説明

シールドケーブル、シールドケーブルの敷設構造、およびシールド管への電線の挿通方法

【課題】 シールド管に電線が挿通された際に、シールド管の周方向に対して略均一なシールド特性を得ることが可能なシールドケーブルおよびシールドケーブルの敷設構造を提供する
【解決手段】 シールドケーブル1は、主にシールド管3、電線5等から構成される。シールド管3は、可撓性を有する樹脂製の波付管から構成される。シールド管の少なくとも外面には、金属層であるシールド層が形成される。シールド管3内部には、電線5が挿通される。シールド管3の内部おいて、電線5の外周には所定の間隔でセンタリング部材7aが設けられる。また、シールドケーブル1の両端部近傍(シールド管3の両開口部近傍)には、必要に応じて、端部センタリング部材であるセンタリング部材7bが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド管の内部に電線が通線されるシールドケーブルおよびこれを用いたシールドケーブルの敷設構造等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地中埋設、屋内配線、車両用配線、その他各種機器内配線にて、電線に外傷を与える恐れのある敷設場所では、電線の保護管として、金属管や樹脂管を用いて電線への外傷を防止している。さらに、挿通する電線から発するノイズの遮蔽、又は、外部環境から電線へのノイズの進入を防止するために、シールド電線を使用したり、電線を金属管などに挿通し前記金属管を接地したりすることでノイズ対策を行っている。
【0003】
例えば、車両用として自動車等に用いられるケーブルの保護管としては、鋼管やアルミニウムパイプなどの金属管が用いられている。金属管は、通常、自動車の車体下部に設けられる。保護管が金属管であるため、外部からのノイズに対しては、保護管自体がシールド性を有し、ノイズの影響を受けにくい。しかし、金属管を所定の形状に加工するため、加工費がかさみ、電子機器等のレイアウトや配置の自由度が低い。また、金属製であるため重さの問題もある。したがって、シールド性を有する樹脂管が検討されている。
【0004】
このような、シールド管としては、例えば、樹脂製のコルゲートチューブに無電解メッキ法を用いて金属層を形成させたり、コルゲートチューブに金属テープを巻きつけることにより金属層を形成させたりして、シールド性を有するコルゲートチューブを形成する方法がある(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−298382号公報
【特許文献2】特開平10−185015号公報
【特許文献3】特開2010−246296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、上述したようなシールド管に電線を挿通してシールドケーブルを構成すると、電線はシールド管の内部において、シールド管の内面に接触するように位置する。すなわち、電線はシールド管の断面において、重力によってシールド管の内面下部と接触するように位置する。
【0007】
しかしながら、シールド管に形成されるシールド層のシールド特性は、電線との距離によって変化する。このため、電線がシールド管の断面において、一方に偏って配置されると、電線から近い側と遠い側とにおいて、シールド層のシールド特性が異なることとなる。すなわち、シールド管の周方向において、不均一なシールド特性を有することとなる。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、シールド管に電線が挿通された際に、シールド管の周方向に対して略均一なシールド特性を得ることが可能なシールドケーブルおよびシールドケーブルの敷設構造等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、シールド層を有する波付管と、前記波付管に挿通される電線と、を具備し、前記電線の外周には、弾性体であるセンタリング部材が所定の間隔で配置され、前記センタリング部材の外径は、前記波付管の小径部の内径よりも大きく、前記センタリング部材の外周部が前記波付管の内面の大径部に嵌り込むことが可能であり、前記電線を前記波付管の略中央に保持可能であることを特徴とするシールドケーブルである。
【0010】
前記シールドケーブルの両端部近傍には、端部センタリング部材が設けられ、前記端部センタリング部材は、他の部位の前記センタリング部材よりも高い剛性を有し、前記端部センタリング部材の外周面が前記波付管の大径部の内周面と接触してもよい。このように、センタリング部材として、円盤状のものを用いて、前記波付管の大径部の内周面の全周と接触させることにより、シールドケーブルをシールすることができる。また、ここで、センタリング部材の厚さは中心から外周に向かうにつれて薄肉にするか、外周部のみを薄肉にすることにより、センタリング部材を装着したケーブルを波付管に挿通する時の挿通性を向上させることができる。
【0011】
第1の発明によれば、シールド層を有する波付管の内部に電線が挿通された際に、センタリング部材によって、電線がシールド管の断面略中央に保持される。したがって、波付管に形成されるシールド層と電線との距離が、波付管の断面において全周に渡って略一定となる。このため、シールドケーブルのシールド特性を、シールドケーブルの周方向において略一定とすることができる。
【0012】
また、センタリング部材の外径が波付管の小径部の内径よりも大きく、大径部に嵌り込むことが可能であるため、センタリング部材を取りつけた電線を波付管に挿通した状態で、電線が波付管の軸方向に移動することを抑制することができる。このため、シールドケーブルの運搬中等において、電線を波付管にテープ等によって固定する必要がない。
【0013】
なお、センタリング部材の外径とは、センタリング部材に電線を挿通して固定した状態で、電線を中心として、センタリング部材の最も中心から離れた位置をセンタリング部材の外径部としたときに、中心から外径部までの距離を、センタリング部材の径を指すものとする。
【0014】
また、シールドケーブルの端部には、端部センタリング部材を配置し、端部センタリング部材が波付管の大径部の内面に接触するように配置することで、シールドケーブルのシール材としての機能を奏する。すなわち、シールドケーブル内部への水等の浸入を防止することができる。
【0015】
なお、確実にシール効果を得るために、端部センタリング部材は他の部位のセンタリング部材よりも高い剛性を有することが望ましい。このように端部センタリング部材は、他の部位のセンタリング部材より剛性が高いものの、センタリング部材の外径部が波付管の大径部に挿入することができる程度の剛性にすることで、センタリング部材を挿入後には波付管の内面との間に隙間が形成することがない。この場合でも、端部センタリング部材は、電線挿通後にシールドケーブルの端部から設置することができるため、電線の挿通作業には影響がない。
【0016】
第2の発明は、第1の発明にかかるシールドケーブルが、部分的に屈曲部を形成して敷設され、前記シールドケーブルの直線部における前記センタリング部材の配置間隔に対し、前記シールドケーブルの屈曲部における前記センタリング部材の配置間隔が小さくなるように複数の前記センタリング部材が前記電線の外周に配置されることを特徴とするシールドケーブルの敷設構造である。また、第3の発明は、シールド管への電線の挿通方法であって、電線の外周に、弾性体であるセンタリング部材を所定の間隔で配置する工程aと、前記電線をシールド層を有する波付管に挿通する工程bと、を具備し、前記センタリング部材の外径は、前記波付管の小径部の内径よりも大きく、前記センタリング部材の外周部が前記波付管の内面の大径部に嵌り込むことが可能であり、前記電線が前記波付管に挿通された状態で、前記電線を前記波付管の略中央に保持することが可能であり、前記工程aにおいて、敷設後のシールドケーブルの直線部に対応する部位の前記センタリング部材の配置間隔に対し、敷設後のシールドケーブルの屈曲部に対応する部位の前記センタリング部材の配置間隔が小さくなるように複数の前記センタリング部材を前記電線の外周に配置することを特徴とするシールド管への電線の挿通方法である。
【0017】
第2、第3の発明によれば、シールド管が波付管であるため、容易に屈曲部を形成してシールドケーブルを敷設することができる。また、シールドケーブルの屈曲部におけるセンタリング部材の配置間隔を、直線部における配置間隔より狭くすることで、屈曲部おいても確実に内部の電線をシールド管の断面中央に保持することができる。
【0018】
また、シールドケーブルの直線部では、センタリング部材の設置を減らすことで、センタリング部材の使用量を減らすことができる。このため、コストダウンを可能とするとともに、電線を波付管に挿通する際の挿通抵抗を小さくすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、シールド管に電線が挿通された際に、シールド管の周方向に対して略均一なシールド特性を得ることが可能なシールドケーブルおよびシールドケーブルの敷設構造等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】シールドケーブル1を示す図で(a)は正面図、(b)は正面断面図。
【図2】センタリング部材7a近傍の拡大図で、(a)は図1(b)のA部拡大図、(b)は(a)のE−E線断面図。
【図3】センタリング部材7b近傍の拡大図で、(a)は図1(b)のB部拡大図、(b)は(a)のH−H線断面図。
【図4】シールド管3に電線5を挿通する状態を示す図。
【図5】シールド管3に電線5を挿通する状態を示す図であって、センタリング部材7a近傍の拡大図。
【図6】シールドケーブル敷設構造17を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態にかかるシールドケーブル1について説明する。図1は、シールドケーブル1を示す図で、図1(a)はシールドケーブル1の正面図、図1(b)は図1(a)の軸方向の断面図である。シールドケーブル1は、主にシールド管3、電線5等から構成される。
【0022】
シールド管3は、可撓性を有する樹脂製の波付管から構成される。シールド管の少なくとも外面には、金属層であるシールド層が形成される。シールド層としては、例えば金属メッキ(無電解メッキおよび電解メッキの二重構造)が樹脂管体の表面に設けられてもよく、金属テープや金属メッシュ等が樹脂管体の外周に巻き付けられて構成されてもよい。いずれにしてもシールド管3は、シールド層が形成された状態で、可撓性を有する波付管であればよい。
【0023】
シールド管3内部には、電線5が挿通される。被覆線である電線5の両端部には、図示を省略した端子が接続される。なお、本発明においては、電線5に端子が接続される前の状態(図1(a)の状態)についても、シールドケーブルと称するものとする。
【0024】
図1(b)に示すように、シールド管3の内部おいて、電線5の外周には所定の間隔でセンタリング部材7aが設けられる。また、シールドケーブル1の両端部近傍(シールド管3の両開口部近傍)には、必要に応じて、端部センタリング部材であるセンタリング部材7bが設けられる。
【0025】
図2は、センタリング部材7a近傍の拡大図であり、図2(a)は図1(b)のA部拡大図、図2(b)は図2(a)のE−E線断面図である。センタリング部材7aは、電線5の外周に固定される。例えば、電線5の外径よりもわずかに小さな内径の穴を形成して、電線5を当該穴に挿通し、電線5とセンタリング部材7aとを固定してもよい。この場合、センタリング部材7aの端面にテーパ形状を設けることで、電線5をセンタリング部材7aに挿通することが容易となる。
【0026】
なお、センタリング部材7aと電線5との摩擦力を、後述する電線5をシールド管3に挿通する際のセンタリング部材7aに生じる抵抗力よりも大きくすることで、電線5をシールド管3に挿通する際に、センタリング部材7aが電線5の軸方向に移動することがない。また、接着剤等を用いて電線5の所定の位置にセンタリング部材7aを固定してもよい。この場合、センタリング部材7aと電線5との接着力を、後述する電線5をシールド管3に挿通する際のセンタリング部材7aに生じる抵抗力よりも大きくすることで、電線5をシールド管3に挿通する際に、センタリング部材7aが電線5の軸方向に移動することがない。
【0027】
また、センタリング部材7aの外形は、図に示した十字型のように、複数本の舌片を、電線5を中心として放射状に形成してもよく、矩形、三角形等の多角形や、シールド管の形状に応じた円形等としてもよい。いずれにしても、センタリング部材7aによって電線5がシールド管3の断面において略中央に保持されれば良い。
【0028】
ここで、波付管であるシールド管3の小径部11の内径(波付管の谷部における内径であり、シールド管3の最小内径)をDとし、センタリング部材7aの外径(センタリング部材7aを電線5に固定した状態における、電線5を中心とした最大外径)をCとすると、CはDよりも大きい。すなわち、C>Dの関係となる。
【0029】
また、センタリング部材7aの厚み(図中F)はシールド管3の波形状における大径部9の幅(シールド管3の軸方向の長さであって図中G)よりも小さい。したがって、センタリング部材7aは、シールド管3の大径部9に嵌り込み、シールド管3に対して保持される。なお、センタリング部材7aの外周は、必ずしも全周に渡ってシールド管3の大径部9の内面に接触している必要はない。
【0030】
センタリング部材7aとしては、弾性変形が可能な樹脂製である。センタリング部材7aは、電線5の重量によってセンタリング部材7aが潰れることなく、電線5を保持可能な範囲で容易に変形が可能な部材で形成される。
【0031】
なお、図2(a)に示す例では、センタリング部材7aは、全体に渡って略一定の肉厚(図中F)で構成されるが、本発明はこれに限られない。電線5から離れるにつれて、徐々に薄肉となるように形成してもよく、また、センタリング部材7aの外周部(例えば小径部Dに対応する範囲の外側)のみを薄肉部としてもよい。この場合には、当然、大径部9に嵌る部分のセンタリング部材7aの厚みFのみを大径部の幅Gよりも小さくすればよい。また、電線5との接触部長さを、電線とセンタリング部材との間の必要な摩擦力(または接着力)が得られるだけの長さとして、当該接触部とセンタリング部材の外周部との厚みを同一としてもよい。
【0032】
図3は、センタリング部材7b近傍の拡大図であり、図3(a)は図1(b)のB部拡大図、図3(b)は図3(a)のH−H線断面図である。センタリング部材7bは、センタリング部材7aと略同様の構成である。センタリング部材7bは、電線5の外周と密着しており、さらに、シールド管3の大径部9の内面に全周に渡って接触する。すなわち、センタリング部材7bはシールド管3の形状に応じた外形を有し、大径部9の内径よりもわずかに大きな外径を有する。
【0033】
センタリング部材7bは、センタリング部材7aよりも高い剛性を有する。例えば、センタリング部材7bは、センタリング部材7aよりも厚肉に形成される。このため、電線5に張力等が付与されても、センタリング部材7bはシールド管3に固定され、電線5が軸方向に容易に動くことがない。また、センタリング部材7bとシールド管3の大径部9の内面との間に隙間が形成されることがない。
なお、センタリング部材7bの外周部とシールド管3の内周面との間の摩擦係数が十分に大きければ、センタリング部材7bをシールド管3の小径部11に配置してもよい。
【0034】
次に、シールドケーブル1の製造方法を説明する。まず、必要な長さにシールド管3および電線5を切断し、電線5の外周にセンタリング部材7aを所定の間隔で設置する。この際、電線5の所定の部位には、隣り合うセンタリング部材同士の間隔が狭い(図中J)狭ピッチ部15と、隣り合うセンタリング部材同士の間隔が広い(図中I)広ピッチ部13とが形成される。なお、狭ピッチ部15と、広ピッチ部13の位置については後述する。
【0035】
次いで、センタリング部材7aが固定された電線5を、シールド管3端部から内部に挿通する(図中矢印K方向)。
【0036】
図5は、電線5をシールド管3に挿通する際におけるセンタリング部材7a近傍を示す図である。前述したように、センタリング部材7aの外径はシールド管3の小径部11の内径よりも大きい。このため、センタリング部材7aが小径部11を軸方向に移動する際には、センタリング部材7aの外周部近傍は変形する(図5(a))。
【0037】
この状態でさらに電線5を軸方向に押し込むと(図中矢印L)、センタリング部材7aが大径部9の位置まで移動し、元の形状に戻る(図5(b)。したがって、センタリング部材7aが大径部9に嵌り込む。この状態からさらに電線5を軸方向に押し込むと(図中矢印L)、再度、センタリング部材7aは弾性変形しながら小径部11の位置まで移動する(図5(a))。以上を繰り返しながら、センタリング部材7aが固定された電線5がシールド管3に挿通される。
【0038】
シールド管3の全長に渡って電線5が挿通されると、最後に、シールド管3の両端部側からセンタリング部材7bが取り付けられる。例えば、センタリング部材7bの中央の穴に電線5を挿入して、シールド管3の開口部近傍の大径部9にセンタリング部材7bを押し込めば良い。センタリング部材7bは剛性が高いが、シールド管3の端部に強く押しこむことで、センタリング部材7bおよびシールド管3が弾性変形して、センタリング部材7bを大径部9にはめ込むことができる。
【0039】
シールド管3の両側にセンタリング部材7bを設けることで、シールドケーブル1が完成する。なお、シールドケーブル1において、電線5に固定される全てセンタリング部材7aが、必ずしも全てシールド管3の大径部9に嵌り込んでいる必要はない。すなわち、おおよそ半数のセンタリング部材7aは、大径部9に嵌り込んだ状態となる。一方、残りのセンタリング部材7aは、変形した状態で小径部11上に位置する。この状態でも、大径部9に嵌り込んだセンタリング部材7aによって、電線5の軸方向への移動が抑制される。
【0040】
次に、本発明のシールドケーブル1を用いたシールドケーブル敷設構造について説明する。図6は、シールドケーブル敷設構造17を示す図である。なお、敷設されるシールドケーブルの形態は、図示した例に限られない。
【0041】
シールドケーブル1は、例えば自動車の下部に、所定のレイアウトで敷設され、車体等に所定間隔で固定される。この際、シールドケーブル1は、部分的に直線形状となる直線部19と、シールドケーブル1が所定の曲率で曲げられて敷設される屈曲部21が形成される。なお、屈曲部21は、必ずしも図示した曲げ形態に限られず、レイアウトに応じて適宜曲げ角度や曲げ半径が設定される。
【0042】
前述の通り、内部に挿通される電線5には、所定間隔でセンタリング部材7aが設けられる。また、センタリング部材7aの配置間隔としては、広ピッチ部13と狭ピッチ部15とが設けられる。ここで、直線部19に対応する部位には広ピッチ部13が位置し、屈曲部21には狭ピッチ部15が位置するようにセンタリング部材7aが配置される。
【0043】
すなわち、屈曲部21においては、電線5が曲げられるため、シールド管3の断面における電線5の位置が変化しやすい。このため、センタリング部材7aを多く配置して、電線5をシールド管3の断面中央位置に確実に保持する。
【0044】
一方、直線部19においては、電線5は、自重等に伴う撓みによる位置変化を考慮すればよい。このため、センタリング部材7aの配置密度を小さくしても、電線5をシールド管3の断面中央位置に保持することができる。
【0045】
なお、本実施形態においては、直線部19と屈曲部21との二つの状態に分けて、それぞれの部位を広ピッチ部13、狭ピッチ部15としたが、本発明はこれに限られない。例えば、屈曲部の曲げ半径に応じてセンタリング部材7aのピッチを細かく設定してもよい。すなわち、曲げ半径の大きな部位では、センタリング部材7aを、直線部と比較して大きな密度で配置し、さらに曲げ半径の小さな部位では、センタリング部材7aをさらに高密度に配置することもできる。
【0046】
以上、本実施の形態によれば、シールド管3の内部において、電線5を、シールド管3の断面の略中央に保持することができる。このため、電線5とシールド管3のシールド層との距離がどの方向でも略一定となる。したがって、シールドケーブル1の全周に渡って略均一なシールド特性を得ることができる。
【0047】
また、センタリング部材7aの外径は、シールド管3の小径部11の内径よりも大きい。このため、センタリング部材7aによってシールド管3に対する電線5の軸方向への移動が抑制される。このため、輸送時や敷設時において、電線5の端部がシールド管3内部に入り込んだり、電線5がシールド管3から抜け落ちたりすることがない。
【0048】
また、センタリング部材7aは容易に変形可能であるため、電線5をシールド管3に挿通する際には、センタリング部材7aの外周部が、変形と大径部9への嵌り込みを繰り返しながら、容易に軸方向に移動することができる。このため、電線5をシールド管3に容易に挿通することができる。
【0049】
また、シールドケーブル1の両端部においては、センタリング部材7bが設けられ、センタリング部材7bの外周部が大径部9の内面に接触する。また、センタリング部材7bと電線5とは密着する。このため、シールドケーブル1の両端部がシールド部材7bによって密閉される。したがって、別途シール部材等によってシールすることなく、センタリング部材7bによって、シールドケーブル内部への水等の浸入を防止することができる。
【0050】
なお、センタリング部材7bはセンタリング部材7aよりも剛性が高いが、センタリング部材7aと異なり、電線5とともにシールド管3に挿通されることがない。このため、センタリング部材7bによって、電線5の挿通作業性には悪影響がない。
【0051】
また、センタリング部材7bはシールドケーブル1の両端部のみに設けられる。このため、シールド管3の開口部からセンタリング部材7bを押し込むことができる。また、センタリング部材7bは剛性が高いため、電線5に対して張力等が付与されても、容易には動くことがなく、シールド管3の内面に常に押圧される。したがって、シール性を確実の確保することができる。
【0052】
また、シールドケーブル1を敷設した状態において、屈曲部21に対応する部位には、センタリング部材7aを高密度(狭い間隔)で配置することで、確実に電線5をシールド管3の断面略中央に保持することができる。また、シールドケーブル1を敷設した状態において、直線部19に対応する部位には、センタリング部材7aを小密度(広い間隔)で配置することで、電線5の挿通性を必要以上に悪くすることがなく、使用部品数を削減することができる。
【0053】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0054】
1………シールドケーブル
3………シールド管
5………電線
7a、7b………センタリング部材
9………大径部
11………小径部
13………広ピッチ部
15………狭ピッチ部
19………直線部
21………屈曲部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド層を有する波付管と、
前記波付管に挿通される電線と、
センタリング部材と、を具備するシールドケーブルであって、
前記電線の外周には、
弾性体である前記センタリング部材が所定の間隔で配置され、
前記センタリング部材の外径は、前記波付管の小径部の内径よりも大きく、前記センタリング部材の外周部が前記波付管の内面の大径部に嵌り込むことが可能であり、前記電線を前記波付管の略中央に保持可能であることを特徴とするシールドケーブル。
【請求項2】
前記シールドケーブルの両端部近傍には、端部センタリング部材が設けられ、前記端部センタリング部材は、他の部位の前記センタリング部材よりも高い剛性を有し、前記端部センタリング部材の外周面が前記波付管の大径部の内周面と接触することを特徴する請求項1記載のシールドケーブル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のシールドケーブルが、部分的に屈曲部を形成して敷設され、
前記シールドケーブルの直線部における前記センタリング部材の配置間隔に対し、前記シールドケーブルの屈曲部における前記センタリング部材の配置間隔が小さくなるように複数の前記センタリング部材が前記電線の外周に配置されることを特徴とするシールドケーブルの敷設構造。
【請求項4】
シールド管への電線の挿通方法であって、
電線の外周に、弾性体であるセンタリング部材を所定の間隔で配置する工程aと、
前記電線をシールド層を有する波付管に挿通する工程bと、
を具備し、
前記センタリング部材の外径は、前記波付管の小径部の内径よりも大きく、前記センタリング部材の外周部が前記波付管の内面の大径部に嵌り込むことが可能であり、前記電線が前記波付管に挿通された状態で、前記電線を前記波付管の略中央に保持することが可能であり、
前記工程aにおいて、敷設後のシールドケーブルの直線部に対応する部位の前記センタリング部材の配置間隔に対し、敷設後のシールドケーブルの屈曲部に対応する部位の前記センタリング部材の配置間隔が小さくなるように複数の前記センタリング部材を前記電線の外周に配置することを特徴とするシールド管への電線の挿通方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−152045(P2012−152045A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9420(P2011−9420)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】