説明

ジョイントコネクタ

【課題】ジョイントコネクタを小型化する。
【解決手段】車両の複数のアース線Wの端末部に取り付けられた複数の端子金具20を電気的に接続するジョイントコネクタ10であって、一対の端子金具20,20を保持する一対の端子保持部49A,49Aを備え、一対の端子保持部49A,49A間には、一対の端子金具20,20に係止して一対の端子金具20,20の抜けを抑制する互いに撓み変形可能な一対のランス43,43が、撓み許容空間44を介して互いに背き合う姿勢で配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジョイントコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載されるジョイントコネクタとして特許文献1に記載のものが知られている。このジョイントコネクタは、雌型の端子が収容されるハウジングと、雌型の端子と接続する雌型の端子を備え、ハウジングの外部に導出されて車両の車体に固定される接続用導体とを備える。
【0003】
ハウジングには、電線の端末に接続された雌型の端子を収容可能な端子収容室が上下2段に設けられており、端子収容室間は、隔壁で仕切られている。各端子収容室内の天井壁には、端子の抜け止めのためのランスが片持ち状に形成されている。端子が端子収容室内に挿通されると、ランスが撓み変形し、所定の位置まで挿入されるとランスが復元変形し、端子の抜け方向の力に対して端子を係止して抜け止めする。また、端子の挿入により、端子の雌型の電気接触部に雄型の嵌合部が挿入されるため、端子と嵌合部とが電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−40263号公報(図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、車両の小型化の要請に伴ってジョイントコネクタについても小型化が求められている。そこで、ジョイントコネクタの上下の寸法を小さくすることができれば、ジョイントコネクタを小型化することが可能となる。ここで、特許文献1のように各端子収容室ごとの天井壁に設けられたランスについては、少なくとも上下方向に撓み変形するための空間が各端子収容室ごとに必要であり、ジョイントコネクタの小型化の障害となっていた。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ジョイントコネクタを小型化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両の複数の電線の端末部に取り付けられた複数の端子金具を電気的に接続するジョイントコネクタであって、一対の前記端子金具を保持する一対の端子保持部を備え、前記一対の端子保持部間には、前記一対の端子金具に係止して前記一対の端子金具の抜けを抑制する互いに撓み変形可能な一対のランスが、撓み許容空間を介して互いに背き合う姿勢で配置されているところに特徴を有する。
【0008】
本構成によれば、一対のランスを撓み許容空間を介して互いに背き合う姿勢で配置することにより、必ずしも各ランスの撓み量に応じた個別の撓み許容空間を確保する必要がないため、全体として必要とされる撓み許容空間を少なくすることができる。よって、ジョイントコネクタを小型化することができる。
【0009】
上記構成の実施態様として以下の構成を有すれば好ましい。
・前記一対の端子保持部内の空間を連通する連通空間が形成されている。
このようにすれば、一対の端子保持部内の空間を連通する連通空間が形成されているため、連通空間の部分に隔壁等を設けて一対の端子保持部間を分断する場合と比較してジョイントコネクタの構成を簡素化することができる。
【0010】
・前記連通空間は、前記一対のランスの突出する方向に設けられている。
このようにすれば、一対のランスの突出す方向の構成を簡素化することができる。
・前記連通空間は、前記撓み許容空間に連なっている。
このようにすれば、連通空間と撓み許容空間との間が隔壁等により分断されている場合と比較して、ジョイントコネクタの構成を簡素化することができる。
【0011】
・前記連通空間及び前記撓み許容空間には、前記ランスの係止状態の検査のための検査用部材を挿入可能となっている。
このようにすれば、連通空間及び撓み許容空間に検査用部材を挿入してランスの係止状態の検査をすることができる。
【0012】
・前記一対のランスが形成されるハウジングを備え、前記ハウジングの外周面には、前記ハウジングを破断させる破断溝が設けられている。
このようにすれば、アース線の取り外し等の際に破断溝によりハウジングを破断させる作業が容易になる。また、本構成のように、ハウジングに連通空間が設けられる構成において破断溝を設けることにより、ハウジング内の隔壁が少ない分だけ破断溝から破断させる作業を容易にすることができる。
【0013】
・前記電線は、アース線であり、前記複数の端子金具に電気的に接続される導電部材が車体に取り付けられてアースされる。
このようにすれば、たとえ一対の端子保持部内の空間を連通する連通空間を設けた場合でも、アース線の端子金具間については、電圧が印加されるものではなく絶縁破壊等を考慮する必要がないため、上記発明の実施態様として好適なものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ジョイントコネクタを小型化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る実施形態のジョイントコネクタを示す斜視図
【図2】ジョイントコネクタを示す平面図
【図3】ジョイントコネクタを示すA−A断面図
【図4】蓋部を開いた状態のジョイントコネクタを示す正面図
【図5】端子金具装着前における蓋部を開いた状態のジョイントコネクタを示す斜視図
【図6】端子金具装着前における蓋部を開いた状態のジョイントコネクタを示す正面図
【図7】端子金具装着前における蓋部を開いた状態のジョイントコネクタを示す背面図
【図8】図7のB−B断面図
【図9】図7のC−C断面図
【図10】端子金具装着前における蓋部を開いた状態のジョイントコネクタを示す側面図
【図11】図10のD−D断面図
【図12】導電部材を示す斜視図
【図13】端子金具を示す平面図
【図14】端子金具を示す縦断面図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図14を参照しつつ説明する。本実施形態に係るジョイントコネクタ10は、図示しない車両の車体に取り付けられて、複数のアース線W(本発明の構成ある「電線」の一例)を接地するものである。以下の説明では、上下方向については図3を基準とし、図3の左方を前方、右方を後方として説明する。
【0017】
(ジョイントコネクタ)
ジョイントコネクタ10は、図3に示すように、各アース線Wの端末部に取り付けられた複数の端子金具20に電気的に接続されるとともに車体に取り付けられる金属製の導電部材30と、この導電部材30の雄タブ32側をインサート成形した合成樹脂製のハウジング35とを備える。
【0018】
(端子金具)
端子金具20は、雌型であって、図14に示すように、相手側の雄タブ32と接続される端子接続部21と、端子接続部21の後方に連なりアース線Wの端末部に接続される電線接続部26とを備える。
【0019】
端子接続部21は、角筒状の筒状部22の内部に弾性接触片25を備えて構成されている。
筒状部22は、弾性接触片25の基端部に連なる底壁22Aと、一対の側壁22Bと、弾性接触片25と対向する対向壁22Cとが環状に連なって構成されており、底壁22Aには、底壁22Aを矩形状に切欠いた被係止孔23が貫通形成されている。この被係止孔23は、その孔縁がランス43に係止されて端子金具20の抜けを防止する。被係止孔23の両脇には、端子金具20の誤挿入を防止するための板状のスタビライザー24が起立している。
【0020】
弾性接触片25は、底壁22Aの先端に連なって折り返し状に形成されており、筒状部22の内部で再び折り返した先端部が底壁22Aに当接可能となっている。
電線接続部26は、電線の芯線部分を圧着するワイヤバレル部26Aと、ワイヤバレル部26Aの後方においてアース線Wに外嵌された防水ゴム栓27の上から挟持する挟持部26Bとからなる。
【0021】
アース線Wは、導体部の周囲を絶縁被覆で覆った電線が用いられている。
防水ゴム栓27は、円筒形状であって、アース線Wの外周が密着した状態で挿通されており、後方側の厚肉の部分の内周面及び外周面には、環状に突出するリップ部が軸方向に沿って複数設けられている。
【0022】
(導電部材)
導電部材30は、金属板材を所定の形状にプレス加工してなり、ハウジング35にインサート成形されている。
導電部材30は、図12に示すように、U字状のタブ連結部31と、タブ連結部31の延びる方向に所定間隔毎に8個(複数個)設けられた雄タブ32と、タブ連結部31の下方に連なり車体に取り付けられる取付部33とを備えている。
【0023】
タブ連結部31は、帯状の金属板材を湾曲させて形成されている。
雄タブ32は、前後方向に延びる帯状Z(長方形の板状)をなし、端子金具20の弾性接触片25と弾性的に接触して端子金具20と導電部材30との間を電気的に接続する。
タブ連結部31の下段部分の中間部からは、下方に取付部33が延出されている。
【0024】
取付部33は、タブ連結部31の下端に連なる幅狭部33Aを有し、タブ連結部31と幅狭部33Aとの接続部分で下方に直角に曲げられた後に、更に前方側に直角に曲げられて前方側に延びている。
取付部33は、その前方側がやや側方側に曲がっている。取付部33には、取付孔34が貫通形成されており、この取付孔34内に、図示しないボルトが挿通されて、車体のねじ孔(図示せず)に螺合されることにより、取付部33が車体に固定される。
【0025】
(ハウジング)
ハウジング35は、合成樹脂製であって、図7に示すように、左右方向に長い長円形の筒状の筒状周壁36の内部に、アース線Wの端末に接続された端子金具20が収容される8室(複数室)の収容室37が上下2段、幅方向に4列に等間隔で並んで設けられている。
【0026】
上下2段(上下一対)の収容室37は、上下方向の中間部を軸として対称に設けられており、各収容室37は、図8に示すように、ハウジング35の後部において、端子金具20の後方に延出されたアース線Wを収容する電線収容部38と、電線収容部38の前方側において端子金具20の後方側を収容する端子収容部40とを備え、端子収容部40(収容室37)の前方側は、各収容室37に分割するための隔壁が形成されておらず、筒状周壁36内部の空間に複数の端子金具20の前方側が突き出る形状となっている。
【0027】
電線収容部38は、円周状の内周面を有する電線側隔壁39で包囲されている。この電線側隔壁39の内面に防水ゴム栓27の外周が密着することにより、アース線Wと電線側隔壁39との間が水密にシールされる。
端子収容部40には、電線側隔壁39に連なる端子側隔壁41が設けられている。
【0028】
端子側隔壁41は、筒状周壁36と共通化された天井壁41Aと上下方向の中間部側に一対の収容室37について共通に設けられた底壁41Bとからなり、左右の側壁は設けられていない。そのため、電線側隔壁39の側壁部分の前方側については、電線側隔壁39と端子収容部40との境界で途切れている。このように、端子側隔壁41については側壁を形成しないことで、左右に隣り合う収容室37について、図6に示すように、ランス43,43の撓み許容空間44を連ねる横連通空間42が形成されている。そして、交互に連続して設けられた撓み許容空間44と横連通空間42とが筒状周壁36の内側面まで形成されており、一対のランス43,43間の位置については、筒状周壁36の幅方向の全体に連通した空間が形成される。なお、各収容室37における天井壁41Aと底壁41Bの間の空間についても、隣り合う収容室37の間の空間を連ねる室間連通空間60が形成されており、室間連通空間60によって、筒状周壁36の幅方向の全体に連通した空間が形成されている。
【0029】
そして、撓み許容空間44及び横連通空間42から水平に前端の開口部36Aに至る空間は、図8に示すように、板状の検査用部材Tを開口部36Aから撓み許容空間44及び横連通空間42の後端まで挿入可能な検査用部材挿入空間59とされている。
検査用部材Tは、筒状周壁36の左右の最大内径寸法に応じた幅寸法(検査用部材挿入空間59の幅寸法。図4参照)を有する板状の部材である。
【0030】
そして、ハウジング35に導電部材30がインサート成形されると、雄タブ32が先端側が収容室37内に臨むように配される。
底壁41Bは、図8に示すように、電線収容部38の内壁(底壁)よりも厚肉に形成されており、この底壁41Bを共通の基端部として上下一対のランス43,43が前方に片持ち状に延びている。
【0031】
ランス43,43は、上下方向に撓み変形可能となっており、その先端部の端子金具20が配される側には、端子金具20の被係止孔23に係止して端子金具20の抜けを防止する係止突部43Aが形成されている。
係止突部43Aは、段差状に突出し、後方に向けて傾斜状に突出寸法が小さくなっている。
【0032】
一対のランス43,43間の空間は、ランス43,43の撓み変形を許容するための(共通の)撓み許容空間44とされている。
この撓み許容空間44の上下方向(撓み方向)の寸法A1は、一方のランス43のみの撓み変形を許容する寸法が設定されている。そのため、端子金具20の装着の際には、上下一対の端子金具20について、同時には装着せず、別々に装着する(複数の端子金具20を別々に後方から挿入してランス43,43に係止させる)。
【0033】
このように撓み許容空間44を一方のランス43のみの撓み変形を許容する寸法としたことで、一対のランス43,43の双方の撓み許容空間44を許容するように寸法を設定する場合と比較して、上下方向についてコネクタを小型化することができる。
【0034】
ここで、底壁41Bの前方(ランス43,43の前方)は、底壁41B(ランス43,43)が途切れており、底壁(隔壁)は、設けられていない。このように、端子収容部40の底壁41Bの前方に底壁(隔壁)を形成しないことで、上下一対の収容室37内の空間を連通する縦連通空間45(本発明の構成である「連通空間」の一例)が形成されている。
この縦連通空間45は、撓み許容空間44の前方側に撓み許容空間44と連なるように設けられている。
【0035】
筒状周壁36には、端子収容部40の前方側に、段差状に縮径する段差部36Bが設けられており、この段差部36Bの前方が筒状周壁36の上下方向の内径が小さくされた縮径部36Cとされている。そして、この段差部36Bから雄タブ32が後方側(端子収容部40側)に突き出ている。
これにより、ハウジング35における端子収容部40の前方側については、端子金具20の装着前においては、筒状周壁36の内面形状に応じた空間に雄タブ32が突出する構成となっている。
【0036】
筒状周壁36の内側面には、ランス43,43の係止状態の検査のための検査用部材Tの挿入を案内するガイド部46が形成されている。
ガイド部46は、平行に配置され前後に延びる上下一対の突条47,47からなり、その略後半部分が撓み許容空間44の両側方に位置するように形成されている。溝部48の溝幅は、検査用部材Tを嵌め込んで摺動させることができる寸法に設定される。ガイド部46の溝部48に検査用部材Tの挿入方向における側縁部が嵌まり込むことにより、検査用部材Tが撓み許容空間44に案内される。
【0037】
雄タブ32は、後方に向けて水平に延びており、雄タブ32と筒状周壁36の内面との間には、端子金具20の筒状部22の対向壁22Cが挿通可能な挿通部50が形成されている。
挿通部50の上下方向の隙間は、対向壁22Cの厚みよりもわずかに大きい一定の寸法に設定されている。これにより、アース線Wの端末に取り付けられた端子金具20が収容室37に挿入されると、雄タブ32が筒状部22内に進入し、弾性接触片25と弾性接触する。
【0038】
このとき、端子金具20は、図3に示すように、底壁41Bの面41Cに接触した状態で被係止孔23内に係止突部43Aが配された状態となる。即ち、端子金具20は、底壁41Bの面41Cに載置されるとともに、雄タブ32に当接した弾性接触片25の弾性力により底壁41Bの面41Cに押しつけられて保持されている。これにより、端子金具20は、雄タブ32及び底壁41Bのみに保持された状態となっており、アース線W側等から振動を受けたとしても、弾性接触片25の弾性力で振動が吸収され、例えば、導電部材30の比較的弱い幅狭部33Aの破損を抑制することが可能になる。
【0039】
なお、本実施形態においては、端子金具20は、雄タブ32と底壁41Bとの間に保持されているため、雄タブ32及び底壁41Bが端子金具20を保持する機能を有する端子保持部49Aとされ、上下一対の端子保持部49A,49Aが保持部対49とされる。
【0040】
ハウジング35の前後方向における中間部には、その外周の全周に亘って環状に凹設された破断溝35Aが形成されている。より詳しくは、破断溝35Aは、前後方向において、撓み許容空間44の後端部(一対のランス43,43の基端側)であり、側壁が設けられていない端子収容部40の部分に形成されている。
【0041】
これにより、アース線Wを強く引っ張ると、破断溝35Aの部分でハウジング35が分離する。これにより、容易に、アース線W側と、導電部材30側の部分とを分断することができ、車体からアース線Wを取り外す作業を簡素化することができる。
【0042】
(蓋部)
筒状周壁36の前端の開口部36Aは、図8に示すように、蓋部51で閉塞されるようなっている。
蓋部51は、ハウジング35の上壁のうち、前端部寄りの位置にヒンジ58を介して接続されており、開口部36Aを塞ぐ本体部52と、ハウジング35の前端部に外嵌する筒状カバー55とを備える。
本体部52には、ゴム栓装着部53が突出しており、このゴム栓装着部53にゴム栓54が外嵌される。
【0043】
ゴム栓54は、蓋部51を被せることにより、筒状周壁36の内面に嵌め込まれる。これにより、筒状周壁36の内面と、ゴム栓54の外面とが密着することにより、蓋部51とハウジング35とが水密にシールされる。
筒状カバー55の左右には、図5に示すように、枠形のロック部56が設けられており、ハウジング35の外側面に突出形成されたロック受け部57に係止されて蓋部51をロック状態とする。
【0044】
続いて、ジョイントコネクタ10の組み付けについて説明する。
導電部材30をプレス機により打ち抜き加工、曲げ加工を行った後、金型内に固定してインサート成型する。次に、アース線Wの端末部に接続された端子金具20を、ハウジング35の後端部側から収容室37に挿入する。この端子金具20の挿入は、少なくとも上下一対の収容室37については、互いに異なるタイミングで装着する。そして、端子金具20がランス43に当接する位置まで挿入されると、ランス43が弾性変形し、更に押し込まれるとランス43の係止突部43Aが端子接続部21の被係止孔23内に達し、ランス43が復帰変形し、係止突部43Aが被係止孔23内に配される。これにより、端子金具20が後方に引っ張られても、係止突部43Aが被係止孔23の孔縁に係止されるため、端子金具20の抜け止めが図られる。
このようにして全ての端子金具20をハウジング35に装着する。
【0045】
ここで、通常は、端子金具20が挿入されると、ランス43の係止突部43Aが端子接続部21の被係止孔23内に配されるのであるが、例えば、端子金具20が所定の位置まで挿入されず、ランス43が弾性変形した状態のままになり係止突部43Aが被係止孔23内に配されない不具合も想定されるため、ランス43の状態の検査が行われる。
【0046】
ランス43の状態の検査は、板状の検査用部材Tをハウジング35の前方の開口部36Aから挿入し、その側縁部をガイド部46の溝部48に通し、後方側に押し込む。すると、検査用部材Tは、(途中に隔壁等の障害がないため)一対のランス43,43間の撓み許容空間44に到達する。
このとき、ランス43の係止突部43Aが端子接続部21の被係止孔23内に配されていれば、ランス43が弾性変形後に正常に復元変形しているため、一対のランス43,43の基端側に当接する位置まで検査用部材Tを挿入することができる。
【0047】
一方、ランス43,43の係止突部43Aが被係止孔23内に配されていないと、ランス43が弾性変形後に正常に復元変形していないため、一対のランス43,43の基端側に当接する位置まで検査用部材Tを挿入することができない。このようにして、検査用部材Tにより、端子金具20が正規位置に挿入されているかどうかの検査が行われる。
【0048】
上記検査は、全ての端子金具20をハウジング35に取り付けた後に、4列全てのランス43,43について板状の検査用部材Tにより一度に行われ、この検査の後に、検査用部材Tを取り外し、蓋部51を閉じてロックする。そして、取付部33の取付孔34内にボルトを貫通させ、車体に固定する。これにより、複数のアース線Wが、ジョイントコネクタ10を介して車体に接地される。
【0049】
上記実施形態によれば、以下の作用・効果を奏する。
(1)車両の複数のアース線W(電線)の端末部に取り付けられた複数の端子金具を電気的に接続するジョイントコネクタ10であって、一対の端子金具20,20を保持する一対の端子保持部49A,49Aを備え、一対の端子保持部49A,49A間には、一対の端子金具20,20に係止して一対の端子金具20,20の抜けを抑制する互いに撓み変形可能な一対のランス43,43が、撓み許容空間44を介して互いに背き合う姿勢で配置されている。
【0050】
本実施形態によれば、一対のランス43,43を撓み許容空間44を介して互いに背き合う姿勢で配置することにより、各ランス43,43の撓み量に応じた個別の撓み許容空間44を確保する必要がないため、全体として必要とされる撓み許容空間44を少なくすることができる。よって、ジョイントコネクタ10を小型化することができる。
【0051】
(2)一対の端子保持部49A,49A内の空間を連通する縦連通空間45(連通空間)が形成されている。
このようにすれば、一対の端子保持部49A,49A内の空間を連通する縦連通空間45が形成されているため、縦連通空間45の部分に隔壁等を設けて上下一対の端子保持部49A,49A間を分断する場合と比較してジョイントコネクタ10の構成を簡素化することができる。
【0052】
(3)縦連通空間45(連通空間)は、一対のランス43,43の突出する方向に設けられている。
このようにすれば、一対のランス43,43の突出する方向の構成を簡素化することができる。
【0053】
(4)縦連通空間45(連通空間)は、撓み許容空間44に連なっている。
このようにすれば、縦連通空間45と撓み許容空間44との間が隔壁等により分断されている場合と比較して、ジョイントコネクタ10の構成を簡素化することができる。
【0054】
(5)縦連通空間45(連通空間)及び撓み許容空間44には、ランス43,43の係止状態の検査のための検査用部材Tを挿入可能となっている。
このようにすれば、縦連通空間45及び撓み許容空間44に検査用部材Tを挿入してランス43,43の係止状態の検査をすることができる。
【0055】
(6)一対のランス43,43は、ハウジング35に形成されるものであり、ハウジング35の外周面には、ハウジング35を破断させる破断溝35Aが設けられている。
このようにすれば、アース線Wの取り外し等の際に破断溝35Aによりハウジング35を破断させる作業が容易になる。また、本実施形態のように、ハウジング35に縦連通空間45が設けられる構成において破断溝35Aを設けることにより、ハウジング35内の隔壁が少ない分だけ破断溝35Aから破断させる作業を容易にすることができる。
【0056】
(7)電線は、アース線Wであり、複数の端子金具20に電気的に接続される導電部材30が車体に取り付けられてアースされるジョイントコネクタ10である。
このようにすれば、たとえ一対の端子保持部49A,49A内の空間を連通する連通空間45を設けた場合でも、アース線Wの端子金具20間については、電圧が印加されるものではなく絶縁破壊等を考慮する必要がないため、発明の実施態様として好適なものとすることができる。
【0057】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、8本のアース線Wに接続された8個の端子金具20を接地する構成としたが、これに限られず、2個〜7個、又は9個以上のアース線Wに接続された2個〜7個、又は9個以上の端子金具20を接地する構成としてもよい。また、上記実施形態では、複数のアース線W間(及び車体)を電気的に接続するジョイントコネクタ10に本発明を適用したが、これに限らず、例えば、車両の電力回路を構成する複数の電線間を短絡させ、車両の他の電力回路に電気的に接続するジョイントコネクタに本発明を適用するようにしてもよい。
【0058】
(2)上記実施形態におけるジョイントコネクタ10は防水構造を有していたが、これに限られず、防水構造を有さないジョイントコネクタに本発明を適用することも可能である。
(3)上記実施形態では、端子金具20は、雌形としたが、これに限らず、雄形の端子金具を用いるようにしてもよい。また、導電部材30側についても、雄タブ32に代えて雌型の端子を用いてもよい。
【0059】
(4)上記実施形態では、導電部材30の一部がハウジング35にインサート成形されているものを例示しているが、これに限られず、例えば、導電部材30をハウジング35と別体で形成し、この導電部材30をハウジング35に組み付けるようにしてもよい。
【0060】
(5)上記実施形態では、ランス43,43は前方に向かって延びる形態であったが、これに限られず、ランスを後方へ延びる形態としてもよい。この場合、ランスの撓み許容空間は、後方側に形成されることになる。
(6)上記実施形態では、電線収容部38側については、アース線Wの全周を包囲するように隔壁が設けられていたが、これに限られず、電線収容部38側についても端子収容部40側と同様に隔壁を設けない部分を形成するようにしてもよい。
【0061】
(7)上記実施形態では、全ての一対の端子保持部49A,49Aについて、撓み許容空間44及び縦連通空間45を設ける構成としたが、これに限られず、一部の一対の端子保持部49A,49Aについて撓み許容空間44及び縦連通空間45を設けるようにしてもよい。
(8)上記実施形態では、一端側が底壁41Bに連なる片持ち状に突出するランス43,43を用いたが、これに限らず、両端側が底壁に連なる(又は一端が底壁に連なり他端は一対のランス間が環状に連なる)いわゆる両持ち状のランス(係止部)を背き合う姿勢で配置するようにしてもよい。なお、この場合には、ランスの延びる方向から検査用部材Tを挿入することはできないため、例えば、一対のランス間に挿通可能なランスの延びる方向と直交する方向である撓み許容空間44及び横連通空間42が連なる方向から検査用部材を挿入可能に構成すればよい。
【符号の説明】
【0062】
10…ジョイントコネクタ
20…端子金具
21…端子接続部
22…筒状部
23…被係止孔
25…弾性接触片
30…導電部材
32…雄タブ
33…取付部
35…ハウジング
35A…破断溝
36…筒状周壁
36A…開口部
37…収容室
38…電線収容部
39…電線側隔壁
40…端子収容部
41…端子側隔壁
41B…底壁
42…横連通空間
43,43…一対のランス
43A…係止突部
44…撓み許容空間
45…縦連通空間(連通空間)
46…ガイド部
47…突条
48…溝部
49A…端子保持部
49…保持部対
50…挿通部
51…蓋部
54…ゴム栓
59…検査用部材挿入空間
T…検査用部材
W…アース線(電線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の複数の電線の端末部に取り付けられた複数の端子金具を電気的に接続するジョイントコネクタであって、
一対の前記端子金具を保持する一対の端子保持部を備え、
前記一対の端子保持部間には、前記一対の端子金具に係止して前記一対の端子金具の抜けを抑制する互いに撓み変形可能な一対のランスが、撓み許容空間を介して互いに背き合う姿勢で配置されているジョイントコネクタ。
【請求項2】
前記一対の端子保持部内の空間を連通する連通空間が形成されている請求項1記載のジョイントコネクタ。
【請求項3】
前記連通空間は、前記一対のランスの突出する方向に設けられている請求項2に記載のジョイントコネクタ。
【請求項4】
前記連通空間は、前記撓み許容空間に連なっている請求項2又は請求項3に記載のジョイントコネクタ。
【請求項5】
前記連通空間及び前記撓み許容空間には、前記ランスの係止状態の検査のための検査用部材を挿入可能となっている請求項2ないし請求項4のいずれか一項に記載のジョイントコネクタ。
【請求項6】
前記一対のランスが形成されるハウジングを備え、
前記ハウジングの外周面には、前記ハウジングを破断させる破断溝が設けられている請求項2ないし請求項5のいずれか一項に記載のジョイントコネクタ。
【請求項7】
前記電線は、アース線であり、前記複数の端子金具に電気的に接続される導電部材が車体に取り付けられてアースされる請求項2ないし請求項6のいずれか一項に記載のジョイントコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−73911(P2013−73911A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214384(P2011−214384)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】