説明

スイッチトキャパシタフィルタ及びスイッチトキャパシタフィルタの制御方法

【課題】簡易な構成により雑音を低減することができるスイッチトキャパシタフィルタ及びその制御方法を提供すること。
【解決手段】本発明では、演算増幅器AMPの反転入力は積分キャパシタC0の一端と、出力は積分キャパシタC0他端と接続される。スイッチトキャパシタは第1〜3の順に接続状態が移行する。第1の接続状態では、第1の端子は入力信号と、第2の端子は固定電圧と接続される。第2の接続状態では、第1の端子は固定電圧と、第2の端子は演算増幅器AMPの反転入力と接続される。第3の接続状態では、第1の端子は演算増幅器AMPの出力と、第2の端子は演算増幅器AMPの反転入力と接続される。第2及び第3の接続状態のスイッチトキャパシタが各1個以上存在する場合の第2の接続状態のスイッチトキャパシタの個数は常に同じであり、第3の接続状態のスイッチトキャパシタの個数も常に同じである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスイッチトキャパシタフィルタ及びスイッチトキャパシタフィルタの制御方法に関し、特に低雑音のスイッチトキャパシタフィルタ及びスイッチトキャパシタフィルタの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチトキャパシタを使用したスイッチトキャパシタフィルタでは、スイッチの熱雑音の低減化が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1では、演算増幅器や制御回路を追加することで、こうした雑音を低減することができるとしている。
【0003】
以下では、図を参照して、スイッチトキャパシタを使用した通常のスイッチトキャパシタフィルタの動作について説明する。Vin、Vout及びVnは連続時間の電圧を表し、Vin[i]、Vout[i]及びVn[i]は離散時間の電圧を表す。なお、入力信号及び雑音の電圧は、スイッチのON抵抗とキャパシタによるローパスフィルタ特性とを考慮した電圧とし、キャパシタにはこれらの電圧が全て掛かるものとして、キャパシタに蓄積される電荷を算出する。
【0004】
図11は、スイッチトキャパシタを使用した通常のスイッチトキャパシタフィルタ1000の回路図である。スイッチトキャパシタフィルタ1000は、積分キャパシタC0、スイッチトキャパシタSC1、スイッチトキャパシタSC2、演算増幅器AMP、入力端子IN及び出力端子OUTにより構成される。
【0005】
入力端子INと演算増幅器AMPの反転入力との間には、スイッチトキャパシタSC1が接続されている。また、演算増幅器AMPの反転入力と演算増幅器AMPの出力との間には積分キャパシタC0とスイッチトキャパシタSC2とが並列に接続されている。演算増幅器AMPの非反転入力は固定電圧と接続され、出力は出力端子OUTと接続される。入力端子INには入力信号Vinが入力され、出力端子OUTから出力信号Voutが出力される。
【0006】
スイッチトキャパシタSC1は、キャパシタC1及びスイッチS11〜S14により構成される。キャパシタC1の一端にはスイッチS11及びスイッチS13の一端が接続され、他端にはスイッチS12及びスイッチS14の一端が接続される。スイッチS11の他端は入力端子INと接続される。スイッチS12の他端は演算増幅器AMPの反転入力と接続される。スイッチS13及びスイッチS14の他端は固定電圧と接続される。
【0007】
スイッチトキャパシタSC2は、キャパシタC2及びスイッチS21〜S24により構成される。キャパシタC2の一端にはスイッチS21及びスイッチS23の一端が接続され、他端にはスイッチS22及びスイッチS24の一端が接続される。スイッチS21の他端は演算増幅器AMPの反転入力と接続される。スイッチS22の他端は出力端子OUTと接続される。スイッチS23及びスイッチS24の他端は固定電圧と接続される。
【0008】
次に、スイッチトキャパシタフィルタ1000の動作について説明する。スイッチトキャパシタフィルタ1000は、第1の期間で入力信号を電荷としてサンプリングし、第2の期間でサンプリングした電荷を積分する。ここで、第1の期間をサンプリング期間、第2の期間を積分期間と呼ぶ。図12は、スイッチトキャパシタフィルタ1000の動作タイミングを示す図である。図12に示すように、サンプリング期間Samと積分期間Outとが1サイクルとなり、このサイクルを繰り返す。各スイッチには、それぞれ制御信号が入力され、動作状態に応じて制御信号が切り替わることにより、スイッチのON/OFF制御が行われる。
【0009】
入力信号Vinについては、サンプリング期間終了時のサンプリング値をVin[i](iは整数)、Vin[i]をz変換したものをVin(z)、出力信号Voutについては、積分期間終了時のサンプリング値をVout[i]、Vout[i]をz変換したものをVout(z)とする。
【0010】
制御信号φ1は、スイッチS11、スイッチS14、スイッチS23及びスイッチS24に供給され、サンプリング期間のときにHighとなり、スイッチS11、スイッチS14、スイッチS23及びスイッチS24がONとなる。制御信号φ2は、スイッチS12、スイッチS13、スイッチS21及びスイッチS22に供給され、積分期間のときにHighとなり、スイッチS12、スイッチS13、スイッチS21及びスイッチS22がONとなる。
【0011】
続いて、入力信号の伝搬について説明する。図13A及び図13Bは、スイッチトキャパシタフィルタ1000における入力信号の伝搬を示す回路図である。まず、サンプリング期間ではスイッチS11、スイッチS14、スイッチS23及びスイッチS24がONとなり、それ以外のスイッチはOFFとなる。従って、スイッチトキャパシタフィルタ1000は、図13Aに示す接続となる。ここで、積分キャパシタC0に蓄積される電荷をQ0、キャパシタC1に蓄積される電荷をQ1、キャパシタC2蓄積される電荷をQ2とする。また、特に断らない限り、積分キャパシタC0、キャパシタC1及びキャパシタC2の容量値は、それぞれC0、C1及びC2である。サンプリング期間終了時に、キャパシタC1には入力信号Vin[i]の電荷がサンプリングされる。サンプリング期間終了時に、各キャパシタに蓄積されている電荷はz関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・Vout(z)・Z-1
Q1 = C1・Vin(z)
Q2 = 0
【0012】
積分期間では、スイッチS12、スイッチS13、スイッチS21及びスイッチS22がONとなり、それ以外のスイッチはOFFとなる。従って、スイッチトキャパシタフィルタ1000は、図13Bに示す接続となり、キャパシタC1に蓄積されていた入力信号の電荷は、積分キャパシタC0及びキャパシタC2に転送される。積分期間終了時に、各キャパシタに蓄積されている電荷はz関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・Vout(z)
Q1 = 0
Q2 = C2・Vout(z)

各キャパシタに蓄積されている、サンプリング期間終了時の電荷と、積分期間終了時の電荷と、について電荷の保存則を適用すると、以下の関係が成り立つ。

(C0 + C2)・Vout(z) = C0・Vout(z)・Z-1 + C1・Vin(z)
【0013】
従って、スイッチトキャパシタフィルタ1000における入力信号の出力端子への伝達関数は、式(1)で表される。

【数1】

すなわち、スイッチトキャパシタフィルタ1000は、入力信号に対して1次のローパスフィルタ特性を有する。
【0014】
次に、スイッチS23及びスイッチS24の雑音の伝搬について説明する。図14A及び図14Bは、スイッチトキャパシタフィルタ1000でのスイッチの雑音の伝搬を示す回路図である。ここで、スイッチS23及びスイッチS24の雑音として、スイッチS23及びスイッチS24と直列に電圧源Vnがあるものとする。また、スイッチの雑音の伝搬のみを示すため、入力信号は常に0とする。まずサンプリング期間では、図14Aに示す接続となり、サンプリング期間終了時に、キャパシタC2にはスイッチの雑音Vn[i]の電荷がサンプリングされる。ここで、雑音Vnについては,入力信号と同様、サンプリング期間または積分期間終了時のサンプリング値Vn[i]及びVn[i]をz変換したものを、Vn(z)とする。サンプリング期間終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・Vout(z)・Z-1
Q1 = 0
Q2 = C2・Vn(z)
【0015】
積分期間では、図14Bに示す接続となり、キャパシタC1に蓄積されていたスイッチの雑音の電荷は、積分キャパシタC0及びキャパシタC2に転送される。積分期間終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・Vout(z)
Q1 = 0
Q2 = C2・Vout(z)

各キャパシタに蓄積されている、サンプリング期間終了時の電荷と、積分期間終了時の電荷と、について電荷の保存則を適用すると、以下の関係が成り立つ。

(C0 + C2)・Vout(z) = C0・Vout(z)・Z-1 + C2・Vn(z)
【0016】
従って、スイッチトキャパシタフィルタ1000におけるスイッチS23及びスイッチS24の雑音の出力端子への伝達関数は、式(2)で表される。

【数2】

【0017】
次に、スイッチS12及びスイッチS13の雑音の伝搬について説明する。図15A及び図15Bは、スイッチトキャパシタフィルタ1000でのスイッチの雑音の伝搬を示す回路図である。ここで、スイッチS12及びスイッチS13の雑音として、スイッチS12及びスイッチS13と直列に電圧源Vnがあるものとする。また、スイッチの雑音の伝搬のみを示すため、入力信号は常に0とする。まずサンプリング期間では、図15Aに示す接続となり、キャパシタC1及びキャパシタC2に蓄積されていた電荷は放電され、積分キャパシタC0に蓄積されていた電荷はそのまま保持される。サンプリング期間終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・Vout(z)・Z-1
Q1 = 0
Q2 = 0
【0018】
積分期間では、図15Bに示す接続となり、サンプリング期間終了時にキャパシタC1にはスイッチS12及びスイッチS13の雑音Vn[i]の電荷がサンプリングされ、積分キャパシタC0とキャパシタC2にも合わせて同じだけの雑音の電荷が転送される。積分期間終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・Vout(z)
Q1 = -C1・Vn(z)
Q2 = C2・Vout(z)

各キャパシタに蓄積されている、サンプリング期間終了時の電荷と、積分期間終了時の電荷と、について電荷の保存則を適用すると、以下の関係が成り立つ。

(C0 + C2)・Vout(z) = C0・Vout(z)・Z-1 + C1・Vn(z)
【0019】
従って、スイッチトキャパシタフィルタ1000におけるスイッチの雑音の出力端子への伝達関数は、式(3)で表される。

【数3】

【0020】
次に、演算増幅器の雑音の伝搬について説明する。図16及び図16Bは、スイッチトキャパシタフィルタ1000における演算増幅器の雑音の伝搬を示す回路図である。ここで、演算増幅器の雑音として、演算増幅器の反転入力に電圧源Vnがあるものとする。また、演算増幅器の雑音の伝搬のみを示すために、入力信号は常に0とする。まずサンプリング期間では、図16Aに示す接続となり、キャパシタC1及びキャパシタC2に蓄積されていた電荷は放電され、積分キャパシタC0に蓄積されていた電荷はそのまま保持される。サンプリング期間終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・{Vout(z) - Vn(z)}・Z-1
Q1 = 0
Q2 = 0
【0021】
積分期間では、図16Bに示す接続となり、積分期間終了時に、キャパシタC1には演算増幅器の雑音Vn[i]の電荷がサンプリングされ、積分キャパシタC0とキャパシタC2にも合わせて同じだけの雑音の電荷が転送される。積分期間終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・{Vout(z) - Vn(z)}
Q1 = -C1・Vn(z)
Q2 = C2・{Vout(z) - Vn(z)}

各キャパシタに蓄積されている、サンプリング期間終了時の電荷と、積分期間終了時の電荷と、について電荷の保存則を適用すると、以下の関係が成り立つ。

(C0 + C2)・{Vout(z) - Vn(z)} = C0・{Vout(z) - Vn(z)}・Z-1 + C1・Vn(z)
【0022】
従って、スイッチトキャパシタフィルタ1000における演算増幅器の雑音の出力端子への伝達関数は、式(4)で表される。

【数4】

【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0237694号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
特許文献1のように演算増幅器や制御回路を追加する手法では、演算増幅器や制御回路は複雑な構成を有するため、スイッチトキャパシタフィルタの専有面積が大きくなってしまう。そのため、雑音が低減できたとしても適用対象が限定される。また、コスト低減の観点からも不利である。さらに、スイッチトキャパシタフィルタの専有面積を小さくしようとすると、十分な機能を有する演算増幅器や制御回路の構成することが困難となり、十分な雑音低減効果を実現することができない。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の一態様であるスイッチトキャパシタフィルタは、入力信号を積分する積分キャパシタと、少なくとも反転入力が前記積分キャパシタの一端と接続され、出力が前記積分キャパシタの他端と接続される演算増幅器と、複数のスイッチにより少なくとも第1〜3の接続状態に切り替わる複数のスイッチトキャパシタと、を少なくとも備え、前記複数のスイッチトキャパシタのそれぞれは、第1の端子及び第2の端子を有するキャパシタを少なくとも備え、前記複数のスイッチトキャパシタのそれぞれは、前記第1の接続状態から前記第2の接続状態を経て前記第3の接続状態に移行し、前記第1の接続状態では、前記第1の端子は入力信号と接続され、前記第2の端子は第1の電圧と接続され、前記第2の接続状態では、前記第1の端子は第2の電圧と接続され、前記第2の端子は前記演算増幅器の前記反転入力と接続され、前記第3の接続状態では、前記第1の端子は前記演算増幅器の前記出力と接続され、前記第2の端子は前記演算増幅器の前記反転入力と接続され、 前記第2の接続状態又は前記第3の接続状態の前記スイッチトキャパシタが1個以上存在する場合には、前記第2の接続状態及び前記第3の接続状態の前記スイッチトキャパシタは、それぞれ1個以上存在し、前記第2の接続状態の前記スイッチトキャパシタが1個以上存在する場合の当該第2の接続状態の前記スイッチトキャパシタの個数は常に同じであり、前記第3の接続状態の前記スイッチトキャパシタが1個以上存在する場合の当該第3の接続状態の前記スイッチトキャパシタの個数は常に同じであるものである。
【0026】
本発明の一態様であるスイッチトキャパシタフィルタでは、前記第1の接続状態において、前記複数のスイッチトキャパシタのいずれかの前記キャパシタには、入力信号が電荷(信号電荷)としてサンプリングされる。その後の前記第2の接続状態においては、前記信号電荷が前記積分キャパシタ及び前記第3の接続状態である他のスイッチトキャパシタの前記キャパシタに転送される。また、前記信号電荷を転送した当該キャパシタには、前記複数のスイッチの雑音及び前記演算増幅器の雑音が電荷(雑音電荷)としてサンプリングされる。それとともに、前記積分キャパシタ及び前記第3の接続状態である他のスイッチトキャパシタの前記キャパシタの前記演算増幅器の前記反転入力側端には、当該キャパシタの前記演算増幅器の反転入力側端に蓄積された雑音電荷とは逆符号の電荷が蓄積される。また、前記積分キャパシタ及び前記第3の接続状態である他のスイッチトキャパシタの前記キャパシタの前記演算増幅器の前記出力側端には、前記反転入力側端とは逆符号の電荷が蓄積される。その後の前記第3の接続状態においては、当該キャパシタの前記第1の端子は前記演算増幅器の前記出力と接続され、前記第2の端子は前記演算増幅器の前記反転入力と接続される。これにより、前記第3の接続状態において前記積分キャパシタに転送される雑音電荷は、前記第2の接続状態において前記積分キャパシタに転送された雑音電荷に対して逆符号となる。従って、前記積分キャパシタにおける雑音電荷はキャンセルされる。また、本構成では、前記第2の接続状態で入力信号をサンプリングした電荷を転送することにより、転送元のスイッチトキャパシタを放電させる。よって、通常のスイッチトキャパシタフィルタのように、放電のみを目的とする接続状態を有しない。従って、放電を目的とする接続状態において雑音電荷がサンプリングされることを防ぐことができる。
【0027】
本発明の一態様であるスイッチトキャパシタフィルタの制御方法は、複数のスイッチにより接続状態が切り替わる複数のスイッチトキャパシタのそれぞれに設けられたキャパシタの第1の端子を入力信号と接続し、第2の端子を第1の電圧と接続して第1の接続状態を形成し、前記第1の端子を、第2の電圧と接続し、前記第2の端子を、入力信号を積分する積分キャパシタの一端と接続される演算増幅器の反転入力と接続して、第2の接続状態を形成し、前記スイッチトキャパシタの前記第1の端子を、前記積分キャパシタの他端と接続される前記演算増幅器の出力と接続し、前記第2の端子を、前記演算増幅器の前記反転入力と接続して、第3の接続状態を形成し、前記第2の接続状態又は前記第3の接続状態の前記スイッチトキャパシタを1個以上形成する場合には、前記第2の接続状態及び前記第3の接続状態の前記スイッチトキャパシタを、それぞれ1個以上形成し、前記第2の接続状態を1個以上形成する場合には、常に同じ個数の当該第2の接続状態を形成し、前記第3の接続状態を1個以上形成する場合には、常に同じ個数の当該第3の接続状態を形成するものである。
【0028】
本発明の一態様であるスイッチトキャパシタフィルタの制御方法では、前記第1の接続状態を形成して、前記複数のスイッチトキャパシタのいずれかの前記キャパシタに、入力信号を電荷(信号電荷)としてサンプリングする。その後、前記第2の接続状態を形成して、前記信号電荷を前記積分キャパシタ及び前記第3の接続状態にある他のスイッチトキャパシタの前記キャパシタに転送する。また、前記信号電荷を転送した当該キャパシタには、前記複数のスイッチの雑音及び前記演算増幅器の雑音の電荷(雑音電荷)がサンプリングされる。それとともに、前記積分キャパシタ及び前記第3の接続状態にある他のスイッチトキャパシタの前記キャパシタの前記演算増幅器の前記反転入力側端には、当該キャパシタの前記演算増幅器の反転入力側端に蓄積された雑音電荷とは逆符号の電荷が蓄積される。また、前記積分キャパシタ及び前記第3の接続状態にある他のスイッチトキャパシタの前記キャパシタの前記演算増幅器の前記出力側端には、前記反転入力側端とは逆符号の電荷が蓄積される。その後、前記第3の接続状態を形成し、当該キャパシタの前記第1の端子を前記演算増幅器の前記出力と接続し、前記第2の端子を前記演算増幅器の前記反転入力と接続する。これにより、前記第3の接続状態を形成することにより前記積分キャパシタに転送される雑音電荷は、前記第2の接続状態を形成することにより前記積分キャパシタに転送された雑音電荷に対して逆符号となる。従って、前記積分キャパシタにおける雑音電荷はキャンセルされる。また、本構成では、前記第2の接続状態を形成して入力信号をサンプリングした電荷を転送することにより、転送元のスイッチトキャパシタを放電させる。よって、通常のスイッチトキャパシタフィルタのように、放電のみを目的とする接続状態を有しない。従って、放電を目的とする接続状態において雑音電荷がサンプリングされることを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、簡易な構成により雑音を低減することができるスイッチトキャパシタフィルタ及びスイッチトキャパシタフィルタの制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】実施の形態1にかかるスイッチトキャパシタフィルタの回路図である。
【図2】実施の形態1にかかるスイッチトキャパシタフィルタの動作タイミングを示す図である。
【図3A】実施の形態1にかかるスイッチトキャパシタフィルタのサンプリング期間Aにおける入力信号の伝搬を示す回路図である。
【図3B】実施の形態1にかかるスイッチトキャパシタフィルタの積分期間Aにおける入力信号の伝搬を示す回路図である。
【図3C】実施の形態1にかかるスイッチトキャパシタフィルタのサンプリング期間Bにおける入力信号の伝搬を示す回路図である。
【図3D】実施の形態1にかかるスイッチトキャパシタフィルタの積分期間Bにおけるにおける入力信号の伝搬を示す回路図である。
【図4A】実施の形態1にかかるスイッチトキャパシタフィルタのサンプリング期間Aにおけるスイッチの雑音の伝搬を示す回路図である。
【図4B】実施の形態1にかかるスイッチトキャパシタフィルタの積分期間Aにおけるスイッチの雑音の伝搬を示す回路図である。
【図4C】実施の形態1にかかるスイッチトキャパシタフィルタのサンプリング期間Bにおけるスイッチの雑音の伝搬を示す回路図である。
【図4D】実施の形態1にかかるスイッチトキャパシタフィルタの積分期間Bにおけるスイッチの雑音の伝搬を示す回路図である。
【図5A】実施の形態1にかかるスイッチトキャパシタフィルタのサンプリング期間Aにおける演算増幅器の雑音の伝搬を示す回路図である。
【図5B】実施の形態1にかかるスイッチトキャパシタフィルタの積分期間Aにおける演算増幅器の雑音の伝搬を示す回路図である。
【図5C】実施の形態1にかかるスイッチトキャパシタフィルタのサンプリング期間Bにおける演算増幅器の雑音の伝搬を示す回路図である。
【図5D】実施の形態1にかかるスイッチトキャパシタフィルタの積分期間Bにおける演算増幅器の雑音の伝搬を示す回路図である。
【図6】実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタの回路図である。
【図7】実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタの動作タイミングを示す図である。
【図8A】実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタのサンプリング期間Aにおける入力信号の伝搬を示す回路図である。
【図8B】実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタの積分期間Aにおける入力信号の伝搬を示す回路図である。
【図8C】実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタのサンプリング期間Bにおける入力信号の伝搬を示す回路図である。
【図8D】実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタの積分期間Bにおける入力信号の伝搬を示す回路図である。
【図8E】実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタのサンプリング期間Cにおける入力信号の伝搬を示す回路図である。
【図8F】実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタの積分期間Cにおける入力信号の伝搬を示す回路図である。
【図9A】実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタのサンプリング期間Aにおけるスイッチの雑音の伝搬を示す回路図である。
【図9B】実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタの積分期間Aにおけるスイッチの雑音の伝搬を示す回路図である。
【図9C】実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタのサンプリング期間Bにおけるスイッチの雑音の伝搬を示す回路図である。
【図9D】実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタの積分期間Bにおけるスイッチの雑音の伝搬を示す回路図である。
【図9E】実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタのサンプリング期間Cにおけるスイッチの雑音の伝搬を示す回路図である。
【図9F】実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタの積分期間Cにおけるスイッチの雑音の伝搬を示す回路図である。
【図10A】実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタのサンプリング期間Aにおける演算増幅器の雑音の伝搬を示す回路図である。
【図10B】実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタの積分期間Aにおける演算増幅器の雑音の伝搬を示す回路図である。
【図10C】実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタのサンプリング期間Bにおける演算増幅器の雑音の伝搬を示す回路図である。
【図10D】実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタの積分期間Bにおける演算増幅器の雑音の伝搬を示す回路図である。
【図10E】実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタのサンプリング期間Cにおける演算増幅器の雑音の伝搬を示す回路図である。
【図10F】実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタの積分期間Cにおける演算増幅器の雑音の伝搬を示す回路図である。
【図11】通常のスイッチトキャパシタフィルタの回路図である。
【図12】通常のスイッチトキャパシタフィルタの動作タイミングを示す図である。
【図13A】通常のスイッチトキャパシタフィルタのサンプリング期間における入力信号の伝搬を示す回路図である。
【図13B】通常のスイッチトキャパシタフィルタの積分期間における入力信号の伝搬を示す回路図である。
【図14A】通常のスイッチトキャパシタフィルタのサンプリング期間におけるスイッチの雑音の伝搬を示す回路図である。
【図14B】通常のスイッチトキャパシタフィルタの積分期間におけるスイッチの雑音の伝搬を示す回路図である。
【図15A】通常のスイッチトキャパシタフィルタのサンプリング期間におけるスイッチの雑音の伝搬を示す回路図である。
【図15B】通常のスイッチトキャパシタフィルタの積分期間におけるスイッチの雑音の伝搬を示す回路図である。
【図16A】通常のスイッチトキャパシタフィルタのサンプリング期間における演算増幅器の雑音の伝搬を示す回路図である。
【図16B】通常のスイッチトキャパシタフィルタの積分期間における演算増幅器の雑音の伝搬を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。以下では、Vin、Vout及びVnは連続時間の電圧を表し、Vin[i]、VinA[i]、VinB[i]、Vout[i]、VoutA[i]、VoutB[i]、Vn[i]、VnA[i]及びVnB[i]は離散時間の電圧を表す。なお、入力信号及び雑音の電圧は、スイッチのON抵抗とキャパシタによるローパスフィルタ特性を考慮した電圧とし、キャパシタには、これらの電圧が全て掛かるものとして、キャパシタに蓄積される電荷を算出する。
【0032】
図1は、実施の形態1にかかるスイッチトキャパシタフィルタ100の回路図である。実施の形態1にかかるスイッチトキャパシタフィルタ100は、積分キャパシタC0、スイッチトキャパシタSC1、スイッチトキャパシタSC2、演算増幅器AMP、入力端子IN及び出力端子OUTにより構成される。入力端子INには入力Vinが入力され、出力端子OUTから出力Voutが出力される。
【0033】
積分キャパシタC0は、演算増幅器AMPの反転入力と演算増幅器AMPの出力との間に接続される。演算増幅器AMPの非反転入力は固定電圧と接続され、演算増幅器AMPの出力は出力端子OUTと接続される。
【0034】
スイッチトキャパシタSC1は、キャパシタC1及びスイッチS11〜S15により構成される。スイッチS11〜S15には、例えばMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が用いられる。キャパシタC1の一端にはスイッチS11、スイッチS13及びスイッチS15の一端が接続される。スイッチS11の他端は入力端子INと接続される。スイッチS13の他端は固定電圧と接続される。スイッチS15の他端は積分キャパシタC0の演算増幅器AMPの出力側の端子と接続される。キャパシタC1の他端にはスイッチS12及びスイッチS14の一端が接続される。スイッチS12の他端は積分キャパシタC0の演算増幅器AMPの反転入力側の端子と接続される。スイッチS14の他端は固定電圧と接続される。
【0035】
スイッチトキャパシタSC2は、スイッチトキャパシタSC1と同様の構成を有する。スイッチトキャパシタSC2は、キャパシタC2及びスイッチS21〜S25により構成される。スイッチS21〜S25には、例えばMOSFETが用いられる。キャパシタC2の一端にはスイッチS21、スイッチS23及びスイッチS25の一端が接続される。スイッチS21の他端は入力端子INと接続される。スイッチS23の他端は固定電圧と接続される。スイッチS25の他端は積分キャパシタC0の演算増幅器AMPの出力側の端子と接続される。キャパシタC2の他端にはスイッチS22及びスイッチS24の一端が接続される。スイッチS22の他端は積分キャパシタC0の演算増幅器AMPの反転入力側の端子と接続される。スイッチS24の他端は固定電圧と接続される。
【0036】
次に、スイッチトキャパシタフィルタ100の動作について説明する。スイッチトキャパシタフィルタ100は、第1の期間で入力信号を電荷としてサンプリングし、第2の期間でサンプリングした電荷を積分する。ここで、第1の期間をサンプリング期間、第2の期間を積分期間と呼ぶ。スイッチトキャパシタフィルタ100は、サンプリング期間A→→積分期間A→サンプリング期間B→積分期間Bを1サイクルとする。図2は、スイッチトキャパシタフィルタ100の動作タイミングを示す図である。図2に示すように、サンプリング期間A(SA)、積分期間A(OA)、サンプリング期間B(SB)、積分期間B(OB)からなるサイクルを繰り返す。各スイッチには、それぞれ制御信号が入力され、動作状態に応じて制御信号が切り替わることにより、スイッチのON/OFF制御が行われる。
【0037】
入力信号Vinについては、サンプリング期間A及びサンプリング期間B終了時のサンプリング値をVin[i](iは整数)、出力信号Voutについては、積分期間A及び積分期間B終了時のサンプリング値をVout[i]とする。また、実施の形態1では、サンプリング期間A及び積分期間Aによる伝達関数と、サンプリング期間B及び積分期間Bによる伝達関数が異なるため、サンプリング期間A終了時の入力信号をVinA[i]、積分期間A終了時の出力信号をVoutA[i]、サンプリング期間B終了時の入力信号をVinB[i]、積分期間B終了時の出力信号をVoutB[i]とする。なお、上記は、サンプリング期間A終了時及び積分期間A終了時を2j−1番目(jは整数)のサンプリング、サンプリング期間B終了時及び積分期間B終了時を2j番目のサンプリングとすると、以下の式で表される。

VinA[2j-1] = Vin[2j-1]
VinA[2j] = 0
VinB[2j-1] = 0
VinB[2j] = Vin[2j]
Vin[i] = VinA[i] + VinB[i]
VoutA[2j-1] = Vout[2j-1]
VoutA[2j] = 0
VoutB[2j-1] = 0
VoutB[2j] = Vout[2j]
Vout[i] = VoutA[i] + VoutB[i]

また、Vin[i]、VinA[i]、VinB[i]、Vout[i]、VoutA[i]、VoutB[i]をz変換したものを、それぞれVin(z)、VinA(z)、VinB(z)、Vout(z)、VoutA(z)、VoutB(z)とする。
【0038】
雑音Vnについては、サンプリング期間または積分期間終了時のサンプリング値をVn[i](iは整数)、Vn[i]をz変換したものをVn(z)とする。また、実施の形態1では、サンプリング期間A及び積分期間Aによる伝達関数と、サンプリング期間B及び積分期間Bによる伝達関数が異なるため、サンプリング期間Aまたは積分期間A終了時の雑音をVnA[i]、サンプリング期間Bまたは積分期間B終了時の雑音をVnB[i]とする。なお、上記は、サンプリング期間A終了時及び積分期間A終了時を2j−1番目(jは整数)のサンプリング、サンプリング期間B終了時及び積分期間B終了時を2j番目のサンプリングとすると、以下の式で表される。

VnA[2j-1] = Vn[2j-1]
VnA[2j] = 0
VnB[2j-1] = 0
VnB[2j] = Vin[2j]
Vn[i] = VnA[i] + VnB[i]

また、Vn[i]、VnA[i]、VnB[i]をz変換したものを、それぞれVn(z)、VnA(z)、VnB(z)とする。
【0039】
制御信号φ1Aは、スイッチS11及びスイッチS14に供給され、サンプリング期間AのときにHighとなり、スイッチS11及びスイッチS14がONとなる。制御信号φ2Aは、スイッチS13及びスイッチS25に供給され、積分期間AのときにHighとなり、スイッチS13及びスイッチS25がONとなる。制御信号φ1Bは、スイッチS21及びスイッチS24に供給され、サンプリング期間BのときにHighとなり、スイッチS21及びスイッチS24がONとなる。制御信号φ2Bは、スイッチS23及びスイッチS15に供給され、積分期間BのときにHighとなり、スイッチS23及びスイッチS15がONとなる。制御信号φ2は、スイッチS12及びスイッチS22に供給され、積分期間A及び積分期間BのときにHighとなり、スイッチS12及びスイッチS22がONとなる。
【0040】
続いて、入力信号の伝搬について説明する。図3A〜Dは、スイッチトキャパシタフィルタ100における入力信号の伝搬を示す回路図である。まず、サンプリング期間Aでは、スイッチS11及びスイッチS14がONとなり、それ以外のスイッチはOFFとなる。従って、スイッチトキャパシタフィルタ100は、図3Aに示す接続となる。ここで、積分キャパシタC0に蓄積される電荷をQ0、キャパシタC1に蓄積される電荷をQ1、キャパシタC2蓄積される電荷をQ2とする。また、特に断らない限り、積分キャパシタC0、キャパシタC1及びキャパシタC2の容量値は、それぞれC0、C1及びC2である。サンプリング期間A終了時に、キャパシタC1に入力信号VinA[2j−1]の電荷がサンプリングされる。サンプリング期間A終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・VoutB(z)・Z-1
Q1 = C1・VinA(z)
Q2 = 0
【0041】
積分期間Aでは、スイッチS12、スイッチS13、スイッチS22及びスイッチS25がONとなり、それ以外のスイッチはOFFとなる.従って、スイッチトキャパシタフィルタ100は、図3Bに示す接続となり、キャパシタC1に蓄積されていた入力信号の電荷は、積分キャパシタC0及びキャパシタC2に転送される。積分期間A終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・VoutA(z)
Q1 = 0
Q2 = C2・VoutA(z)

各キャパシタに蓄積されている、サンプリング期間A終了時の電荷と、積分期間A終了時の電荷と、について電荷の保存則を適用すると、以下の式(5)が成り立つ。

(C0 + C2)・VoutA(z) = C0・VoutB(z)・Z-1 + C1・VinA(z) ・・・(5)
【0042】
サンプリング期間Bでは、スイッチS21及びスイッチS24がONとなり、それ以外のスイッチはOFFとなる。従って、スイッチトキャパシタフィルタ100は、図3Cに示す接続となり、サンプリング期間B終了時に、キャパシタC2に入力信号VinB[2j]の電荷がサンプリングされる。サンプリング期間B終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・VoutA(z)・Z-1
Q1 = 0
Q2 = C2・VinB(z)
【0043】
積分期間Bでは、スイッチS12、スイッチS15、スイッチS22及びスイッチS23がONとなり、それ以外のスイッチはOFFとなる。従って、スイッチトキャパシタフィルタ100は、図3Dに示す接続となり、キャパシタC2に蓄積されていた入力信号の電荷は、積分キャパシタC0及びキャパシタC1に転送される。積分期間B終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・VoutB(z)
Q1 = C1・VoutB(z)
Q2 = 0

各キャパシタに蓄積されている、サンプリング期間B終了時の電荷と、積分期間B終了時の電荷と、について電荷の保存則を適用すると、以下の式(6)が成り立つ。

(C0 + C1)・VoutB(z) = C0・VoutA(z)・Z-1 + C2・VinB(z) ・・・(6)
【0044】
ここで、キャパシタC1とキャパシタC2の容量値が等しい(C1=C2)とすると、
式(5)及び式(6)より、スイッチトキャパシタ100における入力信号の出力端子への伝達関数は、式(7)で表される。

【数5】

よって、スイッチトキャパシタフィルタ100は、入力信号に対して1次のローパスフィルタ特性を有する。なお、式(1)においてC1=C2とすれば、式(7)と式(1)とは同じ式となる。よって、C1=C2の条件では、スイッチトキャパシタフィルタ100の入力信号に対する伝達特性は、スイッチトキャパシタフィルタ1000の入力信号に対する伝達特性と同一である。
【0045】
次に、スイッチS12及びスイッチS13の雑音の伝搬について説明する。図4A〜Dは、スイッチトキャパシタフィルタ100でのスイッチの雑音の伝搬を示す回路図である。ここで、スイッチS12及びスイッチS13の雑音として、スイッチS12及びスイッチS13と直列に電圧源Vnがあるものとする。また、スイッチの雑音の伝搬のみを示すために、入力信号は常に0とする。まず、サンプリング期間Aでは、図4Aに示す接続となり、キャパシタC1に蓄積されていた電荷は放電され、積分キャパシタC0及びキャパシタC2に蓄積されていた電荷はそのまま保持される。なお、積分キャパシタC0及びキャパシタC2に蓄積されていた電荷とは、積分期間B終了時(図4D)の電荷のことである。サンプリング期間A終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・VoutB(z)・Z-1
Q1 = 0
Q2 = 0
【0046】
積分期間Aでは、図4Bに示す接続となり、積分期間Aの終了時に、キャパシタC1にスイッチS12及びスイッチS13の雑音VnA[2j−1]の電荷がサンプリングされ、積分キャパシタC0とキャパシタC2にも合わせて同じだけの雑音の電荷が転送される。積分期間Aの終了時に各キャパシタに蓄積されている雑音電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・VoutA(z)
Q1 = -C1・VnA(z)
Q2 = C2・VoutA(z)

各キャパシタに蓄積されている、サンプリング期間A終了時の電荷と、積分期間A終了時の電荷と、について電荷の保存則を適用すると、以下の式(8)が成り立つ。

(C0 + C2)・VoutA(z) = C0・VoutB(z)・Z-1 + C1・VnA(z) ・・・(8)
【0047】
サンプリング期間Bでは、図4Cに示す接続となり、キャパシタC2に蓄積されていた電荷は放電され、積分キャパシタC0、キャパシタC1に蓄積されていた電荷はそのまま保持される。このように、積分期間A終了時に、キャパシタC1にサンプリングされた雑音の電荷はそのまま保持される。サンプリング期間B終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・VoutA(z)・Z-1
Q1 = -C1・VnA(z)・Z-1
Q2 = 0
【0048】
積分期間Bでは、図4Dに示す接続となり、積分期間A終了時にキャパシタC1にサンプリングされて保持されてきた雑音の電荷は、キャパシタC1と積分キャパシタC0に分配される。なお、積分キャパシタC0に分配される雑音の電荷は、積分期間A終了時とは逆符号であり、積分期間A終了時に積分キャパシタC0で積分された雑音の電荷をキャンセルする。積分期間B終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・VoutB(z)
Q1 = C1・VoutB(z)
Q2 = 0

各キャパシタに蓄積されている、サンプリング期間B終了時の電荷と、積分期間B終了時の電荷と、について電荷の保存則を適用すると、以下の式(9)が成り立つ。

(C0 + C1)・VoutB(z) = C0・VoutA(z)・Z-1 - C1・VnA(z)・Z-1 ・・・(9)
【0049】
従って、キャパシタC1とキャパシタC2の容量値が等しい(C1=C2)とすると、式(8)及び式(9)より、スイッチトキャパシタ100におけるスイッチS12及びスイッチS13の雑音の出力端子への伝達関数は、式(10)で表される.

【数6】

よって、スイッチトキャパシタフィルタ100では、スイッチS12及びスイッチS13の雑音には1次の微分係数(1−Z−1)が掛かって出力される。よって、スイッチトキャパシタフィルタ100は、スイッチS12及びスイッチS13の雑音の低周波成分を減衰させることができる。ここで、微分係数(1−Z−1)は直流で0であり、ナイキスト周波数で2となる。
【0050】
また、上記ではスイッチS12及びスイッチS13の雑音の伝搬について述べたが、 これはスイッチS22及びスイッチS23の雑音の伝搬についても同様である。
【0051】
ここで、スイッチトキャパシタフィルタ100及びスイッチトキャパシタフィルタ1000のスイッチの雑音の伝搬量について比較を行う。なお、スイッチトキャパシタフィルタ1000については、入力信号の出力への伝達関数がスイッチトキャパシタフィルタ100と同じになるように、C1=C2とする。比較の対象となるスイッチの雑音は、以下の通りである。

スイッチトキャパシタフィルタ100:
・スイッチS12及びスイッチS13の雑音 → 式(10)
・スイッチS22及びスイッチS23の雑音 → 式(10)

スイッチトキャパシタフィルタ1000:
・スイッチS12及びスイッチS13の雑音 → 式(2)
・スイッチS23及びスイッチS24の雑音 → 式(3)

なお、これ以外のスイッチの雑音の伝搬量については、スイッチトキャパシタフィルタ100とスイッチトキャパシタフィルタ1000とで同じである。
【0052】
スイッチの雑音VnはスイッチのON抵抗に起因する雑音である。この雑音に対して、スイッチのON抵抗とキャパシタによるローパスフィルタ特性及びサンプリングによる折り返しを考慮すると、キャパシタにサンプリングされるナイキスト周波数までの全帯域の雑音はkT/Cで決定され、その周波数分布はほぼ均一となる。ここで、kはボルツマン定数、Tは温度、Cは容量値を表す。なお、式(10)の雑音であるVnA(z)は、VnA[2j−1]=Vn[2j−1]、VnA[2j]=0という雑音であるが、ナイキスト周波数までの全帯域の雑音で考えると、Vn(z)とほぼ同じ雑音であると考えられる。
【0053】
また、各スイッチの雑音はスイッチのON抵抗に起因する雑音であるため相関が無い。よって、雑音電圧の和は,各雑音電圧の2乗和の平方根となる。
【0054】
以上より、スイッチトキャパシタフィルタ100及びスイッチトキャパシタフィルタ1000の、対象となるスイッチの雑音の伝搬量は以下の関係を持つ。

(スイッチトキャパシタフィルタ100の伝搬量):(スイッチトキャパシタフィルタ1000の伝搬量)
= √2・(1−z−1):√2

これより、直流では0:√2、(ナイキスト周波数/3)では√2:√2、ナイキスト周波数では2√2:√2となる。(ナイキスト周波数/3)以上の周波数では、スイッチトキャパシタフィルタ100の伝搬量のほうが大きくなるが、(ナイキスト周波数/3)以上の周波数成分については、ローパスフィルタが掛かるため影響は小さい。従って、本構成によれば、スイッチトキャパシタを適切に接続することで、演算増幅器や制御回路を追加することなく、スイッチの雑音を低減できるスイッチトキャパシタフィルタを実現することができる。
【0055】
次に、演算増幅器の雑音の伝搬について説明する。図5A〜Dは、スイッチトキャパシタフィルタ100における演算増幅器の雑音の伝搬を示す回路図である。ここで、演算増幅器の雑音として、演算増幅器の反転入力に電圧源Vnがあるものとする。また、演算増幅器の雑音の伝搬のみを示すために、入力信号は常に0とする。まずサンプリング期間Aでは、図5Aに示す接続となり、キャパシタC1に蓄積されていた電荷は放電され、積分キャパシタC0、キャパシタC2に蓄積されていた電荷はそのまま保持される。なお、積分キャパシタC0、キャパシタC2に蓄積されていた電荷とは、積分期間B終了時(図5D)の電荷のことである。特に、キャパシタC2に蓄積されている電荷は、積分期間B終了時にサンプリングされた雑音の電荷であり、このように、そのまま保持される。サンプリング期間A終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・{VoutB(z) - VnB(z)}・Z-1
Q1 = 0
Q2 = -C2・VnB(z)・Z-1
【0056】
積分期間Aでは、図5Bに示す接続となり、積分期間A終了時に、キャパシタC1に演算増幅器の雑音VnA[2j−1]の電荷がサンプリングされ、積分キャパシタC0とキャパシタC2にも合わせて同じだけの雑音の電荷が転送される。また、積分期間B終了時にキャパシタC2でサンプリングされて保持されてきた雑音の電荷は、キャパシタC2と積分キャパシタC0とに分配される。なお、積分キャパシタC0に分配される雑音の電荷は、積分期間B終了時とは逆符号であり、積分期間B終了時に積分キャパシタC0で積分された雑音の電荷をキャンセルする。積分期間A終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・{VoutA(z) - VnA(z)}
Q1 = -C1・VnA(z)
Q2 = C2・{VoutA(z) - VnA(z)}

各キャパシタに蓄積されている、サンプリング期間A終了時の電荷と、積分期間A終了時の電荷と、について電荷の保存則を適用すると、以下の式(11)が成り立つ。

(C0 + C2)・{VoutA(z) - VnA(z)}
= C0・{VoutB(z) - VnB(z)}・Z-1 - C2・VnB(z)・Z-1 + C1・VnA(z) ・・・(11)
【0057】
サンプリング期間Bでは、図5Cに示す接続となり、キャパシタC2に蓄積されていた電荷は放電され、積分キャパシタC0及びキャパシタC1に蓄積されていた電荷はそのまま保持される。特に、キャパシタC1に蓄積されている電荷は、積分期間A終了時にサンプリングされた雑音の電荷であり、このように、そのまま保持される。サンプリング期間B終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・{VoutA(z) - VnA(z)}・Z-1
Q1 = -C1・VnA(z)・Z-1
Q2 = 0
【0058】
積分期間Bでは、図5Dに示す接続となり、積分期間B終了時に、キャパシタC2に演算増幅器の雑音VnB[2j]の電荷がサンプリングされ、積分キャパシタC0とキャパシタC1にも合わせて同じだけの雑音の電荷が転送される。また、積分期間A終了時にキャパシタC1にサンプリングされて保持されてきた雑音の電荷は、キャパシタC1と積分キャパシタC0に分配される。なお、積分キャパシタC0に分配される雑音の電荷は、積分期間A終了時とは逆符号であり、積分期間A終了時に積分キャパシタC0で積分された雑音の電荷をキャンセルする。積分期間B終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・{VoutB(z) - VnB(z)}
Q1 = C1・{VoutB(z) - VnB(z)}
Q2 = -C2・VnB(z)

各キャパシタに蓄積されている、サンプリング期間B終了時の電荷と、積分期間B終了時の電荷と、について電荷の保存則を適用すると、以下の式(12)が成り立つ。

(C0 + C1)・{VoutB(z) - VnB(z)}
= C0・{VoutA(z) - VnA(z)}・Z-1 - C1・VnA(z)・Z-1 + C2・VnB(z) ・・・(12)
【0059】
従って、キャパシタC1とキャパシタC2の容量値が等しい(C1=C2)とすると、式(11)及び式(12)より、スイッチトキャパシタ100における演算増幅器の雑音の出力端子への伝達関数は、式(13)で表される。

【数7】

【0060】
ここで、スイッチトキャパシタフィルタ100とスイッチトキャパシタフィルタ1000の演算増幅器の雑音の伝搬量について比較を行う。なお、スイッチトキャパシタフィルタ1000については、入力信号の出力への伝達関数がスイッチトキャパシタフィルタ100と同じになるように、C1=C2とする。スイッチトキャパシタフィルタ100の伝搬量である式(13)と、スイッチトキャパシタフィルタ1000の伝搬量である式(4)は、以下の関係を有する。

(スイッチトキャパシタフィルタ100の伝搬量):(スイッチトキャパシタフィルタ1000の伝搬量)
= (2 - z-1) + (C0/C2)(1 - z-1) : 2 + (C0/C2)・(1 - z-1)

これより、直流では1:2となり、スイッチトキャパシタフィルタ100の伝搬量をスイッチトキャパシタフィルタ1000の伝搬量の半分に低減できる。また、伝搬量の比は(C0/C2)で決定されるが、ナイキスト周波数の約21/50倍の周波数以下の周波数では、スイッチトキャパシタフィルタ100の伝搬量をスイッチトキャパシタフィルタ1000に対して低減することができる。それ以上の周波数では、スイッチトキャパシタフィルタ100の伝搬量のほうが大きくなるが、通常での使用機会が多いC0>=C2の場合には、ほぼ同等の伝搬量となる。従って、本構成によれば、スイッチトキャパシタを適切に接続することで、演算増幅器や制御回路を追加することなく、演算増幅器の雑音をも低減できるスイッチトキャパシタフィルタを実現することができる。
【0061】
すなわち、本構成によれば、サンプリング期間Aにおいて、スイッチトキャパシタSC1のキャパシタC1には、入力信号が電荷(信号電荷)としてサンプリングされる。その後の積分期間Aにおいては、信号電荷が積分キャパシタC0及びスイッチトキャパシタSC2のキャパシタC2に転送される。また、キャパシタC1には、スイッチS12及びS13の雑音及び演算増幅器AMPの雑音が電荷(雑音電荷)としてサンプリングされる。それとともに、積分キャパシタC0及びキャパシタC2の演算増幅器AMP反転入力側端には、キャパシタC1の演算増幅器AMPの反転入力側端に蓄積された雑音電荷とは逆符号の電荷が蓄積される。また、積分キャパシタC0及びキャパシタC2の演算増幅器AMPの出力側端には、反転入力側端とは逆符号の電荷が蓄積される。その後の積分期間Bでは、キャパシタC1のスイッチS15側の端子は演算増幅器AMPの出力と接続され、スイッチS12側の端子は演算増幅器AMPの反転入力と接続される。これにより、積分期間Bにおいて積分キャパシタC0に転送される雑音電荷は、積分期間Aにおいて積分キャパシタC0に転送された雑音電荷に対して逆符号となる。従って、積分キャパシタC0における雑音電荷はキャンセルされる。また、本構成では、積分期間Aで入力信号をサンプリングした電荷を転送することにより、スイッチトキャパシタSC1を放電させる。よって、通常のスイッチトキャパシタフィルタのように、放電のみを目的とする接続状態を有しない。従って、放電を目的とする接続状態において雑音電荷がサンプリングされることを防ぐことができる。なお、以上はスイッチトキャパシタSC1について述べたが、雑音低減の効果はスイッチトキャパシタSC2でも同様である。
【0062】
従って、本構成によれば、簡易な構成によりスイッチの雑音及び演算増幅器の雑音を低減することができるスイッチトキャパシタフィルタを提供することができる。また、本構成にかかるスイッチトキャパシタを用いることにより、スイッチの雑音及び演算増幅器の雑音を低減することができるスイッチトキャパシタフィルタの制御方法を提供することができる。
【0063】
実施の形態2
次に、実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタについて説明する。図6は、実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタ200の回路図である。実施の形態2にかかるスイッチトキャパシタフィルタ200は、図1に示すスイッチトキャパシタフィルタ100にスイッチトキャパシタSC3が追加され、合計3つのスイッチトキャパシタを備えている。スイッチトキャパシタSC3の追加以外のスイッチトキャパシタフィルタ200の構成は、図1のスイッチトキャパシタフィルタ100と同様であるので説明を省略する。
【0064】
スイッチトキャパシタSC3は、スイッチトキャパシタSC1及びスイッチトキャパシタC2と同様の構成を有する。スイッチトキャパシタSC3は、キャパシタC3及びスイッチS31〜S35により構成される。スイッチS31〜S35には、例えばMOSFETが用いられる。キャパシタC3の一端にはスイッチS31、スイッチS33及びスイッチS35の一端が接続される。スイッチS31の他端は入力端子INと接続される。スイッチS33の他端は固定電圧と接続される。スイッチS35の他端は積分キャパシタC0の出力端子OUT側の端子と接続される。キャパシタC3の他端にはスイッチS32及びスイッチS34の一端が接続される。スイッチS32の他端は積分キャパシタC0の演算増幅器AMP側の端子と接続される。スイッチS34の他端は固定電圧と接続される。なお、ここで、キャパシタC3は、キャパシタC1及びキャパシタC2と等しい容量を有する。
【0065】
次に、スイッチトキャパシタフィルタ200の動作について説明する。スイッチトキャパシタフィルタ200は、スイッチトキャパシタフィルタ100と同様に、サンプリング期間で入力信号を電荷としてサンプリングし、積分期間でサンプリングした電荷を積分する。スイッチトキャパシタフィルタ200は、サンプリング期間A→→積分期間A→サンプリング期間B→積分期間B→サンプリング期間C→積分期間Cを1サイクルとする。 図7は、スイッチトキャパシタフィルタ200の動作タイミングを示す図である。図7に示すように、スイッチトキャパシタフィルタ200は、サンプリング期間A(SA)、積分期間A(OA)、サンプリング期間B(SB)、積分期間B(OB)、サンプリング期間C(SC)、積分期間C(OC)からなるサイクルを繰り返す。各スイッチには、それぞれ制御信号が入力され、動作状態に応じて制御信号が切り替わることにより、スイッチのON/OFF制御が行われる。
【0066】
入力信号Vinについては、サンプリング期間A〜C終了時のサンプリング値をVin[i](iは整数)、出力信号Voutについては、積分期間A〜C終了時のサンプリング値をVout[i]とする。また、実施の形態2では、サンプリング期間A及び積分期間Aによる伝達関数、サンプリング期間B及び積分期間Bによる伝達関数、サンプリング期間C及び積分期間Cによる伝達関数はそれぞれ異なるため、サンプリング期間A終了時の入力信号をVinA[i]、積分期間A終了時の出力信号をVoutA[i]、サンプリング期間B終了時の入力信号をVinB[i]、積分期間B終了時の出力信号をVoutB[i]、サンプリング期間C終了時の入力信号をVinC[i]、積分期間C終了時の出力信号をVoutC[i]とする。なお、上記は、サンプリング期間A終了時及び積分期間A終了時を[3j−2]番目(jは整数)のサンプリング、サンプリング期間B終了時及び積分期間B終了時を[3−j]番目のサンプリング、サンプリング期間C終了時及び積分期間C終了時を[3j]番目のサンプリングとすると、以下の式で表される。

VinA[3j-2] = Vin[3j-2]
VinA[3j-1] = VinA[3j] = 0
VinB[3j-1] = Vin[3j-1]
VinB[3j-2] = VinB[3j] = 0
VinC[3j] = Vin[3j]
VinC[3j-2] = VinC[3j-1] = 0
Vin[i] = VinA[i] + VinB[i] + VinC[i]
VoutA[3j-2] = Vout[3j-2]
VoutA[3j-1] = VoutA[3j] = 0
VoutB[3j-1] = Vout[3j-1]
VoutB[3j-2] = VoutB[3j] = 0
VoutC[3j] = Vout[3j]
VoutC[3j-2] = VoutC[3j-1] = 0
Vout[i] = VoutA[i] + VoutB[i] + VoutC[i]

また、Vin[i]、VinA[i]、VinB[i]、VinC[i]、Vout[i]、VoutA[i]、VoutB[i]、VoutC[i]をz変換したものを、それぞれVin(z)、VinA(z)、VinB(z)、VinC(z)、Vout(z)、VoutA(z)、VoutB(z)、VoutC(z)とする。
【0067】
雑音Vnについては、サンプリング期間または積分期間終了時のサンプリング値をVn[i](iは整数)、Vn[i]をz変換したものをVn(z)とする。また、実施の形態1では、サンプリング期間A及び積分期間Aによる伝達関数、サンプリング期間B及び積分期間Bによる伝達関数、サンプリング期間C及び積分期間Cによる伝達関数はそれぞれ異なるため、サンプリング期間Aまたは積分期間A終了時の雑音をVnA[i]、サンプリング期間Bまたは積分期間B終了時の雑音をVnB[i]、サンプリング期間Cまたは積分期間C終了時の雑音をVnC[i]とする。なお、上記は、サンプリング期間A終了時及び積分期間A終了時を[3j−2]番目(jは整数)のサンプリング、サンプリング期間B終了時及び積分期間B終了時を[3j−1]番目のサンプリング、サンプリング期間C終了時及び積分期間C終了時を[3j]番目のサンプリングとすると、以下の式で表される。

VnA[3j-2] = Vn[3j-2]
VnA[3j-1] = VnA[3j] = 0
VnB[3j-1] = Vn[3j-1]
VnB[3j-2] = VnB[3j] = 0
VnC[3j] = Vn[3j]
VnC[3j-2] = VnC[3j-1] = 0
Vn[i] = VnA[i] + VnB[i] + VnC[i]

また、Vn[i]、VnA[i]、VnB[i]、VnC[i]をz変換したものを、それぞれVn(z)、VnA(z)、VnB(z)、VnC(z)とする。
【0068】
制御信号φ1Aは、スイッチS11及びスイッチS14に供給され、サンプリング期間AのときにHighとなり、スイッチS11及びスイッチS14がONとなる。制御信号φ2Aは、スイッチS13及びスイッチS35に供給され、積分期間AのときにHighとなり、スイッチS13及びスイッチS35がONとなる。制御信号φ1Bは、スイッチS21及びスイッチS24に供給され、サンプリング期間BのときにHighとなり、スイッチS21及びスイッチS24がONとなる。制御信号φ2Bは、スイッチS23及びスイッチS15に供給され、積分期間BのときにHighとなり、スイッチS23及びスイッチS15がONとなる。制御信号φ1Cは、スイッチS31及びスイッチS34に供給され、サンプリング期間CのときにHighとなり、スイッチS31及びスイッチS34がONとなる。制御信号φ2Cは、スイッチS25及びスイッチS33に供給され、積分期間BのときにHighとなり、スイッチS25及びスイッチS33がONとなる。制御信号φ2は、スイッチS12、スイッチS22及びスイッチS32に供給され、積分期間A〜CのときにHighとなり、スイッチS12、スイッチS22及びスイッチS32がONとなる。
【0069】
続いて、入力信号の伝搬について説明する。図8A〜Fは、スイッチトキャパシタフィルタ200における入力信号の伝搬を示す回路図である。まず、サンプリング期間AではスイッチS11及びスイッチS14がONとなり、それ以外のスイッチはOFFとなる。従って、スイッチトキャパシタフィルタ100は、図8Aに示す接続となり、入力信号VinA[3j−2](jは整数)がキャパシタC1でサンプリングされる。ここで、積分キャパシタC0に蓄積される電荷をQ0、キャパシタC1に蓄積される電荷をQ1、キャパシタC2蓄積される電荷をQ2、キャパシタC2蓄積される電荷をQ3とする。また、特に断らない限り、積分キャパシタC0、キャパシタC1〜C3の容量値は、それぞれC0、C1〜C3である。サンプリング期間A終了時に、キャパシタC1に入力信号VinA[3j−2]の電荷がサンプリングされる。サンプリング期間A終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・VoutC(z)・Z-1
Q1 = C1・VinA(z)
Q2 = C2・VoutC(z)・Z-1
Q3 = 0
【0070】
積分期間Aでは、スイッチS12、スイッチS13、スイッチS22、スイッチS32及びスイッチS35がONとなり、それ以外のスイッチはOFFとなる。従って、スイッチトキャパシタフィルタ200は、図8Bに示す接続となり、キャパシタC1に蓄積されていた入力信号の電荷は積分キャパシタC0、キャパシタC2及びキャパシタC3に転送される。積分期間A終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・VoutA(z)
Q1 = 0
Q2 = C2・VoutC(z)・Z-1
Q3 = C3・VoutA(z)

各キャパシタに蓄積されている、サンプリング期間A終了時の電荷と、積分期間A終了時の電荷と、について電荷の保存則を適用すると、以下の式(14)が成り立つ。

(C0 + C3)・VoutA(z) = C0・VoutC(z)・Z-1 + C1・VinA(z) ・・・(14)
【0071】
サンプリング期間Bでは、スイッチS21及びスイッチS24がONとなり、それ以外のスイッチはOFFとなる。従って、スイッチトキャパシタフィルタ200は、図8Cに示す接続となり、サンプリング期間B終了時に、キャパシタC2に入力信号VinB[3j−1]の電荷がサンプリングされる。サンプリング期間B終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・VoutA(z)・Z-1
Q1 = 0
Q2 = C2・VinB(z)
Q3 = C3・VoutA(z)・Z-1
【0072】
積分期間Bでは、スイッチS12、スイッチS15、スイッチS22、スイッチS23及びスイッチS32がONとなり、それ以外のスイッチはOFFとなる。従って、スイッチトキャパシタフィルタ200は、図8Dに示す接続となり、キャパシタC2に蓄積された電荷は積分キャパシタC0、キャパシタC1及びキャパシタC3に転送される。積分期間B終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・VoutB(z)
Q1 = C1・VoutB(z)
Q2 = 0
Q3 = C3・VoutA(z)・Z-1

各キャパシタに蓄積されている、サンプリング期間B終了時の電荷と、積分期間B終了時の電荷と、について電荷の保存則を適用すると、以下の式(15)が成り立つ。

(C0 + C1)・VoutB(z) = C0・VoutA(z)・Z-1 + C2・VinB(z) ・・・(15)
【0073】
サンプリング期間Cでは、スイッチS31及びスイッチS34がONとなり、それ以外のスイッチはOFFとなる。従って、スイッチトキャパシタフィルタ200は、図8Eに示す接続となり、サンプリング期間C終了時に、キャパシタC2に入力信号VinC[3j]の電荷がサンプリングされる。サンプリング期間C終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・VoutB(z)・Z-1
Q1 = C1・VoutB(z)・Z-1
Q2 = 0
Q3 = C3・VinC(z)
【0074】
積分期間Cでは、スイッチS12、スイッチS22、スイッチS25、スイッチS32及びスイッチS33がONとなり、それ以外のスイッチはOFFとなる。従って、スイッチトキャパシタフィルタ200は、図8Fに示す接続となり、キャパシタC3に蓄積された電荷は積分キャパシタC0、キャパシタC1及びキャパシタC2に転送される。積分期間C終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・VoutC(z)
Q1 = C1・VoutB(z)・Z-1
Q2 = C2・VoutC(z)
Q3 = 0

各キャパシタに蓄積されている、サンプリング期間C終了時の電荷と、積分期間C終了時の電荷と、について電荷の保存則を適用すると、以下の関係が成り立つ。

(C0 + C2)・VoutC(z) = C0・VoutB(z)・Z-1 + C3・VinC(z) ・・・(16)
【0075】
ここで、キャパシタC1〜C3の容量は等しい(C1=C2=C3)とすると、式(14)〜(16)より、スイッチトキャパシタフィルタ200における入力信号の出力端子への伝達関数は、式(7)で表される。よって、スイッチトキャパシタフィルタ200は、入力信号に対してスイッチトキャパシタフィルタ100と同じの伝達特性を有する。
【0076】
次に、スイッチS12及びスイッチS13の雑音の伝搬について説明する。図9A〜Fは、スイッチトキャパシタフィルタ200でのスイッチの雑音の伝搬を示す回路図である。ここで、スイッチS12及びスイッチS13の雑音として、スイッチS12及びスイッチS13と直列に電圧源Vnがあるものとする。また、スイッチの雑音の伝搬のみを示すために、入力信号は常に0とする。まず、サンプリング期間Aでは、図9Aに示す接続となり、キャパシタC1に蓄積されていた電荷は放電され、積分キャパシタC0、キャパシタC2及びキャパシタC3に蓄積されていた電荷はそのまま保持される。なお、積分キャパシタC0、キャパシタC2及びキャパシタC3に蓄積されていた電荷とは、積分期間C終了時(図9D)の電荷のことである。サンプリング期間A終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・VoutC(z)・Z-1
Q1 = 0
Q2 = C2・VoutC(z)・Z-1
Q3 = 0
【0077】
積分期間Aでは、図9Bに示す接続となり、積分期間Aの終了時に、キャパシタC1にスイッチS12及びスイッチS13の雑音VnA[3j−2]の電荷がサンプリングされ、積分キャパシタC0及びキャパシタC3にも合わせて同じだけの雑音の電荷が転送される。積分期間Aの終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・VoutA(z)
Q1 = -C1・VnA(z)
Q2 = C2・VoutC(z)・Z-1
Q3 = C3・VoutA(z)

各キャパシタに蓄積されている、サンプリング期間A終了時の電荷と、積分期間A終了時の電荷と、について電荷の保存則を適用すると、以下の式(17)が成り立つ。

(C0 + C3)・VoutA(z) = C0・VoutC(z)・Z-1 + C1・VnA(z) ・・・(17)
【0078】
サンプリング期間Bでは、図9Cに示す接続となり、キャパシタC2に蓄積されていた電荷は放電され、積分キャパシタC0、キャパシタC1及びキャパシタC3に蓄積されていた電荷はそのまま保持される。このように、積分期間A終了時に、キャパシタC1にサンプリングされた雑音の電荷はそのまま保持される。サンプリング期間B終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・VoutA(z)・Z-1
Q1 = -C1・VnA(z)・Z-1
Q2 = 0
Q3 = C3・VoutA(z)・Z-1
【0079】
積分期間Bでは、図9Dに示す接続となり、積分期間A終了時にキャパシタC1にサンプリングされて保持されてきた雑音の電荷は、キャパシタC1と積分キャパシタC0に分配される。なお、積分キャパシタC0に分配される雑音の電荷は、積分期間A終了時とは逆符号であり、積分期間A終了時に積分キャパシタC0で積分された雑音の電荷をキャンセルする。積分期間B終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・VoutB(z)
Q1 = C1・VoutB(z)
Q2 = 0
Q3 = C3・VoutA(z)・Z-1

各キャパシタに蓄積されている、サンプリング期間B終了時の電荷と、積分期間B終了時の電荷と、について電荷の保存則を適用すると、以下の式(18)が成り立つ。

(C0 + C1)・VoutB(z) = C0・VoutA(z)・Z-1 - C1・VnA(z)・Z-1 ・・・(18)
【0080】
サンプリング期間Cでは、図9Eに示す接続となり、キャパシタC3に蓄積されていた電荷は放電され、積分キャパシタC0、キャパシタC1及びキャパシタC2に蓄積されていた電荷はそのまま保持される。サンプリング期間C終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・VoutB(z)・Z-1
Q1 = C1・VoutB(z)・Z-1
Q2 = 0
Q3 = 0
【0081】
積分期間Cでは、図9Fに示す接続となる。積分期間C終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・VoutC(z)
Q1 = C1・VoutB(z)・Z-1
Q2 = C2・VoutC(z)
Q3 = 0

各キャパシタに蓄積されている、サンプリング期間C終了時の電荷と、積分期間C終了時の電荷と、について電荷の保存則を適用すると、以下の式(19)が成り立つ。

(C0 + C2)・VoutC(z) = C0・VoutB(z)・Z-1 ・・・(19)
【0082】
ここで、キャパシタC1〜C3の容量は等しい(C1=C2=C3)とすると、式(17)〜(19)より、スイッチトキャパシタフィルタ200におけるスイッチの雑音の伝達関数は、式(10)で表される。よって、スイッチの雑音に対してスイッチトキャパシタフィルタ100と同じ伝達特性を有する。
【0083】
また、上記ではスイッチS12及びスイッチS13の雑音の伝搬について述べたが、 これはスイッチS22及びスイッチS23、スイッチS32及びスイッチS33の雑音の伝搬についても同様である。
【0084】
次に、各動作状態における演算増幅器の雑音の伝搬について説明する。図10A〜Dは、スイッチトキャパシタフィルタ200における演算増幅器の雑音の伝搬を示す回路図である。ここで、演算増幅器の雑音として、演算増幅器の反転入力に電圧源Vnがあるものとする。また、演算増幅器の雑音の伝搬のみを示すために、入力信号は常に0とする。まず、サンプリング期間Aでは、図10Aに示す接続となり、キャパシタC1に蓄積されていた電荷は放電され、積分キャパシタC0、キャパシタC2及びキャパシタC3に蓄積されていた電荷はそのまま保持される。なお、積分キャパシタC0、キャパシタC2及びキャパシタC3に蓄積されていた電荷とは、積分期間C終了時(図10D)の電荷のことである。特に、キャパシタC3に蓄積されている電荷は、積分期間C終了時にサンプリングされた雑音の電荷であり、このように、そのまま保持される。サンプリング期間A終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・{VoutC(z) - VnC(z)}・Z-1
Q1 = 0
Q2 = C2・{VoutC(z) - VnC(z)}・Z-1
Q3 = -C3・VnC(z)・Z-1
【0085】
積分期間Aでは、図10Bに示す接続となり、積分期間A終了時に、キャパシタC1に演算増幅器の雑音VnA[3j−2]の電荷がサンプリングされ、積分キャパシタC0とキャパシタC3にも合わせて同じだけの雑音の電荷が転送される。また、積分期間C終了時にキャパシタC3でサンプリングされて保持されてきた雑音の電荷は、キャパシタC3と積分キャパシタC0とに分配される。なお、積分キャパシタC0に分配される雑音の電荷は、積分期間C終了時とは逆符号であり、積分期間C終了時に積分キャパシタC0で積分された雑音の電荷をキャンセルする。積分期間A終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・{VoutA(z) - VnA(z)}
Q1 = -C1・VnA(z)
Q2 = C2・{VoutC(z) - VnC(z)}・Z-1
Q3 = C3・{VoutA(z) - VnA(z)}

各キャパシタに蓄積されている、サンプリング期間A終了時の電荷と、積分期間A終了時の電荷と、について電荷の保存則を適用すると、以下の式(20)が成り立つ。

(C0 + C3)・{VoutA(z) - VnA(z)}
= C0・{VoutC(z) - VnC(z)}・Z-1 - C3・VnC(z)・Z-1 + C1・VnA(z) ・・・(20)
【0086】
サンプリング期間Bでは、図10Cに示す接続となり、キャパシタC2に蓄積されていた電荷は放電され、積分キャパシタC0、キャパシタC1及びキャパシタC3に蓄積されていた電荷はそのまま保持される。特に、キャパシタC1に蓄積されている電荷は、積分期間A終了時にサンプリングされた雑音の電荷であり、このように、そのまま保持される。サンプリング期間B終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・{VoutA(z) - VnA(z)}・Z-1
Q1 = -C1・VnA(z)・Z-1
Q2 = 0
Q3 = C3・{VoutA(z) - VnA(z)}・Z-1
【0087】
積分期間Bでは、図10Dに示す接続となり、積分期間B終了時に、キャパシタC2に演算増幅器の雑音VnB[3j−1]の電荷がサンプリングされ、積分キャパシタC0とキャパシタC1にも合わせて同じだけの雑音の電荷が転送される。また、積分期間A終了時にキャパシタC1にサンプリングされて保持されてきた雑音の電荷は、キャパシタC1と積分キャパシタC0に分配される。なお、積分キャパシタC0に分配される雑音の電荷は、積分期間A終了時とは逆符号であり、積分期間A終了時に積分キャパシタC0で積分された雑音の電荷をキャンセルする。積分期間B終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・{VoutB(z) - VnB(z)}
Q1 = C1・{VoutB(z) - VnB(z)}
Q2 = -C2・VnB(z)
Q3 = C3・{VoutA(z) - VnA(z)}・Z-1

各キャパシタに蓄積されている、サンプリング期間B終了時の電荷と、積分期間B終了時の電荷と、について電荷の保存則を適用すると、以下の式(21)が成り立つ。

(C0 + C1)・{VoutB(z) - VnB(z)}
= C0・{VoutA(z) - VnA(z)}・Z-1 - C1・VnA(z)・Z-1 + C2・VnB(z) ・・・(21)
【0088】
サンプリング期間Cでは、図10Eに示す接続となり、キャパシタC3に蓄積されていた電荷は放電され、積分キャパシタC0、キャパシタC1及びキャパシタC2に蓄積されていた電荷はそのまま保持される。特に、キャパシタC2に蓄積されている電荷は、積分期間B終了時にサンプリングされた雑音の電荷であり、このように、そのまま保持される。サンプリング期間C終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・{VoutB(z) - VnB(z)}・Z-1
Q1 = C1・{VoutB(z) - VnB(z)}・Z-1
Q2 = -C2・VnB(z)・Z-1
Q3 = 0
【0089】
積分期間Cでは、図10Fに示す接続となり、積分期間C終了時に、キャパシタC3に演算増幅器の雑音VnC[3j]の電荷がサンプリングされ、積分キャパシタC0とキャパシタC2にも合わせて同じだけの雑音の電荷が転送される。また、積分期間B終了時にキャパシタC2にサンプリングされて保持されてきた雑音の電荷は、キャパシタC2と積分キャパシタC0に分配される。なお、積分キャパシタC0に分配される雑音の電荷は、積分期間B終了時とは逆符号であり、積分期間B終了時に積分キャパシタC0で積分された雑音の電荷をキャンセルする。積分期間C終了時に各キャパシタに蓄積されている電荷は、z関数を用いて以下の式で表される。

Q0 = C0・{VoutC(z) - VnC(z)}
Q1 = C1・{VoutB(z) - VnB(z)}・Z-1
Q2 = C2・{VoutC(z) - VnC(z)}
Q3 = -C3・VnC(z)

各キャパシタに蓄積されている、サンプリング期間C終了時の電荷と、積分期間C終了時の電荷と、について電荷の保存則を適用すると、以下の式(22)が成り立つ。

(C0 + C2)・{VoutC(z) - VnC(z)}
= C0・{VoutB(z) - VnB(z)}・Z-1 - C2・VnB(z)・Z-1 + C3・VnC(z) ・・・(22)
【0090】
ここで、キャパシタC1〜C3の容量は等しい(C1=C2=C3)とすると、式(20)〜(22)より、スイッチトキャパシタフィルタ200における演算増幅器の雑音の伝達関数は、式(13)で表される。よって、スイッチトキャパシタフィルタ200は、演算増幅器の雑音に対して、スイッチトキャパシタフィルタ100と同じ伝達特性を有する。
【0091】
すなわち、スイッチトキャパシタフィルタ200は、スイッチトキャパシタフィルタ100と同様の伝達特性を有する。従って、スイッチトキャパシタの接続数を2個又は3個としても同様の機能が実現でき、さらに、スイッチトキャパシタの接続数は、2以上の任意の個数とすることができる。
【0092】
実施の形態3
次に、実施の形態3にかかるスイッチトキャパシタフィルタについて説明する。実施の形態3にかかるスイッチトキャパシタフィルタ300の構成は、図2に示すスイッチトキャパシタフィルタ200と同様である。但し、スイッチトキャパシタフィルタ300は、スイッチトキャパシタフィルタ200に比べて、スイッチの制御が異なる。
【0093】
スイッチトキャパシタフィルタ300では、制御信号φ2Aは、スイッチS13及びスイッチS25に供給され、積分期間AのときにHighとなり、スイッチS13及びスイッチS25がONとなる。制御信号φ2Bは、スイッチS23及びスイッチS35に供給され、積分期間BのときにHighとなり、スイッチS23及びスイッチS35がONとなる。制御信号φ2Cは、スイッチS15及びスイッチS33に供給され、積分期間BのときにHighとなり、スイッチS15及びスイッチS33がONとなる。その他の制御信号については、スイッチトキャパシタフィルタ200と同様であるので、説明を省略する。
【0094】
すなわち、スイッチトキャパシタフィルタ300は、サンプリングされた雑音のキャンセルを2つ後の積分期間時に行う。これは、サンプリングされた雑音のキャンセルを1つ後の積分期間時に行うスイッチトキャパシタフィルタ200とは伝達関数は異なるものの、雑音キャンセルの効果を得ることができる。
【0095】
その他の実施の形態
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、制御信号の供給は上述の実施の形態に限定されるものではなく、任意の供給方法、順序をとることができる。
【0096】
例えば、上述の実施の形態2では、入力信号のサンプリング(第1の接続状態)と電荷の転送(第2の接続状態)のサイクルを複数回行った後に、スイッチの雑音電荷のキャンセル(第3の接続状態)を行ってもよい。
【0097】
さらに、上述の実施の形態2では、第1の接続状態、第2の接続状態及び第3の接続状態の実施順序が維持されるのであれば、各接続状態の実施順序は実施の形態2に限定されるものではない。ここで、対象となるスイッチトキャパシタの少なくとも一端が開放されている接続状態を第4の接続状態とすると、実施順序を第1の接続状態→第2の接続状態→第4の接続状態→第3の接続状態としてもよい。また、第1の接続状態→第4の接続状態→第2の接続状態→第3の接続状態としてもよい。すなわち、第1〜3の接続状態のそれぞれの間に、1つ又は複数の第4の接続状態を挿入してもよい。
【0098】
なお、全てのスイッチトキャパシタが、第1の接続状態、第2の接続状態及び第3の接続状態の順に接続状態を形成する必要はない。この順に接続状態を形成するスイッチトキャパシタの雑音は低減され、この順に接続状態を形成しないスイッチトキャパシタの雑音は低減されないだけである。すなわち、全てのスイッチトキャパシタが、第1の接続状態、第2の接続状態及び第3の接続状態の順に接続状態を形成すると、雑音の低減効果は最大となる。
【0099】
さらに、第2の接続状態のスイッチトキャパシタが1個以上存在する場合の、第2及び第3の接続状態のスイッチトキャパシタの個数は各1個である必要はない。なお、これらの個数の比によって、スイッチトキャパシタフィルタの直流でのゲインを変えることができる。例えば、第2及び第3の接続状態のスイッチトキャパシタが各1個の場合のゲインは1倍となる。第2の接続状態のスイッチトキャパシタの個数が2個、第3の接続状態のスイッチトキャパシタの個数が1個の場合のゲインは2倍となる。第2の接続状態のスイッチトキャパシタの個数が1個、第3の接続状態のスイッチトキャパシタの個数が2個の場合のゲインは1/2倍となる。
【0100】
また、上述の実施の形態では、各スイッチトキャパシタの各キャパシタの容量値は同一であるが、各キャパシタの容量値は同一であることに限られない。例えば、各キャパシタの容量値が実質的に同一であると取り扱うことができる範囲内であれば、容量値が同一で有る場合と同様に、入力信号に含まれるナイキスト周波数近傍の雑音が低い周波数に折り返されることを防止しつつ、スイッチの雑音を低減することができる。この際、各キャパシタの容量値が全キャパシタの容量の平均値から±5%以内の範囲であることが望ましい。
【0101】
更に、上述の実施の形態における固定電圧は、必ずしも固定電圧に限られず、任意の電圧としてもよい。
【符号の説明】
【0102】
100、200、300、1000 スイッチトキャパシタフィルタ
AMP 演算増幅器
C0 積分キャパシタ
C1〜3 キャパシタ
IN 入力端子
OUT 出力端子
S11〜15、S21〜25、S31〜35 スイッチ
SC1〜3 スイッチトキャパシタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を積分する積分キャパシタと、
少なくとも反転入力が前記積分キャパシタの一端と接続され、出力が前記積分キャパシタの他端と接続される演算増幅器と、
複数のスイッチにより少なくとも第1〜3の接続状態に切り替わる複数のスイッチトキャパシタと、を少なくとも備え、
前記複数のスイッチトキャパシタのそれぞれは、第1の端子及び第2の端子を有するキャパシタを少なくとも備え、
前記複数のスイッチトキャパシタのそれぞれは、
前記第1の接続状態から前記第2の接続状態を経て前記第3の接続状態に移行し、
前記第1の接続状態では、前記第1の端子は入力信号と接続され、前記第2の端子は第1の電圧と接続され、
前記第2の接続状態では、前記第1の端子は第2の電圧と接続され、前記第2の端子は前記演算増幅器の前記反転入力と接続され、
前記第3の接続状態では、前記第1の端子は前記演算増幅器の前記出力と接続され、前記第2の端子は前記演算増幅器の前記反転入力と接続され、
前記第2の接続状態又は前記第3の接続状態の前記スイッチトキャパシタが1個以上存在する場合には、前記第2の接続状態及び前記第3の接続状態の前記スイッチトキャパシタは、それぞれ1個以上存在し、
前記第2の接続状態の前記スイッチトキャパシタが1個以上存在する場合の当該第2の接続状態の前記スイッチトキャパシタの個数は常に同じであり、
前記第3の接続状態の前記スイッチトキャパシタが1個以上存在する場合の当該第3の接続状態の前記スイッチトキャパシタの個数は常に同じである、
スイッチトキャパシタフィルタ。
【請求項2】
前記第2の接続状態の前記スイッチトキャパシタが1個以上存在する場合の当該第2の接続状態の前記スイッチトキャパシタの個数と、前記第3の接続状態の前記スイッチトキャパシタが1個以上存在する場合の当該第3の接続状態の前記スイッチトキャパシタの個数と、は常に同じである、
請求項1に記載のスイッチトキャパシタフィルタ。
【請求項3】
前記第2の接続状態において前記キャパシタに蓄積された電荷を保持したまま、前記第3の接続状態に移行することを特徴とする、
請求項1又は2に記載のスイッチトキャパシタフィルタ。
【請求項4】
前記第1の電圧及び前記第2の電圧は固定電圧であることを特徴とする、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスイッチトキャパシタフィルタ。
【請求項5】
前記複数のスイッチトキャパシタのそれぞれの前記キャパシタの容量値は、前記複数の複数のスイッチトキャパシタに設けられた全ての前記キャパシタの容量値の平均値に対して±5%以内であることを特徴とする、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のスイッチトキャパシタフィルタ。
【請求項6】
前記複数のスイッチトキャパシタのそれぞれの前記キャパシタの容量値は、実質的に同一であることを特徴とする、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載のスイッチトキャパシタフィルタ。
【請求項7】
前記複数のスイッチのそれぞれは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であることを特徴とする、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載のスイッチトキャパシタフィルタ。
【請求項8】
複数のスイッチにより接続状態が切り替わる複数のスイッチトキャパシタのそれぞれに設けられたキャパシタの第1の端子を入力信号と接続し、第2の端子を第1の電圧と接続して第1の接続状態を形成し、
前記第1の端子を、第2の電圧と接続し、
前記第2の端子を、入力信号を積分する積分キャパシタの一端と接続される演算増幅器の反転入力と接続して、第2の接続状態を形成し、
前記スイッチトキャパシタの前記第1の端子を、前記積分キャパシタの他端と接続される前記演算増幅器の出力と接続し、
前記第2の端子を、前記演算増幅器の前記反転入力と接続して、第3の接続状態を形成し、
前記第2の接続状態又は前記第3の接続状態の前記スイッチトキャパシタを1個以上形成する場合には、前記第2の接続状態及び前記第3の接続状態の前記スイッチトキャパシタを、それぞれ1個以上形成し、
前記第2の接続状態を1個以上形成する場合には、常に同じ個数の当該第2の接続状態を形成し、
前記第3の接続状態を1個以上形成する場合には、常に同じ個数の当該第3の接続状態を形成する、
スイッチトキャパシタフィルタの制御方法。
【請求項9】
前記第2の接続状態を1個以上形成する場合の当該第2の接続状態の形成個数と、前記第3の接続状態を1個以上形成する場合の当該第3の接続状態の形成個数と、は常に同じである、
請求項8に記載のスイッチトキャパシタフィルタの制御方法。
【請求項10】
前記第2の接続状態において前記キャパシタに蓄積された電荷を保持したまま、前記第3の接続状態に移行させることを特徴とする、
請求項8又は9に記載のスイッチトキャパシタフィルタの制御方法。
【請求項11】
前記第1の電圧及び前記第2の電圧は固定電圧であることを特徴とする、
請求項8乃至10のいずれか一項に記載のスイッチトキャパシタフィルタの制御方法。
【請求項12】
前記複数のスイッチトキャパシタのそれぞれの前記キャパシタの容量値は、前記複数の複数のスイッチトキャパシタに設けられた全ての前記キャパシタの容量値の平均値に対して±5%以内であることを特徴とする、
請求項8乃至11のいずれか一項に記載のスイッチトキャパシタフィルタの制御方法。
【請求項13】
前記複数のスイッチトキャパシタのそれぞれの前記キャパシタの容量値は、実質的に同一であることを特徴とする、
請求項8乃至12のいずれか一項に記載のスイッチトキャパシタフィルタの制御方法。
【請求項14】
前記複数のスイッチのそれぞれは、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)であることを特徴とする、
請求項8乃至13のいずれか一項に記載のスイッチトキャパシタフィルタの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図9F】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図10F】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【公開番号】特開2011−193247(P2011−193247A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57887(P2010−57887)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】