説明

ジッパ付き包装袋の製造方法

【課題】閉口操作時における嵌合状態の感知を可能にする上でその製造工程の増加を抑えてジッパの形状やサイズに関わる自由度を拡張させたジッパ付き包装袋の製造方法を提供する。
【解決手段】互いに嵌合可能な一対の凸部である雌型嵌合部及び雄型嵌合部を有するジッパが包装袋の開口部に設けられたジッパ付き包装袋の製造方法であって、雄型テープ体を構成する基体及び嵌合片を押し出し成形する際に、雄型連結部24bの頭頂部から基体に相当する部分の表面に向かう切断面CSを同雄型連結部24bに形成して雄型成形体24を延伸することにより雄型連結部24bが延伸方向において断続的となる間隙である非嵌合空間14Sに形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋の開放と封止とを繰り返し可能にするジッパを備えたジッパ付き包装袋の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品や医薬品等の各種物品を包装する包装袋には、包装する各種物品の保持性を向上させるべく、袋体の開口部の内面に帯状のジッパを設けた、所謂ジッパ付き包装袋が利用されている。こうしたジッパ付き包装袋においては、上記開口部の内周全体を二等分するかたちで一対の雄型嵌合部と雌型嵌合部とがそれぞれ袋体の内周面に設けられており、これら帯状をなす一対の雄型嵌合部及び雌型嵌合部により上記ジッパが構成されて該ジッパの嵌合状態と非嵌合状態との切替えにより包装袋の封止と開放とが繰り返して実現される。
【0003】
上述するジッパ付き包装袋を開放する場合、利用者は上記雄型嵌合部と雌型嵌合部とを引き離すかたちで開口部を手などで引っ張ることにより該開口部を開放せしめる。上述するジッパの長手方向の両端部にはこうした開口操作を強制的に止めるべく、上記一対の雄型嵌合部及び雌型嵌合部が嵌合状態で圧着された一対のかしめ部が設けられており、該一対のかしめ部で上記開口操作が強制的に止められることにより開口操作に伴う袋体の破断が防止されている。
【0004】
一方、上述するジッパ付き包装袋を封止する場合、利用者は上記ジッパを指先で挟み、その指先をジッパの長手方向全幅にわたり摺動させることにより上記雄型嵌合部と雌型嵌合部とを嵌合せしめる。こうした閉口操作にあっては、上記雄型嵌合部と雌型嵌合部との嵌合箇所が指先により覆われてしまうために、利用者はジッパが適切に閉じられたか否かを感知し難くなってしまう。そこで上述するジッパ付き包装袋では、このような閉口操作時における嵌合状態を容易に感知させるべく、従来から各種の提案がなされている。
【0005】
例えば特許文献1にあっては、雄型嵌合部と雌型嵌合部との少なくとも一方をその長手方向に沿って構造上不連続となるかたちに構成している。こうした構成の下で閉口操作を実行する場合にあっては、雄型嵌合部と雌型嵌合部とが不連続に嵌合するが故に嵌合するごとに生じる嵌合部の変位を利用者の指先が感知し、さらには嵌合するごとの変位に伴う音を利用者が聞くことにより、ジッパが適切に閉じられたか否かをこうした触感や音感に基づいて感知することができる。
【特許文献1】特開平8−58811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1におけるジッパ付き包装袋の製造方法では、押出機から連続的に押出す熱可塑性樹脂により雄型嵌合部と雌型嵌合部との少なくとも一方を形成し、その嵌合部の一部をパンチで打抜いたり押圧して圧縮したりすることにより構造上不連続な嵌合部を形成している。それゆえ上述する製造方法を用いて上記構造上不連続な嵌合部を形成する場合にあっては、打抜いた箇所が細かい残渣となって嵌合部に付着してしまうために嵌合部の清浄度を著しく劣化させてしまい、こうした清浄度を回復させるための洗浄工程が別途必要とされる問題がある。また構造上不連続となる箇所の形状やサイズが押圧歯などの押圧部材の形状により規定されてしまうが故に、多品種を生産する上においては嵌合部のサイズや形状そのものに大きな制約を伴う問題があった。
【0007】
本発明は、上記問題を鑑みてなされたものであり、その目的は、閉口操作時における嵌
合状態の感知を可能にする上でその製造工程の増加を抑えてジッパの形状やサイズに関わる自由度を拡張させたジッパ付き包装袋の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、互いに嵌合可能な一対の凸部を有するジッパが包装袋の開口部に設けられたジッパ付き包装袋の製造方法であって、前記ジッパを構成する基体とともに前記凸部を押し出し成形する際に、前記一対の凸部の少なくとも一方において該凸部の頭頂部から前記基体の表面に向かう部分的な切断面を前記凸部に形成して少なくとも同基体を延伸することにより前記凸部が延伸方向において断続的となる間隙を前記凸部に形成したことを要旨とする。
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、ジッパの構成要素である凸部、例えば突起又は同突起と嵌合可能な凸溝に設けられる断続的な間隙が、同凸部の押出し成形時における切断面の形成により具体化することができる。それゆえ、長手方向において構造上不連続となる嵌合部である上記凸部をこうした方法で形成することにより、凸部の間隙にあたる細かい残渣片の発生を、その製造工程において抑えることができる。この結果、延伸方向に延びる凸部に断続的な間隙を形成する上では、同間隙に相当する残渣片等を洗浄するための工程を削減することが可能になる。また切断面における切断方向の深さ、切断面の数、基体に与える延伸力等を変更すれば、凸部における間隙の形状やピッチを変更することもできる。そのため、凸部における間隙の形状やサイズを設計変更する場合にあっては、その自由度を拡張させることもできるため、多品種を生産する上においても容易に適用することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、前記基体がテープ体であり、前記テープ体とともに押出し成形される前記凸部に前記間隙を形成した後に、前記包装袋を構成するフィルムに前記テープ体を溶着することを要旨とする。
【0011】
請求項2に記載の発明法によれば、ジッパと包装袋とを別体として製造できることから、包装袋の構成材料と異なる構成材料によりジッパを製造することもできる。それゆえ、例えば上記間隙の形状やサイズに適した延伸性を予めジッパの構成材料に適用することもでき、ジッパの構成材料に関わる選択範囲を拡張できる分だけ、こうした製造方法の適用範囲を拡張することもできる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記基体が前記包装袋を構成するフィルムであり、インフレーション工程によりチューブ状に形成された前記フィルムの内面に溶融状態の熱可塑性樹脂からなる前記凸部を溶着することを要旨とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、ジッパと包装袋とを一体的に成形できることから、ジッパと包装袋とを別体として製造する場合に比べて生産性を向上することもできる。
請求項4に記載の発明は、前記凸部を前記フィルムに溶着する前に、前記凸部に前記切断面を形成することを要旨とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、切断面が予め形成された凸部がチューブ状をなすフィルムの内面に溶着されるため、切断面を形成するために必要とされる応力等がフィルムに対して作用することがない。それゆえ切断面を形成する際には、フィルムにおける機械的な損傷を抑えることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、前記凸部を前記フィルムに溶着した後に、前記凸部に前記切断面を形成することを要旨とする。
請求項5に記載の発明によれば、フィルムに溶着された状態の凸部に切断面が形成されることから、フィルムを延伸する直前に切断面を形成することができる。それゆえ切断面の位置や形状の精度、ひいては凸部における間隙の位置や形状の精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図1〜図4を参照して説明する。図1はジッパ付き包装袋の斜視構成を示す概略斜視図であり、図2はジッパ付き包装袋におけるジッパの斜視構造を示す部分斜視図である。
【0017】
図1に示されるように、ジッパ付き包装袋10における袋体11は、底部で折り返された一枚のシート12がその長手方向の両側辺で溶着されることにより形成されており、その頂部が開口可能となる態様で構成されている。このようなシート12の構成材料としては、例えばポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0018】
上記袋体11の頂部である開口部11aの内面には、同開口部11aの内周全体を袋体11の前側と後側とに二等分するかたちで一対の雌型テープ体13と雄型テープ体14とが溶着されている。雌型テープ体13や雄型テープ体14の構成材料としては、例えばポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂等の熱可塑性樹脂を用いることができ、また袋体11との間に高い溶着強度を得る上では、上記シート12と同種の構成材料を用いることが好ましい。
【0019】
図2に示されるように、雌型テープ体13における基体13aの表面には、該表面から袋体11の内側へ突出する凸部である雌型嵌合部13bが、雌型テープ体13の略全幅にわたり形成されている。雄型テープ体14における基体14aの表面には、該表面から袋体11の内側へ突出する凸部である雄型嵌合部14bが、前記雌型嵌合部13bと相対向するかたちで雄型テープ体14の略全幅にわたり形成されている。本実施形態においては、上述する雌型テープ体13と雄型嵌合部14bとによりジッパ15が構成されている。
【0020】
雌型テープ体13に設けられた上記雌型嵌合部13bは、同雌型テープ体13の長手方向に延びる断面C字状に形成されており、雌型テープ体13の長手方向において構造上連続となるかたちで構成されている。一方、雄型テープ体14に設けられた上記雄型嵌合部14bは、同雄型テープ体14の長手方向に延びる断面T字状の嵌合片14cが雄型テープ体14の長手方向に所定の間隔を空けて配列されることにより構成されている。こうした複数の嵌合片14cからなる雄型嵌合部14bでは、隣接する一対の嵌合片14cの間の間隙である複数の非嵌合空間14Sを有しており、その長手方向が構造上不連続となるかたちで構成されている。これら雌型テープ体13と雄型テープ体14とからなるジッパ15の長手方向の両端部には、同雌型嵌合部13bと雄型嵌合部14bとが嵌合状態で圧着されてなる一対のかしめ部15a(図1参照)が設けられている。
【0021】
こうした構成からなるジッパ15の閉口操作では、雄型嵌合部14bを構成する各嵌合片14cが雌型嵌合部13bの長手方向の一端から他端に向けて順に同雌型嵌合部13bと嵌合することにより、袋体11の開口部11aが閉口される。この際、雌型嵌合部13bと雄型嵌合部14bとがその長手方向に沿って不連続に嵌合するために、雌型嵌合部13bと嵌合片14cとが嵌合するごとに雌型嵌合部13bの変位を利用者の指先が感知し、さらには嵌合するごとの変位に伴う音を利用者が聞くことにより、ジッパ15が適切に閉じられたか否かを触感や音感に基づいて感知させることができる。
【0022】
これに対して、こうした構成からなるジッパ15の開口操作では、雄型嵌合部14bを
構成する各嵌合片14cが雌型嵌合部13bから引き離されるかたちで引っ張られることにより、袋体11の開口部11aが開口される。この際、雌型嵌合部13bと雄型嵌合部14bとがその長手方向に沿って不連続に嵌合しているために、雌型嵌合部13bと嵌合片14cとの嵌合を解除するごとに雌型嵌合部13bの変位が利用者の指先に伝達し、さらには嵌合を解除するごとの変位に伴う音が利用者の聴覚に伝達されることにより、ジッパ15が適切に開けられたか否かを触感や音感に基づいて感知させることができる。そしてジッパ15の両端に設けられた一対のかしめ部で開口操作が強制的に止められることにより、開口操作に伴う袋体11の破断が防止される。
【0023】
次に、上述したジッパ付き包装袋10の製造方法について以下に説明する。まず、上記ジッパ15を製造する製造装置について図3を参照して説明する。図3は上記ジッパ15の製造装置の構成を模式的に示す概略構成図であり、図4(a)(b)は同製造装置における製造過程にて成形された雌型成形体及び雄型成形体の平面構造を示す平面図である。
【0024】
図3に示されるように、ジッパの製造装置20には、上記熱可塑性樹脂などのテープ材料を押し出す押出機21と、押し出されたテープ材料をテープ状に成形するダイ21aと、上記テープ状に成形されたテープ材料を冷却する冷却ロール22とが備えられている。押出機21の内部に供給されるテープ材料は、同押出機21に設けられたスクリュー等を用いることにより溶融状態でダイ21aへ押出される。こうした溶融状態のテープ材料が供給されるダイ21aには2種類の吐出口が設けられており、一方の吐出口には雌型テープ体13の断面形状に対応する開口が設けられ、他方の吐出口には雄型テープ体14の断面形状に対応する開口が設けられている。そして、ダイ21aに供給される溶融状体のテープ材料は、これら雌型テープ体13を成形するための吐出口や雄型テープ体14を成形するための吐出口から吐出された後に冷却ロール22の表面で一旦冷却されることにより成形体を形成する。
【0025】
こうした構成からなるジッパの製造装置20によれば、図4(a)に示されるように、複数の上記雌型テープ体13が押出し方向Aに連結されたかたちの成形体である雌型成形体23と、複数の上記雄型テープ体14が押出し方向に連結されたかたちの成形体である雄型成形体24とが形成される。雌型成形体23には、上記基体13aが長手方向である押出し方向に連結されたかたちの成形基体23aと、上記雌型嵌合部13bが押出し方向に連結されたかたちの雌型連結部23bとが形成されている。また雄型成形体24には、上記基体14aが長手方向に連結されたかたちの成形基体24aと、上記複数の嵌合片14cが押出し方向に連結されたかたちの雄型連結部24bとが形成しており、上述する複数の非嵌合空間14Sを有しないかたちで成形される。
【0026】
ジッパの製造装置20における冷却ロール22の後段には、上記テープ状に成形された成形体を長手方向に延伸する延伸機25と、延伸された成形体を巻き取る巻取機26とが備えられている。延伸機25の内部には、冷却ロール22から搬入される上記雌型成形体23及び雄型成形体24をテープ材料のガラス転移温度近傍もしくはガラス転移温度以上の温度にまで加熱するヒータ25aと、該ヒータにより加熱された雌型成形体23及び雄型成形体24をその長手方向に延伸する回転ロール25bとが備えられている。また延伸機25の内部には、雄型成形体24が延伸される前あるいは延伸される際に、前記雄型連結部24bの頭頂部から同雄型連結部24bの深さ方向に延びる複数の切断面CS(図4(a)参照)を同雄型連結部24bに形成する切断刃25cが備えられている。
【0027】
こうした構成からなるジッパの製造装置20によれば、冷却ロール22から搬入される雌型成形体23と雄型成形体24とがその長手方向に所定の延伸倍率で延伸される。この際、雄型成形体24における成形基体24aでは、その長手方向における延伸が連続的となる。一方、同雄型成形体24における雄型連結部24bでは、成形基体24aと一体と
なる部分が成形基体24aとともに上記長手方向に延伸されるものの、上記複数の切断面CSが形成された部分において成形基体24aのみが延伸されるがために、その長手方向における構造が不連続的になる。それゆえ、延伸機25を通じて延伸された雄型成形体24には、切断面CSから延伸方向に延びる空間である前記非嵌合空間14Sが切断面CSごとに形成され、また雄型連結部24bがこうした複数の非嵌合空間14Sで切断されることにより複数の前記嵌合片14cが上記長手方向に配列されるように形成される。そして、このような雄型成形体24と前記雌型成形体23とが巻取機26に巻き取られた後に所定の長さで切断されることにより前記雌型テープ体13と雄型テープ体14とが形成される。
【0028】
次に、上述したジッパ15の製造装置20を用いてジッパ付き包装袋10を製造する方法について以下に説明する。図5はジッパ付き包装袋10の製造工程の流れを示すフローチャートである。
【0029】
図5に示されるように、上記ジッパ付き包装袋10の製造工程においては、まず袋体11の構成要素である上記シート12を形成するシート形成工程S10と、ジッパ15の構成要素である雌型テープ体13及び雄型テープ体14を形成するテープ形成工程S20とが実行される。そして、上記シート形成工程S10にて形成したシート12に対して、上記テープ形成工程S20にて形成した雌型テープ体13及び雄型テープ体14を溶着する溶着工程S30が実行される。
【0030】
詳述すると、上記シート形成工程S10においては、上述したシート12の構成材料に対して押出し成形方法やインフレーション成形方法が適用されることにより、袋体11を形成するためのシート12が形成される。次いで、上記テープ形成工程S20においては、上述したジッパの製造装置20を用いることにより、まず雌型成形体23及び雄型成形体24が押出し成形される(押出工程S21)。次いで、雄型成形体24に上記切断面CSが形成されて(切断工程S22)、その後、同雄型成形体24及び雌型成形体23が共通する長手方向に延伸される(延伸工程S23)。これにより、複数の嵌合片14c及び非嵌合空間14Sが雄型成形体24に形成されて、上記雌型テープ体13及び雄型テープ体14が形成される。
【0031】
そして、これらシート形成工程S10とテープ形成工程S20とが実行されると、嵌合させた状態の雌型テープ体13及び雄型テープ体14がそれぞれ折り返されたシート12に溶着される。これとともに、雌型テープ体13及び雄型テープ体14を開口部11aに配置させるかたちでシート12の両側辺が溶着される(溶着工程S30)。これにより上述するジッパ付き包装袋10を製造することができる。
【0032】
以上説明したように上記実施形態によれば、下記のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態によれば、ジッパ15の構成要素である嵌合片14cの間隙が雄型嵌合部14bの押出し成形時における切断面CSの形成により具体化することができる。それゆえ、嵌合片14cの間隙にあたる細かい残渣片の発生を、ジッパ付き包装袋10の製造工程において抑えることができる。この結果、延伸方向に延びる雄型嵌合部14bに断続的な非嵌合空間14Sを形成する上では、同非嵌合空間14Sに相当する残渣片等を洗浄するための工程を削減することが可能になる。
【0033】
(2)また切断面CSにおける切断方向の深さ、切断面CSの数、雄型成形体24に与える延伸力等を変更すれば、非嵌合空間14Sの形状やピッチを変更することもできる。そのため、非嵌合空間14Sの形状やサイズを設計変更する場合にあっては、その自由度を拡張させることもできるため、多品種を生産する上においても容易に適用することができる。
【0034】
(3)上記実施形態によれば、雌型テープ体13及び雄型テープ体14と、シート12とを別体として製造できることから、袋体11の構成材料と異なる構成材料によりジッパ15を製造することもできる。それゆえ、例えば上記非嵌合空間14Sの形状やサイズに適した延伸性を予めジッパ15の構成材料に適用することもでき、ジッパ15の構成材料に関わる選択範囲を拡張できる分だけ、こうした製造方法の適用範囲を拡張することもできる。
【0035】
なお、上記実施形態は以下のように変更して実施することもできる。
・上記実施形態においては、袋体11とジッパ15とを別体として成形する方法を説明した。これに限らず、袋体11とジッパ15とを一体的に成形する方法であれ、雄型嵌合部14bに対応する雄型連結部24bに切断面CSを形成して同雄型連結部24bを長手方向に延伸する方法であれば、上述する効果と同種の効果を得ることができる。
【0036】
袋体11とジッパ15とを一体的に成形する方法としては、インフレーション法を利用する方法が挙げられる。すなわち、図6に示されるように、前記シート12をなすチューブ状のフィルム31をインフレーション法によって押出し成形するとともに、ジッパ15の構成要素となる雌型成形体23及び雄型成形体24を同チューブ状のフィルム31の内側で押出し成形して、その雌型成形体23及び雄型成形体24を上記チューブ状のフィルム31の内面に溶着させる。
【0037】
このようなインフレーション工程に適用される装置は、雌型成形体23や雄型成形体24を押出す押出部32と、チューブ状のフィルム31の内部に延伸用の空気を吹き込む空気供給部33と、これら押出部32と空気供給部33との間に設けられた切断部34aとから構成される。このような装置では、雌型成形体23及び雄型成形体24を押出部32が押出して、これら雌型成形体23及び雄型成形体24がフィルム31の内面に溶着される前に、雌型成形体23あるいは雄型成形体24に対して切断部34aが切断面CSを形成する。この際、例えば切断部34aの後段である空気供給部33の内部で上記雌型成形体23及び雄型成形体24がフィルム31の内面に溶着されて、その後、フィルム31の内部に延伸用の空気が吹き込まれることにより同フィルム31が延伸される。これにより、非嵌合空間14Sを有したジッパ15と袋体11とが一体的に成形される。
【0038】
なお、上述する装置においては、空気供給部33を切断部34bの前段に設けることもできる。このような装置では、例えば空気供給部33の内部で雌型成形体23及び雄型成形体24がフィルム31の内面に溶着されて、その後に、雌型成形体23あるいは雄型成形体24に対して切断部34bが前記切断面CSを形成する。次いで、フィルム31の内部に延伸用の空気が吹き込まれることにより同フィルム31が延伸されて、これにより、非嵌合空間14Sを有したジッパ15と袋体11とが一体的に成形される。
【0039】
こうした方法によれば、嵌合片14cとシート12とを一体的に成形できることから、ジッパ15と袋体11とを別体として製造する場合に比べて、上述する溶着工程を割愛することができ、ひいてはジッパ付き包装袋の生産性を向上することもできる。また切断面CSが予め形成された雌型成形体23及び雄型成形体24を前記フィルム31の内面に溶着する場合にあっては、切断面CSを形成するために必要とされる応力等がフィルム31に対して作用することがないため、切断面CSを形成する際にフィルム31における機械的な損傷を抑えることもできる。またフィルム31に溶着された状態の雌型成形体23又は雄型成形体24に切断面CSを形成する場合にあっては、フィルム31を延伸する直前に切断面CSを形成することができるため、切断面CSの位置や形状の精度、ひいては嵌合片14cや非嵌合空間14Sの位置や形状の精度を向上することもできる。
【0040】
・上記実施形態の製造装置20に対して、雄型成形体24の延伸後あるいは延伸前後における嵌合片14cの構造を機械的又は光学的に計測する計測部を備え、該計測部の計測結果が目標値になるように、前記計測結果に基づいて延伸倍率やテープ材料の吐出量を変調する変調部をさらに備える構成であってもよい。すなわち、上記実施形態におけるジッパ付き包装体の製造方法では、雄型成形体24の延伸後あるいは延伸前後における嵌合片14cの厚みや幅、非嵌合空間14Sの長手方向における幅等に基づいて雄型成形体24の延伸倍率やテープ材料の吐出量を変調する方法であってもよい。こうした方法によれば、雄型テープ体14に関わる加工精度や加工再現性を向上することもできる。
【0041】
・上記実施形態の製造装置20に対して、雄型成形体24の延伸後あるいは延伸前後における嵌合片14cの構造を機械的又は光学的に計測する計測部を備え、該計測部の計測結果が目標値になるように、前記計測結果に基づいて切断面のサイズやピッチを変調する変調部をさらに備える構成であってもよい。すなわち、上記実施形態におけるジッパ付き包装体の製造方法では、雄型成形体24の延伸後あるいは延伸前後における嵌合片14cの厚みや幅、非嵌合空間14Sの長手方向における幅等に基づいて切断面のサイズやピッチを変調する方法であってもよい。
【0042】
ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂フィルムは、一般にその密度が高くなるに連れて引張り弾性率が高くなり、またその配向方向への引き裂き強度が低くなる。また同密度が高くなるに連れて、軟化温度や融点が高くなり、また熱伝導性が高くなる。さらに同密度が高くなるに連れて、透湿度が小さくなり、またガスバリヤ性が高くなる。それゆえジッパ15における構成材料の密度は、ジッパ15に要求される透明度、引張弾性率、引張強度、引張伸び、引裂強度、衝撃強度、熱的耐性、耐薬品性等、各種の要請に応じて適宜選択される。こうした方法によれば、延伸倍率を大幅に変更することなく、雄型テープ体14に関わる加工精度や加工再現性を向上することができる。
【0043】
・上記実施形態における切断面CSの深さは、雄型連結部24bの深さ方向の略全体にわたるかたちであってもよく、あるいは雄型連結部24bの深さ方向において部分的となるかたちであってもよい。非嵌合空間14Sの形状やサイズ、数は、ジッパ付き包装袋10に要求される閉口操作性や開口操作性、気密性等に応じて変更されるものである。そのため、非嵌合空間14Sの形状やサイズ、数に相関する上記切断面CSの深さや数は、上述する要請に応じて適宜変更される態様が好ましい。こうした方法であれば、非嵌合空間14Sの形状やピッチ等を容易に変更することもでき、非嵌合空間14Sの形状やサイズ等を設計変更する場合にあっては、その自由度を拡張させることもできるため、多品種を生産する上においても容易に適用することができる。
【0044】
・上記実施形態においては、雄型成形体24の雄型連結部24bに切断面CSを形成し、雄型嵌合部14bに非嵌合空間14Sを形成した。これを変更して、雌型成形体23の雌型連結部23bに切断面CSを形成し、雌型嵌合部13bを長手方向において断続的に形成する態様であってもよく、さらに雄型嵌合部14b及び雌型嵌合部13bを長手方向において断続的に形成する態様であってもよい。
【0045】
・上記実施形態においては、フィルムの搬送方向である縦軸方向へ同フィルムを延伸する際に非嵌合部の形状を制御する態様にした。これを変更して、フィルムの搬送方向と直交する方向である横軸方向へ同フィルムを延伸する際にも非嵌合部の形状を制御する態様であってもよい。
【0046】
・上記実施形態においては、ジッパ付き包装袋10における袋体11を、前側フィルムと後側フィルムとにより構成される三方シール袋に具体化した。これを変更して、ジッパ付き包装袋における袋体は、四方シール袋、スタンディングパウチ、ガゼットパウチ、ピ
ロー袋等、各種の方式に具体化してもよく、あるいはガゼット袋等の自立性を有した袋に具体化することもできる。こうした構成であれ、上述する製造方法を適用してジッパを形成する上では、上述する効果に類する効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施形態におけるジッパ付き包装袋の斜視構造を示す概略斜視図。
【図2】本実施形態におけるジッパの斜視構造を示す部分斜視図。
【図3】本実施形態におけるジッパの製造装置の構造を模式的に示す構成図。
【図4】(a)(b)本実施形態におけるジッパの製造過程における成形体の平面構造を示す平面図。
【図5】本実施形態におけるジッパ付き包装袋の製造工程を示すフローチャート。
【図6】変更例におけるジッパ付き包装袋の製造工程を模式的に示す図。
【符号の説明】
【0048】
10…ジッパ付き包装袋、11…袋体、12…シート、13…雌型テープ体、13a…基体、13b…雌型嵌合部、14…雄型テープ体、14a…基体、14b…雄型嵌合部、14c…嵌合片、14S…非嵌合空間、15…ジッパ、15a…かしめ部、20…製造装置、21…押出機、21a…ダイ、22…冷却ロール、23…雌型成形体、23a…成形基体、23b…雌型連結部、24…雄型成形体、24a…成形基体、24b…雄型連結部、25…延伸機、25a…ヒータ、25b…回転ロール、26…巻取機、32…押出部、33…空気供給部、34a,34b…切断部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに嵌合可能な一対の凸部を有するジッパが包装袋の開口部に設けられたジッパ付き包装袋の製造方法であって、
前記ジッパを構成する基体とともに前記凸部を押し出し成形する際に、前記一対の凸部の少なくとも一方において該凸部の頭頂部から前記基体の表面に向かう切断面を前記凸部に形成して少なくとも同基体を延伸することにより前記凸部が延伸方向において断続的となる間隙を前記凸部に形成したことを特徴とするジッパ付き包装袋の製造方法。
【請求項2】
前記基体がテープ体であり、
前記テープ体とともに押出し成形される前記凸部に前記間隙を形成した後に、前記包装袋を構成するフィルムに前記テープ体を溶着する
請求項1に記載のジッパ付き包装袋の製造方法。
【請求項3】
前記基体が前記包装袋を構成するフィルムであり、
インフレーション工程によりチューブ状に形成された前記フィルムの内面に溶融状態の熱可塑性樹脂からなる前記凸部を溶着する
請求項1に記載のジッパ付き包装袋の製造方法。
【請求項4】
前記凸部を前記フィルムに溶着する前に、前記凸部に前記切断面を形成する
請求項3に記載のジッパ付き包装袋の製造方法。
【請求項5】
前記凸部を前記フィルムに溶着した後に、前記凸部に前記切断面を形成する
請求項3に記載のジッパ付き包装袋の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−120190(P2010−120190A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293835(P2008−293835)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000001100)株式会社クレハ (477)
【Fターム(参考)】