説明

ジンバル機構、およびこのジンバル機構を備えた飛しょう体

【課題】飛しょう体の飛翔時に生じる共振を抑制できるジンバル機構、およびこのジンバル機構を備えた飛しょう体を提供することを課題とする。
【解決手段】
ジンバル機構1は、飛しょう体10のベース5に基端部を固定した支持アーム3、4、支持アーム3、4に回動自在に取り付けられた追跡装置2、およびこの追跡装置2と支持アーム3、4を囲むようにベース5に固定された外筒7を有する。そして、このジンバル機構1は、共振を抑制するため、支持アーム3、4と外筒7との間に共振抑制部材9を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、例えば、飛しょう体に目標物を追跡する追跡装置を組み込んだジンバル機構、およびこのジンバル機構を備えた飛しょう体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ジンバル機構として、例えば、目標物を追跡する飛しょう体の追跡装置を目標物に向けて指向させるように回動自在に支持するジンバル機構が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−341273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のジンバル機構は、飛しょう体の飛翔時に生じる振動に共振する場合がある。このようにジンバル機構が共振すると、追跡装置による目標物の追跡ができなくなる場合がある。
【0005】
よって、飛しょう体の飛翔時に生じる共振を抑制できるジンバル機構の開発が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るジンバル機構は、例えば、飛しょう体の本体に基端部を固定した支持部材、この支持部材に回動自在に取り付けられた回転体、およびこの回転体と支持部材を囲むように本体に固定された筐体を有する。そして、このジンバル機構は、共振を抑制するため、支持部材と筐体との間に共振抑制部材を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、比較例に係るジンバル機構を示す断面図である。
【図2】図2は、実施形態に係るジンバル機構を示す断面図である。
【図3】図3は、図2のジンバル機構を線III-IIIで切断した断面図である。
【図4】図4は、図2のジンバル機構を線IV-IVで切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
まず、実施形態について説明する前に、比較例として、飛しょう体の先端近くに組み込まれた一般的なジンバル機構11について、図1を参照して説明する。ここでは、飛しょう体の全体を図示する代りに、要部となる先端近くを部分的に拡大した断面図を示してある。この飛しょう体は、例えば、目標物を追跡する追跡装置を備えている。追跡装置は、飛しょう体のベース15に対してジンバル機構11を介して回動自在に支持されている。
【0009】
このジンバル機構11は、追跡装置12の図示左右端をそれぞれ回動自在に支持した2枚の支持アーム13、14を有する。支持アーム13、14の基端部13a、14aは、それぞれ、飛しょう体のベース15に対して立位状態で複数本のネジ21を介して固定されている。
【0010】
追跡装置12は、2つのベアリング16、16を介して、支持アーム13、14の内側に回動自在に取り付けられている。2つのベアリング16は、それぞれ、追跡装置12の端部に複数本のネジ22で締結固定された内輪16a、および支持アーム13、14の内側に複数本のネジ23で締結固定された外輪16bを有する。内輪16aの外周面上、および外輪16bの内周面上には、それぞれ複数個の小回転体16cを移動可能に収容した円環状の溝が形成されている。
【0011】
飛しょう体は、追跡装置12および2つの支持アーム13、14を囲むように、略円筒形の外筒17を有する。外筒17は、ベース15に固定されているとともに、図示下端近くで、複数本のネジ24を介して、2つの支持アーム13、14を締結固定している。また、外筒17の先端には、追跡装置12との間で目標物の追跡が可能な材料で形成されたドーム18が被せられている。
【0012】
飛しょう体は、比較的高速で飛ぶ目標物を追跡するため、自身も比較的高速で飛行する。このため、飛しょう体には、一定周波数の振動が生じ易い。つまり、追跡装置12を支持したジンバル機構11も振動し、場合によっては追跡装置12を正常に所望する角度に回動させることができなくなり、目標物の追跡ができなくなる可能性がある。
【0013】
このため、この比較例では、ジンバル機構11の2つの支持アーム13、14を飛しょう体の外殻をなす外筒17に固設することで、支持アーム13、14に振動を生じ難くしている。
【0014】
反面、この比較例のように、追跡装置12の両端をベアリング16を介して支持アーム13、14で支持する構造を採用した場合、各ベアリング16の内輪16aと外輪16bとの間の軸方向に関するズレを防止するため、支持アーム13、14同士の距離を高精度に設定する必要がある。
【0015】
しかし、支持アーム13、14を外筒17に締結固定すると、各ベアリング16の軸方向に応力が生じ、内輪16aと外輪16bとの間に過剰なズレを生じ易い。内輪16aと外輪16bに軸方向の過剰なズレを生じると、ベアリング16の回転トルクが変化してしまい、追跡装置12の正常な回動ができなくなる可能性がある。
【0016】
このため、この比較例では、一方(図示右側)の支持アーム14と外筒17との間の締結箇所に、シム19を挟み、各ベアリング16の軸方向に関するズレを補正するようにしている。しかし、このシム調整は、シム19の厚さを変えつつ数回行う必要があり、その度に、ジンバル機構11を外筒17内に配置してベース15に固定したり取り外したりする必要があり、シム調整に係る作業負担が大きく、その分、ジンバル機構11の製造コストが増大する。
【0017】
また、一方で、シム調整により各ベアリング16における軸方向のズレを補正して2つの支持アーム13、14を外筒17に締結固定した状態であっても、ジンバル機構11の共振周波数と同じ周波数で飛しょう体が振動した場合、共振によりジンバル機構11が大きく振動してしまう。
【0018】
このため、本発明者等は、シム調整の必要がなく、共振を抑制できるジンバル機構を開発した。以下、図2乃至図4を参照しながら実施形態について詳細に説明する。なお、ここでは、上述した比較例と同様に機能する構成要素には同一符号を付してその詳細な説明を省略する場合もある。
【0019】
図2には、実施形態に係るジンバル機構1を備えた飛しょう体10の先端近くを部分的に拡大した部分拡大断面図を示してある。また、図3には、図2の線III-IIIで飛しょう体10の先端部を切断した断面図を示してあり、図4には、図2の線IV-IVで飛しょう体10の先端部を切断した断面図を示してある。
【0020】
本実施形態のジンバル機構1は、追跡装置2(回転体)の両端をそれぞれ回動自在に支持した2枚の支持アーム3、4(支持部材)を有する。支持アーム3、4の基端部3a、4aは、それぞれ、飛しょう体10のベース5(本体)に対して立位状態で複数本のネジ21を介して締結固定されている。つまり、追跡装置2は、ベース5より飛しょう体10の先端方向(図2の上方)に離間して2つの支持アーム3、4によって回動自在に支持されている。
【0021】
より詳細には、追跡装置2は、2つのベアリング6、6を介して、支持アーム3、4の内側に回動自在に取り付けられている。2つのベアリング6は、それぞれ、追跡装置2の端部に複数本のネジ22で締結固定された内輪6a、および支持アーム3、4の内側に複数本のネジ23で締結固定された外輪6bを有する。内輪6aの外周面上、および外輪6bの内周面上には、それぞれ複数個の小回転体6cを移動可能に収容した円環状の溝が形成されている。
【0022】
なお、支持アーム3、4は、各ベアリング6の内輪6aと外輪6bとの間で軸方向に関するズレが無い状態で、ベース5に固定されている。つまり、2つの支持アーム3、4は、追跡装置2を挟んで、互いに平行に向き合う姿勢で、その間の距離を高精度に位置決めされた状態でベース5に固設されている。このため、本実施形態では、2つのベアリング6に軸方向の応力が作用することはなく、ベアリング6の回転トルクが変化することもない。
【0023】
また、飛しょう体10は、追跡装置2および2つの支持アーム3、4を囲むように、略円筒形の外筒7(筐体)を有する。外筒7は、その下端が、複数本のネジ25を介して、ベース5に固定されている。本実施形態では、外筒7は、2つの支持アーム3、4に対して非接触状態で取り付けられている。つまり、外筒7から支持アーム3、4に外力が作用することはない。また、外筒7の先端には、追跡装置2との間で目標物の追跡が可能な材料で形成されたドーム8が被せられている。
【0024】
さらに、本実施形態では、各支持アーム3、4と外筒7との間に、それぞれ、略円柱形の共振抑制部材9を備えている。共振抑制部材9として、例えば、シリコンゴムなどの弾性部材を用いることができるが、これ以外に、樹脂、金属、或いはこれらの混合物など、ジンバル機構1に固有の共振を抑制できる材質、厚さ、密度などを有するものであれば何でも使うことができる。
【0025】
本実施形態では、この共振抑制部材9は、追跡装置2の回転軸、すなわち各ベアリング6の回転軸上に配置されている。このため、支持アーム3、4の外側の面には、共振抑制部材9を収容配置するための円環状の突起3b、4bがそれぞれ突設されている。これにより、例えば、共振抑制部材9が振動により変形した場合など、共振抑制部材9のズレを防止することができる。
【0026】
以上のように、本実施形態によると、追跡装置2を回動自在に支持した支持アーム3、4を飛しょう体10のベース5に対して独立して固設したため、ベアリング6の軸方向に不所望な応力が生じることがなく、内輪6aと外輪6bとの間で相対的に軸方向のズレを生じることがなく、追跡装置2の回転トルクが変動することもない。言い換えると、本実施形態によると、支持アーム3、4のシム調整が不要となり、シム調整に係る手間を無くすことができ、その分、装置の製造コストを低減できる。
【0027】
また、本実施形態によると、支持アーム3、4と外筒7との間に、それぞれ、共振抑制部材9を設けたため、ジンバル機構1と同じ周波数で飛しょう体10が振動した場合であっても、ジンバル機構1が共振する不具合を抑制でき、追跡装置2を正常に回動せしめることができる。特に、本実施形態では、共振抑制部材9を追跡装置2の回転軸上に配置したため、各ベアリング6の内輪6aと外輪6bとの間の軸方向のズレを効果的に抑制でき、ジンバル機構1の回転トルクを長期にわたって一定に維持できる。
【0028】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0029】
例えば、上述した実施形態では、回転体として追跡装置2を回動自在に支持したジンバル機構1について説明したが、これに限らず、飛しょう体10に搭載された他の装置を支持するジンバル機構に本発明を適用しても良い。
【0030】
また、上述した実施形態では、追跡装置2を1軸で回動自在に支持したジンバル機構1について説明したが、これに限らず、ここでは説明を省略した2軸或いは3軸のジンバル機構に本発明を適用しても良い。
【符号の説明】
【0031】
1…ジンバル機構、2…追跡装置、3、4…支持アーム、5…ベース、6…ベアリング、6a…内輪、6b…外輪、7…外筒、8…ドーム、9…共振抑制部材、10…飛しょう体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転体と、
この回転体を回動自在に取り付けた支持部材と、
この支持部材の基端部を固定した本体と、
上記回転体および支持部材を囲むように上記本体に固定された筐体と、
上記支持部材と筐体との間に配置された共振抑制部材と、
を有するジンバル機構。
【請求項2】
上記支持部材は、上記回転体の回転軸の両端をそれぞれ回動自在に支持する2つの支持部材を有し、上記共振抑制部材は、上記各支持部材と上記筐体との間にそれぞれ設けられている請求項1のジンバル機構。
【請求項3】
上記共振抑制部材は、上記回転体の回転軸上に配置されている請求項1または請求項2のジンバル機構。
【請求項4】
上記支持部材と上記筐体は互いに非接触状態で上記本体に固定されている請求項1乃至請求項3のいずれかのジンバル機構。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかのジンバル機構を備えた飛しょう体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−97931(P2012−97931A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244303(P2010−244303)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】