説明

シールド掘進機およびセグメントリングの組み立て精度管理方法

【課題】エレクターで組み立てたセグメントリングの真円度を高精度に計測し得る計測手段を備えたシールド掘進機を提供する。
【解決手段】円筒状の覆工体に既構築されている最前部のセグメントリング24に継ぎ足して複数のセグメント22を円筒状に組み立てるエレクタ26の後方部に、組み立てられたセグメントリング24の真円度を計測する計測手段40が設けられたシールド掘進機2において、該計測手段40を、該セグメントリング24よりも直径が小さくて中心が該シールド掘進機2の軸芯に一致されて設けられた円環状の測定基準フレーム401と、該測定基準フレームに取り付けられて該セグメントリング24内面との間のクリアランスを垂直に検知する複数の非接触式のセンサー402とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シールド掘進機内の後端部に設けられたエレクターで組み立てた覆工体のセグメントリングの真円度を、当該エレクターの後方で高精度に計測し得る計測手段を備えたシールド掘進機、およびこの計測手段で計測された真円度を新たに継ぎ足して組み立てるセグメントリングの組み立て精度管理に反映させて、セグメントリングの真円度の可及的な向上を図るセグメントリングの組み立て精度管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド工法は、例えば都市土木等におけるトンネルの構築工法として一般に多用されているが、このシールド工法は、シールド掘進機の前進に伴わせてその後端部内で複数のセグメントを円筒状のセグメントリングに逐次に組み立てながら、後方の既構築のセグメントリングに継ぎ足すことによって、トンネルの掘削内周面にこれを円筒状に覆う一次覆工体を連続させて構築していくものであり、シールド掘進機はその構築した一次覆工体のセグメントリングから推進反力を得ながら前進しつつ掘進作業を行うようになっている。
【0003】
即ち、図8に示すように、上記シールド掘進機2は、多数のカッタービット4が立設されたカッター面板6を有し、このカッター面板6を回転させながらこれに対向する地山の切羽10を切り崩して掘削し、その掘削土をカッター面板6後方のチャンバー12内に取り込んで、さらに当該チャンバ12内の掘削土をスクリューコンベア14とベルトコンベア16とによって後方に搬送排出しながら前進して行くものであり、シールド掘進機2の円筒状の胴体18内の後端部には、複数のセグメント22を円筒状のセグメントリング24に組み立てていくエレクター26、およびシールド掘進機2を前進させる推進ジャッキ30が備えられている。
【0004】
また、上記エレクター26によってセグメントリング24に組み立てられるセグメント22は、立坑から既構築の覆工体内に運び込まれて当該既構築の覆工体内を通じて前方へと移送され、シールド掘進機2後端のエレクター26部近傍の仮置き場まで搬入されるようになっている。
【0005】
ところで、複数のセグメント22を円筒状のセグメントリング24に組み立てて一次覆工体として継ぎ足していくにあたっては、セグメントリング24の真円度を高精度に保って組み上げる必要がある。即ち、当該真円度が低くて円形形状の歪が大きいと、セグメントリング24の内周面に施す二次覆工の被りコンクリートの厚みを、規定値以上に確保するのが困難になってしまったり、シールド掘進機2の胴体18後端部のスキンプレート18aとセグメントリング24との間のクリアランスを、トンネル曲線部の構築時に必要な数値以上に確保することが困難になる。
【0006】
このため、従来にあっては、以下の方法でセグメントリング24の真円度を測定している。
(1)シールド掘進機2の胴体18後端部のスキンプレート18a内面とセグメントリング24外面までのクリアランスを計測して間接的に真円度を求める。
(2)スチールテープ等によりセグメントリング24の内空計測をする。
(3)光波側距機によるセグメントリング24内面の座標計測を行う。
(4)超音波による定点計測でセグメントリング24の内空計測を行う。
【0007】
しかしながら、上記の各計測方法では、次のような問題点があった。即ち、(1)の計測方法では、シールド掘進機2の胴体18後端部のスキンプレート18aが真円であることを前提としているが、当該スキンプレート18aは土圧の影響で歪みが生じてしまう事を避けがたく、高精度な測定は望むことができない。(2)の計測方法では、シールド掘進機2に内蔵されたスクリューコンベア14やベルトコンベヤ16(泥水式の場合は泥水配管)等の機器が邪魔になって、セグメントリング24の中心部での計測が困難になってしまう。(3)の計測方法では、計測に時間を要してしまう。(4)の計測方法では、機械装置が高価な上、セグメントリング24の表面に付着する汚れや湧水によって計測誤差が生じてしまう。
【0008】
そこで、上記のような問題点を改善し得るものとして、下記の特許文献1,2等に示されているようなセグメントリングの形状測定方法(真円度測定方法)が提案されている。
【0009】
即ち、特許文献1にて提案された方法にあっては、シールド掘進機の内側にシールド掘進機の軸線と平行に枢支軸を取付け、この枢支軸にはセグメント内面に対向する部位に非接触式距離計を当該枢支軸に直交する方向に指向させて、かつ当該枢支軸の回りに回転自在に枢支して計測装置を構成し、シールド掘進機に対する枢支軸の中心線の位置を計測するとともに、回転角度を計測しながら距離計を枢支軸の回りに回転させて中心線からセグメントの内面上の複数の対向点までの距離を計測して、中心線の位置と計測された三点以上の対向点の各々に対する距離と距離計の回転角度とからシールド掘進機に対するセグメントの内面の断面形状を求めるようにしている。
【0010】
また、特許文献2にて提案された方法にあっては、シールド掘削機のエレクターにおいて、そのグリツプ装置に2つの距離計を設けて、一方の距離計によってグリップ装置からスキンプレート内周面までの距離l1を計測するとともに、他方の距離計によってセグメント内周面までの距離l2を計測し、かつ昇降装置の油圧ジヤツキのストロークを検出してエレクタの中心から各距離計までの距離l3を算出して、エレクタの中心からスキンプレートまでの距離L1=l1+l3を算出し、さらにエレクタの中心からセグメント内周面までの距離L2=l2+l3を算出する。そして、旋回リングを旋回させてグリツプ装置と距離計とを周方向に移動させて、複数部位の距離L1,L2を算出することでスキンプレートの全体形状またはセグメントの組み立て形状を計測するようにしている。
【特許文献1】特開平7−224600号公報
【特許文献2】特開平8−326496号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、シールド掘進機2内の中心部近傍にはスクリューコンベア14(泥水式のシールド掘進機の場合には泥水配管)等の様々な機器が設けられるので、上記特許文献1に記載された形状測定方法のように、距離計を取り付ける旋回軸をシールド掘進機2の中心部に設けることはスペース上の点から非常に困難であるばかりか、スクリューコンベア14等の諸機器が距離計による計測の邪魔になってしまうという課題がある。
【0012】
また、上記特許文献2に記載された形状測定方法のように、距離計をエレクター26のグリップ装置に取り付けて、エレクター26を旋回させながら複数部位の距離L1,L2を算出するようにすると、そもそもエレクター26はその旋回時に回転軸心の軸ブレが生じる等、その旋回運動自体の精度があまり高くないので、必然的に計測精度の誤差が大きくなってしまうことを避け難いという課題がある。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シールド掘進機後端に設けられたエレクターで組み立てた覆工体のセグメントリングの真円度を、当該エレクターの後方で高精度に計測し得る計測手段を備えたシールド掘進機、およびこの計測手段で計測された真円度を、新たに継ぎ足してリング状に組み立てるセグメントの組み立て精度管理に反映させて、セグメントリングの真円度の可及的な向上を図り得るセグメントリングの組み立て精度管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために本願の請求項1に係るシールド掘進機の発明では、円筒状に既構築されている最前部のセグメントリングに継ぎ足して、複数のセグメントを胴体内の後端部で円筒状に組み立てるエレクターの後方部に、該エレクタで組み立てられたセグメントリングの真円度を計測するための計測手段が設けられたシールド掘進機において、該計測手段が、該セグメントリングよりも直径が小さくて中心が該シールド掘進機の軸芯に一致されて設けられた円環状の測定基準フレームと、該測定基準フレームに取り付けられて該セグメントリング内面との間のクリアランスを検知する複数の非接触式のセンサーとを有していることを特徴とする。
【0015】
ここで、請求項2に示すように、前記測定基準フレームは、シールド掘進機の後端部から後方に延出されて該シールド掘進機の胴体に一体的に設けられた張り出し架台に支持されて設けられている構成となし得る。
【0016】
また、請求項3に示すように、前記張り出し架台には、その延出方向に沿ってガイドレールを設けて、前記測定基準フレームを該ガイドレールに案内させて前後に移動可能に設ける構成となし得る。
【0017】
また、請求項4に示すように、前記張り出し架台には、前記ガイドレールに案内されて前後に移動可能な真円保持用ジャッキが上下に延びて設けられている構成となし得る。
【0018】
また、本願の請求項5に係るセグメントリングの組み立て精度管理方法の発明では、前記請求項1に記載のシールド掘進機において、前記既構築のセグメントリングに複数の新たなセグメントを継ぎ足して円筒状に組み立てるに際し、直前に組み立ての終了した最前端のセグメントリングの真円度を、前記計測手段によって前記各センサーの配設部位のクリアランスを測定することで検知し、該検知したクリアランス値を基準値と比較してその大小に応じて、新たに継ぎ足すセグメントのクリアランスが該基準値に近づくようにその組み付け位置を補正して最前端のセグメントリングに接合固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
上記の構成による本発明に係るシールド掘進機によれば、セグメントリングよりも直径が小さくて中心が該シールド掘進機の軸芯に一致されて設けられた円環状の測定基準フレームに、セグメントリングの真円度を計測する複数の非接触式のセンサーが設けられているので、土圧の影響を全く受けない当該測定基準フレームを定規材にしてセグメントリングの真円度を計測でき、もって高精度な計測が行え、しかもシールド掘進機の内蔵機器の影響を受けることなく計測が可能となる。
【0020】
また、セグメントリングの内周面に対するクリアランスを垂直に計測するので、セグメントリング内表面に漏れ出る湧水や汚れによる誤差がない。
【0021】
測定基準フレームを前後に移動可能に設ければ、シールド掘進機の掘進中からセグメントの組み立て時において、並行してクリアランスの計測をすることも可能になるので、計測のみに要する時間を可及的に短縮して掘進作業進捗への影響を低減することができる。
【0022】
また、上記の本発明に係るセグメントリングの組み立て精度管理方法によれば、組み立て直後のセグメントリングの真円度を計測して、この計測値を次に組み付けるセグメントの組み立て精度管理情報として反映させて、セグメントリングを可及的に高精度な真円度で組み立てて逐次に構築し続けていくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明に係るシールド掘進機、および当該シールド掘進機を用いて行うセグメントリングの組み立て精度管理方法の好適な一実施の形態について、添付図面に基づいて詳述する。なお、図 の概略構成図を用いて説明したシールド掘進機2の基本構成は本実施形態のシールド掘進機にも共通したものであるので、同一部材には同一の符号を付してその説明は省略し、以下には本願発明の要部となっているシールド掘進機後端部について説明する。
【0024】
図1はシールド掘進機後端部の側断面図であり、図2は図1中のII−II線矢視断面図、図3(a)は図2中のIII−III線矢視断面図であって、同図(b)は(a)中に示されている張り出し架台を抜き出して示した図である。また、図4は計測手段のセンサー取り付け部分を拡大して示した図であり、図5は計測手段の支持フレームの概略構成を示す斜視図、図6は推進ジャッキとエレクターとを支持した環状フレームを後方より見た図であり、図7は図6中のVII−VII線矢視断面図である。
【0025】
図1〜図3において、18aはシールド掘進機2の胴体18の後端部外郭を形成するスキンプレートであり、22はセグメント、24は円筒状に組まれて一次覆工体を形成するセグメントリングである。図1及び図3(a)に示すように、上記スキンプレート18aの内周面には、シールド掘進機2を推進させるための推進ジャッキ30と、セグメント22を組み立てるエレクター26とを支持する環状フレーム34が設けられている。
【0026】
この環状フレーム34には、図6と図7とに示すように、多数の推進ジャッキ30が円周方向に沿って取り付けられている。なお、図6では推進ジャッキ30は下部に取り付けられているものだけを図示して他は省略してある。
【0027】
また、環状フレーム34の内周部には、エレクター26の旋回リング261が設けられている。この旋回リング261は中央部が開放された環状をなしており、その外周面が環状フレーム34の内周部に周方向に沿って適宜間隔を空けて取り付けられている複数の支持ローラ262によって支持されている。即ち、当該支持ローラ262を介してシールド掘進機2の軸心周りに旋回可能に設けられている。また、図6に示すように、旋回リング261には、その前側端面の外周部に沿って外歯ギヤ263が設けられており、この外歯ギヤ263には、環状フレーム34に取り付けられた原動機264の駆動軸に設けられているピニオンギヤ265が噛み合わされていて、当該原動機264によって旋回リング261が旋回駆動されるようになっている。
【0028】
また、図6と図7とに示すように、旋回リング261の後ろ側端面には、その旋回駆動時の基準となる姿勢位置において左右対称となる部位に、一対の支持ステー266が後方に突出されて一体的に設けられており、この各支持ステー266には上下に摺動する摺動ロッド267が嵌合され、かつ当該各摺動ロッド267の下端にはこれらを繋いで中央部が下方にくの字状に屈曲するクロスメンバー268が取り付けられている。そして支持ステー266には、クロスメンバー268を径方向に移動させるための駆動ジャッキ269が取り付けられ、この駆動ジャッキ269の作動ロッドがクロスメンバー268に繋がれている。さらに、クロスメンバ268の中央部には前後方向に伸縮する左右一対の駆動ジャッキ270を介して、セグメント22を保持するためのグリツプ装置271が取り付けられている。
【0029】
また、図1に示すように、旋回リング261の内側には、スクリューコンベア14が挿通されている。このスクリューコンベア14は、図示する左方の前方側がシールド掘進機2の前端側に設けられて掘削土を取り込む図外のチャンバ内に挿入接続されている。一方、スクリューコンベア14の図示する右方の後方側は、シールド掘進機2の後端部からその後方に斜め上に向けて突出されて設けられている。そして、図1〜図3(a)に示すように、このスクリューコンベア14の左右両側を挟むようにして、一対の張り出し架台32がシールド掘進機2後端部から後方に向けて水平に延出されて設けられている。なお、図2及び図3(a)では、スクリューコンベア14は省略してある。また、図3(b)は(a)中に示されている上記張り出し架台32を単独に抽出して示したものである。
【0030】
図1と図3とに示すように、上記張り出し架台32は、前端部側が環状フレーム34に一体的に結合されている上下2本の主ビーム321a,321bを有しており、当該上下の主ビーム321a,321bの後端には、それらを縦に一体的に繋ぐ連結部材322が設けられている。また、図2と図3とに示すように、下側ビーム321bには、前記エレクター26よりも後方でこれに近接する部位とその延出された後端部とに位置されて、外側方に向けて横に突出する2本のクロスビーム323が設けられている。そして、これら2本のクロスビーム323,323間には、これらのクロスビーム323,323を連結する3本のサイドビーム324が掛け渡されて主ビーム321bと平行に設けられている。そして、これら3本のサイドビーム324のうちの1本は、2本のクロスビーム323の突出端間を繋いで設けられており、他の2本はクロスビーム323の突出方向の中間部に相互に所定間隔を空けて配設されている。
【0031】
また、上記中間部に配された2本のクロスビーム324上には、これに沿って一対のガイドレール325が設けられている。即ち、ガイドレール325は張り出し架台32の延出方向(即ち、前後方向)に沿って配設されている。そして、このガイドレール325上には、矩形フレーム台車326が走行自在に設けられ、この矩形フレーム台車326には、これに一体的に支持されてその中央部を貫通する真円保持用ジャッキ327が設けられている。ここで、上記ガイドレール325は、矩形フレーム台車326がセグメントリング24のリング長w以上の距離を移動し得るようにその長さが設定されており、図示例ではセグメントリング24の約2つ分に近い長さになっている。つまり、真円保持用ジャッキ327の前後への移動ストロークlは上記リング長w以上(l≧w)に設定されている。また、矩形フレーム台車326には、その後端部側にこれを前後に走行駆動させる駆動用ジャッキ332が接続されていて、この駆動用ジャッキ332は張り出し架台32上に支持されて設けられている。
【0032】
ここで、上記真円保持用ジャッキ327は、組立が完了した直後のセグメントリング24がその自重や土圧等によって扁平に変形するのを防止するためのものであって、当該真円保持用ジャッキ327は上方に伸縮する上側ジャッキ327aと下方に伸縮する下側ジャッキ327bとを一対で有している。そして、上側ジャッキ327aの作動ロッドには、前後に二股に分岐形成されて鉛直に延びる上部側当接部材328が取り付けられ、その二股状の各上端部には、セグメントリング24の内周面形状に沿って円弧状に形成されている上部クロスメンバー330が接合されていて、当該クロスメンバー330の両端は左右対称に配設されている他方の上部側当接部材328の二股状の各上端部に掛け渡されて一体的に、前後一対で設けられている。即ち、左右対称に配置された真円保持用ジャッキ327の上部側の作動ロッドを伸長させると、前後一対の上部クロスメンバ330がセグメントリング24上側部の内周面に当接する様になっている。
【0033】
一方、真円保持用ジャッキ327の下部側の作動ロッドには、横方向外側から下方に向けてL字状に屈曲して突出する下部側当接部材329が取り付けられている。そして、当該下部側当接部材329の下端部には、やはりセグメントリング24の内周面形状に沿って円弧状に形成されている下部クロスメンバー331がその両端を、左右対称に配設されている他方の下部側当接部材328の下端部に掛け渡されて一体的に設けられている。即ち、左右対称に配置された真円保持用ジャッキ327の下部側の作動ロッドを伸長させると、下部クロスメンバ331がセグメントリング24下側部の内周面に当接する様になっている。
【0034】
つまり、セグメントリング24に作用する自重や土圧等の上下方向の圧縮変形力を、上部と下部とのクロスメンバー330,331で受けて、その圧縮変形力を真円保持用ジャッキ327の突っ張り力によって抵抗するようになっている。なお、当該真円保持用ジャッキ327を使用した真円保持作動は、セグメントリング24の組み立て完了後において、少なくとも、セグメントリング24の外周面と地山との間の空隙内に裏込め材を十分に充填し終わる迄の間に亘って行えば良い。
【0035】
ところで、本実施形態にあっては、上記エレクタ26によって組み立てられたセグメントリング24の真円度を計測するための計測手段40が、上記矩形フレーム台車326の前端部に支持されて設けられている。この計測手段40は、セグメントリング24よりも直径が小さくて中心がシールド掘進機2の軸芯に一致されて設けられた円環状の測定基準フレーム401と、この測定基準フレーム401に取り付けられてセグメントリング24の内面との間のクリアランスを定点で垂直に検知する複数の非接触式のクリアランスセンサー402と、測定基準フレーム401を上記矩形フレーム台車326に支持して、当該矩形フレーム台車326を介して張り出し架台32に支持させる支持フレーム403と、上記センサー402からの信号を受けてクリアランスを算出する計測器本体(図示省略)とからなる。
【0036】
測定基準フレーム401はH形鋼を円環状に湾曲形成したものであり、このH型鋼でなる測定基準フレーム401は、図4の部分拡大図に示すように、ウエブ部分がセグメントリング24の内周面と対面するように向けられて円環状に湾曲形性されていて、当該ウエブ部分に多数の非接触式のクリアランスセンサー402が相互に所定間隔を隔てて周方向に沿って取り付けられるようになっている。ここで図2に示すように、この実施形態にあっては、クリアランスセンサー402は放射状に等間隔で交叉する4つの直径上にそれぞれ一対ずつの計8個が配置され327て設けられている。
【0037】
上記測定基準フレーム401を支持する支持フレーム403は、図1〜図3及び図5に示すように、矩形フレーム台車326の前端部に上下に延びて鉛直に取り付けられた台車側フレーム404を有している。この台車側フレーム404はその上下端が前方に向けて直角に屈曲延出形成されていて、側面視でコ字状をなしている(図1参照)。そして、この台車側フレーム404の上端側の延出端には、これより上方に向けて鉛直延びて測定基準フレーム401の上部に一体的に結合された上部側支持フレーム405が固設されている。また、この上部側支持フレーム405の上側部には、横方向外側に延びて測定基準フレーム401に一体的に結合された補剛部材406が設けられている。上部側支持フレーム405と補剛部材406とは、H型鋼でなる測定基準フレーム401のフランジ部の外面に一体結合されており、左右対称に一対で配設される上部側支持フレーム405の上端部間には、測定基準フレーム401の上部を形成しているH型鋼のフランジ部の外面に沿って円弧状に湾曲形成されて当該フランジ部に接合された上部クロスフレーム407が一体的に掛け渡されている。
【0038】
一方、台車側フレーム404の下端側の延出端は張り出し架台32の前方のクロスビーム323の下を潜って前方に突出しており、その延出端には横方向外側に向けて延びて測定基準フレーム401に一体的に結合された下部側支持フレーム408が固設されている。また、この下部側支持フレーム408の途中には、縦方向下側に延びて測定基準フレーム401に一体的に結合された補剛部材409が設けられている。下部側支持フレーム408と補剛部材409とは、やはりH型鋼でなる測定基準フレーム401のフランジ部の外面に一体結合されており、左右対称に一対で配設されている下部側支持フレーム408の延出端部間には、測定基準フレーム401の下部を形成しているH型鋼のフランジ部の外面に沿って円弧状に湾曲形成されて当該フランジ部に接合された下部クロスフレーム410が一体的に掛け渡されている。
【0039】
即ち、測定基準フレーム401は支持フレーム403を介して矩形フレーム台車326に支持されており、矩形フレーム台車326の前後への走行移動によって、真円保持用ジャッキ327と共に一体となって前後にセグメントリング24のリング長w以上の距離lを移動し得る様になっている。
【0040】
次ぎに、上記の様に構成された計測手段40と真円保持用ジャッキ327とを後端部に備えたシールド掘進機2の推進とこれに伴うセグメントリング24の組み立て・計測・真円保持工程とについて説明する。
【0041】
先ず、図1及び図2に示すように、既構築の覆工体の最前端に位置している組み立て済みのセグメントリング24の内周面には、上下のクロスメンバー330,331が真円保持用ジャッキ327(327a,327b)の伸長によって当接されていて、その自重による変形が抑制されている。即ち、真円保持用ジャッキ327と計測手段40とを支持した矩形フレーム台車326は、その駆動ジャッキ332が伸長されてガイドレール325の前端側に位置されている。なお、図1では未伸長状態の真円保持用ジャッキ327が示されている。そして、この状態において、シールド掘進機2の推進ジャッキ30は上記最前端のセグメントリング24の前端面に当接している(図1の上側の推進ジャッキ30を参照)。
【0042】
次ぎに、当該セグメントリング24を反力受けにして推進ジャッキを伸長させながらシールド掘進機2を前進させて掘削をする。また、このシールド掘進機2の前進に同期させて矩形フレーム台車326の駆動ジャッキ332を縮短させて、真円保持用ジャッキ327によるセグメントリング24の保持状態を維持する。また、上記推進ジャッキ30の伸長によるシールド掘進機2の前進に伴って、当該最先端のシールドリング24はシールド掘進機2の胴体18後端部からその後方に相対的に抜け出していくが、その際にシールドリング24の外周面と地山との間の空隙には裏込め材が充填されていく。
【0043】
そして、シールド掘進機2がセグメントリング24の1リング分の長さwだけ前進したならば、エレクター26を用いてその最前端のセグメントリング24に新たなセグメント22を継ぎ足して更にリング状に組み立てて行く。なお、シールド掘進機2がセグメントリング24の1リング分の長さwだけ前進した時点では、真円保持用ジャッキ327と計測手段40とは、シールド掘進機2に対して相対的に後方に離間移動して、図1中に二点鎖線で示してある位置まで後退することになる。また、新たなセグメント22の組み立てに際しては、通常は下部に位置するセグメント22から順次に組み付けていく。
【0044】
即ち、新たなセグメント22を継ぎ足すにあたっては、その組み付け位置にある推進ジャッキ30を短縮させて、その組み付け部分のスペースを空けてから、セグメント22をエレクター26で所定位置まで移動して保持し、この保持した状態で最前端のセグメントリング24の前端面に新たなセグメント22を当接させて連結ボルト(図示せず)で締結固定していく。爾後、この締結固定したセグメントの前端面には短縮させてある推進ジャッキ30を再び当接させて所定の圧力で圧着保持する(図1の下側の推進ジャッキ30を参照)。そして、この圧着保持したセグメント22の円周方向の両側にも逐次に同様にしてセグメント22を組み付けていき、周方向に並設されるセグメント22,22同士もボルト(図示せず)で相互に締結固定させてリング状に形成していく。また、このリング状に形成された時点で、推進ジャッキ30はその全てが新たにリング状に組み立て形成された各セグメント22の前端面に当接して、これらを後方のセグメントリング24に所定の圧力で圧着させた状態になる。
【0045】
そして、複数のセグメント22(図示例では8個)をリング状に組み上げて新たなセグメントリング24が形成されたならば、次ぎに真円保持用ジャッキ327を短縮させてから矩形フレーム台車326の駆動ジャッキ332を伸長させて、矩形フレーム台車326を前端部まで移動させる。これに伴い、真円保持用ジャッキ327と計測手段40も新たに最前端部に形成されたセグメントリング24の内部まで移動されて行くことになる。ここで、当該移動の途中で、新たに形成された最前端部のセグメントリング24の真円度を計測手段40で計測する。
【0046】
ここで、当該計測手段40はセグメントリング24よりも直径が小さくて中心がシールド掘進機2の軸芯に一致されて設けられた円環状の測定基準フレーム401に、当該セグメントリング401の真円度を計測する複数の非接触式のセンサー402が設けられているので、土圧の影響を全く受けない上記測定基準フレーム401を定規材にしてセグメントリング24の真円度を計測できる。よって高精度な計測が行え、しかもシールド掘進機2のスクリューコンベア14等の内蔵機器の影響を受けることなく任意の位置での計測が可能となる。また、セグメントリング24の内周面に対するクリアランスを垂直に計測するので、セグメントリング24の内表面に漏れ出る湧水や汚れによる計測誤差を可及的に小さくしてほぼなくすことができる。
【0047】
さらに、測定基準フレーム401は矩形フレーム台車326に支持されて前後に移動可能に設けられているので、シールド掘進機2の掘進中からセグメントの組み立て時において、その作業に並行してそのクリアランスの計測をすることも可能であり、計測のみに無駄に時間を割くことなく、当該計測に要する時間を可及的に短縮して掘進作業進捗への影響を低減することができるようになる。また、セグメントリング24の後部側と前部側との2箇所で真円度を計測することも容易に行えるようになるので、セグメントリングの軸芯の振れの誤差も算出して把握できるようになる。
【0048】
そして、この計測された真円度及び軸芯の振れの誤差は、次のセグメントリング24の組立の際に、その組み立て精度管理情報として反映される。即ち、上述したセグメントリング24の組み立て時において、その直前に組み立てが完了した既構築の最前端のセグメントリング24に生じている真円度及び軸芯振れの誤差を検知し、このセグメントリング24に対して新たに継ぎ足して組み立てていくセグメント22を、その誤差に応じてこれ吸収する方向にずらして接合固定していく。つまり、セグメント22,22同士をボルトで締結結合する時に、各セグメント22に形成されているボルト孔とこれに挿通するボルトとの直径寸法差の遊びの範囲内で、両セグメント22,22の相互の接合位置関係をずらすことで、直前に組み立てたセグメントリング24に生じている真円度及び軸芯の振れの誤差を吸収しつつ、新たに形成するセグメントリング24を高精度に組み立てていくことができるようになる。
【0049】
なお、以上に説明した実施形態では、計測手段40はガイドレール325を介して張り出し架台32に前後にスライド移動可能に支持して設けているが、固定式となしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】シールド掘進機後端部の側断面図。
【図2】図1中のII−II線矢視断面図。
【図3】(a)は図2中のIII−III線矢視断面図、(b)は(a)中に示されている張り出し架台を抜き出して示した図である。
【図4】測定基準フレームの部分拡大図である。
【図5】測定基準フレーム。
【図6】推進ジャッキとエレクターとを支持した環状フレームを後方より見た図である。
【図7】図6中のVII−VII線矢視断面図である。
【図8】本発明と従来例とに共通するシールド掘進機の概略構成図である。
【符号の説明】
【0051】
2 シールド掘進機
18 胴体
18a スキンプレート
22 セグメント
24 セグメントリング
26 エレクター
32 張り出し架台
325 ガイドレール
327 真円保持用ジャッキ
40 計測手段
401 測定基準フレーム
402 センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状に既構築されている最前部のセグメントリングに継ぎ足して、複数のセグメントをシールド掘進機内の後端部で円筒状に組み立てるエレクターの後方部に、該エレクタで組み立てられたセグメントリングの真円度を計測するための計測手段が設けられたシールド掘進機において、
該計測手段が、該セグメントリングよりも直径が小さくて中心が該シールド掘進機の軸芯に一致されて設けられた円環状の測定基準フレームと、該測定基準フレームに取り付けられて該セグメントリング内面との間のクリアランスを垂直に検知する複数の非接触式のセンサーとを有していることを特徴とするシールド掘進機。
【請求項2】
前記測定基準フレームがシールド掘進機の後端部から後方に延出されて該シールド掘進機の胴体に一体的に設けられた張り出し架台に支持されて設けられていることを特徴とする請求項1に記載のシールド掘進機。
【請求項3】
前記張り出し架台には、その延出方向に沿ってガイドレールが設けられ、前記測定基準フレームは該ガイドレールに案内されて前後に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のシールド掘進機。
【請求項4】
前記張り出し架台には、前記ガイドレールに案内されて前後に移動可能な真円保持用ジャッキが上下に延びて設けられていることを特徴とする請求項3に記載のシールド掘進機。
【請求項5】
前記請求項1に記載のシールド掘進機において、前記既構築のセグメントリングに複数の新たなセグメントを継ぎ足して円筒状に組み立てるに際し、直前に組み立ての終了した最前端のセグメントリングの真円度を、前記計測手段によって前記各センサーの配設部位のクリアランスを測定することで検知し、該検知したクリアランス値を基準値と比較してその大小に応じて、新たに継ぎ足すセグメントのクリアランスが該基準値に近づくようにその組み付け位置を補正して最前端のセグメントリングに接合固定することを特徴とするセグメントリングの組み立て精度管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−274555(P2008−274555A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−115842(P2007−115842)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(507137634)三菱重工地中建機株式会社 (25)
【Fターム(参考)】