートクッションの移動量を小さくできるシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する請求項1に係る発明は、フロアに対するシートクッションの高さを調整する高さ調整機構を備えたシートであって、下部がフロア側に取り付けられ、上部がシートクッション側に取り付けられることにより、前記シートクッションを支え、垂直面内での前後方向の傾動により、前記シートクッションの高さを調整する支持リンクと、回転端部が垂直面内で前後方向に回転できるように、基端部が前記フロア側に取り付けられ、前記回転端部側には、側方に突出した突起が設けられたストッパリンクと、前記突起の移動軌跡と交差する方向に延びるように、前記支持リンク側に設けられ、想定する方向の衝突荷重を受けて前記突起と係合すると、前記突起と協働して前記支持リンクのそれ以上の回転を禁止する凹凸面と、前記突起が前記凹凸面と係合しない位置にて前記突起に当接し、前記突起が前記凹凸面からそれ以上離れることを禁止するストッパと、前記突起が前記ストッパに当接する方向に前記ストッパリンクを付勢する付勢手段と、を有するシートである。
【0015】
通常は、付勢手段の付勢力により、ストッパリンクの突起はストッパに当接している。よって、支持リンクの回転を阻害することはない。シートに想定する方向の衝突荷重が作用すると、凹凸面は、ストッパリンクの突起と係合し、この突起と協働して支持リンクのそれ以上の回転を禁止する。
【0016】
請求項2に係る発明は、請求項1記載のシートにおいて、上記凹凸面には、支持リンク及びストッパリンクの各回転中心を内側に囲むように凹凸が円弧状に配列され、想定する方向の衝突荷重を受けると、ストッパリンクは、突起が凹凸面に接近するように回転し、凹凸面上の近傍の凹面と係合することを特徴とするものである。
【0017】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載のシートにおいて、上記凹凸面には、支持リンク及びストッパリンクの各回転中心を内側に囲むように凹凸が円弧状に配列され、且つ、この円弧状パターンは、想定する方向の衝突荷重を受けて回転する際に、凹凸面が突起に接近するようなパターンになっていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項1又は2又は3記載のシートにおいて、上記支持リンクに、突起の移動軌跡と交差する方向に伸びる長溝を形成し、この長溝の対向する2つの内壁側面のうち、一方の内壁側面を凹凸面とし、他方の内壁側面をストッパとしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によれば、突起と凹凸面との係合により、リンクの回転を禁止すると共に、突起の退避位置での位置決めを突起とストッパとの当接により行うので位置決め精度を高くでき、突起の凹凸面からの退避距離を短くできる。よって、車両の衝突時に、シートクッションの移動量を小さくできるシートを実現できる。
【0020】
請求項2及び請求項3に係る発明によれば、突起と凹凸面との係合を一層速やかに行うことができ、車両の衝突時に、シートクッションの移動量を更に小さくできる。
請求項4に係る発明によれば、凹凸面やストッパを支持リンクと別に設ける必要がなくなり、部品点数を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来のシートの用いられた衝突ストッパの主要構成図である。
【図2】図1の衝突ストッパを裏側から見た主要構成図である。
【図3】形態例の発明部分を示す図で、図5においてロアアームを取り除いたリア支持リンク付近の拡大図である。
【図4】形態例の発明部分を示す図で、図6においてロアアームを取り除いたリア支持リンク付近の拡大図である。
【図5】形態例のアウタ側のシート側面を示す図である。
【図6】形態例のインナ側のシート側面を示す図である。
【図7】図3の切断線VII−VIIでの断面図である。
【図8】図3の切断線VIII−VIIIでの断面図である。
【図9】図3の切断線IX−IXでの断面図である。
【図10】図3の切断線X−Xでの断面図である。
【図11】衝突ストッパの作動を説明する図である。
【符号の説明】
【0022】
23 リア支持リンク(支持リンク)
51 衝突ストッパ
55 ストッパリンク
57 ピン(突起)
59 長溝
61 凹凸面
63 第1内壁側面
65 第2内壁側面(ストッパ)
67 スプリング(付勢手段)
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。最初に、図5を用いて、シートの全体構成を説明する。
本形態例のシートは、大別すると、シート本体11と、シート本体11のフロアFからの高さ調整を行う高さ調整機構12とで構成されている。このシートは、シートの前後方向の位置調整を行うシートトラック5上に取り付けられている。シート本体11は、着座者の臀部を支持するシートクッション7と、着座者の背部を支持するシートバック9とからなっている。
【0024】
シートトラック5は、フロアFに設けられるロアレール1と、このロアレール1に移動可能に係合するアッパレール3と、アッパレール3の移動を禁止するロック機構(図示せず)とからなっている。そして、ロック機構のロックを解除してアッパレール3をロアレール1に対して移動させることにより、シートを前後方向の所望の位置に調整できるようになっている。
【0025】
次に、高さ調整機構12の説明を行う。シートクッション7には、シートクッション7のフレームであるロアアーム13が設けられている。シートトラック5のアッパレール3の前部には、ピン15を用いてフロント支持リンク17の一方の端部側が回転可能に取り付けられている。このフロント支持リンク17の他方の端部側は、ピン19を用いてロアアーム13の前部に回転可能に取り付けられている。
【0026】
シートトラック5のアッパレール3の後部には、ピン21を用いてリア支持リンク23の一方の端部側が回転可能に取り付けられている。このリア支持リンク23の中間部は、ピン25を用いてロアアーム13の後部に回転可能に取り付けられている。従って、シートトラック5のアッパレール3と、フロント支持リンク17と、シートクッション7のロアアーム13と、リア支持リンク23とで、四節回転連鎖が形成され、フロント支持リンク17とリア支持リンク23のうちのいずれかの支持リンクを前後方向に傾動させることにより、ロアアーム13即ちシート本体11がフロアFに対して昇降することとなる。本形態例では、駆動機構部31を用いてリア支持リンク23を回転させるようにしている。
【0027】
ここで図3、図7〜図10を用いて駆動機構部31の説明を行う。ロアアーム13には、図示しない駆動手段により回転駆動されるピニオン33が設けられている。ピニオン33の回転駆動は、手動、電動どちらでもよい。手動の場合は、ピニオン33と操作部との間にブレーキ機構を設ける。
【0028】
このブレーキ機構は、操作部からのピニオン33の回転駆動を許可し、逆に、セクタギヤ39側からピニオン33に加わる力でピニオン33が回転することを禁止するものであり、例えば、手動式のウインドレギュレータで広く用いられているものである。一方、ピニオン33の回転駆動を電動で行う構成の場合は、例えば、ウォームとウォームホイールとからなる大きな減速比を有する減速機構を介してモータでピニオン33を回転駆動すればよい。
【0029】
セクタギア39はピン35を用いて回転可能に設けられ、ピニオン33に歯部37で噛合している。セクタギア39には、ピン41を用いて伝達リンク43の一方の端部が回転可能に取り付けられている。ピン41の位置は、セクタギア39の回転中心であるピン35と異なる位置である。この伝達リンク43の他方の端部はピン45を用いてリア支持リンク23の他方の端部側に回転可能に取り付けられている。
【0030】
駆動機構部31のピニオン33を回転させると、セクタギア39がピン35を中心に回転する。セクタギア39の回転は、伝達リンク43を介してリア支持リンク23に伝達され、リア支持リンク23はピン21を中心に回転する。このリア支持リンク23の回転により、ロアアーム13(シート本体11)がフロアFに対して昇降する。
【0031】
次に、図6を用いて、シートのインナ側を説明する。アウタ側とインナ側との相違点は、アウタ側には高さ調整機構を駆動する駆動機構部があり、インナ側には駆動機構部がない点である。そして、他の部分は対称の構造を有しているので、インナ側におけるアウタ側と対応する部位には、アウタ側の部位の符号に’(ダッシュ)を付した符号を付し、重複する説明は省略する。
【0032】
次に、図3、図4、図7〜図10を用いて、アウタ側、インナ側に設けられる衝突ストッパの説明を行なう。尚、インナ側の衝突ストッパは、アウタ側の衝突ストッパと対称の構造を有しているので、アウタ側の衝突ストッパ51を用いて説明し、インナ側におけるアウタ側と対応する部位には、アウタ側の部位の符号に’(ダッシュ)を付した符号を付し、重複する説明は省略する。
【0033】
シートトラック5のアッパレール3(フロアF側)には、ピン53を用いてストッパリンク55が回転可能に取り付けられている。このストッパリンク55の回転端部側には、側方に突出した突起として、フロアFと略平行に延びるピン57が設けられている。一方、リア支持リンク23には、長溝59が形成されている。この長溝59は、ストッパリンク55のピン57の移動軌跡と交差する方向に延びている。長溝59の対向する2つの内壁側面のうち、一方の内壁側面である第1内壁側面63には、ストッパリンク55のピン57が係合すると、リア支持リンク23の一方の方向(本形態例では、シート本体11が下降する方向)への回転を禁止する凹凸面61が形成されている。
【0034】
凹凸面61には、リア支持リンク23及びストッパリンク55の各回転中心を内側に囲むようにして、複数の凹凸が円弧状(本形態例では、正確な円弧ではない)に並ぶように配列されている。この円弧状パターンは、想定する方向の衝突荷重(本形態例では、後突)を受けて回転する際に、凹凸面61がピン57に接近するようなパターンになっている。
【0035】
そして、シートが想定する方向の衝突荷重を受けると、ストッパリンク55が、ピン57が凹凸面61に接近するように回転し、凹凸面61上の近傍の凹面と係合するようになっている。この凹凸面61上の凹面の形状は、ピン57の半径よりも大径の円弧で形成されているが、正確な円弧である必要はないし、円弧に限る必要もない。要は、凹凸面61とピン57とが接触して押圧し合っている状態において、ストッパリンク55が、接触面から図11(c)における時計方向の回転モーメントを受けるか、或いは、いずれの方向の回転モーメントも受けずに圧縮されている状態になるような接触角が得られる形状であればよい。
【0036】
長溝59の対向する2つの内壁側面のうち、他方の内壁側面である第2内壁側面65は、平坦な円弧状面となっている。この第2内壁側面65は、ストッパリンク55のピン57が当接すると、ストッパリンク55のピン57が凹凸面61と係合しない位置で、ストッパリンク55のピン58が凹凸面61からそれ以上離反することを禁止するストッパとして機能する。
【0037】
そして、中間部がストッパリンク55のピン53を巻回し、一方の端部がシートトラック5のアッパレール3に係止され、他方の端部がストッパリンク55に係止されたスプリング(付勢手段)67により、ストッパリンク55は、ピン57が長溝59の第2内壁側面65に当接する方向に付勢されている。
【0038】
又、図9に示すように、ピン25には、両端が開放面となった筒状の伝達ロッド71の一方の開放面が回転可能に嵌合している。そして、伝達ロッド71の他方の側の開放面が、インナ側のシートトラック5’のピン25’に回転可能に嵌合している。更に、伝達ロッド71の一方の端部は、アウタ側のシートトラック5のリア支持リンク23と固着されている。同様に、伝達ロッド71の他方の端部は、インナ側のシートトラック5’のリア支持リンク23’にも固着されている。従って、アウタ側のリア支持リンク23の動きは伝達ロッド71を介してインナ側のリア支持リンク23’に伝達されるようになっている。
【0039】
更に、図7に示すように、ピン21の首部は、大径部21aと周面におねじが形成された小径部21bとからなっている。ピン21の大径部21aが、リア支持リンク23に形成された穴23aに挿通している。また、ピン21の小径部21bはアッパレール3に形成された穴3aを挿通し、ナット22と螺合することにより、リア支持リンク23はアッパレール3に回転可能に取り付けられている。
【0040】
又、図8に示すように、ピン53の首部は、大径部53aと、中径部53bと、周面におねじが形成された小径部53cとからなっている。ピン53の中径部53bがストッパリンク55に形成された穴55aを挿通している。また、ピン53の小径部53cがアッパレール3の穴3bを挿通し、ナット54と螺合することにより、ストッパリンク55はロアレール3に回転可能に取り付けられている。更に、ピン53の大径部53aには、スプリング67の中間部が巻回されている。
【0041】
ここで、図11を用いて衝突ストッパ51(衝突ストッパ51’)の作動を説明する。
図11(a)に示すように、通常は、スプリング(付勢手段)67の付勢力(矢印M方向)により、ストッパリンク55のピン57はリア支持リンク23の長溝59の第2内壁側面65に当接している。よって、リア支持リンク23が回転してもストッパリンク55のピン57は、リア支持リンク23の長溝59の平坦な第2内壁側面65上を摺接し、リア支持リンク23の回転を阻害することはない。
【0042】
車両が衝突(本形態例では、後突)すると、シート本体11が後方に沈み込もうとする。その際、図11(b)に示すように、慣性によりリア支持リンク23には、モーメントM2が発生する。一方、ストッパリンク55にはモーメントM1が発生し、スプリング67の付勢力に抗して、ストッパリンク55は回転する。長溝59はストッパリンク55のピン53の移動軌跡と交差する方向に延びているので、ストッパリンク55のピン57が長溝59の第1内壁側面63に当接する。
【0043】
そして、図11(c)に示すように、ストッパリンク55のピン57が長溝59の第1内壁側面63の凹凸面61と係合する。ここでの凹凸面61とピン57との接触状態について説明すると、ピン57は凹凸面61上の近傍の凹面に接触して押圧し合っている状態にあり、少なくとも、ストッパリンク55は、接触面から、図11(c)における時計方向の回転モーメントを受けるか、いずれの方向の回転モーメントを受けない状態にある(凹凸面61の凹面がこのような接触角が得られる形状になっている)。よって、リア支持リンク23のシート本体11(シートクッション)が後方に沈み込もうとする方向の回転が禁止される。
【0044】
このように、本形態例では、ピン57と凹凸面61との係合により、リア支持リンク23の回転を禁止すると共に、ピン57の退避位置での位置決めをピン57と第2内壁側面65との当接により行うので位置決め精度を高くでき、ピン57の凹凸面61からの退避距離を短くできる。よって、車両の衝突時に、シートクッション7の移動量を小さくできる。
【0045】
更に、上記形態例によれば、凹凸面61には、リア支持リンク23及びストッパリンク55の各回転中心を内側に囲むようにして、複数の凹凸が円弧状に並ぶように配列され、この円弧状パターンは、想定する方向の衝突荷重を受けて回転する際に、凹凸面61がピン57に接近するようなパターンになっている。そして、車両の衝突時には、ストッパリンク55は、ピン57が凹凸面61に接近するように回転し、凹凸面61上の近傍の凹面と係合するようになっている。このため、ピン57と凹凸面61との係合を一層速やかに行うことができ、車両の衝突時に、シートクッション7の移動量を更に小さくできる。
【0046】
又、長溝59の第2内壁側面65は、ストッパリンク55のピン57が当接すると、ストッパリンク55のピン57が凹凸面61と係合しない位置で、ストッパリンク55のピン58が凹凸面61からそれ以上離反することを禁止するストッパとして機能するので、ストッパを別に設ける必要がなくなり、部品点数の削減となる。
【0047】
尚、上記形態例では、アウタ側の衝突ストッパ51と、インナ側の衝突ストッパ51’とを設けたが、駆動機構部31が設けられないインナ側の衝突ストッパ51’は必須であるが、アウタ側の衝突ストッパ51はなくてもよい。
【0048】
又、上記形態例では、後突に対する衝突ストッパ51、衝突ストッパ51’で説明したが、前突に対するストッパにも適用可能である。更に、リア支持リンク23,23’に衝突ストッパ51,51’を設けたが、フロント支持リンク側に設けてもよい。
【0049】
又、上記形態例では、長溝59,59’を設けその第1内壁側面63,63’に凹凸面61,61’を形成し、第2内壁側面65,65’をストッパとしたが、このような長溝59,59’を設けずに、リア支持リンク23,23’に凹凸面を有する部材を取り付け、シートトラック5,5’のアッパレール3,3’又はリア支持リンク23,23’にストッパを別に設けてもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロアに対するシートクッションの高さを調整する高さ調整機構を備えたシートであって、上記高さ調整機構が、下部がフロア側に取り付けられ上部がシートクッション側に取り付けられた支持リンクにより、シートクッションを支え、この支持リンクの垂直面内での前後方向の傾動により、シートクッションの高さを調整するように構成されたシートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートのアウタ側(窓側)及びインナ側(車室内側)の前部及び後部には、それぞれ、シートクッションを支えるフロント支持リンク及びリア支持リンクが設けられており、これら支持リンクは高さ調整機構の一部を構成している。
【0003】
フロント支持リンク及びリア支持リンクは、フロア側部材(リンク)とシート側部材(リンク)との間に連結され、フロア側部材及びシートクッション側部材と共に四節回転連鎖(リンク機構)を構成している。
【0004】
又、アウタ側、インナ側のうちのいずれか一方の側(以下の説明では、アウタ側とする)には、リア支持リンク(フロント支持リンクでも可)を傾動させる駆動機構部が組み込まれている。そして、アウタ側のリア支持リンクの回転は、伝達ロッドを介してインナ側のリンク機構へ伝達され、両側のリンク機構の同期をとるようになっている。
【0005】
即ち、シートのアウタ側のリンク機構は、駆動機構部によって直接駆動され、インナ側のリンク機構は、伝達ロッドを介してアウタ側のリンク機構に追従して動くようになっている。
【0006】
車両の衝突時に、シートに作用した衝突荷重(慣性力)は、シートクッション側から、アウタ側とインナ側のリンク機構のフロント支持リンク及びリア支持リンクに伝達される。
【0007】
この時、駆動機構部が組み込まれたアウタ側のリンク機構では、駆動機構部が衝突荷重を支えるのでフロント支持リンク及びリア支持リンクの回転を阻止できるが、インナ側のリンク機構では、衝突荷重が伝達ロッドを捩じる力として作用するので、伝達ロッドが捩れ、その分、フロント支持リンク及びリア支持リンクが回転することになる。
【0008】
このため、車両が前方へ衝突(前突)し、大きな衝突荷重がシートに作用した場合に、インナ側のリンク機構では、フロント支持リンク及びリア支持リンクが前方に回転し、シートクッションが前方へせり出すことになる。逆に、後方で衝突した場合(後突)には、シートクッションが後方に沈み込むことになる。
【0009】
このようなシートクッションの移動を防止するために、インナ側のリンク機構に衝突ストッパを設けることが知られている。図1及び図2に示した衝突ストッパは、シートクッション側に設けられた複数の歯が形成された歯付セグメント(被噛合部材)101,102と、支持リンク103に回転可能に設けられ、歯付セグメント101,102の歯に噛合可能な歯を有する爪レバー(噛合部材)104と、支持リンク103側に形成され、爪レバー104に係合し、爪レバー104の歯が歯付セグメント101,102の歯と噛合しない位置でそれ以上の爪レバー104の歯付セグメント101,102から離れる方向の回転を禁止するロック穴105と、爪レバー104をロック穴105方向に付勢するロックばね106とを有している。
【0010】
そして、シートに衝突荷重が作用すると、慣性により爪レバー104は、ロックばね106の付勢力に抗して回転し、歯付セグメント101,102と噛合する。この爪レバー104と歯付セグメント101,102の噛合により、支持リンク103の回転が禁止され、シートクッションの移動も禁止される。
【特許文献1】特表2003−513850号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のシートでは、衝突荷重を受けると、噛合部材の歯が被噛合部材の歯に噛合することにより、シートクッションの移動を禁止するようにしている。
この構成において、シートに衝突荷重が作用しない状態では、支持リンクの回転を阻害しないように、噛合部材の歯は被噛合部材の複数の歯から完全に離れていなければならない。
【0012】
噛合部材と被噛合部材とが歯と歯で噛み合う従来構成の場合、所定の歯の高さが必要になるので、シートに衝突荷重が作用しない状態での噛合部材の被噛合部材からの退避距離が大きい。加えて、従来構成では、噛合部材の退避位置での位置決め精度を高くとれないため、その分、噛合部材の被噛合部材からの退避距離を大きく設定する必要がある。
【0013】
よって、車両の衝突時に、噛合部材の歯が被噛合部材の歯に完全に噛合するまでに時間がかかり、シートクッションの移動量が大きくなるという問題点がある。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、車両の衝突時に、シートクッションの移動量を小さくできるシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する請求項1に係る発明は、フロアに対するシートクッションの高さを調整する高さ調整機構を備えたシートであって、下部がフロア側に取り付けられ、上部がシートクッション側に取り付けられることにより、前記シートクッションを支え、垂直面内での前後方向の傾動により、前記シートクッションの高さを調整する支持リンクと、回転端部が垂直面内で前後方向に回転できるように、基端部が前記フロア側に取り付けられ、前記回転端部側には、側方に突出した突起が設けられたストッパリンクと、前記突起の移動軌跡と交差する方向に延びるように、前記支持リンク側に設けられ、想定する方向の衝突荷重を受けて前記突起と係合すると、前記突起と協働して前記支持リンクのそれ以上の回転を禁止する凹凸面と、前記突起が前記凹凸面と係合しない位置にて前記突起に当接し、前記突起が前記凹凸面からそれ以上離れることを禁止するストッパと、前記突起が前記ストッパに当接する方向に前記ストッパリンクを付勢する付勢手段と、を有するシートである。
【0015】
通常は、付勢手段の付勢力により、ストッパリンクの突起はストッパに当接している。よって、支持リンクの回転を阻害することはない。シートに想定する方向の衝突荷重が作用すると、凹凸面は、ストッパリンクの突起と係合し、この突起と協働して支持リンクのそれ以上の回転を禁止する。
【0016】
請求項2に係る発明は、請求項1記載のシートにおいて、上記凹凸面には、支持リンク及びストッパリンクの各回転中心を内側に囲むように凹凸が円弧状に配列され、想定する方向の衝突荷重を受けると、ストッパリンクは、突起が凹凸面に接近するように回転し、凹凸面上の近傍の凹面と係合することを特徴とするものである。
【0017】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載のシートにおいて、上記凹凸面には、支持リンク及びストッパリンクの各回転中心を内側に囲むように凹凸が円弧状に配列され、且つ、この円弧状パターンは、想定する方向の衝突荷重を受けて回転する際に、凹凸面が突起に接近するようなパターンになっていることを特徴とするものである。
【0018】
請求項4に係る発明は、請求項1又は2又は3記載のシートにおいて、上記支持リンクに、突起の移動軌跡と交差する方向に伸びる長溝を形成し、この長溝の対向する2つの内壁側面のうち、一方の内壁側面を凹凸面とし、他方の内壁側面をストッパとしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に係る発明によれば、突起と凹凸面との係合により、リンクの回転を禁止すると共に、突起の退避位置での位置決めを突起とストッパとの当接により行うので位置決め精度を高くでき、突起の凹凸面からの退避距離を短くできる。よって、車両の衝突時に、シートクッションの移動量を小さくできるシートを実現できる。
【0020】
請求項2及び請求項3に係る発明によれば、突起と凹凸面との係合を一層速やかに行うことができ、車両の衝突時に、シートクッションの移動量を更に小さくできる。
請求項4に係る発明によれば、凹凸面やストッパを支持リンクと別に設ける必要がなくなり、部品点数を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】従来のシートの用いられた衝突ストッパの主要構成図である。
【図2】図1の衝突ストッパを裏側から見た主要構成図である。
【図3】形態例の発明部分を示す図で、図5においてロアアームを取り除いたリア支持リンク付近の拡大図である。
【図4】形態例の発明部分を示す図で、図6においてロアアームを取り除いたリア支持リンク付近の拡大図である。
【図5】形態例のアウタ側のシート側面を示す図である。
【図6】形態例のインナ側のシート側面を示す図である。
【図7】図3の切断線VII−VIIでの断面図である。
【図8】図3の切断線VIII−VIIIでの断面図である。
【図9】図3の切断線IX−IXでの断面図である。
【図10】図3の切断線X−Xでの断面図である。
【図11】衝突ストッパの作動を説明する図である。
【符号の説明】
【0022】
23 リア支持リンク(支持リンク)
51 衝突ストッパ
55 ストッパリンク
57 ピン(突起)
59 長溝
61 凹凸面
63 第1内壁側面
65 第2内壁側面(ストッパ)
67 スプリング(付勢手段)
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。最初に、図5を用いて、シートの全体構成を説明する。
本形態例のシートは、大別すると、シート本体11と、シート本体11のフロアFからの高さ調整を行う高さ調整機構12とで構成されている。このシートは、シートの前後方向の位置調整を行うシートトラック5上に取り付けられている。シート本体11は、着座者の臀部を支持するシートクッション7と、着座者の背部を支持するシートバック9とからなっている。
【0024】
シートトラック5は、フロアFに設けられるロアレール1と、このロアレール1に移動可能に係合するアッパレール3と、アッパレール3の移動を禁止するロック機構(図示せず)とからなっている。そして、ロック機構のロックを解除してアッパレール3をロアレール1に対して移動させることにより、シートを前後方向の所望の位置に調整できるようになっている。
【0025】
次に、高さ調整機構12の説明を行う。シートクッション7には、シートクッション7のフレームであるロアアーム13が設けられている。シートトラック5のアッパレール3の前部には、ピン15を用いてフロント支持リンク17の一方の端部側が回転可能に取り付けられている。このフロント支持リンク17の他方の端部側は、ピン19を用いてロアアーム13の前部に回転可能に取り付けられている。
【0026】
シートトラック5のアッパレール3の後部には、ピン21を用いてリア支持リンク23の一方の端部側が回転可能に取り付けられている。このリア支持リンク23の中間部は、ピン25を用いてロアアーム13の後部に回転可能に取り付けられている。従って、シートトラック5のアッパレール3と、フロント支持リンク17と、シートクッション7のロアアーム13と、リア支持リンク23とで、四節回転連鎖が形成され、フロント支持リンク17とリア支持リンク23のうちのいずれかの支持リンクを前後方向に傾動させることにより、ロアアーム13即ちシート本体11がフロアFに対して昇降することとなる。本形態例では、駆動機構部31を用いてリア支持リンク23を回転させるようにしている。
【0027】
ここで図3、図7〜図10を用いて駆動機構部31の説明を行う。ロアアーム13には、図示しない駆動手段により回転駆動されるピニオン33が設けられている。ピニオン33の回転駆動は、手動、電動どちらでもよい。手動の場合は、ピニオン33と操作部との間にブレーキ機構を設ける。
【0028】
このブレーキ機構は、操作部からのピニオン33の回転駆動を許可し、逆に、セクタギヤ39側からピニオン33に加わる力でピニオン33が回転することを禁止するものであり、例えば、手動式のウインドレギュレータで広く用いられているものである。一方、ピニオン33の回転駆動を電動で行う構成の場合は、例えば、ウォームとウォームホイールとからなる大きな減速比を有する減速機構を介してモータでピニオン33を回転駆動すればよい。
【0029】
セクタギア39はピン35を用いて回転可能に設けられ、ピニオン33に歯部37で噛合している。セクタギア39には、ピン41を用いて伝達リンク43の一方の端部が回転可能に取り付けられている。ピン41の位置は、セクタギア39の回転中心であるピン35と異なる位置である。この伝達リンク43の他方の端部はピン45を用いてリア支持リンク23の他方の端部側に回転可能に取り付けられている。
【0030】
駆動機構部31のピニオン33を回転させると、セクタギア39がピン35を中心に回転する。セクタギア39の回転は、伝達リンク43を介してリア支持リンク23に伝達され、リア支持リンク23はピン21を中心に回転する。このリア支持リンク23の回転により、ロアアーム13(シート本体11)がフロアFに対して昇降する。
【0031】
次に、図6を用いて、シートのインナ側を説明する。アウタ側とインナ側との相違点は、アウタ側には高さ調整機構を駆動する駆動機構部があり、インナ側には駆動機構部がない点である。そして、他の部分は対称の構造を有しているので、インナ側におけるアウタ側と対応する部位には、アウタ側の部位の符号に’(ダッシュ)を付した符号を付し、重複する説明は省略する。
【0032】
次に、図3、図4、図7〜図10を用いて、アウタ側、インナ側に設けられる衝突ストッパの説明を行なう。尚、インナ側の衝突ストッパは、アウタ側の衝突ストッパと対称の構造を有しているので、アウタ側の衝突ストッパ51を用いて説明し、インナ側におけるアウタ側と対応する部位には、アウタ側の部位の符号に’(ダッシュ)を付した符号を付し、重複する説明は省略する。
【0033】
シートトラック5のアッパレール3(フロアF側)には、ピン53を用いてストッパリンク55が回転可能に取り付けられている。このストッパリンク55の回転端部側には、側方に突出した突起として、フロアFと略平行に延びるピン57が設けられている。一方、リア支持リンク23には、長溝59が形成されている。この長溝59は、ストッパリンク55のピン57の移動軌跡と交差する方向に延びている。長溝59の対向する2つの内壁側面のうち、一方の内壁側面である第1内壁側面63には、ストッパリンク55のピン57が係合すると、リア支持リンク23の一方の方向(本形態例では、シート本体11が下降する方向)への回転を禁止する凹凸面61が形成されている。
【0034】
凹凸面61には、リア支持リンク23及びストッパリンク55の各回転中心を内側に囲むようにして、複数の凹凸が円弧状(本形態例では、正確な円弧ではない)に並ぶように配列されている。この円弧状パターンは、想定する方向の衝突荷重(本形態例では、後突)を受けて回転する際に、凹凸面61がピン57に接近するようなパターンになっている。
【0035】
そして、シートが想定する方向の衝突荷重を受けると、ストッパリンク55が、ピン57が凹凸面61に接近するように回転し、凹凸面61上の近傍の凹面と係合するようになっている。この凹凸面61上の凹面の形状は、ピン57の半径よりも大径の円弧で形成されているが、正確な円弧である必要はないし、円弧に限る必要もない。要は、凹凸面61とピン57とが接触して押圧し合っている状態において、ストッパリンク55が、接触面から図11(c)における時計方向の回転モーメントを受けるか、或いは、いずれの方向の回転モーメントも受けずに圧縮されている状態になるような接触角が得られる形状であればよい。
【0036】
長溝59の対向する2つの内壁側面のうち、他方の内壁側面である第2内壁側面65は、平坦な円弧状面となっている。この第2内壁側面65は、ストッパリンク55のピン57が当接すると、ストッパリンク55のピン57が凹凸面61と係合しない位置で、ストッパリンク55のピン58が凹凸面61からそれ以上離反することを禁止するストッパとして機能する。
【0037】
そして、中間部がストッパリンク55のピン53を巻回し、一方の端部がシートトラック5のアッパレール3に係止され、他方の端部がストッパリンク55に係止されたスプリング(付勢手段)67により、ストッパリンク55は、ピン57が長溝59の第2内壁側面65に当接する方向に付勢されている。
【0038】
又、図9に示すように、ピン25には、両端が開放面となった筒状の伝達ロッド71の一方の開放面が回転可能に嵌合している。そして、伝達ロッド71の他方の側の開放面が、インナ側のシートトラック5’のピン25’に回転可能に嵌合している。更に、伝達ロッド71の一方の端部は、アウタ側のシートトラック5のリア支持リンク23と固着されている。同様に、伝達ロッド71の他方の端部は、インナ側のシートトラック5’のリア支持リンク23’にも固着されている。従って、アウタ側のリア支持リンク23の動きは伝達ロッド71を介してインナ側のリア支持リンク23’に伝達されるようになっている。
【0039】
更に、図7に示すように、ピン21の首部は、大径部21aと周面におねじが形成された小径部21bとからなっている。ピン21の大径部21aが、リア支持リンク23に形成された穴23aに挿通している。また、ピン21の小径部21bはアッパレール3に形成された穴3aを挿通し、ナット22と螺合することにより、リア支持リンク23はアッパレール3に回転可能に取り付けられている。
【0040】
又、図8に示すように、ピン53の首部は、大径部53aと、中径部53bと、周面におねじが形成された小径部53cとからなっている。ピン53の中径部53bがストッパリンク55に形成された穴55aを挿通している。また、ピン53の小径部53cがアッパレール3の穴3bを挿通し、ナット54と螺合することにより、ストッパリンク55はロアレール3に回転可能に取り付けられている。更に、ピン53の大径部53aには、スプリング67の中間部が巻回されている。
【0041】
ここで、図11を用いて衝突ストッパ51(衝突ストッパ51’)の作動を説明する。
図11(a)に示すように、通常は、スプリング(付勢手段)67の付勢力(矢印M方向)により、ストッパリンク55のピン57はリア支持リンク23の長溝59の第2内壁側面65に当接している。よって、リア支持リンク23が回転してもストッパリンク55のピン57は、リア支持リンク23の長溝59の平坦な第2内壁側面65上を摺接し、リア支持リンク23の回転を阻害することはない。
【0042】
車両が衝突(本形態例では、後突)すると、シート本体11が後方に沈み込もうとする。その際、図11(b)に示すように、慣性によりリア支持リンク23には、モーメントM2が発生する。一方、ストッパリンク55にはモーメントM1が発生し、スプリング67の付勢力に抗して、ストッパリンク55は回転する。長溝59はストッパリンク55のピン53の移動軌跡と交差する方向に延びているので、ストッパリンク55のピン57が長溝59の第1内壁側面63に当接する。
【0043】
そして、図11(c)に示すように、ストッパリンク55のピン57が長溝59の第1内壁側面63の凹凸面61と係合する。ここでの凹凸面61とピン57との接触状態について説明すると、ピン57は凹凸面61上の近傍の凹面に接触して押圧し合っている状態にあり、少なくとも、ストッパリンク55は、接触面から、図11(c)における時計方向の回転モーメントを受けるか、いずれの方向の回転モーメントを受けない状態にある(凹凸面61の凹面がこのような接触角が得られる形状になっている)。よって、リア支持リンク23のシート本体11(シートクッション)が後方に沈み込もうとする方向の回転が禁止される。
【0044】
このように、本形態例では、ピン57と凹凸面61との係合により、リア支持リンク23の回転を禁止すると共に、ピン57の退避位置での位置決めをピン57と第2内壁側面65との当接により行うので位置決め精度を高くでき、ピン57の凹凸面61からの退避距離を短くできる。よって、車両の衝突時に、シートクッション7の移動量を小さくできる。
【0045】
更に、上記形態例によれば、凹凸面61には、リア支持リンク23及びストッパリンク55の各回転中心を内側に囲むようにして、複数の凹凸が円弧状に並ぶように配列され、この円弧状パターンは、想定する方向の衝突荷重を受けて回転する際に、凹凸面61がピン57に接近するようなパターンになっている。そして、車両の衝突時には、ストッパリンク55は、ピン57が凹凸面61に接近するように回転し、凹凸面61上の近傍の凹面と係合するようになっている。このため、ピン57と凹凸面61との係合を一層速やかに行うことができ、車両の衝突時に、シートクッション7の移動量を更に小さくできる。
【0046】
又、長溝59の第2内壁側面65は、ストッパリンク55のピン57が当接すると、ストッパリンク55のピン57が凹凸面61と係合しない位置で、ストッパリンク55のピン58が凹凸面61からそれ以上離反することを禁止するストッパとして機能するので、ストッパを別に設ける必要がなくなり、部品点数の削減となる。
【0047】
尚、上記形態例では、アウタ側の衝突ストッパ51と、インナ側の衝突ストッパ51’とを設けたが、駆動機構部31が設けられないインナ側の衝突ストッパ51’は必須であるが、アウタ側の衝突ストッパ51はなくてもよい。
【0048】
又、上記形態例では、後突に対する衝突ストッパ51、衝突ストッパ51’で説明したが、前突に対するストッパにも適用可能である。更に、リア支持リンク23,23’に衝突ストッパ51,51’を設けたが、フロント支持リンク側に設けてもよい。
【0049】
又、上記形態例では、長溝59,59’を設けその第1内壁側面63,63’に凹凸面61,61’を形成し、第2内壁側面65,65’をストッパとしたが、このような長溝59,59’を設けずに、リア支持リンク23,23’に凹凸面を有する部材を取り付け、シートトラック5,5’のアッパレール3,3’又はリア支持リンク23,23’にストッパを別に設けてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアに対するシートクッションの高さを調整する高さ調整機構を備えたシートであって、下部がフロア側に取り付けられ、上部がシートクッション側に取り付けられることにより、前記シートクッションを支え、垂直面内での前後方向の傾動により、前記シートクッションの高さを調整する支持リンクと、回転端部が垂直面内で前後方向に回転できるように、基端部が前記フロア側に取り付けられ、前記回転端部側には、側方に突出した突起が設けられたストッパリンクと、前記突起の移動軌跡と交差する方向に延びるように、前記支持リンク側に設けられ、想定する方向の衝突荷重を受けて前記突起と係合すると、前記突起と協働して前記支持リンクのそれ以上の回転を禁止する凹凸面と、前記突起が前記凹凸面と係合しない位置にて前記突起に当接し、前記突起が前記凹凸面からそれ以上離れることを禁止するストッパと、前記突起が前記ストッパに当接する方向に前記ストッパリンクを付勢する付勢手段と、を有するシート。
【請求項2】
前記凹凸面には、前記支持リンク及び前記ストッパリンクの各回転中心を内側に囲むように凹凸が円弧状に配列され、想定する方向の衝突荷重を受けると、前記ストッパリンクは、前記突起が前記凹凸面に接近するように回転し、前記凹凸面上の近傍の凹面と係合することを特徴とする請求項1記載のシート。
【請求項3】
前記凹凸面には、前記支持リンク及び前記ストッパリンクの各回転中心を内側に囲むように凹凸が円弧状に配列され、且つ、この円弧状パターンは、想定する方向の衝突荷重を受けて回転する際に、前記凹凸面が前記突起に接近するようなパターンになっていることを特徴とする請求項1又は2記載のシート。
【請求項4】
前記支持リンクに、前記ピンの移動軌跡と交差する方向に伸びる長溝を形成し、この長溝の対向する2つの内壁側面のうち、一方の内壁側面は前記凹凸面とし、他方の内壁側面を前記ストッパとしたことを特徴とする請求項1又は2又は3記載のシート。
【請求項1】
フロアに対するシートクッションの高さを調整する高さ調整機構を備えたシートであって、下部がフロア側に取り付けられ、上部がシートクッション側に取り付けられることにより、前記シートクッションを支え、垂直面内での前後方向の傾動により、前記シートクッションの高さを調整する支持リンクと、回転端部が垂直面内で前後方向に回転できるように、基端部が前記フロア側に取り付けられ、前記回転端部側には、側方に突出した突起が設けられたストッパリンクと、前記突起の移動軌跡と交差する方向に延びるように、前記支持リンク側に設けられ、想定する方向の衝突荷重を受けて前記突起と係合すると、前記突起と協働して前記支持リンクのそれ以上の回転を禁止する凹凸面と、前記突起が前記凹凸面と係合しない位置にて前記突起に当接し、前記突起が前記凹凸面からそれ以上離れることを禁止するストッパと、前記突起が前記ストッパに当接する方向に前記ストッパリンクを付勢する付勢手段と、を有するシート。
【請求項2】
前記凹凸面には、前記支持リンク及び前記ストッパリンクの各回転中心を内側に囲むように凹凸が円弧状に配列され、想定する方向の衝突荷重を受けると、前記ストッパリンクは、前記突起が前記凹凸面に接近するように回転し、前記凹凸面上の近傍の凹面と係合することを特徴とする請求項1記載のシート。
【請求項3】
前記凹凸面には、前記支持リンク及び前記ストッパリンクの各回転中心を内側に囲むように凹凸が円弧状に配列され、且つ、この円弧状パターンは、想定する方向の衝突荷重を受けて回転する際に、前記凹凸面が前記突起に接近するようなパターンになっていることを特徴とする請求項1又は2記載のシート。
【請求項4】
前記支持リンクに、前記ピンの移動軌跡と交差する方向に伸びる長溝を形成し、この長溝の対向する2つの内壁側面のうち、一方の内壁側面は前記凹凸面とし、他方の内壁側面を前記ストッパとしたことを特徴とする請求項1又は2又は3記載のシート。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【国際公開番号】WO2005/042298
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515140(P2005−515140)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015986
【国際出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/015986
【国際出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(590001164)シロキ工業株式会社 (610)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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