説明

シールを有する可撓性カニューレ

可撓性カニューレアセンブリは、近位端部および遠位端部を有する管状部材と、管状部材の遠位端部に隣接して配置されるシールとを含む。管状部材は可撓性材料で形成される。シールは、シールの中央部分に穴を画定してそれを通る手術器具を受容する。可撓性カニューレアセンブリはさらに、管状部材の近位端部に接続される筐体を含む。カニューレおよびシールの可撓性は、シールの完全性を損なうことなく、手術関係者が内視鏡手術中にカニューレ内で手術器具を操作することを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(開示の分野)
本開示は、密封デバイスを含む可撓性カニューレに関する。より具体的には、本開示は、カニューレを通る器具の挿入時にカニューレ管腔を密封する密封部材を含む、腹腔鏡手術で使用するためのカニューレに関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の背景)
外科手術であって、その最中に、内部手術部位にアクセスするように身体組織の小さな開口部に手術器具を通過させる、外科手術が開発されてきた。一般的に内視鏡手術と呼ばれるこれらの外科手術が、広く受け入れられるようになってきた。本明細書で使用されるような内視鏡という用語は、腹腔鏡および関節鏡視下手術を含む、あらゆる種類の低侵襲外科手術を含むように定義される。典型的には、これらの手術中に、切開が身体組織に形成された後に管腔を画定するカニューレが切開を通って挿入され、手術部位に関して固定的に配置される。いくつかのそのような手術中に、患者の体内に作業域を生成し、体腔内の深部臓器を損傷する危険を伴わずに、トロカールが体腔を穿刺することを可能にするために体腔が吹送ガスによって膨張させられる。
【0003】
内視鏡手術において、手術部位を往復する望ましくない流量を最小化することが重要であり、したがって、手術器具の導入の前および後、ならびにそのような器具が適所にある間、カニューレを密封しなければならない。また、内視鏡手術の一部としての吹送のために、気相二酸化炭素または亜酸化窒素等の流体が解剖学的空洞に導入される場合があり、空洞の穿刺中ならびに手術中に、そのような流体の漏出を最小化しなければならない。カニューレ等の内視鏡の入口の弁は、典型的には、穿刺器具でシールを形成するように、穿刺器具の外径またはサイズに対応するサイズの弁通路を有し、穿刺器具のサイズは、行われている内視鏡手術および穿刺されている解剖学的空洞の種類に応じて変動する。
【0004】
概して、内視鏡カニューレは、体腔内への手術器具の挿入の前および後に、カニューレ管腔を密封して体腔内の吹送ガスが漏出することを防止するために、1つまたは複数の密封部材を含む。1つまたは複数の密封部材は、しばしば異なるサイズおよび形状の複数の器具の周囲を密封することが可能である、調節可能な密封要素を含む。多くの従来技術のカニューレは、穿刺器具のサイズに対応する単一の所定サイズを有する弁通路を通って穿刺器具が挿入されることを可能にするために、通常は閉鎖位置に付勢され、開放位置に移動可能である、フラッパまたはゲート弁を利用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
意図された機能を適切に果たすシールを有する可撓性カニューレが公知であるが、公知のデバイスに対する改良が保証される。例えば、カニューレの近位筐体部分に密閉部材が載置されることは、よくあることである。概して、この構成は、吹送ガスの漏出を防止するという意図された機能を適切に果たす。しかしながら、カニューレの近位筐体部分に密閉部材が配置されることによって、筐体寸法を比較的大きくさせる。
【0006】
加えて、外科処置における内視鏡手術の幅広い支持を考慮して多数の内視鏡器具が開発されて、特定の体腔または解剖学的領域を包囲する皮膚および組織の最小切開により、外科医が複雑な外科手術を行うことを可能にしている。これらの内視鏡器具の多くは、剛性で固定的な姿勢であるため、空洞内で器具を操作する外科医の能力を制限する。
【0007】
使用中に屈曲する能力を組み込んでいる内視鏡器具がますます増加しているが、密封部材はカニューレの近位部分にとどまり、比較的大きなカニューレアセンブリをもたらす。したがって、サイズが小型であり、可撓性自己密封式カニューレ内に配置される手術器具によって内視鏡手術を行う能力および操作性をユーザに提供しながら、吹送の損失を防止する可撓性自己密封式カニューレの継続的な必要が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、サイズが小型であり、可撓性自己密封式カニューレ内に配置される手術器具によって内視鏡手術を行う操作性をユーザに提供しながら、吹送の損失を防止する、新規の可撓性自己密封式カニューレを提供する。
【0009】
可撓性自己密封式カニューレアセンブリは、その遠位端上に器具シールを有する可撓性カニューレを含む。カニューレおよびシールの可撓性は、シールの完全性を損なうことなく、手術関係者が内視鏡手術中にカニューレ内において手術器具を操作することを可能にする。
【0010】
本開示の一実施形態によれば、近位端部および遠位端部を有する管状部材と、管状部材の遠位端部に隣接して配置される器具シールとを含む、可撓性カニューレが提供される。シールは、シールの中央部分に穴を画定してそれを通る手術器具を受容する。カニューレは、弾力性のある可撓性材料で形成される。カニューレの可撓性は、シールがカニューレの遠位端に隣接して配置されるという事実と組み合わさって、装置を利用する時に手術関係者に操作性の利点を提供する。
【0011】
可撓性カニューレはまた、管状部材の近位端部に隣接し、かつ、その近位に配置される、筐体も含む。ゼロシールが、好ましくは筐体内に載置される。患者への可撓性カニューレの容易な挿入を促進するために、ガイド部材が管状部材の遠位端に取り付けられる。
【0012】
本開示の別の実施形態では、近位端部および遠位端部を有するカニューレ本体を含む、可撓性自己密封式カニューレアセンブリが提供され、可撓性カニューレは、その遠位部分に載置される器具シールを含む。カニューレ本体は、その中に手術器具を取り外し可能に受容するための縦管腔を画定する。カニューレ本体の近位端部は、入口開口部を画定し、遠位端部は、出口開口部を画定する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する、添付図面は、上記で挙げられた本開示の一般的な説明とともに、本開示の実施形態を図示し、以下で挙げられる発明を実施するための形態は、本開示の原則を説明する働きをする。
【図1】図1は、本開示の一実施形態による、自己密封式カニューレアセンブリの垂直断面図である。
【図2】図2は、本開示の一実施形態による、自己密封式カニューレの斜視図である。
【図3】図3は、本開示の別の実施形態による、自己密封式カニューレの部分斜視図である。
【図4】図4は、本開示の一実施形態による、自己密封式カニューレアセンブリの分解斜視図である。
【図5】図5は、本開示の一実施形態による、自己密封式カニューレの斜視図である。
【図6】図6は、本開示の一実施形態による、その中に挿入された器具を有する自己密封式カニューレアセンブリの側面断面図である。
【図7】図7は、本開示の一実施形態による、その中に挿入された器具を有する自己密封式カニューレアセンブリの側面断面図である。
【図8】図8は、本開示の一実施形態による、可撓性自己密封式カニューレアセンブリの側面断面図である。
【図9】図9は、本開示の別の実施形態による、可撓性自己密封式カニューレアセンブリの管状部分およびシールの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
類似参照番号がいくつかの図の全体を通って対応する要素を識別する図を参照して、本開示の自己密封式カニューレの好ましい実施形態を詳細に説明する。
【0015】
図1で概して参照番号10として示される自己密封式カニューレアセンブリは、縦管腔14を画定する管状部分12を含む。管状部分は、好ましくは入口開口部18を画定する近位端部16、好ましくは円筒形である中央本体部分22、および遠位端部20を含む。
【0016】
自己密封式カニューレアセンブリ10はまた、近位筐体部分42も含む。近位筐体部分42は、円筒形部材44およびカバー46を含む。円筒形部材は、その遠位端上に形成される段部45を有する。段部45は、管状部分12を受容するための開口部を画定する。管状部分12の近位端部16は、近位端部16と段部45との間にシールを形成する方式で固定される。カバー46は、自己密封式カニューレアセンブリ10の中へ手術器具を受容するための入口開口部48を画定する。カバー46は、円筒形部材44の近位端に係合し、当業者に公知の方法によって、それに取り付けられてもよい。自己密封式カニューレアセンブリ10は、複数の構成要素で形成されるものとして図示され、例えば、近位筐体部分42は、管状部分12とは別に形成されているが、自己密封式カニューレアセンブリ10またはその任意の部分は、一体型構造であってもよいことが想定される。
【0017】
近位表面56および遠位表面58を有する器具シール50は、管状部分12の遠位端部20に接続される。器具シール50は、シールの中央領域に開口部52を画定する。管状部分12が可撓性であるため、手術関係者は、シール50の有効性を損なうことなく、カニューレ内で器具を操作できるようになる。
【0018】
管腔14は、シール50の開口部52を通って管腔14の中へ進入する吹送ガスによって加圧される。可撓性の管状部分12の内面に対する圧力は、可撓性の管状部分12の外面と患者の真皮26の内面との間でシールを維持する。したがって、カニューレアセンブリの円周周辺での吹送ガスの損失が効果的に防止される。管腔14と直接連通するように、および管腔内の圧力を調節するために、管状部分12または筐体42にアクセスポートが画定されてもよい。
【0019】
入口開口部48を通るガスの損失を防止または最小化するために、カニューレ管腔14を密封するための可撓性ゼロシール40が近位筐体部分42内に提供される。可撓性ゼロシール40は、その中に器具が配置されていない時に積極的なシールを提供するように設計される。可撓性ゼロシール40は、その中に形成される拡張性スリットを有する可撓性膜であってもよい。代替として、ゼロシール40の代わりに、他の種類のシールが使用されてもよく、または1つ以上の付加的なシールが近位筐体部分42に隣接して設置されてもよい。
【0020】
使用時、身体の切開または穴が、典型的には、トロカールにより患者の真皮26を通って作成される。次いで、自己密封式カニューレアセンブリ10の管状部分12が、身体切開を通って吹送された空洞の中へ配置される。空洞は、カニューレアセンブリ10を介して、またはカニューレアセンブリ10の挿入前に、吹送媒体によって加圧されてもよい。本開示の一実施形態によれば、身体切開内へのカニューレアセンブリ10の容易な進入を促進するために、少なくとも1つのガイド部材54が可撓性の管状部分12の遠位端に取り付けられる。ガイド部材54の遠位端は、図示されるように勾配付きであることが好ましい。
【0021】
一旦カニューレアセンブリが吹送された空洞の中に挿入されると、空洞内からの加圧ガスは、シール50の開口部52を介して、またはアクセスポート(図示せず)を介して、管腔14に流入し、可撓性の管状部分12を膨張させる。その後、管腔14を通って、そして器具シール50を通って器具が挿入されると、管腔14に出入りする流れを制限し、管腔14は加圧されたままとなる。管腔14を通る器具の進入時に吹送された空洞中の加圧ガスが漏出しないことを確実にするために、可撓性シール40が、好ましくは手術器具の本体の周囲を均等に密封する。
【0022】
1つの好ましい実施形態では、シール40を形成するために合成材料が使用される。本開示によるカニューレアセンブリ10は、吹送された体腔中に配置されると、シール40によって自己密封するために準備される。しかしながら、とりわけ、構造または構成の材料によっては、手術器具が管腔14を通って挿入されると、シール40が手術器具の周囲を均等に圧縮せず、それによって、シール40と手術器具との間に多数の間隙を生成する可能性がある。従来技術のデバイスでは、これらの間隙は、吹送された空洞中の加圧ガスが体腔から漏出することを可能にし、それによって、自己密封式カニューレの有効性を最小化する。しかしながら、本開示によれば、シール40は、手術器具の本体の周囲を均等に圧縮し、間隙を排除または最小化する圧力障壁を形成するような、合成材料から形成される。合成材料は、ナイロン、Kevlar(登録商標)、または手術器具がカニューレアセンブリ10の中へ挿入されると均等に圧縮する任意の他の材料であることが好ましい。選択された材料はまた、手術器具がカニューレアセンブリの中へ挿入される時にシール40のしわの形成を最小化または防止するように、編物構造であってもよい。シール40の材料および構造の選択の進展にもかかわらず、少なくとも多少の吹送ガスが漏出する可能性がある。したがって、本開示によれば、シール50は、シール40を迂回しているガスの量の最小化または排除を補助する。
【0023】
選択された材料は、手術器具の挿入または除去が過剰量の力を必要としないように、好ましくは低摩擦係数を有する。カニューレアセンブリ10の内面はまた、手術器具と管状部分12との間の摩擦を最小化するために、潤滑性材料で被覆されてもよい。カニューレアセンブリ10は、好ましくは低摩擦係数を有するが、シール40およびシール50の組み合わせは、腹腔鏡手術中にカニューレアセンブリ10内に適正に配置された手術器具を維持することが可能である。さらに依然として、選択された材料は、手術器具の挿入、除去、または動作中に、手術器具がカニューレアセンブリ10の任意の部分を不注意に穿孔することを防止するために、好ましくは薄いが十分に耐久性がある。
【0024】
ここで図2を参照すると、本開示の一実施形態による可撓性の自己密封式カニューレアセンブリ130の斜視図が示されている。可撓性自己密封式カニューレ130は、近位端部132および遠位端部134を有する。筐体142は、可撓性自己密封式カニューレ130の近位端部132上に載置される。筐体142は、円筒形部材144およびカバー146を含む。円筒形部材144は、カニューレ130を受容するための開口部を画定する。遠位端部134は、円筒形部材144によって画定される開口部を通って挿入される。カバー146は、円筒形部材144の近位端に係合し、当業者に公知の方法によって、それに取り付けられてもよい。
【0025】
シール150は、可撓性カニューレ130の遠位端部134に接続される。シール150は、シールの中央領域に開口部152を画定する。本開示によれば、カニューレ130は、シール150の完全性および有効性を損なうことなく、手術関係者が可撓性カニューレ130内で器具を操作することができるように十分な可撓性を呈する。
【0026】
身体切開内へのカニューレの容易な進入を促進するために、少なくとも1つのガイド部材154が可撓性カニューレ130の遠位端に取り付けられる。ガイド部材154の遠位端は、図示されるように勾配付きであることが好ましい。
【0027】
図3は、本開示による自己密封式カニューレアセンブリの管状部分230の別の実施形態の部分斜視図である。より具体的には、図3は、管状部分の遠位端部234に取り付けられたガイド部材254を有する、カニューレアセンブリの管状部分の部分図である。図2および3を比較することによって分かるように、ガイド部材254が完全な環状部材である程度に、ガイド部材254は、ガイド部材154とは最も顕著に異なる。器具シール250が、管状部分230の遠位端に、かつガイド部材254に隣接して配置される。
【0028】
ここで図4を参照すると、図1に図示された自己密封式カニューレアセンブリの分解斜視図が、参照番号310として概して示される。自己密封式カニューレアセンブリ310は、縦管腔(図1参照)を画定する管状カニューレ本体330を含む。管状カニューレ本体330は、近位端部332、好ましくは円筒形である中央本体部分、および出口開口部324を画定する遠位端部334を含む。
【0029】
可撓性ゼロシール340は、カニューレ330の近位端部332に隣接して配置される。可撓性ゼロシール340は、吹送された空洞中の加圧ガスが管腔314を通って漏出しないことを確実にするために、手術器具の本体の周囲を均等に密封する。
【0030】
近位表面および遠位表面を有する器具シール350は、可撓性カニューレ330の遠位端部334に接続される。器具シール350は、可撓性シール340を通って、そしてカニューレ330を通って挿入される手術器具を受容するために、中央領域に開口部352を画定する。したがって、可撓性シール340および器具シール350の組み合わせは、腹腔鏡手術中にカニューレアセンブリ310内に適正に配置された手術器具を維持する一方で、吹送ガスの損失を最小化または排除することが可能である。
【0031】
身体切開内へのカニューレアセンブリ310の容易な進入を促進するために、ガイド部材354が器具シール350の遠位表面に取り付けられる。ガイド部材354の遠位端は、図示されるように勾配付きであることが好ましい。
【0032】
自己密封式カニューレアセンブリ310は、近位筐体部分の構成要素によって結合される。より具体的には、近位筐体部分は、円筒形部材344およびカバー346を含む。円筒形部材344は、カニューレ330の可撓性管状部分の周囲に嵌合するように構成される。したがって、円筒形部材344は、カニューレ330の遠位端部334を起点として近位方向に摺動される。円筒形部材344は、環状リング333の遠位側に係合するまで近位方向に移動される。その点で、カバー346は、円筒形部材344の近位端に係合し、それにより、近位筐体部分を形成する。次いで、自己密封式カニューレアセンブリ310は、トロカールによって患者の真皮326を通って作成された身体の切開または穴の内側に挿入される準備ができている。次いで、自己密封式カニューレアセンブリ310は、身体切開を通って吹送された空洞の中に配置される。
【0033】
ここで図5を参照すると、本開示の別の実施形態による自己密封式カニューレの斜視図が図示されている。より具体的には、図5は、近位端432および遠位端434を有する
カニューレ430を図示する。カニューレ430は、その遠位端に一体化されたシール450を含む。シール450は、手術器具が自己密封式カニューレを通って挿入されると、手術器具を受容し、それに対して密封するための円形開口部452を画定する。図示されていないが、ガイド部材が上記に示されるようなカニューレ430の遠位端に取り付けられてもよい。
【0034】
図6および7は、その中に手術器具600が挿入された、可撓性自己密封式カニューレアセンブリ510の側面断面図である。自己密封式カニューレアセンブリ510は、縦管腔514を画定するカニューレ本体530を含む。カニューレ本体は、好ましくは入口開口部518を画定する近位端部532、および遠位端部534を含む。
【0035】
自己密封式カニューレアセンブリ510はまた、近位筐体部分542も含む。近位筐体部分542は、円筒形部材544およびカバー546を含む。カバー546は、自己密封式カニューレアセンブリ510の中へ手術器具を受容するための入口開口部548を画定する。
【0036】
器具シール550は、可撓性カニューレ530の遠位端に接続される。シール550は、シールの中央領域に開口部552を画定する。したがって、手術関係者は、シール550の完全性および有効性を損なうことなく、カニューレ内で器具を操作することができるようになる。
【0037】
入口開口部548を通るガスの損失を防止または最小化するようにカニューレ管腔514を密封するための可撓性ゼロシール540が、近位筐体部分542内に提供される。可撓性ゼロシール540は、その中に器具が配置されるか否かにかかわらず、積極的シールを提供するように設計される。可撓性ゼロシール540は、その中に形成される拡張性スリットを有する、可撓性膜であってもよい。
【0038】
使用時、身体の切開または穴が、典型的には、トロカールによって患者の真皮を通って作成される。次いで、自己密封式カニューレアセンブリ510が、身体切開を通って吹送された空洞の中へ配置される。次いで、器具600が、開口部548を通り、ゼロシール540を通り、管腔514の中へ、シール550の開口部552を通り、そして吹送された空洞の中へ挿入される。
【0039】
器具600の使用中、外科医は、外科手術を完成させるために、複数の位置で器具600を操作する必要がある。可撓性カニューレ530は、外科医によって操作されている器具600によって引き起こされる変位の少なくとも一部分に順応するように設計される。図6は、略垂直位置でカニューレアセンブリ510内に配置された器具600を図示する。図7は、カニューレアセンブリ510内に配置された器具600を図示し、器具600は、シール550に接近して垂直軸から距離xだけ変位している。図7の垂直な鎖線は、カニューレアセンブリ510を通る垂直軸を表し、垂直位置からの器具600の変位を示す。シール550と器具600との間の接近、ならびにシール550と可撓性カニューレ530との間の接続によって、器具600が垂直軸から変位するにつれて、可撓性カニューレ530は対応する量だけ変位させられる。図7に図示されるように、器具600の遠位端部は左に変位させられる。可撓性カニューレ530の遠位端部534もまた、左に移動させられる。図に示されるように、可撓性カニューレ530の遠位端部534の右側は、シール550の完全性を損なうことなく、左に移動させられる。
【0040】
本発明の一実施形態による可撓性自己密封式カニューレアセンブリは、図8において参照番号610として概して示され、そして、縦管腔614を画定する管状部分612を備えている。管状部分は、好ましくは入口開口部618を画定する近位端部616、好ましくは円筒形である中央本体部分622、および遠位端部620を含む。管状部分612は、好ましくは可撓性の管類で形成される。管状部分612は、患者の真皮626中に固着され、近位および遠位端部616および620は、それぞれ、矢印A−AおよびB−Bによって示される方向に自由に移動できる。したがって、カニューレアセンブリ610内に配置される器具は、シール640または器具シール650の完全性を損なうことなく、矢印A−AおよびB−Bによって示される方向に操作されてもよい。管状部分612の移動は、1つの特定の軸に限定されず、むしろ、移動は3次元的である。
【0041】
自己密封式カニューレアセンブリ610はまた、近位筐体部分642をも含む。近位筐体部分642は、円筒形部材644およびカバー646を含む。円筒形部材644は、管状部分612を受容するための開口部を画定する。管状部分612の近位端部616は、近位端部616と円筒形部材644との間にシールを形成する方式で固定される。カバー646は、自己密封式カニューレアセンブリ610の中へ手術器具を受容するための入口開口部648を画定する。カバー646は、円筒形部材644の近位端に係合し、当業者に公知の手段によって、それに取り付けられてもよい。自己密封式カニューレアセンブリ610は、複数の構成要素で形成されるものとして図示され、例えば、近位筐体部分642は、カニューレ本体612とは別に形成されているが、自己密封式カニューレアセンブリ610またはその任意の部分は、一体型構造であってもよいことが想定される。
【0042】
近位表面および遠位表面を有する器具シール650は、管状部分612の遠位端部620に接続される。器具シール650は、シールの中央領域に開口部652を画定する。管状部分612が可撓性であるため、手術関係者は、シール650の有効性を損なうことなく、カニューレ内で器具を操作できるようになる。
【0043】
ここで図9を参照すると、本開示の別の実施形態による、可撓性自己密封式カニューレアセンブリの管状部分712および器具シール750の側面断面図が図示されている。本実施形態によれば、シール750は先細の可撓性シールである。シール750の遠位端部は、広がった端764を有して示されている。代替として、シール750の遠位端部は、先細区間の直径以下の直径を有してもよい。
【0044】
再び図8を参照すると、ポート660が近位筐体部分642に形成される。ポート660は、患者の空洞に吹送ガスを導入するために使用される。つまり、患者の真皮626内に配置されたカニューレアセンブリ610によって、吹送ガスが、ポート660の中へ、管腔614を通って下へ、器具シール650の開口部652を通り、および患者の空洞の中へ流れる。一旦空洞が十分加圧されると、管腔614および患者の空洞内の圧力を維持するために、ポート660に接続された弁(図示せず)が閉鎖される。その後、管腔614は、シール650の開口部652を通って管腔614の中へ進入する吹送ガスによって、加圧されたままとなる。可撓性管状部分612の内面に対する圧力は、可撓性管状部分612の外面と患者の真皮626の内面との間でのシールを維持する。したがって、カニューレアセンブリの円周周辺での吹送ガスの損失が効果的に防止される。
【0045】
種々の修正が、本明細書で開示されている実施形態に行われてもよいことが理解されるであろう。例えば、カニューレは、円筒形以外の種々の異なる形状、例えば、正方形、楕円形、長方形等を有してもよい。したがって、上記の説明は、限定的ではなく、好ましい実施形態の例示のみとして解釈されるべきである。当業者であれば、以下の請求項の範囲および精神の中で、他の修正を想定するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管腔を画定し、近位端部および遠位端部を有する管状部材であって、該管状部材は可撓性材料で形成される、管状部材と、
該管状部材の該遠位端部に隣接して配置されるシールであって、該シールは該シールの中央部分に開口部を画定して該開口部を通る手術器具を受容し、さらに、該シールは該管腔の該遠位端部を密封する、シールと
を備える、可撓性カニューレ。
【請求項2】
前記シールは、隔壁シールである、請求項1に記載の可撓性カニューレ。
【請求項3】
前記管状部材は、可撓性の管類で形成される、請求項1に記載の可撓性カニューレ。
【請求項4】
前記カニューレは、実質的に円筒形である、請求項1に記載の可撓性カニューレ。
【請求項5】
前記管状部材の前記近位端部に隣接してかつその近位に配置される筐体をさらに備える、請求項1に記載の可撓性カニューレ。
【請求項6】
前記筐体に載置されるシールをさらに備える、請求項5に記載の可撓性カニューレ。
【請求項7】
前記筐体に載置される前記シールは、ゼロシールである、請求項6に記載の可撓性カニューレ。
【請求項8】
前記管状部材は、前記カニューレの前記近位端において前記筐体に接続される、請求項1に記載の可撓性カニューレ。
【請求項9】
シールは、前記管状部材と前記筐体との間の接続部において形成される、請求項8に記載の可撓性カニューレ。
【請求項10】
前記シールは、先細の可撓性シールである、請求項1に記載の可撓性カニューレ。
【請求項11】
前記管状部材の遠位端に取り付けられるガイド部材をさらに備える、請求項1に記載の可撓性カニューレ。
【請求項12】
前記ガイド部材の前記遠位端は、勾配付きである、請求項11に記載の可撓性カニューレ。
【請求項13】
前記管状部材の前記遠位端部に隣接して配置される前記シールは、器具シールである、請求項1に記載の可撓性カニューレ。
【請求項14】
筐体と、
近位端部および遠位端部を有する細長いカニューレ本体であって、該カニューレ本体は可撓性材料で形成される、カニューレ本体と、
該細長いカニューレ本体の該遠位端部を密封するために、該細長いカニューレ本体の該遠位端部上に載置される、器具シールと
を備える、自己密封式カニューレアセンブリ。
【請求項15】
前記カニューレ本体は、縦管腔を画定する、請求項14に記載の自己密封式カニューレアセンブリ。
【請求項16】
前記カニューレ本体の前記近位端部は、入口開口部を画定し、前記遠位端部は、出口開口部を画定する、請求項14に記載の自己密封式カニューレアセンブリ。
【請求項17】
前記筐体は、円筒形部材と、該円筒形部材上に載置されるカバーとを備える、請求項14に記載の自己密封式カニューレアセンブリ。
【請求項18】
前記カバーは、前記自己密封式カニューレアセンブリの中に少なくとも1つの手術器具を受容するための入口開口部を画定する、請求項17に記載の自己密封式カニューレアセンブリ。
【請求項19】
前記筐体内に載置されるゼロシールをさらに備える、請求項14に記載の自己密封式カニューレアセンブリ。
【請求項20】
前記器具シールは、該器具シールの中央領域に開口部を画定する、請求項14に記載の自己密封式カニューレアセンブリ。
【請求項21】
前記シールは、先細の可撓性シールである、請求項14に記載の自己密封式カニューレアセンブリ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−518901(P2010−518901A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549634(P2009−549634)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/002072
【国際公開番号】WO2008/103305
【国際公開日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(507362281)タイコ ヘルスケア グループ リミテッド パートナーシップ (666)
【Fターム(参考)】