説明

ジョイント構造並びにそれを用いた減速機構及び操舵補助装置

【課題】電動モータの出力軸とこの出力軸によって回転駆動される回転軸とを、少ないスペースで連結することができるとともに、これら出力軸と回転軸との偏芯及び傾動の調整幅を大きくすることができ、よって出力軸と回転軸との連結作業を容易に行えるジョイント構造及びそれを用いた操舵補助装置を提供する。
【解決手段】軸受16,17により回転自在に支持された回転軸70を電動モータ6の出力軸60に一体回転可能に連結するジョイント構造8。前記回転軸70の軸方向における前記軸受16、17の中心位置に、前記回転軸70の一端部70aと前記出力軸60との連結部分の中心位置を実質的に一致させた状態で、それらの回転軸70と出力軸60とを互いに揺動自在に連結しており、且つ、前記回転軸70及び前記出力軸60の一方に凸部8bを設けるとともに他方に凹部8aを設け、当該凸部8bと凹部8aを揺動可能に連結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータの出力軸と回転軸とを連結するジョイント構造並びにそれを用いた減速機構及び操舵補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用の操舵補助装置として、図5に示すように、操舵輪(ハンドル)101を取り付けた第1操舵軸102と、この第1操舵軸102の下方に直列に設けられた第2操舵軸104とを、トーションバー103を介して互いに連結し、第1操舵軸102と第2操舵軸104との相対的な回転変位量に基づいて、トルクセンサ105により操舵トルクを検出するとともに、このトルクセンサ105の検出結果に基づいて操舵補助用の電動モータ106を駆動し、この電動モータ106の回転を減速機構109により減速して第2操舵軸104に伝達することにより、操舵輪101による手動操舵力を補助するものが提供されている。
【0003】
上記減速機構109は、ウォームが設けられたウォーム軸107と、このウォームに噛み合わせた状態で第2操舵軸104に一体回転可能に取り付けられた合成樹脂製のウォームホイール108とによって構成されており、上記ウォーム軸107は電動モータ106の出力軸にジョイントを介して一体回転可能に連結されている。また、ウォーム軸107及び第2操舵軸104は、その軸方向の両端部において軸受によりそれぞれ支持されて、径方向及び軸長方向への移動が阻止されている。
【0004】
上記従来の操舵補助装置においては、ウォーム軸107のウォームとウォームホイール108との噛み合わせ部分でバックラッシュが生じると、いわゆる歯打ち音が発生し、これが車内に洩れて運転者や同乗者に不快感を与えるおそれがある。このため、装置の製造時にウォーム軸107及びウォームホイール108の寸法を選別して、上記バックラッシュが生じないように両者を組み合わせることが行われている。しかし、このように装置の製造時にバックラッシュを調整しても、操舵補助装置の使用に伴ってウォーム軸107のウォーム及びウォームホイール108の歯が摩耗することから、バックラッシュが生じるのを避けることは困難である。また、吸水や熱等によって合成樹脂製のウォームホイール108が膨張して、回転トルク(回転抵抗)が大きくなるおそれもある。
【0005】
そこで、上記ウォーム軸107をウォームホイール108に向けて偏倚可能に支持し、このウォーム軸107をばねによりウォームホイール108方向へ付勢することによって、バックラッシュが生じたり回転トルクが大きくなったりするのを防止するようにした操舵補助装置が提案されている。
【0006】
具体的には、図6において、この従来の操舵補助装置では、ウォーム軸107は、第1及び第2軸受111、112を介してギヤハウジング110に回転可能に支持されている。また、このウォーム軸107の一端部は、セレーション113が筒状のジョイント部材114に形成されたセレーション孔114aに圧入されている。このジョイント部材114には、電動モータ106の出力軸106aが一体回転可能に圧入されており、これらセレーション113及びジョイント部材114を介在してウォーム軸107と出力軸106aとは一体回転可能に連結されている。
【0007】
上記第1軸受111は、ボール軸受によって構成されたものであり、その内輪には、上記ウォーム軸107の一端部が圧入されてギヤハウジング110の第1軸受孔110a内に挿入されている。また、第1軸受孔110a内には、第1軸受111の外輪に当接してウォーム軸107の軸長方向へのがたつきを防止するための筒状のねじ体115が螺着されている。
【0008】
上記第2軸受112は、ボール軸受によって構成されたものであり、ウォームホイール108方向へ偏倚できるようにギヤハウジング110の第2軸受孔110bに取り付けられている。つまり、第2軸受孔110bの内奥部と第2軸受112との間には、円弧状の隙間110cが設けられており、第2軸受112は隙間110c分だけウォームホイール108側への移動ができるようになっている。また、第2軸受112がウォームホイール108方向へ偏倚されたとき、ウォーム軸107の一端部側の偏倚は上記第1軸受111のラジアル隙間によるがたつきや出力軸106aとジョイント部材114との間の隙間によるがたつきで吸収され、ウォーム軸107の出力軸106aに対する偏芯及び傾動が許容されている。
【0009】
上記第2軸受孔110bの開孔側には、上記第2軸受112をウォームホイール108側へ付勢する付勢手段116が取り付けられている。この付勢手段116は、上記第2軸受孔110b内に移動可能に配置され、第2軸受112の外輪に当接するサポートヨーク116aと、このサポートヨーク116aに保持され、第2軸受112をウォームホイール108側に付勢するばね116bと、第2軸受孔110bの端部に螺着され、ばね116bの撓み量を調整するねじ体116cと、このねじ体116cに螺合されるロックナット116dとを備えている。
【0010】
以上の構成により、この従来の操舵補助装置では、ウォーム軸107のウォーム107a及びウォームホイール108の歯が摩耗した場合、ウォーム軸107をばね116bによりウォームホイール108方向へ付勢することによって、バックラッシュが生じるのを防止していた。また、吸水や熱等に起因してウォームホイール108が膨張した場合、ウォーム軸107をウォームホイール108の反対側へ逃がして回転トルクが大きくなるのを防止していた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記のような従来の操舵補助装置では、セレーション113とジョイント部材114とを用いて、ウォーム軸107と出力軸106aとを連結する構成としていたので、ウォーム軸107の一端部を第1軸受111から電動モータ106側に突出させる必要があり、その分ウォーム軸107の軸方向長さが長くなって装置が大型化するという問題があった。
【0012】
また、ウォーム軸107の一端部を第1軸受111から電動モータ106側に突出させて出力軸106aに連結していたので、上記一端部が出力軸106aに拘束されて、第1軸受111のラジアル隙間によるがたつきを有効に利用することができずに、ウォーム軸107の他端部での上記付勢手段116による偏倚量の調整幅、つまり出力軸106aとウォーム軸107との偏芯及び傾動の調整幅が小さい値に制限された。また、このように出力軸106aとウォーム軸107との偏芯及び傾動の調整幅が小さい値に制限されるので、上記ギヤハウジング110にウォーム軸107や電動モータ106を組み付ける際に、出力軸106aとウォーム軸107との調芯を高精度に行う必要があり、これらの出力軸106aとウォーム軸107との連結作業が困難であった。
【0013】
上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、電動モータの出力軸とこの出力軸によって回転駆動される回転軸とを、少ないスペースで連結することができるとともに、これら出力軸と回転軸との偏芯及び傾動の調整幅を大きくすることができ、よって出力軸と回転軸との連結作業を容易に行えるジョイント構造並びにそれを用いた減速機構及び操舵補助装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のジョイント構造は、軸受により回転自在に支持された回転軸を電動モータの出力軸に一体回転可能に連結するジョイント構造であって、
前記回転軸の軸方向における前記軸受の中心位置に、前記回転軸の一端部と前記出力軸との連結部分の中心位置を実質的に一致させた状態で、それらの回転軸と出力軸とを互いに揺動自在に連結しており、且つ、
前記回転軸及び前記出力軸の一方に凸部を設けるとともに他方に凹部を設け、当該凸部と凹部を揺動可能に連結したことを特徴としている(請求項1)。
【0015】
上記のように構成されたジョイント構造によれば、回転軸の一端部と電動モータの出力軸との連結部分の中心位置を軸受の上記の中心位置に実質的に一致させた状態で、その軸受により回転軸を回転自在に支持することにより、当該軸受のラジアル隙間によるがたつきを極めて有効に利用して回転軸の他端部を出力軸に対して大きく偏倚させることができる。したがって、出力軸と回転軸との偏芯及び傾動の調整幅を大きくすることができ、よって出力軸と回転軸との連結作業を容易に行うことができる。しかも、ジョイント構造が簡素であり、その軸方向の長さを短くすることができる。
【0016】
また、上記ジョイント構造(請求項1)において、前記回転軸と前記出力軸とを互いに揺動自在に連結しているので、出力軸と回転軸との偏芯及び傾動の調整幅をより大きくすることができ、よって出力軸と回転軸との連結作業をさらに容易に行うことができる。
【0017】
また、本発明の減速機構は、電動モータの回転を減速して伝達するための減速機構であって、
前記電動モータの出力軸に、請求項1記載のジョイント構造を用いて連結されたウォーム軸と、
このウォーム軸の中間部に一体形成されたウォームと噛合可能なウォームホイールと
を備えており、
前記ウォーム軸をウォームホイールへ向けて偏倚可能に支持し、このウォーム軸を付勢手段によってウォームホイール方向へ付勢していることを特徴としている(請求項2)。
【0018】
さらに、本発明の操舵補助装置は、電動モータの回転をウォームが設けられた回転軸としてのウォーム軸とこのウォーム軸のウォームに噛み合わせたウォームホイールとを介して操舵軸に伝達することにより操舵補助を行う操舵補助装置において、
前記ウォーム軸の一端部側に取付けられ、そのウォーム軸を回転可能に支持する軸受を備え、
前記ウォーム軸の一端部側及び前記電動モータの出力軸側の一方に設けられた凹部と、他方に設けられ、前記凹部に係合する凸部とを有するジョイント構造をウォーム軸と出力軸との連結部分に設けているとともに、
前記ウォーム軸の軸方向における前記軸受の中心位置に、前記連結部分の中心位置を実質的に一致させた状態で、それらのウォーム軸と出力軸とを連結しており、
前記ウォーム軸をウォームホイールへ向けて偏倚可能に支持し、このウォーム軸を付勢手段によってウォームホイール方向へ付勢しており、且つ、
前記凸部と凹部を揺動可能に連結したことを特徴としている(請求項3)。
【0019】
また、本発明の操舵補助装置は、電動モータの回転をウォームが設けられた回転軸としてのウォーム軸とこのウォーム軸のウォームに噛み合わせたウォームホイールとを介して操舵軸に伝達することにより操舵補助を行う操舵補助装置において、
前記ウォーム軸の一端部側に取付けられ、そのウォーム軸を回転可能に支持する軸受を備え、
前記ウォーム軸の一端部側及び前記電動モータの出力軸側の一方に設けられた凹部と、他方に設けられ、前記凹部に係合する凸部とを有するジョイント構造をウォーム軸と出力軸との連結部分に設けているとともに、
前記ウォーム軸の軸方向における前記軸受の中心位置に、前記連結部分の中心位置を実質的に一致させた状態で、それらのウォーム軸と出力軸とを連結しており、
前記ウォーム軸をウォームホイールへ向けて偏倚可能に支持し、このウォーム軸を付勢手段によってウォームホイール方向へ付勢しており、且つ、
前記凹部と凸部の連結が、スプライン孔及びスプライン軸からなるスプライン結合であることを特徴としている(請求項4)。
【0020】
上記ように構成された減速機構及び操舵補助装置によれば、上記ジョイント構造を介して電動モータの出力軸の回転をウォーム軸に伝達することができる。また、上記軸受のラジアル隙間によるがたつきを極めて有効に利用してウォーム軸の他端部を出力軸に対して大きく偏倚させることができるので、出力軸とウォーム軸との偏芯及び傾動の調整幅を大きくすることができ、出力軸とウォーム軸との連結作業を容易に行うことができる。しかも、ジョイント構造が簡素であり、その軸方向の長さを短くすることができるので、出力軸とウォーム軸とを少ないスペースで連結することができる。
【0021】
また、前記ウォーム軸をウォームホイールへ向けて偏倚可能に支持し、このウォーム軸を付勢手段によってウォームホイール方向へ付勢している。
この場合、ウォーム軸がウォームホイールへ向けて偏倚可能であるので、出力軸とウォーム軸との偏芯及び傾動の調整幅を大きくしている点と相まって、ウォーム軸をウォームホイールへ向けて無理なく移動させることができる。このため、上記付勢手段によってウォーム軸をウォームホイールの摩耗に追従させて確実に移動させることができる。
【0022】
また、上記の操舵補助装置(請求項3)において、前記凸部が、断面正多角形で軸方向中央部が膨出する太鼓状に形成された前記出力軸の先端部により構成されているとともに、
前記凹部が、前記ウォーム軸の一端部を軸方向に断面正多角形に切り欠くことにより形成されて前記先端部が揺動可能に連結されている(請求項5)。
この場合、上記凸部及び凹部をそれぞれ構成する専用のジョイント部材を設けることなく、上記出力軸とウォーム軸とを直接的に連結することができ、当該装置の構成を簡略化することができる。しかも、凹部には先端部が揺動可能に連結されているので、出力軸とウォーム軸との偏芯及び傾動の調整幅をより大きくすることができ、よって出力軸とウォーム軸との連結作業をさらに容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、請求項1記載のジョイント構造によれば、軸受のラジアル隙間によるがたつきを極めて有効に利用して回転軸の他端部を電動モータの出力軸に対して大きく偏倚させることができるので、出力軸と回転軸との偏芯及び傾動の調整幅を大きくすることができる。その結果、出力軸と回転軸とを高精度に調芯させる必要がなく、その分、両者の連結作業を容易に行える。しかも、ジョイント構造は簡素にて小型のものであるので、出力軸と回転軸とを少ないスペースで連結することができる。このため、電動モータと回転軸とを備える各種装置の小型化を図ることができる。
また、回転軸と前記出力軸とを互いに揺動自在に連結するので、出力軸と回転軸との偏芯及び傾動の調整幅をより大きくすることができ、よって出力軸と回転軸との連結作業をさらに容易に行うことができる。
【0024】
請求項2記載の減速機構及び請求項3〜4記載の操舵補助装置によれば、電動モータの出力軸とウォーム軸とを、構造が簡素で軸方向の長さの短いジョイント構造を用いて連結しているので、装置の小型化を図ることができる。また、上記軸受のラジアル隙間によるがたつきを極めて有効に利用してウォーム軸の他端部を出力軸に対して大きく偏倚させることができるので、出力軸とウォーム軸との偏芯及び傾動の調整幅を大きくすることができる。その結果、出力軸とウォーム軸とを高精度に調芯させる必要がなく、その分、両者の連結作業を容易に行える。
【0025】
また、ウォーム軸がウォームホイールへ向けて偏倚可能であるので、出力軸とウォーム軸との偏芯及び傾動の調整幅を大きくしている点と相まって、ウォーム軸をウォームホイールへ向けて無理なく移動させることができる。このため、上記付勢手段によってウォームをウォームホイールの摩耗に追従させて容易に移動させることができ、ひいてはバックラッシュが生じるのを容易且つ確実に防止することができる。
【0026】
請求項5記載の操舵補助装置によれば、上記凸部及び凹部をそれぞれ構成する専用のジョイント部材を設けることなく、上記出力軸とウォーム軸とを直接的に連結することができ、当該装置の構成を簡略化することができる。しかも、凹部には凸部が揺動可能に連結されているので、出力軸とウォーム軸との偏芯及び傾動の調整幅をより大きくすることができ、よって出力軸とウォーム軸との連結作業をさらに容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係る操舵補助装置の電動モータ及び減速機構部分を示す断面図である。
【図2】(a)は図1に示した電動モータの出力軸の先端部に設けた凸部を示す斜視図であり、(b)は図1のIIb−IIb線断面図である。
【図3】本発明の操舵補助装置の全体構造を示す断面図である。
【図4】図1のIV−IV線断面図である。
【図5】従来の操舵補助装置全体構造を示す断面図である。
【図6】別の従来の操舵補助装置における電動モータ及び減速機構部分を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明のジョイント構造及びそれを用いた操舵補助装置を示す好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図3は、本発明の操舵補助装置の全体構造を示す断面図である。この操舵補助装置は、上端に操舵輪1を取り付ける第1操舵軸2と、この第1操舵軸2の下端にトーションバー3を介して連結された筒状の第2操舵軸4と、上記第1操舵軸2と第2操舵軸4との相対的な回転変位量により操舵トルクを検出するトルクセンサ5と、このトルクセンサ5の検出結果に基づいて駆動される操舵補助用の電動モータ6と、この電動モータ6の回転を減速して第2操舵軸4に伝達する減速機構7とを備えている。
【0029】
上記第1操舵軸2は、第1ステアリングコラム9及び第2ステアリングコラム10に包囲された状態で支持されており、第1ステアリングコラム9はブラケット12を介して車体Aに取り付けられている。また、上記トルクセンサ5はセンサハウジングH1に収容されており、上記減速機構7はギヤハウジングH2に収容されており、上記電動モータ6はギヤハウジングH2に取り付けられている。
【0030】
上記第1操舵軸2は、上端部に前記操舵輪1が取り付けられた筒状の第1軸体2aと、この第1軸体2aの下端部に軸方向への移動が許容された状態で一体回転可能に嵌合された棒状の第2軸体2bと、この第2軸体2bにピン2cにより連結された筒状の第3軸体2dとを備えている。上記第1軸体2aは、その中間部が軸受13を介して円筒状の第1ステアリングコラム9に回転自在に支持されている。また、上記第1及び第2軸体2a,2b間には、自動車の衝突時等において運転者から操舵輪1に作用する衝撃エネルギーを吸収するための合成樹脂製の緩衝部材2eが設けられている。さらに、第3軸体2dと第2操舵軸4との間には上記トルクセンサ5が配置されている。
【0031】
上記第2ステアリングコラム10は、その上端部が第1ステアリングコラム9に摺動自在に嵌合され、下端部が前記センサハウジングH1に嵌入されており、上記衝撃エネルギーを吸収する際に、第1ステアリングコラム9を第2ステアリングコラム10に対して軸方向へ移動させ得るようになっている。
【0032】
上記第2操舵軸4の内部にはトーションバー3が導入されており、当該第2操舵軸4の下端部は、ピン4aにより前記トーションバー3に一体回転可能に連結されている。また、この第2操舵軸4の軸方向の中間部は、一対の軸受14,15を介して上記ギヤハウジングH2に回転可能に支持されており、これら軸受14,15の相互間4bにウォームホイール72の内周が一体回転可能に嵌合されている。
【0033】
減速機構7は、図1に示すように、上記電動モータ6の出力軸60にこの発明のジョイント構造8を用いて連結されたウォーム軸70と、上記第2操舵軸4に一体回転可能に嵌合された上記ウォームホイール72とを備えている。ウォーム軸70の軸方向の中間部には、ウォーム71が一体形成されており、このウォーム71はウォームホイール72に噛み合わせてある。したがって、電動モータ6の出力軸60の回転をウォーム軸70とウォームホイール72とによって減速して第2操舵軸4に伝達することができる。この第2操舵軸4の回転は、車輪に連結された例えばラックピニオン式の舵取機構にユニバーサルジョイントJ(図3参照)を介して伝達される。
【0034】
上記ウォーム軸70は、第2操舵軸4の軸線と直交させた状態で配置されており、その一端部70a及び他端部70bがそれぞれ第1及び第2軸受16,17を介して上記ギヤハウジングH2の第1及び第2軸受孔91,92に回転可能に支持されている(図1参照)。
【0035】
上記第1軸受16は、ボール軸受によって構成されたものであり、ウォーム軸70の一端部70aが内輪16aに圧入され、上記第1軸受孔91に外輪16bが挿入されている。また、この第1軸受孔91内には、第1軸受16の外輪16bに当接してウォーム軸70の軸長方向へのがたつきを防止するための筒状のねじ体18が螺着されている。
【0036】
上記第2軸受17は、メタル軸受によって構成されたものであり、ウォームホイール72方向に偏倚できるように第2軸受孔92に取り付けられている。すなわち、図4にも示すように、この第2軸受孔92の内奥部と第2軸受17との間には、隙間92aが設けられており、第2軸受17は上記隙間92a分だけウォームホイール72側へ移動できるようになっている。
【0037】
上記第2軸受孔92の開孔側にはプラグ34がねじ込まれており、このプラグ34と第2軸受17との間には、当該第2軸受17をウォームホイール72方向へ常時付勢する付勢手段としての圧縮コイルばね32を、弾性収縮させた状態で介在してある。図の場合、圧縮コイルばね32は、第2軸受17の外輪17aの外周に突設された有底筒状の突部17bの内部に収容されている。この圧縮コイルばね32の付勢力は、第2軸受孔92へのプラグ34のねじ込み量を調整することによって最適な値に調整されている。上記プラグ34は、ロックナット35によって固定されている。
【0038】
尚、上記の構成以外に、例えば図6に示した場合と同様に、ボール軸受により第2軸受17を構成し、第2軸受孔92内に移動可能に配置されたサポートヨークをばねで付勢することによって当該第2軸受17をウォームホイール72方向へ付勢する構成でもよい。
【0039】
上記ジョイント構造8は、図1に示すように、ウォーム軸70の一端部70a側に設けられた凹部8aと、出力軸60側に設けられ、上記凹部8aに互いに係合する凸部8bとを有するものであり、それらの凹部8a及び凸部8bで構成される連結部分の中心位置を、ウォーム軸70の軸方向における上記第1軸受16の中心位置に実質的に一致させた状態で、ウォーム軸70と出力軸60とを連結している。
【0040】
上記凸部8bは、図2(a)及び(b)にも示すように、例えば断面正六角形で出力軸60の先端部を軸方向中央部が膨出する太鼓状に加工することにより構成されたものである。また、凹部8aは、ウォーム軸70の一端部70aを軸方向に切り欠くことにより形成されたものであり、上記の凸部(先端部)8bが揺動可能に連結されている。このように、連結対象のウォーム軸70の一端部70a及び出力軸60の先端部をそれぞれ凹部8a及び凸部8bに加工することにより、専用のジョイント部材を設けることなく、出力軸60とウォーム軸70とを直接的に連結することができる。さらに、凸部8bを凹部8aに揺動可能に連結しているので、出力軸60に対してウォーム軸70の他端部70bをより大きく偏倚させることができる。
【0041】
尚、凹部8a及び凸部8bは、出力軸60の回転をウォーム軸70に伝達できるものであればよく、断面正六角形に限定されるものではないが、出力軸60からウォーム軸70へのトルク伝達のロスが少ない断面正四〜八角形のものが好ましい。
【0042】
以上のように、本実施形態の操舵補助装置では、ウォーム軸70と出力軸60とをジョイント構造8により連結するとともに、その連結部分の中心位置を上記第1軸受16のウォーム軸70の軸方向における中心位置に実質的に一致させた状態としているので、第1軸受16を中心としてウォーム軸70の他端部70bを出力軸60に対して偏倚させることができ、その第1軸受16のラジアル隙間によるがたつきと上記連結部分での隙間によるがたつきとを極めて有効に利用して、ウォーム軸70の他端部70bを出力軸60に対して大きく偏倚させることができる。したがって、出力軸60とウォーム軸70との偏芯及び傾動の調整幅を大きくすることができ、よってウォーム軸70と出力軸60との連結精度を特段上げる必要がなく、その連結作業を容易に行える。しかも、ジョイント構造8は簡素であり、セレーション及びジョイント部材を用いた上述の従来例と異なり、軸方向長さを極めて短くすることができ、その分、減速機構7の小型化を図ることができる。
【0043】
また、本実施形態では、ウォーム軸70をウォームホイール72へ向けて偏倚可能に支持するとともに、圧縮コイルばね32によりウォーム軸70をウォームホイール72方向に付勢しているので、ウォーム軸70のウォーム71をウォームホイール72に弾性的に押し付けておくことができる。さらに、出力軸60とウォーム軸70との偏芯及び傾動の調整幅を大きくしている点と相まって、ウォーム軸70をウォームホイール72へ向けて無理なく移動させることができる。したがって、長期間の使用によってウォーム71及びウォームホイール72の歯面が摩耗した場合でも、この摩耗にウォーム71を追従させてバックラッシュが生じるのを防止することができる。また、吸水や熱等によって合成樹脂製のウォームホイール72が膨張した場合には、ウォーム軸70をウォームホイール72の反対側へ逃がして回転トルクが大きくなるのを防止することができる。また、上記のようにウォーム軸70のウォーム71をウォームホイール72に弾性的に押し付けることができるので、両者を組み付ける際に、両者を含む部品の寸法誤差に影響されることなくバックラッシュを調整することができる。
【0044】
また、上記ジョイント構造8の凹部8a及び凸部8bは、連結対象のウォーム軸70の一端部70a及び出力軸60の先端部をそれぞれ加工することで構成されているので、それらの凹部8a及び凸部8bをそれぞれ構成する専用のジョイント部材を設けることなく、出力軸60とウォーム軸70とを直接的に連結することができ、当該装置の構成を簡略化することができる。さらに、凹部8aには凸部8bが揺動可能に連結されているので、出力軸60とウォーム軸70との偏芯及び傾動の調整幅をより大きくすることができ、よって出力軸60とウォーム軸70との連結作業をさらに容易に行うことができる。
【0045】
尚、上記の説明では、電動モータ6の出力軸60とウォーム軸70とを連結する構成について説明したが、本発明のジョイント構造はこれに限定されるものではなく、回転軸の軸方向における軸受の中心位置に、回転軸の一端部と出力軸との連結部分の中心位置を実質的に一致させた状態で、それらの回転軸と出力軸とを連結するものであれば、出力軸60とこの出力軸60によって回転駆動される各種回転軸とを連結するジョイント構造としても好適に使用することができる。例えばウォーム軸70の一端部70a及び出力軸60の先端部にそれぞれスプライン孔及びスプライン軸を設けて、このスプライン結合の中心位置を第1軸受16の上記の中心位置に実質的に一致させたものでもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 操舵輪
32 圧縮コイルばね(付勢手段)
6 電動モータ
60 出力軸
7 減速機構
70 ウォーム軸(回転軸)
70a 一端部
71 ウォーム
72 ウォームホイール
8 ジョイント構造
8a 凹部
8b 凸部
16 第1軸受(軸受)
17 第2軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受により回転自在に支持された回転軸を電動モータの出力軸に一体回転可能に連結するジョイント構造であって、
前記回転軸の軸方向における前記軸受の中心位置に、前記回転軸の一端部と前記出力軸との連結部分の中心位置を実質的に一致させた状態で、それらの回転軸と出力軸とを互いに揺動自在に連結しており、且つ、
前記回転軸及び前記出力軸の一方に凸部を設けるとともに他方に凹部を設け、当該凸部と凹部を揺動可能に連結したことを特徴とするジョイント構造。
【請求項2】
電動モータの回転を減速して伝達するための減速機構であって、
前記電動モータの出力軸に、請求項1記載のジョイント構造を用いて連結されたウォーム軸と、
このウォーム軸の中間部に一体形成されたウォームと噛合可能なウォームホイールと
を備えており、
前記ウォーム軸をウォームホイールへ向けて偏倚可能に支持し、このウォーム軸を付勢手段によってウォームホイール方向へ付勢していることを特徴とする減速機構。
【請求項3】
電動モータの回転をウォームが設けられた回転軸としてのウォーム軸とこのウォーム軸のウォームに噛み合わせたウォームホイールとを介して操舵軸に伝達することにより操舵補助を行う操舵補助装置において、
前記ウォーム軸の一端部側に取付けられ、そのウォーム軸を回転可能に支持する軸受を備え、
前記ウォーム軸の一端部側及び前記電動モータの出力軸側の一方に設けられた凹部と、他方に設けられ、前記凹部に係合する凸部とを有するジョイント構造をウォーム軸と出力軸との連結部分に設けているとともに、
前記ウォーム軸の軸方向における前記軸受の中心位置に、前記連結部分の中心位置を実質的に一致させた状態で、それらのウォーム軸と出力軸とを連結しており、
前記ウォーム軸をウォームホイールへ向けて偏倚可能に支持し、このウォーム軸を付勢手段によってウォームホイール方向へ付勢しており、且つ、
前記凸部と凹部を揺動可能に連結したことを特徴とする操舵補助装置。
【請求項4】
電動モータの回転をウォームが設けられた回転軸としてのウォーム軸とこのウォーム軸のウォームに噛み合わせたウォームホイールとを介して操舵軸に伝達することにより操舵補助を行う操舵補助装置において、
前記ウォーム軸の一端部側に取付けられ、そのウォーム軸を回転可能に支持する軸受を備え、
前記ウォーム軸の一端部側及び前記電動モータの出力軸側の一方に設けられた凹部と、他方に設けられ、前記凹部に係合する凸部とを有するジョイント構造をウォーム軸と出力軸との連結部分に設けているとともに、
前記ウォーム軸の軸方向における前記軸受の中心位置に、前記連結部分の中心位置を実質的に一致させた状態で、それらのウォーム軸と出力軸とを連結しており、
前記ウォーム軸をウォームホイールへ向けて偏倚可能に支持し、このウォーム軸を付勢手段によってウォームホイール方向へ付勢しており、且つ、
前記凹部と凸部の連結が、スプライン孔及びスプライン軸からなるスプライン結合であることを特徴とする操舵補助装置。
【請求項5】
前記凸部が、断面正多角形で軸方向中央部が膨出する太鼓状に形成された前記出力軸の先端部により構成されているとともに、
前記凹部が、前記ウォーム軸の一端部を軸方向に断面正多角形に切り欠くことにより形成されて前記先端部が揺動可能に連結されていることを特徴とする請求項3記載の操舵補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−43744(P2010−43744A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−236467(P2009−236467)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【分割の表示】特願2001−127767(P2001−127767)の分割
【原出願日】平成13年4月25日(2001.4.25)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】