説明

ジアリルフタレート系高光沢化粧板の製造法

【課題】従来のアルマイト処理されたアルミニウム板を鏡面板に用いて熱圧成型したのでは得ることのできない、ジアリルフタレート系高光沢化粧板の新規な製造法の提供。
【解決手段】(1)ジアリルフタレート系樹脂組成物を含浸基材に含浸したプリプレグと、(2)化粧板基材とを熱圧成型一体化する化粧板の製造法において、使用に供する鏡面板がアルミニウム合金の金属表面にクロムめっきが施されたものであることを特徴とする、化粧板の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジアリルフタレート系高光沢化粧板の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
ジアリルフタレート系樹脂を硬化成型させて光沢化粧板を製造する場合、プレス成型の際使用される鏡面板としては、アルミニウム合金板の表面をアルマイト処理した後に鏡面加工したものが永らく使用されてきた。
【0003】
アルマイト処理された鏡面板を使用した場合、得られる化粧板の表面の光沢度は概して90前後(測定角度20°、BYK−Gardner社製マイクログロス)である。しかし生産を続けるうちに表面の酸化皮膜が徐々に腐食されることで光沢度が低下してしまう。そのため高い光沢度を保つには半年〜1年に一度は再研磨あるいは再度アルマイト処理をする必要がある。
【0004】
【特許文献1】特開2000−282295号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ジアリルフタレート系光沢化粧板の製造において、アルマイト処理された鏡面板を使用することから生じる問題解決、すなわち、化粧板表面の高い光沢度の実現と、その光沢度を鏡面板の繰り返し使用後でも常に安定して得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(1)ジアリルフタレート系樹脂組成物を含浸基材に含浸したプリプレグと、(2)化粧板基材とを熱圧成型一体化する化粧板の製造法において、使用に供する鏡面板がアルミニウム合金の金属表面にクロムめっきが施されたものであることを特徴とする製造法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、表面にクロムめっきが施されたアルミニウム合金板を鏡面板として用いることで光沢度の高い化粧板を繰り返し使用後もムラなく安定して得ることができ、よって、再研磨あるいは再度のアルマイト処理等の煩雑な作業工程を回避できることから鏡面板のメンテナンス費用も低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で使用するアルミニウム合金の金属表面にクロムめっきが施された鏡面板(以下、「クロムめっき鏡面板」という。)とは、例えば特公昭42−20165号公報に開示されるように、アルミニウム合金表面を、(A)清浄、(B)亜鉛被覆、(C)水洗、(D)クロムめっきの工程によりクロムめっきを施した後、その表面を研磨により鏡面加工したものである。
【0009】
さらに具体的には、(A)洗浄については、例えばアルミニウム合金表面を温度40〜60℃の苛性ソーダ溶液に1〜3分間浸漬させ、(B)亜鉛被覆については、アルミニウム合金を洗浄後すばやく20〜30℃の酸化亜鉛を溶かした苛性ソーダ溶液中に移行浸漬することにより施される。(C)水洗については充分に行い、(D)クロムめっきについては、被処理物を40〜60℃のクロムめっき浴に浸漬したのち通電することにより施される。クロムめっき処理後、金属表面を回転する研磨布にあてるバフ研磨により鏡面仕上げを行うものである。
【0010】
本発明で使用するジアリルフタレート系樹脂組成物は、ジアリルフタレートポリマーを主成分とし、その他任意成分としてジアリルフタレートモノマー、不飽和ポリエステルを含む組成物である。
ジアリルフタレート樹脂組成物を構成する各成分の好ましい組成割合としては、ジアリルフタレートプレポリマー50〜90重量部、ジアリルフタレートモノマー0〜20重量部、不飽和ポリエステル0〜50重量部の混合樹脂100重量部である。
【0011】
ここで、ジアリルフタレートプレポリマーとは、ジアリルオルソフタレートプレポリマー、ジアリルイソフタレートプレポリマー、ジアリルテレフタレートプレポリマーの単独またはそれらの混合物である。また、下記ジアリルフタレートモノマー2種または3種の共重合体であってもよい。ジアリルフタレートプレポリマーの分子量は10000〜50000が適当である。
【0012】
一方、ジアリルフタレートモノマーとはジアリルオルソフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレートの単独またはこれらの混合物である。
【0013】
不飽和ポリエステルとしては、通常の液体状もしくは固体状の不飽和ポリエステル樹脂を使用することができる。不飽和ポリエステルは多塩基性の不飽和酸と多価アルコールから脱水重縮合して得ることができる。この場合、不飽和酸の一部が飽和酸で置き替わっていてもよい。
例えば、酸成分としてマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、フタル酸、アジピン酸が挙げられる。一方、多価アルコール成分としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、水素化ビスフェノールA等が挙げられる。
【0014】
また、不飽和ポリエステルとして空気硬化型不飽和ポリエステル樹脂を用いてもよい。例えば、上記酸成分に他の酸成分としてテトラヒドロフタル酸、3,6−エンドメチレンテトラフタル酸、メチル−3,6−エンドメチレンテトラフタル酸等の脂肪族環状不飽和酸を、上記アルコール成分に他のアルコール成分としてアリルグリシジルエーテルをそれぞれさらに共存させた混合物から脱水重縮合して製造されたポリエステル樹脂が挙げられる。
【0015】
硬化剤としては、組成物中に存在する不飽和二重結合を重合させ得る化合物であれば特に限定されないが、例えばベンゾイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーベンゾエイト、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物系硬化剤をあげることができる。添加量としてはジアリルフタレートプレポリマー、ジアリルフタレートモノマー及び不飽和ポリエステルの合計100重量部に対し、1.0〜10.0重量部、例えば3.0〜5.0重量部であってよい。
【0016】
また、硬化剤以外にも必要に応じて多種の反応性モノマーや該技術分野に通常用いられる添加剤、例えばシリカ等の充填剤、内部離型剤、難燃剤、重合調整剤、紫外線吸収剤、顔料等を通常用いられる使用量の範囲内で添加することができる。
【0017】
樹脂組成物を含浸基材に含浸することによってプリプレグ(含浸紙布)が得られる。含浸基材としては印刷紙(印刷パターン紙)、クラフト紙、不織布、織布等があげられる。プリプレグを製造するには、適当な溶剤、例えばアセトン、トルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤に本発明樹脂組成物を溶解させ樹脂液を前記含浸基材に適量含浸せしめて乾燥後、必要に応じてプレキュアすればよい。なお、含浸樹脂付着量は10〜500g/m、特に50〜300g/mであることが好ましい。
【0018】
本発明の樹脂含浸紙布を、化粧板基材に積層熱圧成型することによって化粧板を製造することができる。化粧板基材としては、合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、無機質板及び樹脂が含浸されたクラフト紙等が挙げられる。成型は時間1分〜15分、圧力10〜25kg/cm、温度120〜190℃で好ましく行うことができ、これにより樹脂組成物が完全に硬化した化粧板が得られる。なお、ここでいう化粧板には積層化粧板も含まれる。
【実施例】
【0019】
つぎに実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、光沢度はBYK−Gardner社製マイクログロスを用いて測定した。
[製造例1]
厚み3mmのアルミニウム合金(神戸製鋼(株)製)を60℃の苛性ソーダ10g/L溶液に1分間浸漬し、これを引き上げると直ちに20℃に保った80g/Lの酸化亜鉛を溶かした400g/L苛性ソーダ溶液中に6分間浸漬した後、充分に水洗した。続いて、この被処理物を50℃に保ったクロム酸250g/L、硫酸25g/Lのクロムめっき浴に浸漬した。浸漬1分後に15A/dm2電流密度の通電を2時間行いクロムめっきを施した。クロムめっき処理後、金属表面を回転する研磨布にあてるバフ研磨により鏡面仕上げを行い、実施例に供する鏡面板を得た。
【0020】
[実施例1]
ジアリルオルソフタレートプレポリマー(メチルエチルケトン50重量%溶液粘度(30℃)96.5cp、ヨウ素価56.7、ダイソー(株)製)80部、フマル酸10モル/エチレングリコール3モル/プロピレングリコール6モル/水素化ビスフェノールA1モル組成で、数平均分子量が10000〜12000かつ酸価が15mgKOH/gの不飽和ポリエステル20部、ベンゾイルパーオキサイド4部、内部離型剤(ゼレックUN、デュポン社製)0.4部、ハイドロキノン(重合調製剤)0.03部、微粉末シリカ(カープレックス、塩野義製薬(株)製)4部をアセトンに溶解して樹脂液を調整し、80g/cmの印刷パターン紙に含浸して180g/cmの含浸紙を得た。
【0021】
16mmのパーティクルボード上に該含浸紙を載せ、3mm厚のクロムめっき鏡面板(日本鏡鈑(株)製)を用いて、130℃、15kg/cm、12分の熱圧成型で化粧板を得た。得られた化粧板はJIS
K6902、同K5400及びJASに規定されている耐水性、耐候性、耐薬品性等に合格し、JIS Z8741の鏡面光沢度測定方法に規定された入射角20度における光沢度(以下、略して光沢度という)が96〜97と高い値を示した。
【0022】
[実施例2]
ジアリルオルソフタレートプレポリマー50部、不飽和ポリエステル50部、ベンゾイルパーオキサイド4部、内部離型剤0.4部、ハイドロキノン0.03部、微粉末シリカ4部をアセトンに溶解して樹脂液を調整した以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、光沢度も94〜95であった。
【0023】
[実施例3]
ジアリルオルソフタレートプレポリマー90部、ジアリルオルソフタレートモノマー10部、ベンゾイルパーオキサイド4部、内部離型剤0.4部、ハイドロキノン0.03部、微粉末シリカ4部をアセトンに溶解して樹脂液を調整した以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、光沢度も95〜96であった。
【0024】
[実施例4]
実施例1において、ジアリルオルソフタレートプレポリマーの代わりにジアリルイソフタレートプレポリマーを用いた以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、光沢度も97〜98であった。
【0025】
[実施例5]
実施例1と同様の試験を同じクロムめっき鏡面板にて1000回繰り返した(約半年の生産回数に相当)。1000回目に得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、光沢度の96〜97を保持していた。
【0026】
[比較例1]
実施例1において、クロムめっき鏡面板にかえてアルマイト処理された鏡面板(板厚;3mm、皮膜厚;約15μm、(有)特研工業製)を用いた以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験には合格したが、光沢度は89〜90と低かった。
【0027】
[比較例2]
比較例1と同様の試験を同じアルマイト処理された鏡面板にて1000回繰り返した。1000回目に得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験には合格したが、光沢度は85〜88と比較例1に比較してもさらに低く、場所によるばらつきの程度も大きかった。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、ジアリルフタレート系高光沢化粧板の製造業界において有効に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ジアリルフタレート系樹脂組成物を含浸基材に含浸したプリプレグと、(2)化粧板基材とを熱圧成型一体化する化粧板の製造法において、使用に供する鏡面板がアルミニウム合金の表面にクロムめっきが施されたものであることを特徴とする、化粧板の製造法。
【請求項2】
使用に供する鏡面板が、アルミニウム合金表面を、(A)清浄、(B)亜鉛被覆、(C)水洗、(D)クロムめっきの工程によりクロムめっきを施した後、その表面を研磨により鏡面加工したものであることを特徴とする、請求項1記載の化粧板の製造法。


【公開番号】特開2006−181799(P2006−181799A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376290(P2004−376290)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】