説明

シール材用硬化性組成物、及びそれから得られるシール材

【課題】 本発明は、吸湿性、ガスバリアー性、衝撃吸収性に優れるイソブチレン系シール材を形成するシール材用硬化性組成物、及びそれから得られるシール材を提供することを目的とする。
【解決手段】 (A)分子中に少なくとも1個を超えるヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を含有するイソブチレン系重合体、(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含有する化合物、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)吸湿剤を含有する、常温で流動性を有するシール材用硬化性組成物により、吸湿性、ガスバリアー性、耐衝撃性に優れ、特に有機EL封止用シール材として有用なシール材を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸湿性及びガスバリアー性に優れる架橋ゴムを形成する成形性に優れたシール材用硬化性組成物、及びそれから得られるシール材に関する。さらに詳しくは、1分子中に1個を超えるアルケニル基を有するイソブチレン系重合体と1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物、ヒドロシリル化触媒、吸湿剤を必須成分として含有し、架橋反応により吸湿性及びガスバリアー性に優れる架橋ゴムを、効率的に形成することができる成形性に優れたポリイソブチレン系シール材用硬化性組成物、及びそれから得られるシール材に関する。本発明のシール材用硬化性組成物から得られるポリイソブチレン系シール材は、吸湿性及び、ガスバリアー性を有していることから、電気・電子、自動車、エネルギー、医療などの様々な分野において、吸湿性、ガスバリアー性、衝撃緩和性などが求められる幅広い用途に利用できる。
【背景技術】
【0002】
電池、キャパシタ(コンデンサ)、表示素子等の電子デバイスは、超小型化・超軽量化の一途をたどっている。これらの電子部品は、必ず外装部の封止工程において、ゴム系シール材あるいはU V 硬化性樹脂等の樹脂系接着剤を用いて封止が行われる。ところが、これらの封止方法では、保存中又は使用中にシール材を通過する水分により電子部品の性能劣化が引き起こされる。すなわち、電子デバイス内に侵入した水分により、電子デバイス内部の電子部品が変質又は腐食するおそれがある。例えば、有機電解質を用いる電池又はコンデンサでは、その電解質中に水分が混入すると電気伝導度の変化、侵入水分の電気分解等が起こり、さらに端子間の電圧の降下やガス発生による外装ケースの歪みや漏液を生じることがある。このように、電子デバイス内に侵入した水分により、電子デバイスの性能安定性・信頼性を維持することが困難となっている。
【0003】
例えば、有機EL装置では長期間の発光に耐える耐久性が求められるが、有機EL素子の発光特性を劣化させる原因の一つとして、ダークスポットの発生が上げられ、有機EL素子の構成部品の表面に付着している水分や有機EL素子内に侵入した水分(湿気)や酸素等の雰囲気ガスが、透明電極と有機化合物からなる少なくとも発光層を有する有機発光層と背面電極とを順次積層して形成される積層体内に背面電極表面の欠陥等から侵入し、有機発光層と背面電極との間に乖離を生じさせることで発生することが知られている。
他方、これらの電子デバイスを組み立てる工程では、全工程にわたって湿度を0 に維持することは事実上不可能であるため、例えば電子デバイス完成後のエージング工程中において、組立工程中に電子デバイス中に侵入した水分を吸湿することが必要不可欠となる。ところが、前記のように、電子デバイス内に侵入した水分を確実かつ容易に吸湿する技術は未だ確立されていない。
【0004】
このように、電子デバイス内部の湿分および、外部からの湿分をする技術において、例えば、有機EL装置を例に挙げると、特許文献1に示されるような封止内部空間に乾燥剤配設する方式において乾燥剤の捕獲性能に対し、外部水分侵入が多い場合は封止内部の水蒸気量を十分低減することができず、有機発光層と残存水分が反応して有機EL素子の劣化やダークスポットの発生を起こす問題がある。又、有機発光層形成領域に異物等が存在して、上部に形成する背面電極が十分に有機発光層を被覆できない部分では、有機発光層が露出するため、より短期間で水分によるダークスポットの発生を起こす問題がある。
【0005】
また特許文献2〜4に示されるような樹脂層やガラス板等のシールド層を、接着剤等を介して設ける方式では有機EL素子上に積層される層の応力により有機EL素子の例えば電子注入層−有機層界面等の剥離や、素子そのものの破壊が発生するという問題点があり、積層する保護層に大幅な制約があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−35659号公報
【特許文献2】特開平4―267097号公報
【特許文献3】特開平5−36475号公報
【特許文献4】特開平5−182759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
有機EL等の表示素子、電池、キャパシタ(コンデンサ)などのような電子デバイスのシールに適した、吸湿性、ガスバリアー性、耐衝撃性に優れたシール材用硬化性組成物を提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は種々の検討を行った結果、(A)分子中に少なくとも1個を超えるヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を含有するイソブチレン系重合体、(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含有する硬化剤、(C)ヒドロシリル化触媒、(D)吸湿を必須成分として含有する、常温で流動性を有するシール材用硬化性組成物を架橋させることにより、吸湿性、ガスバリアー性、耐衝撃性に優れたシール材を得るに至り、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、
(I).下記(A)〜(D)成分を含有し、常温で流動性を有するシール材用硬化性組成物、
(A)分子中に少なくとも1個を超えるヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を含有するイソブチレン系重合体
(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を含有する化合物
(C)ヒドロシリル化触媒
(D)吸湿剤
(II).前記(D)成分が、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ストロンチウム(SrO)、五酸化リン(P10)、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸カルシウム(CaSO)、硫酸マグネシウム(MgSO)、硫酸コバルト(CoSO)、硫酸ガリウム(Ga(SO)、硫酸チタン(Ti(SO)、硫酸ニッケル(NiSO)からなる群から選ばれる少なくとも1種又は2種以上であることを特徴とする(I)に記載のシール材用硬化性組成物、
(III).前記(D)成分が、ゼオライトおよび/またはシリカゲルであることを特徴とする(I)に記載のシール材用硬化性組成物、
(IV).前記(D)成分の(A)成分100重量部に対する配合部数が1〜20部であることを特徴とする(I)〜(III)のいずれかに記載のシール材用硬化性組成物、
(V).前記(A)成分であるアルケニル基を含有するイソブチレン系重合体の数平均分子量が3,000から50,000である(I)〜(IV)のいずれかに記載のシール材用硬化性組成物、
(VI).前記(B)成分が、オルガノハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とする(I)〜(V)のいずれかに記載のシール材用硬化性組成物。
(VII).前記シール材組成物が有機EL用封止材であることを特徴とする(I)〜(VI)のいずれかに記載のシール材用硬化性組成物、
(VIII).前記シール材の使用時に貼付型の湿分ゲッター剤を使用しないことを特徴とする、(VIII)記載の有機ELシール材用硬化性組成物、
(IX).(I)〜(VIII)のいずれか1項に記載のシール材用硬化性組成物を、架橋することにより得られるシール材、
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のシール材用硬化性組成物から得られるポリイソブチレン系シール材は、吸湿性及び、ガスバリアー性を有していることから、電気・電子、自動車、エネルギー、医療などの様々な分野において、吸湿性、ガスバリアー性、衝撃緩和性などが求められる幅広い用途に利用できる。また、このようなシール材用硬化性組成物は、塗布や注入、スクリーン印刷などのような接着剤やポッティング剤などと同様の取り扱いや、プレス成形、射出成形、トランスファー成形、押出成形などにより、効率よく得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に用いる(A)成分は、分子中に少なくとも1個を超えるヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を有するイソブチレン系重合体である。ここで、イソブチレン系重合体とは、単量体単位のすべてがイソブチレン単位から形成されているものに限らず、イソブチレンと共重合性を有する単量体単位をイソブチレン系重合体中に含むものをさす。但し、イソブチレンと共重合性を有する単量体は、イソブチレン単位に起因する低吸水性、ガスバリアー性を大きく損なわない範囲で含有することが好ましく、50重量%以下、更に好ましくは30重量%以下、特に好ましくは20重量%以下の範囲が好ましい。
【0012】
このような単量体成分としては、例えば炭素数4〜12のオレフィン、ビニルエ−テル、芳香族ビニル化合物、ビニルシラン類、アリルシラン類等が挙げられる。このような共重合体成分の具体例としては、例えば1−ブテン、2−ブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ヘキセン、ビニルシクロヘキサン、メチルビニルエ−テル、エチルビニルエ−テル、イソブチルビニルエ−テル、スチレン、α−メチルスチレン、ジメチルスチレン、p−t−ブトキシスチレン、p−ヘキセニルオキシスチレン、p−アリロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、β−ピネン、インデン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジメチルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、トリビニルメチルシラン、テトラビニルシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリメチルシラン、ジアリルジメトキシシラン、ジアリルジメチルシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン等が挙げられる。特に好ましくは、単量体単位のすべてがイソブチレン単位から形成されたものである。
【0013】
前記イソブチレン系重合体(A)の数平均分子量(GPC法、ポリスチレン換算)は、その取り扱いやすさと架橋後のゴム硬度の点から、好ましくは2,000〜100,000程度、さらに好ましくは3,000〜50,000である。一般的には数平均分子量が大きいほど、得られる架橋ゴムの硬度は低下する傾向にある。
【0014】
また、アルケニル基とは、ヒドロシリル化反応に対して活性のある炭素−炭素2重結合を含む基であれば特に制限されるものではない。アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、メチルビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基等の脂肪族不飽和炭化水素基、シクロプロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基等の環式不飽和炭化水素基、メタクリル基等が挙げられる。これらの中では、ヒドロシリル化反応に対する活性が高い、アルケニル基の導入が比較的容易であるとの点から、アリル基であることが好ましい。
【0015】
本発明における(A)成分は、上記ヒドロシリル化反応可能なアルケニル基が、イソブチレン系重合体の主鎖末端あるいは側鎖にあってもよいし、また両方にあってもよい。とくに、アルケニル基が主鎖末端にあるときは、最終的に形成される硬化物に含まれるイソブチレン系重合体成分の有効網目鎖量が多くなるため、低硬度ながら高強度、低圧縮永久ひずみのゴム弾性体が得られやすくなるなどの点から好ましい。
【0016】
本発明の(A)成分の製造方法としては、特開平3−152164号、特開平7−304969号公報に開示されているような水酸基などの官能基を有する重合体に不飽和基を有する化合物を反応させ重合体に不飽和基を導入する方法が上げられる。またハロゲン原子を有する重合体に不飽和基を導入するのにアルケニルフェニルエーテルとフリーデルクラフツ反応を行う方法、ルイス酸存在下アリルトリメチルシランなどと置換反応を行う方法、種々のフェノール類とフリーデルクラフツ反応を行い水酸基を導入した上でさらに前記のアルケニル基導入方法を併用する方法などが上げられる。さらに米国特許第4316973号、特開昭63−105005号公報、特開平4−288309号公報に開示されているような単量体の重合時に不飽和基を導入する方法も可能である。
【0017】
アルケニル基は、重合体(A)1分子中に平均1個を超える量、好ましくは平均5個以下存在するのがよい。重合体(A)1分子中に含まれるアルケニル基の数が平均1個以下になると、硬化性が不十分になるほか、得られる網目構造が不完全なものとなり、良好な成形体が得られない。また、1分子中に含まれるアルケニル基が多くなると網目構造があまりに密となるため、得られる成形体は硬く脆くなり好ましくない。特に、5個以上になるとその傾向は顕著となる。
【0018】
本発明における(B)成分である1分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物は、ヒドロシリル基を有するものであれば特に制限無く用いることができるが、数平均分子量400〜3,000のものが好ましく、500〜1,000のものがさらに好ましい。数平均分子量400未満のものでは加熱硬化時に揮発して十分な硬化物が得られなく、3,000を超えるものでは、十分な硬化速度が得られなくなる。このような化合物の例としては、原材料の入手性や(A)成分への相溶性の面から、有機基で変性されたオルガノハイドロジェンポリシロキサンが例示される。また、これら(B)成分は、(A)成分との相溶性が良好なものが好ましい。特に系全体の粘度が低い場合には、相溶性の低いものを使用すると、相分離が起こり硬化不良を引き起こすことがある。このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンの構造を具体的に示すと、例えば、
【0019】
【化1】

【0020】
(式中、1<b+c≦40、1<b≦20、0<c≦38である。Rは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基で1個以上のフェニル基を含有してもよい)、
【0021】
【化2】

【0022】
(式中、0≦d+e≦40、0≦d≦20、0<e≦38である。Rは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基で1個以上のフェニル基を含有してもよい)、又は、
【0023】
【化3】

【0024】
(式中、3≦f+g≦20、1<f≦20、0<g≦18である。Rは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基で1個以上のフェニル基を含有してもよい)等で示される鎖状又は環状のもの等が挙げられる。
【0025】
(A)成分及び(C)成分との相溶性、又は、分散安定性および硬化速度が比較的良好な(B)成分を具体的に示すと、以下のものが挙げられる。
【0026】
【化4】

【0027】
式中、1<k+l≦20、1<k≦19、0<l≦18であり、Rは炭素数8以上の炭化水素基である。
【0028】
(B)成分のより具体的な例としては、メチルハイドロジェンポリシロキサンを、(A)成分との相溶性確保と、SiH量の調整のために、α−オレフィン、スチレン、α−メチルスチレン、アリルアルキルエーテル、アリルアルキルエステル、アリルフェニルエーテル、アリルフェニルエステル等により変性した化合物が例示され、一例として、以下の構造があげられる。
【0029】
【化5】

【0030】
但し、1<p+q≦20、1<p≦19、0<q≦18である。
【0031】
本発明における(B)成分であるヒドロシリル基含有化合物の使用量は、 [(B)成分中のヒドロシリル基の総量]/[(A)成分中のアルケニル基の総量]が0.5以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.7以上である。[(B)成分中のヒドロシリル基の総量]/[(A)成分中のアルケニル基の総量]が0.5を下回る場合、得られるシール材は架橋密度が低いため、塑性変形し易く、シール材としての長期の信頼性に欠ける。また、 [(B)成分中のヒドロシリル基の総量]が[(A)成分中のアルケニル基の総量]に比較し過剰になり過ぎると、三次元の網目骨格の形成が困難となり、同様に得られるシール材は架橋密度が低く、シール材としての長期の信頼性に欠ける。このように(B)成分の使用量については、下限、上限の両方に注意する必要がある。
【0032】
本発明の(C)成分であるヒドロシリル化触媒としては特に限定されず、任意のものを使用できる。具体的に例示すれば、塩化白金酸、白金の単体、アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体{例えば、PtX(ViMeSiOSiMeVi)y 、Pt〔(MeViSiO)z};白金−ホスフィン錯体{例えば、Pt(PPh 、Pt(PBu};白金−ホスファイト錯体{例えば、Pt〔P(OPh) 、Pt〔P(OBu)(式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基を表し、x、y、zは整数を表す)、Pt(acac) (ただし、acacは、アセチルアセトナトを表す)、また、Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号に記載された白金−炭化水素複合体、並びにLamoreauxらの米国特許第3220972号に記載された白金アルコラート触媒も挙げられる。
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh 、RhCl、Rh/Al 、RuCl 、IrCl 、FeCl 、AlCl、PdCl・2HO、NiCl 、TiCl 等が挙げられる。
【0033】
これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−オレフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)等が好ましい。触媒使用量としては特に制限はないが、(A)成分中のアルケニル基1molに対して10−8〜10−1molの範囲で用いるのがよい。好ましくは10−6〜10−2molの範囲で用いるのがよい。10−8mol未満では、硬化速度が遅く、また硬化性が不安定になる可能性が高い。逆に10−1molを越える場合は、ポットライフの確保が困難であるため好ましくない。
【0034】
本発明の(D)成分である吸湿剤は、本発明のシール材用硬化性組成物中の水分を吸着すること、また、架橋後のシール材として外部から侵入する水分をシール材中で吸着することを目的として使用する。このような吸湿剤としては、少なくとも水分を吸着できる機能を有するものであれば良いが、特に化学的に水分を吸着するとともに吸湿しても固体状態を維持する化合物が好ましい。乾燥剤の種類は特に制限されるものでないが、例えば、酸化物、ハロゲン化物、硫酸塩、過塩素酸塩、炭酸塩、及び有機物等の1種単独又は2種以上の組み合わせが挙げられる。より具体的には、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ストロンチウム(SrO)、五酸化リン(P10)、アルミナ(Al)、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸カルシウム(CaSO)、硫酸マグネシウム(MgSO)、硫酸コバルト(CoSO)、硫酸ガリウム(Ga(SO)、硫酸チタン(Ti(SO)、硫酸ニッケル(NiSO)等が挙げられる。その他にも、本発明の吸湿剤として吸湿性を有する有機化合物も使用できる。また、吸湿性をより向上させ、潮解性の乾燥剤を使用した場合であっても効率的に漏出防止できることから、乾燥剤が粒子状であって、乾燥剤含有層に均一に分散してあることが好ましい。この場合、乾燥剤の平均粒径を20μm以下の値とするのが好ましく、より好ましくは、0.1〜10μmの範囲内の値とすることである。本発明では、入手性、環境対応等の面から酸化物が好ましい。
【0035】
吸湿剤(D)は、1個を超えるアルケニル基を含有するイソブチレン系重合体(A)100重量部に対して0.5〜50重量部用いることが好ましく、1〜20重量部用いることがより好ましい。0.5重量部未満であると吸湿が不十分であり、50重量部を超える量使用するとシール材用硬化性組成物が流動性を失い作業性が低下するため好ましくない。
【0036】
また、本発明の(A)〜(D)成分からなるシール材用硬化性組成物には、シール材用硬化性組成物の保存安定性を改良する目的として保存安定性改良剤、耐熱性や耐候性を改良する目的として酸化防止剤や紫外線吸収剤など、着色を目的に各種顔料、表面性の改良を目的に金属石鹸やワックス、シリコン化合物など、その他必要に応じて界面活性剤や溶剤など使用できる。
【0037】
前記保存安定性改良剤としては、本発明の(B)成分の保存安定剤として知られている通常の安定剤であって所期の目的を達成するものであればよく、特に限定されるものではない。具体的には、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等を好適に用いることができる。具体的には、2−ベンゾチアゾリルサルファイド、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルアセチレンダイカルボキシレート、ジエチルアセチレンダイカルボキシレート、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、ビタミンE、2−(4−モルフォジニルジチオ)ベンゾチアゾール、3−メチル−1−ブテン−3−オール、アセチレン性不飽和基含有オルガノシロキサン、アセチレンアルコール、3−メチル−1−ブチル−3−オール、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート、ジエチルフマレート、ジエチルマレエート、ジメチルマレエート、2−ペンテンニトリル、2,3−ジクロロプロペン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
また、本発明のシール材用硬化性組成物を得る方法としては、特に制限はないが、(A)〜(D)成分、さらに必要に応じて使用する各種添加剤や充填剤をプラネタリーミキサーや2軸ディスパなどの回転式ミキサーや、ニーダー、バンパリーミキサー、ロールなどの装置を使用し、混合する方法が挙げられる。ここで、本発明のシール材用硬化性組成物における、(D)成分である吸湿剤を均一に分散、安定化させること、及びシール材用硬化性組成物中に含まれる水分をなるべく除去することが望ましい。(A)成分中への吸湿材の分散が不均一、不安定であれば、組成物の性状が経時で大きく変化する。
【0039】
また、本発明のシール材用硬化性組成物からシール材を得る方法としては、一般的に使用されている加熱硬化型の液状シール材と同様の方法、すなわちディスペンサなどによる塗布や注入、マスク印刷、スクリーン印刷などの方法が適用できる。また、プレス成形、射出成形、トランスファー成形、押出成形など、ゴム成形体を得る方法にも適用できる。
【0040】
また、これら各種の取り扱い方法において、本発明のシール材用硬化性組成物は、全ての成分を含む1液形態として扱うことも、(B)成分と(C)成分とが混合しないように全成分を2液に配分した2液形態として扱うことも可能である。前者の場合、室温下でも徐々に反応は進行し得るため、低温下での保管が必要となるが、成形に際して2液を混合するなどの手間が省略できる。また、後者の場合には、成形する際に2液を混合し、泡を含まない状態で塗布、充填、射出できるように工夫が必要となるが、シール材用硬化性組成物の長期保管には有利である。このような2液形態の液状シール材用硬化性組成物の取り扱いには、2液形態のウレタン樹脂、エポキシ樹脂に使用されている2液混合吐出装置や、液状シリコーン向けに開発された液状射出成形システムに使用されている2液混合吐出装置が使用できる。
【0041】
本発明のシール材用硬化性組成物より得られるシール材は優れた吸湿性、ガスバリアー性、耐衝撃性を有しており、電気・電子、自動車、エネルギー、医療などの様々な分野において、高いシール性能が求められる幅広い用途に利用できる。
【実施例】
【0042】
次に実施例により本発明のシール材用硬化性組成物、及びそれから得られるシール材を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0043】
(製造例1)
2Lの耐圧ガラス製容器に、三方コックを取り付け、容器内を窒素置換した後、注射器を用いて容器内に、エチルシクロヘキサン(モレキュラーシーブス3Aとともに1夜間以上放置することにより乾燥したもの)138mlおよびトルエン(モレキュラーシーブス3Aとともに1夜間以上放置することにより乾燥したもの)1012ml、1,4−ビス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン8.14g(35.2mmol)を加えた。
【0044】
次にイソブチレンモノマー254ml(2.99mol)が入っているニードルバルブ付耐圧ガラス製液化採取管を、三方コックに接続して、重合容器を−70℃のドライアイス/エタノールバス中につけて冷却した後、真空ポンプを用いて容器内を減圧にした。ニードルバルブを開け、イソブチレンモノマーを液化ガス採取管から重合容器内に導入した後、三方コック内の一方から窒素を導入することにより容器内を常圧に戻した。次に、2−メチルピリジン0.387g(4.15mmol)を加えた。次に、四塩化チタン4.90ml(44.7mmol)を加えて重合を開始した。反応時間70分後に、アリルトリメチルシラン9.65g(13.4mmol)を加えてポリマー末端にアリル基の導入反応を行った。反応時間120分後に、反応溶液を水200mlで4回洗浄した後、溶剤を留去することによりアリル末端イソブチレン系重合体(a−1)を得た。
【0045】
こうして得られたポリマーの収量より収率を算出するとともに、Mn及びMw/MnをGPC法により、また末端構造を300MHzH−NMR分析により各構造に帰属するプロトン(開始剤由来のプロトン:6.5〜7.5ppm、ポリマー末端由来のアリル基のピーク(4.97ppm:=CH、5.79ppm:−CH=C))の共鳴信号の強度を測定、比較することにより求めた。H−NMRは、Varian Gemini300(300MHz for H)を用い、四塩化炭素/重アセトン中で測定した。
なお、GPCは送液システムとしてWaters LC Module1、カラムはShodex K−804を用いて行った。分子量はポリスチレンスタンダードに対する相対分子量で与えられる。ポリマーの分析値は、Mn=5800、Mw/Mn=1.39、Fn(v)=1.88(NMR分析において、開始剤残基となる芳香族環1分子当たりに対するアリル基の数)であった。
【0046】
(製造例2)
(−Si−O−)繰り返しユニットを平均して7.5個もつメチルハイドロジェンシリコーンに白金触媒存在下全ヒドロシリル基量の0.5当量のα−オレフィンを添加し、1分子中に平均約5.5個のヒドロシリル基を有する化合物(b−1)を得た。この化合物のSi−H基含有量は6mmol/gであった。
【0047】
(実施例1〜2)
表1に示す配合量に従い、(A)成分として製造例1で得たアリル基末端イソブチレン系重合体(a−1)と、(D)成分として、CaO(井上石灰社製、VESTA PP)(d−1)及び、酸化防止剤(ADEKA社製、アデカスタブ AO−50)、可塑剤(出光興産社製、PAO5010)をロールにて混練した。続いて、得られた混合物をプラネタリーミキサーにて、減圧下、加熱攪拌することにより水分を除去した。さらに冷却した後、(B)成分としてヒドロシリル化合物(b−1)、(C)成分として白金ビニルシロキサン(3%白金キシレン溶液)(c−1)及び、アセチレンアルコール(アルドリッチ社製 MBO:2−メチル−3−ブチン−2−オール)、接着付与剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 SILQUEST A−187 SILANE、コルコート社製 エチルシリケート40、東京化成工業社製 ホウ酸トリ−n−ブチル)を混合した。
【0048】
このようにして得られた組成物は液状であり、さらに脱泡した後、トルエンで洗浄した材質SS(JIS G 3101)の鉄基盤(太佑基材製)に100μmコーターで成膜し、80℃熱風乾燥機で30分加熱処理した。得られた試験片を65℃、90%RH条件下の恒温恒湿機に投入し鉄基盤の錆の進行を評価した。これらの結果を表1に示す。
【0049】
(比較例1〜2)
表1に示す配合量に従い、(A)成分として製造例1で得たアリル基末端イソブチレン系重合体(a−1)及び、酸化防止剤(ADEKA社製、アデカスタブ AO−50)、可塑剤(出光興産社製、PAO5010)をロールにて混練した。続いて、得られた混合物をプラネタリーミキサーにて、減圧下、加熱攪拌することにより水分を除去した。さらに冷却した後、(B)成分としてヒドロシリル化合物(b−1)、(C)成分として白金ビニルシロキサン(3%白金キシレン溶液)(c−1)及び、アセチレンアルコール(アルドリッチ社製 MBO:2−メチル−3−ブチン−2−オール)、接着付与剤(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製 SILQUEST A−187 SILANE、コルコート社製 エチルシリケート40、東京化成工業社製 ホウ酸トリ−n−ブチル)を混合した。
【0050】
このようにして得られた組成物は液状であり、さらに脱泡した後、トルエンで洗浄した材質SS(JIS G 3101)の鉄基盤(太佑基材製)に100μmコーターで成膜し、80℃熱風乾燥機で30分加熱処理した。得られた試験片を65℃、90%RH条件下の恒温恒湿機に投入し鉄基盤の錆の進行を評価した。これらの結果を表1に示す。
【0051】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)〜(D)成分を含有し、常温で流動性を有するシール材用硬化性組成物。
(A)分子中に少なくとも1個を超えるヒドロシリル化反応可能なアルケニル基を含有するイソブチレン系重合体
(B)分子中に少なくとも2個のヒドロシリル基を有する化合物
(C)ヒドロシリル化触媒
(D)吸湿剤
【請求項2】
前記(D)成分が、酸化カルシウム(CaO)、酸化バリウム(BaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ストロンチウム(SrO)、五酸化リン(P10)、硫酸リチウム(LiSO)、硫酸ナトリウム(NaSO)、硫酸カルシウム(CaSO)、硫酸マグネシウム(MgSO)、硫酸コバルト(CoSO)、硫酸ガリウム(Ga(SO)、硫酸チタン(Ti(SO)、硫酸ニッケル(NiSO)からなる群から選ばれる少なくとも1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1に記載のシール材用硬化性組成物。
【請求項3】
前記(D)成分が、ゼオライトおよび/またはシリカゲルであることを特徴とする請求項1に記載のシール材用硬化性組成物。
【請求項4】
前記(D)成分の(A)成分100重量部に対する配合部数が1〜20部であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシール材用硬化性組成物。
【請求項5】
前記(A)成分であるアルケニル基を含有するイソブチレン系重合体の数平均分子量が3,000から50,000である請求項1〜4のいずれか1項に記載のシール材用硬化性組成物。
【請求項6】
前記(B)成分が、オルガノハイドロジェンポリシロキサンであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシール材用硬化性組成物。
【請求項7】
前記シール材が有機EL用シール材であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のシール材用硬化性組成物。
【請求項8】
前記シール材の使用時に貼付型の湿分ゲッター剤を使用しないことを特徴とする、請求項8記載の有機ELシール材用硬化性組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のシール材用硬化性組成物を、加熱成形することにより得られるシール材。


【公開番号】特開2012−219191(P2012−219191A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86502(P2011−86502)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】