説明

シーリング剤充填方法

【課題】環境温度の変動により、シーリング剤容器の内側に貼り付けた封止材が剥がれないように、シーリング剤容器にシーリング剤を充填する方法を提供すること。
【解決手段】シーリング剤容器18の開口部19から、吐出口29の内側へ封止材30を貼り、吐出口29を閉塞して、開口部19から標準温度より低い液温のシーリング剤32を、シーリング剤容器18内へ充填した後、開口部19を密封する。シーリング剤容器18内のシーリング剤32の液温は、シーリング剤容器18内に密封したときよりも上昇して、シーリング剤の体積が膨張する。これにより、シーリング剤容器18の内圧が上昇し、吐出口29に貼り付けられた封止材30のシーリング剤容器18との接着部分には、シーリング剤容器18に押し付ける方向に力が掛かるので、封止材30が吐出口29から剥がれない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パンクした空気入りタイヤ内に注入されパンクを補修する液状のシーリング剤をシーリング剤容器に充填するシーリング剤充填方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」という。)がパンクした際に、タイヤ及びホイールを交換することなく、タイヤをシーリング剤により補修して指定圧まで内圧をポンプアップするシーリング・ポンプアップ装置が普及している。この種のシーリング・ポンプアップ装置としては、例えば、特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
特許文献1に示されたシーリング・ポンプアップ装置は、図7に示すように、シーリング剤100が収容されたシーリング剤容器としてのボトル102を備えている。このボトル102の吐出口104から、40℃〜90℃のシーリング剤100を充填し、吐出口104の外側にフィルム状の封止材106を熱溶着等によって貼り付けて、ボトル102内を密封する。
【0004】
特許文献1では、封止材106は吐出口104の外側に貼り付けられているため、ボトル102が置かれた環境温度によって、シーリング剤100の液温が下がって体積が減少すると、ボトル102の内圧が低下し、ボトル102の内側に向かって封止材106が引っ張られる。このとき、封止材106は吐出口104に密着される方向に力を受けるので、簡単に剥がれない。
【0005】
一方、シーリング剤の充填速度を上げるため、ボトルの底部に開口部を設け、シーリング剤容器の吐出口の内側に封止材を貼り付け、40℃〜90℃のシーリング剤をボトル内に充填した後、開口部を蓋で閉塞する方法も考えられる。しかし、この構成では、シーリング剤の液温が下がると、ボトル内の内圧が低下し、封止材がシーリング剤容器内へ引っ張られ、吐出口から剥がれてしまう恐れがある。
【特許文献1】特願2005−272926号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記事実を考慮し、環境温度の変動により、シーリング剤容器の内側に貼り付けた封止材が剥がれないように、シーリング剤容器にシーリング剤を充填する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、パンクした空気入りタイヤ内に注入されパンクを補修する液状のシーリング剤をシーリング剤容器に充填するシーリング剤充填方法において、前記シーリング剤容器に形成された開口部を通じて、該シーリング剤容器の吐出口の内側へ封止材を貼り前記吐出口を閉塞する工程と、前記開口部から前記シーリング剤容器内へ、標準温度より低い液温のシーリング剤を充填する工程と、前記開口部を密封する工程と、を有することを特徴としている。
【0008】
請求項1に記載のシーリング剤充填方法によれば、まず、シーリング剤容器に形成された開口部から、吐出口の内側へ封止材を貼り、吐出口を閉塞する。そして、開口部から標準温度(例えば、20℃)より低い液温のシーリング剤を、シーリング剤容器内へ充填した後、開口部を密封する。
【0009】
これにより、シーリング剤容器が標準温度よりも高い環境に保管されたとき、シーリング剤容器内のシーリング剤は、シーリング剤容器内に密封したときよりも上昇して、体積が膨張する。したがって、シーリング剤容器の内圧が上昇し、吐出口に貼り付けられた封止材のシーリング剤容器との接着部分には、吐出口に押し付けられる方向に力が掛かるので、封止材が吐出口から剥がれない。
【0010】
また、シーリング剤容器が標準温度よりも低いところに保管されても、予め標準温度よりも低くされた液温のシーリング剤が充填されているので、シーリング剤の体積変化が大きくならない。これにより、封止材が吐出口から剥がれる心配がない。
【0011】
請求項2に記載の発明は、パンクした空気入りタイヤ内に注入されパンクを補修する液状のシーリング剤をシーリング剤容器に充填するシーリング剤充填方法において、前記シーリング剤容器に形成された開口部を通じて、該シーリング剤容器の吐出口の内側へ封止材を貼り前記吐出口を閉塞する工程と、前記開口部から前記シーリング剤容器内へ、シーリング剤を充填する工程と、前記シーリング剤を標準温度よりも低い液温にする工程と、前記開口部を密封する工程と、を有することを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載のシーリング剤充填方法によれば、まず、シーリング剤容器に形成された開口部から、吐出口の内側へ封止材を貼り、吐出口を閉塞する。そして、開口部からシーリング剤をシーリング剤容器内へ充填した後、シーリング剤の液温を標準温度よりも低くし、開口部を密封する。
【0013】
これにより、シーリング剤容器が標準温度よりも高い環境に保管されたとき、シーリング剤容器内のシーリング剤は、シーリング剤容器内に密封したときよりも上昇して、体積が膨張する。したがって、シーリング剤容器の内圧が上昇し、吐出口に貼り付けられた封止材のシーリング剤容器との接着部分には、吐出口に押し付けられる方向に力が掛かるので、封止材が吐出口から剥がれない。
【0014】
請求項3に記載の発明は、パンクした空気入りタイヤ内に注入されパンクを補修する液状のシーリング剤をシーリング剤容器に充填するシーリング剤充填方法において、前記シーリング剤容器に形成された開口部を通じて、該シーリング剤容器の吐出口の内側へ封止材を貼り前記吐出口を閉塞する工程と、前記シーリング剤容器を標準温度よりも低い温度に冷却する工程と、前記開口部から前記シーリング剤容器内へ、シーリング剤を充填する工程と、前記開口部を密封する工程と、を有することを特徴としている。
【0015】
請求項3に記載のシーリング剤充填方法によれば、まず、シーリング剤容器を標準温度よりも低い温度に冷却する。そして、シーリング剤容器に形成された開口部から、吐出口の内側へ封止材を貼って吐出口を閉塞し、開口部からシーリング剤を、シーリング剤容器内へ充填した後、開口部を密封する。
【0016】
これにより、シーリング剤容器に充填されたシーリング剤が、シーリング剤容器によって冷やされて、標準温度よりも低くなる。そして、シーリング剤容器が標準温度よりも高い環境に保管されたとき、シーリング剤容器内のシーリング剤は、シーリング剤容器内に密封したときよりも上昇して、体積が膨張する。したがって、シーリング剤容器の内圧が上昇し、吐出口に貼り付けられた封止材のシーリング剤容器との接着部分には、吐出口に押し付けられる方向に力が掛かるので、封止材が吐出口から剥がれない。
【0017】
請求項4に記載の発明は、充填時又は充填後の前記シーリング剤の液温又は、前記シーリング剤容器の冷却温度が、−10℃〜10℃であることを特徴としている。
【0018】
請求項4に記載のシーリング剤充填方法によれば、シーリング剤の液温を−10℃よりも低くしてシーリング剤容器に充填、または、シーリング剤容器に充填されたシーリング剤の液温を−10℃よりも冷却する、あるいは、シーリング剤が充填される前のシーリング剤容器を−10℃よりも低い温度に冷却してからシーリング剤を充填すると、例えば日本の夏場においては、シーリング剤容器が置かれた環境との温度差が大きくなり、シーリング剤の体積膨張による内圧の上昇によって、封止材がはがれてしまう。
【0019】
また、シーリング剤の液温を10℃よりも高くしてシーリング剤容器に充填、または、シーリング剤容器に充填されたシーリング剤の液温を10℃よりも高くする、あるいは、シーリング剤が充填される前のシーリング剤容器を10℃よりも高い温度にしてからシーリング剤を充填すると、極寒地においてシーリング剤容器内のシーリング剤の体積が減少し、封止材は剥がれる方向に引っ張られてしまう。
【0020】
このため、シーリング剤の液温を−10℃〜10℃にして、シーリング剤容器に充填、または、シーリング剤容器に充填されたシーリング剤の液温を−10℃〜10℃にする、あるいは、シーリング剤が充填される前のシーリング剤容器を−10℃〜10℃に冷却すれば、シーリング剤容器を取り巻く環境によってシーリング剤の体積の増減が少なくなり、封止材が剥がれない。
【発明の効果】
【0021】
本発明は上記構成としたので、環境温度の変動により、シーリング剤容器の内側に貼り付けた封止材が剥がれないように、シーリング剤容器にシーリング剤を充填することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の第1の実施形態に係るシーリング剤容器18へのシーリング剤充填方法を図1〜図4にしたがって説明する。
【0023】
まず、シーリング剤容器18を備えたシーリング・ポンプアップ装置10の構成について説明する。
【0024】
図1には、本発明の実施形態に係るタイヤのシーリング・ポンプアップ装置10(以下、単に「シーリング装置」という。)が示されている。シーリング装置10は、自動車等の車両に装着された空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」という。)がパンクした際、そのタイヤ及びホイールを交換することなく、タイヤをシーリング剤32により補修して所定の基準圧まで内圧を再加圧(ポンプアップ)するものである。
【0025】
図1に示されるように、シーリング装置10はコンプレッサユニット12を備えており、このコンプレッサユニット12には、その内部にモータ、エアポンプ、電源回路等が配設されると共に、電源回路からユニット外部へ延出する電源ケーブル(図示省略)が設けられている。この電源ケーブルの先端部に設けられたプラグを、例えば、車両に設置されたシガレットライターのソケットに差込むことにより、車両に搭載されたバッテリにより電源回路を通してモータ等へ電源が供給可能になる。ここで、コンプレッサユニット12は、そのエアポンプにより修理すべきタイヤ14の種類毎に規定された基準圧よりも高圧(例えば、300kPa以上)の圧縮空気を発生可能とされている。
【0026】
図2に示すように、シーリング装置10には、シーリング剤32を収容したシーリング剤容器18及び、このシーリング剤容器18が融着される注入ユニット20が設けられている。
【0027】
シーリング剤容器18は、ボトル状とされた基体22を有しており、底部には開口部19が形成されている。開口部19の外周には、ねじ山22Aが形成されており、カップ状に形成された蓋部材24の内周に形成されたねじ溝が螺合することで、蓋部材24によって開口部19が閉塞されるようになっている。
【0028】
また、基体22の開口部19が形成された側と反対側には、基体22よりも小径とされた円筒状の首部26が突出されて、基体22と一体に形成されている。
【0029】
首部26と基体22の連結部には、首部26から延設された封止材貼り付け部28が、基体22内に張り出している。この封止材貼り付け部28には、気体及び液体に対する密閉性及び化学的安定性が高い材料、アルミ箔及びポリエチレンの樹脂膜の積層材からなるフィルム状の封止材30が、熱溶着等によって固着されている。つまり、封止材30は基体22内側から、首部26の開口部分(吐出口29)をシールするようにして貼り付けられている。なお、この吐出口29から、後述する注入ユニット20及び冶具60を介して、シーリング剤容器18内のシーリング剤32がタイヤ14内へ供給されるようになっている。
【0030】
シーリング剤容器18は、ガス遮断性を有する各種の樹脂材料やアルミ合金等の金属材料を素材として、厚さ3mm以上で成形されている。これにより、シーリング剤容器18内に充填されたシーリング剤32の体積増減によって内圧が変化しても、シーリング剤容器18は変形しない。なお、シーリング剤容器18の厚さを5mm以上とすれば、シーリング剤32の内圧の変化によるシーリング剤容器18の変形を、確実に防止できる。
【0031】
また、シーリング剤容器18内には、シーリング装置10により修理すべきタイヤ14(図1参照)の種類、サイズ等に応じた規定量(例えば、200g〜400g)よりも若干多めのシーリング剤32が充填されるようになっている。
【0032】
なお、本実施形態のシーリング剤容器18においては、図2に示されるように、空間を設けることなくシーリング剤32が隙間無く充填されているが、シーリング剤32の酸化、窒化等による変質を防止するため、出荷時にAr等の不活性ガスをシーリング剤32共にシーリング剤容器18内へ若干量封入するようにしても良い。
【0033】
そして、シーリング剤容器18を注入ユニット20の上側に直立した状態にすると、シーリング剤容器18内のシーリング剤32の自重により、封止材30は封止材貼り付け部28に押し付けられた状態となる。
【0034】
図2に示されるように、注入ユニット20には、略円筒状に形成された容器受部34及び、この容器受部34の下端部から外周側へ延出するプレート状の台座36が設けられている。容器受部34の上部にはほぞが形成され、シーリング剤容器18の首部26の先端部が係合した状態で接合されている。
【0035】
容器受部34内には、封止材30が突き破られるとシーリング剤容器18の内部と連通する略円柱状の加圧給液室40が設けられている。具体的には、加圧給液室40の形状は、図2で示すように、加圧給液室40の中心より図面右側が、図面左側よりも深く成型されている。
【0036】
注入ユニット20の中央には、下面から加圧給液室40へ向けて垂直方向に延びる断面円形の冶具挿入孔42が形成されている。
【0037】
また、シーリング装置10には、図1に示されるように、コンプレッサユニット12から延出する耐圧ホース44が設けられると共に、図2に示されるように、注入ユニット20から延出し、ジョイントカプラ46を介して耐圧ホース44に着脱可能に接続される圧力配管48が設けられている。耐圧ホース44は、その基端部がコンプレッサユニット12内におけるエアポンプに接続されており、コンプレッサユニット12の作動時にエアポンプが発生した圧縮空気が耐圧ホース44側へ供給される。また圧力配管48の先端部は、容器受部34の周壁部を貫通して、垂直方向に延びる冶具挿入孔42の中間部分に連通している。
【0038】
冶具挿入孔42には、加圧給液室40側に穿孔部材50の軸部50Aが挿入されている。穿孔部材50は、軸部50Aの上端部に、径方向外側へ拡径する円盤状の穿孔部50Bを備えている。穿孔部50Bの上面には、封止材30を突き破りやすくするための刃50Cが複数形成されている。
【0039】
軸部50Aには、一対のオーリング溝56が形成されており、各オーリング溝56にはオーリング58が嵌めこまれている。
【0040】
また、軸部50Aは、全体が冶具挿入孔42に挿入されており、圧力配管48の先端部が、軸部50Aのオーリング58とオーリング58との間で塞がれている。
【0041】
さらに、軸部50Aは、オーリング58と冶具挿入孔42の内周面との摩擦により、冶具挿入孔42の内部に保持されている。この状態では、穿孔部50Bが封止材30の正面中央に対向しており、穿孔部50Bと封止材30との間には若干の隙間を設けている。
【0042】
また、シーリング装置10には、基端部がニップル52を介して容器受部34に接続されたジョイントホース54が設けられている。このジョイントホース54は、図2に示されるように、ニップル52を介して加圧給液室40内の下端側内側面へ連通している。また、図1に示されるように、ジョイントホース54の先端部には、タイヤ14のタイヤバルブ16に着脱可能に接続されるバルブアダプタ76が設けられている。
【0043】
(冶具)
次に、シーリング装置10からシーリング剤32を吐出させる際に用いる冶具60を説明する。
【0044】
図2に示すように、冶具60は、棒状の挿入部60Aと、挿入部60Aの一端に一体的に形成された円盤状のベース部60Bを備えている。
【0045】
挿入部60Aには、ベース部60B側とは反対側の先端からベース部60B側に向けて延びる第1通路62が中心部分に形成されていると共に、第1通路62のベース部60B側端から外周へ貫通する第2通路64が複数本形成されている。また、挿入部60Aの外周面には、第2通路64の開口部分に空気通路となる環状の溝66が形成されており、溝66の両側には、一対のオーリング溝68が形成されている。そして、このオーリング溝68には、オーリング70が嵌め込まれている。
【0046】
なお、本実施形態の冶具60では、挿入部60Aの先端が斜めに切り落とされたように傾斜しているが、軸方向に対して直角であっても良い。
【0047】
次に、シーリング剤容器18へのシーリング剤32の充填方法について説明する。
【0048】
まず、図3(A)に示すように、シーリング剤容器18の基体22から蓋部材24を取り外し、基体22の底部の開口部19を露出させる。そして、開口部19からシーリング剤容器18の内側に設けられた封止材貼り付け部28に封止材30を貼り付けて、吐出口29をシーリング剤容器18の内側からシールする。
【0049】
このとき、シーリング剤32の充填工程における環境温度が標準温度(20℃)であり、この環境温度によってシーリング剤容器18が20℃となっている。
【0050】
そして、図3(B)に示すように、液温が−10℃〜10℃とされたシーリング剤32を、開口部19からシーリング剤容器18内に充填する。
【0051】
なお、ここで充填するシーリング剤32は、SBR(スチレンブタジエンゴム)ラテックス、NBR(アクリルニトリル−ブタジエンゴム)ラテックス及びSBRラテックスとNBRラテックスとの混合物のゴムラテックス等のゴムラテックスを含むとともに、その水性分散剤又は水性乳剤の状態で加えられる樹脂系接着剤を有する。
【0052】
シーリング剤32の充填が完了すると、図3(C)に示すように、開口部19を蓋部材24によって閉塞し、シーリング剤容器18内を密閉する。
【0053】
このとき、シーリング剤容器18が置かれた環境温度と、シーリング剤容器18内に充填されたシーリング剤32の温度差によって、シーリング剤32の体積が増加して、シーリング剤容器18の内圧が上昇する。
【0054】
これにより、図3(D)に示すように、吐出口29に貼り付けられた封止材30のシーリング剤容器18との接着部分には、シーリング剤容器18(封止材貼り付け部28)に押し付ける方向に力が掛かるので、封止材30が吐出口29から剥がれない。
【0055】
また、シーリング剤32の液温を−10℃よりも低くしてシーリング剤容器18に充填すると、例えば日本の夏場においては、シーリング剤容器18が置かれた環境と、シーリング剤容器18に充填されたシーリング剤32の温度差が大きくなる。これにより、シーリング剤容器18内のシーリング剤32の体積が大きく変化(増加)して、シーリング剤容器18の内圧の上昇によって、封止材30が剥がれたり、破損したりしてしまう。また、シーリング剤32の液温を10℃よりも高くしてシーリング剤容器18に充填すると、極寒地において、シーリング剤容器18が置かれた環境と、シーリング剤容器18に充填されたシーリング剤32の温度差によって、シーリング剤容器18内のシーリング剤32の体積が減少する。これにより、シーリング剤容器18の内圧が減少し、封止材30は剥がれる方向に引っ張られてしまう。
【0056】
このため、シーリング剤32の液温を−10℃〜10℃にして、シーリング剤容器18に充填すれば、シーリング剤容器18を取り巻く環境によってシーリング剤32の体積の増減が少なくなり、封止材30が剥がれることがない。
【0057】
なお、本実施形態では、−10℃〜10℃のシーリング剤32をシーリング剤容器18に充填しているが、必ずしもシーリング剤32の液温をこの温度にする必要はなく、標準温度(例えば20℃)よりも低い温度であれば、シーリング剤容器18に充填したときに、封止材30が剥がれる方向に引っ張られないので剥がれない。
【0058】
また、本実施形態では、上記作業を標準温度(例えば20℃)の環境にて行うとしているが、充填作業場の雰囲気温度を、シーリング剤32の液温温度(−10℃〜10℃)と同じとすることで、シーリング剤容器18中へ入り込む空気の温度も−10℃〜10℃となり、シーリング剤容器18に−10℃〜10℃の液温のシーリング剤32を充填したときに、空間の空気が冷却されないので、シーリング剤容器18の内側に水滴がつかない。
【0059】
さらに、不活性ガス雰囲気中において、シーリング剤32をシーリング剤容器18へ充填すれば、シーリング剤容器18の内側に水滴がつくのを防止すると共に、経時によるシーリング剤32の酸化劣化が防止できる。
【0060】
また、本実施形態では、シーリング剤容器18(基体22)の底部に開口部19が設けられている構成で説明したが、開口部19は必ずしもシーリング剤容器18の底部に形成されている必要はなく、シーリング剤容器18の側面に設けられていてもよい。
(シーリング・ポンプアップ装置の作用)
次に、本実施形態に係るシーリング装置10を用いてパンクしたタイヤ14を修理する作業手順を説明する。
【0061】
タイヤ14にパンクが発生した際には、先ず、作業者は、ジョイントホース54のバルブアダプタ76をタイヤ14のタイヤバルブ16にねじ止めし、ジョイントホース54を通して加圧給液室40をタイヤ14内へ連通させる。
【0062】
次いで、作業者は、冶具60の挿入部60Aをシーリング装置10の冶具挿入孔42に挿入し、図4に示すように、冶具60のベース部60Bをシーリング装置10の台座36に突き当てる。これにより、挿入部60Aで押された穿孔部材50の穿孔部50Bが封止材30を突き破って容器内に押し込まれ、挿入部60Aが容器内に進入する。
【0063】
その後、台座36が下、シーリング剤容器18が上になるようにシーリング装置10を、例えば路面の上等に配置する。
【0064】
冶具60の挿入部60Aをシーリング装置10の冶具挿入孔42に挿入すると、図4に示すように挿入部60Aの先端がシーリング剤容器18の内部上壁面近くに位置し、また、封止材30に開けられた孔30Aと挿入部60Aとの間の環状の隙間を介してシーリング剤容器18内のシーリング剤32が加圧給液室40へ流出する。これにより、シーリング剤容器18内上部には、加圧給液室40へ流出したシーリング剤32の容積に相当する空間72が形成され、挿入部60Aの先端に開口する第1通路62の端部を、シーリング剤32の液面よりも上側に位置させることができる。
【0065】
そして、図4に示す状態、即ち、注入ユニット20の上側にシーリング剤容器18が位置するように注入ユニット20及びシーリング剤容器18を保持しつつ、コンプレッサユニット12を作動させる。コンプレッサユニット12により発生した圧縮空気は、耐圧ホース44、圧力配管48、冶具60の第2通路64、及び第1通路62を介してシーリング剤容器18に供給される。このとき、前述したように、第1通路62の端部がシーリング剤32の液面よりも上側に位置しているので、圧縮空気はシーリング剤32の中を泡となって浮上することはない。
【0066】
圧縮空気がシーリング剤容器18内に供給されると、シーリング剤容器18内上部に形成された空間72の容積が拡大してシーリング剤32を加圧し、加圧されたシーリング剤32は、封止材30に開けられた孔30Aと挿入部60Aとの間の環状の隙間を介して加圧給液室40、及びジョイントホース54を通って空気入りタイヤ14内へ供給される。
【0067】
なお、シーリング剤容器18内のシーリング剤32が全て排出された後は、加圧給液室40内のシーリング剤32が加圧されてジョイントホース54を通って空気入りタイヤ14内へ供給される。
【0068】
その後、シーリング装置10から全量のシーリング剤32が吐出されると、圧縮空気はシーリング剤容器18、加圧給液室40、及びジョイントホース54を介してタイヤ14内へ供給される。
【0069】
次に、作業者は、コンプレッサユニット12に設けられた圧力ゲージ78によりタイヤ14の内圧が規定圧になったことを確認すると、コンプレッサユニット12を停止し、バルブアダプタ76をタイヤバルブ16から取り外す。
【0070】
そして、作業者は、タイヤ14の膨張完了後一定時間内に、シーリング剤32が注入されたタイヤ14を用いて一定距離に亘って予備走行する。これにより、タイヤ14内部にシーリング剤32が均一に拡散し、シーリング剤32がパンク穴に充填されてパンク穴を閉塞する。予備走行完了後に、作業者は、タイヤ14の内圧を再測定し、必要に応じて再びジョイントホース54のバルブアダプタ76をタイヤバルブ16にねじ止めし、コンプレッサユニット12を再作動させてタイヤ14を規定の内圧まで加圧する。これにより、タイヤ14のパンク修理が完了し、このタイヤ14を用いて一定の距離範囲内で一定速度以下(例えば、80Km/h以下)での走行が可能になる。
【0071】
次に、本発明の第2の実施形態に係るシーリング剤容器18へのシーリング剤32の充填方法について説明する。なお、第1の実施形態と同様の部分についての説明は割愛する。
【0072】
まず、図5(A)に示すように、シーリング剤容器18の基体22から蓋部材24を取り外し、基体22の底部の開口部19を露出させる。そして、開口部19からシーリング剤容器18の内側に設けられた封止材貼り付け部28に封止材30を貼り付けて、吐出口29をシーリング剤容器18の内側からシールする。
【0073】
このとき、シーリング剤32の充填工程における環境温度が標準温度(20℃)であり、この環境温度によってシーリング剤容器18が20℃となっている。
【0074】
そして、図5(B)に示すように、シーリング剤32を開口部19からシーリング剤容器18内に充填する。このときのシーリング剤32の温度は、標準温度(20℃)となっている。
【0075】
次ぎに、図5(C)に示すように、シーリング剤容器18を冷却装置11に入れて、シーリング剤容器18に充填されたシーリング剤32の液温を−10℃〜10℃にする。
【0076】
シーリング剤32の温度が−10℃〜10℃になった時点で、冷却装置11からシーリング剤容器32を取り出して、図5(D)に示すように、開口部19を蓋部材24によって閉塞し、シーリング剤容器18内を密閉する。
【0077】
このとき、シーリング剤容器18が置かれた環境温度と、シーリング剤容器18内に充填されたシーリング剤32の温度差によって、シーリング剤32の体積が増加して、シーリング剤容器18の内圧が上昇する。
【0078】
これにより、図5(E)に示すように、吐出口29に貼り付けられた封止材30のシーリング剤容器18との接着部分には、シーリング剤容器18(封止材貼り付け部28)に押し付ける方向に力が掛かるので、封止材30が吐出口29から剥がれない。
【0079】
次に、本発明の第3の実施形態に係るシーリング剤容器18へのシーリング剤32の充填方法について説明する。なお、第1の実施形態と同様の部分についての説明は割愛する。
【0080】
まず、図6(A)に示すように、シーリング剤容器18を冷却装置11に入れて、−10℃〜10℃に冷却する。
【0081】
次に、図6(B)に示すように、冷却装置11からシーリング剤容器18を取り出して、シーリング剤容器18の基体22から蓋部材24を取り外し、基体22の底部の開口部19を露出させる。そして、開口部19からシーリング剤容器18の内側に設けられた封止材貼り付け部28に封止材30を貼り付けて、吐出口29をシーリング剤容器18の内側からシールする。
【0082】
次に、図6(C)に示すように、シーリング剤32を開口部19からシーリング剤容器18内に充填する。このときのシーリング剤32の温度は、標準温度となっており、−10℃〜10℃に冷却されたシーリング剤容器18に充填されることによって、シーリング剤32の液温が標準温度よりも低くなる。
【0083】
そして、図6(D)に示すように、開口部19を蓋部材24によって閉塞し、シーリング剤容器18内を密閉する。
【0084】
このとき、シーリング剤容器18が置かれた環境温度と、シーリング剤容器18内に充填されたシーリング剤32の温度差によって、シーリング剤32の体積が増加して、シーリング剤容器18の内圧が上昇する。
【0085】
これにより、図6(E)に示すように、吐出口29に貼り付けられた封止材30のシーリング剤容器18との接着部分には、シーリング剤容器18(封止材貼り付け部28)に押し付ける方向に力が掛かるので、封止材30が吐出口29から剥がれない。
【0086】
なお、本実施形態では、封止材30で吐出口29をシールする前に、シーリング剤容器18を冷却装置11に入れて−10℃〜10℃に冷却したが、封止材30で吐出口29をシールしたシーリング剤容器18を冷却装置11に入れ、封止材30ごとシーリング剤容器18を−10℃〜10℃に冷却してもよい。
【0087】
また、−10℃〜10℃に冷却されたシーリング剤容器18にシーリング剤32を充填した後、蓋部材24で開口部19を閉塞する前に、シーリング剤容器18を冷却装置11に入れ、シーリング剤容器18内のシーリング剤32の液温を−10℃〜10℃にしてもよい。
【0088】
さらに、−10℃〜10℃に冷却されたシーリング剤容器18に、液温を−10℃〜10℃としたシーリング剤32を充填してもよい。これにより、標準温度のシーリング剤容器18に液温が−10℃〜10℃のシーリング剤32を充填した場合や、−10℃〜10℃に冷却されたシーリング剤容器18に標準温度のシーリング剤32を充填した場合と比べて、シーリング剤容器18内でシーリング剤32の温度が−10℃〜10℃に維持されるので、シーリング剤容器18を取り巻く環境によってシーリング剤32の体積の増減が少なくなり、封止材30が剥がれることがない。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るシーリング・ポンプアップ装置の構成を示す構成図である。
【図2】図1に示されるシーリング・ポンプアップ装置におけるシーリング剤容器、注入ユニットの構成、及び冶具を示す側面断面図である。
【図3】シーリング剤容器へのシーリング剤の充填方法を示す断面図である。
【図4】冶具を挿入したシーリング剤容器、及び注入ユニットの断面図である。
【図5】第2の実施形態に係るシーリング剤容器へのシーリング剤の充填方法を示す断面図である。
【図6】第3の実施形態に係るシーリング剤容器へのシーリング剤の充填方法を示す断面図である。
【図7】他の従来例に係るシーリング剤容器の断面図である。
【符号の説明】
【0090】
10 シーリング・ポンプアップ装置
14 タイヤ(空気入りタイヤ)
18 シーリング剤容器
19 開口部
29 吐出口
30 封止材
32 シーリング剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パンクした空気入りタイヤ内に注入されパンクを補修する液状のシーリング剤をシーリング剤容器に充填するシーリング剤充填方法において、
前記シーリング剤容器に形成された開口部を通じて、該シーリング剤容器の吐出口の内側へ封止材を貼り前記吐出口を閉塞する工程と、
前記開口部から前記シーリング剤容器内へ、標準温度より低い液温のシーリング剤を充填する工程と、
前記開口部を密封する工程と、
を有することを特徴とするシーリング剤充填方法。
【請求項2】
パンクした空気入りタイヤ内に注入されパンクを補修する液状のシーリング剤をシーリング剤容器に充填するシーリング剤充填方法において、
前記シーリング剤容器に形成された開口部を通じて、該シーリング剤容器の吐出口の内側へ封止材を貼り前記吐出口を閉塞する工程と、
前記開口部から前記シーリング剤容器内へ、シーリング剤を充填する工程と、
前記シーリング剤を標準温度よりも低い液温にする工程と、
前記開口部を密封する工程と、
を有することを特徴とするシーリング剤充填方法。
【請求項3】
パンクした空気入りタイヤ内に注入されパンクを補修する液状のシーリング剤をシーリング剤容器に充填するシーリング剤充填方法において、
前記シーリング剤容器に形成された開口部を通じて、該シーリング剤容器の吐出口の内側へ封止材を貼り前記吐出口を閉塞する工程と、
前記シーリング剤容器を標準温度よりも低い温度に冷却する工程と、
前記開口部から前記シーリング剤容器内へ、シーリング剤を充填する工程と、
前記開口部を密封する工程と、
を有することを特徴とするシーリング剤充填方法。
【請求項4】
充填時又は充填後の前記シーリング剤の液温又は、前記シーリング剤容器の冷却温度が、−10℃〜10℃であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のシーリング剤充填方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−155929(P2008−155929A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−344698(P2006−344698)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】