説明

ジフェニルメチルピペラジン誘導体及び該誘導体を含有する医薬

【課題】TGF−bII型受容体抑制作用を有する化合物の提供。
【解決手段】一般式(1)に表されるジフェニルメチルピペラジン誘導体。



【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬に好適なジフェニルメチル複素環誘導体に関し、更に詳細には瘢痕処置に有用なジフェニルメチル複素環誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
コラーゲン線維などの細胞外マトリックスは、創傷治癒などに於いて重要な役割を果たしているが、創傷治癒過程に於いては、時として、これらの細胞外マトリックスの産生過剰がおこり、これが瘢痕を形成すると言われている。この様な産生過剰は、TGF−bおよびTGF−bII型受容体の関与が指摘されており、この細胞外マトリックスの過剰産生に寄与しているTGF−bのシグナル伝達を抑制することが瘢痕の生成抑制、或いは、生成した瘢痕の消失に重要であると考えられている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。この様にTGF−bおよびTGF−bII型受容体の亢進によって生じる瘢痕は、外観的な違和感をを著しく与えるものであることから、TGF−bの作用を抑制せしめる試みが為されている。この様なTGF−bの作用を抑制する物質、或いは、瘢痕の生成を抑制する物質としては、甲状腺ホルモン様物質、ピラゾロン誘導体、フランカルボキシラートのようなビアリール誘導体(例えば、特許文献3を参照)等が知られている。これらの物質は確かに細胞外マトリックスの産生過剰を抑制するものの、瘢痕の抑制にまでは至っていないのが現状であり、更なる効果の向上が望まれていた。
【0003】
一方、ジフェニルメチルピペラジンなどのジフェニルメチル複素環誘導体は、ドーパミン再取込阻害作用(例えば、特許文献4を参照)、ACAT阻害作用(例えば、特許文献5を参照)等を有するものが知られており、ジフェニルメチルピペラジン骨格は医薬の有効成分の骨格として有用であることが知られている。又、皮膚外用剤の有効成分としては、エラスターゼ阻害作用を有するものが知られている(例えば、特許文献6を参照)。しかしながら、ジフェニルメチルピペラジンなどのジフェニルメチル複素環誘導体において、TGF−bII型受容体抑制作用を有し、瘢痕抑制作用を有する示唆の存するものとしてはモリン誘導体が知られるのみである(例えば、特許文献2を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−335671号公報
【特許文献2】特開2007−84446号公報
【特許文献3】特開2000−26410号公報
【特許文献4】特開平10−218867号公報
【特許文献5】特開平10−120644号公報
【特許文献6】特開2003−55133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、瘢痕生成を抑制すべく、TGF−bII型受容体抑制作用を有する化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、TGF−bII型受容体抑制作用を有する化合物を求めて、鋭意研究努力を重ねた結果、少なくとも二つの芳香族基を、複素原子を有していても良い、脂肪族基でつないでなるA部と、縮合複素芳香環基からなるB部とを複素脂肪族環で結合したジフェニルメチル複素環誘導体がその様な作用を備えていることを見出し、発明を完成させるに至った。即ち、本発明は、以下に示すとおりである。
<1>少なくとも二つの芳香族基を、複素原子を有していても良い、脂肪族基でつないでなるA部と、縮合複素芳香環基からなるB部とを複素脂肪族環で結合したジフェニルメチル複素環誘導体及び/又はその塩。
<2>前記ジフェニルメチル複素環誘導体は、次に示す一般式(1)に表されるジフェニルメチルピペラジン誘導体であることを特徴とする、<1>に記載のジフェニルメチル複素環誘導体及び/又はその塩。
【0007】
【化1】

一般式(1)
(但し、式中X、Yはメチレン基、窒素原子、硫黄原子又は原子が存在しない場合を表し、R1は、水素原子、水素原子又は炭素原子が窒素で置換されていても良いアルキル基又はアルケニル基を表し、R2はハロゲン原子、アミノ基又はヒドラジニル基を表し、R3は置換基を有していても良い炭素数5〜18の芳香族基を表す。)
【0008】
<3>前記一般式(1)に表される化合物は、次に示す一般式(2)又は(3)に表される化合物であることを特徴とする、<2>に記載のジフェニルメチルピペラジン誘導体及び/又はその塩。
【0009】
【化2】

一般式(2)
(但し、式中R1は、水素原子、水素原子又は炭素原子が窒素で置換されていても良いアルキル基又はアルケニル基を表し、R2はハロゲン原子、アミノ基又はヒドラジニル基を表し、R3は置換基を有していても良い炭素数5〜18の芳香族基を表す。)
【0010】
【化3】

一般式(3)
(但し、式中R1は、水素原子、水素原子又は炭素原子が窒素で置換されていても良いアルキル基又はアルケニル基を表し、R2はハロゲン原子、アミノ基又はヒドラジニル基を表し、R3は置換基を有していても良い炭素数5〜18の芳香族基を表す。)
【0011】
<4><1>〜<3>何れか1項に記載のジフェニルメチル複素環誘導体及び/又はその塩からなるTGF−b(トランスフォーミンググロースファクターベータ)II型受容体阻害剤。
<5><4>のTGF−bII型受容体阻害剤を有効成分として含有する瘢痕処置用の医薬。
<6>皮膚外用剤であることを特徴とする、<5>に記載の医薬。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、TGF−bII型受容体抑制作用を有する化合物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
<1>本発明の化合物
本発明の化合物は、少なくとも二つの芳香族基を、複素原子を有していても良い、脂肪族基でつないでなるA部と、縮合複素芳香環基からなるB部とを複素脂肪族環で結合したジフェニルメチル複素環誘導体及び/又はその塩であることを特徴とする。
【0014】
ここでA部を構成する少なくとも二つの芳香族基は、同一でも良いし、異なっていても良く、その一部又は全部の水素原子が置換基で置換されていても良い。この様な芳香族基としては、複素芳香環も許容され、環を構成する炭素数は3〜12が好ましく、4〜10がより好ましい。具体的には、例えば、フェニル基、ピリジニル基、イミダゾリル基、トリアゾリル基、ピミジニル基等が好適に例示できる。これらの少なくとも2個、好ましくは、4個以下、より好ましくは3個以下を脂肪族基で結合せしめA部と為すが、結合のための脂肪族基としては、前記芳香族基と縮合した環状の脂肪族基、分岐又は直鎖の脂肪族基が例示でき、これらは1乃至5個の不飽和結合を有することも出来るし、かかる脂肪族基は水素原子又は炭素原子が、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ハロゲン原子などで置換されていても良い。この様なA部を具体的に例示すれば、ジフェニルメチル基、ビス(4−フルオロフェニル)メチル基等の、ハロゲンで水素原子が置換されていても良いジフェニルメチル基、ジフェニルアセチル基、ビス(4−フルオロフェニル)メチルカルボニル基等のハロゲンで水素原子が置換されていても良いジフェニルアルキルカルボニル基、ジベンゾスベラニル基、ジベンゾ[b,e]チエピニル基、ジベンゾ[b,e]アゼピニル基等が好適に例示できる。かかるA部はその水素原子の一部乃至は全部を置換基で置換することが出来る。
【0015】
前記A部と複素脂肪族環を介して結合されるB部は、縮合複素芳香環基からなり、前記縮合複素環基はその水素原子の一部乃至は全部を置換基で置換されていても良い。複素環基を構成する複素原子としては、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子などが好適に例示できる。かかる縮合複素環基は、6員環と6員環の縮合環、6員環と5員環の縮合環、5員環と5員環の縮合環等が好適に例示でき、具体的には、ピリドピリジン、ピリミドピリミジン、ピラゾロピリジン、ピラゾロピリミジン、イミダゾロピリジン、イミダゾロピリミジン、オキサゾロピリジン、オキサゾロピリミジン、ピラゾロピラゾールなどが好適に例示できる。特に好適なものは、ピラゾロピリミジン骨格を有するものである。
【0016】
前記A部と前記B部とを結合させる複素脂肪族環は、脂肪族環状化合物の少なくとも1つの炭素を前記複素原子で置換した構造を有しており、水素原子の一部又は全部が置換基で置換されていても良い。かかる複素脂肪族環としては、例えば、ピペリジン残基、ピペラジン残基、ホモピペラジン残基、モルフォリン残基等が好適に例示でき、ピペラジン残基が特に好ましい。
【0017】
前記置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜4のアルキル基乃至はアルケニル基、炭素数1〜4のアルキルオキシ基、炭素数1〜4のアルキル基で水素原子が置換されていても良い、アミノ基、アミノカルボニル基、アミリジノ基、グアニジノ基、カルボキシル基、炭素数1〜4のアルキルカルボニル基、フェニル基、ナフチル基、ハロゲノフェニル基、ハロゲノナフチル基、アルキルフェニル基、アルキルナフチル基、アルキルオキシフェニル基、アルキルオキシナフチル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基、ニトロフェニル基、ニトロナフチル基等が好適に例示できる。
【0018】
かかる少なくとも二つの芳香族基を、複素原子を有していても良い、脂肪族基でつないでなるA部と、縮合複素芳香環基からなるB部とを複素脂肪族環で結合したジフェニルメチル複素環誘導体としては、次に示す一般式(1)に表されるものが特に好適に例示できる。
【0019】
【化4】

一般式(1)
(但し、式中X、Yはメチレン基、窒素原子、硫黄原子又は原子が存在しない場合を表し、R1は、水素原子、水素原子又は炭素原子が窒素で置換されていても良いアルキル基又はアルケニル基を表し、R2はハロゲン原子、アミノ基又はヒドラジニル基を表し、R3は前記置換基を有していても良い炭素数5〜18の芳香族基を表す。)
【0020】
前記一般式(1)に表される化合物としては、次に示す一般式(2)に表される化合物と一般式(3)に表される化合物が特に好ましい。
【0021】
【化5】

一般式(2)
(但し、式中R1は、水素原子、水素原子又は炭素原子が窒素で置換されていても良いアルキル基又はアルケニル基を表し、R2はハロゲン原子、アミノ基又はヒドラジニル基を表し、R3は前記置換基を有していても良い炭素数5〜18の芳香族基を表す。)
【0022】
【化6】

一般式(3)
(但し、式中R1は、水素原子、水素原子又は炭素原子が窒素で置換されていても良いアルキル基又はアルケニル基を表し、R2はハロゲン原子、アミノ基又はヒドラジニル基を表し、R3は置換基を有していても良い炭素数5〜18の芳香族基を表す。)
【0023】
これら一般式(1)〜(3)に表される具体的な化合物としては、次に示す化合物1、化合物2、化合物3が好適に例示できる。
【0024】
【化7】

化合物1
1−ジフェニルメチル−4−(6−ヒドラジノ−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン
(化合物コードPP13058)
【0025】
【化8】

化合物2
1−(ジベンゾ[b.e]チエピン−11−イル)−4−(6−アミジノ−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン
(化合物コードPP13058−76)
【0026】
【化9】

化合物3
1−(ジベンゾ[b.e]チエピン−11−イル)−4−(6−アミジノ−1−(4−メトキシフェニル)−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン
(化合物コードPP13058−91)
【0027】
かかるジフェニルメチル複素環誘導体は、A部の結合相当部位に水酸基或いはハロゲンを導入した化合物などを原料とし、水酸基であれば塩化チオニルなどのハロゲン化試薬を用いて該水酸基をハロゲンに置換し、ピペラジンなどの複素脂肪族環状化合物とアルカリ存在下ジメチルホルムアミド(DMF)等を溶媒として、加温下縮合させ、これにB部の結合相当部位に水酸基を有する化合物を同様にハロゲン化したものを同様にアルカリ存在下縮合させることにより得ることが出来る。
【0028】
斯くして得られたジフェニルメチル複素環誘導体は、そのまま医薬などに使用することも出来るし、酸とともに処理して塩として使用することも出来る。塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、炭酸塩、リン酸塩等の鉱酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩等の有機酸塩等が好適に例示できる。
【0029】
本発明のジフェニルメチル複素環誘導体及び/又はその塩は、優れたTGFβIIR阻害効果を有するため、皮膚外用剤などに含有せしめ、これを投与することにより、瘢痕の形成を抑制することが出来る。瘢痕の形成抑制とは、既に形成した瘢痕が更に進展しないように防ぐ作用、これから生成するであろう瘢痕が生じないようにさせる作用などを抱含した内容を意味する。この様な効果を奏するためには、かかる化合物を0.1〜50質量%皮膚外用剤に含有せしめ、適当量を1日1回乃至数回経皮的に投与することが好ましい。
【0030】
この様な皮膚外用剤には、本発明のジフェニルメチル複素環誘導体以外に、通常皮膚外用剤で使用される任意成分を含有せしめることが出来る。この様な任意成分としては、例えば、マカデミアナッツ油、アボガド油、トウモロコシ油、オリーブ油、ナタネ油、ゴマ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、ホホバ油、ヤシ油、パーム油、液状ラノリン、硬化ヤシ油、硬化油、モクロウ、硬化ヒマシ油、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、イボタロウ、ラノリン、還元ラノリン、硬質ラノリン、ホホバロウ等のオイル、ワックス類;流動パラフィン、スクワラン、プリスタン、オゾケライト、パラフィン、セレシン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス等の炭化水素類;オレイン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、ウンデシレン酸等の高級脂肪酸類;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、ミリスチルアルコール、セトステアリルアルコール等の高級アルコール等;イソオクタン酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、イソステアリン酸ヘキシルデシル、アジピン酸ジイソプロピル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシル、乳酸セチル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、ジ−2−ヘプチルウンデカン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸グリセリン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、テトラ−2−エチルヘキサン酸ペンタンエリトリット等の合成エステル油類;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン等の鎖状ポリシロキサン;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサンシロキサン等の環状ポリシロキサン;アミノ変性ポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサン、フッ素変性ポリシロキサン等の変性ポリシロキサン等のシリコーン油等の油剤類;脂肪酸セッケン(ラウリン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム等)、ラウリル硫酸カリウム、アルキル硫酸トリエタノールアミンエーテル等のアニオン界面活性剤類;塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、ラウリルアミンオキサイド等のカチオン界面活性剤類;イミダゾリン系両性界面活性剤(2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等)、ベタイン系界面活性剤(アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等)、アシルメチルタウリン等の両性界面活性剤類;ソルビタン脂肪酸エステル類(ソルビタンモノステアレート、セスキオレイン酸ソルビタン等)、グリセリン脂肪酸類(モノステアリン酸グリセリン等)、プロピレングリコール脂肪酸エステル類(モノステアリン酸プロピレングリコール等)、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル、POEソルビタン脂肪酸エステル類(POEソルビタンモノオレエート、モノステアリン酸ポリオキエチレンソルビタン等)、POEソルビット脂肪酸エステル類(POE−ソルビットモノラウレート等)、POEグリセリン脂肪酸エステル類(POE−グリセリンモノイソステアレート等)、POE脂肪酸エステル類(ポリエチレングリコールモノオレート、POEジステアレート等)、POEアルキルエーテル類(POE2−オクチルドデシルエーテル等)、POEアルキルフェニルエーテル類(POEノニルフェニルエーテル等)、プルロニック型類、POE・POPアルキルエーテル類(POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル等)、テトロニック類、POEヒマシ油・硬化ヒマシ油誘導体(POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油等)、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等の非イオン界面活性剤類;ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、エリスリトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、イソプレングリコール、1,2−ペンタンジオール、2,4−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール等の多価アルコール類;ピロリドンカルボン酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム等の保湿成分類;表面を処理されていても良い、マイカ、タルク、カオリン、合成雲母、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、無水ケイ酸(シリカ)、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粉体類、;表面を処理されていても良い、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、酸化コバルト、群青、紺青、酸化チタン、酸化亜鉛の無機顔料類;表面を処理されていても良い、雲母チタン、魚燐箔、オキシ塩化ビスマス等のパール剤類;レーキ化されていても良い赤色202号、赤色228号、赤色226号、黄色4号、青色404号、黄色5号、赤色505号、赤色230号、赤色223号、橙色201号、赤色213号、黄色204号、黄色203号、青色1号、緑色201号、紫色201号、赤色204号等の有機色素類;ポリエチレン末、ポリメタクリル酸メチル、ナイロン粉末、オルガノポリシロキサンエラストマー等の有機粉体類;パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤;アントラニル酸系紫外線吸収剤;サリチル酸系紫外線吸収剤、;桂皮酸系紫外線吸収剤、;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤;糖系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン等の紫外線吸収剤類;エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類;ビタミンA又はその誘導体、ビタミンB6塩酸塩、ビタミンB6トリパルミテート、ビタミンB6ジオクタノエート、ビタミンB2又はその誘導体、ビタミンB12、ビタミンB15又はその誘導体等のビタミンB類;α−トコフェロール、β−トコフェロール、γ−トコフェロール、ビタミンEアセテート等のビタミンE類、ビタミンD類、ビタミンH、パントテン酸、パンテチン、ピロロキノリンキノン等のビタミン類等;フェノキシエタノール等の抗菌剤などが好ましく例示できる。
【0031】
<2>本発明のTGF−bII型受容体阻害剤
本発明のTGF−bII型受容体阻害剤は、前記本発明のジフェニルメチル複素環誘導体及び/又はその塩からなることを特徴とする。かかる阻害剤はTGF−bII型受容体の鍵穴部に嵌り込み、TGF−bが結合することによるシグナルトランスダクションが生じることを阻害すると考えられる。この様な作用は、次に示す手技で確認することが出来る。
【0032】
<TGFβIIR阻害活性の測定>
0.5ngのrhTGF-b sRII/Fc Chimera(R&D systems社製)をコーティングした96穴プレートに0.01%BSA含有緩衝液(128mM NaCl, 5mM KCl, 5mM MgSO4, 1.3mMCaCl2, 50mM HEPES)を90μLずつ分注した。2×10-3 Mから3倍希釈系列で調製した化合物のDMSO溶液を5μLずつ添加した(controlはDMSO)後、10μg/mLのビオチン化rhTGF−s(R&D systems社製)を5μL添加し2時間攪拌した。攪拌終了後、25倍希釈したWash Concentrate (Perkin Elmer社製)で洗浄し、1000倍希釈したEu-Labelled streptavidin (Perkin Elmer社製)を200μL添加して30分間攪拌した。攪拌終了後、氷冷下で25倍希釈したWash Concentrate (Perkin Elmer社製)で洗浄し、Enhancement solution(Perkin Elmer社製)を200μL添加して5分間攪拌した後、各wellの蛍光強度を測定した。なお、非特異的反応を調べる目的でビオチン化されていないrhTGF-β(R&D systems社製)を用いた反応を合わせて実施した。
結果は各化合物濃度における阻害率として下記の式により算出した。
結合率(%)=(化合物添加したwellの蛍光強度−非特異反応の蛍光強度)÷(controlのwellの蛍光強度−非特異反応の蛍光強度)×100
得られた結合率をロジスティックモデルに当てはめIC50を算出した。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
以下に、実施例を挙げて本発明について更に詳細に説明を加える。
【実施例1】
【0035】
ジフェニルメチルピペラジン2.64g、4,6−ジクロロ−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン2.65g、トリエチルアミン1.06gを酢酸エチル500mlに溶かし、5時間加熱還流し、200mlの水で3回洗浄した後、酢酸エチル相を減圧濃縮し、シリカゲルカラムでクロロホルム:メタノール(10:0→9:1)を溶出溶媒として精製し1−ジフェニルメチル−4−(6−クロロ−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)ピペラジンを4.72g得た。
【0036】
1−ジフェニルメチル−4−(6−クロロ−1−フェニル−1H−ピラゾロ[3,4−d]ピリミジン−4−イル)ピペラジン0.76gを無水化したテトラヒドロフラン8mlに溶かし、これに無水エタノール2mlに溶かしたヒドラジン1.58gを加え、4時間加熱還流し、室温へ冷却後、水100mlと塩化メチレン20mlで抽出し、塩化メチレン相を取り、水相を更に塩化メチレン10mlで抽出したものを加え、これを100mlの水で洗浄し、減圧濃縮し、エタノールから再結晶させ、化合物1を0.73g得た。
融点:224〜227℃
1H−NMR(δppm): 7.21〜8.20(16H、m)、6.04(1H、s)、4.28(1H、t)、3.92〜3.98(5H、m)、2.53〜2.56(4H、m)、1.22〜1.26(1H、m)
【実施例2】
【0037】
11−ヒドロキシジベンゾ[b,e]チエピン0.27gに塩化メチレン2mlを加えてクロロ化を行い、これを減圧濃縮し、アセトニトリル50mlを加えて、これに0.56gのピペラジンを加え、2時間加熱還流し、減圧濃縮し、11−クロロジベンゾ[b,e]チエピンを0.52g得た。以下、実施例1と同様に操作し、化合物2を得た。
1H−NMR(δppm): 7.00〜7.60(17H、m)、4.90〜4.30(5H、bs)、3.30〜3.60(1H、bs)、2.43〜2.72(4H、bs)
【実施例3】
【0038】
下記の処方に従って、本発明の医薬組成物である皮膚外用医薬組成物を作成した。即ち、処方成分をニーダーで混練りし、皮膚外用医薬組成物1を得た。
【0039】
【表2】

【実施例4】
【0040】
下記の処方に従って、本発明の医薬組成物である皮膚外用医薬組成物を作成した。即ち、処方成分をニーダーで混練りし、皮膚外用医薬組成物2を得た。
【0041】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、皮膚外用医薬などの医薬に応用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも二つの芳香族基を、複素原子を有していても良い、脂肪族基でつないでなるA部と、縮合複素芳香環基からなるB部とを複素脂肪族環で結合したジフェニルメチル複素環誘導体及び/又はその塩。
【請求項2】
前記ジフェニルメチル複素環誘導体は、次に示す一般式(1)に表されるジフェニルメチルピペラジン誘導体であることを特徴とする、請求項1に記載のジフェニルメチル複素環誘導体及び/又はその塩。
【化1】

一般式(1)
(但し、式中X、Yはメチレン基、窒素原子、硫黄原子又は原子が存在しない場合を表し、R1は、水素原子、水素原子又は炭素原子が窒素で置換されていても良いアルキル基又はアルケニル基を表し、R2はハロゲン原子、アミノ基又はヒドラジニル基を表し、R3は置換基を有していても良い炭素数5〜18の芳香族基を表す。)
【請求項3】
前記一般式(1)に表される化合物は、次に示す一般式(2)又は(3)に表される化合物であることを特徴とする、請求項2に記載のジフェニルメチルピペラジン誘導体及び/又はその塩。
【化2】

一般式(2)
(但し、式中R1は、水素原子、水素原子又は炭素原子が窒素で置換されていても良いアルキル基又はアルケニル基を表し、R2はハロゲン原子、アミノ基又はヒドラジニル基を表し、R3は置換基を有していても良い炭素数5〜18の芳香族基を表す。)
【化3】

一般式(3)
(但し、式中R1は、水素原子、水素原子又は炭素原子が窒素で置換されていても良いアルキル基又はアルケニル基を表し、R2はハロゲン原子、アミノ基又はヒドラジニル基を表し、R3は置換基を有していても良い炭素数5〜18の芳香族基を表す。)
【請求項4】
請求項1〜3何れか1項に記載のジフェニルメチル複素環誘導体及び/又はその塩からなるTGF−b(トランスフォーミンググロースファクターベータ)II型受容体阻害剤。
【請求項5】
請求項4のTGF−bII型受容体阻害剤を有効成分として含有する瘢痕処置用の医薬。
【請求項6】
皮膚外用剤であることを特徴とする、請求項5に記載の医薬。

【公開番号】特開2010−120874(P2010−120874A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295270(P2008−295270)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(507029007)株式会社ポーラファルマ (7)
【Fターム(参考)】