説明

ジョイント部材及び燃料電池

【課題】流路の閉塞を抑制し、且つ、シール性に優れたジョイント部材及び燃料電池を提供する。
【解決手段】燃料を収容するとともに燃料を排出するための燃料排出口を有する燃料タンクと、アノード、カソード、及び、アノードとカソードとの間に挟持された電解質膜を含んだ膜電極接合体と、燃料タンクから供給された燃料を注入するための燃料注入口と、を有する燃料電池本体と、燃料排出口と燃料注入口とにそれぞれ挿入されたジョイント部材と、を備え、ジョイント部材は、管状の剛体によって形成された連通管と、連通管よりも弾性を有する管状の弾性体によって形成され連通管の外周面をカバーするとともに連通管の外周面における一端部から外側に向かって突出し且つ燃料排出口の内面に密着したリング状の第1リップ部と、連通管の外周面における他端部から外側に向かって突出し且つ燃料注入口の内面に密着したリング状の第2リップ部と、を有するカバー部材と、を備えたことを特徴とする燃料電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ジョイント部材及び燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯用電子機器の電源に、燃料電池を用いる試みがなされている。燃料電池は、携帯用電子機器を、充電なしで長時間使用可能とするものである。燃料電池は、燃料と空気を供給するだけで発電することができ、燃料のみを補充・交換すれば連続して発電できるという利点を有している。このため、小型化ができれば携帯電子機器の長時間の作動に極めて有利なシステムといえる。
【0003】
特に、直接メタノール型燃料電池(DMFC:Direct Methanol Fuel Cell)は、小型化が可能であり、また燃料の取り扱いも水素ガス燃料に比べて容易なことから小型機器用電源として有望である。
【0004】
例えば、特許文献1によれば、膜電極接合体に燃料を供給する燃料分配機構と、液体燃料を収容する燃料収容部とが流路を介して接続された構成の燃料電池が開示されている。このような燃料電池においては、流路の閉塞を抑制し、しかも、流路と接続される部材との間のシール性を十分に確保することが要求される。
【0005】
特許文献2によれば、弾性材料よりなるOリング部材と、補助金属板とで構成したシールパッキンが開示されている。特許文献3によれば、内側ケース及び外側ケースに接触する部分に1以上のリップを有するゴム様弾性体からなるシール部と、補強環とで構成したシールリングが開示されている。特許文献4によれば、ゴムホースの内部に剛性筒状部材であるカラーを配した構成の燃料電池システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−235243号公報
【特許文献2】特開平04−107362号公報
【特許文献3】実開平07−025311号公報
【特許文献4】特開2008−204942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明の目的は、流路の閉塞を抑制し、且つ、シール性に優れたジョイント部材及び燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、
管状の剛体によって形成された連通管と、前記連通管よりも弾性を有する管状の弾性体によって形成され前記連通管の外周面をカバーするとともに、前記連通管の外周面における両端部のうちの少なくとも一方の端部から外側に向かって突出したリング状のリップ部を有するカバー部材と、を備えたことを特徴とするジョイント部材が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、
第1部材の第1開口と第2部材の第2開口とにそれぞれ挿入されるジョイント部材であって、管状の剛体によって形成された連通管と、前記連通管よりも弾性を有する管状の弾性体によって形成され前記連通管の外周面をカバーするとともに、前記連通管の外周面における一端部から外側に向かって突出し且つ前記第1開口の内径よりも大きな外径を有するリング状の第1リップ部と、前記連通管の外周面における他端部から外側に向かって突出し且つ前記第2開口の内径よりも大きな外径を有するリング状の第2リップ部と、を有するカバー部材と、を備えたことを特徴とするジョイント部材が提供される。
【0010】
本発明の他の態様によれば、
燃料を収容するとともに、燃料を排出するための燃料排出口を有する燃料タンクと、アノード、カソード、及び、前記アノードと前記カソードとの間に挟持された電解質膜を含んだ膜電極接合体と、前記燃料タンクから供給された燃料を注入するための燃料注入口と、を有する燃料電池本体と、前記燃料排出口と前記燃料注入口とにそれぞれ挿入されたジョイント部材と、を備え、前記ジョイント部材は、管状の剛体によって形成された連通管と、前記連通管よりも弾性を有する管状の弾性体によって形成され前記連通管の外周面をカバーするとともに、前記連通管の外周面における一端部から外側に向かって突出し且つ前記燃料排出口の内面に密着したリング状の第1リップ部と、前記連通管の外周面における他端部から外側に向かって突出し且つ前記燃料注入口の内面に密着したリング状の第2リップ部と、を有するカバー部材と、を備えたことを特徴とする燃料電池が提供される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、
管状の剛体によって形成された連通管と、前記連通管よりも弾性を有する管状の弾性体によって形成され前記連通管の外周面における一端部をカバーするとともに、外側に向かって突出したリング状の外周リップ部を有するカバー部材と、を備えたことを特徴とするジョイント部材が提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、
燃料を収容するとともに、燃料を排出するための燃料排出口を有する燃料タンクと、アノード、カソード、及び、前記アノードと前記カソードとの間に挟持された電解質膜を含んだ膜電極接合体と、前記燃料タンクから供給された燃料を注入するための燃料注入口と、を有する燃料電池本体と、前記燃料排出口と前記燃料注入口とにそれぞれ挿入されたジョイント部材と、を備え、前記ジョイント部材は、管状の剛体によって形成された連通管と、前記連通管よりも弾性を有する管状の弾性体によって形成され前記連通管の外周面における一端部をカバーするとともに、外側に向かって突出し且つ前記燃料排出口の内面に密着したリング状の第1外周リップ部を有する第1カバー部材と、前記連通管よりも弾性を有する管状の弾性体によって形成され前記連通管の外周面における他端部をカバーするとともに、前記第1カバー部材から離間し、外側に向かって突出し且つ前記燃料注入口の内面に密着したリング状の第2外周リップ部を有する第2カバー部材と、を備えたことを特徴とする燃料電池が提供される。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、流路の閉塞を抑制し、且つ、シール性に優れたジョイント部材及び燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本実施形態の一構成例における燃料電池本体、燃料供給源、及び、ジョイント部材の構造を概略的に示す分解断面図である。
【図2】図2は、本実施形態に適用可能な第1構成例のジョイント部材及びこのジョイント部材が挿入される燃料排出口及び燃料注入口を概略的に示す断面図である。
【図3】図3は、図2に示したジョイント部材の外観を概略的に示す斜視図である。
【図4】図4は、図2に示したジョイント部材が燃料排出口及び燃料注入口にそれぞれ挿入された状態を示す断面図である。
【図5】図5は、本実施形態に適用可能な第2構成例のジョイント部材を概略的に示す断面図である。
【図6】図6は、図5に示したジョイント部材が燃料排出口及び燃料注入口にそれぞれ挿入された状態を示す断面図である。
【図7】図7は、本実施形態に適用可能な第3構成例のジョイント部材を概略的に示す断面図である。
【図8】図8は、図7に示したジョイント部材が燃料排出口及び燃料注入口にそれぞれ挿入された状態を示す断面図である。
【図9】図9は、図7に示したジョイント部材において燃料供給源と燃料電池本体との位置ずれが生じた状態を示す断面図である。
【図10】図10は、本実施形態の他の構成例における燃料電池本体、燃料供給源、及び、ジョイント部材の構造を概略的に示す分解断面図である。
【図11】図11は、ジョイント部材、及び、このジョイント部材が挿入される燃料排出口及び燃料注入口を概略的に示す断面図である。
【図12】図12は、ジョイント部材に適用可能な第4構成例の第1カバー部材の断面図、及び、この第1カバー部材を適用したジョイント部材が燃料排出口に挿入された状態を示す断面図である。
【図13】図13は、ジョイント部材に適用可能な第5構成例の第1カバー部材の断面図、及び、この第1カバー部材を適用したジョイント部材が燃料排出口に挿入された状態を示す断面図である。
【図14】図14は、ジョイント部材に適用可能な第6構成例の第1カバー部材の断面図、及び、この第1カバー部材を適用したジョイント部材が燃料排出口に挿入された状態を示す断面図である。
【図15】図15は、ジョイント部材に適用可能な第7構成例の第1カバー部材の断面図、及び、この第1カバー部材を適用したジョイント部材が燃料排出口に挿入された状態を示す断面図である。
【図16】図16は、ジョイント部材に適用可能な第8構成例の第1カバー部材の断面図、及び、この第1カバー部材を適用したジョイント部材が燃料排出口に挿入された状態を示す断面図である。
【図17】図17は、ジョイント部材に適用可能な第9構成例の第1カバー部材の断面図、及び、この第1カバー部材を適用したジョイント部材が燃料排出口に挿入された状態を示す断面図である。
【図18】図18は、ジョイント部材に適用可能な第10構成例の第1カバー部材の断面図、及び、この第1カバー部材を適用したジョイント部材が燃料排出口に挿入された状態を示す断面図である。
【図19】図19は、第10構成例の第1カバー部材及び第1フィルタを適用したジョイント部材が燃料排出口に挿入された状態を示す断面図である。
【図20】図20は、第1内周リップ部の定義を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながらこの発明の実施の形態に係る燃料電池について詳細に説明する。この実施の形態においては、直接メタノール型の燃料電池について説明する。
【0016】
図1に示すように、燃料電池1は、液体燃料62を収容する燃料供給源(燃料タンク)2と、燃料電池本体5と、を備えて構成されている。燃料電池本体5には、ポンプ7、バルブ8、制御部9などが接続されている。
【0017】
燃料電池本体5は、膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)10と、集電体11と、アノード支持板12と、燃料供給部13と、保湿板18と、カバープレート19とを備えている。膜電極接合体10は、燃料極としてのアノード21と、アノード21に所定の隙間を置いて対向配置された空気極としてのカソード24と、アノード21とカソード24との間に挟持された電解質膜27と、を有している。
【0018】
アノード21は、電解質膜27の上に配置されたアノード触媒層22と、アノード触媒層22に積層されたアノードガス拡散層23と、を有している。カソード24は、電解質膜27の上に配置されたカソード触媒層25と、カソード触媒層25に積層されたカソードガス拡散層26と、を有している。
【0019】
アノード触媒層22は、アノードガス拡散層23を介して供給される燃料を酸化させ燃料から電子とプロトンとを取り出すものである。カソード触媒層25は、酸素を還元して、電子とアノード触媒層22において発生したプロトンとを反応させて水を生成するものである。
【0020】
アノード触媒層22やカソード触媒層25に含有される触媒としては、例えば白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)等の白金族元素の単体、白金族元素を含有する合金等が挙げられる。アノード触媒層22には、メタノールや一酸化炭素等に対して強い耐性を有するPt−RuやPt−Mo等を用いることが好ましい。カソード触媒層25には、PtやPt−Ni等を用いることが好ましい。ただし、触媒はこれらに限定されるものではなく、触媒活性を有する各種の物質を使用することができる。触媒は炭素材料のような導電性担持体を使用した担持触媒、あるいは無担持触媒のいずれであってもよい。
【0021】
電解質膜27はプロトン導電膜である。電解質膜27は、アノード触媒層22において発生したプロトンをカソード触媒層25に輸送するためのものである。電解質膜27は、電子伝導性を持たず、プロトンを輸送することが可能なプロトン伝導性の材料で形成されている。
【0022】
電解質膜27を形成する材料としては、例えばスルホン酸基を有するパーフルオロスルホン酸重合体のようなフッ素系樹脂(ナフィオン(商品名、デュポン社製)やフレミオン(商品名、旭硝子社製)等)、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂等の有機系材料、あるいはタングステン酸やリンタングステン酸等の無機系材料が挙げられる。ただし、プロトン伝導性の材料はこれらに限られるものではない。
【0023】
アノードガス拡散層23は、アノード触媒層22に燃料を均一に供給する役割を果たし、アノード触媒層22の集電機能を有している。カソードガス拡散層26は、カソード触媒層25に酸化剤を均一に供給する役割を果たし、カソード触媒層25の集電機能を有している。アノードガス拡散層23及びカソードガス拡散層26は多孔質基材で構成されている。
【0024】
このような構成の膜電極接合体10は、絶縁性のOリングなどのシール部材38及び39によってシールされている。
【0025】
集電体11は、アノード集電体31及びカソード集電体34を有している。アノード集電体31及びカソード集電体34は、例えば、金、ニッケル等の金属材料からなる多孔質層(例えばメッシュ)又は箔体、薄膜あるいはステンレス鋼(SUS)などの導電性金属材料に金などの良導電性金属を被覆した複合材等をそれぞれ使用することができる。
【0026】
アノード支持板12は、アノード21と燃料供給部13との間に配置されている。このアノード支持板12は、膜電極接合体10のアノード21に向けて燃料を通過させる複数の燃料通過孔(図示せず)を有している。なお、アノード支持板12は、必要に応じて省略しても良い。
【0027】
燃料供給部13は、詳述しないが、供給された燃料を分配する燃料分配機構や、燃料分配機構により分配された燃料を拡散する燃料拡散機構などを備えて構成されている。この燃料供給部13は、容器50の一部を含んでいる。
【0028】
この容器50は、底壁51と、底壁51の外縁に設けられた周壁52とを有している。底壁51及び周壁52は一体に形成されている。容器50は、周壁52によって囲まれた内側に膜電極接合体10等を収容している。
【0029】
保湿板18は、膜電極接合体10のカソードガス拡散層26とカバープレート19との間に配置されている。この保湿板18は、カソード触媒層25で生成された水の一部を含浸して、水の蒸散を抑制すると共に、カソードガス拡散層26に酸化剤(空気、特に酸素)を均一に導入することで、カソード触媒層25への酸化剤の均一拡散を促進する機能を有している。この保湿板18は、たとえば多孔質構造の部材で構成され、具体的な構成材料としては、ポリエチレンやポリプロピレンの多孔質体などが挙げられる。
【0030】
カバープレート19は、酸化剤を取入れるための複数の貫通孔19aを有している。このカバープレート19は、例えばステンレス鋼(SUS)によって形成されている。このようなカバープレート19は、容器50に対してカシメ、ネジ止め、リベット継手などの手法により固定されている。
【0031】
上述した容器50には、周壁52の外面の一部を開口して設けられた燃料注入口53、底壁51の外面(つまり、容器50の背面)の一部を開口して設けられた第1燃料吐出口55a、第1燃料取入口55b、第2燃料吐出口56a、及び、第2燃料取入口56bなどが形成されている。燃料注入口53と第1燃料吐出口55aとは、燃料の流路である第1細管57aによって接続されている。第1燃料取入口55bと第2燃料吐出口56aとは、第2細管57bによって接続されている。第2燃料取入口56bは、燃料供給部13と図示を省略した第3細管によって接続されている。
【0032】
ポンプ7は、容器50の背面に取付けられている。この実施の形態において、ポンプ7は、圧電型のポンプである。ポンプ7は、第2燃料吐出口56a及び第2燃料取入口56bにそれぞれ連結されている。このポンプ7は、第2燃料吐出口56aから導入された液体燃料62を第2燃料取入口56bに送液するものである。ポンプ7は、液体燃料62を循環させる循環ポンプではなく、あくまでも第2燃料取入口56bに液体燃料62を送液する燃料供給ポンプである。このようなポンプ7は、必要時に作動して燃料供給部13に液体燃料62を送液する。これにより、燃料供給量の制御性を高めることができる。
【0033】
ポンプ7の種類は特に限定されるものではないが、少量の液体燃料62を制御性よく送液することができ、さらに小型軽量化が可能という観点から、上記圧電型のポンプを使用することが好ましが、その他、ロータリーポンプ(ロータリーベーンポンプ)、電気浸透流ポンプ、ダイアフラムポンプ、しごきポンプ等を使用することもできる。これらのうち、駆動電力や大きさ等の観点から、電気浸透流ポンプやダイアフラムポンプを使用することがより好ましい。
【0034】
バルブ8は、容器50の背面に取付けられている。この実施の形態において、バルブ8は、遮断バルブである。バルブ8は、第1燃料吐出口55a及び第1燃料取入口55bにそれぞれ連結されている。バルブ8は、第2細管57bを介してポンプ7に連結されている。バルブ8は、開放することで第1燃料吐出口55aから導入された液体燃料62を第1燃料取入口55bに送液する一方で、閉鎖することで送液を停止する。
【0035】
このようなバルブ8は、ポンプ7に与える液体燃料62の量を制御するものである。バルブ8は、燃料電池の安定性や信頼性を高めるものである。バルブ8は、燃料電池の未使用時にも不可避的に発生する微量な燃料の消費や上述したポンプ再運転時の吸い込み不良等を回避することも可能である。
【0036】
制御部9は、容器50の背面に取付けられている。この実施の形態において、制御部9は、電力変換回路などを含んでいる。制御部9は、図示を省略した配線によりポンプ7及びバルブ8にそれぞれ電気的に接続されている。このような制御部9は、ポンプ7の稼動、バルブ8の開閉を制御することにより、発電量を調整するものである。
【0037】
燃料供給源2は、液体燃料62を収容可能に構成されている。この燃料供給源2は、矩形箱状に形成された燃料タンクである。また、この燃料供給源2は、液体燃料62を排出するための燃料排出口20を有している。この燃料排出口20は、燃料電池本体5の燃料注入口53と向かい合う位置に形成されている。また、この燃料排出口20は、液体燃料62を収容する空間との間を流路である細管2aによって接続されている。
【0038】
燃料供給源2は、樹脂、例えば、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリフェニルサルホン(PPSU)、ポリサルホン(PSF)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、環状オレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメチルペンテン(TPX)等によって形成されている。これらは1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。これらのなかでも、耐衝撃性および耐熱性にも優れる、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリフェニルサルホン(PPSU)、ポリサルホン(PSF)が好ましく、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリフェニルサルホン(PPSU)がより好ましく、ポリエーテルサルホン(PES)が特に好ましい。
【0039】
ここで、液体燃料62としては、液体のメタノール等のメタノール燃料、又はメタノール水溶液に限られるものではなく、例えばエタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、もしくはその他の液体燃料が挙げられる。いずれにしても、燃料電池に応じた液体燃料が使用される。
【0040】
この実施の形態の燃料電池では、燃料供給部13から膜電極接合体10に供給された燃料62は発電反応に消費されてしまい、その後に循環して燃料供給部13あるいは燃料供給源2に戻されることはない。このタイプの燃料電池は燃料を循環させないことから、従来のアクティブ方式とは異なる方式であり、装置の小型化等を損なうものではない。また、液体燃料62の供給にポンプ7を使用しており、従来の内部気化型のような純パッシブ方式とも異なるため、この方式の燃料電池はいわばセミパッシブ型と呼ぶことができる。
【0041】
上述した燃料供給源2は、図示しない燃料注入部と接続され、外部から液体燃料62を注入可能に構成されている。また、この燃料供給源2は、必要に応じて補強部材によって補強されるとともに、図示しないリークバルブやバランスバルブなどを備えている。
【0042】
燃料供給源2の燃料排出口20と容器50の燃料注入口53とには、それぞれジョイント部材70が挿入されている。このジョイント部材70の詳細な構造については、後述する。
【0043】
次に、上記燃料電池による発電の仕組みについて説明する。
【0044】
まず、制御部9の制御のもと、バルブ8を開状態に切替え、ポンプ7を稼動させ、燃料供給源2からジョイント部材70、第1細管57a、バルブ8、第2細管57b、ポンプ7、第3細管を介して燃料供給部13に液体燃料62を導入する。膜電極接合体10内において、燃料はアノードガス拡散層23にて拡散してアノード触媒層22に供給される。液体燃料62としてメタノール燃料を用いた場合、アノード触媒層22で式(1)に示すメタノールの内部改質反応が生じる。なお、メタノール燃料として純メタノールを使用した場合には、カソード触媒層25で生成した水や電解質膜27中の水をメタノールと反応させて式(1)の内部改質反応を生起させる。あるいは、水を必要としない他の反応機構により内部改質反応を生じさせる。
CHOH+HO → CO+6H+6e …(1)
この反応で生成した電子(e)はアノード集電体31に接続された端子(図示せず)から外部に導かれ、いわゆる電気として携帯用電子機器等を動作させた後、カソード集電体34に接続された端子(図示せず)からカソード24に導かれる。また、式(1)の内部改質反応で生成したプロトン(H)は電解質膜27を経てカソード24に導かれる。カソード24には酸化剤として空気が供給される。カソード24に到達した電子(e)とプロトン(H)は、カソード触媒層25で空気中の酸素と式(2)にしたがって反応し、この反応に伴って水が生成する。
6e+6H+(3/2)O → 3HO …(2)
上記したように、燃料電池による発電が行われる。
【0045】
次に、ジョイント部材70について、より詳細に説明する。
【0046】
図2は、第1構成例におけるジョイント部材70、及び、このジョイント部材70が挿入される燃料排出口20及び燃料注入口53を概略的に示す断面図である。
【0047】
ジョイント部材70は、管状の剛体によって形成された連通管71と、連通管71よりも弾性を有する管状の弾性体によって形成されるとともに連通管71の外周面71Sをカバーするカバー部材72と、を備えている。図示した例では、連通管71及びカバー部材72ともに、直線状の中心軸Oに沿って伸びた略円筒形状に形成されている。
【0048】
連通管71は、メタノールなどの燃料に対して十分な耐性を有し、且つ、燃料による溶出が少ない材料によって形成され、例えば、純チタン(Ti)、チタンを酸化皮膜処理したもの、ステンレス鋼(SUS304あるいはSUS316L)を不動態化処理したものなど各種剛体によって形成されている。カバー部材72は、メタノールなどの燃料に対して十分な耐性を有し、且つ、弾性変形しやすい材料によって形成され、例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、シリコーンゴム、フッ素系ゴムなどによって形成されている。
【0049】
連通管71は、燃料排出口20の側に位置する一端側に第1開口71HAを有するとともに、燃料注入口53の側に位置する他端側に第2開口71HBを有している。連通管71では、第1開口71HAから第2開口71HBまで連通している。これらの第1開口71HA及び第2開口71HBは、ともに中心軸Oに垂直な面における断面形状が円形である。
【0050】
また、連通管71は、燃料排出口20の側に位置する一端面71Aを有するとともに、燃料注入口53の側に位置する他端面71Bを有している。一端面71Aは、第1開口71HAを囲むリング状に形成されている。他端面71Bは、第2開口71HBを囲むリング状に形成されている。
【0051】
また、連通管71は、外周面71Sを有している。この外周面71Sは、円筒面である。このような外周面71Sは、燃料排出口20の側に位置する一端部71SA、及び、燃料注入口53の側に位置する他端部71SBを有している。
【0052】
カバー部材72は、連通管71の外周面71Sにおける両端部のうち少なくとも一方の端部から外側に向かって突出したリップ部を有している。図2に示した例では、カバー部材72は、外周面71Sの一端部71SAから外側に向かって突出した第1リップ部73と、外周面71Sの他端部71SBから外側に向かって突出した第2リップ部74と、を有している。なお、一端部71SA及び他端部71SBから外側の方向とは、外周面71Sの法線方向、あるいは中心軸Oに直交する方向である。これらの第1リップ部73及び第2リップ部74は、ともに中心軸Oを中心としたリング状に形成されている。
【0053】
また、カバー部材72は、燃料排出口20の側に位置する第1開口72HAを有するとともに、燃料注入口53の側に位置する第2開口72HBを有している。これらの第1開口72HA及び第2開口72HBは、ともに中心軸Oに垂直な面における断面形状が円形である。第1開口72HAは、連通管71の第1開口71HAと連通している。第2開口72HBは、連通管71の第2開口71HBと連通している。
【0054】
連通管71の中心軸Oに沿った長さL1は、カバー部材72の中心軸Oに沿った長さL2よりも短い。この図2に示した例では、カバー部材72は、燃料排出口20の側に位置する連通管71の一端面71Aをカバーしている。なお、カバー部材72は、燃料注入口53の側に位置する連通管71の他端面71Bはカバーしていないが、他端面71Bよりも燃料注入口53の側に延出している。
【0055】
さらに、この図2に示した例では、カバー部材72は、第2リップ部74の側に偏在したマーク75を有している。このマーク75は、ジョイント部材70の構造が非対称(つまり、連通管71の一端面71Aがカバー部材72によってカバーされている一方で、他端面71Bがカバー部材72から露出している)であるため、ジョイント部材70の方向性を示すものである。このマーク75は、例えば第2リップ部74と同様にリング状に突出している。
【0056】
一方で、外径が略円筒状のジョイント部材70が挿入される燃料排出口20及び燃料注入口53は、ジョイント部材70の中心軸Oと同軸方向に延びた円筒状に形成されている。つまり、燃料排出口20の内面20A及び燃料注入口53の内面53Aは、ともに円筒面である。燃料排出口20の底面20Bには、液体燃料の流路である細管2aが接続されている。燃料注入口53の底面53Bには、液体燃料の流路である第1細管57aが接続されている。
【0057】
第1リップ部73の外径Do1は、ジョイント部材70が挿入される燃料排出口20の内径Di11よりも大きい。なお、細管2aの内径Di12は、燃料排出口20の内径Di11よりも小さい。
【0058】
第2リップ部74の外径Do2は、ジョイント部材70が挿入される燃料注入口53の内径Di21よりも大きい。なお、第1細管57aの内径Di22は、燃料注入口53の内径Di21よりも小さい。
【0059】
図3は、図2に示したジョイント部材70の外観を概略的に示す斜視図である。
【0060】
ジョイント部材70のカバー部材72は、それぞれ中心軸Oを中心とするリング状に形成された第1リップ部73、第2リップ部74、及び、マーク75を有している。第1リップ部73に近接した端面には、第1開口72HAが形成されている。
【0061】
図4は、図2などに示したジョイント部材70が燃料排出口20及び燃料注入口53にそれぞれ挿入された状態を示す断面図である。
【0062】
燃料排出口20に挿入されたジョイント部材70おいては、カバー部材72の第1リップ部73は、弾性変形する。このとき、連通管71の内部に形成された流路は確保されている。つまり、第1リップ部73は、内面20Aに接触した際に、内部の流路を塞ぐように潰れることはなく、連通管71の外周面71Sに支持されつつ、外周面71Sと燃料排出口20の内面20Aとの間で潰れる。これにより、第1リップ部73は、燃料排出口20の内面20Aに密着する。リング状の第1リップ部73は、中心軸Oを中心として全周にわたって内面20Aに密着しており、第1リップ部73と内面20Aとの間にはほとんど隙間がない。このとき、第1リップ部73の内面20Aに接している面圧は、略均一になる。
【0063】
燃料注入口53に挿入されたジョイント部材70おいても同様に、カバー部材72の第2リップ部74は、弾性変形し、燃料注入口53の内面53Aに密着する。リング状の第2リップ部74は、中心軸Oを中心として全周にわたって内面53Aに密着しており、第2リップ部74と内面53Aとの間にはほとんど隙間がない。このとき、第2リップ部74の内面53Aに接している面圧は、略均一になる。
【0064】
これにより、優れたシール性を実現することが可能となる。
【0065】
なお、これらの第1リップ部73及び第2リップ部74の圧縮率は、10%以上20%以下の範囲になるように設計されることが望ましい。この場合の圧縮率とは、(圧縮後のリップ部の肉厚の潰れ量/圧縮前のリップ部のカバー部材の肉厚)×100で定義される。圧縮率が10%未満の場合、シール性が不十分となるおそれがあり、燃料がリークする懸念がある。また、圧縮率が20%を超える場合には、燃料排出口20あるいは燃料注入口53への挿入を速やかに行うことができず、作業性の低下を招くおそれがある。
【0066】
また、本実施形態によれば、ジョイント部材70は、剛体によって形成された連通管71を内部に備えているため、燃料排出口20あるいは燃料注入口53の位置が、ジョイント部材70の中心軸Oと同軸上の位置からずれた場合であっても、ジョイント部材70の変形を防ぎ、連通管71の内部に形成された流路の閉塞を抑制することが可能となる。このため、燃料供給源2の流路2aと燃料電池本体5の第1細管57aとの間において、ジョイント部材70による流路を確保することができ、安定的に燃料供給源2から燃料電池本体5に燃料を供給することが可能となる。
【0067】
また、本実施形態によれば、弾性体によって形成されたカバー部材72の第1リップ部73が燃料排出口20の内面20Aに密着し、また、第2リップ部74が燃料注入口53の内面53Aに密着しているため、ジョイント部材70が燃料排出口20や燃料注入口53から抜けにくく、信頼性を確保できるとともに、ジョイント部材70の接触による燃料排出口20の内面20A及び燃料注入口53の内面53Aの損傷発生を抑制することができる。
【0068】
さらに、本実施形態によれば、ジョイント部材70において、燃料排出口20に挿入された連通管71の一端面71Aは、カバー部材72によってカバーされているため、ジョイント部材70が燃料排出口20の底面20Bに突き当てられた場合であっても、剛体である連通管71の一端面71Aが直接底面20Bに接触することはなく、一端面71Aと底面20Bとの間には、カバー部材72が介在する。このため、燃料供給源2の損傷発生を抑制することができる。
【0069】
次に、ジョイント部材70の第2構成例について説明する。なお、第1構成例と同一構成については、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0070】
図5は、第2構成例におけるジョイント部材70を概略的に示す断面図である。この第2構成例は、第1構成例と比較して、カバー部材72が連通管71の一端面71Aのみならず、連通管71の他端面71Bもカバーしている点で相違している。以下に、各部について簡単に説明する。
【0071】
すなわち、ジョイント部材70は、連通管71と、連通管71の外周面71Sをカバーするカバー部材72と、を備えている。カバー部材72は、第1リップ部73と、第2リップ部74と、を有している。また、カバー部材72は、連通管71の第1開口71HAと連通した第1開口72HAと、連通管71の第2開口71HBと連通した第2開口72HBと、を有している。
【0072】
連通管71の中心軸Oに沿った長さL1は、カバー部材72の中心軸Oに沿った長さL2よりも短く、カバー部材72は、連通管71の一端面71A及び他端面71Bをそれぞれカバーしている。
【0073】
図示しない燃料排出口20の内径と第1リップ部73の外径との関係、及び、図示しない燃料注入口53の内径と第2リップ部74の外径との関係については、上述した第1構成例と同様である。
【0074】
図6は、図5などに示したジョイント部材70が燃料排出口20及び燃料注入口53にそれぞれ挿入された状態を示す断面図である。
【0075】
燃料排出口20に挿入されたジョイント部材70おいては、カバー部材72の第1リップ部73は、弾性変形し、燃料排出口20の内面20Aの全周にわたって密着している。燃料注入口53に挿入されたジョイント部材70おいては、カバー部材72の第2リップ部74は、弾性変形し、燃料注入口53の内面53Aの全周にわたって密着している。
【0076】
これにより、第1構成例と同様に、優れたシール性を実現することが可能となる。
【0077】
加えて、この第2構成例によれば、ジョイント部材70において、燃料注入口53に挿入された連通管71の他端面71Bは、カバー部材72によってカバーされているため、ジョイント部材70が燃料注入口53の底面53Bに突き当てられた場合であっても、剛体である連通管71の他端面71Bが直接底面53Bに接触することはなく、他端面71Bと底面53Bとの間には、カバー部材72が介在する。このため、燃料電池本体5の損傷発生を抑制することができる。
【0078】
さらに、この第2構成例によれば、カバー部材72が連通管71の一端面71A及び他端面71Bをカバーしているため、ジョイント部材70を燃料排出口20及び燃料注入口53にそれぞれ挿入する際に、連通管71とカバー部材72との位置ずれの発生を抑制することができる。
【0079】
次に、ジョイント部材70の第3構成例について説明する。なお、第1構成例と同一構成については、同一の参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0080】
図7は、第3構成例におけるジョイント部材70を概略的に示す断面図である。この第3構成例は、第1構成例と比較して、第1リップ部73と第2リップ部74との間に蛇腹部76を有している点で相違している。以下に、各部について簡単に説明する。
【0081】
すなわち、ジョイント部材70は、連通管71と、連通管71の外周面71Sをカバーするカバー部材72と、を備えている。カバー部材72は、第1リップ部73と、第2リップ部74と、蛇腹部76と、を有している。また、カバー部材72は、連通管71の第1開口71HAと連通した第1開口72HAと、連通管71の第2開口71HBと連通した第2開口72HBと、を有している。
【0082】
蛇腹部76は、その一部が連通管71の外周面71Sから離間している。すなわち、蛇腹部76は、凸部76Aと、凹部76Bとを有している。凸部76A及び凹部76Bは、中心軸Oを中心としたリング状に形成されている。凸部76Aの内面は、外周面71Sから離間している。凹部76Bの内面は、外周面71Sに接している。このような蛇腹部76を有したカバー部材72は、中心軸Oに沿った方向に伸縮自在である。
【0083】
カバー部材72は、連通管71の一端面71Aをカバーしている。なお、第2構成例と同様に、カバー部材72は、連通管71の一端面71A及び他端面71Bをそれぞれカバーしていても良い。
【0084】
図示しない燃料排出口20の内径と第1リップ部73の外径との関係、及び、図示しない燃料注入口53の内径と第2リップ部74の外径との関係については、上述した第1構成例と同様である。
【0085】
なお、カバー部材72が連通管71の一端面71Aのみならず、第2構成例と同様に、連通管71の他端面71Bもカバーしている構成を適用してよい。
【0086】
図8は、図7などに示したジョイント部材70が燃料排出口20及び燃料注入口53にそれぞれ挿入された状態を示す断面図である。
【0087】
燃料排出口20に挿入されたジョイント部材70おいては、カバー部材72の第1リップ部73は、弾性変形し、燃料排出口20の内面20Aの全周にわたって密着している。燃料注入口53に挿入されたジョイント部材70おいては、カバー部材72の第2リップ部74は、弾性変形し、燃料注入口53の内面53Aの全周にわたって密着している。さらに、蛇腹部76の凸部76Aの一部も弾性変形し、燃料排出口20の内面20A及び燃料注入口53の内面53Aの全周にわたって密着している。
【0088】
これにより、第1構成例と同様に、優れたシール性を実現することが可能となる。
【0089】
加えて、この第3構成例によれば、図9に示すように、燃料供給源2と燃料電池本体5との位置ズレにより燃料排出口20及び燃料注入口53の位置がジョイント部材70の中心軸Oと同軸上の位置からずれた場合であっても、カバー部材72がその弾性により変位に追従し、また、蛇腹部76の一部の凸部76Aが燃料排出口20の内面20A及び燃料注入口53の内面53Aに密着しているため、より高いシール性を実現することが可能となる。
【0090】
≪比較例1≫
図2などに示した第1構成例において、連通管を省略したジョイント部材70を適用した場合には、第1リップ部73が燃料排出口20の内面20Aに密着した際、及び、第2リップ部74が燃料注入口53の内面53Aに密着した際に、カバー部材72が潰れ、内部の流路の断面積が縮小し、最悪の場合に流路の閉塞を招くおそれがある。また、燃料供給源2と燃料電池本体5との位置ズレにより燃料排出口20及び燃料注入口53の位置がジョイント部材70の中心軸Oと同軸上の位置からずれた場合には、カバー部材72が変形し、最悪の場合にはカバー部材72の潰れにより流路の閉塞を招くおそれがある。
【0091】
≪比較例2≫
図2などに示した第1構成例において、カバー部材72から第1リップ部及び第2リップ部を省略する代わりに、燃料排出口20の底面20Bに突き当たるカバー部材72の一端部及び燃料注入口53の底面53Bに突き当たるカバー部材72の他端部のそれぞれのリング状のリップ部を備えたジョイント部材70を適用した場合には、燃料供給源2と燃料電池本体5との位置ズレにより、リップ部の圧縮が不足し、シール不良を起こすおそれがある。
【0092】
以上説明したように、本実施形態によれば、流路の閉塞を抑制し、且つ、シール性に優れたジョイント部材及び燃料電池を提供できる。
【0093】
次に、本実施形態の他の構成例について説明する。以下に説明する他の構成例は、上記した第1乃至第3構成例と比較して、ジョイント部材を構成するカバー部材が連通管の外周面の全体を覆っていない点で相違している。
【0094】
図10は、本実施形態の他の構成例における燃料電池本体、燃料供給源、及び、ジョイント部材の構造を概略的に示す分解断面図である。
【0095】
燃料電池1は、図1に示した例と同様に、燃料供給源2と、燃料電池本体5と、ジョイント部材80と、を備えて構成されている。なお、燃料供給源2及び燃料電池本体5の構成については、上記の通りであり、ここでは詳細な説明及び詳細な図示を省略する。
【0096】
ジョイント部材80は、管状の剛体によって形成された連通管81と、連通管81よりも弾性を有する管状の弾性体によって形成された第1カバー部材82及び第2カバー部材83と、を備えて構成されている。図示した例では、連通管81は、L字状に形成されているが、連通管81の形状については特にこの例に限られるものではない。連通管81の外周面81Sは、燃料排出口20の側に位置する一端部81SA、及び、燃料注入口53の側に位置する他端部81SBを有している。
【0097】
第1カバー部材82は、連通管81の外周面81Sにおける一端部81SAをカバーしている。第2カバー部材83は、連通管81の外周面81Sにおける他端部81SBをカバーしている。この第2カバー部材83は、第1カバー部材82から離間している。つまり、連通管81の外周面81Sは、第1カバー部材82及び第2カバー部材83との間では、いずれのカバー部材にもカバーされることなく、露出している。
【0098】
図11は、ジョイント部材80、及び、このジョイント部材80が挿入される燃料排出口20及び燃料注入口53を概略的に示す断面図である。
【0099】
連通管81は、燃料排出口20の側に位置する一端側に第1開口81HAを有するとともに、燃料注入口53の側に位置する他端側に第2開口81HBを有している。これらの第1開口81HA及び第2開口81HBは円形に形成されている。この連通管81では、第1開口81HAから第2開口81HBまで連通している。
【0100】
また、この連通管81は、燃料排出口20の側に位置する一端面81Aを有するとともに、燃料注入口53の側に位置する他端面81Bを有している。これらの一端面81A及び他端面81Bはリング状に形成されている。
【0101】
第1カバー部材82は、連通管81の外周面81Sにおいて燃料排出口20の側に位置する一端部81SAをカバーするとともに、一端部81SAから外側に向かって突出したリング状の第1外周リップ部OL1を有している。また、この第1カバー部材82は、連通管81の一端面81Aをカバーしている。さらに、この第1カバー部材82は、連通管81の第1開口81HAと連通した第1開口82HAを有している。
【0102】
第2カバー部材83は、連通管81の外周面81Sにおいて燃料注入口53の側に位置する他端部81SBをカバーするとともに、他端部81SBから外側に向かって突出したリング状の第2外周リップ部OL2を有している。また、この第2カバー部材83は、連通管81の他端面81Bをカバーしている。さらに、この第2カバー部材83は、連通管81の第2開口81HBと連通した第2開口83HBを有している。
【0103】
一方で、ジョイント部材80が挿入される燃料排出口20及び燃料注入口53は、ジョイント部材80の中心軸Oと同軸方向に延びた円筒状に形成されている。第1外周リップ部OL1の外径Do11は、ジョイント部材80が挿入される燃料排出口20の内径Di11よりも大きい。第2外周リップ部OL2の外径Do21は、ジョイント部材80が挿入される燃料注入口53の内径Di21よりも大きい。
【0104】
次に、上記のジョイント部材80が燃料注入口20及び燃料排出口53にそれぞれ挿入された状態について説明する。なお、ここでは、ジョイント部材80に適用可能な第1カバー部材82、及び、第1カバー部材82を適用したジョイント部材80が燃料排出口20に挿入された状態について説明する。
【0105】
図示しない第2カバー部材83については、図示したいずれかの第1カバー部材82と同様の構造を適用可能であり、第1カバー部材82と第2カバー部材83とが異なる構造であっても良い。また、ジョイント部材80が燃料注入口53に挿入された状態は、図示したジョイント部材80が燃料排出口20に挿入されたいずれかの状態と同様であり、燃料排出口20に挿入された状態と燃料注入口53に挿入された状態とが異なっていても良い。
【0106】
図12は、上記したジョイント部材80に適用可能な第4構成例の第1カバー部材82の断面図、及び、この第1カバー部材82を適用したジョイント部材80が燃料排出口20に挿入された状態を示す断面図である。
【0107】
第1カバー部材82の外周面82OSは、外側に向かって突出した第1外周リップ部OL1を含んでいる。また、第1カバー部材82の内周面82ISは、円筒面となっている。第1カバー部材82の中心軸O上には、第1開口82HAが形成されている。このような第1カバー部材82は、連通管81の一端部81SAをカバーしている。
【0108】
燃料排出口20に挿入されたジョイント部材80おいては、第1カバー部材82の第1外周リップ部OL1は、弾性変形する。このとき、連通管81の内部に形成された流路は確保されている。つまり、第1外周リップ部OL1は、燃料排出口20の内面20Aに接触した際に、連通管81の内部の流路を塞ぐように潰れることはなく、連通管81の外周面81Sと内面20Aとの間で潰れる。
【0109】
これにより、第1外周リップ部OL1は、燃料排出口20の内面20Aに密着する。リング状の第1外周リップ部OL1は、中心軸Oを中心として内面20Aの全周にわたって密着しており、第1外周リップ部OL1と内面20Aとの間にはほとんど隙間がない。このとき、第1外周リップ部OL1の内面20Aに接している面圧は、略均一になる。
【0110】
このような構成によれば、上記した構成例と同様の効果が得られる。
【0111】
図13は、上記したジョイント部材80に適用可能な第5構成例の第1カバー部材82の断面図、及び、この第1カバー部材82を適用したジョイント部材80が燃料排出口20に挿入された状態を示す断面図である。
【0112】
図13に示した第5構成例の第1カバー部材82は、図12に示した第4構成例の第1カバー部材82と比較して、第1外周リップ部OL1に加えて、第1内周リップ部IL1を有している点で相違している。
【0113】
すなわち、第1カバー部材82の外周面82OSは、外側に向かって突出した第1外周リップ部OL1を含んでいる。また、第1カバー部材82の内周面82ISは、内側に向かって突出したリング状の第1内周リップ部IL1を含んでいる。この第1内周リップ部IL1は、第1外周リップ部OL1と対向する位置に形成されている。なお、図示しないが、第2カバー部材83についても、第2外周リップ部OL2に加えて、第2内周リップ部IL2を有する構成が適用可能である。
【0114】
このような第1カバー部材82に連通管81の一端部81SAが挿入された際には、第1内周リップ部IL1が弾性変形し、外周面81Sの一端部81SAに密着する。リング状の第1内周リップ部IL1は、中心軸Oを中心として一端部81SAの全周にわたって密着しており、たとえ内面82ISの全面が外周面81Sと密着していなくても、第1内周リップ部IL1と外周面81Sとの間にはほとんど隙間ができない。
【0115】
このような構成によれば、上記した構成例と同様の効果に加えて、外周面81Sを伝わる燃料漏れを抑制することが可能となる。
【0116】
また、第1内周リップ部IL1は、第1外周リップ部OL1と対向する位置に形成されている。このため、ジョイント部材80が燃料排出口20に挿入された際に、第1外周リップ部OL1の弾性変形に伴って発生した力が第1内周リップ部IL1に作用して、第1内周リップ部IL1が連通管81の外周面81Sに密着する力がさらに増す。このため、より高いシール性を実現することが可能となる。
【0117】
図14は、上記したジョイント部材80に適用可能な第6構成例の第1カバー部材82の断面図、及び、この第1カバー部材82を適用したジョイント部材80が燃料排出口20に挿入された状態を示す断面図である。
【0118】
図14に示した第6構成例の第1カバー部材82は、図12に示した第4構成例の第1カバー部材82と比較して、第1外周リップ部OL1が樽状に形成された点で相違している。
【0119】
すなわち、第1カバー部材82の外周面82OSは、外側に向かって突出した第1外周リップ部OL1を含んでいる。また、第1カバー部材82の内周面82ISは、円筒面となっている。第1外周リップ部OL1は、図12に示した例と比較して、中心軸Oに沿った方向に延出している。なお、図示しないが、第2カバー部材83についても、樽状に形成された第2外周リップ部OL2を有する構成が適用可能である。
【0120】
このような第1カバー部材82を適用したジョイント部材80が燃料排出口20に挿入された際には、第1外周リップ部OL1は、弾性変形するが、図12に示した例と比較して、第1外周リップ部OL1と燃料排出口20の内面20Aとの密着する面積が中心軸Oに沿った方向に拡大する。
【0121】
このような構成によれば、上記した構成例と同様の効果に加えて、より高いシール性を実現することが可能となる。また、第1外周リップ部OL1の内面20Aとの密着面積が拡大するため、ジョイント部材80の傾きを抑制することが可能となるのに加えて、ジョイント部材80の外部からの衝撃による耐性を向上することが可能となる。
【0122】
図15は、上記したジョイント部材80に適用可能な第7構成例の第1カバー部材82の断面図、及び、この第1カバー部材82を適用したジョイント部材80が燃料排出口20に挿入された状態を示す断面図である。
【0123】
図15に示した第7構成例の第1カバー部材82は、図14に示した第6構成例の第1カバー部材82と比較して、樽状に形成された第1外周リップ部OL1に加えて、第1内周リップ部IL1を有している点で相違している。第1内周リップ部IL1については、図13に示した第5構成例と同様である。なお、図示しないが、第2カバー部材83についても、樽状に形成された第2外周リップ部OL2に加えて、第2内周リップ部IL2を有する構成が適用可能である。
【0124】
このような構成によれば、図14を参照して説明した効果に加えて、図13を参照して説明した効果が得られる。
【0125】
図16は、上記したジョイント部材80に適用可能な第8構成例の第1カバー部材82の断面図、及び、この第1カバー部材82を適用したジョイント部材80が燃料排出口20に挿入された状態を示す断面図である。
【0126】
図16に示した第8構成例の第1カバー部材82は、図12に示した第4構成例の第1カバー部材82と比較して、第1外周リップ部OL1に加えて、第1フランジ部F1を有している点で相違している。
【0127】
すなわち、第1カバー部材82の外周面82OSは、外側に向かって突出した第1外周リップ部OL1及び第1フランジ部F1を含んでいる。この第1フランジ部F1は、第1外周リップ部OL1と同様に、外周面82OSの全周にわたるリング状に形成されている。第1フランジ部F1の外径Do31は、第1外周リップ部OL1の外径Do11より小さい。燃料排出口20の内径Di11は、第1外周リップ部OL1の外径Do11より小さく、第1フランジ部F1の外径Do31より大きい。なお、図示しないが、第2カバー部材83についても同様に、第2外周リップ部OL2に加えて、第2フランジ部F2を有する構成が適用可能である。
【0128】
このような第1カバー部材82を適用したジョイント部材80が燃料排出口20に挿入された際には、第1外周リップ部OL1は、燃料排出口20の内面20Aとの間で弾性変形するが、第1フランジ部F1は、内面20Aに接することはなく、内面20Aとの間に僅かな隙間を形成している。このため、ジョイント部材80を燃料排出口20に挿入する際に、第1フランジ部F1が挿入を阻害するような抵抗となることはない。
【0129】
このような構成によれば、図12を参照して説明した効果に加えて、ジョイント部材80に傾きを生じさせるような力が加わった場合には、第1フランジ部F1が内面20Aに接触し、ジョイント部材80の傾きを抑制することが可能となる。
【0130】
図17は、上記したジョイント部材80に適用可能な第9構成例の第1カバー部材82の断面図、及び、この第1カバー部材82を適用したジョイント部材80が燃料排出口20に挿入された状態を示す断面図である。
【0131】
図17に示した第9構成例の第1カバー部材82は、図16に示した第8構成例の第1カバー部材82と比較して、第1外周リップ部OL1及び第1フランジ部F1に加えて、第1内周リップ部IL1を有している点で相違している。第1内周リップ部IL1については、図13に示した第5構成例と同様である。なお、図示しないが、第2カバー部材83についても、第2外周リップ部OL2及び第2フランジ部F2に加えて、第2内周リップ部IL2を有する構成が適用可能である。
【0132】
このような構成によれば、図16を参照して説明した効果に加えて、図13を参照して説明した効果が得られる。
【0133】
なお、図16及び図17に示した第1フランジ部F1は、第1カバー部材82を形成するための材料、すなわち、上記したような燃料に対して十分な耐性を有し、且つ、弾性変形しやすい各種ゴムなどの材料によって形成されても良いが、第1フランジ部F1は、ジョイント部材80の傾きを抑制するものであるから、弾性変形しにくい材料で形成されることがより望ましい。
【0134】
例えば、第1フランジ部F1は、第1カバー部材82とは異なる材料であって、第1カバー部材82を形成する材料よりも剛性の高い樹脂材料や金属材料によって形成されても良い。また、この第1フランジ部F1に相当する部分をインサート成型により剛性の高い部材として形成しても良い。
【0135】
図18は、上記したジョイント部材80に適用可能な第10構成例の第1カバー部材82の断面図、及び、この第1カバー部材82を適用したジョイント部材80が燃料排出口20に挿入された状態を示す断面図である。
【0136】
図18に示した第10構成例の第1カバー部材82は、図13に示した第5構成例の第1カバー部材82と比較して、第1外周リップ部OL1及び第1内周リップ部IL1に加えて、連通管81の一端面81Aをカバーする端部に凹部である第1ザグリ穴CH1を有している点で相違している。
【0137】
第1フィルタFL1は、第1ザグリ穴CH1に配置されている。ここに示した例では、第1フィルタFL1は、第1ザグリ穴CH1に圧入されている。ジョイント部材80が燃料排出口20に挿入された際には、第1フィルタFL1は、第1カバー部材82と燃料排出口20の底面20Bとの間に位置する。換言すると、第1カバー部材82は、連通管81の一端面81Aと第1フィルタFL1との間に介在している。
【0138】
なお、図示しないが、第2カバー部材83についても、第2外周リップ部OL2及び第2内周リップ部IL2に加えて、連通管81の他端部81Bをカバーする端部に凹部である第2ザグリ穴CH2を有する構成が適用可能である。第2ザグリ穴CH2には、第2フィルタFL2が配置可能である。
【0139】
このような構成によれば、図13を参照して説明した効果に加えて、燃料供給源2から燃料電池本体5に供給された燃料に含まれる不純物の燃料電池本体5への流出を抑制することが可能となる。
【0140】
図19は、第10構成例の第1カバー部材82及び第1フィルタFL1を適用したジョイント部材80が燃料排出口20に挿入された状態を示す断面図である。
【0141】
第1フィルタFL1は、第1ザグリ穴CH1に配置されている。ここに示した例では、ジョイント部材80は、第1カバー部材82が嵌め込まれるカップ状の第1ホルダHL1を備えている。第1フィルタFL1は、第1カバー部材82と第1ホルダHL1との間に保持されている。
【0142】
なお、図示しないが、第2カバー部材82についても、第2ザグリ穴CH2に配置された第2フィルタFL2を保持するカップ状の第2ホルダHL2を適用可能である。
【0143】
このような構成によれば、図18を参照して説明した効果に加えて、第1フィルタFL1の第1カバー部材82からの脱落を防止することが可能である。
【0144】
次に、上記した構成例のうち、図13に示した第5構成例、図15に示した第7構成例、図17に示した第9構成例、及び、図18に示した第10構成例の第1カバー部材82における第1内周リップ部IL1の定義について説明する。
【0145】
図20は、第1内周リップ部IL1の定義を説明するための図である。外周面82OSに形成された第1外周リップ部OL1の高さH1は、外周面82OSのうち外側に向かって突出していない円筒状の部分から、第1外周リップ部OL1の頂点までの外周面82OSの法線方向に沿った長さとして定義される。内周面82ISに形成された第1内周リップ部IL1の高さH2は、内周面82ISのうち内側に向かって突出していない円筒状の部分から、第1内周リップ部IL1の頂点までの内周面82ISの法線方向に沿った長さとして定義される。
【0146】
第1内周リップ部IL1の望ましい高さH2は、第1外周リップ部OL1の高さH1の5%以上30%以下の範囲であり、より望ましくは、高さH1の5%以上10%以下の範囲である。高さH2が高いほど、第1内周リップ部IL1が連通管81の外周面81Sに密着する密着力が高まるが、高さH2が高すぎると、第1カバー部材82に連通管81を挿入する際の抵抗が高くなり、挿入作業に手間取るため、上記範囲内に設定されることが望ましい。
【0147】
なお、第2カバー部材83に形成される第2内周リップ部IL2についてもその望ましい高さは上記した範囲である。
【0148】
次に、ジョイント部材の4つのサンプルを用意し、各サンプルの耐圧シール性を比較した。ここでは、各サンプルのジョイント部材を耐圧冶具にセットし、水没した状態でジョイント部材の連通管に高圧エアーを吹き込み、連通管と第1カバー部材との間から気泡が漏れ出すか否か(リークの有無)を確認した。
【0149】
サンプル1としては、外周面の研磨処理を行っていない連通管と、第1内周リップ部を具備していない第1カバー部材とを用意し、第1カバー部材に連通管を挿入したジョイント部材を適用した。
【0150】
サンプル2としては、外周面の研磨処理を行っていない連通管と、第1内周リップ部を具備した第1カバー部材とを用意し、第1カバー部材に連通管を挿入したジョイント部材を適用した。サンプル1とサンプル2とを比較した場合、第1内周リップ部を具備したサンプル2は、サンプル1と比較して、耐圧シール性がより高いことが確認された。
【0151】
サンプル3としては、外周面の研磨処理を行った連通管と、第1内周リップ部を具備していない第1カバー部材とを用意し、第1カバー部材に連通管を挿入したジョイント部材を適用した。
【0152】
サンプル4としては、外周面の研磨処理を行った連通管と、第1内周リップ部を具備した第1カバー部材とを用意し、第1カバー部材に連通管を挿入したジョイント部材を適用した。サンプル3とサンプル4とを比較した場合、第1内周リップ部を具備したサンプル4は、サンプル3と比較して、耐圧シール性がより高いことが確認された。また、サンプル2とサンプル4とを比較した場合、サンプル4は、サンプル2と比較して耐圧シール性がより高いことが確認された。なお、サンプル1とサンプル4とを比較した場合、サンプル4においてリークが発生する加圧力は、サンプル1においてリークが発生する加圧力の2倍以上であった。
【0153】
以上説明したように、本実施形態の他の構成例においても、流路の閉塞を抑制し、且つ、シール性に優れたジョイント部材及び燃料電池を提供できる。
【0154】
上述した実施形態の燃料電池は、各種の液体燃料を使用した場合に効果を発揮し、液体燃料の種類や濃度は限定されるものではない。本実施形態の燃料電池は、濃度が80wt%以上のメタノールを液体燃料として用いた場合に、その性能や効果を特に発揮することができる。したがって、実施形態は、メタノール濃度が80wt%以上のメタノール水溶液や純メタノールを液体燃料として用いた燃料電池に好適である。
【0155】
さらに、上述した実施形態は、本発明をセミパッシブ型の燃料電池に適用した場合について説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、内部気化型の純パッシブ型の燃料電池に対しても適用可能である。
【0156】
なお、本発明は液体燃料を使用した各種の燃料電池に適用することができる。また、燃料電池の具体的な構成や燃料の供給状態等も特に限定されるものではなく、膜電極接合体に供給される燃料の全てが液体燃料の蒸気、全てが液体燃料、または一部が液体状態で供給される液体燃料の蒸気等、種々形態に本発明を適用することができる。実施段階では本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。さらに、上記実施形態に示される複数の構成要素を適宜に組み合わせたり、また実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除したりする等、種々の変形が可能である。本発明の実施形態は本発明の技術的思想の範囲内で拡張もしくは変更することができ、この拡張、変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0157】
1…燃料電池 2…燃料供給源 5…燃料電池本体
7…ポンプ 8…バルブ 9…制御部
10…膜電極接合体
20…燃料排出口
21…アノード 22…アノード触媒層 23…アノードガス拡散層
24…カソード 25…カソード触媒層 26…カソードガス拡散層
27…電解質膜
50…容器 53…燃料注入口
70…ジョイント部材
71…連通管 71A…一端面 71B…他端面
71S…外周面 71SA…一端部 71SB…他端部
72…カバー部材 73…第1リップ部 74…第2リップ部
75…マーク
76…蛇腹部 76A…凸部 76B…凹部
80…ジョイント部材
81…連通管 81A…一端面 81B…他端面
81S…外周面 81SA…一端部 81SB…他端部
82…第1カバー部材 OL1…第1外周リップ部 IL1…第1内周リップ部
F1…第1フランジ部 CH1…第1ザグリ穴
FL1…第1フィルタ HL1…第1ホルダ
83…第2カバー部材 OL2…第2外周リップ部 IL2…第2内周リップ部
F2…第2フランジ部 CH2…第2ザグリ穴
FL2…第2フィルタ HL2…第2ホルダ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の剛体によって形成された連通管と、
前記連通管よりも弾性を有する管状の弾性体によって形成され前記連通管の外周面をカバーするとともに、前記連通管の外周面における両端部のうちの少なくとも一方の端部から外側に向かって突出したリング状のリップ部を有するカバー部材と、
を備えたことを特徴とするジョイント部材。
【請求項2】
第1部材の第1開口と第2部材の第2開口とにそれぞれ挿入されるジョイント部材であって、
管状の剛体によって形成された連通管と、
前記連通管よりも弾性を有する管状の弾性体によって形成され前記連通管の外周面をカバーするとともに、前記連通管の外周面における一端部から外側に向かって突出し且つ前記第1開口の内径よりも大きな外径を有するリング状の第1リップ部と、前記連通管の外周面における他端部から外側に向かって突出し且つ前記第2開口の内径よりも大きな外径を有するリング状の第2リップ部と、を有するカバー部材と、
を備えたことを特徴とするジョイント部材。
【請求項3】
燃料を収容するとともに、燃料を排出するための燃料排出口を有する燃料タンクと、
アノード、カソード、及び、前記アノードと前記カソードとの間に挟持された電解質膜を含んだ膜電極接合体と、前記燃料タンクから供給された燃料を注入するための燃料注入口と、を有する燃料電池本体と、
前記燃料排出口と前記燃料注入口とにそれぞれ挿入されたジョイント部材と、を備え、
前記ジョイント部材は、管状の剛体によって形成された連通管と、
前記連通管よりも弾性を有する管状の弾性体によって形成され前記連通管の外周面をカバーするとともに、前記連通管の外周面における一端部から外側に向かって突出し且つ前記燃料排出口の内面に密着したリング状の第1リップ部と、前記連通管の外周面における他端部から外側に向かって突出し且つ前記燃料注入口の内面に密着したリング状の第2リップ部と、を有するカバー部材と、
を備えたことを特徴とする燃料電池。
【請求項4】
前記ジョイント部材の中心軸に沿った前記連通管の長さは、前記カバー部材の長さよりも短いことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池。
【請求項5】
前記燃料排出口に挿入された前記連通管の一端面は、前記カバー部材によってカバーされたことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池。
【請求項6】
前記燃料注入口に挿入された前記連通管の他端面は、前記カバー部材によってカバーされたことを特徴とする請求項5に記載の燃料電池。
【請求項7】
前記カバー部材は、前記第1リップ部と前記第2リップ部との間に形成された蛇腹部を有することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池。
【請求項8】
前記燃料タンクは、前記燃料排出口の第1底面を有し、
前記燃料排出口に挿入された前記連通管の一端面と前記第1底面との間には、前記カバー部材が介在することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池。
【請求項9】
前記燃料電池本体は、前記燃料注入口の第2底面を有し、
前記燃料注入口に挿入された前記連通管の他端面と前記第2底面との間には、前記カバー部材が介在することを特徴とする請求項8に記載の燃料電池。
【請求項10】
前記燃料排出口及び前記燃料注入口に挿入される前のジョイント部材において、前記第1リップ部の外径は前記燃料排出口の内径より大きく、前記第2リップ部の外径は前記燃料注入口の内径よりも大きいことを特徴とする請求項3に記載の燃料電池。
【請求項11】
管状の剛体によって形成された連通管と、
前記連通管よりも弾性を有する管状の弾性体によって形成され前記連通管の外周面における一端部をカバーするとともに、外側に向かって突出したリング状の外周リップ部を有するカバー部材と、
を備えたことを特徴とするジョイント部材。
【請求項12】
燃料を収容するとともに、燃料を排出するための燃料排出口を有する燃料タンクと、
アノード、カソード、及び、前記アノードと前記カソードとの間に挟持された電解質膜を含んだ膜電極接合体と、前記燃料タンクから供給された燃料を注入するための燃料注入口と、を有する燃料電池本体と、
前記燃料排出口と前記燃料注入口とにそれぞれ挿入されたジョイント部材と、を備え、
前記ジョイント部材は、管状の剛体によって形成された連通管と、
前記連通管よりも弾性を有する管状の弾性体によって形成され前記連通管の外周面における一端部をカバーするとともに、外側に向かって突出し且つ前記燃料排出口の内面に密着したリング状の第1外周リップ部を有する第1カバー部材と、
前記連通管よりも弾性を有する管状の弾性体によって形成され前記連通管の外周面における他端部をカバーするとともに、前記第1カバー部材から離間し、外側に向かって突出し且つ前記燃料注入口の内面に密着したリング状の第2外周リップ部を有する第2カバー部材と、
を備えたことを特徴とする燃料電池。
【請求項13】
前記第1カバー部材は前記第1外周リップ部と対向する内側に向かって突出したリング状の第1内周リップ部を有し、
前記第2カバー部材は前記第2外周リップ部と対向する内側に向かって突出したリング状の第2内周リップ部を有することを特徴とする請求項12に記載の燃料電池。
【請求項14】
前記第1カバー部材は外側に向かって突出し且つ前記第1外周リップ部の外径よりも小さい外径のリング状の第1フランジ部を有し、
前記第2カバー部材は外側に向かって突出し且つ前記第2外周リップ部の外径よりも小さい外径のリング状の第2フランジ部を有することを特徴とする請求項12に記載の燃料電池。
【請求項15】
前記燃料タンクは前記燃料排出口の第1底面を有し、
前記燃料排出口に挿入された前記連通管の一端面は前記第1カバー部材によってカバーされ、
さらに、前記第1底面と前記第1カバー部材との間に配置された第1フィルタを備えたことを特徴とする請求項12に記載の燃料電池。
【請求項16】
さらに、前記第1カバー部材との間で前記第1フィルタを保持するカップ状の第1ホルダを備えたことを特徴とする請求項15に記載の燃料電池。
【請求項17】
前記燃料電池本体は前記燃料注入口の第2底面を有し、
前記燃料注入口に挿入された前記連通管の他端面は前記第2カバー部材によってカバーされ、
さらに、前記第2底面と前記第2カバー部材との間に配置された第2フィルタを備えたことを特徴とする請求項12に記載の燃料電池。
【請求項18】
さらに、前記第2カバー部材との間で前記第2フィルタを保持するカップ状の第2ホルダを備えたことを特徴とする請求項17に記載の燃料電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2011−117588(P2011−117588A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109526(P2010−109526)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000221339)東芝電子エンジニアリング株式会社 (238)
【Fターム(参考)】