説明

シールド掘進機

【課題】 カッターのカッタービット交換用の立て坑を設けることなく、カッタービット交換作業を容易に行うことができるシールド掘進機を提供すること。
【解決手段】 シールド掘進機(10)は、シールド本体(12)と、シールド本体(12)の前端部(14)に回転可能に支持された外側カッター(16)と、シールド本体(12)の内部に回転可能に支持された内側カッター(18)とを含む。内側カッター(18)をレール(20)上に載置してシールド本体(12)内を後方に移動可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド掘進機に関し、詳細には、カッターのカッタービット交換用の立て坑を設けることなく、カッタービット交換を容易に行うことができるシールド掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機は、そのシールド本体の先端に設けたカッターによって掘削を行うため、カッタービットの摩耗、折損、脱落等の消耗が著しく、頻繁にその交換作業を行う必要がある。
【0003】
この交換作業には従来、交換時に、掘削機前方の地中に所定の薬液注入を行い、その周辺を崩落しないよう固める共に地下水の侵入をシーリングした状態で、立て坑を設け、この立て坑に到達したシールド掘進機の前面側から作業員がカッタービット交換作業を行う。
【0004】
しかしながら、上述の従来の交換作業では、これに付随する作業としての、薬液注入作業を含む立て抗設置工事は大がかりな工事となり、このため、カッタービット交換作業には多大な時間と労力とを要し、また掘削作業全体の作業効率が著しく悪くなるという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、カッターのカッタービット交換用の立て坑を設けることなく、カッタービット交換作業を容易に行うことができるシールド掘進機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシールド掘進機は、シールド本体と、そのシールド本体の前端部に回転可能に支持された環状の外側カッターと、シールド本体の内部に回転可能に支持された内側カッターとを含み、内側カッターはシールド本体内でその後方に移動可能である。
【0007】
また、前記シールド掘進機では、外側カッターおよび内側カッターは、互いに異なる方向に回転させることができるものとすることができる。
【0008】
さらに、前記シールド掘進機では、内側カッターは外側カッターに対して同軸上に配列させることができる。
【0009】
また、前記シールド掘進機は、前記シールド本体内で前記内側カッターを後方に移動するレールをさらに含むこともできる。
【0010】
前記シールド掘進機は、前記内側カッターを前記シールド本体の内部から前記外側カッターより突出させる位置までの範囲で位置決めする手段をさらに含むこともできる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、内側カッターはシールド本体内でその後方に移動可能であるため、カッタービット交換時に内側カッターをシールド本体内の後方に移動し、作業に都合の良い広い空間が内側カッター前方に確保でき、そこで、作業員が複数のカッタービット、特に外側カッターのカッタービットの交換作業を効率良く行うことができる。
【0012】
外側カッターおよび内側カッターを、互いに異なる方向に回転すれば、外側カッターおよび内側カッターは互いに回転するための反力を得ることができ、シールド本体のローリングを防止できる。
【0013】
内側カッターを外側カッターに対して同軸上に配列させると、同軸ができる。
【0014】
また、本発明のシールド掘進機に、内側カッターを後方に移動するためのレールを設けると、内側カッターを容易に移動できる。
【0015】
本発明のシールド掘進機に、内側カッターをシールド本体の内部から外側カッターより突出させる位置までの範囲で位置決めする手段を設けると、内側カッターを外側カッターより突出させ、内側カッターの先行掘削ができる。これにより、掘削効率が向上し、日進掘削量を増加させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1を参照すると、本発明に係るシールド掘削機の実施態様が掘削停止時の状態で示される。
【0017】
この図に示すように、シールド掘削機10は、円筒状のシールド本体12と、そのシールド本体12の前端部14に回転可能に支持された外側カッター16と、シールド本体12の内部に回転可能に支持された内側カッター18と、その内側カッター18をシールド本体12の後方に移動させるためにシールド本体12内部の底面に敷設したレール20とを含む。
【0018】
図2、3は各々、図1のシールド掘進機10の前方(到達側)および後方(発進側)から見た図が示される。
【0019】
これら図に示すように、外側カッター16および内側カッター18は同軸上に配列されている。また、後述のカッター部24を含む、外側カッター16の一部がシールド本体12から突出しているのに対して、内側カッター18はシールド本体12内に収容されている。
【0020】
外側カッター16は、環状の外側カッター本体22と、その回転軸に回転可能に支持されたカッター部24とを備える。
【0021】
外側カッター本体22はその内側の周方向に設けたベアリング部28と、そのベアリング部28の前方にその防水対策として周方向に設けたシール部30と、外側カッター本体22の後端部に周方向に設けたギア部32と、そのギア部32に歯合してベアリング部28を介して外側カッター16に回転駆動力を与えるモータ部34とを備える。なお、ベアリング部28はシールド本体12の前端部14の内側の周方向に設けたベアリング部48と対をなし、外側カッター16をシールド本体12に対して回転可能に支持する。
【0022】
カッター部24は所定角度(図2において120°)に離隔した、3分割可能なカッタービット34,36,38を備え、各カッタービットは5種類の掘削刃40,42,44,46,47の内のいずれかを備え、用途毎に、材質、形状、大きさ、取り付け位置が異なる。
【0023】
モータ部34には例えば、油圧モータ、減速機付き電動モータを使用できる。なお、図1では1つのモータ部34しか図示していないが、図3に示すように左右周方向に各3つ設けられている。ベアリング部28、シール部30、ギア部32およびモータ部34は、シールド本体12の前端部14の径方向内方に延びる取り付け台50にボルト、溶接等の固定手段により取り付けられている。
【0024】
内側カッター18は、環状の内側カッター本体52と、その回転軸に回転可能に支持されたカッター部54と、内側カッター本体52を回転可能に収納する収納部56とを備える。
【0025】
カッター部54は、4つのカッタービット64,66,68,70を径方向に分解可能に連結してなる、一対のカッタービット連結体71を含み、各カッタービット連結体71は所定角度毎(図2においては90°毎)に離隔して十字状に配列されている。なお、各カッタービット連結体71はその中央部に離隔角度を調整するための交差部材71aを備える。
【0026】
収納部56は、内側カッター本体52の内側の周方向に設けたベアリング部58と、その後方にて内側カッター本体52の後端部に周方向に設けたギア部60と、そのギア部60に歯合してベアリング部58を介して内側カッター18に回転駆動力を与えるモータ部62とを備える。
【0027】
各カッタービットは1または2種類の掘削刃72,74を備え、用途毎に材質、形状、大きさ、取り付け位置が異なる。
【0028】
また、ベアリング部58は収納部56の内側の周方向に設けたベアリング部76と対をなし、内側カッター18をシールド本体12に対して回転可能に支持する。
【0029】
モータ部62には例えば油圧モータ、減速機付き電動モータを使用できる。なお、図1では1つのモータ部62しか図示していないが、図3に示すように周方向に90°離隔して4つ設けられている。
【0030】
収納部56は、取り付け台50の断面L字形状の端部にボルト等の固定手段により取り付けられている。
【0031】
動作にあたり、シールド掘進機10は外側カッター16および内側カッター18を各々のモータ部34,62によって互いに異なる方向に同時に回転させて地盤78を掘削する。これにより、シールド機本体12に対するローリングを防止して効率よく掘削できるとともに方向精度の良い掘削を行うことができる。また、掘削方向の修正も容易になる。
【0032】
なお、外側カッター16および内側カッター18は各々、モータ部34,62を備えるので、単独回転駆動できる。また、勿論、モータ部34,62の回転数を調整することによって、各カッターは回転速度を可変調整できる。
【0033】
図4は、図1の内側カッター18を発進側へ移動して回収し、外側カッター16のカッタービット34,36,38の交換作業用空間をシールド本体12内に設けた状態を示す。なお、交換作業前に地盤78の崩落を防止するために予め薬液注入により外側カッターのカッタービット34,36,38付近の地盤78を固める。
【0034】
この図に示すように、交換作業はまず、各カッタービット連結体71の4つのカッタービットの内の端部に位置するカッタービット64,70をカッタービット連結体71から取り外し、カッタービット連結体71の長さを内側カッター本体の収納部56の径より小さくする。
【0035】
次いで、内側カッター18を取り付け台32から取り外し、人力、またはシールド本体12内部の上方側面に設けた滑車、移動用モータ等(図示せず)によりレール17上に配置した台車80に、先に取り外した4つのカッタービット64,70とともに載置し、これらを発進側へ移動させる。
【0036】
次いで、内側カッター18の取り付け空間から交換作業員が外側カッターのカッタービット34,36,38を各々分解した状態で取り外し、同様に台車80に載置し、発進側へ移動させて回収する。その後、新たなカッタービットを発進側から台車80により搬入し、交換作業を行う。
【0037】
なお、図5ではギア部32およびモータ部34の交換作業を同時に行っている。交換作業後は、図4の作業において取り外した内側カッター18をその取り外し作業と同じ作業を逆に行って、その取り付け作業を行い、交換作業を終了する。
【0038】
図6は図5にて取り外したカッタービット34,36,38およびモータ部34以外の外側カッター本体26、ベアリング部28およびシール部30を取り外し、台車80に載置した状態を示す。この図に示すように、外側カッター16全体を新規なものに交換できる。
【0039】
本実施態様では、内側カッター18を台車80に載置してレール17上を移動させたが、内側カッター18に、例えばキャスターを直接取り付けてレール17上を移動させることもできる。また、この場合、レールを敷設することなく、シールド本体12内面を移動させることもできる。
【0040】
また、本実施態様ではカッタービット交換作業を説明したが、掘削作業を終了、中止、中断等に伴ってシールド掘削機を発進側から回収する作業も上述の交換作業と同様な作業の流れで行うことができる。
【0041】
図7は図1のシールド掘進機10とは異なる、本発明に使用できるシールド掘進機の内側カッターをシールド本体から突出させた状態の側断面概略図であり、図8は、図7のシールド掘進機の内側カッターをシールド本体内に収容させた状態の側断面概略図である。
【0042】
図示のシールド掘進機100に関して、図1のシールド掘進機10と同じ構成には同じ参照番号を付して、その説明を省略する。
【0043】
シールド掘進機10と異なる構成として、シールド掘進機100の収納部56は外側カッター16より突出させる位置からシールド本体12内の取付位置までの範囲の任意の位置に位置決めする位置決め装置102を備える。
【0044】
この位置決め装置102は収納部56の周囲に取り付けた枠体104と、これに連結したロッド106と、これを進退駆動させるロッド駆動部108とを含む。枠体104は前端部14の取り付け台50に取り付け固定するためのフランジ105を有し、収納部56を挿通可能に支持する。
【0045】
動作にあたり、位置決め装置102はロッド106を収縮することにより、ロッド106をロッド駆動部108に収容すると共に、収納部56を、枠体104を通して進出させ、内側カッター18を前端部14から突出させる位置に固定する(図7)。また、ロッド106を伸長することにより、収納部56へ後退させ、内側カッター18をシールド本体12内に収容する位置に固定する(図8)。したがって、位置決め装置102は内側カッター18を外側カッター16に対して前方から同一面上を通して後方までの範囲の任意の位置に位置決めできる。また、シールド掘進機100の掘削作業中においても上記位置決め動作が可能である。
【0046】
なお、位置決め装置102としては例えば、油圧シリンダを採用することができる。
【0047】
シールド掘進機100は位置決め装置102を備えるので、岩盤などの掘削において、小径の内側カッター18を外側カッター16より前方に位置決めすることにより、その小径の先行掘削ができる。これにより、掘削効率が向上し、日進掘削量を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のシールド掘進機の側断面概略図である。
【図2】図1のシールド掘進機の前方から見た正面概略図である。
【図3】図1のシールド掘進機の後方から見た背面概略図である。
【図4】図1のシールド掘進機の内側カッターを取り外して後方へ移動させる状態を説明するための図である。
【図5】図4のシールド掘進機の外側カッターのカッタービットおよびモータ部を取り外して後方へ移動させる状態を説明するための図である。
【図6】図5のシールド掘進機の外側カッター本体、ベアリング部およびシール部を取り外して後方へ移動させる状態を説明するための図である。
【図7】図1のシールド掘進機とは異なる、本発明に使用できるシールド掘進機の内側カッターを外側カッターより突出させた状態を示す側断面概略図である。
【図8】図7のシールド掘進機の内側カッターをシールド本体内に収容した状態を示す側断面概略図である。
【符号の説明】
【0049】
10 シールド掘進機
12 シールド本体
14 前端部
16 外側カッター
18 内側カッター
20 レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド本体と、該シールド本体の前端部に回転可能に支持された環状の外側カッターと、前記シールド本体の内部に回転可能に支持された内側カッターとを含み、前記内側カッターは前記シールド本体内でその後方に移動可能である、シールド掘進機。
【請求項2】
前記外側カッターおよび前記内側カッターは、互いに異なる方向に回転可能である、請求項1に記載のシールド掘進機。
【請求項3】
前記内側カッターは前記外側カッターに対してこれと同軸上に配列されている、請求項1に記載のシールド掘進機。
【請求項4】
前記シールド本体内で前記内側カッターを後方に移動するレールをさらに含む、請求項1に記載のシールド掘進機。
【請求項5】
前記内側カッターを前記シールド本体の内部から前記外側カッターより突出させる位置までの範囲で前記内側カッターを位置決めする手段をさらに含む、請求項1に記載のシールド掘進機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−163612(P2008−163612A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−353104(P2006−353104)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(507000741)暁新日本建設株式会社 (2)
【出願人】(000214847)長野油機株式会社 (10)
【Fターム(参考)】